説明

立設ポール

【構成】 立設ポール10は、合成樹脂製のポール本体12を含み、たとえば船舶係留用ポールや澪木として用いられる。ポール本体12は、下端開口の中空筒状に形成され、ポール本体12の下端部外面には、ねじ込み推進力を生じさせる合成樹脂製のブレード30が突設される。また、ポール本体12の設置後に水面上となる位置には、ポール本体12の内部空間を介して下端開口14と連通する排気口42が形成される。
【効果】 立設ポールを水中に沈める際に、下端開口から内部空間に流入する水によって重心が下方に移動するので、立設ポールが垂直状態で安定するようになり、水底への設置作業を容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は立設ポールに関し、特にたとえば、海や湖などに立設されて、船舶の係留や澪木などに利用される、立設ポールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の一例が特許文献1に開示されている。特許文献1の水中穿刺杆装置(立設ポール)は、水底の泥層に下端を穿刺埋没させ上端側を水面上に突出させて立設される杆本体を備える。杆本体の上端には、ハンドル等の回転入力具が接続される回転受部が設けられ、杆本体の下端には、回転入力具による杆本体の回転によって刺進する刺進体(ドリル)が設けられる。このドリルは、ステレンス等の鋼材によって形成され、スパイラル刃を有する螺子軸構造で構成される。しかしながら、特許文献1のドリルは、長さが0.5mと大型のため、鋼材によって形成すると、ドリル自体、延いてはドリルを取り付けた立設ポールが重くなりすぎてしまう。また、特許文献1の杆本体の下部側には、固化セメント等の高比重体が充填されるため、立設ポールの総重量がさらに大きくなってしまう。このため、特許文献1の立設ポールは、手作業での扱いが難しく、設置に手間がかかる。
【0003】
そこで、本出願人らは、特許文献2において、軽量化を実現でき、かつ水底への差し込みに適した立設ポールを提案している。具体的には、特許文献2の立設ポールは、合成樹脂によって形成される円筒状のポール本体、およびポール本体の先端に設けられる合成樹脂製のドリルを備える。このドリルは、長平板を捻った形状を有し、その両側縁は共に外側螺旋を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−336998号公報 [E02B 3/24]
【特許文献2】特開2011−12448号公報 [E02B 3/24]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2の立設ポールでは、軽量化を実現できた。しかし、この立設ポールを垂直状態で水中に沈めようとすると、自重と比較して大きな浮力が働くので、浮力や潮流の影響によって立設ポールが傾き易い。すなわち、立設ポールを垂直に保持しながら、位置決めおよびねじ込み設置することに技量を要する。また、ねじ込みに対する推進力に関しては、さらなる向上が望まれる。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、立設ポールを提供することである。
【0007】
この発明の他の目的は、設置作業を容易に行うことができる、立設ポールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明などは、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、この発明を何ら限定するものではない。
【0009】
第1の発明は、下端部が水底に差し込まれて立設される立設ポールであって、下端開口の中空筒状に形成される合成樹脂製のポール本体、ポール本体の下端部外面に突設される合成樹脂製のブレード、およびポール本体の設置後に水面上となる位置に形成され、ポール本体の内部空間を介して下端開口と連通する排気口を備える、立設ポールである。
【0010】
第1の発明では、立設ポール(10)は、合成樹脂製のポール本体(12)を備え、たとえば、小型船舶(104)などを係留するための船舶係留用ポールや澪木として用いられる。ポール本体は、たとえば硬質ポリ塩化ビニル製の筒状体の外面に対してFRP(繊維強化プラスチック)をライニングすることによって形成され、下端に開口(14)を有する中空筒状に形成される。実施例では、複数の円筒状のポール部材(16,18,20)を連結することによって、ポール本体が形成される。また、ポール本体の下端部外面には、合成樹脂製のブレード(30)が突設される。ブレードは、たとえば2枚刃形状に形成され、回転(ねじ込み)によって下方への推進力を生じさせるものである。また、ポール本体の上部には、設置後に水面上となる位置に、ポール本体の内部空間を介して下端開口と連通する排気口(42)が形成される。
【0011】
このような立設ポールを水底(100)に立設する際には、立設ポールを垂直に立てた状態で水中に沈めていく。すると、下端開口からポール本体内に水が流入し、これに伴い、ポール本体内の空気が排気口から排出される。これにより、立設ポールの重心が下方に移動するので、立設ポールを垂直状態で安定させて沈めることができるようになる。そして、立設ポールの下端が水底に到達した後は、回転治具などを利用して、立設ポールを下方向に押しながら回転させることにより、ブレードによる推進力を生じさせて、水底に立設ポールを差し込む。
【0012】
第1の発明によれば、立設ポールを水中に沈める際には、下端開口からポール本体の内部空間に流入する水によって重心が下方に移動するので、立設ポールが垂直状態で安定し易くなり、浮力や潮流などの影響を受けて傾いてしまうことが防止される。また、ポール本体の下端部外面にブレードを設けたので、適度なねじ込み推進力が生じ、容易に立設ポールを水底に差し込むことができる。したがって、水底への設置作業を容易に行うことができる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明に従属し、ポール本体の上端部に設けられるキャップを備え、排気口は、ポール本体の側壁に形成される。
【0014】
第2の発明では、ポール本体(12)の上端部には、上端開口(38)を封止するキャップ40が取り付けられ、排気口(42)は、ポール本体の側壁に形成される。この際、排気口は、ポール本体の側壁上端部に形成することが好ましい。
【0015】
第2の発明によれば、ポール本体の上端部にキャップを取り付けることによって、ポール本体内への雨水の浸入を防止することができる。ポール本体の内部空間全体が雨水で満たされてしまうと、立設ポール(10)の重心が上に移動して、設置後に転倒し易くなってしまうが、第2の発明によれば、これが防止される。また、ポール本体の上端部にキャップを取り付けることによって、ポール本体内の紫外線劣化が防止される。さらに、排気口をポール本体の側壁上端部に形成することによって、ポール本体にかかる曲げ力の影響が排気口を形成した部分に及ばなくなるので、ポール本体の耐久性が向上する。
【0016】
第3の発明は、第1または第2の発明に従属し、排気口の開口面積は、下端開口の開口面積と同じまたはほぼ同じ大きさに形成される。
【0017】
第3の発明では、排気口(42)の開口面積(複数の排気口を形成している場合は、それらの総開口面積)は、下端開口(14)の開口面積と同じまたはほぼ同じ大きさに形成される。
【0018】
第3の発明によれば、設置時の排気性能を確保することができる。
【0019】
第4の発明は、第1ないし第3のいずれかの発明に従属し、ポール本体の下部に形成され、設置時にロープが挿通されるロープ孔を備える。
【0020】
第4の発明では、ポール本体(12)の下部には、ロープ孔(36)が形成される。ロープ孔は、ポール本体の側壁の対向位置に形成される2つの貫通孔であり、このロープ孔には、立設ポール(10)を垂直状態で水中に沈める際に、ロープ(106)が挿通される。
【0021】
第4の発明によれば、水中に沈める際に立設ポールが傾いてしまった場合でも、ロープ孔に通したロープを利用することによって、立設ポールを容易に垂直状態に戻すことができる。
【0022】
第5の発明は、第1ないし第4の発明のいずれかに従属し、ポール本体の下端部は、先端方向に向かって縮径するテーパ部とテーパ部から延びる径小部とを有し、ブレードは、径小部の外面に設けられる。
【0023】
第5の発明では、ポール本体(12)の下端部は、下端方向に向かうに従い縮径するテーパ部(24)、およびテーパ部から延びる径小部(26)を有する。そして、ブレード(30)は、径小部の外面に設けられる。
【0024】
第5の発明によれば、ブレードの幅(径方向の突出長さ)を大きくとることができるようになる。したがって、設置時においては、回転に対するブレードの推進力が増して、立設ポールの水底への差し込みが容易になる。また、設置後においては、ブレードのアンカ機能が増して、立設ポールの抜けを確実に防止できる。
【0025】
第6の発明は、第5の発明に従属し、ブレードは、外縁がポール本体の水底に差し込まれる部分のうち最も大径の部分の外面より外方にはみ出す大きさに形成される。
【0026】
第6の発明では、ブレード(30)の外縁(32)の径は、ポール本体(12)の地中に差し込まれる部分のうち最も大径の部分(実施例では下部材(16)の外径)よりも大きくされる。
【0027】
第6の発明によれば、掘削時に地盤の戻り(つまり掘削穴の縮み)が生じた場合でも、ポール本体の大径部分が入り込み易い掘削穴を形成できる。
【0028】
第7の発明は、下端部が水底に差し込まれて立設される立設ポールであって、合成樹脂製のポール本体、およびポール本体の下端部外面に突設される合成樹脂製のブレードを備え、ポール本体の下端部は、下端方向に向かって縮径するテーパ部とテーパ部から延びる径小部とを有し、ブレードは、径小部の外面に設けられる、立設ポールである。
【0029】
第7の発明では、立設ポール(10)は、合成樹脂製のポール本体(12)を備え、たとえば、小型船舶(104)などを係留するための船舶係留用ポールや澪木として用いられる。ポール本体は、たとえば、硬質ポリ塩化ビニル製の筒状体の外面に対してFRP(繊維強化プラスチック)をライニングすることによって形成される。また、ポール本体の下端部外面には、合成樹脂製のブレード(30)が突設される。ブレードは、たとえば2枚刃形状に形成され、回転(ねじ込み)によって下方への推進力を生じさせるものである。また、ポール本体の下端部は、下端方向に向かうに従い縮径するテーパ部(24)、およびテーパ部から延びる径小部(26)を有し、この径小部の外面にブレードが設けられる。
【0030】
第7の発明によれば、ブレードの幅(径方向の突出長さ)を大きくとることができるようになる。したがって、設置時においては、回転に対するブレードの推進力が増して、立設ポールの水底への差し込みが容易になる。また、設置後においては、ブレードのアンカ機能が増して、立設ポールの抜けを確実に防止できる。
【0031】
第8の発明は、第7の発明に従属し、ブレードは、外縁がポール本体の水底に差し込まれる部分のうち最も大径の部分の外面より外方にはみ出す大きさに形成される。
【0032】
第8の発明では、ブレード(30)の外縁(32)の径は、ポール本体(12)の地中に差し込まれる部分のうち最も大径の部分(実施例では下部材(16)の外径)よりも大きくされる。
【0033】
第8の発明によれば、掘削時に地盤の戻り(つまり掘削穴の縮み)が生じた場合でも、ポール本体の大径部分が入り込み易い掘削穴を形成できる。
【発明の効果】
【0034】
第1の発明によれば、立設ポールを水中に沈める際には、下端開口からポール本体の内部空間に流入する水によって重心が下方に移動するので、立設ポールが垂直状態で安定し易くなり、浮力や潮流などの影響を受けて傾いてしまうことが防止される。また、ポール本体の下端部外面にブレードを設けたので、適度なねじ込み推進力が生じ、容易に立設ポールを水底に差し込むことができる。したがって、水底への設置作業を容易に行うことができる。
【0035】
第7の発明によれば、ブレードの幅を大きくとることができるようになる。したがって、設置時においては、回転に対するブレードの推進力が増して、立設ポールの水底への差し込みが容易になる。また、設置後においては、ブレードのアンカ機能が増して、立設ポールの抜けを確実に防止できる。
【0036】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の一実施例の立設ポールを船舶係留用ポールとして用いた様子を概略的に示す図解図である。
【図2】この発明の一実施例である立設ポールの外観を示す図解図である。
【図3】図2の立設ポールが備える先端部材を示す斜視図である。
【図4】先端部材を横方向から見た様子を示す図解図である。
【図5】先端部材を下端側から見た様子を示す図解図である
【図6】図2の立設ポールにおける下部材と上部材との接続部分を示す断面図である。
【図7】図2の立設ポールにおける下部材と先端部材との接続部分を示す断面図である。
【図8】図2の立設ポールの上端部を示す断面図である。
【図9】図2の立設ポールの設置方法の一例を説明するための図解図である。
【図10】ロープの使用方法の一例を説明するための図解図であり、(A)は水中に沈める際に立設ポールが傾いてしまった様子を示し、(B)はロープによって立設ポールの傾きが修正された様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1を参照して、この発明の一実施例である立設ポール10は、海、湖、池および河川などの水底100に下端部が差し込まれ、水面102から上端部が突出するように立設されるものである。立設ポール10は、たとえば、マリーナ(船舶の停泊所)等に設置される、小型船舶や漁船などの船104を係留するための船舶係留用ポールとして好適に用いられる。
【0039】
図2に示すように、立設ポール10は、合成樹脂製のポール本体12を備える。ポール本体12は、下端に開口14を有する中空筒状体であって、この実施例では、円筒状に形成される3つのポール部材、すなわち、下部材16、上部材18および先端部材20を連結することによって形成される。ポール部材16,18,20としては、たとえば、硬質ポリ塩化ビニル製の筒状体の外面に対してFRP(繊維強化プラスチック)をライニングしたものを用いるとよい。これにより、耐久性が高くかつ軽量のポール本体12を低コストで製造できる。ただし、FRPライニングは、必ずしも実施する必要はなく、たとえば、下部材16および上部材18の外面のみに実施するというように、ポール本体12に対して部分的にFRPライニングを実施するようにしてもよい。
【0040】
下部材16は、ポール本体12の主として水面下に位置する部分を構成し、その下端部は地中に埋設される。下部材16の外径および肉厚などの大きさは、潮流などに耐え得る強度を有するように設定される。たとえば、下部材16の外径は、120−170mmであり、その肉厚は、9−12mmである。
【0041】
上部材18は、ポール本体12の主として水面上に位置する部分を構成し、上部材18の外径は、下部材16の外径よりも小さく設定される。たとえば、上部材18の外径は、90−120mmであり、その肉厚は、7−9mmである。このように、上部材18に小径のものを用いることにより、立設ポール10の上部が軽量化されると共に、風などの影響を受け難くなるので、設置後の立設ポール10の転倒が防止される。また、下部材16と上部材18とを連結したときに、ポール本体12の外面が滑らかに接続されるように、上部材18の下端部は拡径される。
【0042】
先端部材20は、ポール本体12の地中に埋設される先端部分を構成すると共に、回転によって下方への推進力を生じさせる掘削ドリルとして機能する。
【0043】
具体的には、図3−5に示すように、先端部材20は、下部材16と接続される接続部22、接続部22から延びて下端方向に向かうに従い徐々に縮径するテーパ部24、およびテーパ部24から延びる径小部26を含む。接続部22の外径は、下部材16の内径に合わせて設定され、たとえば100−150mmであり、径小部26の外径は、たとえば80−100mmである。また、先端部材20の肉厚は、たとえば7−10mmである。なお、先端部材20の径小部26の先端28がポール本体12の下端となり、この下端に形成される開口14を介してポール本体12の内部空間は外部と連通する。また、先端部材20の先端28は、徐々に肉厚が薄くなるように面取りが施されて、鋭角に形成される(図7参照)。先端部材20の先端28を鋭角に形成することによって、立設ポール10がより水底100に差し込み易くなる。なお、この実施例では、先端部材20の外面側を面取りしているが、内面側を面取りしてもよい。
【0044】
先端部材20の径小部26の外面には、2枚の合成樹脂製のブレード30が外方に向けて突出するように設けられる。たとえば、ブレード30は、基体部分が硬質ポリ塩化ビニルによって形成され、その表面には必要に応じてFRPがライニングされる。ブレード30は、略扇形状の板体であって、先端部材20の径方向に対して所定角度(好ましくは30−40°)で傾斜する。また、2枚のブレード30は、対向するように配置され、かつ先端部材20の軸方向に対して所定距離ずれて配置されることによって、2枚のブレード30全体として略螺旋状の形状を有する。各ブレード30の厚みは、たとえば5−10mmである。また、先端部材20の周方向に対して各ブレード30が延びる角度は、たとえば90−180°であり、好ましくは120−140°である。このような形状のブレード30を先端部材20に形成することによって、立設ポール10は、回転による下方への適度な推進力(ねじ込み推進力)を有するようになる。
【0045】
また、ブレード30の外縁32の径は、ポール本体12の地中に差し込まれる部分のうち最も大径の部分(この実施例では下部材16の外径)よりも少し大きくされる。つまり、軸方向に見て、ブレード30の外縁32が下部材16の外面から少しはみ出すようにされる。ブレード30の外縁32が下部材16の外面からはみ出す大きさは、1−10mmが好ましい。これは、掘削時の水底地盤の戻り(つまり掘削穴の縮み)を考慮したものであり、これによって下部材16の下端部が地中に入り込み易く、かつ立設ポール10を適切に固定保持できる大きさの掘削穴を形成できるようになる。
【0046】
また、図6に示すように、下部材16と上部材18とは、インナーソケット34を介した接着接合によって接続される。インナーソケット34は、径の異なる管部材を接続するための異径ソケットであり、下部材16および上部材18の内径に応じた外径を有し、下部材16および上部材18の端部内面に沿う外面形状を有している。インナーソケット34の軸方向の長さは、たとえば400−500mmである。また、図7に示すように、下部材16と先端部材20とは、下部材16の下端部に先端部材20の接続部22を差し込んで接着接合することによって接続される。
【0047】
なお、ポール本体12および各ポール部材16,18,20の長さは、設置場所の水深や立設ポール10を水底100に差し込む長さなどに応じて適宜設定される。ポール本体12の長さは、たとえば5−15mであり、この実施例では12mである。また、下部材16および上部材18の長さは、たとえば2−10mであり、先端部材20の長さは、たとえば0.3−0.6mである。
【0048】
図2に戻って、ポール本体12の下部には、設置時に使用するロープ106(図9および10参照)を通すためのロープ孔36が形成される。ロープ孔36は、ポール本体12の側壁の対向位置に形成される2つの貫通孔であり、たとえば、ポール本体12の下端から50−100cm離れた位置に形成される。ロープ孔36の口径は、たとえば10−20mmである。
【0049】
また、ポール本体12の上端部には、上端の開口38を封止するキャップ40が取り付けられる。図8に示すように、キャップ40は、有頂円筒状に形成され、接着接合やねじ接合などを利用してポール本体12の上端部に固定される。たとえば、キャップ40は、基体部分が硬質ポリ塩化ビニルによって形成され、その外面には必要に応じてFRPがライニングされる。
【0050】
ポール本体12の上端の開口38にキャップ40を取り付けることによって、ポール本体12内への雨水の浸入を防止することができる。たとえば、ポール本体12の内部空間全体が水で満たされてしまうと、立設ポール10の重心が上に移動して、設置後に転倒し易くなってしまうが、これが防止される。また、この実施例では、ポール本体12の内面側は、硬質ポリ塩化ビニルが露出しているが、キャップ40を取り付けることによって、ポール本体12の内面側への直射日光を避けることができるので、耐候性が向上する。
【0051】
さらに、ポール本体12の上部には、ポール本体12の内部空間を介して下端の開口14と連通する排気口42が形成される。排気口42は、ポール本体12の側壁に形成される複数の貫通孔であり、ポール本体12の設置後に水面上となる位置に形成される。ここで、ポール本体12の水中に位置する部分には、潮流などの影響を受けることによって、大きな応力が作用する場合がある。このため、水中に位置する部分に貫通孔を形成すると、その部分の強度が低下してポール本体12が破損してしまう恐れがあるが、排気口42を水面上となる位置に形成することによって、これが防止されるのである。
【0052】
この実施例では、側壁の対向位置に形成される1対の排気口42を、上端から100mm間隔で3ヶ所(計6つの排気口42)形成している。この際、排気口42の総開口面積は、下端に形成される開口14の開口面積と同程度の大きさにすることが好ましい。これは、設置時の排気性能を確保すると共に、穿孔によるポール本体12の強度低下を抑制するためである。また、排気口42は、ポール本体12の上端部に形成することが好ましく、これにより、風などによってポール本体12にかかる曲げ力の影響が排気口42を形成した部分に及ばなくなるので、ポール本体12の耐久性がより向上する。また、各排気口42の口径は、ポール本体12の強度低下を考慮して、15mm以下にすることが好ましい。なお、排気口42は、設置時に使用するロープ106(図9および10参照)を通すためのロープ孔としても利用される。
【0053】
次に、上述のような構成の立設ポール10をマリーナ等に設置する設置方法の一例について簡単に説明する。先ず、立設ポール10の下端部に形成したロープ孔36および上端部に形成した排気口42のそれぞれにロープ106を通し、立設ポール10に上下2本のロープ106を取り付ける。ロープ106の両端は、立設ポール10から離れた場所において、それぞれ別の作業者が保持する。
【0054】
続いて、遠方の2方向から位置と角度とを指示しながら、図9に示すように、立設ポール10を垂直に立てた状態で水中に沈めていく。このとき、立設ポール10を水中に沈めた分だけ、下端の開口14からポール本体12内に水が流入し、これに伴い、ポール本体12内の空気が排気口42から排出される。これによって、ポール本体12の内部空間下部は水で満たされ、立設ポール10の重心は下方に移動するので、立設ポール10は垂直状態で安定し易くなり、浮力や潮流などの影響を受けて立設ポール10が傾いてしまうことが防止される。ただし、それでも立設ポール10が傾いてしまった場合には、図10に示すように、たとえば下側のロープ102を引っ張るなどして立設ポール10を垂直状態に戻し、立設ポール10の下端が水底102の目標位置にくるように調整するとよい。立設ポール10の下端が水底102の目標位置に到達すると、ロープ孔36および排気口42からロープ106を抜き取る。
【0055】
次に、ポール本体12の上部材18の外面に対して、回転治具を取り付ける。回転治具としては、たとえば、上部材18の外面に沿って周方向に延びる円弧状の固定部、およびこの固定部から外方に突出する棒状の把持部を備えるものを用いるとよい。
【0056】
回転治具を取り付けた後は、回転治具を利用して、立設ポール10を下方向に押しながら回転させることにより、ブレード30による推進力を生じさせ、水底100に立設ポール10を差し込んでいく。たとえば、立設ポール10の下端部を水底100に2−3m差し込み、立設ポール10を水底100に固定する。この際、ポール本体12の水底100に差し込まれた部分(つまり下部材16の下端部および先端部材20)の内部空間には、土や泥などが入り込む。このため、立設ポール10の下端部の管壁は、外面側および内面側の双方から土や泥などによって締め付けられることになり、立設ポール10の下端部は差し込み後に強固に固定される。また、ポール本体12の外面に突設されるブレード30がアンカ機能を発揮するので、立設ポール10の抜けは確実に防止される。
【0057】
最後に、立設ポール10が水底100にしっかりと固定されたことを確認した後、回転治具を取り外し、立設ポール10の設置作業を終了する。
【0058】
この実施例によれば、ポール本体12を下端開口の中空筒状に形成すると共に、ポール本体12に排気口42を形成したので、立設ポール10を水中に沈める際には、ポール本体12の内部空間下部は水で満たされ、立設ポール10の重心は下方に移動する。したがって、立設ポール10は垂直状態で安定し易くなり、浮力や潮流などの影響を受けて立設ポール10が傾いてしまうことが防止される。また、ポール本体12の下端部外面にブレード30を設けたので、適度なねじ込み推進力が生じ、回転治具を用いた手作業によって容易に立設ポール10を水底100に差し込むことができる。したがって、立設ポール10の設置作業を容易に行うことができる。
【0059】
また、立設ポール10全体を合成樹脂によって形成しているので、軽量化を図ることができる。したがって、手作業での扱いが容易となり、設置作業を行い易い。
【0060】
さらに、ポール本体12の下端部(先端部材20)にテーパ部24および径小部26を形成し、径小部26にブレード30を設けたので、ブレード30の幅(径方向の突出長さ)を大きくとることができるようになる。これによって、設置時においては、回転に対する推進力が増して、立設ポール10の水底100への差し込みがより容易になる。また、設置後においては、ブレード30のアンカ機能が増して、立設ポール10の抜けをより確実に防止できる。
【0061】
さらにまた、ポール本体12の下部にロープ孔36を形成したので、立設ポール10を水中に沈める際に立設ポール10が傾いてしまった場合でも、ロープ孔36に通したロープ106を利用することによって、容易に立設ポール10を垂直状態に戻すことができる。したがって、立設ポール10の下端が水底102の差し込み目標位置にくるように、容易に調整できる。また、排気口42をロープ孔として利用すれば、上下2本のロープ106を用いることによって、より容易に立設ポール10の位置および姿勢の調整を行うことができる。
【0062】
なお、上述の実施例では、下部材16と上部材18とは、インナーソケット34を介した接着接合によって接続し、下部材16と先端部材20とは、下部材16の下端部に先端部材20の接続部22を差し込んで接着接合することによって接続したが、これに限定されず、各ポール部材16,18,20の接続には、適宜の方法を用いることができる。たとえば、下部材16の上端部に上部材18の下端部を差し込む、或いは上部材18の下端部に下部材16の上端部を差し込んで接着接合することによって、下部材16と上部材18とを接続することもできるし、インナーソケットを介した接着接合によって下部材16と先端部材20とを接続することもできる。また、たとえば、ポール部材の一方端にねじ溝を形成し、他端にねじ山を形成して、これらの螺合によってポール部材同士を接続することもできる。
【0063】
また、上述の実施例では、ポール本体12を3つのポール部材、すなわち、下部材16、上部材18および先端部材20を連結することによって形成したが、これに限定されない。たとえば、2本或いは4本以上のポール部材を連結してポール本体12を形成してもよいし、1本の長尺のポール本体12を形成して用いてもよい。また、ポール本体12の上部と下端部とを必ずしも径小にする必要はなく、たとえば、下部材16と上部材18とを同径に形成することもできるし、先端部材20を下部材16と同径の直管状に形成することもできる。
【0064】
さらに、上述の実施例では、ブレード30を2枚刃形状としたが、ブレード30の形状はこれに限定されない。たとえば、ブレード30を3枚刃以上の形状とすることもできるし、螺旋状に連続的に延びる形状とすることもできる。
【0065】
さらにまた、上述の実施例では、ブレード30の外縁32を下部材16の外面から少しはみ出させるようにしたが、必ずしもはみ出させる必要はない。回転(ねじ込み)に対する推進力を発揮できるのであれば、ブレード30の外縁32の径は、ポール本体12の地中に差し込まれる部分のうち最も大径の部分と同じ、或いは小さくすることもできる。
【0066】
また、上述の実施例では、キャップ40を用いてポール本体12の上端の開口38を封止するようにしているが、このキャップ40には、ソーラ式の発光体などを設けるようにしてもよい。また、キャップ40の外面やポール本体12の外面上部に対して、発光塗料(夜光塗料)を塗布するようにしてもよい。これにより、夜間でも立設ポール10を視認し易くなり、立設ポール10に船舶が衝突するなどの事故を回避できるようになる。
【0067】
また、キャップ40は必ずしも設ける必要はなく、キャップ40を取り付けない場合には、ポール本体12の側壁に貫通孔を形成して排気口42とする代わりに、ポール本体12の上端の開口38を排気口42として機能させることもできる。
【0068】
さらに、上述の実施例では、立設ポール10を船舶係留用ポールとして用いたが、これに限定されない。たとえば、水中或いは水上における指標として用いることもできるし、水中或いは水上において船舶以外の物体を支持するために用いることもできる。具体的には、船舶の係留位置や進行方向を示すための澪木や、海苔の養殖網を支持するための支柱などとして好適に用いることができる。
【0069】
なお、上で挙げた寸法などの具体的数値は、いずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0070】
10 …立設ポール
12 …ポール本体
14 …下端の開口
16 …下部材
18 …上部材
20 …先端部材(掘削ドリル)
24 …テーパ部
26 …径小部
30 …ブレード
36 …ロープ孔
40 …キャップ
42 …排気口
100 …水底
102 …水面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端部が水底に差し込まれて立設される立設ポールであって、
下端開口の中空筒状に形成される合成樹脂製のポール本体、
前記ポール本体の下端部外面に突設される合成樹脂製のブレード、および
前記ポール本体の設置後に水面上となる位置に形成され、前記ポール本体の内部空間を介して前記下端開口と連通する排気口を備える、立設ポール。
【請求項2】
前記ポール本体の上端部に設けられるキャップを備え、
前記排気口は、前記ポール本体の側壁に形成される、請求項1記載の立設ポール。
【請求項3】
前記排気口の開口面積は、前記下端開口の開口面積と同じまたはほぼ同じ大きさに形成される、請求項1または2記載の立設ポール。
【請求項4】
前記ポール本体の下部に形成され、設置時にロープが挿通されるロープ孔を備える、請求項1ないし3のいずれかに記載の立設ポール。
【請求項5】
前記ポール本体の下端部は、下端方向に向かって縮径するテーパ部と前記テーパ部から延びる径小部とを有し、
前記ブレードは、前記径小部の外面に設けられる、請求項1ないし4のいずれかに記載の立設ポール。
【請求項6】
前記ブレードは、外縁が前記ポール本体の水底に差し込まれる部分のうち最も大径の部分の外面より外方にはみ出す大きさに形成される、請求項5記載の立設ポール。
【請求項7】
下端部が水底に差し込まれて立設される立設ポールであって、
合成樹脂製のポール本体、および
前記ポール本体の下端部外面に突設される合成樹脂製のブレードを備え、
前記ポール本体の下端部は、下端方向に向かって縮径するテーパ部と前記テーパ部から延びる径小部とを有し、
前記ブレードは、前記径小部の外面に設けられる、立設ポール。
【請求項8】
前記ブレードは、外縁が前記ポール本体の水底に差し込まれる部分のうち最も大径の部分の外面より外方にはみ出す大きさに形成される、請求項7記載の立設ポール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−67992(P2013−67992A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207065(P2011−207065)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(505142964)クボタシーアイ株式会社 (192)
【出願人】(592181864)ヤマハ天草製造株式会社 (2)