説明

管球の落下防止機構付きランプ

【課題】管球の封止部やその周辺部にクラックが発生しても、管球の落下を確実に防止する落下防止機構付きランプを提供する。
【解決手段】管球2は管球の落下防止機構22を備え、マウント8に対し自在に保持されたスライド部材を有し、ランプ軸線L-L'に沿った方向成分とランプ軸線を中心とする半径方向成分とをもつ方向にスライド移動自在であり、ランプ口金6を下方にしたとき、ランプ軸線に沿って管球のトップ部2bからランプ口金6に向かう方向成分とランプ軸線から半径方向内向き成分とをもつ方向にスライド移動して、ネック部2c口径の範囲内で停止し、ランプを上下反転してランプ口金6を上方にしたとき、ランプ軸線に沿ってランプ口金6から管球のトップ部2bに向かう方向成分とランプ軸線から半径方向外向き成分とをもつ方向にスライド移動して、ネック部2c口径を超えた位置で停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管球の落下防止機構付きランプに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、セラミックメタルハライドランプ及び高圧ナトリウムランプのような高輝度放電ランプ(HIDランプ:High Intensity Discharge Lamp)は、電極間の放電を利用して発光する。このため、白熱電球と比べて、光束が大きく大規模な空間の照明に適し、エネルギー効率が良いため消費電力が少なく、寿命も長く、一般に演色性が高い、といった種々の特徴を備えている。従って、店舗、工場、ホール、スポーツ施設等の照明、テレビや映画のロケーション照明、自動車や鉄道車両の前照灯として、一般に広く使用されている。
【0003】
高輝度放電ランプは、管球(「外管バルブ」ともいう。)の内部に、発光源として放電電極及び金属ハロゲン化物、希ガス等の放電媒体を封装した発光管を収納した二重構造となっている。この発光管を支持するマウントのステム管と外管バルブのネック部とを封止し、外管バルブ内を不活性ガスや窒素ガス或いは真空雰囲気にして、発光管の保護、保温、外管バルブ内部の金属部品の酸化防止等を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-184359号公報「照明用管球」(2002年06月28日公開)
【特許文献2】特開2008-66222号公報「高圧放電ランプ」(2008年03月21日公開) 図1は、特許文献1に開示する管球の落下防止機構を説明する図である。但し、本願図面の参照符号との重複を避けるため、図1の参照符号及び以下の説明は、特許文献1の図1及び2の参照符号を100番台に変更している。明細書段落0010〜0011に、「…留め金101は留め金本体101aと留め金心棒101bからなっており、留め金本体101aは…ステンレス鋼板を断面がコの字形になるように折り曲げたもので、留め金心棒101bを軸にして回転する。回転の範囲は支持金具とのなす角度が最大60度程度である。…留め金本体1aは重心軸を外して留め金心棒1bに支持されているので、口金が上になった時、留め金本体は重力によって回転し、支持金具2となす角度が60度まで回転する。…これとは逆に口金が下側になった時は、留め金本体と支持金具2のなす角度は0度になる。」と説明されている。
【0005】
図2は、特許文献2に開示する管球の落下防止機構を説明する図である。但し、本願図面の参照符号との重複を避けるため、図2の参照符号は、特許文献2の図1の参照符号を200番台に変更している。要約に、「ランプ210では、外管バルブ214の上記球体部214a内における内部ステムリード212には、アーム222を有する落下ストッパ220が1つだけ取付けられており、アーム222が、その一端を支点Fとして、他端が第1の位置から第2の位置までの間を弧を描く状態に回転自在に構成されている。第2の位置では、アーム222が外管バルブ214の管軸Ax10に対し、70[°]よりも大きく、110[°]以下の角度をなす。」と説明されている。
【0006】
この特許文献1及び2には、以下に説明するスライド機構を利用した管球の落下防止機構は開示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高輝度放電ランプは、照明装置のソケットへの口金の装着時或いは点灯経過時において、希に、ステム管と外管バルブのネック部との封止部やその周辺部に、クラック等の割れを生じることがあった。クラックの原因としては、ガラス製外管バルブとステム管との封止作業時の加熱バーナによるガラス溶融の不具合により、封止部をモールド成形した際に、封止部やその周辺部のガラスの厚みが不均一に成る場合が挙げられる。或いは、バルブから導出した外部導入線と口金とを半田等のろう材を用い接続するスポット的な加熱時に生じる歪等を除去する歪除去バーナの調整不具合により、封止部やその周辺部のガラスに歪みが残留する場合が挙げられる。このようなガラス厚みの不均一、残留歪み等により、外管バルブの封止部やその周辺部に、微小な傷やひび割れが進行したり、加工残存歪が大きくなったりする。
【0008】
高輝度放電ランプのE(ねじ込み)形口金をソケットにねじ込みながら装着する際に外管バルブの封止部やその周辺部に強い捻り力、ランプ点滅による熱的衝撃或いは振動衝撃等が、薄肉部、微小な傷やひび割れ部分、歪量が大きい部分等に加わった場合に、この部分にクラックや割れが生じるおそれがある。
【0009】
封止部やその周辺部に生じたクラックや割れが一周すると、外管バルブがE型口金から離脱して落下するおそれがある。なお、この問題は、後述するように高輝度放電ランプに限られず、他の白熱ランプにも存在している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題点に鑑みて、本発明は、管球の封止部やその周辺部にクラックが発生しても、管球の落下を確実に防止する落下防止機構付きランプを提供することを目的とする。
【0011】
上記目的に鑑みて、本発明に係る管球の落下防止機構付きランプは、ネック部の口径より中央部の口径が大きい管球と、前記管球の落下防止機構とを備え、前記落下防止機構は、マウントに対してスライド自在に保持されたスライド部材を有し、前記スライド部材は、ランプ口金と前記管球のトップ部とを結ぶランプ軸線に沿った方向成分と該ランプ軸線を中心とする半径方向成分とをもつ方向にスライド移動自在であり、前記ランプ口金を下方にしたとき、前記スライド部材は、前記ランプ軸線に沿って前記管球のトップ部から前記ランプ口金に向かう方向成分と該ランプ軸線から半径方向内向き成分とをもつ方向にスライド移動して、該スライド部材は前記ネック部口径の範囲内で停止し、前記ランプを上下反転してランプ口金を上方にしたとき、前記スライド部材は、前記ランプ軸線に沿って前記ランプ口金から前記管球のトップ部に向かう方向成分と該ランプ軸線から半径方向外向き成分とをもつ方向にスライド移動して、該スライド部材の一部は前記ネック部口径を超えた位置で停止する。
【0012】
更に、上記管球の落下防止機構付きランプでは、前記スライド部材は、スライド部と、前記スライド部をスライド自在に保持する保持部材と、前記保持部材を前記マウントに固定する固定部材を有していてもよい。
【0013】
更に、上記管球の落下防止機構付きランプでは、前記スライド部材は、線材を略直角三角形に折り曲げて両端を接続して形成され、三角形の第一の辺は、前記ランプ軸線に沿って鉛直方向に延在し、三角形の第二の辺は、スライド部を構成し、三角形の第三の辺は、第一の辺の端部と第二の辺の端部を接続していてもよい。
【0014】
更に、上記管球の落下防止機構付きランプでは、前記落下防止機構は、更に、前記スライド部材の旋回防止機構を有し、前記旋回防止機構は、前記スライド部材が前記スライド部の軸中心の周りを旋回しないように、前記三角形の第三の辺を取り囲むように形成されていてもよい。
【0015】
更に、上記管球の落下防止機構付きランプでは、前記落下防止機構は、前記スライド部の断面形状を非円形とし、該スライド部を摺動自在に保持する保持部材の断面形状を該非円形に対応する非円環形状として、構成されていてもよい。
【0016】
更に、上記管球の落下防止機構付きランプでは、前記スライド部材は、重量を増加するための錘を有していてもよい。
【0017】
更に、上記管球の落下防止機構付きランプでは、前記落下防止機構を複数個設けていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、管球の封止部やその周辺部にクラックが発生しても、管球の落下を確実に防止する落下防止機構付きランプを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、先行技術文献である特許文献1に開示する管球の落下防止機構を説明する図である。
【図2】図2は、先行技術文献である特許文献2に開示する管球の落下防止機構を説明する図である。
【図3】図3は、本実施形態に係る、管球の落下防止機構付き高輝度放電ランプの全体を説明する図である。
【図4】図4は、本実施形態に係る、高輝度放電ランプのバルブ形状を説明する図である。
【図5A】図5Aは、図3のマウントと、これに取り付けた管球の落下防止機構とを示し、ここで、(A)は落下防止機構の作動前の状況を示し、(B)は作動後の状況を示している。
【図5B】図5Bは、図5Aの落下防止機構の詳細を説明する図であり、ここで、(A)及び(B)は、図5Aの(A)及び(B)に示す夫々の落下防止機構の拡大図である。
【図5C】図5Cは、図5Aのスライド部材の作動前後の様子と、スライド部材と外管バルブの位置関係を説明する図である。
【図6】図6は、図3に示す管球の落下防止機構付き高輝度放電ランプの使用方法を説明する図である。
【図7】図7は、複数個の管球の落下防止機構を有する他の実施形態に係る高輝度放電ランプを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る管球の落下防止機構付きランプの実施形態に関して、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図中、同じ要素に対しては同じ参照符号を付して、重複した説明を省略する。
【0021】
[管球の落下防止機構付きランプ]
(高輝度放電ランプの構造)
図3は、本実施形態に係る管球の落下防止機構付きランプを説明する図である。ランプとして、高輝度放電ランプの1つであるセラミックメタルハライドランプ10を例に挙げて説明する。
【0022】
図3に示すように、ランプ10は、管球(「外管バルブ」とも言う。)2の内部に、発光部となる発光管4を内封した二重構造となっている。外管バルブ2の端部には、E形(ねじ込み形)の口金6が接合されている。発光管4は、金属の線材や板を組み合わせた構造物にシュラウドや始動回路(後で説明する。)を取り付けたマウント8により、所定の位置に支持され、給電される。
【0023】
これらの各要素について詳述する。
【0024】
発光部となる発光管4は、中央の太管部4a及び両端の細管部4b,4cの形状をもつセラミックス製の透光性容器である。1対のリード線5,7が、これら細管部4b,4cを夫々通して太管部4aの領域まで延びて、1対の主電極(図示せず。)を形成している。これらの電極は、典型的には、タングステン(W)等で構成されている。
【0025】
発光管4の容器内には、発光及び放電媒体として、所定量の水銀と、金属ハロゲン化物と、希ガスとして所定圧力のアルゴン(Ar)ガスが封入されている。希ガスとして、アルゴン(Ar)ガス以外に、少量のネオン(Ne)等の他の希ガスが混入されていてもよい。金属ハロゲン化物としては、よう素(I)、臭素(Br)、塩素(Cl)等のハロゲンと、ナトリウム(Na)、スカンジウム(Sc)、セシウム(Cs)、ディスプロシウム(Dy)等の少なくとも一種の発光金属とが封入され、発光効率、演色性や色温度等の特性の向上が図られている。
【0026】
マウント8は、一対の導入線が気密封着されたステム管14と、一方の導入線に接続された、モリブデンMo,ステンレス等の線材や略長四角形状の枠状に成形した丸棒体から成る支柱16と、発光管4の周囲を囲むように配設された透明石英ガラス管からなるシュラウド(「中管」ともいう。)18と、抵抗器やバイメタル等の熱応動スイッチからなる始動回路部20とを主要部品として構成されている。
【0027】
外管バルブ2は、例えば、ホウケイ酸ガラス等の透光性の硬質ガラスからなり、最大口径の中央部2a、図で見て下部側の閉塞されたトップ部2b、及び上部側のネック部2cを有するBT形をなしている。ネック部2cには、ステム管14のフレア部が封止された封止部(図示せず。)が有り、封止後、ステム管14に設けられた排気管(図示せず。)を通じて外管バルブ2内は排気され、アルゴン(Ar)等の不活性ガスや窒素(N2 )ガス等が封入され、或いは真空とした気密雰囲気となっている。この封止部を覆ってねじ込み形口金6が耐熱性の接着剤を用いて接合され、或いはモールドにより形成された螺旋状のねじ溝に口金6が螺合されて取付けられる。
【0028】
落下防止機構22に関しては、図5A,5B及び5Cを用いて後述する。
【0029】
図3に示すセラミックメタルハライドランプ10は、口金6側が上方に位置する鉛直又は傾斜したベースアップ状態で点灯される。即ち、セラミックメタルハライドランプ10は、ソケット(図示せず。)に装着して、電源から所定の点灯回路装置(図示せず。)を介し通電され、主電極間の放電により安定した点灯が持続する。
【0030】
(対象となるランプ及びランプ形状)
図3では、セラミックメタルハライドランプ10を例に挙げて説明している。しかし、これに限定されない。対象となるランプは、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、セルフバラスト水銀ランプ及び高圧ナトリウムランプのような高輝度放電ランプが含まれる。更に、対象となるランプは、高輝度放電ランプに限られず、管球が剥き出しでカバー無しで使用されている白熱ランプ等も含まれる。
【0031】
図3では、BT形ランプ10を例にとって説明をしている。しかし、ランプの形状は、これに限定されない。図4は、本実施形態に係るランプのバルブ形状を説明する図である。本実施形態に係るランプは、ネック部2cの口径より中央部2aのそれが大きい全てのランプ形状であってよい。例えば、本実施形態に係るランプは、(A)に示すB型(Bulged)、(B)に示すBT型(Bulged-Tube)、(C)に示すR型(Reflector)、及び(D)に示すG型(Globe)であってよい。しかし、ネック部2cと中央部2aが、同じ口径を有する(E)に示すT(Tube)型は、本実施形態の対象とはならない。
【0032】
(管球の落下防止機構)
図5A,5B及び5Cは、図3に示す高輝度放電ランプの管球の落下防止機構22の詳細を説明する図である。
【0033】
図5Aは、図3のマウント8と、これに取り付けた管球の落下防止機構22とを示し、ここで、(A)は落下防止機構22の作動前の状況を示し、(B)は作動後の状況を示している。ここで注意願いたいことは、図5Aでは、マウント8に対する落下防止機構22の作動状況を分かり易くするため、敢えて、(A)及び(B)でマウント8が対応するように描かれている。即ち、マウント8自体を反転させた図ではなく、(A)ではマウント8及び落下防止機構22に対する重力Gが矢印方向(図面で上方向)にかかり、上下反転した(B)では重力Gの矢印方向を反転(図面で下方向)させていることに留意されたい。
【0034】
落下防止機構22は、マウント8の所定箇所(図では、支柱16)に取り付けられている。落下防止機構22は、発光管からの配光への影響が少ない位置に取り付けることが好ましい。落下防止機構22は、好ましくは、支柱16と同じ材質である、モリブデンMo、ステンレス等の線材から形成されている。落下防止機構22の作動は、高輝度放電ランプ10の上下を反転(従って、内部の落下防止機構22を上下反転)させることにより行われる。
【0035】
(A)に示すマウント8を上下反転することにより、(B)に示すようにマウント8から落下防止機構22が横方向(白抜き矢印)に移動する。
【0036】
図5Bは、この落下防止機構22の詳細を説明する図であり、ここで、図5Bの(A)及び(B)は、図5Aの(A)及び(B)に示す夫々の落下防止機構22の拡大図である。図5(A)に示すように、落下防止機構22は、スライド部材22cと、このスライド部材22cを保持する保持部材22aと、この保持部材をマウントの一部(図では、支柱16)に固定する固定部材22bと、スライド部材22cの旋回を防止する旋回防止部材22dとを有している。
【0037】
スライド部材22cは、所定の長さの線材又は棒状体(以下、単に「線材」という。)をほぼ三角形に折り曲げて両端を接続して形成されている。
【0038】
保持部材22aは、三角形のスライド部材22cの一辺にあたるスライド部22c−1の一部を包囲するように形成された所定の長さの円筒部材(チューブ状)から構成され、スライド部22c−1をスライド自在に保持する。
【0039】
固定部材22bは、保持部材22aをマウント8の一部(図では、支柱16)に固定している。
【0040】
落下防止機構22は、マウント8に対してスライド自在に保持されたスライド部材22cを有しており、ランプの完成状態では、このスライド部材22cは、ランプ口金6と管球2のトップ部2bとを結ぶランプ軸線L−L'に沿った方向成分とこのランプ軸線を中心とする半径方向成分とをもつ方向にスライド移動自在となっている。
【0041】
旋回防止部材22dは、保持部材22aに対してスライド部材22cが旋回しないようにしている。旋回防止部材22dは、支柱16に取り付けられたコの字状の線材であって、スライド部材22cの自由なスライド移動を確保し、且つスライド部材22cの旋回を防止している。即ち、一辺22c−2を囲むことにより、スライド部材22cがスライド部22c−1の軸中心の周りに旋回しないようにしている。
【0042】
落下防止機構22の作動状態に関しては、(A)に示すように、当初、スライド部材22cの大部分は、マウント8の内側(即ち、支柱16右側)に位置している。この状態からランプ10を上下反転(即ち、マウント8及びスライド部材22cを上限反転)することにより、(B)に示すように、スライド部材22cは、白抜き矢印に示すように横方向に移動する。
【0043】
図5Cは、このスライド部材22cの作動前後の様子と、スライド部材と外管バルブ2の位置関係を説明する図である。作動前のスライド部材22cを破線で示し、作動後のスライド部材22cを実線で示している。
【0044】
作動前には、スライド部材22cは外管バルブ2のネック部2cの内面から離れた位置に停止している。マウント8及びスライド部材22cを上限反転することにより、重力Gのかかる方向が反転し、スライド部材22cの自重によって、スライド部22c−1が、保持部材22bに対してスライド移動(摺動)し、スライド部材22cは全体に斜め下方向(白抜き矢印方向)に移動する。
【0045】
スライド部材22cは、外管バルブ2の軸中心からの距離でネック部2cより長い位置(即ち、ネック部より外側)に停止する。或いは、スライド部材22cは、外管バルブ2のネック部2cより口径の大きい係止部2d(具体的には、ネック部2cから中央部2aへの変移部、又は中央部2a)に係止する。このスライド移動が円滑に行われるため、スライド部22c−1の表面は良く磨かれた状態であることが好ましい。
【0046】
作動前の破線で描かれたスライド部材22cの大部分は、支柱16より右側(即ち、マウント8の内部)に位置決めされていた。従って、マウント8を外管バルブ2の口径の狭いネック部2aを通して挿入することが可能である。上下を反転した作動後では、スライド部材22cの大部分は、支柱16より左側(即ち、マウント8の外部)に位置決めされ、停止している。従って、マウント8を外管バルブ2の口径の狭いネック部2cから引き抜こうとしても、スライド部材22cが外管バルブ2の内面に係合して、引き抜くことが出来なくなる。即ち、ソケット(図示せず。)にネジ込まれた口金6に一体に形成されたマウント8と、外管バルブ2とは、分離出来なくなる。
【0047】
これまでランプ10の取り付け方向に関して、口金6を上方にしてソケット(図示せず。)に取り付ける説明してきたが、これに限定されない。この落下防止機構22は、スライド部材22cのスライド移動方向(白抜き矢印方向)が水平方向より下向きであれば機能することを承知されたい。点灯状態でランプ10の軸線L−L'(図3参照)が斜めであっても、スライド移動方向が水平方向より下向きであれば、落下防止機構22は機能する。なお、ランプ10を斜めに取り付けて点灯する場合、予め、微振動を与えてスライド部材22cを確実にスライド移動することが好ましい。
【0048】
ここで、スライド部材22cを、線材をほぼ直角三角形(但し、直角部分が少し鋭角であってもよい。)に折り曲げて両端を接続して形成した点は、次の通りである。先ず、スライド部材22cが保持部材22aに保持されたとき、一辺22c−2が外管バルブ2の軸線L−L'に沿って鉛直方向に延びていることにより、作動前にはスライド部材22cを最も内側(外管バルブ2の軸線から半径方向に短い位置)に収納することが出来る。
【0049】
次に、スライド部22c−1の長さを長く確保することが出来る。
【0050】
更に、円滑なスライド移動の要請と、スライド部材22cの大きな横方向移動(外管バルブ2の軸線から半径方向に向かう移動)の要請との折り合いによる。即ち、支柱16に対するスライド部22c−1の傾きθは、小さければスライド移動は円滑に行われる。しかし、スライド部材22cの横方向移動距離は小さくなる。反対に、この傾斜θを大きくすると、スライド部材22cの横方向移動距離は大きくなるが、しかしスライド部22c−1の円滑なスライド移動に欠けることになる。
【0051】
結局、最初に、鉛直に延びる一辺22c−2が決定される。次に、実験を通して円滑なスライド移動が確保できる傾きθが決定される。現時点で、この傾きθは角度45度前後である。更に、確実に落下防止機能が発揮されるスライド部材22cの横方向移動距離(軸線L−L'から半径方向の距離)が決定されると、スライド部22c−1のスライド可能な長さ(即ち、スライド部22c−1の長さ及び保持部材22aの長さ)が決定される。最後に、他の一辺の長さは必然的に定まる。
【0052】
これらの諸要求を満たす形状として、スライド部材22cは、線材をほぼ直角三角形(直角部分が少し鋭角であってよい。)に折り曲げて両端を接続して形成されている。
【0053】
(マウント及びスライド部材の変形例)
ここで、図5A〜5Cを参照しながら、マウント8(特に、支柱16)及びスライド部材22cに関する変形例に関して列挙する。
【0054】
(1) スライド部材22cは、三角形に成形された線材に限定されない。スライド部22c−1が所定の長さの真っ直ぐな線材である限り、他の形状を採用してもよい。例えば、スライド部22c−1を除いた部分を三角形の板状体にしてもよい。或いは、三角形の一辺である22c−2は連続した線材でなく、一部に切り欠きが有ってもよい。
【0055】
(2) 旋回防止部材22dは、支柱16に取り付けられたコの字状の線材として示してあるが、これに限定されない。例えば、上記(1)に記載したように、スライド部材22cが三角形の板状体である場合、旋回防止部材22dは、支柱16に取り付けられたL字状の線材となる。
【0056】
(3) 旋回防止部材22dは、スライド部材22cと別体で示しているが、これに限定されない。この旋回は、スライド部22c−1の断面形状が円形であるために生じる。従って、他の旋回防止機構を採用してもよい。例えば、旋回防止機構として、スライド部22c−1の断面形状を非円形とし、保持部材22aの断面形状を、これを包囲する非円環形状にしてもよい。具体的には、スライド部22c−1の断面形状を楕円形、多角形(三角形、四角形等)の線材とし、保持部材22aをこれに対応した楕円形の管、多角形の管としてもよい。
【0057】
(4) このスライド部材22cのスライド移動は、重力を利用して作動している。そのため、スライド部材22cの重量を重くすることにより、スライド移動はスムーズに行われる。従って、スライド部材22cを重量の重い金属で形成したり、或いはスライド部材22cの一部に錘を取り付けたり、スライド部材22cの一部を太くしたりして、重量を増加してもよい。例えば、スライド部22c−1の両端の一方又は両方の部分を玉状に成形して、錘部としてもよい。
【0058】
(5) スライド部材22cが固定される対象は、支柱16に限定されない。口金6と一体になっているマウント8の所望の箇所に固定してもよい。
【0059】
(使用状態)
図6は、図3に示す高輝度放電ランプ10の使用方法を説明する図である。(A)において、マウント8にスライド部材22cを取り付ける。次に(B)において、外管バルブ2を、ネック部2cを下にして位置決めする。次に、マウント8を、下方からネック部2cに通して外管バルブ2内に挿入する。このとき(C)に示すように、マウント8に取り付けられたスライド部材22cの大部分がマウント8内の位置にあり、容易に挿入することができる。挿入が終了した(D)の段階で、口金6を用意し、ネック部2cに取り付ける。次に(E)の段階で、ランプ2を上下反転して、スライド部材22cをスライド移動する。このスライド移動が終了した段階では、スライド部材22cの大部分がマウント8の外側の位置に停止している。
【0060】
ランプの完成状態では、ランプ口金6を下方にしたとき、スライド部材22cは、ランプ軸線L−L'に沿って管球のトップ部2bからランプ口金6に向かう方向成分とランプ軸線から半径方向内向き成分とをもつ方向にスライド移動して、スライド部材22cはネック部2cの口径の範囲内で停止する。ランプ10を上下反転してランプ口金6を上方にしたとき、スライド部材22cは、ランプ軸線L−L'に沿ってランプ口金6から管球のトップ部2bに向かう方向成分とランプ軸線から半径方向外向き成分とをもつ方向にスライド移動して、スライド部材22cの一部はネック部2cの口径を超えた位置で停止する。
【0061】
これにより、外管バルブ2の封止部やその周辺部にクラックや割れが生じて一周して落下しようとしても、スライド部材22cが外管バルブ2の内壁の一部に係合して、外管バルブ2が口金6から離脱して落下することはない。
【0062】
このとき、ランプ10に微振動を与えると、一層確実にスライド部材22cはスライド移動する。実際には、ランプの使用者が、天井その他の箇所に取り付けられたソケット(図示せず。)に対して、下方からランプ10の口金6をねじ込む時、ランプ10に微振動が加えられ、スライド部材22cは確実にスライド移動することになる。
【0063】
[他の実施形態に係る管球の落下防止機構付きランプ]
図7は、複数個(図では2個)の管球の落下防止機構22を有する他の実施形態に係るランプを説明する図である。図4に示したように、ランプ10の外管バルブ2には種々の形状がある。例えば、ネック部2cから中央部2aにかけて口径が徐々に大きくなるようなバルブ形状の場合、複数個の落下防止機構22−1,22−2を設けることが好ましい。落下防止機構22の個数は、個々のランプの外管バルブ2の形状、外管バルブ2とマウント8の位置関係等によって決定される。
【0064】
[その他]
以上、管球の落下防止機構付きランプの実施形態に関して説明したが、これらは例示であって、本発明はこれに限定されない。当業者が容易になしえる、実施形態に対する追加、削除、変更、改良等は、本発明の範囲内である。本発明の技術的範囲は、添付の特許請求の範囲の記載に基づいて定められる。
【符号の説明】
【0065】
10:セラミックメタルハライドランプ,ランプ,BT形ランプ、 2:管球,外管バルブ、 2a:中央部、 2b:トップ部、 2c:ネック部、 4:発光管、 4a:太管部、 4b,4c:細管部、 5:リード線、 6:口金、 7:リード線、 8:マウント、 12:金属箔、 14:ステム管、 16:支柱、 18:シュラウド,中管、 20:始動回路、 22:落下防止機構、 22a:保持部材、 22b:固定部材、 22c:スライド部材、 22c−1:スライド部、 22c−2:一辺、 22d:回転防止部材、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネック部の口径より中央部の口径が大きい管球と、
前記管球の落下防止機構とを備え、
前記落下防止機構は、マウントに対してスライド自在に保持されたスライド部材を有し、
前記スライド部材は、ランプ口金と前記管球のトップ部とを結ぶランプ軸線に沿った方向成分と該ランプ軸線を中心とする半径方向成分とをもつ方向にスライド移動自在であり、
前記ランプ口金を下方にしたとき、前記スライド部材は、前記ランプ軸線に沿って前記管球のトップ部から前記ランプ口金に向かう方向成分と該ランプ軸線から半径方向内向き成分とをもつ方向にスライド移動して、該スライド部材は前記ネック部口径の範囲内で停止し、
前記ランプを上下反転してランプ口金を上方にしたとき、前記スライド部材は、前記ランプ軸線に沿って前記ランプ口金から前記管球のトップ部に向かう方向成分と該ランプ軸線から半径方向外向き成分とをもつ方向にスライド移動して、該スライド部材の一部は前記ネック部口径を超えた位置で停止する、管球の落下防止機構付きランプ。
【請求項2】
請求項1に記載のランプにおいて、
前記スライド部材は、
スライド部と、
前記スライド部をスライド自在に保持する保持部材と、
前記保持部材を前記マウントに固定する固定部材とを有している、ランプ。
【請求項3】
請求項2に記載のランプにおいて、
前記スライド部材は、線材を略直角三角形に折り曲げて両端を接続して形成され、
三角形の第一の辺は、前記ランプ軸線に沿って鉛直方向に延在し、
三角形の第二の辺は、スライド部を構成し、
三角形の第三の辺は、第一の辺の端部と第二の辺の端部を接続している、ランプ。
【請求項4】
請求項3に記載のランプにおいて、
前記落下防止機構は、更に、前記スライド部材の旋回防止機構を有し、
前記旋回防止機構は、前記スライド部材が前記スライド部の軸中心の周りを旋回しないように、前記三角形の第三の辺を取り囲むように形成されている、ランプ。
【請求項5】
請求項3に記載のランプにおいて、
前記落下防止機構は、前記スライド部の断面形状を非円形とし、該スライド部を摺動自在に保持する保持部材の断面形状を該非円形に対応する非円環形状として、構成されている、ランプ。
【請求項6】
請求項2に記載のランプにおいて、
前記スライド部材は、重量を増加するための錘を有している、ランプ。
【請求項7】
請求項1に記載のランプにおいて、
前記落下防止機構を複数個設けている、ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−216434(P2011−216434A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85933(P2010−85933)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】