管の引き抜き工具
【課題】上階のみで配管の引き抜きや取り換えが可能であり、作業の際にも脚立やジャッキ等を使用せず、比較的安全に作業することのでき、さらに作業性が良く作業時間もかからない管の引き抜き工具を提供する。
【解決手段】引き抜かれる管Ａの外周面と接触して該管Ａを保持し且つ外周面をテーパ状とし、前記引き抜かれる管に接触し、かつ内周面に凹凸を設け分割したコマ３と、該コマ３を嵌め入れ保持するホルダ１と、該ホルダ１とボルトによって連結されるプレート２と、該プレート２に固定されたシリンダ用シャフト５と、油圧により前記シリンダ用シャフト５を上方向に持ち上げるシリンダ８と、該シリンダ８を保持するシリンダホルダ４と、を備えた構成とする。コマ３の外周面はテーパ状としかつ内周面には凹凸を設ける。
【解決手段】引き抜かれる管Ａの外周面と接触して該管Ａを保持し且つ外周面をテーパ状とし、前記引き抜かれる管に接触し、かつ内周面に凹凸を設け分割したコマ３と、該コマ３を嵌め入れ保持するホルダ１と、該ホルダ１とボルトによって連結されるプレート２と、該プレート２に固定されたシリンダ用シャフト５と、油圧により前記シリンダ用シャフト５を上方向に持ち上げるシリンダ８と、該シリンダ８を保持するシリンダホルダ４と、を備えた構成とする。コマ３の外周面はテーパ状としかつ内周面には凹凸を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、アパートやマンションおよび団地などの集合住宅において、古くなった水道管（ＳＧＰ管）を交換するときに用いられ、水道管（ＳＧＰ管）を床のコンクリートから引き抜く管の引き抜き工具に関する。
【背景技術】
【０００２】
通常の住宅においては水回り（上水道や下水道）用の管が配置され、使用年数が長くなると水漏れ等の支障が生じるので、これを防止するため古くなった水回り用の配管は新しい配管に取り換える。しかし、管はコンクリート中に埋設されていることが多いため古い管を抜き取るのはなかなか困難である。特に、集合住宅において、既設管を撤去して既設管と同一経路にて給水管の更新を行う場合、通常は既設管上下を切断し、タイヤモンドカッターにてコンクリートを穿孔し、管が貫通したままの状態で既設管を抜き取る方法をとっている。或いは上の階と下の階に跨がってコンクリートに埋まっている管を引き抜く際、一つの方法として下の階からジャッキを使用して上の階へ押し上げる工法も考えられる。この工法は、作業時間が比較的少ないという利点はある。
【０００３】
また、古い管と新しい管を取り換える場合には、管の引き抜き装置が用いられる。この管の引き抜き装置としては、周方向に沿って複数に分割可能な円筒状のコアーピットと、このコアーピットをおなじく周方向に沿って複数に分割可能なヘッド部分で保持して回転を与える回転駆動機構を、スラブ（コンクリート）を貫通する配管に外嵌するように組み立て、該配管の周囲で回転させた前記コアーピットを下降させてスラブ（コンクリート）を切削することによって、スラブ（コンクリート）の配管が貫通する部分の周囲を上下に貫通する円筒状に切り抜き、コアーピットがコンクリートを貫通するとこれを抜き取ってコアーピットと回転駆動機構を配管から撤去し、この後、スラブ（コンクリート）から分離された配管を切り抜き孔から抜き取ったあとに該切り抜き孔に新たな配管を挿入し、この新たな配管と切り抜き孔の空間を充填材で埋めるようにしたスラブ（コンクリート）貫通配管の取り換え工法と装置が知られている（特許文献１）。しかし、この工法では狭い場所での作業が困難であり、作業時間が相当長くなるという問題がある。また、スラブ（コンクリート）内埋設の電線等を切断する恐れがある。
【０００４】
また、排水管継手は、上部受け口を備える上胴体と、集合住宅の上階と下階とを仕切るコンクリートスラグを貫通して取付けられる構成で、下部接続部を備える下胴体と、その上胴体と下胴体とを水密な状態で連結するとともに、連結解除可能に構成された縦方向連結機構とを有しており、排水管継手の下胴体の下部接続部と下階の排水立て管の上端部との接続部分には、その排水管継手の下部接続部と下階の排水立て管とを水密な状態で接続するとともに、分離可能に構成された配管接続機構が設けられた構成の排水設備及びその排水設備の更新方法が知られている（特許文献２）。しかし、この方法は、コンクリートスラブ貫通管を撤去した後、又は新設時における方法であり、既設管を撤去する方法ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００５】
【特許文献１】特開２００６−２００６５６
【特許文献２】特開２００８−１８００５６
【特許文献３】特開２００７−０３２７５９
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
上記するように、下の階からジャッキを使って上の階へ押し上げる場合は、下の階と上の階を行き来しなければならず、さらに天井付近での脚立作業・上向き作業となるため、安全性と作業効率が低下してしまう、という問題がある。管の取り換え作業に際し、コンクリートと管との間に振動を発生させる方法もあるが、騒音等隣近所に迷惑となる。
さらに、引用文献１のものは、振動や騒音も発生し、コアービットの下部にダイヤモンド製或いは超硬質鋼材製のチップを設けて、外歯歯車をモータで駆動してスラブ（コンクリート）を円筒状に切り抜くものであり、上階と下階との間はやはり行き来しなければならない。
【０００７】
また、引用文献２のものもコスト低減はされるが、やはり配管工事の途中で上階と下階とを行き来しなければならず、作業が煩雑かつ面倒であり、脚立を利用しなければならない点では引用文献１と同様である。引用文献３のものは、旧埋設管を新設管と交換する場合の発明であり、しかも道路地盤に埋設した埋設管を新設管と交換する場合の該埋設管を引き抜く場合の構成を示すもので、集合住宅には適用できない。
【０００８】
本出願人らは、住宅用の配管を取り換える際の管の引き抜き工具として、
引き抜かれる管の外周面と接触して該管を保持し且つ外周面をテーパ状とした３分割式のコマと、前記引き抜かれる管と３分割式のコマとを保持する管ホルダと、前記管ホルダに連結されたシリンダ用シャフトと、油圧により前記シリンダ用シャフトを上方向に持ち上げるシリンダと、該シリンダを保持するシリンダホルダ等を備えた管の引き抜き工具を提案している（特願２００９−０４８８４２）。しかし、管と管ホルダとは始めからほぼ同心でなければならず、片寄っているとすき間にコマが入らない場合があった。また、管引き上げに際し、ストロークがいっぱいになると、油圧を抜いてホルダを下げる際３分割した一部のコマが落ちてしまうため、再び管とホルダとの同心を意識しながら均等にコマを差し込まなければならなかった。このため作業性が悪く、作業時間もかかるという問題があった。
【０００９】
本発明は上記する課題に対処するためになされたものであり、上階のみで配管の引き抜きや取り換えが可能であり、作業の際にも脚立やジャッキ等を使用せず、比較的安全に作業することができ、さらに作業性が良く作業時間もかからない管の引き抜き工具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【００１０】
即ち、この発明は、上記する課題を解決するために、請求項１に記載の発明は管の引き抜き工具が、引き抜かれる管Ａの外周面と接触して該管Ａを保持し且つ外周面をテーパ状とし、内周面が前記引き抜かれる管に接触し、かつ該内周面に凹凸を設け分割したコマ３と、該コマ３を嵌め入れ保持するホルダ１と、該ホルダ１とボルトによって連結されるプレート２と、該プレート２に固定されたシリンダ用シャフト５と、油圧により前記シリンダ用シャフト５を上方向に持ち上げるシリンダ８と、該シリンダ８を保持するシリンダホルダ４と、を備えたことを特徴としている。
【００１１】
また、請求項２に記載の発明は、管の引き抜き工具が、引き抜かれる管Ａの外周面と接触して該管Ａを保持し且つ外周面をテーパ状とし、内周面が前記引き抜かれる管Ａに接触し、かつ該内周面に凹凸を設け分割したコマ３と、該コマ３を嵌め入れ保持するホルダ１と、該ホルダ１とボルトによって連結されるプレート２と、該プレート２に固定され外周面に雄ねじを設けたシャフト１５と、
前記シャフト１５を貫通させた一方のプレート１４と前記コマ３を収容したホルダ１を載置する他方のプレート１６とを複数本のボルトとナットで連結してなる固定台２０と、
前記シャフト１５の雄ねじに前記一方のプレート１４の上側で螺合させた雌ねじ１７と、を備えたことを特徴としている。
【００１２】
また、請求項３に記載の発明は、管の引き抜き工具が、引き抜かれる管Ａの外周面と接触して該管Ａを保持し且つ外周面をテーパ状とし、内周面が前記引き抜かれる管Ａに接触し、かつ該内周面に凹凸を設け分割したコマ３と、該コマ３を嵌め入れ保持するホルダ１と、該ホルダ１とボルトによって連結されるプレート２と、該プレート２に固定され外周面に雄ねじを設けたシャフト１５と、
前記シャフト１５を貫通させた一方のプレート１４と前記コマ３を収容したホルダ１を載置する他方のプレート１６とを複数本のボルトとナットで連結してなる固定台２０と、
前記シャフト１５の雄ねじに前記一方のプレート１４の上側で螺合させた雌ねじ１７と、前記外周面に雄ねじを設けたシャフト１５の端部に設けたハンドル２１と、を備えたことを特徴としている。
【００１３】
さらに、請求項４に記載の発明は、前記ホルダ１は、内周面が前記コマ３を収容して保持するテーパ状の穴１ａが形成してあることを特徴としている。
【００１４】
また、請求項５に記載の発明は、前記コマ３は、２つ割としこれらをリンク３ｌで連結してあることを特徴している。
【００１５】
そして、請求項６に記載の発明は、前記コマ３の内周下端周囲には、面取り３ｄがしてあることを特徴している。
【発明の効果】
【００１６】
本発明を上記手段とすれば、配管作業や管の取り換え作業を行うに際し、上下の階にまたがって行き来して作業をする必要はなく、１つの階のみで管の引き抜き作業や取り換え作業を行うことができる。しかも床の上で安全に作業することができるので、作業能率を大幅に上げることができる。また、配管の引き抜き作業に際し疲労することもなく、脚立等を使用することもないため安全である。さらに本発明の管の引き抜き工具の使用に際しては振動や騒音も少ない。特に油圧を手動により加圧することもでき、より一層騒音を小さくすることができ、隣や近所に迷惑を及ぼすこともない。そして、本発明は分割式コマを使用していても、管とホルダとの同心性或いはコマの片寄りを気にする必要がないので作業性、作業時間が各段に良くなる。また、ホルダとプレートおよびシリンダホルダはボルトとナットで組み立てる方式であるため、作業が終了すれば分解し、持ち運び自由であり、どこでも使用することができて便利である。
【図面の簡単な説明】
【００１７】
【図１】本発明の管の引き抜き工具の構成を示す全体斜視図である。
【図２】図２（Ａ）は引き抜くべき管と、該管の上から下部に取り付けたホルダで収容保持されるコマを取り出して示した管の引き抜き工具の全体斜視図であり、図２（Ｂ）は、ホルダと該ホルダに収容したコマとの縦断面である。
【図３】図３（Ａ）は、管にこの管の引き抜き工具を取り付ける場合の縦断面図であり、図３（Ｂ）は、管がある程度引き抜かれた状態を示す縦断面図である。
【図４】図４（Ａ）はコマと他方のプレート付近の引き抜き状態を示す一部拡大断面図であり、図４（Ｂ）は引き抜き時、管の表面にかかるホルダに嵌め入れたコマの荷重状態を示す断面図である。
【図５】図５（Ａ）は本発明の管の引き抜き工具を引き抜くべき管にセットした状態を示し、図５（Ｂ）は、本発明の管の引き抜き工具で管を引き抜いた状態を示す全体斜視図であるが、これらは図３（Ａ）と図３（Ｂ）に対応している図である。
【図６】図 6（Ａ）は、シリンダを用いないで、管を引き抜く他の実施例を示す一部縦面図であり、図６（Ｂ）は、シリンダを用いないで、管を引き抜く更に他の実施例を示す一部縦面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１８】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図を参照しながら説明する。
図１は、本発明の管の引き抜き工具の構成を示す全体斜視図であり、図２（Ａ）は引き抜くべき管と、該管の上から下部に取り付けたホルダで収容保持されるコマを取り出して示した管の引き抜き工具の全体斜視図であり、図２（Ｂ）は、ホルダと該ホルダに収容したコマとの縦断面である。本発明の管の引き抜き工具は、内周面が引き抜かれる管Ａの外周面と接触して該管Ａを保持し且つ外周面３ｂ（図２（Ｂ）参照）をテーパ状としたコマ３と、前記コマ３を収容保持するホルダ１と、該ホルダ１の上方のプレート２に連結されたシリンダ用シャフト５と、油圧により前記シリンダ用シャフト５を上方向に持ち上げるシリンダ８と、該シリンダ８を載置するシリンダホルダ４と、で構成されている。前記ホルダ１の内周面１ａは上方向に径が大きくなるテーパ状に形成してある。なお、前記管Ａは或る階（上の階）で上下に所定の長さに切断したものである。
【００１９】
前記ホルダ１と上方のプレート２とは、３本のボルト１ｃ、１ｃ、１ｃと、ナット１ｄ、１ｄ、１ｄとを組み立てて構成される。すなわち、前記ホルダ１と上方のプレート２とは、ホルダ１に設けた雌ねじにねじ込み、他方をプレート２に設けた穴から雄ねじ部を突出させボルト１ｃをナット１ｄで締めつけて固定した組立式としてある。また、シリンダホルダ４は、前記シリンダ８を設置した一方（上部）のプレート４ａと、床の上に設置する他方（下部）のプレート４ｂと、前記他方のプレート４ｂに設けた座ぐり穴に嵌め入れる３本のポルト４ｃ、４ｃ、４ｃと、前記プレート４ａの上に突出させたボルト４ｃの端部に螺合させるナット４ｄ、４ｄ、４ｄと、で構成される。前記コマ３を収容保持したホルダ１はこの他方（下側）のプレート４ｂの上に載置される。また、前記他方のプレート４ｂを架台に代用することによりシリンダ８のストローク不足を補うことが可能となる。
【００２０】
前記シリンダ８にはオイルを注入し、油圧ポンプで油圧を加えるインジェクタ６が取り付けられる。図や詳細は省略するが、シリンダ８内には油圧によって上方向に移動するピストンが配置され、前記シリンダ用シャフト５はこのピストンに連結されている。前記シリンダホルダ４は、前記ホルダ１や上方のプレート２等全体を内部に保持するようにしてある。なお、シリンダ８にかける油圧は手動式としても良い。更に、前記ホルダ１と上方のプレート２を連結するボルト１ｃ等は３本でなく、２本或いは４本或いはそれ以上であってもよく、シリンダホルダ４を構成するボルト４ｃ等も３本でなく、２本或いは４本或いはそれ以上であっても良い。
【００２１】
次に、前記コマ３は、実施の形態の図１および図２では２つに分割されリンク３ｌで連結されて形成してある。また、該コマ３の内周面には抜き取る管Ａの表面によく食い込むように凹凸３ｃが形成してある。さらに、該コマ３は、図２（Ｂ）に示すようにテーパ状としたその外周面３ｂが管ホルダ１のテーパ状内周面１ａに嵌まるようになっている。
【００２２】
本発明の管の引き抜き工具は、以上のように構成してあるが、次に、実際に管Ａを引き抜くときの作用について説明する。
図３（Ａ）は、管Ａにこの管の引き抜き工具を取り付ける場合の縦断面図であり、図３（Ｂ）は、管Ａがある程度引き抜かれた状態を示す縦断面図である。
また、図４（Ａ）はコマ３と他方のプレート４ｂ付近の引き抜き状態を示す一部拡大断面図であり、図４（Ｂ）は引き抜き時、管Ａの表面にかかるホルダ１に嵌め入れたコマ３の荷重状態を示す断面図である。本発明の管の引き抜き工具を管Ａに取り付ける場合は、シリンダ８の油圧を抜いてホルダ１が最下部に位置する状態とし、コマ３を管ホルダ１に収容して保持させる。すなわち、始めからホルダ１にコマ３を収納しておく。そしてコマ３がホルダ１に納まっている本発明の管の引き抜き工具を、図２（Ａ）の状態から管Ａの上からゆっくり挿入し、降下させて行く。このときコマ３の内側下部には大きな面取り３ｄ（図４（Ｂ）参照）があり、管Ａの挿入が容易にできる。またコマ３はリンク３ｌで連結されていることもあって、コマ３はホルダ１から飛び出ることもなく該ホルダ１内に留まっている。
【００２３】
後はシリンダ８に油圧を加えると、コマ３が管Ａの外周に食い込みながらホルダ１と共に持ち上がって行く。そうすると、ホルダ１の内周面１ａとコマ３のテーパ状の外周面（３ｂ）とは密着し、コマ３とともにホルダ１が上方向に移動しようとする。このとき、図４（Ｂ）に示すように、コマ３の外周面３ｂはテーパ状となっているので、ホルダ１に上方向の力がかかると「くさび作用」によって、コマ３の内周面には管Ａの表面を押す力が作用してコマ３の内周面に形成した鋸状の凹凸３ｃが管Ａの表面に食い込もうとする。このためコマ３の内周面は管Ａの表面を滑ることはない。そして、管ホルダ１に上方向の力が作用するとコマ３は「くさび作用」によりますます管Ａに食い込みつつ管ホルダ１とともにコマ３は上へ移動し、管Ａもついに上方向に移動する。こうして古い管Ａを引き抜くことができる。
【００２４】
ストロークがいっぱいになったらシリンダ８の油圧を抜いて全体を下げ、コマ３が管ホルダ１内に納まっているのを確認したら再び油圧を加える。この繰り返しで管Ａを引き抜く。図５（Ａ）は本発明の管の引き抜き工具を引き抜くべき管Ａにセットした状態を示し、図５（Ｂ）は、本発明の管の引き抜き工具で管Ａを引き抜いた状態を示す全体斜視図であるが、これらは図３（Ａ）と図３（Ｂ）に対応している。
【００２５】
本発明のように、２つ割としたコマ３をホルダ１に載せて管Ａを引き抜く。このように、２つ割とすれば、管Ａに本発明の管の引き抜き工具をセットする際２つ割とすればはほぼ同心となり、３つ割のように片寄りのためコマ３がすき間に入らなかったり、一部が落ちたりすることがない。したがってその分作業時同心を意識する必要もない。また、コマ３を３つ割とすると、ストロークがいっぱいになり油圧を抜いて管ホルダ１を下げる際コマ３が落ちないよう同心を意識しなければならないが、本発明ではコマ３はリンク３ｌで連結されており、ホルダ１の高さが高くなってもコマ３が管ホルダ１内に留まっていることを確認するだけで直ぐに油圧を加えることができ、作業性、作業時間にロスがなくなる。しかし、コマ３を３つ割としてリンク３ｌで連結することは可能である。
【００２６】
本発明の管の引き抜き工具では、コマ３はリンク３ｌにより連結（リンク）されているが、その理由は上記した作用により明らかである。すなわち、管Ａを挿入する際コマ３が分かれていると、いくら内周面下部に面取りがあろうとも管ホルダ１から飛び出しやすくセットできないことが多い、また、ストロークエングとなり、管ホルダ１を下げる際コマ３が２つに分割されていると管ホルダ１から飛び出してしまうかもしくは段違いになってしまいコマ３が管Ａの表面に食い込まなくなるのを防止する、さらに、持ち運びしやすく一部を無くしたりしにくくなる。
【００２７】
上記の実施の形態では、シリンダ８とシリンダ用シャフト５で管ホルダ１とコマ３とを上方向に移動させる力が作用するようにしたが、図６（Ａ）に示すように、シリンダ８を用いないで、シリンダホルダ４の一方のプレー４ａの代わりに通常のプレート１４を用い、シリンダ用シャフト５の代わりに雄ねじ（台ねじが良い）を刻設した通常のシャフト１５と、前記シャフト１５を貫通させた一方のプレート１４と、引き抜かれる管Ａと前記コマ３が嵌まる程度のテーパ状の穴を穿設したホルダ１と該ホルダ１をボルトとナットで連結し、前記シャフト１５を固定したプレート２とを用いても良い。すなわち、引き抜かれる管Ａの外周面と接触して該管Ａを保持し且つ外周面をテーパ状としたコマ３と、該コマ３を保持するホルダ１と、外周面に雄ねじを設けたシャフト１５と、前記シャフト１５を貫通させた一方のプレート１４と前記ホルダ１を載置する他方のプレート１６と、これら一方のプレート１４と他方のプレート１６とを複数本のボルト４ｃとナット４ｄで連結してなる固定台２０と、前記シャフト１５の雄ねじに前記一方のプレート１４の上側で螺合させた雌ねじ１７と、を備えた管の引き抜き工具としてもよい。
【００２８】
或いは、図６（Ｂ）に示すように、引き抜かれる管Ａの外周面と接触して該管Ａを保持し且つ外周面をテーパ状としたコマ３と、前記管Ａとコマ３とを保持するホルダ１と、外周面に雄ねじを設けたシャフト１５と、前記シャフト１５を貫通させた一方のプレート１４と前記コマ３を収容したホルダ１を載置する他方のプレート１６と、これら一方のプレート１４と他方のプレート１６とを複数本のボルト４ｃとナット４ｄで連結してなる固定台２０と、前記シャフト１５の雄ねじに前記一方のプレート１４の上側で螺合させた雌ねじ１７と、前記外周面に雄ねじを設けたシャフト１５の端部に設けたハンドル２１と、を備えた管の引き抜き工具としてもよい。こうして、ハンドル２１を回すことによってコマ３を嵌め入れた管ホルダ１を上方向に移動させるようにしても良い。勿論、シャフト１５を固定したプレート２とコマ３を嵌め入れた管ホルダ１は他方のプレート１６の上側に設置する。この場合、雌ねじナット１７を押さえてハンドル２１を回すようにする。或いは、雄ねじを設けたシャフト１５をボールねじとし、該ボールねじをモータにより駆動するようにしても良い。或いは雌ねじナット１７の代わりにプレート１４に雌ねじを設けても良い。
【符号の説明】
【００２９】
１ 管ホルダ
１ａ 管ホルダ内周面（テーパ状）
１ｃ ボルト
１ｄ ナット
２ プレート
３ コマ
３ｂ コマ外周面（テーパ状）
３ｃ 鋸歯状凹凸
３ｌ リンク
４ シリンダホルダ
４ａ 一方のプレート
４ｂ 他方のプレート
４ｃ ボルト
４ｄ ナット
５ シリンダ用シャフト
６ インジェクタ
８ シリンダ
１４ 一方のプレート
１５ シャフト
１６ 他方のプレート
１７ 雌ねじナット
２０ 固定台
２１ ハンドル
【技術分野】
【０００１】
本発明は、アパートやマンションおよび団地などの集合住宅において、古くなった水道管（ＳＧＰ管）を交換するときに用いられ、水道管（ＳＧＰ管）を床のコンクリートから引き抜く管の引き抜き工具に関する。
【背景技術】
【０００２】
通常の住宅においては水回り（上水道や下水道）用の管が配置され、使用年数が長くなると水漏れ等の支障が生じるので、これを防止するため古くなった水回り用の配管は新しい配管に取り換える。しかし、管はコンクリート中に埋設されていることが多いため古い管を抜き取るのはなかなか困難である。特に、集合住宅において、既設管を撤去して既設管と同一経路にて給水管の更新を行う場合、通常は既設管上下を切断し、タイヤモンドカッターにてコンクリートを穿孔し、管が貫通したままの状態で既設管を抜き取る方法をとっている。或いは上の階と下の階に跨がってコンクリートに埋まっている管を引き抜く際、一つの方法として下の階からジャッキを使用して上の階へ押し上げる工法も考えられる。この工法は、作業時間が比較的少ないという利点はある。
【０００３】
また、古い管と新しい管を取り換える場合には、管の引き抜き装置が用いられる。この管の引き抜き装置としては、周方向に沿って複数に分割可能な円筒状のコアーピットと、このコアーピットをおなじく周方向に沿って複数に分割可能なヘッド部分で保持して回転を与える回転駆動機構を、スラブ（コンクリート）を貫通する配管に外嵌するように組み立て、該配管の周囲で回転させた前記コアーピットを下降させてスラブ（コンクリート）を切削することによって、スラブ（コンクリート）の配管が貫通する部分の周囲を上下に貫通する円筒状に切り抜き、コアーピットがコンクリートを貫通するとこれを抜き取ってコアーピットと回転駆動機構を配管から撤去し、この後、スラブ（コンクリート）から分離された配管を切り抜き孔から抜き取ったあとに該切り抜き孔に新たな配管を挿入し、この新たな配管と切り抜き孔の空間を充填材で埋めるようにしたスラブ（コンクリート）貫通配管の取り換え工法と装置が知られている（特許文献１）。しかし、この工法では狭い場所での作業が困難であり、作業時間が相当長くなるという問題がある。また、スラブ（コンクリート）内埋設の電線等を切断する恐れがある。
【０００４】
また、排水管継手は、上部受け口を備える上胴体と、集合住宅の上階と下階とを仕切るコンクリートスラグを貫通して取付けられる構成で、下部接続部を備える下胴体と、その上胴体と下胴体とを水密な状態で連結するとともに、連結解除可能に構成された縦方向連結機構とを有しており、排水管継手の下胴体の下部接続部と下階の排水立て管の上端部との接続部分には、その排水管継手の下部接続部と下階の排水立て管とを水密な状態で接続するとともに、分離可能に構成された配管接続機構が設けられた構成の排水設備及びその排水設備の更新方法が知られている（特許文献２）。しかし、この方法は、コンクリートスラブ貫通管を撤去した後、又は新設時における方法であり、既設管を撤去する方法ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００５】
【特許文献１】特開２００６−２００６５６
【特許文献２】特開２００８−１８００５６
【特許文献３】特開２００７−０３２７５９
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
上記するように、下の階からジャッキを使って上の階へ押し上げる場合は、下の階と上の階を行き来しなければならず、さらに天井付近での脚立作業・上向き作業となるため、安全性と作業効率が低下してしまう、という問題がある。管の取り換え作業に際し、コンクリートと管との間に振動を発生させる方法もあるが、騒音等隣近所に迷惑となる。
さらに、引用文献１のものは、振動や騒音も発生し、コアービットの下部にダイヤモンド製或いは超硬質鋼材製のチップを設けて、外歯歯車をモータで駆動してスラブ（コンクリート）を円筒状に切り抜くものであり、上階と下階との間はやはり行き来しなければならない。
【０００７】
また、引用文献２のものもコスト低減はされるが、やはり配管工事の途中で上階と下階とを行き来しなければならず、作業が煩雑かつ面倒であり、脚立を利用しなければならない点では引用文献１と同様である。引用文献３のものは、旧埋設管を新設管と交換する場合の発明であり、しかも道路地盤に埋設した埋設管を新設管と交換する場合の該埋設管を引き抜く場合の構成を示すもので、集合住宅には適用できない。
【０００８】
本出願人らは、住宅用の配管を取り換える際の管の引き抜き工具として、
引き抜かれる管の外周面と接触して該管を保持し且つ外周面をテーパ状とした３分割式のコマと、前記引き抜かれる管と３分割式のコマとを保持する管ホルダと、前記管ホルダに連結されたシリンダ用シャフトと、油圧により前記シリンダ用シャフトを上方向に持ち上げるシリンダと、該シリンダを保持するシリンダホルダ等を備えた管の引き抜き工具を提案している（特願２００９−０４８８４２）。しかし、管と管ホルダとは始めからほぼ同心でなければならず、片寄っているとすき間にコマが入らない場合があった。また、管引き上げに際し、ストロークがいっぱいになると、油圧を抜いてホルダを下げる際３分割した一部のコマが落ちてしまうため、再び管とホルダとの同心を意識しながら均等にコマを差し込まなければならなかった。このため作業性が悪く、作業時間もかかるという問題があった。
【０００９】
本発明は上記する課題に対処するためになされたものであり、上階のみで配管の引き抜きや取り換えが可能であり、作業の際にも脚立やジャッキ等を使用せず、比較的安全に作業することができ、さらに作業性が良く作業時間もかからない管の引き抜き工具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【００１０】
即ち、この発明は、上記する課題を解決するために、請求項１に記載の発明は管の引き抜き工具が、引き抜かれる管Ａの外周面と接触して該管Ａを保持し且つ外周面をテーパ状とし、内周面が前記引き抜かれる管に接触し、かつ該内周面に凹凸を設け分割したコマ３と、該コマ３を嵌め入れ保持するホルダ１と、該ホルダ１とボルトによって連結されるプレート２と、該プレート２に固定されたシリンダ用シャフト５と、油圧により前記シリンダ用シャフト５を上方向に持ち上げるシリンダ８と、該シリンダ８を保持するシリンダホルダ４と、を備えたことを特徴としている。
【００１１】
また、請求項２に記載の発明は、管の引き抜き工具が、引き抜かれる管Ａの外周面と接触して該管Ａを保持し且つ外周面をテーパ状とし、内周面が前記引き抜かれる管Ａに接触し、かつ該内周面に凹凸を設け分割したコマ３と、該コマ３を嵌め入れ保持するホルダ１と、該ホルダ１とボルトによって連結されるプレート２と、該プレート２に固定され外周面に雄ねじを設けたシャフト１５と、
前記シャフト１５を貫通させた一方のプレート１４と前記コマ３を収容したホルダ１を載置する他方のプレート１６とを複数本のボルトとナットで連結してなる固定台２０と、
前記シャフト１５の雄ねじに前記一方のプレート１４の上側で螺合させた雌ねじ１７と、を備えたことを特徴としている。
【００１２】
また、請求項３に記載の発明は、管の引き抜き工具が、引き抜かれる管Ａの外周面と接触して該管Ａを保持し且つ外周面をテーパ状とし、内周面が前記引き抜かれる管Ａに接触し、かつ該内周面に凹凸を設け分割したコマ３と、該コマ３を嵌め入れ保持するホルダ１と、該ホルダ１とボルトによって連結されるプレート２と、該プレート２に固定され外周面に雄ねじを設けたシャフト１５と、
前記シャフト１５を貫通させた一方のプレート１４と前記コマ３を収容したホルダ１を載置する他方のプレート１６とを複数本のボルトとナットで連結してなる固定台２０と、
前記シャフト１５の雄ねじに前記一方のプレート１４の上側で螺合させた雌ねじ１７と、前記外周面に雄ねじを設けたシャフト１５の端部に設けたハンドル２１と、を備えたことを特徴としている。
【００１３】
さらに、請求項４に記載の発明は、前記ホルダ１は、内周面が前記コマ３を収容して保持するテーパ状の穴１ａが形成してあることを特徴としている。
【００１４】
また、請求項５に記載の発明は、前記コマ３は、２つ割としこれらをリンク３ｌで連結してあることを特徴している。
【００１５】
そして、請求項６に記載の発明は、前記コマ３の内周下端周囲には、面取り３ｄがしてあることを特徴している。
【発明の効果】
【００１６】
本発明を上記手段とすれば、配管作業や管の取り換え作業を行うに際し、上下の階にまたがって行き来して作業をする必要はなく、１つの階のみで管の引き抜き作業や取り換え作業を行うことができる。しかも床の上で安全に作業することができるので、作業能率を大幅に上げることができる。また、配管の引き抜き作業に際し疲労することもなく、脚立等を使用することもないため安全である。さらに本発明の管の引き抜き工具の使用に際しては振動や騒音も少ない。特に油圧を手動により加圧することもでき、より一層騒音を小さくすることができ、隣や近所に迷惑を及ぼすこともない。そして、本発明は分割式コマを使用していても、管とホルダとの同心性或いはコマの片寄りを気にする必要がないので作業性、作業時間が各段に良くなる。また、ホルダとプレートおよびシリンダホルダはボルトとナットで組み立てる方式であるため、作業が終了すれば分解し、持ち運び自由であり、どこでも使用することができて便利である。
【図面の簡単な説明】
【００１７】
【図１】本発明の管の引き抜き工具の構成を示す全体斜視図である。
【図２】図２（Ａ）は引き抜くべき管と、該管の上から下部に取り付けたホルダで収容保持されるコマを取り出して示した管の引き抜き工具の全体斜視図であり、図２（Ｂ）は、ホルダと該ホルダに収容したコマとの縦断面である。
【図３】図３（Ａ）は、管にこの管の引き抜き工具を取り付ける場合の縦断面図であり、図３（Ｂ）は、管がある程度引き抜かれた状態を示す縦断面図である。
【図４】図４（Ａ）はコマと他方のプレート付近の引き抜き状態を示す一部拡大断面図であり、図４（Ｂ）は引き抜き時、管の表面にかかるホルダに嵌め入れたコマの荷重状態を示す断面図である。
【図５】図５（Ａ）は本発明の管の引き抜き工具を引き抜くべき管にセットした状態を示し、図５（Ｂ）は、本発明の管の引き抜き工具で管を引き抜いた状態を示す全体斜視図であるが、これらは図３（Ａ）と図３（Ｂ）に対応している図である。
【図６】図 6（Ａ）は、シリンダを用いないで、管を引き抜く他の実施例を示す一部縦面図であり、図６（Ｂ）は、シリンダを用いないで、管を引き抜く更に他の実施例を示す一部縦面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１８】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図を参照しながら説明する。
図１は、本発明の管の引き抜き工具の構成を示す全体斜視図であり、図２（Ａ）は引き抜くべき管と、該管の上から下部に取り付けたホルダで収容保持されるコマを取り出して示した管の引き抜き工具の全体斜視図であり、図２（Ｂ）は、ホルダと該ホルダに収容したコマとの縦断面である。本発明の管の引き抜き工具は、内周面が引き抜かれる管Ａの外周面と接触して該管Ａを保持し且つ外周面３ｂ（図２（Ｂ）参照）をテーパ状としたコマ３と、前記コマ３を収容保持するホルダ１と、該ホルダ１の上方のプレート２に連結されたシリンダ用シャフト５と、油圧により前記シリンダ用シャフト５を上方向に持ち上げるシリンダ８と、該シリンダ８を載置するシリンダホルダ４と、で構成されている。前記ホルダ１の内周面１ａは上方向に径が大きくなるテーパ状に形成してある。なお、前記管Ａは或る階（上の階）で上下に所定の長さに切断したものである。
【００１９】
前記ホルダ１と上方のプレート２とは、３本のボルト１ｃ、１ｃ、１ｃと、ナット１ｄ、１ｄ、１ｄとを組み立てて構成される。すなわち、前記ホルダ１と上方のプレート２とは、ホルダ１に設けた雌ねじにねじ込み、他方をプレート２に設けた穴から雄ねじ部を突出させボルト１ｃをナット１ｄで締めつけて固定した組立式としてある。また、シリンダホルダ４は、前記シリンダ８を設置した一方（上部）のプレート４ａと、床の上に設置する他方（下部）のプレート４ｂと、前記他方のプレート４ｂに設けた座ぐり穴に嵌め入れる３本のポルト４ｃ、４ｃ、４ｃと、前記プレート４ａの上に突出させたボルト４ｃの端部に螺合させるナット４ｄ、４ｄ、４ｄと、で構成される。前記コマ３を収容保持したホルダ１はこの他方（下側）のプレート４ｂの上に載置される。また、前記他方のプレート４ｂを架台に代用することによりシリンダ８のストローク不足を補うことが可能となる。
【００２０】
前記シリンダ８にはオイルを注入し、油圧ポンプで油圧を加えるインジェクタ６が取り付けられる。図や詳細は省略するが、シリンダ８内には油圧によって上方向に移動するピストンが配置され、前記シリンダ用シャフト５はこのピストンに連結されている。前記シリンダホルダ４は、前記ホルダ１や上方のプレート２等全体を内部に保持するようにしてある。なお、シリンダ８にかける油圧は手動式としても良い。更に、前記ホルダ１と上方のプレート２を連結するボルト１ｃ等は３本でなく、２本或いは４本或いはそれ以上であってもよく、シリンダホルダ４を構成するボルト４ｃ等も３本でなく、２本或いは４本或いはそれ以上であっても良い。
【００２１】
次に、前記コマ３は、実施の形態の図１および図２では２つに分割されリンク３ｌで連結されて形成してある。また、該コマ３の内周面には抜き取る管Ａの表面によく食い込むように凹凸３ｃが形成してある。さらに、該コマ３は、図２（Ｂ）に示すようにテーパ状としたその外周面３ｂが管ホルダ１のテーパ状内周面１ａに嵌まるようになっている。
【００２２】
本発明の管の引き抜き工具は、以上のように構成してあるが、次に、実際に管Ａを引き抜くときの作用について説明する。
図３（Ａ）は、管Ａにこの管の引き抜き工具を取り付ける場合の縦断面図であり、図３（Ｂ）は、管Ａがある程度引き抜かれた状態を示す縦断面図である。
また、図４（Ａ）はコマ３と他方のプレート４ｂ付近の引き抜き状態を示す一部拡大断面図であり、図４（Ｂ）は引き抜き時、管Ａの表面にかかるホルダ１に嵌め入れたコマ３の荷重状態を示す断面図である。本発明の管の引き抜き工具を管Ａに取り付ける場合は、シリンダ８の油圧を抜いてホルダ１が最下部に位置する状態とし、コマ３を管ホルダ１に収容して保持させる。すなわち、始めからホルダ１にコマ３を収納しておく。そしてコマ３がホルダ１に納まっている本発明の管の引き抜き工具を、図２（Ａ）の状態から管Ａの上からゆっくり挿入し、降下させて行く。このときコマ３の内側下部には大きな面取り３ｄ（図４（Ｂ）参照）があり、管Ａの挿入が容易にできる。またコマ３はリンク３ｌで連結されていることもあって、コマ３はホルダ１から飛び出ることもなく該ホルダ１内に留まっている。
【００２３】
後はシリンダ８に油圧を加えると、コマ３が管Ａの外周に食い込みながらホルダ１と共に持ち上がって行く。そうすると、ホルダ１の内周面１ａとコマ３のテーパ状の外周面（３ｂ）とは密着し、コマ３とともにホルダ１が上方向に移動しようとする。このとき、図４（Ｂ）に示すように、コマ３の外周面３ｂはテーパ状となっているので、ホルダ１に上方向の力がかかると「くさび作用」によって、コマ３の内周面には管Ａの表面を押す力が作用してコマ３の内周面に形成した鋸状の凹凸３ｃが管Ａの表面に食い込もうとする。このためコマ３の内周面は管Ａの表面を滑ることはない。そして、管ホルダ１に上方向の力が作用するとコマ３は「くさび作用」によりますます管Ａに食い込みつつ管ホルダ１とともにコマ３は上へ移動し、管Ａもついに上方向に移動する。こうして古い管Ａを引き抜くことができる。
【００２４】
ストロークがいっぱいになったらシリンダ８の油圧を抜いて全体を下げ、コマ３が管ホルダ１内に納まっているのを確認したら再び油圧を加える。この繰り返しで管Ａを引き抜く。図５（Ａ）は本発明の管の引き抜き工具を引き抜くべき管Ａにセットした状態を示し、図５（Ｂ）は、本発明の管の引き抜き工具で管Ａを引き抜いた状態を示す全体斜視図であるが、これらは図３（Ａ）と図３（Ｂ）に対応している。
【００２５】
本発明のように、２つ割としたコマ３をホルダ１に載せて管Ａを引き抜く。このように、２つ割とすれば、管Ａに本発明の管の引き抜き工具をセットする際２つ割とすればはほぼ同心となり、３つ割のように片寄りのためコマ３がすき間に入らなかったり、一部が落ちたりすることがない。したがってその分作業時同心を意識する必要もない。また、コマ３を３つ割とすると、ストロークがいっぱいになり油圧を抜いて管ホルダ１を下げる際コマ３が落ちないよう同心を意識しなければならないが、本発明ではコマ３はリンク３ｌで連結されており、ホルダ１の高さが高くなってもコマ３が管ホルダ１内に留まっていることを確認するだけで直ぐに油圧を加えることができ、作業性、作業時間にロスがなくなる。しかし、コマ３を３つ割としてリンク３ｌで連結することは可能である。
【００２６】
本発明の管の引き抜き工具では、コマ３はリンク３ｌにより連結（リンク）されているが、その理由は上記した作用により明らかである。すなわち、管Ａを挿入する際コマ３が分かれていると、いくら内周面下部に面取りがあろうとも管ホルダ１から飛び出しやすくセットできないことが多い、また、ストロークエングとなり、管ホルダ１を下げる際コマ３が２つに分割されていると管ホルダ１から飛び出してしまうかもしくは段違いになってしまいコマ３が管Ａの表面に食い込まなくなるのを防止する、さらに、持ち運びしやすく一部を無くしたりしにくくなる。
【００２７】
上記の実施の形態では、シリンダ８とシリンダ用シャフト５で管ホルダ１とコマ３とを上方向に移動させる力が作用するようにしたが、図６（Ａ）に示すように、シリンダ８を用いないで、シリンダホルダ４の一方のプレー４ａの代わりに通常のプレート１４を用い、シリンダ用シャフト５の代わりに雄ねじ（台ねじが良い）を刻設した通常のシャフト１５と、前記シャフト１５を貫通させた一方のプレート１４と、引き抜かれる管Ａと前記コマ３が嵌まる程度のテーパ状の穴を穿設したホルダ１と該ホルダ１をボルトとナットで連結し、前記シャフト１５を固定したプレート２とを用いても良い。すなわち、引き抜かれる管Ａの外周面と接触して該管Ａを保持し且つ外周面をテーパ状としたコマ３と、該コマ３を保持するホルダ１と、外周面に雄ねじを設けたシャフト１５と、前記シャフト１５を貫通させた一方のプレート１４と前記ホルダ１を載置する他方のプレート１６と、これら一方のプレート１４と他方のプレート１６とを複数本のボルト４ｃとナット４ｄで連結してなる固定台２０と、前記シャフト１５の雄ねじに前記一方のプレート１４の上側で螺合させた雌ねじ１７と、を備えた管の引き抜き工具としてもよい。
【００２８】
或いは、図６（Ｂ）に示すように、引き抜かれる管Ａの外周面と接触して該管Ａを保持し且つ外周面をテーパ状としたコマ３と、前記管Ａとコマ３とを保持するホルダ１と、外周面に雄ねじを設けたシャフト１５と、前記シャフト１５を貫通させた一方のプレート１４と前記コマ３を収容したホルダ１を載置する他方のプレート１６と、これら一方のプレート１４と他方のプレート１６とを複数本のボルト４ｃとナット４ｄで連結してなる固定台２０と、前記シャフト１５の雄ねじに前記一方のプレート１４の上側で螺合させた雌ねじ１７と、前記外周面に雄ねじを設けたシャフト１５の端部に設けたハンドル２１と、を備えた管の引き抜き工具としてもよい。こうして、ハンドル２１を回すことによってコマ３を嵌め入れた管ホルダ１を上方向に移動させるようにしても良い。勿論、シャフト１５を固定したプレート２とコマ３を嵌め入れた管ホルダ１は他方のプレート１６の上側に設置する。この場合、雌ねじナット１７を押さえてハンドル２１を回すようにする。或いは、雄ねじを設けたシャフト１５をボールねじとし、該ボールねじをモータにより駆動するようにしても良い。或いは雌ねじナット１７の代わりにプレート１４に雌ねじを設けても良い。
【符号の説明】
【００２９】
１ 管ホルダ
１ａ 管ホルダ内周面（テーパ状）
１ｃ ボルト
１ｄ ナット
２ プレート
３ コマ
３ｂ コマ外周面（テーパ状）
３ｃ 鋸歯状凹凸
３ｌ リンク
４ シリンダホルダ
４ａ 一方のプレート
４ｂ 他方のプレート
４ｃ ボルト
４ｄ ナット
５ シリンダ用シャフト
６ インジェクタ
８ シリンダ
１４ 一方のプレート
１５ シャフト
１６ 他方のプレート
１７ 雌ねじナット
２０ 固定台
２１ ハンドル
【特許請求の範囲】
【請求項１】
引き抜かれる管の外周面と接触して該管を保持し且つ外周面をテーパ状とし、内周面が前記引き抜かれる管に接触し、かつ該内周面に凹凸を設け分割したコマ３と、該コマを嵌め入れ保持するホルダと、該ホルダとボルトによって連結されるプレートと、該プレートに固定されたシリンダ用シャフトと、油圧により前記シリンダ用シャフトを上方向に持ち上げるシリンダと、該シリンダを保持するシリンダホルダと、を備えた管の引き抜き工具。
【請求項２】
引き抜かれる管の外周面と接触して該管を保持し且つ外周面をテーパ状とし、内周面が前記引き抜かれる管に接触し、かつ該内周面に凹凸を設け分割したコマと、該コマを嵌め入れ保持するホルダと、該ホルダとボルトによって連結されるプレートと、該プレートに固定され外周面に雄ねじを設けたシャフトと、
前記シャフトを貫通させた一方のプレートと前記コマを収容したホルダを載置する他方のプレートとを複数本のボルトとナットで連結してなる固定台と、
前記シャフトの雄ねじに前記一方のプレートの上側で螺合させた雌ねじと、を備えた管の引き抜き工具。
【請求項３】
引き抜かれる管の外周面と接触して該管を保持し且つ外周面をテーパ状とし、内周面が前記引き抜かれる管に接触し、かつ該内周面に凹凸を設け分割したコマと、該コマを嵌め入れ保持するホルダと、該ホルダとボルトによって連結されるプレートと、該プレートに固定され外周面に雄ねじを設けたシャフトと、
前記シャフトを貫通させた一方のプレートと前記コマを収容したホルダを載置する他方のプレートとを複数本のボルトとナットで連結してなる固定台と、
前記シャフトの雄ねじに前記一方のプレートの上側で螺合させた雌ねじと、前記外周面に雄ねじを設けたシャフトの端部に設けたハンドルと、を備えた管の引き抜き工具。
【請求項４】
前記ホルダは、内周面が前記コマを収容して保持するテーパ状の穴が形成してある請求項１または請求項２または請求項３に記載の管の引き抜き工具。
【請求項５】
前記コマは、２つ割としこれらをリンクで連結してある請求項１または請求項２乃至請求項４のいずれかに記載の管の引き抜き工具。
【請求項６】
前記コマの内周下端周囲には、面取りがしてある請求項１または請求項２乃至請求項５のいずれかに記載の管の引き抜き工具。
【請求項１】
引き抜かれる管の外周面と接触して該管を保持し且つ外周面をテーパ状とし、内周面が前記引き抜かれる管に接触し、かつ該内周面に凹凸を設け分割したコマ３と、該コマを嵌め入れ保持するホルダと、該ホルダとボルトによって連結されるプレートと、該プレートに固定されたシリンダ用シャフトと、油圧により前記シリンダ用シャフトを上方向に持ち上げるシリンダと、該シリンダを保持するシリンダホルダと、を備えた管の引き抜き工具。
【請求項２】
引き抜かれる管の外周面と接触して該管を保持し且つ外周面をテーパ状とし、内周面が前記引き抜かれる管に接触し、かつ該内周面に凹凸を設け分割したコマと、該コマを嵌め入れ保持するホルダと、該ホルダとボルトによって連結されるプレートと、該プレートに固定され外周面に雄ねじを設けたシャフトと、
前記シャフトを貫通させた一方のプレートと前記コマを収容したホルダを載置する他方のプレートとを複数本のボルトとナットで連結してなる固定台と、
前記シャフトの雄ねじに前記一方のプレートの上側で螺合させた雌ねじと、を備えた管の引き抜き工具。
【請求項３】
引き抜かれる管の外周面と接触して該管を保持し且つ外周面をテーパ状とし、内周面が前記引き抜かれる管に接触し、かつ該内周面に凹凸を設け分割したコマと、該コマを嵌め入れ保持するホルダと、該ホルダとボルトによって連結されるプレートと、該プレートに固定され外周面に雄ねじを設けたシャフトと、
前記シャフトを貫通させた一方のプレートと前記コマを収容したホルダを載置する他方のプレートとを複数本のボルトとナットで連結してなる固定台と、
前記シャフトの雄ねじに前記一方のプレートの上側で螺合させた雌ねじと、前記外周面に雄ねじを設けたシャフトの端部に設けたハンドルと、を備えた管の引き抜き工具。
【請求項４】
前記ホルダは、内周面が前記コマを収容して保持するテーパ状の穴が形成してある請求項１または請求項２または請求項３に記載の管の引き抜き工具。
【請求項５】
前記コマは、２つ割としこれらをリンクで連結してある請求項１または請求項２乃至請求項４のいずれかに記載の管の引き抜き工具。
【請求項６】
前記コマの内周下端周囲には、面取りがしてある請求項１または請求項２乃至請求項５のいずれかに記載の管の引き抜き工具。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【公開番号】特開２０１１−６４２７７（Ｐ２０１１−６４２７７Ａ）
【公開日】平成２３年３月３１日（２０１１．３．３１）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００９−２１６０４８（Ｐ２００９−２１６０４８）
【出願日】平成２１年９月１７日（２００９．９．１７）
【出願人】（３１００１８４１２）株式会社泉精器製作所 (16)
【出願人】（０００１５０００６）日本総合住生活株式会社 (35)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２３年３月３１日（２０１１．３．３１）
【国際特許分類】
【出願日】平成２１年９月１７日（２００９．９．１７）
【出願人】（３１００１８４１２）株式会社泉精器製作所 (16)
【出願人】（０００１５０００６）日本総合住生活株式会社 (35)
【Ｆターム（参考）】
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