説明

粒子を分類するカンチレバー型同軸フロー射出装置及び方法

層流微小流体チャネル内で粒子237を分類する装置及び方法が、微小流体デバイス100内のカンチレバー型同軸フロー射出器35を備え、当該カンチレバー型同軸フロー射出器35は、微小流体デバイス100に組み込まれる細長いカンチレバー構成要素35を含む。同軸チャネル200が細長いカンチレバー構成要素35を通り、同軸チャネル200は所定のサイズの粒子237を通過させるような大きさになっている。アクチュエータ34が、細長いカンチレバー構成要素35を駆動するために当該細長いカンチレバー構成要素35に結合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層流微小流体チャネル内での粒子分類に関し、より詳細には、駆動されるカンチレバー型同軸フローチャネルを使用して、組込み微小流体デバイス内で生物細胞を分類するために適用される、光散乱、蛍光タグ、又は画像の分析からの光細胞検出に関する。
【背景技術】
【0002】
サイトメトリーにおける微小流体構造の使用は、流体回路のネットワークを生成することができる多くの微細加工技術の出現と共に急速に増加している。微小流体工学における多くのサイトメトリーの適用は、細胞集団で特有の特徴を有する細胞型又は複数の細胞を区別することを目的にしている。細胞を分類するのに利用可能な検出器は、光散乱検出から、蛍光マーカ、染色マーカ、並びに、形態学的画像及び特徴の区別までの範囲にわたる。検出は必ず分類の前に行われ、それに続いて細胞を一方の経路又はもう一方の経路に調整して導く。従来では、対象の細胞を含む高速細胞分類流体の液滴は、高電圧場を使用して液滴を静電気的に偏向し、それらの液滴をさらなる処理用の2つの配置のうちの一方に収集されるように、放出及び帯電される。
【0003】
細胞分類は、幹細胞又は、蛍光又は染色剤によってマーキングすることができる特定の遺伝的特徴若しくは化学的特徴を有する細胞のような、類似した特徴を有する密集した細胞集団のさらなる研究を含む多くの目的を有する。分類は、人による観察又は他の基準計器が、所与の検出体系又はマーカで細胞を測定することができる検出方式を有効にする効率的な手段でもある。
【0004】
1つの分類技法は、2004年8月17日にWangらに対して発行された「Optical Switching and Sorting of Biological Samples and Microparticles Transported in a Microfluidic Device, Including Integrated Biochip Devices」と題する米国特許第6,778,724号に見出される。この特許文献では、ラゲール−ガウシアンモードで動作しているVCSELから発生するレーザ光による光圧力によって押される小粒子を、選択された下流分岐点に入り、それによって、並列処理を含む粒子のスイッチング及び分類が実現するように、微小流体チャネル内の分岐接合部においてスイッチング及び分類する方法が開示されている。
【0005】
別の分類技法は、2003年4月1日にSpenceらに対して発行された「Microfabricated Cell Sorter for Chemical and Biological Materials」と題する米国特許第6,540,895号に見出される。この特許文献では、蛍光を促進するための光への曝露のような刺激を伴って又は伴わずに、光信号のような検出可能な信号の存在又は量に基づいて、細胞を適切な枝チャネルに分類する方法が開示されている。薄いカンチレバーが枝点内に含められ、それによって、当該カンチレバーを、典型的には静電引力によって主チャネルの一方の壁又は他方の壁に向かって変位させ、したがって、選択された枝チャネルを閉ざすことができる。
【0006】
微小流体チャネル内で細胞のような粒子を分類することは、1μL未満のサイズの小さな流体サンプルを使用することができることを利用し、サンプル粒子を検出し、続いて複数の取り得る経路のうちの1つへ分離することを可能にする。分類機構は、検出地点に含まれていると共に検出地点に非常に接近したままであり、したがって、その後の検出又は分析のためにサンプルをさらに濃縮するための余分な処理工程を必要とするサンプルを希釈する長い流体経路が必要ではなくなる。
【0007】
微小流体手法の別の利点は、処理されるサンプルごとに、低コストの交換流体経路を提供することによって、サンプルキャリーオーバをハードウエアから完全に取り除くことができることである。サンプル処理間での流体の洗浄の複雑性及び不安定性は、多くの場合に、配管を通じて流される流体の、サンプルの処理に必要とされる場合の5倍〜20倍が洗浄に必要とされる、見落されることが多いシステム細部である。配管壁を洗浄するのに十分に強力な乱流ずり応力を生成する可能性を取り除く層流状態を強制するマイクロチャネルを使用するとき、洗浄はさらに複雑である。配管壁から汚染を除去する唯一の仕組みは、壁の汚染物質をすすぎ液に拡散させることである。流体経路を洗浄するのではなく、流体経路を交換することで、必要な流体はより少なくなり、サンプル二次汚染除去の確実性が大幅に向上する。流体計測における失敗の主な原因は、基本的な流体工学に見出される。そのような流体の失敗の形態は、漏れ、目詰まり、密封の失敗、生体膜の成長、又は汚染の蓄積を含む。洗浄液は、フローサイトメータのような計測器から圧倒的な量の生体廃棄物を回収する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本発明の以前には、粒子検出システムと、分類制御と、同軸カンチレバー射出器とを含む微小流体分類システム内で層流チャネルを使用することが考慮されることはなかった。同軸カンチレバー射出器の使用によって、初めて、生物細胞を含む粒子を層流チャネル内に存在する複数の層のうちの選択される1つに導くことができるようになる。したがって、結果として分類される粒子は、肺癌、結腸癌、前立腺癌、乳癌、子宮頚癌、及び卵巣癌のような、さまざまな癌を含む病状の分析を容易にする濃縮されたサンプルを含む。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、微小流体デバイス内に組み込まれる、細長いカンチレバー構成要素を使用して、層流微小流体チャネル内で粒子を分類する装置及び方法を提供する。同軸チャネルが、細長いカンチレバー構成要素の中を通っており、同軸チャネルは所定のサイズの粒子を通過させるような大きさになっている。アクチュエータが、細長いカンチレバー構成要素を駆動するために当該細長いカンチレバー構成要素に結合される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下の記述は、本発明を実行するために現在意図されている最良の形態である。この記述は、本発明の包括的な原理を説明する目的で為され、限定する意味に解釈されるものではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照することによって最良に画定される。
【0011】
本発明のシステムは、低レイノルズ数で流体フローの性質に強制される層流状態を利用する。層流は、2000未満のレイノルズ数を有するフローとして定義されるが、ほとんどの微小流体用途の場合に、特に、水より粘度の高い流体を使用する用途の場合に、20未満のレイノルズ数がほぼ常に達成される。低レイノルズ数のフローは、チャネル内で層流ストリームすなわち層のあるフローストリームを保証する。低レイノルズ数におけるフローの場合、フロー方向に直交する流体の動きは、フローによって発生する力以外の力によって引き起こされるときにのみ生じる。いくつかの起こり得る破壊力は、流体の温度及び分子量によって引き起こされる拡散、フローストリーム内の物質の重量又は密度の関数である重力沈降/浮力、物体の異なる面上の不均等なフローによって生成される差圧を含むベルヌーイ力、並びに、機械力又は電磁力を含む。通常、フローストリームの層に流れる粒子は、外部の力によって作用されるまでその層に留まる傾向にある。
【0012】
1つの例示的な実施形態では、本発明は、チャネル内で粒子を層流ストリームのうちの特定の層に送達するための命令に従って屈曲することができる、カンチレバー型同軸フロー射出デバイスを利用する。層流は、流路内の分流までの射出された粒子のフローストリームの位置を保存する。流体経路は、対称的なチャネル寸法及び材料特性を有する2つ以上の経路に分流することができ、それによって、フロー経路のほぼ均等な分流が生じる。少量の空気の閉じ込めが層流の分流の対称性に影響しないようにするために経路から空気を取り除くことは多くの場合に有益である。
【0013】
動作時に、同軸に連結されている層流経路内でカンチレバー型中央(centered)フロー射出管を駆動すること又は屈曲することによって、細胞を2つ以上のチャネルのうちの1つに導くことができる。駆動の制限速度は、カンチレバーに印加される力及び製造に使用される材料の自然のばね定数、チャネル内の流体の粘性減衰、及びアクチュエータが移動しなければならない距離に応じる。典型的な微小流体チャネルにおいて、必要とされる偏向は100μm未満である。
【0014】
本発明に従って構成される微小流体デバイス内において、光ゲルのようなチキソトロープ剤又は減粘(shear thinning)剤の使用は、流体内での粒子の重力沈降を伴わずに、分類流体経路又は検出流体経路内でフローが減速又は停止することを可能にする。このような減粘剤はさらに、たとえば、制限として重力沈降を伴わずに何時間も粒子を分類するように、分類器の使用を非常に低速な動作にまで広げる。すぐ使用することのできるチキソトロープ光ゲルは、チキソトロープ光ゲルの光学的特性に関して選択され、適切な透明度及び屈折率を有する光ゲルが市販されている。
【0015】
ここで、図1を参照すると、本発明の一実施形態によって意図される、微小流体チャネル内で粒子を分類するシステムの1つの例示的なブロック図が概略的に示される。分類システム100は、分類制御信号19と、ポンプ制御信号20と、真空制御信号22とを提供するように構成される流体制御システム10を備える。粒子検出システム12は、撮像情報を送信するために流体制御システム10に電気的に結合される。流体フロー駆動システム5は、ポンプ制御信号20及び真空制御信号22から制御情報を受信する。インタフェースマニホルド15はまた、流体フロー駆動システム5に結合することができる。組込み微小流体デバイス101は、インタフェースマニホルド15内に取り付けることができる。当業者には理解されるように、インタフェースマニホルドは本発明の全ての設計用途に必要とされてはいないが、いくつかの用途において有用であり得る。
【0016】
組込み微小流体デバイス101は、有利には、サンプル保持チャネル30と、流体力学的焦点セル37と、サンプル保持チャネル30の下流のカンチレバー型同軸フロー射出器35(たとえば、図2に詳細に示す)を含む分類チャネル36と連絡する検査領域32とを備える。分類チャネル36を通じて、生物細胞を含む粒子は、廃棄チャネル38と細胞採取チャネル40とを含む、少なくとも2つの出力チャネルに分類される。検査領域32は、粒子が、粒子検出システム12によって検出されることになる位置を通過するように配置される。粒子検出システム12が顕微鏡を含む場合、たとえば検査領域32は、顕微鏡光学系の視野内に配置される。本発明の1つの有用な実施形態において、分類アクチュエータ34は、カンチレバー型同軸フロー射出器35に近接して配置され、流体制御システム10から分類制御信号19を受信するように結合される。
【0017】
粒子検出システム12は、処理されている粒子に固有であるか又は付与されている識別特徴を検出するのに適切な任意の検出システムとすることができる。たとえば、粒子検出システム12は、電気的検知領域システム、光散乱検出システム、蛍光ベースの検出システム、光画像捕捉・処理システム、顕微鏡システム、光トモグラフィシステム、又は同等の物とすることができる。検出システムは、微小流体デバイスの外部にあるか、微小流体デバイスに組み込まれるか、又は部分的に組み込まれることができる。
【0018】
流体フロー駆動システム5は、有利には、少なくとも1つの流体容器26と、当該少なくとも1つの流体容器26に結合される少なくとも1つの流体ポンプ24と、当該少なくとも1つの流体ポンプ24に結合される少なくとも1つの真空ポンプ28とを備えることができる。本開示の利益を有する当業者は、容器と、真空ポンプと、流体ポンプとが、インターフェースマニホルドを通じて組込み微小流体デバイスに層流状態を提供するために、流体駆動圧力及び真空圧力を送るように適切に構成されている限り、これらの容器と、真空ポンプと、流体ポンプとは、用途に応じて質、サイズ、及び構成が異なっていてもよいことを理解するであろう。流体フロー駆動システムは、有利には、層流状態を提供するために、正の変位若しくは圧力、及び/又は真空圧力を用いて、流体駆動力を送ることができる。1つの例示的な実施形態では、層流状態は栓流を含む。
【0019】
1つの有用で例示的な実施形態では、サンプル保持チャネル30は、生物細胞サンプルを含む。したがって、粒子が対象の細胞と他の粒子とに分類されている場合、対象の細胞が、分類アクチュエータの動作によって細胞採取チャネル40に導かれることができる一方で、他の粒子は、廃棄チャネル38に導かれる。いくつかの用途では、採取されなかった細胞をさらに他の粒子又は細胞型へとなお処理することが望ましい場合がある。そのような場合、本発明の複数の分類システムは、さまざまな判定基準又は2つ以上の分類チャネルを利用することができることに基づいて、互いに接続して分類し続けることができる。したがって、本発明の装置及び方法は、癌のような病状の下流分析が容易になるように生物サンプルを濃縮する手段を提供する。
【0020】
検出システムから受信する情報に応じて、流体制御システム10は、応答分類制御信号19を分類アクチュエータ34に提供し、分類アクチュエータ34は、カンチレバー型同軸フロー射出器35を駆動して生物細胞を少なくとも2つの出力チャネルのうちの選択される1つのチャネルに分類するように動作する。たとえば、生物細胞が採取されている場合、対象の細胞を細胞採取チャネルに導く層流ストリームの選択された層に送達するために、カンチレバー型同軸フロー射出器35を屈曲するように駆動することになる。
【0021】
組込み微小流体デバイス101は、微小流体デバイスの構成に典型的な複数の積層を含むことができる。化学ウエットエッチング方法と、レーザー切断方法と、積層レーザー切断方法と、微小成形方法と、光重合方法及び同等な方法と、これらの方法の組合せとを含む複合微小流体システムを生成する、さまざまなプロセスが既知である。多重の層を使用するポリマー積層プロセスは、チャネルのクロスオーバ及びポテンシャルが、異なる層には異なる材料を使用することを可能にする。組込み微小流体デバイスの製造に有用ないくつかの材料には、シリコンと、ガラスと、ポリマーフィルムと、シリコーンエラストマと、フォトレジスト材料と、ヒドロゲルと、熱可塑性プラスチックと、既知の同等な材料とが含まれる。
【0022】
ここで、図2を参照すると、本発明の一実施形態によって意図される、層流経路内で粒子を分類する組込み微小流体デバイスの側面図の1つの例示が概略的に示される。カンチレバー型同軸フロー射出器35に組み込まれているカンチレバー型同軸フローチャネル200は、粒子又は細胞の層流シース流体への射出を可能にし、層流シース流体は、チャネル40へと下り続けるフローストリーム「A」、及び、チャネル38へと下り続けるフローストリーム「B」としてのフローに分流する。中央チャネル200は、カンチレバー型であり、左からチャネル218及び209に入るシースフロー内に懸架される。生物細胞237のような物体は、分類チャネル36と呼ばれる結合フロー領域に放出される直前にカンチレバー型中央チャネルへと下って移動する。鉄コーティング235又はニッケルワイヤのような埋め込まれている鉄材料は、チャネル200の壁に埋め込まれるか、又はそうでなければ塗布されることができる。代替的に、材料235は、カンチレバー型チャネルをフローストリーム「A」へと上に動かすか又はフローストリーム「B」へと下に動かすために、バイメタルベンダ(bimetallic bender)又は圧電性屈曲材であってもよい。流体チャネルの外部には、駆動されるとアクチェータに向かってカンチレバーを引く、電磁アクチュエータ34及び341が存在することができる。他の同等な駆動方式も利用されてもよい。
【0023】
1つの実施例では、カンチレバー型チャネル同軸フロー射出器では、同軸チャネルは100μm〜1mmの範囲の直径を有することができる。別の例示的な実施形態では、カンチレバー型チャネル同軸フロー射出器は、有利には、50μm〜1mmの範囲の直径を有することができる。
【0024】
ここで、図3も参照すると、本発明の一実施形態によって意図される、駆動状態において層流経路内で粒子を分類する組込み微小流体デバイスの側面図の例示が概略的に示される。図示されている駆動状態で、生物細胞237のような対象物の認識に応答する制御信号は、第1のアクチュエータ34がコイル208における電気信号によって駆動されるようにする。これに応答して第1の分類アクチュエータ34、ここでは電磁石が、カンチレバー型チャネル200を約20μm〜約100μmだけチャネル内でわずかに上方に引く。このわずかな上昇偏向は、細胞237を細胞採取チャネル40に入る層流ストリーム「A」に射出するのに十分であり、細胞採取チャネル40から細胞は後に採取されることができる。フローは連続的であるため、中央チャネル200内の次の細胞203は、カンチレバー型同軸フロー射出器35によって分類される前に、粒子検出システム12(図1)によって決定される、選択されるチャネルに導かれなければならない。細胞237が放出された後であるが次の細胞203が放出点に到着する前に、第1のアクチュエータ34又はコイル258を有する第2のアクチュエータ341のいずれかを駆動することによって、次の細胞203の誘導が行われる。対象物が検査領域内で識別されない場合、第2の分類アクチュエータ341が駆動されて、カンチレバー型同軸フロー射出器35を反対方向に屈曲し、それによって、非対象の物体を廃棄チャネル38に導くことに留意されたい。
【0025】
ここで図4を参照すると、本発明での使用を意図する、粒子検出システム12の1つの例示的な実施形態が示される。粒子検出システム12は、有利には、カメラ50に画像情報を送信するように結合される顕微鏡光学系42を備えることができる。カメラ50は、有利には、任意の従来のカメラ、デジタルカメラ、又は、用途及び撮像されているスペクトル周波数に応じて、電荷結合素子センサ、色センサ、赤外線センサ、紫外線センサ、及び他の類似のセンサを利用するもののような同等な撮像センサを含むことができる。カメラ50は、撮像情報を画像処理システム51に送信する。画像処理システム51は、有利には、細胞特性化システム、対象物認識ソフトウエアプログラム、単次元画像再構成ソフトウエアプログラム若しくは多次元画像再構成ソフトウエアプログラム、若しくはパーソナルコンピュータにおいて実行されている同等物、特定用途向け集積回路、又は同等なプロセッサを含むことができる。このようなソフトウエアは、撮像された粒子の特徴及び特性を区別することができる。画像処理システムは画像情報に基づいて分類判断を行い、ソフトウエアプログラム内で処理される画像に応答して分類制御信号を生成する流体制御システム10にその判断を送信する。流体制御システムは、有利には、粒子が検査領域で検出される時刻と、粒子が先端部(tip)39に到着する時刻との間の遅延を求める時間遅延発生器11を組み込むことができる。タイミング機構は、流体制御若しくは組込み微小流体デバイス101に組み込まれるか、又は、1組の別個のセンサとして追加されるタイマとすることができる。代替的に、時間遅延は、既知のシステムパラメータ、及び粒子又はその同等物の検出の時刻を用いて計算してもよい。
【0026】
組込み微小流体デバイス101は、検査領域32を顕微鏡光学系42の視野内に配置するように位置決めされる。画像処理51は、粒子及び細胞を検査領域内のカメラ画像から識別すると、情報を流体制御10に送信する。流体制御10は、これに応答して、分類制御信号19を分類アクチュエータ34、341(341はここでは図示せず)のうちの一方に送信する。制御信号19が、許容される工学原理に従って構成される複数のアナログ回線又はデジタル回線を表すことができることが理解されるであろう。すなわち、たとえば、画像処理が生物細胞を認識すると、対応する分類制御信号は、分類アクチュエータを駆動してカンチレバー型放出器先端部39を偏向させ、その細胞を細胞採取チャネルに送る。そうでなければ、反対の方向にカンチレバーを偏向させることによって、粒子は廃棄チャネルに導かれることになる。
【0027】
一実施形態において、本発明によって意図されるシステムは、検出システムのための光トモグラフィを利用することができる。再構成アルゴリズムを含む有用な光トモグラフィベースのシステムのいくつかの例が、2003年2月18日にNelsonに対して発行された「Apparatus and Method for Imaging Small Objects in a Flow Stream Using Optical Tomography」と題する米国特許第6,522,775号に記載されている。米国特許第6,522,775号の全開示が、参照により本明細書に援用される。
【0028】
ここで、図5を参照すると、本発明での使用を意図する微小流体層流経路内における分類方法の1つの例示的な実施形態のブロック図が概略的に示される。当該分類方法300は以下のステップ、すなわち:
ステップ302において、粒子を組込み微小流体デバイス内の層流経路内で輸送すること、
ステップ303において、層流経路内で複数の粒子のうちの少なくとも一部の特徴を検出すること、
ステップ304において、連続した画像又は検出によって前記粒子の速度を検出すること、
ステップ305において、検出された特徴に応答して検出情報を生成すること、
ステップ306において、検出された特徴に基づいて、選択された粒子の分類判断を行うこと、
ステップ307において、粒子が放出器先端部に現れるまで遅延すること、及び
ステップ308において、選択された粒子を層流経路の選択された層に導くことを含む。
【0029】
1つの有用な実施形態において、層流経路内で粒子を輸送するステップ302は、有利には、流体制御システムを操作してポンプ制御信号と真空制御信号とを提供すること、及び、当該ポンプ制御信号と当該真空制御信号とに応答して、任意選択のインタフェースマニホルドを通じて流体フローを駆動することによって実行することができる。光学検出システムを使用する一実施形態において、層流経路内で粒子の特徴を検出するステップ303は、有利には、流体制御システムに電気的に結合されるカメラで画像を捕捉することによって実行することができる。顕微鏡光学系は、サンプル保持チャネルからのサンプルが流体力学的に合焦され、顕微鏡光学系の視野を通じて、且つ、光学素子の被写界深度内で輸送されるとき、カメラに画像を送信するように結合することができる。選択された粒子を導くステップ304は、有利には、サンプル保持チャネル及び光学観察(optical viewing)チャネルの下流のカンチレバー型同軸フロー射出器によって実行することができる。流体制御システムは、物体を少なくとも2つの出力チャネルのうちの1つに分流する層流経路に導くために、分類制御信号をカンチレバー型同軸フロー射出器上で動作する分類アクチュエータに提供するように操作される。粒子が放出器先端部に現れるまで遅延するステップ307は、有利には、フローストリーム内の粒子又は細胞の速度、及び放出先端部と検査領域との間の距離を測定又は予め定めておくことによって求められる時間遅延に従うことができる。したがって、検査領域での粒子の検出は時間遅延をトリガする。代替的に、時間遅延は、検出システム若しくは画像処理システム、又はそれらの組み合わせの他の部分において設定してもよい。
【0030】
ここで、図6を参照すると、本発明での使用を意図する、粒子検出システム12Aの別の例示的な実施形態が概略的に示される。粒子検出システム12Aは、有利には、光散乱検出システムを含むことができ、光散乱検出システムにおいて、光源142から光学素子144を通じて光を検査領域32内で細胞1に衝突させるように送信することができる。対象物からの散乱光155は、戻り光学素子154を通じて光センサ151へと送信される。光センサからの検知信号は、所与の集光角内で散乱光強度に基づいて分類判断を行う特徴検出器160によって処理される。特徴検出器は、分類情報を流体スイッチ制御に出力し、これに応じて、流体スイッチ制御は、実質的に図1〜図6を参照して記載したように分類機構を駆動する。センサ及び光源を、本開示の利益を有する当業者の技能の範囲内にあるように置換することによって、類似の検出システムを使用して、対象物からの蛍光符号化信号又はスペクトル符号化信号を検出することができ、スペクトル符号化生体マーカの存在又は色が、粒子又は細胞、この例では細胞1を、1つのチャネル又はもう1つのチャネルに導く決定に対する入力となる。
【0031】
本発明の特定の実施形態が、図面を参照して本明細書で記載されてきたが、このような実施形態は例示にすぎず、本発明の原理を適用することができる多くの可能な特定の実施形態の例示にすぎないことを理解すべきである。本発明が関連する技術分野の熟練者(当業者)に明らかなさまざまな変更及び変更形態は、添付の特許請求の範囲でさらに画定されるように、本発明の精神、範囲、及び意図内にあると見なされる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態によって意図される、駆動されるカンチレバー型同軸フローチャネルを使用して、粒子を分類するシステムの1つの例示的なブロック図を概略的に示す図である。
【図2】本発明の一実施形態によって意図される、層流経路内で粒子を分類する組込み微小流体デバイスの側面図の1つの例示を概略的に示す図である。
【図3】発明の一実施形態によって意図される、層流経路内での粒子の分類動作中の、組込み微小流体デバイスの断面端面図の1つの例示を概略的に示す図である。
【図4】本発明での使用が意図される、検出システムの1つの例示的な実施形態のブロック図を概略的に示す図である。
【図5】本発明での使用が意図される、分類方法の1つの例示的な実施形態のフロー図を概略的に示す図である。
【図6】光散乱検出システムを利用する本発明での使用が意図される、粒子検出システムの別の例示的な実施形態のブロック図を概略的に示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
層流微小流体デバイス(100)内のカンチレバー型同軸フロー射出器であって、
前記層流微小流体デバイス(100)に組み込まれる細長いカンチレバー構成要素(35)と、
前記細長いカンチレバー構成要素(35)を通る同軸チャネル(200)であって、所定のサイズの粒子(237)を通過させるような大きさになっている、前記同軸チャネルと、
前記細長いカンチレバー構成要素(35)に結合され、前記細長いカンチレバー構成要素(35)を駆動するアクチュエータ(34)と、
を備える、カンチレバー型同軸フロー射出器。
【請求項2】
前記駆動する手段は、圧電性屈曲デバイスと、磁界発生器と、電磁素子と、静電引力デバイスとから成る群から選択される前記アクチュエータ(34)を備える、請求項1に記載のカンチレバー型同軸フロー射出器。
【請求項3】
前記細長いカンチレバー構成要素(35)は、ワイヤ、鉄コーティング、埋め込まれる鉄材料、及びニッケルワイヤのうちの少なくとも1つを組み込む、請求項1に記載のカンチレバー型同軸フロー射出器。
【請求項4】
前記同軸チャネル(200)は、層流内で生物細胞(1)を通過させるような大きさになっている、請求項1に記載のカンチレバー型同軸フロー射出器。
【請求項5】
前記細長いカンチレバー構成要素(35)は、前記微小流体デバイス(100)内で前記粒子(237)を複数の層流の層に分配するように駆動されるようになっている、請求項1に記載のカンチレバー型同軸フロー射出器。
【請求項6】
前記同軸チャネル(200)は、100μm〜1mmの範囲の直径を有する、請求項1に記載のカンチレバー型同軸フロー射出器。
【請求項7】
前記同軸チャネル(200)は、50μm〜1mmの範囲の直径を有する、請求項1に記載のカンチレバー型同軸フロー射出器。
【請求項8】
微小流体チャネル内で粒子(237)を分類するシステムであって、
検出情報を生成する粒子検出システム(12)と、
前記粒子検出システム(12)に電気的に結合される流体制御システム(10)であって、前記粒子検出システム(12)から受信される情報に応答して分類制御信号(19)を提供するように構成される、前記流体制御システム(10)と、
前記流体制御システム(10)に結合される流体フロー駆動システム(5)と、
サンプル保持チャネル(30)と、検査領域(32)と、該検査領域(32)の下流のカンチレバー型同軸フロー射出器(35)と、少なくとも2つの出力チャネル(38、40)とを備える、微小流体デバイス(100)と、
前記分類制御信号(19)を受信するように結合される分類アクチュエータ(34)であって、前記カンチレバー型同軸フロー射出器(35)を駆動するように配置される、前記分類アクチュエータ(34)と、
を備える、微小流体チャネル内で粒子を分類するシステム。
【請求項9】
前記システムは、前記検査領域(32)に前記粒子(237)を送るように結合される流体力学的な焦点セル(hydrodynamic focus cell)(37)をさらに含み、該流体力学的な焦点セル(37)は前記粒子(237)を中心に置く、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記粒子検出システム(12)は、電気検知領域システムと、光散乱検出システムと、蛍光検出システムと、光学スペクトル検出システムと、光画像捕捉・処理システムと、顕微鏡システムと、光トモグラフィシステムとから成る群から選択される、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記流体フロー駆動システム(5)は、少なくとも1つの流体容器と、該少なくとも1つの流体容器に結合される少なくとも1つの流体ポンプと、該流体ポンプと前記微小流体チャネルとに結合される少なくとも1つの真空ポンプとを備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記流体フロー駆動システム(5)は、層流状態を提供するように、正の変位若しくは圧力、及び/又は真空圧力を用いて流体駆動力を送る、請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
前記層流状態は栓流を含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記粒子(237)は生物細胞(1)を含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項15】
前記分類制御信号(19)は、前記カンチレバー型同軸フロー射出器(35)を駆動して、前記生物細胞(1)を前記少なくとも2つの出力チャネル(38、40)のうちの選択される1つのチャネルに分類する、請求項8に記載のシステム。
【請求項16】
前記カンチレバー型同軸フロー射出器(35)は、前記少なくとも2つの出力チャネル(38、40)のうちの選択される1つのチャネル内で、前記粒子(237)を層流ストリームの選択された層へと送達するように屈曲する、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記分類アクチュエータ(34)は、圧電性屈曲デバイスと、磁界発生器と、電磁石と、静電引力デバイスとから構成される群から選択される、請求項8に記載のシステム。
【請求項18】
前記カンチレバー型同軸フロー射出器(35)は、ワイヤ、鉄コーティング、埋め込まれる鉄材料、及びニッケルワイヤのうちの少なくとも1つを組み込む、請求項8に記載のシステム。
【請求項19】
微小流体層流経路内で粒子(237)を分類する方法であって、
複数の粒子を組込み微小流体デバイス(100)内の層流経路内で輸送するステップ(302)と、
前記層流経路内で前記複数の粒子の特徴を検出するステップ(303)と、
前記検出された特徴に応答して検出情報を生成するステップ(305)と、
前記検出情報に基づいて、選択された粒子の分類判断を行うステップ(306)と、
前記選択された粒子を、前記サンプル保持チャネルの下流のカンチレバー型同軸フロー射出器(35)に射出するステップと、
前記分類判断に応答して、前記選択された粒子を、少なくとも2つの出力チャネル(38、40)のうちの1つのチャネルを通じて前記層流経路の選択された層に導く(308)ために、前記カンチレバー型同軸フロー射出器(35)上で動作する分類アクチュエータ(34)に分類制御信号を提供するステップと、
を含む、微小流体フロー経路内で粒子を分類する方法。
【請求項20】
前記輸送するステップは、前記層流経路内で前記複数の粒子(237)を流体力学的に合焦することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記特徴を検出するステップ(303)は、散乱特性を含む特徴を検出する光散乱検出システム、蛍光特性を含む特徴を検出する蛍光検出システム、撮像特性及び光画像捕捉を含む特徴を検出する顕微鏡システム、撮像特性を含む特徴を検出する光トモグラフィシステム、並びに撮像特性を含む特徴を検出する処理システムのうちの少なくとも1つを操作することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
光画像捕捉・処理システムを駆動するステップは、前記層流経路内でカメラ(151)によって前記粒子(237)の画像を捕捉するステップを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記光画像捕捉・処理システムは、前記分類判断を行う対象物認識ソフトウエアプログラムをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記層流経路内で前記粒子(237)を輸送するステップは、ポンプ制御信号(20)と真空制御信号(22)とを提供するために流体制御システム(10)を操作すること、及び、流体フローを駆動するために流体駆動システム(5)を使用することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項25】
前記カンチレバー型同軸フロー射出器(35)は、前記粒子(237)を層流ストリームの前記選択された層(38、40)に送達するように屈曲する、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記分類アクチュエータ(34)は、圧電性屈曲デバイスと、磁界発生器と、電磁石と、静電引力デバイスとから成る群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
前記カンチレバー型同軸フロー射出器(35)は、ワイヤ、鉄コーティング、埋め込まれる鉄材料、及びニッケルワイヤのうちの少なくとも1つを組み込む、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
前記粒子(237)は生物細胞(1)を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項29】
層流経路内で粒子(237)を分類する微小流体デバイス(100)であって、
サンプル保持チャネル(30)と、該サンプル保持チャネル(30)の下流のカンチレバー型同軸フロー射出器(35)と、少なくとも2つの出力チャネル(38、40)とを備える、微小流体チップ(101)を備え、
前記カンチレバー型同軸フロー射出器(35)は、該カンチレバー型同軸フロー射出器(35)を通じて流れる粒子を選択された層に導くために、分類制御信号(19)を送信して該カンチレバー型同軸フロー射出器(35)を駆動するように分類アクチュエータ(34)に結合されるように配置される、微小流体デバイス。
【請求項30】
前記分類アクチュエータ(34)は、圧電性屈曲デバイスと、磁界発生器と、電磁石と、静電引力デバイスとから成る群から選択される、請求項29に記載の微小流体デバイス(100)。
【請求項31】
前記カンチレバー型同軸フロー射出器(35)は、磁性体材料、ワイヤ、及び磁性コーティングのうちの少なくとも1つを組み込む、請求項30に記載の微小流体デバイス(100)。
【請求項32】
前記サンプル保持チャネル(30)は生物細胞(1)を含む、請求項29に記載の微小流体デバイス(100)。
【請求項33】
前記カンチレバー型同軸フロー射出器(35)は、前記分類制御信号(19)に応答して屈曲して、前記少なくとも2つの出力チャネル(38、40)のうちの1つのチャネル内の層流ストリームの選択された層に、前記粒子(237)を送達する、請求項29に記載の微小流体デバイス(100)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−530618(P2009−530618A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500552(P2009−500552)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【国際出願番号】PCT/US2007/063367
【国際公開番号】WO2007/109412
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(503351962)ヴィジョンゲイト,インコーポレーテッド (7)
【Fターム(参考)】