説明

粉粒体の散布方法及び粉粒体の散布装置

【課題】金粉のように微小で、付着しやすい粉粒体を均一に分散させて落下させることができるようにした粉粒体の散布方法及び粉粒体の散布装置を提供する。
【解決手段】ホッパ40に貯留された粉粒体Pを、ホッパ40下端に配設された回転ローラ50の表面に、周方向に沿って筋状にかつ軸方向に沿って所定間隔をあけて流出させ、回転ローラ50の上部周面に当接して軸方向に往復移動する均し部材55によって、付着した粉粒体Pを回転ローラ50の表面軸方向に均一にならす。こうして回転ローラ50の表面に均一に付着した粉粒体Pを、回転ローラ50の周面に当接して斜めに張設され、回転ローラ50の軸方向に沿って往復移動するコイルバネからなる擦り落とし部材60によって擦り落とす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば金粉等の微小な粉粒体を、チョコレート等の物品に均一に付着させるのに好適に用いられる、粉粒体の散布方法及び粉粒体の散布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、微小な粉や粒等の粉粒体を散布させる装置としては、種々のものが提案されている。例えば、下記特許文献1には、ホッパ下方の開口部から下面に多数の小穴を穿設した供給管の一端部へ粉が供給されるように連結すると共に、該供給管内に一端部から先端部へ粉を搬送するスクリューを設置してなる粉篩装置が開示されている。
【0003】
また、下記特許文献2には、電子写真複写機の現像装置に用いられるトナー補給装置であって、トナータンクを導管に連設し、導管の下部にはトナータンク側から先端に行くにつれて順次径を大きくした落下口を形成し、導管内にコイル状バネを配置し、このコイル状バネに攪拌用ボールを乗せ、コイル状バネの回転によりトナーを搬送し、前記落下口から落下させるようにしたものが開示されている。
【0004】
下記特許文献3には、有底容器内に回転軸を軸架し、該回転軸に等間隔で傾斜円板を同一方向に向かって複数固着させると共に、該回転軸上方に平行に配設された支軸に上端部が固着され、下端部が複数の円盤の間に挿入された垂杆を設け、更に、前記支軸に直交して固着された横杆の両端部に、ホッパ内周に摺接する払落し片を取付けてなる、塩等の微粒子を均一に散布するための自動式散布器が開示されている。
【特許文献1】実開昭54−134797号公報
【特許文献2】実公昭45−10078号公報
【特許文献3】特開平1−235528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1〜3に記載された散布装置は、スクリュー等で攪拌しつつ、ケーシングの下部に設けた孔から粉粒体を落下させる構造をなしているが、そのような従来の装置では、金粉等の微小な粉粒体を均一に散布することは困難であった。すなわち、金粉等の微小な粉粒体は、金属等の表面に付着しやすく、散布用の孔に詰まってブリッジを起こし易いという特性があるため、単にスクリュー等で攪拌するだけでは、散布用の孔からスムーズに落下せず、落下しても均一に分散しにくいという問題があった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、金粉のように微小で、付着しやすい粉粒体を均一に分散させて落下させることができるようにした粉粒体の散布方法及び粉粒体の散布装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の粉粒体の散布方法は、ホッパに貯留された粉粒体を、ホッパ下端に配設された回転ローラの表面に、周方向に沿って筋状にかつ軸方向に沿って所定間隔をあけて流出させ、前記回転ローラの上部周面に当接して軸方向に往復移動する均し部材によって、前記付着した粉粒体を前記回転ローラの軸方向に均一にならし、こうして前記回転ローラの表面に均一に付着した粉粒体を、前記回転ローラの周面に当接して張設され、前記回転ローラの軸方向に沿って往復移動するコイルバネからなる擦り落とし部材によって擦り落とすことを特徴とする。
【0008】
上記発明によれば、ホッパ下端から、回転ローラの表面に、周方向に沿って筋状にかつ軸方向に沿って所定間隔をあけて流出する粉粒体を、上記回転ローラの上部周面に当接して軸方向に往復移動する均し部材によって軸方向に均一にならし、更に、回転ローラの下部周面に当接して張設され、軸方向に沿って往復移動するコイルバネからなる擦り落とし部材によって擦り落とすことにより、金粉のように微小で、付着しやすい粉粒体であっても、均一に分散させて落下させることができる。
【0009】
本発明の粉粒体の散布方法においては、前記ホッパの、前記回転ローラの回転方向に位置する壁部の下縁部に、前記回転ローラの軸方向に沿って所定間隔で切欠き状の流出口を設け、該流出口のそれぞれに対応させて前記ホッパ内に攪拌棒を配置し、前記流出口の内側を擦るように前記攪拌棒を往復移動させることが好ましい。これによれば、攪拌棒で流出口の内側を擦ることにより、流出口で粉粒体がブリッジして詰まってしまうことを防止でき、粉粒体を流出口から連続してスムーズに流出させることができる。
【0010】
また、本発明の粉粒体の散布方法においては、前記回転ローラの下方に揺動する拡散部材を配置し、前記回転ローラから擦り落とされた粉粒体を、前記拡散部材に衝突させて分散させながら落下させることが好ましい。これによれば、回転ローラから擦り落とされた粉粒体が、揺動する拡散部材に衝突して広がりながら落下するので、粉粒体をより広い範囲に均一に分散させて落下させることができる。
【0011】
更に、本発明の粉粒体の散布方法においては、前記粉粒体が金粉であることが好ましい。これによれば、一般に金粉は、極めて微小な粉粒体であって、金属等の表面に付着しやすいため、均一に分散させて落下させることは困難であったが、本発明の方法によれば、均一に分散させて落下させることができる。
【0012】
一方、本発明の粉粒体の散布装置は、内部に粉粒体を貯留して、下端に長手方向に沿って所定間隔で配置された流出口を有するホッパと、前記ホッパの下端に回転可能に配置され、前記流出口から流出する粉粒体が周方向に沿って筋状に、かつ、軸方向に沿って所定間隔で付着する回転ローラと、前記回転ローラの上部周面に当接して配置され、前記回転ローラの軸方向に往復移動する均し部材と、前記回転ローラの下部周面に当接し、前記ローラの軸方向に沿って配設され、軸方向に往復移動するコイルバネからなる擦り落とし部材とを備えていることを特徴とする。
【0013】
上記発明によれば、ホッパの下端に設けられた複数の流出口から、回転ローラの周方向に沿って筋状に、かつ、軸方向に沿って所定間隔をあけて粉粒体が流出する。この粉粒体は、回転ローラの上部周面に当接して軸方向に往復移動する均し部材によって、回転ローラの軸方向にならされ、更に回転ローラの下部周面に当接し、ローラの軸方向に沿って配設され、軸方向に往復移動するコイルバネからなる擦り落とし部材によって擦り落とされる。その結果、例えば金粉のように微小で付着しやすい粉粒体であっても、均一に分散させて落下させることができる。
【0014】
また、ホッパの下端に回転ローラが配置され、この回転ローラの上部周面に均し部材が当接して配置され、回転ローラの下部周面に擦り落とし部材が当接して配設されているので、各部材が上下に配置されていて水平方向に出っ張りにくい構造をなすため、例えばコンベヤベルト上の狭いスペースに配置する場合でも、設置が可能となる。
【0015】
本発明の粉粒体の散布装置においては、前記ホッパの流出口は、前記回転ローラの回転方向に位置する壁部の下縁部に、前記回転ローラの軸方向に沿って所定間隔で切欠き状に形成されており、前記ホッパ内には、該流出口のそれぞれに対応して、前記流出口の内側を擦るように往復移動する攪拌棒が設けられていることが好ましい。これによれば、攪拌棒で流出口の内側を擦ることにより、流出口で粉粒体がブリッジして詰まってしまうことを防止でき、粉粒体を流出口から連続してスムーズに流出させることができる。
【0016】
また、本発明の粉粒体の散布装置においては、前記回転ローラの下方には、前記回転ローラから擦り落とされた粉粒体を衝突させて拡散させるための、揺動する拡散部材が配置されていることが好ましい。これによれば、回転ローラから擦り落とされた粉粒体が、揺動する拡散部材に衝突して広がりながら落下するので、粉粒体をより広い範囲に均一に分散させて落下させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、回転ローラの表面に、周方向に沿って筋状にかつ軸方向に沿って所定間隔で流出する粉粒体を、均し部材によって軸方向に均一にならすと共に、付着した粉粒体を回転ローラの周面に当接して張設され、回転ローラの軸方向に沿って往復移動するコイルバネからなる擦り落とし部材によって擦り落とすことにより、例えば金粉のように微小で付着しやすい粉粒体であっても、均一に分散させて落下させることができる。
【0018】
また、粉粒体の散布装置においては、回転ローラの上部周面及び下部周面に均し部材及び擦り落とし部材が当接して配設されているので、水平方向にそれほど出っ張ることなく、比較的コンパクトな構成となり、省スペース化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明において、粉粒体としては特に限定されないが、例えば金粉のように、微小で付着しやすい粉粒体が特に好適である。
【0020】
本発明において、粉粒体を散布する用途は特に限定されないが、粉粒体を散布して菓子等の物品の表面に均一に付着させる用途などに好適である。この場合、粉粒体を付着させる物品としては、例えばチョコレート等の油脂性菓子、パフ,コーンフレーク等の膨化菓子、ワッフル,ウエハース,ビスケットクラム,クッキークラム等の焼菓子等が挙げられる。
【0021】
以下、図面を参照して本発明による粉粒体の散布装置の一実施形態を説明する。この散布装置は、チョコレート等の菓子類に金粉を散布して付着させるために開発されたものである。
【0022】
図1,2に示すように、この粉粒体の散布装置10(以下、「散布装置10」という)は、水平方向に長く伸びる天井柱21と、この天井柱21の両端に垂設された一対の側柱22,22とからなる横長の枠形状をなしたフレーム20を有している。フレーム20の長手方向中間には中間板24が垂設され、この中間板24と一方の側柱22との間には矩形状の前板25が取付けられている。
【0023】
また、図1には、粉粒体Pを付着させる対象物となる各種の物品Gを矢印方向に搬送するコンベヤ1が併せて図示されているが、このコンベヤ1の長手方向の一側部に隣接して、基台3が配設されている。この基台3の上方にフレーム20の長手方向一側部の下端が固着され、これによってフレーム20の長手方向の他側部が、コンベヤ1の物品の搬送方向に直交して、コンベヤ1の上方に配設されている。
【0024】
本発明の散布装置10は、図1,2に示すように、フレーム20のコンベヤ1側(フレーム20の右側半分)に粉粒体Pの拡散手段が配設され、それとは反対側(フレーム20の左側半分)に拡散手段を駆動させるための駆動手段が配設された構造となっている。
【0025】
なお、以下の説明の便宜上、「正面側」とはコンベヤ1の搬送方向の下流側を意味し、「背面側」とはコンベヤ1の搬送方向の上流側を意味し、更に、「右側」及び「左側」とは正面側から見た場合の方向を意味するものとする。
【0026】
図3を併せて駆動手段について説明すると、フレーム20の前板25の正面側の上方には、長手方向に沿って第1ガイドレール31が配設され、その下方に平行となるように、第2ガイドレール32が配設されている。各ガイドレール31,32上には、第1スライドプレート33,第2スライドプレート34がスライド可能にそれぞれ装着され、各スライドプレート33,34には、フレーム20の長手方向全長よりもやや短い長さで形成された第1スライドアーム35,第2スライドアーム36がそれぞれ固着されている。また、各スライドプレート33,34の長手方向上面からは、後述する偏心カム39を挟持可能な程度に離れて、2つのカム受け部37,37が所定高さで突設している。
【0027】
また、前板25の背面側には、正面側の各ガイドレール31,32に対応して、2つのモータM1(図1参照)が固設され、各モータM1の回転軸は前板25を貫通して、正面側に配置された円形状の回転板38を回転可能に連結している。図3に示すように、各回転板38には、その回転中心Cに対して偏心した位置から、偏心カム39がそれぞれ突設しており、各偏心カム39は各スライドプレート33,34の2つのカム受け部37,37の間に挿入配置されている。したがって、2つのモータM1,M1がそれぞれ回転して各回転板38が回転すると、2つのカム受け部37,37に挟まれた偏心カム39が偏心回転して(図3の想像線で示す)、カム受け部37,37に連設された各スライドプレート33,34が、対応するガイドレール31,32に対して長手方向に往復移動する。その結果、各スライドアーム35,36が、図3,4の矢印に示すように、フレーム20の長手方向に往復移動するようになっている。
【0028】
以上のように、各スライドアーム35,36が往復移動することにより、後述する拡散手段の各部材を動作させるようになっている。すなわち、第1スライドアーム35が、後述する攪拌棒47を往復移動させる部材となっている。一方、第2スライドアーム36が、後述する均し部材55、擦り落とし部材60の両者を往復移動させると共に、拡散部材70を揺動させ、これら3つの部材55,60,70を同時に動作させる部材となっている。
【0029】
次に、図4及び図5を参照して、粉粒体Pを拡散させる拡散手段について説明すると、フレーム20の中間板24とコンベヤ1側の側柱22との間には、内部に粉粒体Pを貯留するホッパ40が配設されている。
【0030】
ホッパ40の下方には、円柱状の回転ローラ50が配置されている。この回転ローラ50は、前述した第2スライドアーム36の背面側に配置され、コンベヤ1側の側柱22の背面側に固設されたモータM2(図1参照)により、図5の矢印方向に沿って回転可能となるように、中間板24と側柱22との間で軸支されている。
【0031】
前記ホッパ40は、前述した各スライドアーム35,36の背面側に位置しており、前記回転ローラ50の上周面に下端が接して、ほぼ垂直に立設された前壁部41と、同じく前記回転ローラ50の上周面に下端が接して、上方に向かうほど次第に開口部が広くなるように、前壁部41に対して所定角度で斜めに配設された後壁部43とを有している。このように、後壁部43が斜めに配設されているので、上方に向かうほど広がる開口が形成され、ホッパ40内に粉粒体Pを投入しやすくなっている。また、ホッパ40の下方の開口は、前述したように、各壁部41,43の下端部が回転ローラ50の上部外周面に摺接するように配設され、回転ローラ50の周面によって閉塞されている。
【0032】
回転ローラ50の回転方向側の前壁部41には、その下縁部にホッパ40内に貯留された粉粒体Pを流出するための流出口41aが、回転ローラ50の軸方向に沿って所定間隔で複数個形成されている。これら複数の流出口41aから粉粒体Pが流出することにより、図6(a)及び図8に示すように、前記回転ローラ50の表面に、周方向に沿って筋状に、かつ、軸方向に沿って所定間隔で粉粒体Pが付着するようになっている。なお、この実施形態の場合、流出口41aは円弧状に切欠かれた形状をなしている(図6(a)参照)。但し、流出口41aは円弧状に限らず、山形状、長方形状等、任意の形状にすることができる。
【0033】
前記ホッパ40の上方には、中間板24と右側の側柱22との間隔よりも短い長さで形成された帯状プレート45が配設され、該帯状プレート45は前述した第1スライドアーム35に取付けられている。その結果、帯状プレート45は、中間板24と側柱22との間を横方向に往復移動可能となっている。また、帯状プレート45には、前記流出口41aに対応する個数及び間隔で、棒状の攪拌棒47が長手方向に沿って所定間隔で複数平行に取付けられている。各攪拌棒47は、帯状プレート45を上下に貫通し、その上下突出部に配設された一対の留め具46,46を介して、帯状プレート45に取付けられている。これらの攪拌棒47は、ホッパ40の前壁部41の内側に近接して配設され、その下端部が各流出口41aの内側に至るまで伸びていて、前記帯状プレート45が往復移動すると、各攪拌棒47が各流出口41aの内側を擦るように往復移動するようになっている(図5参照)。
【0034】
図5に示すように、ホッパ40の下方に配設された回転ローラ50の正面側の上部周面には、金属線材を所定ピッチで巻回して形成された複数のコイルバネを軸方向に並べて構成された均し部材55が、当接して配置されている。この均し部材55は、図6(a)に示すように、複数の流出口41aから流出して、回転ローラ50の周面上に筋状に付着した粉粒体Pを、図6(b)に示すように、回転ローラ50の周面上にて軸方向に均一にならすための部材であり、回転ローラ50の軸方向に往復移動するようになっている。なお、均し部材55は、1つのコイルバネで構成することもできる。
【0035】
この往復移動の構造及び機構について説明する。図4に示すように、前述した第2スライドアーム36の背面側であって、長手方向のコンベヤ1側の端部と、長手方向のほぼ中間位置とに、一対の支持プレート56,56が回転ローラ50側に向けて突設して取付けられており、この一対の支持プレート56,56の間に支持ロッド57が架設されている。この支持ロッド57が前記均し部材55を構成する各コイルバネの内周に挿入されることにより、支持ロッド57に均し部材55が支持されており、この均し部材は、回転ローラ50の上周面に当接して載置された状態となっている。そして、第2スライドアーム36が前述したように長手方向に往復移動すると、支持ロッド57もそれと一体に往復移動し、支持ロッド57に支持された均し部材55も往復移動するようになっている。なお、均し部材55を複数のコイルバネを軸方向に並べて構成し、各コイルバネを回転ローラ50の上周面に載置した構成を採用したことにより、回転ローラ50の軸方向の全長に亘って、均し部材55を均一に当接させることができる。
【0036】
一方、均し部材55を1つのコイルバネで構成する場合、上記のように支持ロッド57を1つのコイルバネで構成される均し部材55内に挿入して、均し部材55を支持することができる。その他に、支持ロッド57を設けず、均し部材55の両端部を、支持プレート56,56に直接連結させて、回転ローラ50の周面に当接させて張設することもできる。
【0037】
前記均し部材55の下方であって、回転ローラ50の正面側の下部周面には、均し部材55により回転ローラ50の周面に筋状に付着した粉粒体Pを擦り落とすための、擦り落とし部材60が張設されている。この擦り落とし部材60は、一本の金属線材を所定ピッチで巻回して形成されたコイルバネからなっており、両端部が一対のブラケット61,62により支持されている。具体的には、図5に示すように、前述した第2スライドアーム36の背面側であって、長手方向のほぼ中間位置に、回転ローラ50側に突出した板状ブラケット61が取付けられている。一方、第2スライドアーム36背面側のコンベヤ1側の端部には、回転ローラ50側にクランク状に突出すると共に、その先端部が前記板状ブラケット61よりも下方で、回転ローラ50の周方向下端部に近接する位置まで延出した形状をなす、クランク状ブラケット62が取付けられている(図4参照)。
【0038】
擦り落とし部材60は、先端部の高さが異なる一対のブラケット61,62により両端部が支持されるため、回転ローラ50の軸方向に対して斜めに配設されて、回転ローラ50の表面上に弾性的に当接している。その結果、軸方向の全長に亘って回転ローラ50の表面に密着している。そして、第2スライドアーム36が往復移動すると、擦り落とし部材60は回転ローラ50の軸方向に往復移動して、回転ローラ50に筋状に付着した粉粒体Pを擦り落とすようになっている(図8参照)。
【0039】
なお、前記擦り落とし部材60は、回転ローラ50の下部周面に当接して斜めに張設されたコイルバネからなるので、軸方向の全長に亘って回転ローラ50の表面に密着し、回転ローラ50表面に付着した粉粒体Pを効果的に擦り落とすことができる。しかしながら、擦り落とされる粉粒体Pの材質、回転ローラ50から粉粒体Pを擦り落とす速度、その他の製造条件等によって、適宜、擦り落とし部材60の回転ローラ50に対する張設角度を変更することができる。極端な場合、擦り落とし部材60は、必ずしも斜めに張設する必要はない。
【0040】
上記擦り落とし部材60により擦り落とされた粉粒体Pは、回転ローラ50の下方に配設された拡散部材70により広範囲に分散されるようになっている。拡散部材70は、一本の金属線材を所定ピッチで巻回して形成されたコイルバネ状をなしている。この拡散部材70の内部に棒状の揺動ロッド71が挿入されることにより、拡散部材70が揺動ロッド71にぶら下がるように支持され、その結果、揺動ロッド71が揺動すると、それに伴って拡散部材70も揺動するようになっている。
【0041】
次に、上記揺動ロッド71の揺動構造について、図4及び図7を参照して説明する。まず、揺動ロッド71の両端部は、略L字状をなした振子部材73に支持されている。各振子部材73は、上方の基端部がフレーム20の中間板24及びコンベヤ1側の側柱22に回動可能に支持されていて、基端部を中心として図7(a),(b)の矢印A3、B3に示すように、揺動するようになっている。そして、各振子部材73のL字状に折曲した先端部の近傍に、揺動ロッド71が連結されている。また、中間板24側の振子部材73の先端部下面からは、後述する扇状リンク78の第1溝部78bに入り込む揺動突起74が突設している。一方、側柱22側の振子部材73には、その先端部の一側面から鉤状アーム73aが延設されていて、この鉤状アーム73aの下面から上記と同様の揺動突起74が突設されている。
【0042】
また、第2スライドアーム36には、長手方向のコンベヤ1側の端面に、L字状の押引ブラケット76が固設され、同じく長手方向の中間で正面側には、略短冊状をなし下方が折り曲げられた押引ブラケット75が固設されている。各押引ブラケット75,76は、第2スライドアーム36を正面側から見たときに、いずれも前記振子部材73,73よりも正面外方に位置している。更に、各押引ブラケット75,76の先端部底面には、後述する扇状リンク78の第2溝部78cに入り込む、押引突起77,77がそれぞれ突設している。各押引ブラケット75,76は、第2スライドアーム36が回転ローラ50の軸方向に往復移動するのに伴って、回転ローラ50の軸方向に往復移動するようになっている。
【0043】
そして、各押引ブラケット75,76と、各振子部材73,73との間には、押引ブラケット75,76の往復移動運動を、振子部材73,73の揺動運動に変換するための、扇状リンク78,78がそれぞれ配設されている。すなわち、各扇状リンク78は、約90度の開き角度で扇状に広がった形状をなしており、それらが固定プレート79,79を介して、中間板24及びコンベヤ1側の側柱22にそれぞれ回動可能に取付けられている。具体的には、扇状リンク78のほぼ直角に角張った角部から支軸78aが突設していて、この支軸78aが、中間板24及び側柱22に固着された各固定プレート79,79の下底部に回動可能に支持されている。また、扇状リンク78の円弧状をなした周面には、各振子部材73,73に近い方の端部に、前記揺動突起74を受け入れる略U字状の第1溝部78bが形成され、押引ブラケット75,76に近い方の端部に、前記押引突起77を受け入れる略U字状の第2溝部78cがそれぞれ形成されている。
【0044】
図7(a),(b)には、上記の各部材からなる揺動ロッド71の揺動動作が示されている。すなわち、第2スライドアーム36がコンベヤ1側にスライドすると、それに伴って矢印A1方向に押引ブラケット75がスライドし、押引突起77が第2溝部78c内周を押圧して扇状リンク78を押し込み、支軸78aを中心として扇状リンク78が矢印A2方向に回動し、その結果、第1溝部78b内の揺動突起74が押圧されて、振子部材73が基端部を中心として矢印A3方向に揺動し、結果として、揺動ロッド71が矢印A4方向に揺動して、図7(b)に示す状態となる。
【0045】
そして、第2スライドアーム36が基台3側(コンベヤ1とは反対側)にスライドすると、矢印B1方向に押引ブラケット75がスライドして、押引突起77が第2溝部78c内周を押圧して扇状リンク78を引き戻し、支軸78aを中心として扇状リンク78が矢印B2方向に回動し、それと共に第1溝部78b内の揺動突起74が押圧されて、振子部材73が基端部を中心として矢印B3方向に揺動し、結果として、揺動ロッド71が矢印B4方向に揺動して、再び、図7(a)に示す状態に復帰する。すなわち、第2スライドアーム36の往復移動により、押引ブラケット75を介して扇状リンク78が押引きされて、扇状リンク78が所定の回動角度で往復回動し、それに伴って各振子部材73が所定の振れ幅で揺動することにより、揺動ロッド71を矢印A4、B4方向に揺動させるようになっている。
【0046】
なお、図7(a),(b)では、中間板24側の揺動ロッド71の揺動動作が示されているが、コンベヤ1側の揺動動作も同様であり、第2スライドアーム36の往復移動により、一対の扇状リンク78,78を同時に回動させて、一対の振子部材73,73を揺動させるようになっている。
【0047】
以上の動作が繰り返されて、揺動ロッド71が矢印A4,B4方向に揺動するため、揺動ロッド71にぶら下って支持された拡散部材70も、図8の矢印に示すように、揺動ロッド71を中心にして回転ローラ50の半径方向外方に向けて左右に大きく振られて、回転ローラ50の下方にて大きく揺動するようになっている。
【0048】
次に、上記構成からなる本発明の散布装置10を用いた、本発明による粉粒体の散布方法について説明する。
【0049】
まず、ホッパ40内に粉粒体P(この実施形態では、金粉)を投入して貯留しておく。その状態で、2つのモータM1により各スライドアーム35,36が回転ローラ50の軸方向に往復移動すると共に、モータM2により回転ローラ50が図5の矢印方向に回転する。
【0050】
そして、回転ローラ50が回転することにより、ホッパ40下端の複数の流出口41aから粉粒体Pが流出し、図6(a)及び図8に示すように、回転ローラ50の表面に、周方向に沿って筋状に、かつ、軸方向に沿って所定間隔をおいて粉粒体Pが付着する。
【0051】
このとき、第1スライドアーム35の往復移動に伴って、ホッパ40内にて攪拌棒47が往復移動することにより、ホッパ40内で粉粒体Pが互いにくっついて塊状となってしまっても、それらを破砕して攪拌することができ、粉粒体Pを常に一定粒径に保つことが可能となっている。更に、攪拌棒47は、ホッパ40下端の流出口41aの内側を擦るようにして往復移動するようになっているので、流出口41aで粉粒体Pがブリッジして詰まってしまうことを防止することができ、粉粒体Pを流出口41aから連続してスムーズに流出させることが可能となる。
【0052】
なお、この実施形態では、粉粒体Pとして、微小で他の物品に付着しやすい金粉が用いられているため、後述するホッパ40の流出口41aから流出した粉粒体Pは、回転ローラ50の表面に自然に付着するようになっているが、粉粒体Pを静電力、吸引力等の手段で強制的に回転ローラ50の表面に付着させることもできる。
【0053】
上記のようにして、回転ローラ50の周方向に筋状に付着した粉粒体Pは、第2スライドアーム36の往復移動に伴って、回転ローラ50の上部周面に当接しつつ軸方向に移動する均し部材55によって、回転ローラ50の軸方向にならされて、図6(b)に示すように、回転ローラ50の表面軸方向に均一となるように粉粒体Pが付着する。
【0054】
そして、上記のように回転ローラ50の表面に付着した粉粒体Pは、回転ローラ50の下部周面に当接して斜めに配設されて、第2スライドアーム36の往復移動により、回転ローラ50の軸方向に沿って往復移動するコイルバネからなる擦り落とし部材60により擦り落とされる。このとき、擦り落とし部材60は、回転ローラ50の下部周面に当接して斜めに配設されているため、その全長が回転ローラ50の表面に密着し、回転ローラ50の表面に付着した粉粒体Pを残さずに擦り落とすことができる。
【0055】
擦り落とされた粉粒体Pは、この実施形態の場合、コンベヤ1上に直接落下するのでなく、図8に示すように、拡散部材70の上方に落下するようになっている。この拡散部材70は、前述したように、第2スライドアーム36が往復移動することにより、扇状リンク78、振子部材73、揺動ロッド71を介して、回転ローラ50の下方で正面―背面方向に大きく揺動するようになっている。したがって、揺動する拡散部材70に、粉粒体Pが衝突して大きく広がりながらコンベヤ1上に配設された物品G上に落下する。
【0056】
以上説明したように、本発明によれば、均し部材55によって粉粒体Pを回転ローラ50の表面に均一に付着させた後、擦り落とし部材60により回転ローラ50から擦り落とすといった、2段階の工程を経て粉粒体Pを落下させるようにしているので、図8に示すように、粉粒体Pを均一に分散させて落下させることができる。したがって、回転ローラ50の下方に、粉粒体を付着させたい物品G(この実施形態では、チョコレート菓子)を配置しておくことにより、図9に示すような、表面に粉粒体Pが均一に付着した物品Gを製造することができる。また、粉粒体Pとして、金粉のような微小で、他の物品に付着しやすい性質を有する粉粒体であっても、均一に分散させて落下させることができる。
【0057】
また、ホッパ40、均し部材55、回転ローラ50、擦り落とし部材60及び拡散部材70が上下に配置されて、前後方向に大きく突出しない構造となっているため、コンベヤ1のライン上にとれるスペースが狭い場合にも、設置することが可能となる。
【0058】
更に、この実施形態においては、回転ローラ50の下方に揺動する拡散部材70を配設して、粉粒体Pが衝突して大きく広がりながらコンベヤ1上に配設された物品G上に落下するようにしたので、粉粒体Pをより広い範囲に均一に分散させて落下させることができる。これによって、例えばコンベヤ1が間欠的に移動するような場合でも、粉粒体Pを物品G上に、むらなく均一に落下させて付着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の粉粒体の散布装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】同粉粒体の散布装置の正面図である。
【図3】同粉粒体の散布装置の駆動手段の拡大正面図である。
【図4】同粉粒体の散布装置の要部の分解斜視図である。
【図5】図2のV−V矢視線における断面図である。
【図6】本発明の粉粒体の散布装置の回転ローラの作動状態を示しており、(a)は筋状に粉粒体が付着した状態を示す正面図、(b)は粉粒体が均された状態を示す正面図である。
【図7】同粉粒体の散布装置の揺動構造を示しており、(a)は第1の作動状態を示す斜視図、(b)は第2の作動状態を示す斜視図である。
【図8】同粉粒体の散布装置の拡散工程を示す側面図である。
【図9】同粉粒体の散布装置により製造された物品を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
10 粉粒体の散布装置
20 フレーム
35 第1スライドアーム
36 第2スライドアーム
39 偏心カム
40 ホッパ
41a 流出口
47 攪拌棒
50 回転ローラ
55 均し部材
60 擦り落とし部材
70 拡散部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホッパに貯留された粉粒体を、ホッパ下端に配設された回転ローラの表面に、周方向に沿って筋状にかつ軸方向に沿って所定間隔をあけて流出させ、前記回転ローラの上部周面に当接して軸方向に往復移動する均し部材によって、前記付着した粉粒体を前記回転ローラの軸方向に均一にならし、こうして前記回転ローラの表面に均一に付着した粉粒体を、前記回転ローラの周面に当接して張設され、前記回転ローラの軸方向に沿って往復移動するコイルバネからなる擦り落とし部材によって擦り落とすことを特徴とする粉粒体の散布方法。
【請求項2】
前記ホッパの、前記回転ローラの回転方向に位置する壁部の下縁部に、前記回転ローラの軸方向に沿って所定間隔で切欠き状の流出口を設け、該流出口のそれぞれに対応させて前記ホッパ内に攪拌棒を配置し、前記流出口の内側を擦るように前記攪拌棒を往復移動させる請求項1記載の粉粒体の散布方法。
【請求項3】
前記回転ローラの下方に揺動する拡散部材を配置し、前記回転ローラから擦り落とされた粉粒体を、前記拡散部材に衝突させて分散させながら落下させる請求項1又は2記載の粉粒体の散布方法。
【請求項4】
前記粉粒体が金粉である請求項1〜3のいずれか1つに記載の粉粒体の散布方法。
【請求項5】
内部に粉粒体を貯留して、下端に長手方向に沿って所定間隔で配置された流出口を有するホッパと、
前記ホッパの下端に回転可能に配置され、前記流出口から流出する粉粒体が周方向に沿って筋状に、かつ、軸方向に沿って所定間隔で付着する回転ローラと、
前記回転ローラの上部周面に当接して配置され、前記回転ローラの軸方向に往復移動する均し部材と、
前記回転ローラの下部周面に当接し、前記ローラの軸方向に沿って配設され、軸方向に往復移動するコイルバネからなる擦り落とし部材とを備えていることを特徴とする粉粒体の散布装置。
【請求項6】
前記ホッパの流出口は、前記回転ローラの回転方向に位置する壁部の下縁部に、前記回転ローラの軸方向に沿って所定間隔で切欠き状に形成されており、前記ホッパ内には、該流出口のそれぞれに対応して、前記流出口の内側を擦るように往復移動する攪拌棒が設けられている請求項5記載の粉粒体の散布装置。
【請求項7】
前記回転ローラの下方には、前記回転ローラから擦り落とされた粉粒体を衝突させて拡散させるための、揺動する拡散部材が配置されている請求項5又は6記載の粉粒体の散布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−100183(P2008−100183A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−285701(P2006−285701)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(000006116)森永製菓株式会社 (130)
【Fターム(参考)】