説明

管路内検査装置

【課題】走行車が管路内に堆積した汚泥、粘土、スラリ、砂、瓦礫などの異物に埋まったり、異物を噛み込んだりせず、水中の藻や草などに絡まることなく安定走行でき、機動性、走行安定性、汎用性に優れ、簡単な操作で短時間の内に効率的に管路内の検査を行うことができ、操作性、取扱い性に優れ、不具合発生箇所を簡便かつ確実に記録できる検査作業の信頼性、効率性に優れた管路内検査装置の提供。
【解決手段】走行車が、車両本体の両側部にそれぞれ複数ずつ配設される車輪部を備えた走行部と、車両本体の上部にレンズが配設されたカメラと、車両本体に配設された照明部と、を有し、走行部が、各々の車輪部の両側部の少なくともいずれか一方の外側方向又は各々の車輪部の外周方向に突出する複数の突起部を有する推進補助部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管路の内部を移動する走行車によって管路の内壁面を撮影する管路内検査装置に関し、特に、管路の底部に汚泥、粘土、スラリ、砂、瓦礫などが堆積している場合や表層部に水が溜まっている場合、或いは水流がある場合の管路内の走行に好適な機動性、走行安定性に優れた走行車を用いることにより、簡単な操作で短時間の内に効率的に管路内の検査を行うことができる操作性、取扱い性に優れた管路内検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下水管等の内壁表面におけるひび割れや亀裂などの発生状態を確認するために、管内を走行し、内壁表面の撮影や測定を行う各種の検査装置が提案されている。
例えば、本出願人が発明した(特許文献1)には「フレームと、フレームの進行方向前方側から見てフレームの下部から両外側下方に向かってハの字型に配設された左右一対のタイヤ保持部と、底面部が円弧状の管内の走行時に管内の壁面に接する円管路接触部と円管路接触部に連続して内側の周縁部に形成され平坦路の走行時に接地する平坦路接触部とを有する複数のタイヤが各々のタイヤ保持部の内側面に対向して配設された左右一対のタイヤ列と、複数のタイヤを左右のタイヤ列単位で全輪駆動する左右一対の駆動モータと、フレームの進行方向前方側の先端部に配設されたレンズを有しフレームに内蔵されたカメラと、フレームに内蔵されカメラで撮影した画像を記憶する記憶部と、フレームに配設され進行方向前方側を照らす照明部と、を備えた自走式管内検査ロボット」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3152398号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
(1)(特許文献1)のタイヤ式管内検査ロボットは、円管路でも平坦路でも走行することができ、様々な断面形状の管路に対応することが可能で汎用性に優れ、異物を噛み込んで走行不能に陥ることがなく、走行安定性、機動性に優れるものであった。
(2)しかし、管路の中には、様々な異物が堆積しており、粘質性の汚泥、粘土、スラリなどが堆積している場合や柔らかい砂などが堆積している場合は、タイヤが埋まって走行不能になるという課題を有していた。また、石やガレキなどを踏み越えることができず、走行不能になるという課題を有していた。
(3)特に山間部などに敷設される管路、粘性の高い液体などを輸送する管路、多量の土砂などと一緒に水が流れる農業用水路などの内部には、上記のような異物が堆積し易く、これらの異物の有無に関わらず、管路内を走行することができる走行安定性、機動性、汎用性に優れた管路内検査装置が強く要望されていた。
【0005】
本発明は上記従来の要望を充たすもので、平坦路や底部が露出した管路だけでなく、内部に汚泥、粘土、スラリ、シルト、砂、瓦礫などの異物が堆積した管路などであっても、これらの異物に埋まったり、異物を噛み込んだりすることがなく、また水中の藻や草などが絡まることもなく、安定して走行することができ、機動性、走行安定性、汎用性に優れた走行車を用いることにより、簡単な操作で短時間の内に効率的に管路内の検査を行うことができ、操作性、取扱い性に優れ、不具合の発生箇所を簡便かつ確実に記録することができる検査作業の信頼性、効率性に優れた管路内検査装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来の課題を解決するために本発明の管路内検査装置は、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載の管路内検査装置は、管路の内部を移動する走行車によって前記管路の内壁面を撮影する管路内検査装置であって、前記走行車が、車両本体と、前記車両本体の両側部にそれぞれ複数ずつ配設される車輪部を備えた走行部と、前記車両本体の上部にレンズが配設されたカメラと、前記車両本体に配設された照明部と、を有し、前記走行部が、各々の前記車輪部の両側部の少なくともいずれか一方の外側方向又は各々の前記車輪部の外周方向に突出する複数の突起部を有する推進補助部を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)走行部が、各々の車輪部の両側部の少なくともいずれか一方の外側方向又は各々の車輪部の外周方向に突出する複数の突起部を有する推進補助部を備えているので、平坦路や底部が露出した管路などの内部を走行(移動)することができるだけでなく、汚泥、粘土、シルト、スラリなどの異物の堆積などにより、車輪部では空回りして走行できない場合でも、車輪部の外側方向や外周方向に突出する複数の突起部で異物を掻くようにして推進力を発揮して確実に移動することができ、機動性、走行安定性、検査箇所の汎用性に優れる。
(2)走行車が、車両本体の上部にレンズが配設されたカメラと、車両本体に配設された照明部を有するので、走行部の一部が堆積物の中に埋もれた場合でも、推進補助部でスラリなどを掻きながら管路内を前進し、カメラによって管路内の表面の様子を確実に撮影することができ、管路内検査の信頼性、確実性に優れる。
(3)推進補助部の複数の突起部が、各々の車輪部の両側部の少なくともいずれか一方の外側方向又は各々の車輪部の外周方向に突出することにより、軟質性、粘性、流動性などを有する異物(堆積物)を掻き分けたり、固形の異物を乗り越えたりすることができるので、車輪部のみでは走行できない汚泥、粘土、スラリ、シルト、砂、瓦礫などの堆積物の上でも確実に走行することができ、走破力に優れる。
【0007】
ここで、車両本体は、カメラやカメラで撮影した画像を記憶する記憶部などを内蔵できるものが好ましい。また、走行部の車輪部を駆動する駆動モータやカメラなどの電力は、車両本体にバッテリを内蔵して供給してもよいし、外部電源から電力ケーブルを通して供給してもよい。バッテリを内蔵する場合は、充電式のものが好適に用いられる。非使用時に充電して繰り返し使用することができ、長寿命性、省資源性に優れるためである。
カメラのレンズの位置は、検査する管路の内径や形状などに応じて、適宜、選択することができるが、カメラのレンズを管路の中心部近傍に配置した場合、管路内の表面全体を一度で斑無く撮影することができ、管路内検査の効率性に優れる。尚、レンズの高さ方向の位置、上下方向や左右方向の角度(傾き)を調整できるようにすることにより、様々な管径や形状の管路に対応することができ、汎用性に優れる。例えば、レンズを回動自在や傾動自在に保持するレンズ可動固定部を有するものが好適に用いられる。レンズ可動固定部が水平回動軸や垂直回動軸を有する場合、レンズの向きを容易に調整して、任意の位置を簡便かつ確実に撮影することができ、使用性、検査の効率性、汎用性に優れる。また、レンズ可動固定部により、カメラのレンズを所望の方向に向けて保持することができるため、管路の内径の違いによってレンズの取り付け位置が管路の中心部に無い場合でも、管路内全体を撮影することができ、汎用性に優れる。
また、カメラの視野角やレンズの方向に合わせて、照明部で撮影部分を照らすことにより、暗い管路内でも確実に撮影することができる。照明部としては、省電力性、長寿命性に優れる発光ダイオードが好適に用いられる。
【0008】
カメラで撮影した画像を記憶する記憶部を有することにより、走行時に撮影した画像を確実に記憶することができ、検査箇所を走行し終わった後で、記憶部から画像を取り出し、まとめて管路の内表面のひび割れや亀裂などの発生状態を確認することができる。記憶部は、カメラの本体から着脱自在なSDメモリカード、メモリスティックなどの記憶媒体を用いるものが好適に用いられる。記憶媒体のみを簡便に交換することができ、取扱い性に優れると共に、予め複数の記憶媒体を用意しておくことにより、管路内検査装置による管内の撮影作業と、記憶媒体に記憶された撮影画像の確認作業を独立して並行に行うことができ、作業の効率性に優れるためである。尚、ハードディスクのようにカメラと一体の記憶部を備えている場合は、カメラごと車両本体から着脱して取り換えることも可能である。
特に、動画の撮影が可能なカメラを用いることにより、走行中に検査対象の管路内を全長に渡って漏れなく連続的に撮影することができ、不具合検出の信頼性に優れる。尚、カメラや記憶部を別々に用意する代わりに、カメラと記憶部やモニタが一体となったビデオカメラを使用することもできる。
【0009】
車両本体の材質としては、アルミニウム等の金属以外に、ポリカーボネート等の合成樹脂やFRPやFRTP等の繊維強化プラスチック等が好適に用いられる。車両本体に開閉自在や着脱自在なカバー部を設けることにより、カメラ、記憶部、バッテリなどを水や外部からの衝撃等から保護することができると共に、必要に応じて車両本体から取り出して、メンテナンスや交換などを行うことできる。尚、車両本体の継ぎ目や開閉部等はシールして、防水性を持たせることが好ましい。管路内に多量の水が溜まっている場合や水上或いは水中を走行する場合でも、車両本体の内部に水が浸入せず、ショートの発生を防止することができ、動作の安全性、確実性に優れる。
【0010】
車輪部の数は、車両本体の長さや車輪部の径等に応じて適宜、選択することができる。車輪部はタイヤを有するものが好ましい。特に、平坦路の走行時に接地する平坦路接触部と、円弧状の底面部を有する管路内の走行時に円弧状の管路の内壁面に接する円管路接触部が連続して形成されたタイヤを用いた場合、管路の底が円弧状でも、平坦でも走行することができるので、管路の途中に矩形状の接続部を有する場合でも、連続走行して短時間で検査を行うことができ、検査対象の汎用性、検査の効率性に優れる。
平坦路接触部及び円管路接触部は、いずれも平坦状に形成してもよいし、円弧状に形成してもよい。特に、平坦路接触部及び円管路接触部を連続的な円弧状に形成した場合、管路底部の曲率(内径)の大小に関わらず、確実にタイヤと管路の壁面を接触させて走行させることができ、走行安定性に優れる。
【0011】
推進補助部の材質としては、ポリカーボネート等の合成樹脂やFRPやFRTP等の繊維強化プラスチック等が好適に用いられる。
推進補助部は、各々の車輪部に配設されるが、推進補助部の突起部を車輪部の外側方向に突出させる場合は、推進補助部を車輪部のいずれか一方のみの側部に配設してもよいし、両側部に配設してもよい。このとき、推進補助部は車輪部に嵌合、螺子止め、結束などの手段で固定することができる。特に、推進補助部を着脱自在に取り付けることにより、不要な時には容易に取り外して軽量化を図ることができる。尚、推進補助部の複数の突起部は、平板状や円筒状などに形成された基部に予め一体的に形成しておけば、車輪部への着脱作業性に優れる。
推進補助部の突起部を車輪部の外周方向に突出させる場合は、平板状や円筒状などに形成された推進補助部の基部の表面(外周面)に、掻き板状、突条、繊毛状、ヒレ状などの突起部を形成したものが好適に用いられる。推進補助部を車輪部の外周に巻き付けたり、車輪部の外周部や側部に嵌着したりして容易に取り付けることができるためである。また、別々に形成した複数の突起部を車輪部の外周部に装着してもよいし、予め車輪部の外周部に複数の突起部を一体的に形成してもよい。このとき、突起部は車輪部の半径方向に突出していればよく、突出方向(角度)、突出量、数、形状、配置などは、管路内に堆積した異物の粘性や流動性などに応じて、適宜、選択することができる。尚、推進補助部は各々の車輪部に独立して取り付けてもよいし、外表面に掻き板状、突条、繊毛状、ヒレ状などの突起部を形成したベルト状の履板を複数の車輪部に巻回してもよい。
また、予め種類の異なる推進補助部を備えた車輪部を用意しておけば、堆積物の種類や量などに応じて、最適な推進補助部を備えた車輪部ごと交換することができ、作業性に優れると共に、推進補助部が不要なときは容易に通常の車輪部にも交換することができ、汎用性、取扱い性に優れる。
【0012】
複数の車輪部を全輪駆動にした場合、1つの車輪部が堆積物の中に埋まったり、異物や凹凸、段差などに引っ掛かったりするようなことがあっても、他の車輪部の駆動力や推進補助部の推進力によって、移動し続けることができ、走破性、直進性に優れる。また、全輪駆動にすることにより、対向する左右の車輪部を連結する車軸が不要で、車両本体の底面から管路の底までの距離を広げることができ、管路の底に土砂等の異物が堆積していても、それらが車両本体の底面と干渉し難く、走行時の抵抗の増加を防ぐことができ、走行の安定性に優れる。
車輪部を駆動する駆動モータには、各々の車輪部の正逆回転が切替え可能なDCモータを用いることが好ましい。走行車は外部から操作を行うことなく自律した走行が可能であるが、外部から制御信号を送信して遠隔操作する場合、必要に応じて前進と後退を切り替えることができる。また、左右一方の側の車輪部を停止させ、他方の側の車輪部のみを回転させて右左折を行うことや一方の側の車輪部を正転させ、他方の側の車輪部を逆転させてその場で旋回させることもでき、機動性、汎用性に優れる。さらに、障害物などによって、前進が不可能となった場合でも、遠隔操作により走行車を一旦後退させて前進させたり、方向転換して前進を続けたり、或いは後退させて回収したりすることができ、使用性に優れる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の管路内検査装置であって、前記走行部の前記推進補助部が、各々の前記車輪部の両側部の少なくともいずれか一方に覆設される円板部を有し、複数の前記突起部が、平板状に形成され前記円板部の表面外周側に放射状に立設された掻き板状である構成を有している。
この構成により、請求項1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)走行部の推進補助部が、各々の車輪部の両側部の少なくともいずれか一方に覆設される円板部を有し、複数の突起部が、平板状に形成され円板部の表面外周側に放射状に立設された掻き板状であるので、複数の掻き板状の突起部を円板部で一体化して取り扱うことができ、車輪部への着脱が容易で、組立及び分解の作業性、量産性に優れる。
(2)走行部の推進補助部が、車輪部の側部に覆設される円板部を有することにより、車輪部がスポークを有する場合でも、スポークとスポークの間の開口部を円板部で塞ぐことができるので、異物を噛み込んだり、藻や草などが絡まったりして走行不能に陥ることがなく、また、車輪部の一部が汚泥や土砂などの中に埋まったり、水の中に漬かったりしても、抵抗を受け難く、推進力を保つことができ、走行安定性、機動性に優れる。
(3)推進補助部の複数の掻き板状の突起部が、平板状に形成され円板部の表面外周側に放射状に立設されていることにより、軟質性、粘性、流動性などを有する異物(堆積物)を掻き板状の突起部で掻き分けたり、固形の異物を乗り越えたりすることができるので、車輪部のみでは走行できない汚泥、粘土、スラリ、砂、瓦礫などの堆積物の上でも確実に走行することができ、走破力に優れる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の管路内検査装置であって、前記走行部の前記推進補助部が、前記円板部の表面中心側に立設され複数の掻き板状の前記突起部の内側を連結する円筒部を備えた構成を有している。
この構成により、請求項2で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)走行部の推進補助部が、円板部の表面中心側に立設され複数の掻き板状の突起部の内側を連結する円筒部を有することにより、掻き板状の突起部に藻や草などが絡まらないだけでなく、円筒部の外周面が堆積物の上面に当接することによって、推進補助部がそれ以上、堆積物の中に埋没することを防止し、掻き板状の突起部で確実に堆積物を掻き分けて移動することができ、走行安定性、走破性に優れる。
ここで、円筒部の直径や長さ(接地面との接触面積)は、接触面圧の反力が走行車の質量と略釣り合うように適宜、選択することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の管路内検査装置であって、前記走行部の前記推進補助部の前記円筒部の最下位位置が、前記車両本体の底面よりも低位置である構成を有している。
この構成により、請求項3で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)推進補助部の下部側の突起部が堆積物の中に埋まった場合でも、円筒部の最下位位置よりも上側が堆積物の中に埋まることがないので、推進補助部の円筒部の最下位位置が、車両本体の底面よりも低位置であることにより、多量の異物などが堆積していても、車両本体の底面に堆積物が接触し難く、走行時の抵抗が増加することを防ぐことができ、推進力の安定性、機動性に優れる。
【0016】
ここで、車両本体の底面と堆積物との接触を防ぐために、推進補助部の円筒部の最下位位置が、車両本体の底面よりも低位置であることが好ましいが、さらに、車輪部の軸心の高さ方向位置が、車両本体の底面よりも低位置であることが望ましい。これは、推進補助部の全ての突起部が泥土やスラリなどの中に完全に埋まると、前方向の推力と後方向の推力が等しくなり、走行できなくなるが、車輪部の軸心の高さ方向位置が、車両本体の底面よりも低位置であることにより、軸心(円筒部の中心)より上方の突起部が泥土やスラリなどの中に埋まることがなく、突起部を有効利用することができ、強い走行力を得ることができるためである。また、これにより、車両本体の底面が堆積物と接触することを防止することができ、走行安定性、機動性を向上させることができる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の管路内検査装置であって、前記走行部の各々の前記車輪部の外周方向に突出する前記推進補助部の複数の前記突起部が、繊毛状である構成を有している。
この構成により、請求項1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)走行部の各々の車輪部の外周方向に突出する推進補助部の複数の突起部が、繊毛状であることにより、スラリや粘土、シルトなどの異物が必要以上に付着することがなく、突起部によって確実にスラリなどの異物を掻き分けて推進力を得ることができ、走破性に優れる。
(2)複数の突起部が繊毛状であることにより、泥土を必要以上に掘り返すことがなく、推進補助部や車輪、車体などが泥土に沈み込むことを防止でき、走行安定性に優れる。
(3)突起部が繊毛状であることにより、平坦な路面なども走行することができ、汎用性に優れる。
【0018】
ここで、繊毛状の突起部の数、長さ、太さ、配置などは、適宜、選択することができる。また、繊毛状の突起部は、平坦路などの走行により押し潰されても、自然に起毛する程度の剛性及び弾性を有することが好ましい。具体的な材質としては、PP、PVC、ナイロン、エラストマなどの合成樹脂が好適に用いられる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の管路内検査装置であって、前記走行部の各々の前記車輪部の外周方向に突出する前記推進補助部の複数の前記突起部が、円弧状、U字状、V字状のいずれか1つの断面形状を有する突条に形成され両側の先端部が前記車輪部の回転の前後方向に拡開して配設されている構成を有している。
この構成により、請求項1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)走行部の各々の車輪部の外周方向に突出する推進補助部の複数の突起部が、円弧状、U字状、V字状のいずれか1つの断面形状を有する突条に形成され両側の先端部が車輪部の回転の前後方向に拡開して配設されているので、突起部にスラリや粘土などの異物が付着し難く、突起部によって確実にスラリなどの異物を掻き分けて推進力を得ることができ、また、付着した異物を洗浄などによって容易に取り除くことができ、走行安定性、メンテナンス性に優れる。
(2)複数の突起部が、円弧状、U字状、V字状のいずれか1つの断面形状を有する突条に形成され両側の先端部が車輪部の回転の前後方向に拡開して配設されているので、前進時及び後進時のいずれにおいても、突起部で確実にスラリなどの異物を掻くことができ、走行不能に陥ることがなく、走行性能に優れる。
(3)突起部の両側の先端部が車輪部の回転の前後方向に拡開した突条であることにより、平坦な路面なども走行することができ、汎用性に優れる。
【0020】
ここで、突条の突起部の数、長さ、幅、配置などは、適宜、選択することができる。突条の突起部は、平坦路などの走行により押し潰されても、自然に元の状態に復元(拡開)する程度の剛性及び弾性を有することが好ましい。具体的な材質としては、CR、NBR、NR、EPTなどの軟質ゴムが好適に用いられる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6の内いずれか1項に記載の管路内検査装置であって、前記走行車が、重量調整部を備えた構成を有している。
この構成により、請求項1乃至6の内いずれか1項で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)走行車が、重量調整部を備えることにより、管路内の液体の量(水深)や流速、堆積物の粘度、流動性などに応じて、走行車の重量を簡単に調整することができ、走行車を軽くして液体や堆積物の中に沈むことを防いだり、走行車を重くして水流によって流されることを防いだりすることができ、汎用性に優れる。
【0022】
ここで、重量調整部は、走行車の重量を調整できるものであればよい。走行車の車両本体の底部などに金属製の重錘を着脱したり、車両本体に形設した中空部に気体や液体を出し入れしたりして重量を調整するものが好適に用いられる。
【0023】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の管路内検査装置であって、前記走行車の前記重量調整部が、前記車両本体又は前記走行部に配設される浮体を備えた構成を有している。
この構成により、請求項7で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)走行車の重量調整部が、車両本体又は走行部に配設される浮体を備えることにより、管路内に多量の液体やスラリ等が溜まっている場合は、走行車を浮かせ、推進補助部の突起部で液体等を掻くことによって推力を発生させて、管路内を移動することができ、汎用性に優れる。
【0024】
ここで、浮体の数や配置などは適宜、選択することができる。尚、浮体は、検査対象となる管路の種類や内部の状況などに応じて、着脱できることが好ましい。浮体の材質としては、合成ゴムや合成樹脂などが好適に用いられる。浮体が袋状で可撓性を有する場合、浮体に空気、窒素ガス、炭酸ガスなどの気体を注入して膨張させることにより、走行車を水上に浮かせ、浮体を取り外すか、浮体から気体を抜き取って浮体を萎ませることにより、走行車を管路や堆積物の上に接地させることができる。また、浮体がタンク状で定型性を有する場合、浮体を空の状態(空気が入っている状態)にすることにより、走行車を水上に浮かせ、浮体を取り外すか、浮体に水を注入することにより、走行車を管路や堆積物の上に接地させることができる。
尚、推進補助部の中心より上方の突起部が、泥土、スラリ、液体などの中に埋没しないようにすることにより、十分な推力を得ることができ、走行性に優れる。
また、推進補助部が円筒部を有する場合、泥土やスラリの質、液体の量などに応じて、浮体の浮力を調整することにより、泥土などの堆積物の表面と接触する円筒部に適切な圧力を与えることができ、走行能力を向上させることができる。
【0025】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の管路内検査装置であって、前記走行車の前記重量調整部が、前記浮体に気体又は液体の出し入れを行うための給排出部を備えた構成を有している。
この構成により、請求項8で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)走行車の重量調整部が、浮体に気体又は液体の出し入れを行うための給排出部を有することにより、必要に応じて容易に気体又は液体の出し入れを行って浮力を調整することができ、走行車の水上への浮上と管路の内壁面や管路内の堆積物などへの走行部の接地を切り換えて、車輪部や推進補助部の推力を効率的に利用することができ、駆動の効率性、汎用性に優れる。
(2)浮体が給排出部を有することにより、泥土やスラリの質、液体の量などに応じて、浮体の浮力を容易に調整することができ、推進補助部の円筒部や突起部が配設される基部を適切な圧力で泥土などの堆積物の表面と接触させて推力を発生させることができ、走行性に優れる。
【0026】
ここで、車両本体にボンベやポンプなどを搭載し、給排出部と接続しておけば、必要な時に直ちに気体や液体の給排出を行って浮力の調整を行うことができ、使用性に優れる。
【0027】
請求項10に記載の発明は、請求項1乃至9の内いずれか1項に記載の管路内検査装置であって、前記走行部の前記車輪部と、前記車輪部が挿設される駆動軸との連結部に配設され、前記駆動軸と前記車輪部との間の動力伝達の有無を切替えるクラッチを備えた構成を有している。
この構成により、請求項1乃至9の内いずれか1項で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)走行部の車輪部と、車輪部が挿設される駆動軸との連結部に配設され、駆動軸と車輪部との間の動力伝達の有無を切替えるクラッチを有することにより、検査時以外で走行車を牽引するなどして移動させる際に、クラッチを切替えるだけで駆動軸から車輪部へ動力伝達しないようにする(駆動軸に対して車輪部が空回りするようにする)ことができるので、車輪部を駆動する必要がなく、小さな力で車輪部を回転させて移動させることができ、取扱い性、省エネルギー性に優れる。
(2)駆動軸と車輪部との間の動力伝達の有無を切替えるクラッチを有するので、クラッチを切替えて、駆動軸から車輪部へ動力伝達しないようにする(駆動軸に対して車輪部が空回りするようにする)ことにより、容易に車輪部の交換を行うことができ、車輪部の着脱作業性、メンテナンス性に優れ、走行車の運搬時などには必要に応じて車輪部を取り外すことができ、搬送性、取扱い性に優れる。
【0028】
ここで、クラッチは、駆動軸と車輪部との間の動力伝達の有無を切替えることができるものであればよく、切替えの方法は機械的でも電気(電磁)的でもよい。機械的なものとしては、駆動軸と車輪部のそれぞれに歯車のように互いに噛み合う複数の突起を形成し、動力伝達させる場合はそれらが噛み合うように近づけ、動力伝達させない場合はそれらが噛み合わないように遠ざけるものが好適に用いられる。
【0029】
請求項11に記載の発明は、請求項1乃至10の内いずれか1項に記載の管路内検査装置であって、前記走行車を制御するコントローラと、前記走行車と前記コントローラを接続するケーブルと、前記ケーブルの長手方向の途中に着脱自在に配設されるケーブル用浮体と、を備えた構成を有している。
この構成により、請求項1乃至10の内いずれか1項で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)走行車を制御するコントローラと、走行車とコントローラを接続するケーブルを有することにより、走行車の走行部、カメラ、照明部などを遠隔から確実に操作することができ、動作の確実性、安定性に優れる。
(2)走行車とコントローラを接続するケーブルの長手方向の途中に着脱自在に配設されるケーブル用浮体を有することにより、管路の底部にスラリなどが堆積している場合に、ケーブルを水上に浮かせることができ、沈殿した汚泥や土砂などの中にケーブルが埋没して粘性による抵抗を受けることがなく、走行車をスムーズに移動させることができ、走行の安定性、機動性に優れる。
(3)ケーブル用浮体でケーブルを水上に浮かせることにより、ケーブル自体やケーブルと走行車やコントローラを接続するコネクタへの負荷も同時に軽減することができ、ケーブルやコネクタの耐久性、長寿命性に優れる。
(4)水上に浮かせたケーブルの状態をカメラで監視することができるので、前進時にケーブルが異物などに引っ掛かっていないかの確認や後退時に走行車がケーブルを乗り越えたり、走行車にケーブルが絡みついたりしていないかの確認を行いながらコントローラから操作を行うことにより、これらの発生を防止することができ、操作性、走行安定性に優れる。
【0030】
ここで、コントローラは、ケーブルを通してカメラで撮影した画像を管路の外で受信して表示する表示部や、車輪部を駆動する駆動モータの正逆転や停止を切り替えるための制御信号を管路の外から送信する操作部を備えたものが好適に用いられる。
コントローラが表示部を有することにより、カメラから表示部に送信される画像を管路の外でリアルタイムに確認しながら検査を行うことができ、走行車に不具合が発生した場合でもすぐに対処することが可能で、検査の効率性、確実性に優れる。また、コントローラが操作部を有することにより、カメラから送信される画像を表示部で確認しながら操作部で簡便に走行車を操作することができ、操作性、検査の作業性に優れる。
表示部としては、カメラから送信される画像を表示できるものであればよいが、液晶や有機EL等のディスプレイが好適に用いられる。
また、操作部としては、押しボタンやジョイスティック等によって操作するものが好適に用いられる。操作部は、駆動モータの回転速度、カメラや照明部のオン、オフの切り替え、照明部の明るさ、カメラのレンズの向き等を制御できるように構成することもできる。
尚、表示部と操作部は、別体で構成してもよいが、コントローラとして一体化することにより、持ち運びが容易でコンパクト性、操作性、取扱い性に優れ、好ましい。
【0031】
管路外の音声入力部と走行車に搭載した記憶部とを接続する音声ケーブルを有する場合、作業者が管路外の表示部で検査状況を確認しつつ、操作部で走行車を操作しながら、検査日、検査担当者、検査場所、検査状況や不具合の発生状況などの必要情報を音声入力部から吹き込み、画像と一緒に保存することができ、検査の効率性、作業性、データの信頼性に優れる。また、音声入力部から入力された音声とカメラで撮影された画像を一つの記憶部で同時に記憶することができるので、後から画像を再生するだけで、検査状況等を簡単に確認することができ、必要な情報を文字等で入力する手間を省くことができ、データ整理の作業性、効率性に優れる。
管路外の外部電源と走行車を接続する電力ケーブルを有する場合、走行車にバッテリを搭載する必要がなく、走行車を軽量化して、消費電力を抑えることができ、省エネルギー性に優れると共に、検査途中でバッテリ切れとなるおそれがなく、長時間連続して検査を行うことができ、検査の効率性、確実性に優れる。
尚、音声ケーブルや電力ケーブルは、カメラで撮影した画像や操作部からの操作信号を送受信するケーブルと複合化して1本にまとめることが好ましい。走行車に接続されるケーブルを1本だけにすることにより、ケーブルが走行の妨げとなることを防止できるためである。
ケーブル用浮体は、ケーブルが汚泥や土砂などの中に埋没することを防ぐことができればよいが、発泡スチロールなどが好適に用いられる。ケーブル用浮体の数や配置間隔は適宜、選択することができる。また、ケーブルに粘質性のスラリや泥土などが付着して抵抗が増加することを防止するために、ケーブルの下部に舟形状などに形成された板材を所定間隔で取り付けてもよい。
【発明の効果】
【0032】
以上のように、本発明の管路内検査装置によれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、以下のような有利な効果が得られる。
(1)平坦路や底部が露出した管路などの内部を走行(移動)することができるだけでなく、汚泥、粘土、シルト、スラリなどの異物などの堆積などにより、車輪部では走行できない場合でも、車輪部の外側方向や外周方向に突出する複数の突起部で異物を掻くようにして推進力を発揮して確実に移動することができる機動性、走行安定性、検査箇所の汎用性に優れた管路内検査装置を提供することができる。
【0033】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)軟質性、粘性、流動性などを有する異物(堆積物)を掻き板状の突起部で掻き分けたり、固形の異物を乗り越えたりすることができるので、車輪部のみでは走行できない汚泥、粘土、スラリ、砂、瓦礫などの堆積物の上でも確実に走行することができる走破力に優れた管路内検査装置を提供することができる。
【0034】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)掻き板状の突起部に藻や草などが絡まらないだけでなく、推進補助部の上半分が堆積物の中に埋没することを防止でき、掻き板状の突起部で確実に堆積物を掻き分けて移動することができ走行安定性、走破性に優れた管路内検査装置を提供することができる。
【0035】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)多量の異物などが堆積していても、車両本体の底面に堆積物が接触し難く、走行時の抵抗が増加することを防ぐことができる推進力の安定性、機動性に優れた管路内検査装置を提供することができる。
【0036】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)スラリや粘土などの異物が必要以上に付着することがなく、繊毛状の突起部によって確実にスラリなどの異物を掻き分けて推進力を得ることができる走破性に優れた管路内検査装置を提供することができる。
【0037】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)突条の突起部にスラリや粘土などの異物が付着し難く、突起部によって確実にスラリなどの異物を掻き分けて推進力を得ることができ、また、付着した異物を洗浄などによって容易に取り除くことができる走行安定性、メンテナンス性に優れた管路内検査装置を提供することができる。
【0038】
請求項7に記載の発明によれば、請求項1乃至6の内いずれか1項に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)管路内の液体の量(水深)や流速、堆積物の粘度、流動性などに応じて、走行車の重量を簡単に調整することができ、走行車を軽くして液体や堆積物の中に沈むことを防いだり、走行車を重くして水流によって流されることを防いだりすることができる汎用性に優れた管路内検査装置を提供することができる。
【0039】
請求項8に記載の発明によれば、請求項7に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)管路内に多量の液体が溜まっている場合に、走行車を浮かせ、推進補助部の掻き板で液体を掻くことによって推力を発生させて、管路内を移動することができる汎用性に優れた管路内検査装置を提供することができる。
【0040】
請求項9に記載の発明によれば、請求項8に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)必要に応じて容易に気体又は液体の出し入れを行って浮力を調整することにより、走行車の水上への浮上と管路の内壁面や管路内の堆積物などへの接地状態を切り換えて、車輪部や推進補助部の推力を効率的に利用することができる駆動の効率性、汎用性に優れた管路内検査装置を提供することができる。
【0041】
請求項10に記載の発明によれば、請求項1乃至9の内いずれか1項に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)クラッチを切替えるだけで駆動軸から車輪部へ動力伝達しないようにする(駆動軸に対して車輪部を空回りさせる)ことができ、検査時以外は車輪部を駆動することなく、走行車を牽引するなどして、小さな力で移動させることができる取扱い性、省エネルギー性に優れた管路内検査装置を提供することができる。
【0042】
請求項11に記載の発明によれば、請求項1乃至10の内いずれか1項に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)管路の底部にスラリなどが堆積している場合に、ケーブルを水上に浮かせることができ、沈殿した汚泥や土砂などの粘性による抵抗をなくして、走行車をスムーズに移動させることができる走行の安定性、機動性に優れた管路内検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施の形態1における管路内検査装置を示す模式斜視図
【図2】実施の形態1における管路内検査装置の走行車を示す模式側面図
【図3】実施の形態1における管路内検査装置の走行車を示す模式正面図
【図4】(a)実施の形態2における管路内検査装置を示す模式平面図 (b)実施の形態2における管路内検査装置のケーブルを示す模式側面図
【図5】(a)実施の形態3における管路内検査装置の走行車の走行部を示す要部模式平面図 (b)実施の形態3における管路内検査装置の走行車の走行部を示す要部模式側面図
【図6】(a)実施の形態4における管路内検査装置の走行車の走行部を示す要部模式平面図 (b)実施の形態4における管路内検査装置の走行車の走行部を示す要部模式側面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1における管路内検査装置について、以下図面を参照しながら説明する。
図1は実施の形態1における管路内検査装置を示す模式斜視図であり、図2は実施の形態1における管路内検査装置の走行車を示す模式側面図であり、図3は実施の形態1における管路内検査装置の走行車を示す模式正面図である。
図1乃至図3中、1は実施の形態1における管路内検査装置、1aは下水管等の管路の中を走行して管路の内壁の表面を撮影する管路内検査装置1の走行車、2は走行車1aの車両本体、3は車両本体2に配設された走行車1aの走行部、3aは車両本体2の両側部に前後二箇所ずつ配設された走行部3のタイヤ保持部(図1,3)、4は各々のタイヤ保持部3aに回動自在に保持された走行部3の車輪部、4aは車輪部4のスポーク(図1,2)、4bは車輪部4のタイヤ、5は各々の車輪部4の内側部に配設された推進補助部(図1,3)、5aは車輪部4の内側部に覆設された推進補助部5の円板部(図1)、5bは円板部5aの表面外周側に放射状に立設された推進補助部5の掻き板状の突起部(図1,3)、5cは円板部5aの表面中心側に立設され掻き板状の突起部5bの内側を連結する推進補助部5の円筒部(図1,3)、6は推進補助部5の円板部5aの要所を車輪部4のスポーク4aに固定する固定手段としての結束バンド(図1,2)、7は車両本体2の上部に配設されカメラのレンズ8を回動自在及び傾動自在に保持するレンズ可動固定部、7aはレンズ可動固定部7の基部(図1,3)、7bは基部7aの底部中央に配設されレンズ可動固定部7全体を水平面内で回動させる(レンズ8を左右方向に回動させる)回動軸(図2,3)、7cは基部7aの両側部に立設されたレンズ可動固定部7の支持部、7dは左右の支持部7cの間に渡設されレンズ8を上下方向に傾動させるレンズ可動固定部7の傾動軸(図3)、8は本体が車両本体2に内蔵されたカメラのレンズ(図1,3)、9aはカメラのレンズ8の外周部に配設され撮影箇所(レンズ8の方向)を照らす照明部(図1,3)、9bは車両本体2の前方に配設され走行車1aの進行方向を照らす前方照明部、9cは照明部9a及び前方照明部9bに配設された複数の発光ダイオード(図1,3)、10はレンズ8の上部に配設され撮影方向にレーザ光を照射する2つのレーザポインタ、11は管路の外から走行車1aを操作する管路内検査装置1のコントローラ(図1)、12は走行車1aに電力を供給する外部電源(図1)、13は走行車1aとコントローラ11及び外部電源12を接続しカメラで撮影した画像やコントローラ11からの操作信号の送受信及び外部電源12からの電力供給を行うための複合化されたケーブル(図1)である。
尚、図示しないが、走行車1aの車両本体2の内部には、カメラの本体や車輪部4を駆動する駆動モータなどが内蔵されている。
【0045】
車両本体2の材質としては、アルミニウム等の金属以外に、ポリカーボネート等の合成樹脂、FRPやFRTP等の繊維強化プラスチック等も用いることができる。尚、車両本体2の継ぎ目や開閉部等はシールして、防水性を持たせることが好ましい。管路内に多量の水が溜まっている場合や水中を走行する場合でも、車両本体2の内部に水が浸入せず、ショートの発生を防止することができ、動作の安全性、確実性に優れる。
タイヤ4bの材質としては、ウレタンゴム,スチレンブタジエンゴム(SBR),イソプレンゴム(IR),ブタジエンゴム(BR)等の合成ゴムや天然ゴム等が好適に用いられる。タイヤ4bが適度な弾性を有することにより、タイヤ4bの底部や側部を平坦路や内径が異なる円管路の内壁面に確実に接触させて走行車1aを走行させることができる。
【0046】
タイヤ保持部3aは、各々の車輪部4を回動自在に固定できるものであればよい。本実施の形態では、車両本体2の両側部に車輪部4を2個ずつ配置したが、車輪部4の数は、これに限定されるものではなく、車両本体2の長さや車輪部4の径等に応じて、適宜、選択することができる。
車輪部4を駆動する駆動モータは、各々の車輪部4の正逆回転の切替えが可能なDCモータを用いた。走行車1aは外部から操作を行うことなく自律した走行が可能であるが、本実施の形態のようにコントローラ11を用いて外部から制御信号を送信して遠隔操作する場合、必要に応じて前進と後退を切り替えることができるだけでなく、左右一方の側の車輪部4を停止させ、他方の側の車輪部4を回転させて右左折を行うことや一方の側の車輪部4を正転させ、他方の側の車輪部4を逆転させてその場で旋回させることもでき、機動性、汎用性に優れる。これにより、障害物などによって、前進が不可能となった場合でも、走行車1aを一旦後退させて前進させたり、方向転換して前進を続けたり、或いは後退させて回収したりすることができ、使用性に優れる。
【0047】
尚、車輪部4を全輪駆動にすることにより、1つの車輪部4が堆積物の中に埋まったり、異物や凹凸、段差などに引っ掛かったりするようなことがあっても、他の車輪部4の駆動力や推進補助部5の推進力によって、移動し続けることができ、走破性、直進性に優れる。
また、全輪駆動にすることにより、対向する左右の車輪部4を連結する車軸が不要で、車両本体2の底面から管路の底までの距離を広げることができ、管路の底に土砂等の異物が堆積していても、それらが車両本体2の底面と干渉し難く、走行時の抵抗の増加を防ぐことができ、走行の安定性に優れる。
尚、車輪部4と、車輪部4が挿設される駆動軸との連結部には、駆動軸と車輪部4との間の動力伝達の有無を切替えるクラッチ(図示せず)を配設することが好ましい。これにより、検査時以外で走行車1aを牽引するなどして移動させる際に、クラッチを切替えるだけで駆動軸から車輪部4へ動力伝達しないようにする(駆動軸に対して車輪部4を空回りさせる)ことができるので、車輪部4を駆動する必要がなく、小さな力で車輪部4を回転させて移動させることができ、取扱い性、省エネルギー性に優れる。
【0048】
推進補助部5は、円板部5aの要所に穿設した孔に結束バンド6を挿通し車輪部4のスポーク4aと結束して固定した。尚、推進補助部5の固定手段は、これに限定されるものではなく、車輪部4の構造などに応じて、適宜、選択することができる。例えば、車輪部4がスポーク4aの代わりにディスクホイールを有している場合などは、ディスクホイールと円板部5aを螺子止めにより固定してもよい。特に、推進補助部5を着脱自在な固定手段で取り付けた場合、不要な時には容易に取り外して軽量化を図ることができる。
尚、本実施の形態では、推進補助部5を車輪部4の内側部(車両本体2側)のみに設けたが、外側部のみに設けてもよいし、両側部に設けてもよい。
【0049】
カメラのレンズ8の高さ方向位置は、検査する管路の内径などに応じて、適宜、選択することができるが、レンズ8を管路の中心部近傍に位置させることにより、管路内の表面全体を一度で斑無く撮影することができ、管路内検査の効率性に優れる。また、レンズ8を保持するレンズ可動固定部7が、レンズ可動固定部7全体を水平面内で回動させる(レンズ8を左右方向に回動させる)回動軸7b及びレンズ8を上下方向に傾動させる傾動軸7dを有することにより、レンズ8の左右方向及び上下方向の傾きを容易に調整して、任意の位置を簡便かつ確実に撮影することができ、使用性、検査の効率性、汎用性に優れる。また、レンズ可動固定部7により、レンズ8を所望の方向に向けることができるため、管路の内径の違いによってレンズ8の高さ方向位置が管路の中心部に無い場合でも、管路内全体を撮影することができ、汎用性に優れる。
【0050】
尚、カメラの種類は適宜、選択することができるが、本実施の形態では、動画の撮影が可能なカメラを用い、走行中に検査対象の管路内を全長に渡って漏れなく連続的に撮影できるようにして、不具合検出の信頼性を向上させた。また、撮影した画像はカメラの本体から着脱自在なSDメモリカード、メモリスティックなどの記憶媒体に記憶させた。これにより、記憶媒体のみを簡便に交換することができるので、予め複数の記憶媒体を用意しておけば、走行車1aによる管路内の撮影作業と、記憶媒体に記憶された撮影画像の確認作業を独立して並行に行うことが可能で作業の効率性に優れる。尚、記憶部としてハードディスクを内蔵したカメラを用いれば、長時間の撮影が可能で、連続使用性に優れる。
【0051】
照明部9a及び前方照明部9bの光源として、省電力性、長寿命性に優れる発光ダイオード9cを用いた。照明部9aはレンズ8の外周部に配設し、レンズ8と共に回動及び傾動可能として、撮影箇所を確実に照らすようにした。
また、レーザポインタ10から照射するレーザ光により、一定間隔の平行なドットを表示することにより、撮影された画像を確認する際に、画像上で基準スケールとして使用することができ、それを目安として、不具合発生箇所を特定し易く、データ処理の効率性に優れる。
本実施の形態では、駆動モータ、カメラ、照明部9などの電力は、外部電源12から供給したが、車両本体2にバッテリを内蔵してもよい。
【0052】
以上のように構成された実施の形態1における管路内検査装置の使用方法について説明する。
走行車1aのカメラや照明部9a,前方照明部9bなどのスイッチを入れ、検査を行う管路の入口側に配置する。
作業者が、管路の外からコントローラ11を操作し、車輪部4を正転させることにより、走行車1aが走行を開始する。
管路の底部が平坦な場合や管路の底部が露出している場合には、車輪部4によって走行を行う。管路の底部に汚泥、粘土、スラリ、砂などが堆積している場合、車輪部4や推進補助部5の下部が堆積物に埋まることがあるが、推進補助部5の掻き板状の突起部5bによって汚泥、粘土、砂などの堆積物やその上に溜まった水を掻いて推進力を発生させ、堆積物の上を走行することができる。特に、推進補助部5が円筒部5cを有することにより、円筒部5cの最下位位置より上が堆積物の中に埋没することを防止でき、推進補助部5の上半分の掻き板状の突起部5bを確実に泥土の表面よりも上方に位置させることができるので、掻き板5bで確実に堆積物を掻き分けて移動することができ、走行能力を向上させることができる。尚、推進補助部5の円筒部5cの最下位位置が、車両本体2の底面よりも低位置であるため、推進補助部5が円筒部5cの最下位位置まで堆積物に埋まったとしても、車両本体2の底面に堆積物が接触せず、走行時の抵抗が増加することを防ぐことができ、安定した走行を行うことができる
尚、管路の底部に石や瓦礫などが堆積している場合も、掻き板状の突起部5bが石や瓦礫などと噛み合うようにして、それらを乗り越えながら走行することができる。
【0053】
走行車1aは管路の内部を移動しながら、カメラで内壁の表面を撮影し、撮影した画像を内蔵した記憶媒体に記憶していく。このとき、作業者は、カメラで撮影した画像をコントローラ11の表示部により、リアルタイムで確認することができる。これにより、検査が確実に行われていることを確認できるだけでなく、走行車1aに不具合が発生した場合でもすぐに対処することが可能で、検査の効率性、確実性に優れる。また、カメラから送信される画像を表示部で確認しながら簡便に走行車1aを操作することができ、操作性、検査の作業性に優れる。
記憶媒体に記憶された画像は、別途、パーソナルコンピュータなどで再生し、内壁の表面におけるひび割れや亀裂などの発生状態を確認することができる。
【0054】
実施の形態1における管路内検査装置によれば、以下のような作用が得られる。
(1)走行部が、各々の車輪部の両側部の少なくともいずれか一方の外側方向に突出する複数の掻き板状の突起部を有する推進補助部を備えているので、平坦路や底部が露出した管路などの内部を走行(移動)することができるだけでなく、汚泥、粘土、スラリなどの異物の堆積などにより、車輪部では走行できない場合でも、車輪部の外側方向に突出する複数の掻き板状の突起部で異物を掻くようにして推進力を発揮して確実に移動することができ、機動性、走行安定性、検査箇所の汎用性に優れる。
(2)走行車が、車両本体の上部にレンズが配設されたカメラと、車両本体に配設された照明部を有するので、走行部の一部が堆積物の中に埋もれた場合でも、推進補助部の掻き板状の突起部でスラリなどを掻きながら管路内を前進し、カメラによって管路内の表面の様子を確実に撮影することができ、管路内検査の信頼性、確実性に優れる。
(3)推進補助部の複数の掻き板状の突起部が、各々の車輪部の両側部の少なくともいずれか一方の外側方向に突出することにより、軟質性、粘性、流動性などを有する異物(堆積物)を掻き分けたり、固形の異物を乗り越えたりすることができるので、車輪部のみでは走行できない汚泥、粘土、スラリ、砂、瓦礫などの堆積物の上でも確実に走行することができ、走破力に優れる。
(4)走行部の推進補助部が、各々の車輪部の両側部の少なくともいずれか一方に覆設される円板部を有し、複数の突起部が、平板状に形成され円板部の表面外周側に放射状に立設された掻き板状であるので、複数の掻き板状の突起部を円板部で一体化して取り扱うことができ、車輪部への着脱が容易で、組立及び分解の作業性、量産性に優れる。
(5)走行部の推進補助部が、車輪部の側部に覆設される円板部を有することにより、車輪部がスポークを有する場合でも、スポークとスポークの間の開口部を円板部で塞ぐことができるので、異物を噛み込んだり、藻や草などが絡まったりして走行不能に陥ることがなく、また、車輪部の一部が汚泥や土砂などの中に埋まったり、水の中に漬かったりしても、抵抗を受け難く、推進力を保つことができ、走行安定性、機動性に優れる。
(6)推進補助部の複数の掻き板状の突起部が、平板状に形成され円板部の表面外周側に放射状に立設されていることにより、軟質性、粘性、流動性などを有する異物(堆積物)を掻き板状の突起部で掻き分けたり、固形の異物を乗り越えたりすることができるので、車輪部のみでは走行できない汚泥、粘土、スラリ、砂、瓦礫などの堆積物の上でも確実に走行することができ、走破力に優れる。
(7)走行部の推進補助部が、円板部の表面中心側に立設され複数の掻き板状の突起部の内側を連結する円筒部を有することにより、掻き板状の突起部に藻や草などが絡まらないだけでなく、円筒部の外周面が堆積物の上面に当接することによって、推進補助部がそれ以上、堆積物の中に埋没することを防止し、掻き板状の突起部で確実に堆積物を掻き分けて移動することができ、走行安定性、走破性に優れる。
(8)推進補助部の下部側の掻き板状の突起部が堆積物の中に埋まった場合でも、円筒部の最下位位置よりも上側が堆積物の中に埋まることがないので、推進補助部の円筒部の最下位位置が、車両本体の底面よりも低位置であることにより、多量の異物などが堆積していても、車両本体の底面に堆積物が接触し難く、走行時の抵抗が増加することを防ぐことができ、推進力の安定性、機動性に優れる。
(9)走行車を制御するコントローラと、走行車とコントローラを接続するケーブルを有することにより、走行車の走行部、カメラ、照明部などを遠隔から確実に操作することができ、動作の確実性、安定性に優れる。
【0055】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2における管路内検査装置について、以下図面を参照しながら説明する。尚、実施の形態1と同様のものには同一の符号を付して説明を省略する。
図4(a)は実施の形態2における管路内検査装置を示す模式平面図であり、図4(b)は実施の形態2における管路内検査装置のケーブルを示す模式側面図である。
図4(a)において、実施の形態2における管路内検査装置1Aが実施の形態1と異なるのは、走行車1bの走行部3において、車輪部4の外側部(車両本体2と反対側)に推進補助部5が配設されている点と、走行車1bの車両本体2の両側部に浮体14aが配設されている点と、走行部3の推進補助部5の円筒部5cに浮体14bが挿着されている点である。
また、図4(b)において、実施の形態2における管路内検査装置1Aが実施の形態1と異なるのは、ケーブル13の長手方向に間隔を空けてケーブル用浮体15が配設されている点である。尚、15aはケーブル13にケーブル用浮体15を着脱自在に固定する固定具である。
【0056】
浮体14a,浮体14bは、ポリエチレンやポリプロピレンなどの合成樹脂で中空のタンク状に形成した。
ケーブル用浮体15は浮力を発生させることができるものであればよい。浮体14a,浮体14bと同様に、合成樹脂などで中空に形成されたタンクなどを用いてもよいし、発泡スチロールなどを用いてもよい。
本実施の形態では、ケーブル用浮体15は2〜3mおきに取り付けたが、ケーブル用浮体15の間隔は、ケーブル13の全長やケーブル用浮体15の大きさ(浮力の大きさ)等に応じて、適宜、選択することができる。尚、固定具15aとしては、ケーブル13を挟持するクリップ状のものが着脱作業性、固定安定性に優れ好ましいが、円弧状の嵌合部をケーブル13に嵌合させるものや紐などでケーブル13に結束するものなどを用いてもよい。
【0057】
検査対象の管路の中に水が溜まっている場合、浮体14a,浮体14bで、走行車1bを車輪部4の中心位置付近まで水に浮かせることができる。これにより、推進補助部5の掻き板5bで水を掻いて水上を移動することができる。このとき、ケーブル13もケーブル用浮体15によって水に浮かせることができるので、ケーブル13が管路の底部に接触したり、管路の底部に堆積した汚泥、粘土、砂などの中に埋まったりして、抵抗が増加することを防止でき、水上航行の安定性に優れる。
また、管路の中に水が溜まっていない場合や水位が低い場合、泥土やスラリの質などに応じて、浮体14a,浮体14bに形成された給排出部(図示せず)から浮体14a,浮体14bの内部に水を注入し、浮体14a,浮体14bの浮力を調整する(走行車1aの重量を重くする)ことにより、推進補助部5の円筒部5cを適切な圧力で泥土などの堆積物の表面と接触させることができる。これにより、実施の形態1の走行車1aと同様に、車輪部4や推進補助部5の推力で堆積物の上を走行することができる。
【0058】
本実施の形態では、浮体14a,浮体14bにより走行車1aの浮力を調整したが、走行車1aの車両本体2の底部などに金属製の重錘を着脱して走行車1aの重量を調整する重量調整部を備えてもよい。これにより、管路内の液体の量(水深)や流速、堆積物の粘度、流動性などに応じて、走行車1aの重量を簡単に調整することができ、走行車1aを軽くして液体や堆積物の中に沈むことを防いだり、走行車1aを重くして水流によって流されることを防いだりすることができ、汎用性に優れる。
また、本実施の形態では、ケーブル13の上方にケーブル用浮体15を取り付けたが、管路の底部に泥土などが堆積し、粘性抵抗(接触抵抗)によりケーブル13の進行が妨げられる場合は、発泡スチロールなどでローラ状に形成した2個の浮体をローラ軸の両側に回動自在に配設した浮体ローラをケーブル13の長手方向に間隔を空けて取り付けてもよい。浮体ローラのローラ軸の中央にクリップなどの固定手段でケーブル13を固定することにより、浮体ローラの左右一対の浮体でケーブル13が泥土と接触しないように支持し、泥土の上でローラ状の浮体を転がしてケーブル13を移動させることができる。また、水が多い場合には、浮体ローラの浮力によりケーブル13を水上に浮かせて移動させることができ、汎用性に優れる。堆積物の粘性が高い場合には、ケーブル13に粘質性のスラリや泥土などが付着して抵抗が増加することを防止するために、ケーブル13の下部に舟形状などに形成された板材を所定間隔で取り付けてもよい。
【0059】
実施の形態2における管路内検査装置によれば、実施の形態1と同様の作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)走行車が、車両本体及び走行部に配設される浮体を備えることにより、管路内に多量の液体が溜まっている場合は、走行車を浮かせ、推進補助部の掻き板で液体を掻くことによって推力を発生させて、管路内を移動することができ、汎用性に優れる。
(2)浮体に注入する液体(水)の量を増減させることによって、容易に浮力を調整することができ、走行車の水上への浮上と管路の内壁面や管路内の堆積物などへの走行部の接地を切り換えて、車輪部や推進補助部の推力を効率的に利用することができ、駆動の効率性、汎用性に優れる。
(3)浮体が給排出部を有することにより、泥土やスラリの質、液体の量などに応じて、浮体の浮力を容易に調整することができ、推進補助部の円筒部を適切な圧力で泥土などの堆積物の表面と接触させて推力を発生させることができ、走行性に優れる。
(4)走行車とコントローラを接続するケーブルの長手方向の途中に着脱自在に配設されるケーブル用浮体を有することにより、管路の底部にスラリなどが堆積している場合に、ケーブルを水上に浮かせることができ、沈殿した汚泥や土砂などの中にケーブルが埋没して抵抗になることがなく、走行車をスムーズに移動させることができ、走行の安定性、機動性に優れる。
(5)ケーブル用浮体でケーブルを水上に浮かせることにより、ケーブル自体やケーブルと走行車やコントローラを接続するコネクタへの負荷も同時に軽減することができ、ケーブルやコネクタの耐久性、長寿命性に優れる。
(6)水上に浮かせたケーブルの状態をカメラで監視することができるので、前進時にケーブルが異物などに引っ掛かっていないかの確認や後退時に走行車がケーブルを乗り越えたり、走行車にケーブルが絡みついたりしていないかの確認を行いながらコントローラから操作を行うことにより、これらの発生を防止することができ、操作性、走行安定性に優れる。
【0060】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3における管路内検査装置について、以下図面を参照しながら説明する。尚、実施の形態1又は2と同様のものには同一の符号を付して説明を省略する。
図5(a)は実施の形態3における管路内検査装置の走行車の走行部を示す要部模式平面図であり、図5(b)は実施の形態3における管路内検査装置の走行車の走行部を示す要部模式側面図である。
図5において、実施の形態3における管路内検査装置が実施の形態1と異なるのは、走行車の走行部において、車輪部4の内側部(車両本体2側)に配設された掻き板状の突起部5aを有する推進補助部5に加え、車輪部4の外側に外周方向に突出する複数の繊毛状の突起部18を有する推進補助部5Aを備えている点である。
尚、図5中、16は車輪部4の外側部に装着された推進補助部5Aの円筒状や円柱状の胴部、17は胴部16の外周に巻着され表面に複数の繊毛状の突起部18が植設された推進補助部5Aのベルト状の基部である。
繊毛状の突起部18は、PP、PVC、ナイロンなどの合成樹脂で形成し、平坦路などの走行により押し潰されても、自然に起毛する程度の剛性及び弾性を有するものとした。
推進補助部5Aは、車輪部4の外側部に突出させた嵌合突起(図示せず)に嵌着固定させるなどして固定することができる。
尚、本実施の形態では、車輪部4のタイヤ4bを露出させたが、車輪部4のタイヤ4bの一部又は全部を推進補助部5Aで覆ってもよい。また、掻き板状の突起部5aを有する推進補助部5は省略してもよい。
【0061】
実施の形態3における管路内検査装置によれば、実施の形態1の(2)乃至(9)と同様の作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)走行部が、各々の車輪部の内側部に配設され外側方向に突出する複数の掻き板状の突起部を有する推進補助部と各々の車輪部の外周方向に突出する複数の繊毛状の推進補助部を備えているので、平坦路や底部が露出した管路などの内部を走行(移動)することができるだけでなく、汚泥、粘土、スラリなどの異物の堆積などにより、車輪部では走行できない場合でも、車輪部の外側方向及び外周方向に突出する複数の突起部で異物を掻くようにして推進力を発揮して確実に移動することができ、機動性、走行安定性、検査箇所の汎用性に優れる。
(2)走行部の各々の車輪部の外周方向に突出する推進補助部の複数の突起部が、繊毛状であることにより、スラリや粘土などの異物が必要以上に付着することがなく、突起部によって確実にスラリなどの異物を掻き分けて推進力を得ることができ、走破性に優れる。
(3)複数の突起部が繊毛状であることにより、泥土を必要以上に掘り返すことがなく、推進補助部や車輪、車体などが泥土に沈み込むことを防止でき、走行安定性に優れる。
(4)突起部が繊毛状であることにより、平坦な路面なども走行することができ、汎用性に優れる。
【0062】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4における管路内検査装置について、以下図面を参照しながら説明する。尚、実施の形態1乃至3と同様のものには同一の符号を付して説明を省略する。
図6(a)は実施の形態4における管路内検査装置の走行車の走行部を示す要部模式平面図であり、図6(b)は実施の形態4における管路内検査装置の走行車の走行部を示す要部模式側面図である。
図6において、実施の形態4における管路内検査装置が実施の形態3と異なるのは、車輪部4の外側に外周方向に突出する複数の繊毛状の突起部18を有する推進補助部5Aの代わりに、円弧状、U字状、V字状のいずれか1つの断面形状を有する突条に形成され両側の先端部が車輪部4の回転の前後方向に拡開して配設された複数の突起部19を有する推進補助部5Bを備えている点である。
突条の突起部19は、CR、NBR、NR、EPTなどの軟質ゴムやエラストマなどで形成し、平坦路などの走行により押し潰されても、自然に元の状態に復元(拡開)する程度の剛性及び弾性を有するものとした。
【0063】
実施の形態4における管路内検査装置によれば、実施の形態1の(2)乃至(9)と同様の作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)走行部が、各々の車輪部の内側部に配設され外側方向に突出する複数の掻き板状の突起部を有する推進補助部と各々の車輪部の外周方向に突出する複数の突状の推進補助部を備えているので、平坦路や底部が露出した管路などの内部を走行(移動)することができるだけでなく、汚泥、粘土、スラリなどの異物の堆積などにより、車輪部では走行できない場合でも、車輪部の外側方向及び外周方向に突出する複数の突起部で異物を掻くようにして推進力を発揮して確実に移動することができ、機動性、走行安定性、検査箇所の汎用性に優れる。
(2)走行部の各々の車輪部の外周方向に突出する推進補助部の複数の突起部が、円弧状、U字状、V字状のいずれか1つの断面形状を有する突条に形成され両側の先端部が車輪部の回転の前後方向に拡開して配設されているので、突起部にスラリや粘土などの異物が付着し難く、突起部によって確実にスラリなどの異物を掻き分けて推進力を得ることができ、また、付着した異物を洗浄などによって容易に取り除くことができ、走行安定性、メンテナンス性に優れる。
(3)複数の突起部が、円弧状、U字状、V字状のいずれか1つの断面形状を有する突条に形成され両側の先端部が車輪部の回転の前後方向に拡開して配設されているので、前進時及び後進時のいずれにおいても、突起部が確実にスラリなどの異物に食込んで異物を掻くことができ、走行不能に陥ることがなく、走行性能に優れる。
(4)突起部の両側の先端部が車輪部の回転の前後方向に拡開した突条であることにより、平坦な路面なども走行することができ、汎用性に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、平坦路や底部が露出した管路だけでなく、内部に汚泥、粘土、スラリ、砂、瓦礫などの異物が堆積した管路などであっても、これらの異物に埋まったり、異物を噛み込んだりすることがなく、また水中の藻や草などが絡まることもなく、安定して走行することができ、機動性、走行安定性、汎用性に優れた走行車を用いることにより、簡単な操作で短時間の内に効率的に管路内の検査を行うことができ、操作性、取扱い性に優れ、不具合の発生箇所を簡便かつ確実に記録することができる検査作業の信頼性、効率性に優れた管路内検査装置の提供を行い、様々な用途の管路における検査体勢を整えることができ、管路内検査の効率性、確実性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0065】
1,1A 管路内検査装置
1a,1b 走行車
2 車両本体
3 走行部
3a タイヤ保持部
4 車輪部
4a スポーク
4b タイヤ
5,5A,5B 推進補助部
5a 円板部
5b,18,19 突起部
5c 円筒部
6 結束バンド
7 レンズ可動固定部
7a 基部
7b 回動軸
7c 支持部
7d 傾動軸
8 レンズ
9a 照明部
9b 前方照明部
9c 発光ダイオード
10 レーザポインタ
11 コントローラ
12 外部電源
13 ケーブル
14a,14b 浮体
15 ケーブル用浮体
15a 固定具
16 胴部
17 基部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路の内部を移動する走行車によって前記管路の内壁面を撮影する管路内検査装置であって、
前記走行車が、車両本体と、前記車両本体の両側部にそれぞれ複数ずつ配設される車輪部を備えた走行部と、前記車両本体の上部にレンズが配設されたカメラと、前記車両本体に配設された照明部と、を有し、
前記走行部が、各々の前記車輪部の両側部の少なくともいずれか一方の外側方向又は各々の前記車輪部の外周方向に突出する複数の突起部を有する推進補助部を備えていることを特徴とする管路内検査装置。
【請求項2】
前記走行部の前記推進補助部が、各々の前記車輪部の両側部の少なくともいずれか一方に覆設される円板部を有し、複数の前記突起部が、平板状に形成され前記円板部の表面外周側に放射状に立設された掻き板状であることを特徴とする請求項1に記載の管路内検査装置。
【請求項3】
前記走行部の前記推進補助部が、前記円板部の表面中心側に立設され複数の掻き板状の前記突起部の内側を連結する円筒部を備えていることを特徴とする請求項2に記載の管路内検査装置。
【請求項4】
前記走行部の前記推進補助部の前記円筒部の最下位位置が、前記車両本体の底面よりも低位置であることを特徴とする請求項3に記載の管路内検査装置。
【請求項5】
前記走行部の各々の前記車輪部の外周方向に突出する前記推進補助部の複数の前記突起部が、繊毛状であることを特徴とする請求項1に記載の管路内検査装置。
【請求項6】
前記走行部の各々の前記車輪部の外周方向に突出する前記推進補助部の複数の前記突起部が、円弧状、U字状、V字状のいずれか1つの断面形状を有する突条に形成され両側の先端部が前記車輪部の回転の前後方向に拡開して配設されていることを特徴とする請求項1に記載の管路内検査装置。
【請求項7】
前記走行車が、重量調整部を備えていることを特徴とする請求項1乃至6の内いずれか1項に記載の管路内検査装置。
【請求項8】
前記走行車の前記重量調整部が、前記車両本体又は前記走行部に配設される浮体を備えていることを特徴とする請求項7に記載の管路内検査装置。
【請求項9】
前記走行車の前記重量調整部が、前記浮体に気体又は液体の出し入れを行うための給排出部を備えていることを特徴とする請求項8に記載の管路内検査装置。
【請求項10】
前記走行部の前記車輪部と、前記車輪部が挿設される駆動軸との連結部に配設され、前記駆動軸と前記車輪部との間の動力伝達の有無を切替えるクラッチを備えていることを特徴とする請求項1乃至9の内いずれか1項に記載の管路内検査装置。
【請求項11】
前記走行車を制御するコントローラと、前記走行車と前記コントローラを接続するケーブルと、前記ケーブルの長手方向の途中に着脱自在に配設されるケーブル用浮体と、を備えていることを特徴とする請求項1乃至10の内いずれか1項に記載の管路内検査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−47663(P2013−47663A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−102607(P2012−102607)
【出願日】平成24年4月27日(2012.4.27)
【出願人】(591013805)株式会社石川鉄工所 (6)
【出願人】(597165618)株式会社ネクスコ東日本エンジニアリング (18)
【Fターム(参考)】