立体構造物
【課題】少種類の資材によって容易に構築することができる立体構造物を提供する。
【解決手段】立体構造物1は、横断面が長方形で、幅、厚さ及び長さが略同等な木材板で形成された7種類のフレーム材A,B,C,G,H,I,Jを、嵌合連結部2などを介して互いに嵌合連結して形成した多角形網状の構造体である。立体構造物1を構成する嵌合連結部2などは、種類のフレーム材A,B,C,G,H,I,Jのうちのいずれか3本の組み合わせによって形成され、これらのフレーム材A,B,C,G,H,I,Jで囲まれた領域は六角形若しくは五角形をなしている。嵌合連結部2などは、7種類のフレーム材A,B,C,G,H,I,Jのうちのいずれか3本のフレーム材の外周に形成された凹部を互いに嵌合連結することによって形成されている。嵌合連結部2などにおいて隣り合うフレーム材同士の成す角度(内角)の和が300度より大で360度より小である。
【解決手段】立体構造物1は、横断面が長方形で、幅、厚さ及び長さが略同等な木材板で形成された7種類のフレーム材A,B,C,G,H,I,Jを、嵌合連結部2などを介して互いに嵌合連結して形成した多角形網状の構造体である。立体構造物1を構成する嵌合連結部2などは、種類のフレーム材A,B,C,G,H,I,Jのうちのいずれか3本の組み合わせによって形成され、これらのフレーム材A,B,C,G,H,I,Jで囲まれた領域は六角形若しくは五角形をなしている。嵌合連結部2などは、7種類のフレーム材A,B,C,G,H,I,Jのうちのいずれか3本のフレーム材の外周に形成された凹部を互いに嵌合連結することによって形成されている。嵌合連結部2などにおいて隣り合うフレーム材同士の成す角度(内角)の和が300度より大で360度より小である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のフレーム材同士を互いに嵌合連結することによって構築する多角形網状の立体構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
丸太や角材などの木材あるいは金属材などを稜線部に配置して互いに接合することによって多面体状の立体構造物を構築する技術については、従来、様々なアイディアが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0003】
特許文献1記載の立体構造物(多面体)は、複数の辺体を連設して形成された多角形状の枠体を互いに接合することによって構築されている。また、特許文献2記載の立体構造物(骨組構造体)は、金属製の棒体と木材とを張り合わせて形成されたフレーム本体を互いに接合することによって構築されている。一方、特許文献3記載の立体構造物(組子飾り)は、一片に2ヶ所の係合部を形成した数種の組子片を、各係合部に120度間隔で3つずつ組み合わせていくことによって形成された正六角形組子をさらに湾曲させて形成した球面状正六角形組子を互いに連結して構築されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−280488号公報
【特許文献2】特開2002−167902号公報
【特許文献3】特開2003−11596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の立体構造物(多面体)は、複数の辺体を連設して多角形状の枠体を形成し、さらに複数の枠体をその辺体同士を接合させて構築するまでに多大な労力と時間が必要である。また、多角形状の枠体の製作及び枠体同士の接合には高精度の材料加工技術が必要であるため、容易に構築することができない。また、枠体を製作する際の補強部材や枠体同士を接合する接着剤などの資材が必要である。
【0006】
特許文献2記載の立体構造物(骨組構造体)は、基本となるフレーム部材を金属製の棒体と木材とを張り合わせて製作しなければならないので、互いに異なる2種類の素材を必要とするだけでなく、製作にも手間を要する。また、複数のフレーム部材同士はボルトで連結する方式であるため、連結作業が面倒である。
【0007】
特許文献3記載の立体構造物(組子飾り)は、複数の組子片を組み合わせ、湾曲加工を施すことによって球面状正六角形組子を製作するまでに多大な労力と時間を要する。また、特許文献3記載された技術は、比較的小さな立体構造物の構築技術としては好適であるが、仮設住宅やペットハウスなどの大きな立体構造物には不向きである。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、少種類の資材によって容易に構築することができる立体構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の立体構造物は、外周面に開口する凹部を有する複数のフレーム材を、前記凹部同士を互いに嵌合連結して形成された多角形網状の立体構造物であって、前記フレーム材の嵌合連結部が3本の前記フレーム材で形成され、且つ、前記嵌合連結部において隣り合う前記フレーム材同士の成す角度(内角)の和が300度より大であって360度より小であることを特徴とする。
【0010】
このような構成とすれば、複数のフレーム材を、当該フレーム材に設けられた凹部同士を嵌合させて連結することによってアーチ形状若しくは多面体形状の立体構造物を構築することができる。複数のフレーム材は接合具や連結具などを用いることなく連結することができるので、少種類の資材によって容易に構築することができる。
【0011】
ここで、前記嵌合連結部は、1本の前記フレーム材の外周に形成された複数の凹部に、他の2本の前記フレーム材の外周に形成された凹部を嵌合させて形成されることが望ましい。
【0012】
このような構成とすれば、3本のフレーム材を互いにズレないように嵌合連結することができ、連結作業の煩雑化を回避することができる。
【0013】
この場合、前記嵌合連結部に、3本の前記フレーム材を連続的に貫通する補強材を設けることもできる。
【0014】
このような構成とすれば、嵌合連結部を形成する3本のフレーム材の相対位置が変化したり、フレーム材が分離したりするのを防止することができるので、嵌合連結部の連結強度の向上に有効である。
【0015】
また、前記フレーム材として木材を使用すれば、森林資源の有効活用を図ることができる。この場合、前記フレーム材は、間伐材などを用いて形成することもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、少種類の資材によって容易に構築することができる立体構造物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第一実施形態である立体構造物を一部省略した状態で示す斜視図である。
【図2】図1に示す立体構造物の一部を成す嵌合連結部の斜視図である。
【図3】図2における矢線W方向から見た図である。
【図4】図2に示す嵌合連結部の分解斜視図である。
【図5】(a)は図1に示す立体構造物を構成するフレーム材の上面図、(b)は前記フレーム材の側面図、(c)は前記フレーム材の底面図である。
【図6】(a)は図1に示す立体構造物を構成するフレーム材の上面図、(b)は前記フレーム材の側面図、(c)は前記フレーム材の底面図である。
【図7】(a)は図1に示す立体構造物を構成するフレーム材の上面図、(b)は前記フレーム材の側面図、(c)は前記フレーム材の底面図である。
【図8】(a)は図1に示す立体構造物を構成するフレーム材の上面図、(b)は前記フレーム材の側面図、(c)は前記フレーム材の底面図である。
【図9】(a)は図1に示す立体構造物を構成するフレーム材の上面図、(b)は前記フレーム材の側面図、(c)は前記フレーム材の底面図である。
【図10】(a)は図1に示す立体構造物を構成するフレーム材の上面図、(b)は前記フレーム材の側面図、(c)は前記フレーム材の底面図である。
【図11】(a)は図1に示す立体構造物を構成するフレーム材の上面図、(b)は前記フレーム材の側面図、(c)は前記フレーム材の底面図である。
【図12】嵌合連結部に関するその他の実施形態を示す一部分解斜視図である。
【図13】本発明の第二実施形態である立体構造物を一部省略した状態で示す斜視図である。
【図14】図13に示す立体構造物の一部を成す嵌合連結部の斜視図である。
【図15】(a)は図13に示す立体構造物を構成するフレーム材の上面図、(b)は前記フレーム材の側面図、(c)は前記フレーム材の底面図である。
【図16】(a)は図13に示す立体構造物を構成するフレーム材の上面図、(b)は前記フレーム材の側面図、(c)は前記フレーム材の底面図である。
【図17】(a)は図13に示す立体構造物を構成するフレーム材の上面図、(b)は前記フレーム材の側面図、(c)は前記フレーム材の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1〜図11に基づいて、本発明の第1実施形態である立体構造物1について説明する。図1に示すように、立体構造物1は、図5〜図11に示す7種類のフレーム材A,B,C,G,H,I,Jを、図2に示す嵌合連結部2などを介して互いに嵌合連結して形成した多角形網状の構造体である。立体構造物1を構成する嵌合連結部2などは、全て、7種類のフレーム材A,B,C,G,H,I,Jのうちのいずれか3本の組み合わせによって形成され、これらのフレーム材A,B,C,G,H,I,Jで囲まれた領域は六角形若しくは五角形をなしている。
【0019】
ここで、図5〜図11を参照し、立体構造物1を構成するフレーム材A,B,C,G,H,I,Jについて説明する。なお、フレーム材A,B,C,G,H,I,Jはそれぞれ横断面が長方形で、幅、厚さ及び長さが略同等な木材板で形成されているが、これに限定するものではない。
【0020】
フレーム材Aは、図5(b),(c)に示すように、軸心Ac方向に離れた端部寄りの二ヶ所において、外周の一部をなす底面12に開口する一対の凹部13,14が形成され、図5(a),(b)に示すように、軸心Acを挟んで底面12の反対側に位置する上面11は凹部のない平面状をなしている。図5(b)に示すように、凹部13,14の深さ方向は、側面視状態でV字の一部をなすように、それぞれ軸心Acに対し傾斜して開設されている。また、凹部13,14内において、軸心Ac方向に対向する内面13a,14aはそれぞれ軸心Ac方向に突出した楔形状をなしている。
【0021】
フレーム材Bは、図6(b),(c)に示すように、軸心Bc方向に離れた端部寄りの二ヶ所において、外周の一部をなす底面22に開口する一対の凹部23,24が形成され、図6(a),(b)に示すように、軸心Bcを挟んで底面22の反対側に位置する上面21は凹部のない平面状をなしている。図6(b)に示すように、凹部23,24の深さ方向は、側面視状態でハ字の一部をなすように、それぞれ軸心Bcに対し傾斜して開設されている。また、凹部23,24内において、軸心Bc方向に対向する内面23a,24aはそれぞれ軸心Bc方向に突出した楔形状をなしている。
【0022】
フレーム材Cは、図7(a)〜(c)に示すように、軸心Cc方向に離れた一方の端部寄りの部分に、外周の一部をなす上面31に開口する凹部33が形成され、他方の端部寄りの部分に、外周の一部をなす底面32に開口する凹部34が形成されている。図7(b)に示すように、凹部33,34は軸心Ccを挟んで互いに反対方向に開口し、凹部33,34の深さ方向は、側面視状態でハ字の一部をなすように、それぞれ軸心Ccに対し傾斜して開設されている。また、凹部33,34内において、軸心Cc方向に対向する内面33a,34aはそれぞれ軸心Cc方向に突出した楔形状をなしている。
【0023】
フレーム材Gは、図8(a)〜(c)に示すように、軸心Gc方向に離れた端部寄りの二ヶ所において、外周の一部をなす上面41及び底面42にそれぞれ開口する二対の凹部43,44,45,46が形成されている。図8(b)に示すように、凹部43,44,45,46は、それぞれの深さ方向が側面視状態でV字の一部をなすように、それぞれ軸心Gcに対し傾斜して開設されている。また、凹部43,44,45,46内において、軸心Gc方向に対向する内面43a,44a,45a,46aはそれぞれ互いに平行をなすとともに、上面視状態及び底面視状態においてそれぞれV字の一部をなすような状態で開設され、凹部43,44,45,46の貫通方向はそれぞれ軸心Gc方向に対し「ねじれの位置」をなしている。なお、「ねじれの位置」とは、空間内の2本の直線が平行でなく、かつ、交わっていないとき、つまり2本の直線が同一平面に無いときの、2直線の位置関係のことをいう。
【0024】
フレーム材Hは、図9(a)〜(c)に示すように、軸心Hc方向に離れた端部寄りの二ヶ所において、外周の一部をなす上面51及び底面52にそれぞれ開口する二対の凹部53,54,55,56が形成されている。図9(b)に示すように、凹部53,54,55,56は、それぞれの深さ方向が側面視状態でV字の一部をなすように、それぞれ軸心Hcに対し傾斜して開設されている。また、凹部53,54,55,56内において、軸心Hc方向に対向する内面53a,54a,55a,56aはそれぞれ互いに平行をなすとともに、上面視状態及び底面視状態においてそれぞれV字の一部をなすような状態で開設され、凹部53,54,55,56はそれぞれ軸心Hc方向に対し「ねじれの位置」をなす方向に貫通している。
【0025】
フレーム材Iは、図10(a)〜(c)に示すように、軸心Ic方向に離れた端部寄りの二ヶ所において、外周の一部をなす上面61及び底面62にそれぞれ開口する二対の凹部63,64,65,66が形成されている。図10(b)に示すように、凹部63,64,65,66は、それぞれの深さ方向が側面視状態でV字の一部をなすように、それぞれ軸心Icに対し傾斜して開設されている。また、凹部63,64内において軸心Ic方向に対向する内面63a,64aはそれぞれ互いに平行をなし、凹部65,66内において軸心Ic方向に対向する内面65a,66aはそれぞれ互いに平行をなしている。
【0026】
フレーム材Jは、図11(b),(c)に示すように、軸心Jc方向に離れた端部寄りの二ヶ所において、外周の一部をなす底面72に開口する一対の凹部73,74が形成され、図11(a),(b)に示すように、底面72の反対側に位置する上面71は平面状をなしている。図11(b)に示すように、凹部73,74は、それぞれの深さ方向が側面視状態でV字の一部をなすようにそれぞれ軸心Jcに対し傾斜して開設されている。また、凹部73,74内において、軸心Jc方向に対向する内面73a,74aはそれぞれ軸心Jc方向に突出した楔形状をなしている。
【0027】
図1に示す多角形網状の立体構造物1は、前述した7種類のフレーム材A,B,C,G,H,I,Jのうちのいずれか3本、例えば、図4に示す3本のフレーム材B,G,Jの凹部23,44,46,74を互いに嵌合連結し、図2,図3に示すような嵌合連結部2を形成していくことによって構築されている。図2,図3に示す嵌合連結部2は、1本のフレーム材Gの端部を2本のフレーム材J,Bの端部で挟むようにして形成されている。具体的には、フレーム材Gの上面41の凹部44とフレーム材Jの下面72の凹部74と嵌合させ、フレーム材Gの下面42の凹部46とフレーム材Bの上面22の凹部23とを嵌合させることによって嵌合連結部2が形成されている。
【0028】
嵌合連結部2以外の嵌合連結部の構造も同様、軸心方向の両端部寄りの上面及び底面にそれぞれ開口する二対の凹部を有するフレーム材G,H,Iのうちの1本のフレーム材の凹部に、他のフレーム材A,B,C,Jのうちの2本のフレーム材の凹部を嵌合連結させることによって形成されている。図2に示す嵌合連結部2において、フレーム材B,J同士の角度2αは120度であり、フレーム材B,G同士の角度2βは108度であり、フレーム材G,J同士の角度2γは120度であり、これらの角度(内角)2α,2β,2γの和は348度である。
【0029】
なお、立体構造物1において、フレーム材G,H,Iのうちの1本のフレーム材の凹部に、他のフレーム材A,B,C,Jのうちの2本のフレーム材の凹部を嵌合させることによって形成される嵌合連結部では、隣り合う2本のフレーム材同士のなす角度は、立体構造物1全体のサイズ、フレーム材A,B,C,G,H,I,Jの軸心方向の長さ、及び、前記嵌合連結部が多角形網状の六角形若しくは五角形のどの位置をなしているかによって異なるが、嵌合連結部において隣り合うフレーム材同士の成す角度(内角)の和は全て300度より大であって360度より小である。なお、立体構造物1において、3種類のフレーム材G,H,Iのうちの1本のフレーム材に、他の4種類のフレーム材A,B,C,Jのうちの2本のフレーム材を嵌合して形成される嵌合連結部の形態は、前述した嵌合連結部2と合わせて7種類ある。なお、前記7種類には、立体構造物1が基礎地盤と接する部分の嵌合連結部は含まれない。
【0030】
図1に示すように、多面体形状の立体構造物1は、7種類のフレーム材A,B,C,G,H,I,Jを、これらのフレーム材A,B,C,G,H,I,Jに設けられた凹部同士を嵌合させて連結することによって構築することができる。複数のフレーム材A,B,C,G,H,I,Jは接合具や連結具などを用いることなく嵌合連結されているので、少種類の資材によって容易に立体構造物1を構築することができる。
【0031】
ここで、立体構造物1を構成する嵌合連結部2などは、全て、フレーム材A,B,C,G,H,I,Jのうちのいずれか1本のフレーム材の外周に形成された複数の凹部に、他の2本のフレーム材の外周に形成された凹部を嵌合させることによって形成されているため、3本のフレーム材を互いにズレないように連結することができ、連結作業の煩雑化を回避することができる。なお、フレーム材A,B,C,G,H,I,Jで囲まれた六角形若しくは五角形の領域を閉塞する手段は特に限定しないので、これらの領域に合致する六角形若しくは五角形の板材を嵌め込んだ構造、あるいは、立体構造物1の外側をシート材やフィルム材などで覆った構造などを採用することができる。
【0032】
ここで、図12に基づいて、その他の嵌合連結部3について説明する。図12に示す嵌合連結部3においては、互いに嵌合連結された3本のフレーム材B,G,Jを連続的に貫通する貫通孔4を開設し、この貫通孔4に挿通したボルト5にナット6が螺着される。このように、フレーム材B,G,Jを連続的に貫通する補強材として、ボルト5及びナット6を用いれば、嵌合連結部3を形成する3本のフレーム材B,G,Jの相対位置が変化したり、フレーム材B,G,Jが分離したりするのを防止することができるので、嵌合連結部3の連結強度を向上させることができる。なお、これ以外の補強手段として、例えば、梱包用バンド、ロープなどの紐状材あるいは接着剤などを採用することもできる。
【0033】
また、立体構造物1においては、フレーム材A,B,C,G,H,I,Jを木材で形成しているため、森林資源の有効活用を図ることができる。この場合、フレーム材A,B,C,G,H,I,Jは、間伐材などを用いて形成することもできる。また、フレーム材A,B,C,G,H,I,Jを、木材加工場などでプレカットして施工現場に搬入するようにすれば、組み立て作業の効率化、迅速化を図ることができる。
【0034】
そのほか、立体構造物1は以下のような長所を有している。
(1)立体構造物1全体の大きさと対比すると個々のフレーム材A,B,C,G,H,I,Jが小さいので、大型の立体構造物を組み立てる場合、クレーンなどの建設機材の使用を抑制することができる。
(2)立体構造物1は、その上部荷重を直立した柱状部材で支持する構造ではなく、荷重を分散して支持する構造であるため、応力集中による弊害を回避することができる。
(3)フレーム材A,B,C,G,H,I,Jの嵌合連結部2の補強手段として接着剤を使用しなければ、組み立てだけでなく、解体も容易である。
【0035】
次に、図13〜図17に基づいて、本発明の第2実施形態である立体構造物7について説明する。図13に示す立体構造物7は、図15,図16,図17に示す3種類のフレーム材X,Y,Zを、図14に示す嵌合連結部8などを介して互いに嵌合連結して形成した多角形網状の構造体である。アーチ形状の立体構造物7を構成する嵌合連結部8などは、全て、3種類のフレーム材X,Y,Zを3本組み合わせることによって形成され、これらのフレーム材X,Y,Zで囲まれた領域は全て六角形をなしている。
【0036】
図13に示すように、アーチ形状(所謂、蒲鉾形状)をした立体構造物7の長手方向7cと平行方向にフレーム材Xが配置され、これと交差する方向にフレーム材Y,Zが配置されている。図14に示す嵌合連結部8において、フレーム材X,Y同士の角度8αは123.5度であり、フレーム材X,Z同士の角度8βは123.5度であり、フレーム材Y,Z同士の角度8γは110.3度であり、これらの角度(内角)8α,8β,8γの和は357.3度である。また、その他の嵌合連結部においても、隣り合うフレーム材同士の成す角度(内角)の和は全て300度より大であって360度より小である。
【0037】
フレーム材Xは、図15(a)〜(c)に示すように、軸心Xc方向に離れた端部寄りの二ヶ所において、外周の一部をなす上面81及び底面82にそれぞれ開口する二対の凹部83,84,85,86が形成されている。図15(b)に示すように、凹部83,85は、側面視状態で、それぞれの深さ方向が軸心Xcに対し傾斜して開設され、凹部84,86は、それぞれの深さ方向が側面視状態で軸心Xcに対し直角をなすように開設されている。また、凹部83,84,85,86内において、軸心Xc方向に対向する内面83a,84a,85a,86aはそれぞれ互いに平行をなすとともに、上面視状態及び底面視状態においてそれぞれV字の一部をなすような状態で開設され、凹部83,84,85,86の貫通方向はそれぞれ軸心Xc方向に対し「ねじれの位置」をなしている。
【0038】
フレーム材Yは、図16(a)〜(c)に示すように、軸心Yc方向に離れた一方の端部寄りの部分に、外周の一部をなす上面91に開口する凹部93が形成され、他方の端部寄りの部分に、外周の一部をなす底面92に開口する凹部94が形成されている。図16(b)に示すように、凹部93,94は軸心Ycを挟んで互いに反対方向に開口し、側面視状態で、凹部93,94の深さ方向がV字の一部をなすように、それぞれ軸心Ycに対し傾斜して開設されている。また、凹部93,94内において、軸心Yc方向に対向する内面93a,94aはそれぞれ軸心Yc方向に突出した楔形状をなしている。
【0039】
フレーム材Zは、図17(a)〜(c)に示すように、軸心Zc方向に離れた一方の端部寄りの部分に、その外周の一部をなす上面101に開口する凹部103が形成され、他方の端部寄りの部分に、外周の一部をなす底面102に開口する凹部104が形成されている。図17(b)に示すように、凹部103,104は軸心Zcを挟んで互いに反対方向に開口しているが、側面視状態で、凹部103,104の深さ方向がV字の一部をなすようにそれぞれ軸心Zcに対し傾斜して開設されている。また、凹部103,104内において、軸心Zc方向に対向する内面103a,104aはそれぞれ軸心Zc方向に突出した楔形状をなしている。
【0040】
図13に示すように、多面体形状の立体構造物7は、3種類のフレーム材X,Y,Zを、これらのフレーム材X,Y,Zに設けられた凹部同士を嵌合させて連結することによって構築することができる。3種類のフレーム材X,Y,Zは接合具や連結具などを用いることなく嵌合連結されており、図1に示す立体構造物1よりも少種類の資材(フレーム材X,Y,Z)によって容易に立体構造物7を構築することができる。
【0041】
立体構造物7を構成する嵌合連結部8などは、全て、フレーム材X,Y,Zの外周に形成された凹部同士を嵌合させることによって形成されているため、3本のフレーム材X,Y,Zを互いにズレないように連結することができ、連結作業の煩雑化を回避することができる。なお、フレーム材X,Y,Zで囲まれた六角形の領域を閉塞する手段は特に限定しないので、前述と同様、これらの領域に合致する六角形の板材を嵌め込んだ構造、あるいは、立体構造物7の外側をシート材やフィルム材などで覆った構造などを採用することができる。
【0042】
そのほか、立体構造物7は以下のような長所を有する。
(1)立体構造物7は比較的短時間で構築することが可能であり、解体も容易である。
(2)立体構造物7全体の大きさと対比すると、個々のフレーム材X,Y,Zが小さいので、大型の立体構造部を組み立てる場合、クレーンなどの建設機材の使用を抑制することができる。
(3)荷重を分散する構造であり、加えて、図12に示すような補強手段を講じれば剛性(変形し難さ)と靭性(粘り強さ)とを併せ持った構造となるので、倒壊し難い。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の立体構造物は、簡易建築物、仮設建築物、娯楽用建築物あるいはペットハウスなどとして広く利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1,7 立体構造物
2,3,8 嵌合連結部
2α,2β,2γ,8α,8β,8γ 角度
4 貫通孔
5 ボルト
6 ナット
11,21,31,41,51,61,71,81,91,101 上面
12,22,32,42,52,62,72,82,92,102 底面
13,14,23,24,33,34,43,44,45,46,53,54,55,56,63,64,65,66,73,74,83,84,85,86,93,94,103,104 凹部
13a,14a,23a,24a,33a,34a,43a,44a,45a,46a,53a,54a,55a,56a,63a,64a,65a,66a,73a,74a,83a,84a,85a,86a,93a,94a,103a,104a 内面
A,B,C,G,H,I,J,X,Y,Z フレーム材
Ac,Bc,Cc,Gc,Hc,Ic,Jc,Xc,Yc,Zc 軸心
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のフレーム材同士を互いに嵌合連結することによって構築する多角形網状の立体構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
丸太や角材などの木材あるいは金属材などを稜線部に配置して互いに接合することによって多面体状の立体構造物を構築する技術については、従来、様々なアイディアが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0003】
特許文献1記載の立体構造物(多面体)は、複数の辺体を連設して形成された多角形状の枠体を互いに接合することによって構築されている。また、特許文献2記載の立体構造物(骨組構造体)は、金属製の棒体と木材とを張り合わせて形成されたフレーム本体を互いに接合することによって構築されている。一方、特許文献3記載の立体構造物(組子飾り)は、一片に2ヶ所の係合部を形成した数種の組子片を、各係合部に120度間隔で3つずつ組み合わせていくことによって形成された正六角形組子をさらに湾曲させて形成した球面状正六角形組子を互いに連結して構築されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−280488号公報
【特許文献2】特開2002−167902号公報
【特許文献3】特開2003−11596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の立体構造物(多面体)は、複数の辺体を連設して多角形状の枠体を形成し、さらに複数の枠体をその辺体同士を接合させて構築するまでに多大な労力と時間が必要である。また、多角形状の枠体の製作及び枠体同士の接合には高精度の材料加工技術が必要であるため、容易に構築することができない。また、枠体を製作する際の補強部材や枠体同士を接合する接着剤などの資材が必要である。
【0006】
特許文献2記載の立体構造物(骨組構造体)は、基本となるフレーム部材を金属製の棒体と木材とを張り合わせて製作しなければならないので、互いに異なる2種類の素材を必要とするだけでなく、製作にも手間を要する。また、複数のフレーム部材同士はボルトで連結する方式であるため、連結作業が面倒である。
【0007】
特許文献3記載の立体構造物(組子飾り)は、複数の組子片を組み合わせ、湾曲加工を施すことによって球面状正六角形組子を製作するまでに多大な労力と時間を要する。また、特許文献3記載された技術は、比較的小さな立体構造物の構築技術としては好適であるが、仮設住宅やペットハウスなどの大きな立体構造物には不向きである。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、少種類の資材によって容易に構築することができる立体構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の立体構造物は、外周面に開口する凹部を有する複数のフレーム材を、前記凹部同士を互いに嵌合連結して形成された多角形網状の立体構造物であって、前記フレーム材の嵌合連結部が3本の前記フレーム材で形成され、且つ、前記嵌合連結部において隣り合う前記フレーム材同士の成す角度(内角)の和が300度より大であって360度より小であることを特徴とする。
【0010】
このような構成とすれば、複数のフレーム材を、当該フレーム材に設けられた凹部同士を嵌合させて連結することによってアーチ形状若しくは多面体形状の立体構造物を構築することができる。複数のフレーム材は接合具や連結具などを用いることなく連結することができるので、少種類の資材によって容易に構築することができる。
【0011】
ここで、前記嵌合連結部は、1本の前記フレーム材の外周に形成された複数の凹部に、他の2本の前記フレーム材の外周に形成された凹部を嵌合させて形成されることが望ましい。
【0012】
このような構成とすれば、3本のフレーム材を互いにズレないように嵌合連結することができ、連結作業の煩雑化を回避することができる。
【0013】
この場合、前記嵌合連結部に、3本の前記フレーム材を連続的に貫通する補強材を設けることもできる。
【0014】
このような構成とすれば、嵌合連結部を形成する3本のフレーム材の相対位置が変化したり、フレーム材が分離したりするのを防止することができるので、嵌合連結部の連結強度の向上に有効である。
【0015】
また、前記フレーム材として木材を使用すれば、森林資源の有効活用を図ることができる。この場合、前記フレーム材は、間伐材などを用いて形成することもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、少種類の資材によって容易に構築することができる立体構造物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第一実施形態である立体構造物を一部省略した状態で示す斜視図である。
【図2】図1に示す立体構造物の一部を成す嵌合連結部の斜視図である。
【図3】図2における矢線W方向から見た図である。
【図4】図2に示す嵌合連結部の分解斜視図である。
【図5】(a)は図1に示す立体構造物を構成するフレーム材の上面図、(b)は前記フレーム材の側面図、(c)は前記フレーム材の底面図である。
【図6】(a)は図1に示す立体構造物を構成するフレーム材の上面図、(b)は前記フレーム材の側面図、(c)は前記フレーム材の底面図である。
【図7】(a)は図1に示す立体構造物を構成するフレーム材の上面図、(b)は前記フレーム材の側面図、(c)は前記フレーム材の底面図である。
【図8】(a)は図1に示す立体構造物を構成するフレーム材の上面図、(b)は前記フレーム材の側面図、(c)は前記フレーム材の底面図である。
【図9】(a)は図1に示す立体構造物を構成するフレーム材の上面図、(b)は前記フレーム材の側面図、(c)は前記フレーム材の底面図である。
【図10】(a)は図1に示す立体構造物を構成するフレーム材の上面図、(b)は前記フレーム材の側面図、(c)は前記フレーム材の底面図である。
【図11】(a)は図1に示す立体構造物を構成するフレーム材の上面図、(b)は前記フレーム材の側面図、(c)は前記フレーム材の底面図である。
【図12】嵌合連結部に関するその他の実施形態を示す一部分解斜視図である。
【図13】本発明の第二実施形態である立体構造物を一部省略した状態で示す斜視図である。
【図14】図13に示す立体構造物の一部を成す嵌合連結部の斜視図である。
【図15】(a)は図13に示す立体構造物を構成するフレーム材の上面図、(b)は前記フレーム材の側面図、(c)は前記フレーム材の底面図である。
【図16】(a)は図13に示す立体構造物を構成するフレーム材の上面図、(b)は前記フレーム材の側面図、(c)は前記フレーム材の底面図である。
【図17】(a)は図13に示す立体構造物を構成するフレーム材の上面図、(b)は前記フレーム材の側面図、(c)は前記フレーム材の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1〜図11に基づいて、本発明の第1実施形態である立体構造物1について説明する。図1に示すように、立体構造物1は、図5〜図11に示す7種類のフレーム材A,B,C,G,H,I,Jを、図2に示す嵌合連結部2などを介して互いに嵌合連結して形成した多角形網状の構造体である。立体構造物1を構成する嵌合連結部2などは、全て、7種類のフレーム材A,B,C,G,H,I,Jのうちのいずれか3本の組み合わせによって形成され、これらのフレーム材A,B,C,G,H,I,Jで囲まれた領域は六角形若しくは五角形をなしている。
【0019】
ここで、図5〜図11を参照し、立体構造物1を構成するフレーム材A,B,C,G,H,I,Jについて説明する。なお、フレーム材A,B,C,G,H,I,Jはそれぞれ横断面が長方形で、幅、厚さ及び長さが略同等な木材板で形成されているが、これに限定するものではない。
【0020】
フレーム材Aは、図5(b),(c)に示すように、軸心Ac方向に離れた端部寄りの二ヶ所において、外周の一部をなす底面12に開口する一対の凹部13,14が形成され、図5(a),(b)に示すように、軸心Acを挟んで底面12の反対側に位置する上面11は凹部のない平面状をなしている。図5(b)に示すように、凹部13,14の深さ方向は、側面視状態でV字の一部をなすように、それぞれ軸心Acに対し傾斜して開設されている。また、凹部13,14内において、軸心Ac方向に対向する内面13a,14aはそれぞれ軸心Ac方向に突出した楔形状をなしている。
【0021】
フレーム材Bは、図6(b),(c)に示すように、軸心Bc方向に離れた端部寄りの二ヶ所において、外周の一部をなす底面22に開口する一対の凹部23,24が形成され、図6(a),(b)に示すように、軸心Bcを挟んで底面22の反対側に位置する上面21は凹部のない平面状をなしている。図6(b)に示すように、凹部23,24の深さ方向は、側面視状態でハ字の一部をなすように、それぞれ軸心Bcに対し傾斜して開設されている。また、凹部23,24内において、軸心Bc方向に対向する内面23a,24aはそれぞれ軸心Bc方向に突出した楔形状をなしている。
【0022】
フレーム材Cは、図7(a)〜(c)に示すように、軸心Cc方向に離れた一方の端部寄りの部分に、外周の一部をなす上面31に開口する凹部33が形成され、他方の端部寄りの部分に、外周の一部をなす底面32に開口する凹部34が形成されている。図7(b)に示すように、凹部33,34は軸心Ccを挟んで互いに反対方向に開口し、凹部33,34の深さ方向は、側面視状態でハ字の一部をなすように、それぞれ軸心Ccに対し傾斜して開設されている。また、凹部33,34内において、軸心Cc方向に対向する内面33a,34aはそれぞれ軸心Cc方向に突出した楔形状をなしている。
【0023】
フレーム材Gは、図8(a)〜(c)に示すように、軸心Gc方向に離れた端部寄りの二ヶ所において、外周の一部をなす上面41及び底面42にそれぞれ開口する二対の凹部43,44,45,46が形成されている。図8(b)に示すように、凹部43,44,45,46は、それぞれの深さ方向が側面視状態でV字の一部をなすように、それぞれ軸心Gcに対し傾斜して開設されている。また、凹部43,44,45,46内において、軸心Gc方向に対向する内面43a,44a,45a,46aはそれぞれ互いに平行をなすとともに、上面視状態及び底面視状態においてそれぞれV字の一部をなすような状態で開設され、凹部43,44,45,46の貫通方向はそれぞれ軸心Gc方向に対し「ねじれの位置」をなしている。なお、「ねじれの位置」とは、空間内の2本の直線が平行でなく、かつ、交わっていないとき、つまり2本の直線が同一平面に無いときの、2直線の位置関係のことをいう。
【0024】
フレーム材Hは、図9(a)〜(c)に示すように、軸心Hc方向に離れた端部寄りの二ヶ所において、外周の一部をなす上面51及び底面52にそれぞれ開口する二対の凹部53,54,55,56が形成されている。図9(b)に示すように、凹部53,54,55,56は、それぞれの深さ方向が側面視状態でV字の一部をなすように、それぞれ軸心Hcに対し傾斜して開設されている。また、凹部53,54,55,56内において、軸心Hc方向に対向する内面53a,54a,55a,56aはそれぞれ互いに平行をなすとともに、上面視状態及び底面視状態においてそれぞれV字の一部をなすような状態で開設され、凹部53,54,55,56はそれぞれ軸心Hc方向に対し「ねじれの位置」をなす方向に貫通している。
【0025】
フレーム材Iは、図10(a)〜(c)に示すように、軸心Ic方向に離れた端部寄りの二ヶ所において、外周の一部をなす上面61及び底面62にそれぞれ開口する二対の凹部63,64,65,66が形成されている。図10(b)に示すように、凹部63,64,65,66は、それぞれの深さ方向が側面視状態でV字の一部をなすように、それぞれ軸心Icに対し傾斜して開設されている。また、凹部63,64内において軸心Ic方向に対向する内面63a,64aはそれぞれ互いに平行をなし、凹部65,66内において軸心Ic方向に対向する内面65a,66aはそれぞれ互いに平行をなしている。
【0026】
フレーム材Jは、図11(b),(c)に示すように、軸心Jc方向に離れた端部寄りの二ヶ所において、外周の一部をなす底面72に開口する一対の凹部73,74が形成され、図11(a),(b)に示すように、底面72の反対側に位置する上面71は平面状をなしている。図11(b)に示すように、凹部73,74は、それぞれの深さ方向が側面視状態でV字の一部をなすようにそれぞれ軸心Jcに対し傾斜して開設されている。また、凹部73,74内において、軸心Jc方向に対向する内面73a,74aはそれぞれ軸心Jc方向に突出した楔形状をなしている。
【0027】
図1に示す多角形網状の立体構造物1は、前述した7種類のフレーム材A,B,C,G,H,I,Jのうちのいずれか3本、例えば、図4に示す3本のフレーム材B,G,Jの凹部23,44,46,74を互いに嵌合連結し、図2,図3に示すような嵌合連結部2を形成していくことによって構築されている。図2,図3に示す嵌合連結部2は、1本のフレーム材Gの端部を2本のフレーム材J,Bの端部で挟むようにして形成されている。具体的には、フレーム材Gの上面41の凹部44とフレーム材Jの下面72の凹部74と嵌合させ、フレーム材Gの下面42の凹部46とフレーム材Bの上面22の凹部23とを嵌合させることによって嵌合連結部2が形成されている。
【0028】
嵌合連結部2以外の嵌合連結部の構造も同様、軸心方向の両端部寄りの上面及び底面にそれぞれ開口する二対の凹部を有するフレーム材G,H,Iのうちの1本のフレーム材の凹部に、他のフレーム材A,B,C,Jのうちの2本のフレーム材の凹部を嵌合連結させることによって形成されている。図2に示す嵌合連結部2において、フレーム材B,J同士の角度2αは120度であり、フレーム材B,G同士の角度2βは108度であり、フレーム材G,J同士の角度2γは120度であり、これらの角度(内角)2α,2β,2γの和は348度である。
【0029】
なお、立体構造物1において、フレーム材G,H,Iのうちの1本のフレーム材の凹部に、他のフレーム材A,B,C,Jのうちの2本のフレーム材の凹部を嵌合させることによって形成される嵌合連結部では、隣り合う2本のフレーム材同士のなす角度は、立体構造物1全体のサイズ、フレーム材A,B,C,G,H,I,Jの軸心方向の長さ、及び、前記嵌合連結部が多角形網状の六角形若しくは五角形のどの位置をなしているかによって異なるが、嵌合連結部において隣り合うフレーム材同士の成す角度(内角)の和は全て300度より大であって360度より小である。なお、立体構造物1において、3種類のフレーム材G,H,Iのうちの1本のフレーム材に、他の4種類のフレーム材A,B,C,Jのうちの2本のフレーム材を嵌合して形成される嵌合連結部の形態は、前述した嵌合連結部2と合わせて7種類ある。なお、前記7種類には、立体構造物1が基礎地盤と接する部分の嵌合連結部は含まれない。
【0030】
図1に示すように、多面体形状の立体構造物1は、7種類のフレーム材A,B,C,G,H,I,Jを、これらのフレーム材A,B,C,G,H,I,Jに設けられた凹部同士を嵌合させて連結することによって構築することができる。複数のフレーム材A,B,C,G,H,I,Jは接合具や連結具などを用いることなく嵌合連結されているので、少種類の資材によって容易に立体構造物1を構築することができる。
【0031】
ここで、立体構造物1を構成する嵌合連結部2などは、全て、フレーム材A,B,C,G,H,I,Jのうちのいずれか1本のフレーム材の外周に形成された複数の凹部に、他の2本のフレーム材の外周に形成された凹部を嵌合させることによって形成されているため、3本のフレーム材を互いにズレないように連結することができ、連結作業の煩雑化を回避することができる。なお、フレーム材A,B,C,G,H,I,Jで囲まれた六角形若しくは五角形の領域を閉塞する手段は特に限定しないので、これらの領域に合致する六角形若しくは五角形の板材を嵌め込んだ構造、あるいは、立体構造物1の外側をシート材やフィルム材などで覆った構造などを採用することができる。
【0032】
ここで、図12に基づいて、その他の嵌合連結部3について説明する。図12に示す嵌合連結部3においては、互いに嵌合連結された3本のフレーム材B,G,Jを連続的に貫通する貫通孔4を開設し、この貫通孔4に挿通したボルト5にナット6が螺着される。このように、フレーム材B,G,Jを連続的に貫通する補強材として、ボルト5及びナット6を用いれば、嵌合連結部3を形成する3本のフレーム材B,G,Jの相対位置が変化したり、フレーム材B,G,Jが分離したりするのを防止することができるので、嵌合連結部3の連結強度を向上させることができる。なお、これ以外の補強手段として、例えば、梱包用バンド、ロープなどの紐状材あるいは接着剤などを採用することもできる。
【0033】
また、立体構造物1においては、フレーム材A,B,C,G,H,I,Jを木材で形成しているため、森林資源の有効活用を図ることができる。この場合、フレーム材A,B,C,G,H,I,Jは、間伐材などを用いて形成することもできる。また、フレーム材A,B,C,G,H,I,Jを、木材加工場などでプレカットして施工現場に搬入するようにすれば、組み立て作業の効率化、迅速化を図ることができる。
【0034】
そのほか、立体構造物1は以下のような長所を有している。
(1)立体構造物1全体の大きさと対比すると個々のフレーム材A,B,C,G,H,I,Jが小さいので、大型の立体構造物を組み立てる場合、クレーンなどの建設機材の使用を抑制することができる。
(2)立体構造物1は、その上部荷重を直立した柱状部材で支持する構造ではなく、荷重を分散して支持する構造であるため、応力集中による弊害を回避することができる。
(3)フレーム材A,B,C,G,H,I,Jの嵌合連結部2の補強手段として接着剤を使用しなければ、組み立てだけでなく、解体も容易である。
【0035】
次に、図13〜図17に基づいて、本発明の第2実施形態である立体構造物7について説明する。図13に示す立体構造物7は、図15,図16,図17に示す3種類のフレーム材X,Y,Zを、図14に示す嵌合連結部8などを介して互いに嵌合連結して形成した多角形網状の構造体である。アーチ形状の立体構造物7を構成する嵌合連結部8などは、全て、3種類のフレーム材X,Y,Zを3本組み合わせることによって形成され、これらのフレーム材X,Y,Zで囲まれた領域は全て六角形をなしている。
【0036】
図13に示すように、アーチ形状(所謂、蒲鉾形状)をした立体構造物7の長手方向7cと平行方向にフレーム材Xが配置され、これと交差する方向にフレーム材Y,Zが配置されている。図14に示す嵌合連結部8において、フレーム材X,Y同士の角度8αは123.5度であり、フレーム材X,Z同士の角度8βは123.5度であり、フレーム材Y,Z同士の角度8γは110.3度であり、これらの角度(内角)8α,8β,8γの和は357.3度である。また、その他の嵌合連結部においても、隣り合うフレーム材同士の成す角度(内角)の和は全て300度より大であって360度より小である。
【0037】
フレーム材Xは、図15(a)〜(c)に示すように、軸心Xc方向に離れた端部寄りの二ヶ所において、外周の一部をなす上面81及び底面82にそれぞれ開口する二対の凹部83,84,85,86が形成されている。図15(b)に示すように、凹部83,85は、側面視状態で、それぞれの深さ方向が軸心Xcに対し傾斜して開設され、凹部84,86は、それぞれの深さ方向が側面視状態で軸心Xcに対し直角をなすように開設されている。また、凹部83,84,85,86内において、軸心Xc方向に対向する内面83a,84a,85a,86aはそれぞれ互いに平行をなすとともに、上面視状態及び底面視状態においてそれぞれV字の一部をなすような状態で開設され、凹部83,84,85,86の貫通方向はそれぞれ軸心Xc方向に対し「ねじれの位置」をなしている。
【0038】
フレーム材Yは、図16(a)〜(c)に示すように、軸心Yc方向に離れた一方の端部寄りの部分に、外周の一部をなす上面91に開口する凹部93が形成され、他方の端部寄りの部分に、外周の一部をなす底面92に開口する凹部94が形成されている。図16(b)に示すように、凹部93,94は軸心Ycを挟んで互いに反対方向に開口し、側面視状態で、凹部93,94の深さ方向がV字の一部をなすように、それぞれ軸心Ycに対し傾斜して開設されている。また、凹部93,94内において、軸心Yc方向に対向する内面93a,94aはそれぞれ軸心Yc方向に突出した楔形状をなしている。
【0039】
フレーム材Zは、図17(a)〜(c)に示すように、軸心Zc方向に離れた一方の端部寄りの部分に、その外周の一部をなす上面101に開口する凹部103が形成され、他方の端部寄りの部分に、外周の一部をなす底面102に開口する凹部104が形成されている。図17(b)に示すように、凹部103,104は軸心Zcを挟んで互いに反対方向に開口しているが、側面視状態で、凹部103,104の深さ方向がV字の一部をなすようにそれぞれ軸心Zcに対し傾斜して開設されている。また、凹部103,104内において、軸心Zc方向に対向する内面103a,104aはそれぞれ軸心Zc方向に突出した楔形状をなしている。
【0040】
図13に示すように、多面体形状の立体構造物7は、3種類のフレーム材X,Y,Zを、これらのフレーム材X,Y,Zに設けられた凹部同士を嵌合させて連結することによって構築することができる。3種類のフレーム材X,Y,Zは接合具や連結具などを用いることなく嵌合連結されており、図1に示す立体構造物1よりも少種類の資材(フレーム材X,Y,Z)によって容易に立体構造物7を構築することができる。
【0041】
立体構造物7を構成する嵌合連結部8などは、全て、フレーム材X,Y,Zの外周に形成された凹部同士を嵌合させることによって形成されているため、3本のフレーム材X,Y,Zを互いにズレないように連結することができ、連結作業の煩雑化を回避することができる。なお、フレーム材X,Y,Zで囲まれた六角形の領域を閉塞する手段は特に限定しないので、前述と同様、これらの領域に合致する六角形の板材を嵌め込んだ構造、あるいは、立体構造物7の外側をシート材やフィルム材などで覆った構造などを採用することができる。
【0042】
そのほか、立体構造物7は以下のような長所を有する。
(1)立体構造物7は比較的短時間で構築することが可能であり、解体も容易である。
(2)立体構造物7全体の大きさと対比すると、個々のフレーム材X,Y,Zが小さいので、大型の立体構造部を組み立てる場合、クレーンなどの建設機材の使用を抑制することができる。
(3)荷重を分散する構造であり、加えて、図12に示すような補強手段を講じれば剛性(変形し難さ)と靭性(粘り強さ)とを併せ持った構造となるので、倒壊し難い。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の立体構造物は、簡易建築物、仮設建築物、娯楽用建築物あるいはペットハウスなどとして広く利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1,7 立体構造物
2,3,8 嵌合連結部
2α,2β,2γ,8α,8β,8γ 角度
4 貫通孔
5 ボルト
6 ナット
11,21,31,41,51,61,71,81,91,101 上面
12,22,32,42,52,62,72,82,92,102 底面
13,14,23,24,33,34,43,44,45,46,53,54,55,56,63,64,65,66,73,74,83,84,85,86,93,94,103,104 凹部
13a,14a,23a,24a,33a,34a,43a,44a,45a,46a,53a,54a,55a,56a,63a,64a,65a,66a,73a,74a,83a,84a,85a,86a,93a,94a,103a,104a 内面
A,B,C,G,H,I,J,X,Y,Z フレーム材
Ac,Bc,Cc,Gc,Hc,Ic,Jc,Xc,Yc,Zc 軸心
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心方向に離れた二ヶ所にそれぞれ外周に開口する一対若しくは二対の凹部を有する複数のフレーム材を、前記凹部同士を互いに嵌合連結して形成された多角形網状の立体構造物であって、前記フレーム材の嵌合連結部が3本の前記フレーム材で形成され、且つ、前記嵌合連結部において隣り合う前記フレーム材同士の成す角度(内角)の和が300度より大であって360度より小であることを特徴とする立体構造物。
【請求項2】
前記嵌合連結部が、1本の前記フレーム材の外周に形成された複数の凹部に、他の2本の前記フレーム材の外周に形成された凹部をそれぞれ嵌合させて形成された請求項1記載の立体構造物。
【請求項3】
前記嵌合連結部に、3本の前記フレーム材を連続的に貫通する補強材を設けた請求項1または2記載の立体構造物。
【請求項4】
前記フレーム材として木材を使用した請求項1〜3のいずれかに記載の立体構造物。
【請求項1】
軸心方向に離れた二ヶ所にそれぞれ外周に開口する一対若しくは二対の凹部を有する複数のフレーム材を、前記凹部同士を互いに嵌合連結して形成された多角形網状の立体構造物であって、前記フレーム材の嵌合連結部が3本の前記フレーム材で形成され、且つ、前記嵌合連結部において隣り合う前記フレーム材同士の成す角度(内角)の和が300度より大であって360度より小であることを特徴とする立体構造物。
【請求項2】
前記嵌合連結部が、1本の前記フレーム材の外周に形成された複数の凹部に、他の2本の前記フレーム材の外周に形成された凹部をそれぞれ嵌合させて形成された請求項1記載の立体構造物。
【請求項3】
前記嵌合連結部に、3本の前記フレーム材を連続的に貫通する補強材を設けた請求項1または2記載の立体構造物。
【請求項4】
前記フレーム材として木材を使用した請求項1〜3のいずれかに記載の立体構造物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−246630(P2012−246630A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117289(P2011−117289)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(511127461)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(511127461)
【Fターム(参考)】
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