説明

競技場用天然芝育成兼用照明装置及び天然芝育成照明装置付き競技場ディスプレイ装置

【課題】通常は照明装置やディスプレイ装置として競技場で使用でき、且つ競技により損傷した天然芝を通常の天然自然修復速度よりも早く傷みを改善修復できる競技場用天然芝育成兼用照明装置及び天然芝育成照明装置付きの競技場ディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】フルカラー表示機能を持つ発光波長帯に属し一定間隔に配列された赤色、緑色、青色の発光素子からなる光源を持つ照明装置1であって、躯体2が起伏自在且つ移動自在とされ、通常は起立状態で場内の照明装置として機能し、伏状態においては特定位置の天然芝に対して発光素子の光を照射して天然芝の成長促進・修復を図る天然芝育成照明装置として機能し、天然芝育成照明装置として機能させるために発光素子の赤色光の波長を650nm〜670nmとし、青色光の波長を460nm〜480nmとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サッカー場、野球場、ゴルフ場、大型陸上競技場などの競技場で使用される競技場用天然芝育成兼用照明装置及び天然芝育成照明装置付き競技場ディスプレイ装置に関し、より詳しくは、通常は照明装置やディスプレイ装置として競技場で使用でき、且つ競技により損傷した天然芝を通常の天然自然修復速度よりも早く傷みを改善修復できる競技場用天然芝育成兼用照明装置及び天然芝育成照明装置付き競技場ディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、園芸技術的には植物の病気や競技者のスパイクなどにより物理的に損傷したり裸地化したりして傷んだ芝生跡を補修して天然芝を再生させる方法は次のようであった。例えば、サッカー場などの競技場では、天然芝の損傷部の中心から放射状にカッターナイフで芝生面を深めにカットして傷んだ天然芝を切り取り、比較的元気の良い生育良好の芝生部分に張り替えることが一般的に行なわれていた。一方、切り取られた天然芝は、他の場所で養生させた後、競技場の天然芝として再び使用される。天然芝の修復には、芝面の半分が残っている状態で生育期でも最低1ヶ月程度かかっていた。
【0003】
近年、養生芝の生育を促進するため複数の発光ダイオードを電気的に連結して通電し、天然芝などの植物の上に光を照射する植物育成装置が開示されている(特許文献1)。加えて、芝生面の養生敷設材なる技術が開示されている(特許文献2)。この技術は養生を要する芝生面に対し、芝生面を覆う養生敷設材を設け、この養生敷設材の裏面側に、芝生面に光を照射するための発光器具を設置する技術である。この発光器具は、発光ダイオードを光源とし、赤色光の波長を特定して、約600〜700nmの光を天然芝に照射して天然芝を養生することにより、天然芝養生期間を短縮せんとする技術である。
【0004】
加えて、天然芝を有する屋内競技場等を含む施設で植物を育成するために使用される照明アセンブリが開示されている(特許文献3)。この照明アセンブリとしては、光源として少なくとも一つの発光ダイオードを具備し、発光ダイオードを青色とするときは「青色」光の波長は400乃至470nm、また赤色とするときは「赤色」光の波長は630乃至700nmであることが開示されている技術である。しかしながら、これらのすべての既開示技術は、全て天然芝養生用の専用機であって競技場使用時に併用的に照明装置やディスプレイ装置などの他の用途にも使用でき且つ天然芝を養生できる装置ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−312444号公報
【特許文献2】特開2007−224545号公報
【特許文献3】特表2010−536156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる従来の課題を解決するために、本発明は、サッカー場、野球場、ゴルフ場、大型陸上競技場などの競技場で使用される競技場用天然芝育成兼用照明装置及び天然芝育成照明装置付き競技場ディスプレイ装置であって、通常は照明装置やディスプレイ装置として競技場で使用でき、且つ競技により損傷した天然芝を通常の天然自然修復速度よりも早く傷みを改善修復できる競技場用天然芝育成兼用照明装置及び天然芝育成照明装置付き競技場ディスプレイ装置を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、この発明の請求項1に係る発明は、フルカラー表示機能を持つ発光波長帯に属し一定間隔に配列された赤色、緑色、青色の発光素子からなる光源を持つ照明装置であって、躯体が起伏自在且つ移動自在とされ、通常は起立状態で場内の照明装置として機能し、伏状態においては特定位置の天然芝に対して発光素子の光を照射して天然芝の成長促進・修復を図る天然芝育成照明装置として機能し、天然芝育成照明装置として機能させるために、発光素子の赤色光の波長を650nm〜670nmとし、青色光の波長を460nm〜480nmとしたサッカー場などの競技場で使用する競技場用天然芝育成兼用照明装置を提供するものである。
【0008】
この発明の請求項2に係る発明は、フルカラー表示機能を持つ発光波長帯に属し一定間隔に配列された赤色、緑色、青色の発光素子からなる光源を持ち、天然芝育成照明装置として使用する場合と表示装置として使用する場合を切り替え可能なディスプレイ装置であって、躯体が起伏自在とされ、通常は起立状態で場内のディスプレイ機能を有し、傾けて使用する状態においては特定位置の天然芝に対して発光素子の光を照射して天然芝の成長促進・修復を図る天然芝育成照明装置として機能し、天然芝育成照明装置として機能させるために、発光素子の赤色光の波長を650nm〜670nmとし、青色光の波長を460nm〜480nmとしたサッカー場などの競技場で使用する天然芝育成照明装置付き競技場ディスプレイ装置を提供するものである。
【0009】
この発明の請求項3に係る発明は、芝育成照明内部信号を色度補正部に送り、RGBのDATAラッチ部でラッチし、次いで演算処理部でラッチされたRGBデータと記憶部に書き込まれた色度補正係数とを演算し補正発光データを生成し、この補正発光データをデータメモリーに送り次いでデータメモリーに補正発光データをフレーム単位でストアするとともに、補正発光データの書き込み、読み出しをマイクロプロセッサで制御し、このストアされた補正発光データを定電流ドライバーに供給し、マイクロプロセッサから制御信号を輝度補正データメモリーに送るとともに、輝度補正データを定電流ドライバーに供給し、次いでデータメモリーから定電流ドライバーに補正発光データを供給し、さらに定電流ドライバーは、輝度補正データで決められた電流量で、かつ、補正発光データで決められた時間だけパルス幅変調で発光素子表示部を駆動することにより、前記天然芝育成照明装置と前記照明装置とを切り替え可能にすることを特徴とする請求項1記載の競技場用天然芝育成兼用照明装置を提供するものである。
【0010】
この発明の請求項4に係る発明は、芝育成照明内部信号を色度補正部に送り、RGBのDATAラッチ部でラッチし、次いで演算処理部でラッチされたRGBデータと、記憶部に書き込まれた色度補正係数とを演算し補正発光データを生成し、この補正発光データをデータメモリーに送り次いでデータメモリーに補正発光データをフレーム単位でストアするとともに、補正発光データの書き込み、読み出しをマイクロプロセッサで制御し、このストアされた補正発光データを定電流ドライバーに供給し、マイクロプロセッサから制御信号を輝度補正データメモリーに送るとともに、輝度補正データを定電流ドライバーに供給し、次いでデータメモリーから定電流ドライバーに補正発光データを供給し、さらに定電流ドライバーは、輝度補正データで決められた電流量で、かつ、補正発光データで決められた時間だけパルス幅変調で発光素子表示部を駆動することにより、前記天然芝育成照明装置と前記表示装置とを切り替え可能にすることを特徴とする請求項2記載の競技場ディスプレイ装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1〜4に係るサッカー場、野球場などで使用する競技場用天然芝育成兼用照明装置及び天然芝育成照明装置付き競技場ディスプレイ装置によれば、通常は色度補正された照明装置または競技場ディスプレイ装置として使用でき、しかもサッカー場、野球場などの競技場内の天然芝を養生することができる天然芝育成兼用照明装置及び天然芝育成照明装置付き競技場ディスプレイ装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)は、この発明の実施形態の競技場用天然芝育成兼用照明装置を示す斜視図であり、(b)は(a)の競技場用天然芝育成兼用照明装置の側面図である。
【図2】図1の競技場用天然芝育成兼用照明装置の変更例を示す斜視図である。
【図3】この実施形態の競技場用天然芝育成兼用照明装置と競技場ディスプレイ装置のRGB配列の一例の説明図である。
【図4】図1の競技場用天然芝育成兼用照明装置の天然芝養生時の使用状態説明図である。
【図5】図1の競技場用天然芝育成兼用照明装置の天然芝養生時の使用状態説明図である。
【図6】図2の競技場用天然芝育成兼用照明装置の天然芝養生時の使用状態説明図である。
【図7】(a)は、この発明の実施形態の競技場ディスプレイ装置を示す斜視図であり、(b)は(a)の競技場ディスプレイ装置の側面図である。
【図8】図7の競技場ディスプレイ装置の天然芝養生時の使用状態説明図である。
【図9】図7の競技場ディスプレイ装置の競技場における使用状態説明図である。
【図10】図7の競技場ディスプレイ装置の天然芝養生時の使用状態説明図である。
【図11】図7の競技場ディスプレイ装置の信号流れ図である。
【図12】この発明の実施形態の競技場用天然芝育成兼用照明装置と競技場ディスプレイ装置の色度補正機能の回路図である。
【図13】この発明の実施形態の競技場ディスプレイ装置の回路構成図の説明図である。
【図14】この発明の実施形態の競技場用天然芝育成兼用照明装置と競技場ディスプレイ装置の回路構成図の変更例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。図1、2に、サッカー場、野球場、ゴルフ場、大型陸上競技場などの競技場(以下、単に「競技場」という)で使用する競技場用天然芝育成兼用照明装置(1)(以下照明装置(1)と略す)の概観図を示す。
【0014】
照明装置(1)は、図3(a)に示すような、フルカラー表示機能を持つ発光波長帯に属し一定間隔にマトリックス上に配列された赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の発光素子からなる発光素子光源(L)を前面(1a)に有している。発光素子は、発光ダイオード(LED)や有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)を使用することができる。なお、発光素子としてLEDを使用する場合は、図3下方の右側部分拡大図に示すように、LED光源(L)は、1画素にRGB別々のLEDをディスクリート配列したものや、図3下方の左側部分拡大図に示すように、1パッケージ内に1チップからなるRGBを内装した3イン1タイプのLEDでも良い。RGBの順序はいずれでもよい。以下、発光素子についてLEDを用いて説明するが、本発明において発光素子は、LEDに限定されるものではなく、有機EL等の他の発光素子も使用可能である。
【0015】
図1に示す照明装置(S1)は、方形状の躯体(2)の裏面(2b)の左右両側に駆動シリンダ(3、3)を備える。駆動シリンダ(3、3)は、円筒(4)と、円筒(4)にスライド自在に挿入されるロッド(5)と、躯体(2)の裏面(2b)の左右両側に固定される半月状の板金(6)と、躯体(2)の裏面(2b)の下端部の左右において裏面(2b)に対して直角方向に延びるプレート(8)とを有する。プレート(8)の上面には、半月状の留金(7)が取り付けられている。
【0016】
駆動シリンダ(3、3)は、躯体(2)とプレート(8)を連結するように傾斜して設けられている。円筒(4)の下端部は、T字状の凸片(9)を介して留金(7)に回動自在に固定されている。ロッド(5)は、その先端がT字状に形成されており、その先端部(5a)が板金(6、6)に形成された三日月状の長孔(6a)に嵌め込まれている。ロッド(5)の先端部(5a)は、長孔(6a)に嵌め込まれた状態で、長孔(6a)内を移動可能となっている。これにより、照明装置(S1)は、ロッド(5)が円筒(4)に対してスライドすることにより、図4に示すように、躯体(2)が前後に起伏自在となっている。なお、躯体(2)を起伏自在とする手段は、駆動シリンダ(3、3)に限定されるものではない。
【0017】
また、照明装置(S1)は、躯体(2)の両側面に車輪(10)が設けられており、図5に示すように、伏状態において車輪(10)により天然芝(11)の上を移動自在となっている。なお、車輪(10)は、手動で回転させることもできるし、モータ等の駆動装置により回転させることも可能である。これにより、照明装置(S1)は、手動で芝グランド面を移動させることもできるし、自走で芝グランド面を移動させることもできる。
【0018】
図2に示す照明装置(S2)は、躯体(2)が四角形状のフレーム(12)に複数(2つ)固定され、フレーム(12)の角部のそれぞれに設けた脚の先端にキャスター(13)が設けられている。これにより、照明装置(S2)は、図6に示す伏状態においてキャスター(13)により天然芝(11)の上を移動自在となっている。キャスター(13)は、図2の矢印に示すように、上方に折り畳み可能となっている。また、照明装置(S2)は、四角形状の板部材(14)がフレーム(12)の角部に固定されており、板部材(14)に照明装置(S1)と同様の駆動シリンダ(3、3)が板金(6、6)を介して取りつけられている。これにより、照明装置(S2)は、キャスター(13)を折り畳んだ状態でロッド(5)が円筒(4)に対してスライドすることにより、躯体(2)が前後に起伏自在となっている。
【0019】
上記のように構成された照明装置(1)は、図1、2に示すように、駆動シリンダ(3、3)により、躯体(2)が起立状態に支えられ、通常はこの起立状態において、場内照明(15)としてのLEDの光が水平方向などの前方を照らすことで場内照明装置として機能する。
【0020】
また、照明装置(1)は、図4に示すように、傾けて使用する状態においては特定位置の天然芝(11)に対して芝育成照明(16)としてのLEDの光を照射して天然芝(11)の成長促進・修復を図る天然芝育成照明装置として機能する。
【0021】
また、照明装置(1)は、図5、6に示すように、伏状態すなわちLED光源(L)が下方に向く状態において、特定位置の天然芝(11)に対して芝育成照明(16)としてのLEDの光を照射して天然芝(11)の成長促進・修復を図る天然芝育成照明装置として機能する。なお、照明装置(1)は、図5、6では、駆動シリンダ(3、3)を省略しているが、駆動シリンダ(3、3)を躯体(2)またはフレーム(12)に設けた板部材(14)から着脱自在としておき、駆動シリンダ(3、3)を取り外した状態で天然芝育成照明装置として使用してもよい。
【0022】
キャスター(13)は、アクチュエーターが付いていないものでもよいが、アクチュエーター付きのものだと、躯体(2)を、自走で芝グランド面を万遍なく一定速度で一定時間(N−S方向)(W-E方向)へ)移動させることができ、特定位置の天然芝(11)のみでなくグランド全体の養生に貢献できて好ましい。
【0023】
天然芝(11)の生育に必要な光量は印加電流量で制御される。LED光源(L)と天然芝面との距離(d)は数cmから数10cmに保つのが望ましい。
【0024】
また、この発明の実施形態の天然芝育成照明装置付き競技場ディスプレイ装置(以下、「競技場ディスプレイ装置」と略す)の構成を図7に示す。競技場ディスプレイ装置(21)は、図3に示すように、フルカラー表示機能を持つ発光波長帯に属し一定間隔にマトリックス上に配列された赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の発光素子からなる発光素子光源(L)を前面(21a)に有する。なお、発光素子としてLEDを使用する場合は、図3下方の右側部分拡大図に示すように、LED光源(L)は、1画素にRGB別々のLEDをディスクリート配列したものや、図3下方の左側部分拡大図に示すように、1パッケージ内に1チップからなるRGBを内装した3イン1タイプのLEDでも良い。RGBの順序はいずれでもよい。
【0025】
また、競技場ディスプレイ装置(21)は、図7(a)に示すように、その躯体(22)の裏面(22b)の左右両側に照明装置(1)と同様の駆動シリンダ(3、3)が設けられている。これにより、図8に示すように、ロッド(5)が円筒(4)に対してスライドすることにより、躯体(22)が前後に起伏自在となっている。なお、躯体(22)を前後に起伏自在とする手段は限定されない。
【0026】
上記のように構成された競技場ディスプレイ装置(21)は、図7(b)に示すように、駆動シリンダ(3、3)により、躯体(22)が起立状態に支えられ、通常はこの起立状態において、ディスプレイの光(23)としてのLEDの光が水平方向などの前方を照らすことで表示装置として機能する。競技場ディスプレイ装置(21)を表示装置として使用する場合は、例えば、図9に示すように、主としてサッカー場などの競技場(100)のグランドの周りに前面(21a)をスタンドに向けた状態で使用される。
【0027】
また、競技場ディスプレイ装置(21)は、図8に示すように、躯体(22)を傾けて使用する状態においては、特定位置の天然芝(11)に対して芝育成照明(16)としてのLEDの光を照射して天然芝(11)の成長促進・修復を図ることができ、天然芝育成照明装置として機能する。
【0028】
また競技場ディスプレイ装置(21)は、天然芝育成照明装置として使用する場合は、図10に示すように、躯体(22)の外周に沿うように形成された四角形状のフレーム(24)を躯体(22)に嵌め込み、フレーム(24)の角部の脚の先端に設けたキャスター(25)により、伏状態において躯体(22)を天然芝(11)の上を移動自在とすることができる。
【0029】
キャスター(25)は、アクチュエーターが付いていないものでもよいが、アクチュエーター付きのものだと、躯体(22)を、自走で芝グランド面を万遍なく一定速度で一定時間(N−S方向)(W-E方向)へ)移動させることができ、特定位置の天然芝(11)のみでなくグランド全体の養生に貢献できて好ましい。なお、競技場ディスプレイ装置(21)は、図10では、駆動シリンダ(3、3)を省略しているが、駆動シリンダ(3、3)を躯体(22)から着脱自在としておき、駆動シリンダ(3、3)を取り外した状態で天然芝育成照明装置として使用してもよい。
【0030】
ここでLEDに供給する信号を切り替えるスイッチ(SW)はMPU(マイクロプロセッサ)によって制御される。照明装置(1)を場内照明装置として使用する場合や、競技場ディスプレイ装置(21)を表示装置として使用する場合は、LEDの光を場内照明装置もしくは表示装置としての最適な色度および輝度に調整する必要がある。
【0031】
天然芝(11)の養生に必要な波長は、赤(R)の650〜670nm、緑(G)510〜550nm、青(B)460〜480nmであるのに対して、ディスプレイとして使用させる波長は、赤(R)の615〜635nm、緑(G)510〜550nm、青(B)455〜475nmであり、場内照明用及びディスプレイ用の画面コンテンツの色度が天然芝育成用とでは色感が異なり違和感となる。したがって、この発明の照明装置(1)と競技場ディスプレイ装置(21)は、場内照明用、ディスプレイ用と天然芝育成用として使用する場合の色度的違和感をなくすため色度補正を行うことにより、この発明の目的である天然芝育成照明装置と場内照明装置または表示装置の両方の用途を達成する。
【0032】
この発明の競技場ディスプレイ装置(21)を表示装置として使用する場合は、図11、12に示すように、映像信号送出器(30)から送られた映像信号が色度補正を行なう色度補正部(31a)を備えた信号処理装置(31)により処理され、処理された信号が各LED表示部(40)に送られて映像が表示される。
【0033】
また、この発明の照明装置(1)を場内照明装置として使用する場合も、照明信号送出器から送られた照明信号が信号処理装置(31)により処理され、処理された信号が各LED表示部(40)に送られて照明を行なう。以下、照明装置(1)を場内照明装置として使用する場合と、競技場ディスプレイ装置(21)を表示装置として使用する場合の色度補正の具体的な処理について説明する。
【0034】
図12の信号の流れのフローシートに示すように、映像信号あるいは照明信号が色度補正部(31a)に送られ、それぞれRGBのDATAラッチ部(32)に送られラッチされる。演算処理部(33)は、ラッチされたRGBデータと記憶部である色度補正データメモリー(34)又は色補正係数レジスターに書き込まれた色度補正係数(35)とを演算して補正発光データを生成させる。
【0035】
補正発光データはデータメモリー(36)に送られる。データメモリー(36)では補正発光データがフレーム単位でストアされる。
【0036】
補正発光データの書き込み、読み出しはMPU(38)によって制御される。ストアされた補正発光データは定電流ドライバー(37)に供給される。MPU(38)から制御信号が輝度補正データメモリー(39)に送られ、輝度補正データが定電流ドライバー(37)に供給される。また、定電流ドライバー(37)には、データメモリー(36)から補正発光データが供給される。
【0037】
定電流ドライバー(37)は、輝度補正データで決められた電流量で、かつ、補正発光データで決められた時間だけ、PWM(パルス幅変調)でLED表示部(40)を駆動する。このようにして、照明装置(1)と競技場ディスプレイ装置(21)は、場内照明装置または表示装置として駆動する。
【0038】
一方、照明装置(1)と競技場ディスプレイ装置を天然芝育成照明装置として使用する場合は、MPU(38)でスイッチ(SW)を制御し芝照明内部信号(41)に切り替える。演算処理部(33)では、芝育成用の色感覚を場内照明用またはディスプレイ用と同一化するために、さらに色度補正係数を加味して演算される。すなわち、演算処理部(33)は、芝照明用補正発光データを生成あるいは無補正発光データを生成させる。
【0039】
この芝照明用補正発光データあるいは無補正発光データは、データメモリー(36)に送られる。データメモリー(36)では、芝照明用補正発光データまたは無補正発光データがフレーム単位でストアされる。補正発光データの書き込みと読み出しはMPU(38)によって制御される。ストアされた補正発光データは定電流ドライバー(37)に供給される。MPU(38)から制御信号が輝度補正データメモリー(39)に送られ、輝度補正データが定電流ドライバー(37)に供給される。また、定電流ドライバー(37)には、芝照明用補正発光データまたは無補正発光データが供給される。定電流ドライバー(37)は、輝度補正データ(39)で決められた電流量で、かつ、照明用補正発光データあるいは無補正発光データで決められた時間だけ、PWM(パルス幅変調)でLED表示部(40)を駆動する。このようにして、照明装置(1)と競技場ディスプレイ装置(21)は、LEDの特定波長の光を照射して天然芝の成長促進・修復を図る。
【0040】
これにより、照明装置(1)と競技場ディスプレイ装置(21)は、照明効果やディスプレイ効果に支障をきたすことなく、LEDの赤色光の波長を光合成に最も効果のある波長である660nmとし、青色光の波長を天然芝(11)の形態形成に効果のある460nmとする天然芝育成照明装置として使用することができる。
【0041】
なお、上述した色度補正機能の回路は一例であり、これに限定されない。以下、この発明の実施形態の競技場用天然芝育成兼用照明装置と競技場ディスプレイ装置の色度補正機能の回路の変更例について説明する。
【0042】
通常の競技場ディスプレイ装置(21)を表示装置として使用する場合は、まず、図13に示すように、映像信号送出器(30)から送られたデジタル映像信号(シリアルRGB信号)が、デジタル・ビジュアル・インターフェース レシーバ(DVI Receiver)(52)を介しフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)(53)に送られる。信号送出部(54)のDVI Receiver(52) でシリアルRGB信号がパラレルRGB信号に変換されFPGA(53)に送られる。FPGA(53)ではRGB信号を1フレーム毎に一旦RAM(55)に記録する。
【0043】
FPGA(53)は、EP ROM(56)に格納されたデータを電源投入時にロードすることによって、予めプログラムされた回路が形成される。この回路によって、RAM(55)に記録されたデータを演算処理する。ここでは主に、複数の信号受信部(57)への信号の割り振りが行われる。その後のLAN Transmitter(58)ではパラレルRGB信号を1bitのシリアルに変換する。1bitのシリアルRGB信号はLANケーブルを介して信号受信部(57)へ送られる。
【0044】
信号受信部(57)では、LAN Transmitter (59)によって1bitシリアルRGB信号がパラレルRGB信号に変換されFPGA(60)に送られる。FPGA(60)では自分に割り振られた信号のみを受け取って1フレーム毎にRAM(61)に記録する。FPGA(60)はEP ROM(62)に格納されたデータを電源投入時にロードすることによって、予めプログラムされた回路が形成される。この回路によって、RAM(61)に記録されたデータを演算処理し、映像表示部(63)に信号を振り分けるとともに画質調整を行う。
【0045】
映像表示部(63)では割り当てられたパラレルRGB信号を受け取ってLEDを表示させる。ここでRow Driver(64)は表示するLED Matrix Array(65) の行を切り換える。LED Matrix Array (65)の縦の列にはそれぞれ定電流 Drive IC(66)が直列に接続されていてRGB信号に対応したパルス幅でLEDに電流を供給する。定電流Drive IC(66)に外付けされた抵抗R(67)は抵抗値に応じて電流値を決定する。
【0046】
照明装置(1)と競技場ディスプレイ装置(21)を天然芝育成照明装置として兼用して使用する場合は、図14に示すように、PC(71)から232Cケーブル(72)を介して操作信号が信号送信部(54)のFPGA(53)に送られる。さらに信号は変換され信号受信部(57)のFPGA(60)まで送られる。操作信号が送られると、天然芝育成照明装置として必要な機能を備えるためFPGA(60)によって新たにEP ROM(62)から指定されたデータがロードされ、回路が更新される。
【0047】
回路が更新されると、外部からのRGB映像信号を遮断し、天然芝育成に最適なRGBのパルス幅の内部信号を発生させる。各定電流 Drive IC(66)の外付け抵抗(67)を天然芝育成に最適な電流量になるように切り換えるためスイッチ(SW)を操作する。切り換えが完了すると、信号送出部(54)は不要になるため切り離される。
【0048】
また、天然芝育成照明装置から場内照明装置または表示装置に切り換えて使用する場合は、PC(71)から切り換え操作を行ない、信号送出部(54)と信号受信部(57)と映像表示部(63)を全て接続する。このとき、各定電流 Drive IC(66)の外付け抵抗(67)を場内照明装置または表示装置に最適な電流量になるように切り換えるためスイッチ(SW)を操作する。また、このとき、天然芝育成用の波長のRGBの発光素子を使用しているので、入力したRGB信号のままでは忠実な色再現が行われない。このため、色度変換をRGB信号変換で行ない、このRGB信号変換は入力した信号に一定の係数を掛けて行う。
【0049】
この発明においては、天然芝(11)の養生に必要な光の波長は、赤(R)650〜670nm、緑(G)510〜550nm、青(B)460〜480nmであるのに対し、ディスプレイとして使用させる波長は、赤(R)615〜635nm、緑(G)510〜550nm、青(B)455〜475nmであり、上述のごとく制御回路により補正して場内照明用及びディスプレイの画面コンテントの色度と天然芝育成用とを補正して違和感を生じさせない。この発明においては、この場内照明用、ディスプレイ用と芝育成用の色度的違和感をなくすため色度補正を行い天然芝育成照明装置と場内照明装置または表示装置の両方の兼用が達成できる。
【0050】
以上のごとく、この発明の実施形態に係る照明装置(1)及び競技場ディスプレイ装置(21)は、場内照明装置または表示装置と天然芝育成照明装置とを切り替え使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、サッカー場、野球場、ゴルフ場、大型陸上競技場などの競技場で使用でき、競技により損傷した天然芝を通常の天然自然修復速度よりも早く傷みを改善修復できる照明装置及び競技場ディスプレイ装置とできる効果がある。
【符号の説明】
【0052】
1 天然芝育成兼用照明装置
2 躯体
3 駆動シリンダ
6 板金
8 プレート
10 車輪
11 天然芝
13 キャスター
21 競技場ディスプレイ装置
22 躯体
31 色度補正部
32 ラッチ部
33 演算処理部
34 色度補正データメモリー
35 色度補正係数
36 データメモリー
37 定電流ドライバー
38 マイクロプロセッサ
39 輝度補正データメモリー
40 LED表示部
41 芝育成照明内部信号
52 デジタル・ビジュアル・インターフェースレシーバ
53 フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ
54 信号送出部
55 RAM
56 EP ROM
57 信号受信部
58 LAN Transmitter
59 LAN Transmitter
60 フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ
61 RAM
62 EP ROM
63 映像表示部
64 Row Driver
65 LED Matrix Array
66 定電流Drive IC
67 抵抗R
71 PC
72 232Cケーブル
100 競技場
R 赤色
G 緑色
B 青色
L LED光源
SW スイッチ
d 距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルカラー表示機能を持つ発光波長帯に属し一定間隔に配列された赤色、緑色、青色の発光素子からなる光源を持つ照明装置であって、躯体が起伏自在且つ移動自在とされ、通常は起立状態で場内の照明装置として機能し、伏状態においては特定位置の天然芝に対して発光素子の光を照射して天然芝の成長促進・修復を図る天然芝育成照明装置として機能し、天然芝育成照明装置として機能させるため発光素子の赤色光の波長を650nm〜670nmとし、青色光の波長を460nm〜480nmとしたサッカー場などの競技場で使用する競技場用天然芝育成兼用照明装置。
【請求項2】
フルカラー表示機能を持つ発光波長帯に属し一定間隔に配列された赤色、緑色、青色の発光素子からなる光源を持ち、天然芝育成照明装置として使用する場合と表示装置として使用する場合を切り替え可能なディスプレイ装置であって、躯体が起伏自在とされ、通常は起立状態で場内のディスプレイ機能を有し、傾けて使用する状態においては特定位置の天然芝に対して発光素子の光を照射して天然芝の成長促進・修復を図る天然芝育成照明装置として機能し、天然芝育成照明装置として機能させるため発光素子の赤色光の波長を650nm〜670nmとし、青色光の波長を460nm〜480nmとしたサッカー場などの競技場で使用する天然芝育成照明装置付き競技場ディスプレイ装置。
【請求項3】
芝育成照明内部信号を色度補正部に送り、RGBのDATAラッチ部でラッチし、次いで演算処理部でラッチされたRGBデータと、記憶部に書き込まれた色度補正係数とを演算し補正発光データを生成し、この補正発光データをデータメモリーに送り次いでデータメモリーに補正発光データをフレーム単位でストアするとともに、補正発光データの書き込み、読み出しをマイクロプロセッサで制御し、このストアされた補正発光データを定電流ドライバーに供給し、マイクロプロセッサから制御信号を輝度補正データメモリーに送るとともに、輝度補正データを定電流ドライバーに供給し、次いでデータメモリーから定電流ドライバーに補正発光データを供給し、さらに定電流ドライバーは、輝度補正データで決められた電流量で、かつ、補正発光データで決められた時間だけパルス幅変調で発光素子表示部を駆動することにより、前記天然芝育成照明装置と前記照明装置とを切り替え可能にすることを特徴とする請求項1記載の競技場用天然芝育成兼用照明装置。
【請求項4】
芝育成照明内部信号を色度補正部に送り、RGBのDATAラッチ部でラッチし、次いで演算処理部でラッチされたRGBデータと、記憶部に書き込まれた色度補正係数とを演算し補正発光データを生成し、この補正発光データをデータメモリーに送り次いでデータメモリーに補正発光データをフレーム単位でストアするとともに、補正発光データの書き込み、読み出しをマイクロプロセッサで制御し、このストアされた補正発光データを定電流ドライバーに供給し、マイクロプロセッサから制御信号を輝度補正データメモリーに送るとともに、輝度補正データを定電流ドライバーに供給し、次いでデータメモリーから定電流ドライバーに補正発光データを供給し、さらに定電流ドライバーは、輝度補正データで決められた電流量で、かつ、補正発光データで決められた時間だけパルス幅変調で発光素子表示部を駆動することにより、前記天然芝育成照明装置と前記表示装置とを切り替え可能にすることを特徴とする請求項2記載の天然芝育成照明装置付き競技場ディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−228231(P2012−228231A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100038(P2011−100038)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【特許番号】特許第5017478号(P5017478)
【特許公報発行日】平成24年9月5日(2012.9.5)
【出願人】(311003802)セキシン電機株式会社 (1)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【Fターム(参考)】