説明

管厚測定装置及び方法

【課題】小径配管の肉厚を管の内部から測定する管厚測定装置及び方法を提供する。
【解決手段】伸縮ポールとその先端に取り付けられた測定部と前記測定部に潤滑油を供給する潤滑系とエアーを供給するエアー配管系を有し、前記測定部は伸縮ポールのポール軸と直角に配置される2枚の平行な板状部材間に、超音波厚み計センサーとエアーでロッドを駆動するエアーシリンダーとガイドロールを有し、前記エアーシリンダーはロッドの軸線上に伸縮ポールのポール軸の軸線が垂直に位置し、且つロッドが板状部材と平行となるように取り付けられ、ロッドの先端に、潤滑油を供給する配管を取り付けたセンサーホルダーを介して、前記超音波厚み計センサーを取り付けるとともに、ガイドロールのロール軸を、ロッドの左右対称となる位置で且つガイドロールのロール外周面がエアーシリンダーの後方において前記板状部材の外側に張り出すように、前記板状部材間に直角に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管の内部から測定を行う管厚測定装置及び方法に関し、ガスクーラ方式の熱交換器で用いられる200A程度のクーラ管等小径配管の肉厚の測定に好適なものに関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器や発電設備には様々な管径の管が多数使用されているが、使用が長期間となると内部の流体との摩擦や腐食により管の肉厚(以下、管厚)が減少する。
【0003】
管厚の減少が進み、内部の高圧蒸気等が噴出すると周辺設備が破損したり、操作員が負傷するなどの大事故となるため、管厚の測定が必要で、種々の管厚測装置や測定方法が提案されている。
【0004】
特許文献1は、チューブ内部で超音波を発信して肉厚を測定するチューブの肉厚測定装置および方法に関し、チューブ内部に水流で回転する筒状円筒体を配置し、当該筒状円筒体はその内部にチューブ軸方向に発した超音波を径方向に屈折させる音響ミラーを有し、筒状円筒体が水流により回転しつつチューブ軸方向に移動することにより、チューブの肉厚を円周上の全ての点について管長方向に測定することが記載されている。
【特許文献1】特開2002−365033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、200A程度の小径管を用いる熱交換機の配管の場合、小径管においては外部から点検員が超音波探傷器により管厚を測定するのが一般的であるが、その配管状況から小径管外部からは管厚測定ができず、小型の超音波探傷器を管内に挿入して実施されている。
【0006】
しかしながら、超音波探傷器は、管内壁にセンサーを垂直に当てることが必要で、更に、熱交換機の配管内部はスケールや異物が付着しているため正確な管厚の測定には熟練が必要とされている。
【0007】
尚、特許文献1記載の肉厚測定装置は、管内部の水流を利用して測定装置を回転させる機構のため大径管での使用を前提とし、小径管で、管内をダストが流れる熱交換機には適用できない。
【0008】
そこで、本発明は、熱交換機の配管に用いられる小径管の管厚を管内部から測定する管厚測定装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の課題は以下の手段により達成可能である。
1.管厚を測定しようとする管の軸方向に挿入される伸縮ポールと前記伸縮ポールの先端に、脱着可能に取り付けられた測定部と前記伸縮ポールと前記測定部間で断続可能な配管によって前記測定部に潤滑油を供給する潤滑系とエアーを供給するエアー配管系を有する管厚測定装置であって、
前記測定部は、前記伸縮ポールのポール軸と直角方向に配置される2枚の平行な板状部材の間に、超音波厚み計センサーと、前記エアー配管系によって供給されるエアーでエアーシリンダーロッドを駆動するエアーシリンダーと、複数の、同一外径で、前記2枚の平行な板状部材の間の上下に配置されるガイドロールを有し、
前記エアーシリンダーは前記エアーシリンダーロッドの軸線上に前記伸縮ポールのポール軸の軸線が垂直となるように位置し、且つ前記エアーシリンダーロッドが前記板状部材と平行となるように前記板状部材に取り付けられ、
前記エアーシリンダーロッドの先端に、前記潤滑系から潤滑油を供給する配管を取り付けたセンサーホルダーを介して、前記超音波厚み計センサーを取り付けるとともに、
前記ガイドロールのロール軸を、前記エアーシリンダーロッドの左右対称となる位置で且つ前記ガイドロールのロール外周面が前記エアーシリンダーの後方において前記板状部材の外側に張り出すように、前記板状部材間に上下左右に4個を配置することを特徴とする管厚測定装置。
2.以下の工程を備えたことを特徴とする1記載の管厚測定装置を用いた管厚測定方法。
(1)1記載の管厚測定装置の伸縮ポールの先端から、測定部を取り外す工程。
(2)伸縮ポールの先端に清掃用ブラシを取り付け、管内に挿入し、管内壁を清掃する工程。
(3)清掃後、伸縮ポールを管内より取り出し、先端の清掃用ブラシを取り外し、前記測定部を取り付ける工程。
(4)前記伸縮ポールの長さを調整し、請求項1記載の管厚測定装置の測定部を管内の清掃した個所に合わせる工程。
(5)請求項1記載の管厚測定装置における潤滑系を開放して、超音波厚み計センサー先端に潤滑油を塗布する工程。
(6)1記載の管厚測定装置におけるエアー配管系を開放してエアーシリンダーロッドを前進させ、超音波厚み計センサーを管内周面に直角方向から押し当てて、管厚を測定する工程。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば熱交換機など外部からの管厚の測定が困難な配管でも、正確な管厚測定が可能となり産業上極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を用いて本発明を詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例に係る管厚測定装置の構成を説明するための模式図で、1は伸縮ポール、1aは伸縮ポール1の先端部、2は測定部、3a,3bは測定部2にエアーを供給するためのエアー配管、3cは測定部2に潤滑油を供給する潤滑用配管、4はエアー配管3a,3bと潤滑用配管3cの中間接続部、5はエアー配管3a,3bと潤滑用配管3cの操作用バルブを伸縮ポール1に固定するためのバルブ取り付け板、6は潤滑油の油ポット、7はエアーバルブ、9は管厚を測定しようとする管を示す。図2に図1に示した管厚測定装置の上面図を示す。
【0012】
本発明に係る管厚測定装置は、管厚を測定しようとする管9の軸方向に挿入される伸縮ポール1と測定部2を主要な構成部とする。伸縮ポール1の先端部1aには、測定部2が脱着可能に取り付けられ、管厚を測定する際は、測定前に管内壁を清掃することが必要なため、伸縮ポール1の先端部1aにはワイヤーブラシ(後述)が取り付けられる。
【0013】
また、伸縮ポール1の軸方向に沿って、測定部2にエアーを供給するためのエアー配管3a,3bと潤滑油を供給する潤滑用配管3cとが取り付けられ、伸縮ポール1の上端部のバルブ取り付け板5に潤滑油の油ポット6とエアー配管3a,3b用のエアーバルブ7がボルト(図示しない)で取り付けられている。
【0014】
エアー配管3a,3bと潤滑油を供給する潤滑用配管3cは測定部2を脱着可能とするため、中間接続部4をバルブ取り付け板5と測定部2間に設け、中間接続部4において伸縮ポール1上方からのエアー配管3a,3bと潤滑油を供給する潤滑用配管3cと測定部2のこれら配管が断続可能に接続される。
【0015】
図3は測定部2の構造を説明する模式図で、(a)は正面図、(b)は側面図を示す。図において21は伸縮ポール1aに測定部2を固定するための固定具、22はボルト、23、24は板状部材、25はエアーシリンダー、25aはエアーシリンダーロッド(以下、ロッド)、26、27はガイドロール、28はクッションゴム、29はクッションゴム28の先端面、30は超音波厚み計センサー、31はバネ、32はセンサーケース、33はスペーサ、34はセンサーホルダー、37はブラケットを示す。図1と同じ符号で示されるものは同じものを指す。
【0016】
図4に図3のD−D断面、図5にC−C断面および図6にロッド25aの先端部におけるセンサーの取り付け状況を示す。
【0017】
測定部2は、平行に配置される上下2枚の板状部材23、24の間に超音波厚み計センサー30、超音波厚み計センサーケーブル35、エアーシリンダー25、およびガイドロール26、27を備える。尚、超音波厚み計センサーケーブル35は管外の厚み計本体(図示せず)に接続されている。
【0018】
板状部材23の上方には伸縮ポール1を板状部材23に垂直方向に取り付けるための固定具21が溶接などで固着されている。2枚の固定具21の間に伸縮ポール1を挟み込み、ボルト22で締め付けることにより、伸縮ポール1に対し、板状部材23を脱着可能に取り付ける。
【0019】
エアーシリンダー25はロッド25aが板状部材23と平行で且つ、伸縮ポール1の中心軸線(の延長線)がロッド25aの軸線上にあるように、板状部材23にブラケット37を介して取り付けられ、エアー配管3a,3bからのエアーで駆動される。
【0020】
ロッド25aの先端にはセンサーホルダー34が取り付けられ、センサーホルダー34の下部にセンサーケース32を、その上部にクッションゴム28を取り付ける。
【0021】
センサーケース32はロッド25a側の端部が閉じられた底部、他端が開放された中空体で、超音波厚み計センサー30が、前記底部との間にセンサーケース32の軸方向を伸縮方向とするバネ31を挟んで収納される。更に、センサーホルダー34の壁面には潤滑油を供給する潤滑用配管3cの端部が取り付けられ、潤滑油はクッションゴム28を通過し、超音波厚み計センサー30の上部より管9の内壁に供給される。
【0022】
クッションゴム28は、その先端面29が、超音波厚み計センサー30の先端部より距離dだけ突出する形状とする(図6参照)。
【0023】
ロッド25aが前進して前記内壁に超音波厚み計センサー30が衝突する場合、まず、クッションゴム28が距離dだけ縮むことで衝撃を吸収した後、前記内壁にセンサー30とクッションゴム28が押し当てられた状態となる。
【0024】
この際、センサー30が一定の圧力で前記内壁と押し当てられるようにバネ31の長さを調整する。尚、管厚を測定する前に、潤滑用配管3cから潤滑油を前記内壁に向けて噴出させる。
【0025】
超音波厚み測定では、測定中、一定圧力で押し当てた超音波厚み計センサー30を同位置において管壁に対し、直角方向に保持することが必要なため、ロッド25aと反対側となるエアーシリンダー25の後方近傍を上下左右から挟むようにガイドロール26、27を板状部材23、24に計4個取り付ける。ガイドロール26、27は其々が左右一対で、同一外径とする。
【0026】
ガイドロール26(27)のロール軸はロッド25aに対し左右対称となるように板状部材23、24に取り付け、ガイドロール26、27の上下方向の間隔を一定に保つため、スペーサ33を取り付ける。
【0027】
尚、ロール軸は、ガイドロール26,27のロール外周面が板状部材23、24の外側(管壁側)に張り出し、管内壁に超音波厚み計センサー30を押し当てた際の反力がガイドロール26,27と管壁との接点で支えられるように、板状部材23、24の適宜の位置に取り付ける。
【0028】
また、板状部材23、24が平行に保たれるように、適宜な長さとしたスぺーサ33をロッド25a側で、ロッド25aを挟むような位置に取り付ける。
【0029】
ガイドロール26,27の厚み、スぺーサ33の長さは板状部材23、24が平行となるように適宜選定する。
【0030】
ロッド25aに対し、同一外径の、一対のガイドロール26(27)を対称に配置し、更にガイドロール26と27のロール軸をロッド25aに対し、直角方向となるように配置するので、ロッド25aを前進させると、その先端に取り付けた超音波厚み計センサー30を管壁に対して、直角方向から押し当てることが可能である。
【0031】
図7は、伸縮ポール1の先端部1aに、測定部2に替えてワイヤーブラシ42を取り付けた状況を示す。ワイヤーブラシ42をブラシ取り付け板40で挟み、上方のブラシ取り付け板40を固定ブラケット41を介して伸縮ポール1の先端部1aに取り付ける。
【0032】
次に、本発明に係る管厚測定装置で、管厚を測定する方法について説明する。本発明では、管厚測定装置の伸縮ポール1にまず、ワイヤブラシ42を取り付け、測定しようとする管9の内壁を清掃する。
【0033】
清掃後、管厚測定装置の伸縮ポール1に測定部2を取り付け、伸縮ポール1上方のエアー配管3a,3bと潤滑用配管3cを中間接続部4で測定部2からの配管に接続する。
【0034】
測定部2を取り付ける場合は、板状部材23に対し、伸縮ポール1のポール軸が管の軸方向に垂直となるように取り付ける。
【0035】
管厚を測定する際は、まず、伸縮ポール1の長さを調整し、測定部2の超音波厚み計センサー30が管内の清掃した個所に押し当てられるようにする。潤滑用配管3cを開放し、超音波厚み計センサー30からの超音波を管壁に伝達させるため管9の内壁に潤滑油を塗布する。
【0036】
そして、エアー配管系を開放してロッド25aを前進させ、超音波厚み計センサー30を管内壁に直角方向から押し当て、管厚を測定する。超音波厚み計センサー30からの検出信号は超音波厚み計センサーケーブル35で操作員の手元に置かれた超音波厚み計の本体に伝送される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明例。
【図2】図1に示した本発明例の上面図。
【図3】図1に示した本発明例の部分拡大図で、(a)は正面図、(b)は側面図。
【図4】図3に示した本発明例の断面図。
【図5】図3に示した本発明例の他の断面図。
【図6】図3に示した部分拡大部の斜視外観図。
【図7】図1に示した本発明例における操作部をワイヤーブラシに交換した図。
【符号の説明】
【0038】
1 伸縮ポール
1a 先端部
2 測定部
3a,3b エアー配管
3c 潤滑用配管
4 中間接続部
5 バルブ取り付け板
6 潤滑油の油ポット
7 エアーバルブ
9 管
21 固定具
22 ボルト
23、24 板状部材
25 エアーシリンダー
25a エアーシリンダーロッド
26、27 ガイドロール
28 クッションゴム
29 先端面
30 超音波厚み計センサー
31 バネ
32 センサーケース
33 スペーサ
34 センサーホルダー
35 超音波厚み計センサーケーブル
37 ブラケット
40 ブラシ取り付け板
41 固定ブラケット
42 ワイヤーブラシ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管厚を測定しようとする管の軸方向に挿入される伸縮ポールと前記伸縮ポールの先端に、脱着可能に取り付けられた測定部と前記伸縮ポールと前記測定部間で断続可能な配管によって前記測定部に潤滑油を供給する潤滑系とエアーを供給するエアー配管系を有する管厚測定装置であって、
前記測定部は、前記伸縮ポールのポール軸と直角方向に配置される2枚の平行な板状部材の間に、超音波厚み計センサーと、前記エアー配管系によって供給されるエアーでエアーシリンダーロッドを駆動するエアーシリンダーと、複数の、同一外径で、前記2枚の平行な板状部材の間の上下に配置されるガイドロールを有し、
前記エアーシリンダーは前記エアーシリンダーロッドの軸線上に前記伸縮ポールのポール軸の軸線が垂直となるように位置し、且つ前記エアーシリンダーロッドが前記板状部材と平行となるように前記板状部材に取り付けられ、
前記エアーシリンダーロッドの先端に、前記潤滑系から潤滑油を供給する配管を取り付けたセンサーホルダーを介して、前記超音波厚み計センサーを取り付けるとともに、
前記ガイドロールのロール軸を、前記エアーシリンダーロッドの左右対称となる位置で且つ前記ガイドロールのロール外周面が前記エアーシリンダーの後方において前記板状部材の外側に張り出すように、前記板状部材間に上下左右に4個を配置することを特徴とする管厚測定装置。
【請求項2】
以下の工程を備えたことを特徴とする請求項1記載の管厚測定装置を用いた管厚測定方法。
(1)請求項1記載の管厚測定装置の伸縮ポールの先端から、測定部を取り外す工程。
(2)伸縮ポールの先端に清掃用ブラシを取り付け、管内に挿入し、管内壁を清掃する工程。
(3)清掃後、伸縮ポールを管内より取り出し、先端の清掃用ブラシを取り外し、前記測定部を取り付ける工程。
(4)前記伸縮ポールの長さを調整し、請求項1記載の管厚測定装置の測定部を管内の清掃した個所に合わせる工程。
(5)請求項1記載の管厚測定装置における潤滑系を開放して、超音波厚み計センサー先端に潤滑油を塗布する工程。
(6)請求項1記載の管厚測定装置におけるエアー配管系を開放してエアーシリンダーロッドを前進させ、超音波厚み計センサーを管内周面に直角方向から押し当てて、管厚を測定する工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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