説明

粒子製剤の製造方法

【課題】高度に薬物の溶出制御がされた粒子製剤の製造方法であって、2種類の噴霧液をそれぞれ別々のノズルから同時に噴霧するような複雑な方法を使用することなく、薬物の粒子が複層でコーティングされた粒子製剤を、噴霧乾燥法によって簡便に製造できる粒子製剤の製造方法を提供する。
【解決手段】薬物の粒子を、セルロース系腸溶性高分子を含む第一コーティング溶液に溶解及び/又は懸濁させ、噴霧乾燥法により上記薬物の粒子に第一被覆層を形成する工程と、上記第一被覆層を形成した上記薬物の粒子を、上記セルロース系腸溶性高分子と異なる水不溶性高分子を含む第二コーティング溶液に懸濁させ、噴霧乾燥法により第二被覆層を形成する工程とを有することを特徴とする粒子製剤の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子製剤の製造方法に関し、より詳しくは、噴霧乾燥法を利用し、薬物の溶出制御された粒子製剤を製造することができる、粒子製剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医薬固形製剤においては、薬物の溶出特性等を制御するために、薬物原末を結合剤、賦形剤等を加えて造粒したり、薬物を含む粒子を水不溶性の被覆物質で被覆したりしている。
ところが、一般的に粒子は、粒径が小さくなるにつれて表面積が大きくなるため、薬物を含む粒子に水不溶性の被覆物質を施す方法では、薬物を含む粒子を粒子化しつつ、薬物の溶出制御(特に溶出抑制、苦みマスキング)は非常に困難であった。
【0003】
噴霧乾燥法は、簡便かつ効率的に粒子化、粉末化できる方法として幅広く利用されている。しかし、薬物の溶出制御を目的とした薬物のコーティングには、流動層コーティングが利用される場合が多かった。これは、噴霧乾燥法では、コーティング膜に充分に厚み持たせることが難しく、そのため、高度に薬物の溶出制御がされた被覆粒子製剤が得られないことがその理由として挙げられる。
【0004】
噴霧乾燥法を利用した薬物のコーティング技術としては、例えば、特許文献1に、単層被覆構造の苦味抑制された薬物粒子を、噴霧乾燥法により製造することについて開示されている。
しかしながら、特許文献1には、噴霧乾燥法を用いた複層コーティング方法については示されておらず、薬物の溶出特性の制御としては不充分なものであった。
【0005】
また、例えば、特許文献2には、薬物を含む高分子溶液と、凝集防止剤の水溶液とをそれぞれ別のノズルを用いて噴霧乾燥器中で噴霧接触させ、凝集防止剤で薄膜被覆された薬物含有粒子製剤の製造方法について開示されている。
しかしながら、特許文献2に開示の方法は、2本のノズルから異なる組成の溶液を同時に噴霧するため、安定した品質の製品を製造し難いという問題があった。また、2本のノズルを有する特殊な構造から、設備が高額になり、使用後の清掃やメンテナンスにも時間と費用がかかるという問題もあった。
更に、特許文献2には、2種類の噴霧液をそれぞれ別々のノズルから同時に噴霧するような複雑な方法を使用することなく、高度に薬物の溶出制御がされた複層コーティング粒子製剤を噴霧乾燥法によって簡便に製造する方法については開示されていない。
【0006】
また、例えば、特許文献3には、素顆粒に、第1腸溶性層及び第2腸溶性層が被覆された腸溶性顆粒剤が開示されている。
しかし、特許文献3に開示の腸溶性顆粒剤の製造方法は、スプレードライ法ではなく、流動造粒法によるコーティング方法であり、第1腸溶性層及び第2腸溶性層のコーティングポリマーとして水分散エマルジョンポリマーが使用され、セルロース系腸溶性ポリマー(HPMCAS)が第一層、第二層にそれぞれ使用(第二層に用いるHPMCASの溶解pHが、第一層に用いるHPMCASの溶解pHよりも低い)されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3415835号公報
【特許文献2】特許第3205884号公報
【特許文献3】特開2007−332101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、高度に薬物の溶出制御がされた粒子製剤の製造方法であって、2種類の噴霧液をそれぞれ別々のノズルから同時に噴霧するような複雑な方法を使用することなく、薬物の粒子が複層でコーティングされた粒子製剤を、噴霧乾燥法によって簡便に製造できる粒子製剤の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、薬物の粒子に、噴霧乾燥法を用いて第一被覆層を形成した後、更に、噴霧乾燥法を用いて第二被覆層を形成し、上記第一被覆層に含まれるコーティングポリマーと、上記第二被覆層に含まれるコーティングポリマーとを異なるものとすることで、高度に薬物の溶出制御がされた粒子製剤を、噴霧乾燥法により簡便に製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の粒子製剤の製造方法により製造された粒子製剤は、薬物の粒子と、この薬物の粒子を被覆する所定のコーティング剤を含む二層の被覆層とで構成され、平均粒径が小さい場合でも、薬物溶出を有効に制御できるという特色がある。
【0010】
すなわち、本発明は、薬物の粒子を、セルロース系腸溶性高分子を含む第一コーティング溶液に溶解及び/又は懸濁させ、噴霧乾燥法により上記薬物の粒子に第一被覆層を形成する工程と、上記第一被覆層を形成した上記薬物の粒子を、上記セルロース系腸溶性高分子と異なる水不溶性高分子を含む第二コーティング溶液に懸濁させ、噴霧乾燥法により第二被覆層を形成する工程とを有することを特徴とする粒子製剤の製造方法である。
本発明の粒子製剤の製造方法において、上記第一コーティング溶液は、第一極性溶媒を含有することが好ましく、上記第一極性溶媒は、アセトンであることが好ましい。
また、上記第二コーティング溶液は、上記第一極性溶媒と異なる第二極性溶媒を含有することが好ましく、該第二極性溶媒は、エタノールであることが好ましい。
また、上記セルロース系腸溶性高分子は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)及び/又はヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)を含むことが好ましい。
また、上記水不溶性高分子は、エチルセルロース、メタクリル酸−アクリル酸メチル共重合体、メタアクリル酸メチル−メタクリル酸ブチル−メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アクリル酸エチル−メタクリル酸メチル−メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル共重合体、及び、アクリル酸エチル−メタクリル酸メチル共重合体からなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
また、上記第二被覆層を形成した粒子製剤の粒径が0.1〜200μmであることが好ましい。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明の粒子製剤の製造方法は、薬物の粒子を、セルロース系腸溶性高分子を含む第一コーティング溶液に溶解及び/又は懸濁させ、噴霧乾燥法により上記薬物の粒子に第一被覆層を形成する工程を有する。
本工程により、上記薬物の粒子は、上記第一被覆層で被覆された単層被覆薬物粒子となる。ここで、上記薬物の粒子を第一コーティング溶液に溶解させた場合、本工程により、薬物と第一コーティング溶液のコーティング材料とが渾然一体となった粒子(渾然一体粒子)が製造され、上述した単層被覆薬物粒子とは見かけ上構造が異なる粒子となる。しかしながら、上記渾然一体粒子であっても、後述する第二被覆層を形成する工程を行うことで、上述した本発明の効果を充分に発揮し得る粒子製剤を製造することができる。このため、本発明では、上記渾然一体粒子も薬物の粒子が第一被覆層で被覆された粒子であるものとする。
なお、確実に上記第一被覆層を形成するためには、上記第一コーティング溶液に上記薬物の粒子が完全には溶解しないことが好ましく(すなわち、薬物の粒子が一部懸濁されている状態)、上記薬物の粒子が第一コーティング溶液に全く溶解しないことがより好ましい(すなわち、薬物の粒子が全部懸濁されている状態)。
【0012】
上記薬物の粒子における薬物としては、生理学的又は薬理学的に活性な活性成分であれば特に限定されず、例えば、生理活性を有するポリペプチド及び核酸、解熱・鎮痛・抗炎症薬、痛風・高尿酸血症治療薬、催眠・鎮静薬、睡眠導入剤、抗不安薬、抗てんかん薬、抗精神病薬、抗うつ薬、抗パーキンソン剤、自律神経系作用薬、脳循環代謝改善薬、アレルギー治療薬、抗アレルギー薬、抗狭心症薬、β遮断薬、カルシウム拮抗薬、強心薬、抗不整脈薬、利尿薬、降圧薬、血管収縮薬、血管拡張薬、高脂血症用薬、昇圧薬、気管支拡張薬・喘息治療薬、鎮咳薬、去痰薬、消化性潰瘍治療薬、健胃・消化薬、下剤、整腸薬、制酸薬、糖尿病薬、ホルモン製剤、ビタミン製剤、抗生物質、骨粗しょう症薬、抗菌薬、化学療法剤、抗ウィルス薬、抗腫瘍剤、筋弛緩剤、抗凝血剤、止血剤、抗結核剤、麻薬拮抗剤、骨吸収抑制剤、血管新生抑制剤、中枢神経系用薬、局所麻酔剤、鎮暈剤、循環器官用薬、呼吸促進剤、止しゃ剤、利胆剤、消化器官用薬、泌尿器官用剤、肝臓疾患用剤等が挙げられる。上記薬物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
なかでも、上記薬物としては、水溶性を有する薬物であることが好ましい。なお、上記水溶性の薬物とは、100gの25℃の水に溶解する重量が1g以上である薬物を意味する。このような薬物としては、例えば、グアヤコールスルホン酸カリウム(去痰薬)等が挙げられる。
【0013】
薬物の粒子は、公知の粉砕技術(ハンマーミル、サンプルミル、ピンミル、ジェットミル、ビーズミル等)によって製造することができる。
また、上記薬物の粒子として、例えば、流動層造粒装置、撹拌型流動層装置、転動流動層装置、遠心転動装置、噴霧乾燥装置を用いて、生理的又は薬理的に許容可能な製剤助剤と薬物とを混和して形成した薬物含有粒子や、適当な材料の核粒子の表面に薬物を被覆して形成した薬物含有粒子を用いてもよい。
【0014】
上記薬物の粒子は、平均粒径が0.08〜160μmであることが好ましい。0.08μm未満であると、薬物の粒子の表面積が大きくなり、本発明により製造される粒子製剤において、薬物の溶出制御が困難となることがある。一方、160μmを超えると、本発明により製造される粒子製剤を服用したときに口腔内でのザラツキ感や異物感を感じる可能性がある。上記薬物の粒子のより好ましい平均粒径は0.4〜80μmであり、更に好ましい平均粒径は0.8〜32μmである。
なお、上記薬物の粒子の平均粒径は、全粒子体積の50%に相当する粒径を指し、より具体的には体積基準のメジアン径を意味する。
【0015】
本工程では、上記薬物の粒子を、セルロース系腸溶性高分子を含む第一コーティング溶液に溶解及び/又は懸濁させる。
上記薬物の粒子を上記第一コーティング溶液に溶解及び/又は懸濁させる方法としては特に限定されず従来公知の方法で行うことができる。
【0016】
上記セルロース系腸溶性高分子としては、生理的又は薬理的に許容可能な種々の材料が使用できる。なかでも、上記セルロース系腸溶性高分子は、水不溶性であることが好ましく、このようなセルロース系腸溶性高分子としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、ヒドロキシメチルエチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートトリメリテート、メチルセルロースフタレート等が挙げられる。
これらのセルロース系腸溶性高分子は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
なかでも、上記セルロース系腸溶性高分子としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)及び/又はヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)が好適に用いられる。これらのセルロース系腸溶性高分子を用いた場合、有効に溶出制御するための第一被覆層を形成しやすい。
なお、上記「腸溶性高分子」とは、pH5未満の水溶液では溶解せず、pH5〜7の範囲内のあるpH値以上の水溶液では溶解するポリマーを意味する。
【0017】
上記第一コーティング溶液は、無機粒子を含有していてもよい。
上記無機粒子としては、生理的又は薬理的に許容可能な種々の材料が使用できる。このような無機粒子としては、例えば、二酸化ケイ素(含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸)、二酸化チタン、タルク、カオリン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、軽質酸化アルミニウム等が挙げられる。
これらの無機粒子は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0018】
上記無機粒子としては、軽質無水ケイ酸、酸化チタンが好ましく、疎水処理された軽質無水ケイ酸(例えば、Aerosil−R972(日本アエロジル社製))、疎水処理された酸化チタン(例えば、Aeroxide−T805(日本アエロジル社製))がより好ましく、特に、疎水処理された軽質無水ケイ酸(Aerosil−R972(日本アエロジル社製))が好ましい。
ここにいう疎水処理されたとは、化学的に表面がアルキル化されていることを意味する。疎水性化処理の具体例としては疎水処理された軽質無水ケイ酸の場合、軽質無水ケイ酸の表面をメチル基で覆って疎水化する方法が挙げられ、疎水処理された酸化チタンの場合、酸化チタンをオクチルシランで化学的に処理し疎水化する方法が挙げられる。
【0019】
上記無機粒子は、公知の破砕・分散技術(ハンマーミル、サンプルミル、ピンミル、ジェットミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、超音波破砕・分散等)によって製造することができる。
上記無機粒子の平均粒径としては、好ましくは1nm〜1000nm、より好ましくは100〜500nmである。1nm未満であると、作業中の取扱性が悪くなり、また、医薬品添加物として購入できるものはないといった問題があり、一方、1000nmを超えると、本発明の粒子製剤の製造方法に用いると、第一被覆層に均一かつ密に充填することが難しくなり、薬物の溶出制御ができなくなる可能性がある。
なお、上記無機粒子の平均粒径は、上述した薬物の粒子の平均粒径と同じ意味である。
【0020】
上記無機粒子の含有量としては、上記薬物の粒子における薬物の種類、所望する薬物の溶出制御の程度等に応じて適宜決定されるが、2.4重量部の薬物に対して、好ましくは0.5〜2.4重量部、より好ましくは1.0〜2.0重量部である。上記無機粒子の量が0.5重量部未満であると、充分な薬物の溶出制御効果が得られなくなることがあり、2.4重量部を超えると、第一被覆層の脆化の原因となることがある。
【0021】
上記第一コーティング溶液は、必要により、医薬製剤に使用される公知の成分、例えば、水溶性高分子、結合剤、崩壊剤、ワックス類、可塑剤、糖類、酸味料、人工甘味料、香料、滑沢剤、着色剤、安定化剤等を添加剤として含んでいてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0022】
また、上記第一コーティング液は、上述したセルロース系腸溶性高分子、無機粒子及びその他の添加剤(製剤化成分)と溶媒とを含む溶液(有機溶媒溶液)又は分散液(水分散液)等が使用できる。
上記溶媒としては、例えば、水、有機溶媒が挙げられる。
上記有機溶媒としては、例えば、アルコール類(エタノール、プロパノール、イソプロパノール等)、炭化水素類(n−ヘキサン、シクロヘキサン等)、ハロゲン化アルカン類(ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエタン、四塩化炭素等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、エステル類(酢酸エチル等)、エーテル類、ニトリル類(アセトニトリル等)等が挙げられる。これらの有機溶媒は、二種以上混合して用いてもよく、水混和性である場合水との混合溶媒として用いてもよい。
なかでも、上記有機溶媒としては、極性有機溶媒(以下、第一極性溶媒という)であることが好ましく、具体的には、ケトン類(例えば、アセトン)、ケトン類とアルコール類(例えば、エタノール、メタノール)との混合溶媒、ケトン類とハロゲン化アルカン類(例えば、ジクロロメタン)との混合溶媒が好ましい。なかでも、上記第一極性溶媒としては、アセトンが特に好ましい。
【0023】
上記第一コーティング溶液における上記セルロース系腸溶性高分子の濃度は、第一コーティング溶液の粘度、噴霧性等に応じて選択され、例えば、好ましくは0.1〜50重量%、より好ましくは0.2〜40重量%、更に好ましくは0.5〜25重量%程度、最も好ましくは1〜10重量%程度である。上記セルロース系腸溶性高分子の濃度が0.1重量%未満であると、充分な薬物の溶出制御された粒子製剤を製造できないことがあり、一方、50重量%を超えると、上記第一コーティング溶液が高粘度となり、均一な第一被覆層が形成できないことがある。
【0024】
上記噴霧乾燥法では、まず、上述した方法で薬物の粒子を溶解又は懸濁させた第一コーティング溶液を、ノズルを用いてスプレードライヤーの乾燥室内へ噴霧する。そして、極めて短時間に微粒化液滴内の水又は有機溶媒を揮発させることにより上記薬物の粒子に第一被覆層を形成することができる。
上記ノズルとしては、二流体ノズル型、多流体ノズル型、圧力ノズル型、回転ディスク型等が挙げられる。
上記ノズルの型、噴霧条件は、上記のように調製された薬物の粒子を溶解及び/又は懸濁させた第一コーティング溶液が噴霧される条件であれば特に制限されない。かかる条件は、製造する粒子製剤の組成や用いるスプレードライヤーに応じて適宜選択することができる。例えば、二流体ノズル型スプレードライヤーでは、吸気温度は、使用する溶媒により適宜調整されるが、通常 50〜200℃であり、好ましくは約80〜150℃である。また、噴霧液量は、装置のスケールにより適宜調整されるが、例えば、実験室用スケール(チャンバー径15.5cm)レベルでは、通常約1〜30mL/minである。噴霧ガス流量は、製造しようとする粒子製剤の粒径やノズル径にもよるが、通常約50〜900L/hrで調整される。
本工程では、必要であれば減圧下で薬物の粒子中の水分又は溶媒の除去を完全に行うこともできる。
【0025】
本工程を経て得られる第一被覆層が形成された粒子の平均粒径は、0.09〜180μmであることが好ましく、0.45〜90μmであることがより好ましく、0.9〜36μmであることが更に好ましい。0.09μm未満であると、本発明により製造される粒子製剤において、薬物の溶出制御が困難となることがある。一方、180μmを超えると、本発明により製造される粒子製剤を服用したときに口腔内でのザラツキ感や異物感を感じる可能性がある。
【0026】
本発明の粒子製剤の製造方法は、次いで、上記第一被覆層を形成した上記薬物の粒子を、上記セルロース系腸溶性高分子と異なる水不溶性高分子を含む第二コーティング溶液に懸濁させ、噴霧乾燥法により第二被覆層を形成する工程を有する。
本工程を行うことで、上記第一被覆層を形成した薬物の粒子に、噴霧乾燥法により第二の被覆層が形成され、目的とする粒子製剤を製造することができる。
【0027】
本工程では、まず、上記第一被覆層を形成した薬物の粒子を、第二コーティング溶液に懸濁させる。
上記第二コーティング溶液は、上述したセルロース系腸溶性高分子と異なる水不溶性高分子を含むものである。後述するように、第二コーティング溶液に含まれる水不溶性高分子としては、上述したセルロース系腸溶性高分子と同じポリマーも含まれるが、本発明では、上記セルロース系腸溶性高分子と、本工程で用いられる水不溶性高分子とは異なるポリマーが用いられる。なお、上記第二コーティング溶液において、上記セルロース系腸溶性高分子の種類と、水不溶性高分子の種類とが異なればよい。
このような水不溶性高分子を含む第二コーティング溶液を用いることで、本発明により製造される粒子製剤は、薬物粒子に複層コーティングされた構造となり、高度に薬物の溶出制御がされたものとすることができる。
【0028】
上記水不溶性高分子としては、生理的又は薬理的に許容可能な種々の材料が使用できる。このような水不溶性高分子としては、例えば、徐放性高分子、胃溶性高分子及び腸溶性高分子等が挙げられる。
【0029】
上記徐放性高分子としては、例えば、エチルセルロース等の水不溶性セルロース誘導体、アクリル酸エチル−メタクリル酸メチル−メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル共重合体(例えば、オイドラギットRS、オイドラギットRL、いずれもEvonik Industries社製)、アクリル酸エチル−メタクリル酸メチル共重合体(例えば、オイドラギットNE、Evonik Industries社製)等の水不溶性アクリル酸系共重合体等が挙げられる。
また、上記胃溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート等のポリビニル誘導体、メタクリル酸メチル−メタクリル酸ブチル−メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体(例えば、オイドラギットE、Evonik Industries社製)等の(メタ)アクリル酸系共重合体等が挙げられる。
また、上記腸溶性高分子としては、例えば、メタクリル酸コポリマーL(例えば、オイドラギットL、Evonik Industries社製)、メタクリル酸コポリマーLD(例えば、オイドラギットLD、Evonik Industries社製)、メタクリル酸コポリマーS(オイドラギットS、Evonik Industries社製)等の(メタ)アクリル酸系共重合体等が挙げられる。
これらの水不溶性高分子は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましくは、水不溶性セルロース誘導体、胃溶性高分子、腸溶性高分子等が挙げられ、これらは単独で又は二種以上組み合わせて用いられる。
なお、上記(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0030】
なかでも、上記水不溶性高分子としては、エチルセルロース、メタクリル酸コポリマーS、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、メタアクリル酸メチル−メタクリル酸ブチル−メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体が好ましい。特に、エチルセルロースであることが好ましい。上記水不溶性高分子としてエチルセルロースを用いた場合、有効に溶出制御するための第二被覆層を形成しやすい。
【0031】
上記第二コーティング溶液は、上述した第一コーティング溶液と同様の無機粒子を含有していてもよい。
上記無機粒子の含有量としては、上述した薬物の粒子における薬物の種類、所望する溶出制御の程度等に応じて適宜決定されるが、2.4重量部の水不溶性高分子に対して、好ましくは0.5〜2.0重量部、より好ましくは1.0〜2.0重量部である。上記無機粒子の量が0.5重量部未満であると、溶出制御効果が得られないことがあり、2.0重量部を超えると、第二被覆層の脆化の原因となることがある。
【0032】
上記第二コーティング溶液は、必要により、医薬製剤に使用される公知の成分、例えば、水溶性高分子、結合剤、崩壊剤、ワックス類、可塑剤、糖類、酸味料、人工甘味料、香料、滑沢剤、着色剤、安定化剤等を添加剤として含んでいてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0033】
上記第二コーティング溶液は、上述した水不溶性高分子、無機粒子及びその他の添加剤(製剤化成分)等と上述した第一極性溶媒と異なる第二極性溶媒を含有することが好ましい。
第二極性溶媒は、上述した第一極性溶媒と異なる溶媒である。特に、上記第二極性溶媒は、上記第一極性溶媒と溶解特性が異なる。より具体的には、上記第二極性溶媒は、上記第一被覆層に用いる腸溶性セルロース系高分子を実質的に溶解しない点で第一極性溶媒と異なる。なお、実質的に溶解しないとは、100gの第二極性溶媒に溶解する腸溶性セルロース系高分子の重量が1g以下であることを意味する(室温25℃条件)。
このように、第二極性溶媒と上述した第一極性溶媒とが異なることで、本発明により、二層コーティングされた粒子製剤を製造することができ、該粒子製剤を高度に溶出制御されたものとすることができる。上述した水溶性を有する薬物を用いる場合、該水溶性を有する薬物に影響しない点から、上記第二極性溶媒は、極性有機溶媒であることが好ましい。
【0034】
上記第二極性溶媒としては、例えば、アルコール類(例えば、エタノール、メタノール)、ハロゲン化アルカン類(例えば、ジクロロメタン)が挙げられ、なかでも、エタノールが好適に用いられる。
上記第二コーティング溶液における上記水不溶性高分子の濃度は、第二コーティング溶液の粘度、噴霧性等に応じて選択され、例えば、好ましくは0.1〜50重量%、より好ましくは0.2〜40重量%、更に好ましくは0.5〜25重量%程度、最も好ましくは1〜10重量%程度である。上記水不溶性高分子の濃度が0.1重量%未満であると、充分な薬物の溶出制御された粒子製剤を製造することができないことがあり、一方、50重量%を超えると、上記第二コーティング溶液が高粘度となり、均一な第二被覆層が形成できないことがある。
【0035】
上述した第二コーティング溶液を用いた噴霧乾燥法としては、上述した第一コーティング溶液を用いた噴霧乾燥法と同様の方法が挙げられる。
【0036】
以上、説明した工程を有する本発明の粒子製剤の製造方法によると、薬物の粒子が上述した第一被覆層及び第二被覆層で被覆された二層コーティングされた粒子製剤を製造することができ、このような構造の粒子製剤は、高度に薬物の溶出制御がされたものとなる。
また、上記第一被覆層及び第二被覆層を形成する工程において、2種類の噴霧液をそれぞれ別々のノズルから同時に噴霧するような複雑な方法を使用する必要がなく、上記構成の粒子製剤を噴霧乾燥法により簡便に製造することかできる。
【0037】
上記第二被覆層を形成した粒子製剤の平均粒径は、口腔内でのザラツキ感が軽減される範囲であれば特に制限されないが、好ましくは0.1〜200μm、より好ましくは0.5〜100μm、更に好ましくは1.0〜50μm、最も好ましくは1.0〜40μmである。
上記粒子製剤の平均粒径が0.1μm未満であると、表面積が大きくなり溶出制御が困難になることがある。一方、上記粒子製剤の平均粒径が200μmを超えると、口腔内でのザラツキ感や異物感を感じてしまう可能性がある。なお、上記粒子製剤の平均粒径とは、上述した薬物の粒子の平均粒径と同様にして測定された値である。
【0038】
本発明により製造された粒子製剤は、そのまま細粒剤として生体に投与することができるが、種々の製剤に成型して投与することもでき、そのような製剤を製造する際の原料物質としても使用され得る。
上記製剤としては、例えば、注射剤、経口投与製剤(例、散剤、顆粒剤、カプセル剤、錠剤、口腔内崩壊錠、ドライシロップ剤、懸濁剤・乳剤、フィルム剤)、経鼻投与製剤、坐剤(例、直腸坐剤、膣坐剤)等が挙げられる。
これらの製剤中、含有させる薬物の量は、薬物の種類、投与剤型、対象とする疾患等により変化し得るが、通常は、1製剤当たり約0.001mg〜5gであることが好ましく、より好ましくは約0.01mg〜2gである。
【0039】
これら種々の製剤は、一般に用いられる公知の方法により製造することができる。
具体的には、例えば、本発明により製造された粒子製剤は、分散剤(例、ツイーン(Tween)80(アトラスパウダー社製、米国),HCO60(日光ケミカルズ製)、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等)、保存剤(例、メチルパラベン、プロピルパラベン、ベンジールアルコール、クロロブタノール等)、等張化剤(例、塩化ナトリウム、グリセリン、ソルビトール、ブドウ糖等)等と共に、水性懸濁剤に、あるいはオリーブ油、ゴマ油、ラッカセイ油、綿実油、コーン油等の植物油、プロピレングリコール等に分散させて油性懸濁剤に成形し、注射剤とすることができる。
【0040】
また、上記経口投与製剤は、公知の方法に従い、本発明により製造された粒子製剤と慣用の製剤助剤で構成できる。
上記製剤助剤としては、経口投与製剤に慣用の成分、例えば、水溶性高分子又は結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、結晶セルロース・カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、アラビアゴム末、ゼラチン、プルラン等)、賦形剤(結晶セルロース、コーンスターチ等のデンプン類、ショ糖、乳糖、粉糖、グラニュー糖、ブドウ糖、マンニトール等の糖類、軽質無水ケイ酸、タルク、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等)、崩壊剤(例、コーンスターチ等のデンプン類、カルメロースカルシウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等)、脂質(例、炭化水素、ワックス類、高級脂肪酸とその塩、高級アルコール、脂肪酸エステル、硬化ひまし油等の硬化油等)、可塑剤(トリアセチン、クエン酸トリエチル、セバシン酸ジブチル等)、矯味剤[例えば、甘味剤(ショ糖、乳糖、ブドウ糖、マルトース等の糖、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール等の糖アルコール、サッカリン、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビア等の人工甘味料);クエン酸、酒石酸、リンゴ酸等の酸味料;レモン、レモンライム、オレンジ、メントール等の香料等]、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク等)、流動化剤(例えば、軽質無水ケイ酸等)、着色剤(例えば、食用色素、カラメル、ベンガラ、酸化チタン等)、界面活性剤(例えば、アルキル硫酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンヒマシ油誘導体などの非イオン系界面活性剤など)、湿潤剤(ポリエチレングリコール(マクロゴール)等)、充填剤、増量剤、吸着剤、防腐剤等の保存剤又は安定化剤、帯電防止剤、崩壊延長剤などを含んでいてもよい。
また、上記経口投与製剤は、必要により、味のマスキング、溶性、腸溶性あるいは持続性の目的のため公知の方法でコーティングしてもよい。
【0041】
また、例えば、経鼻投与製剤とするには、公知の方法に従い、本発明で得られた粒子製剤を固状、半固状又は液状の経鼻投与剤とすることができる。例えば、上記固状のものとしては、該粒子製剤をそのまま、あるいは賦形剤(例、グルコース、マンニトール、デンプン、微結晶セルロース等)、増粘剤(例、天然ガム類、セルロース誘導体、アクリル酸重合体等)等を添加、混合して粉状の組成物とする。
また、上記液状のものとしては、注射剤の場合とほとんど同様で、油性あるいは水性懸濁剤とする。半固状の場合は、軟膏状のものがよい。また、これらはいずれも、pH調節剤(例、炭酸、リン酸、クエン酸、塩酸、水酸化ナトリウム等)、防腐剤(例、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、塩化ベンザルコニウム等)等を加えてもよい。
【0042】
また、例えば、坐剤とするには、公知の方法に従い、本発明で得られた粒子製剤を油性基剤又は水性基剤を加えて、油性又は水性の固状、半固状あるいは液状の座剤とすることができる。
上記油性基剤としては、粒子製剤を溶解しないものであればよく、例えば、高級脂肪酸のグリセリド(例、カカオ脂、ウイテプゾル類等)、中級脂肪酸(例、ミグリオール類等)、植物油(例、ゴマ油、大豆油、綿実油等)等が挙げられる。また、上記水性基剤としては、例えば、ポリエチレングリコール類、プロピレングリコール等が挙げられる。また、上記坐剤とする際には、水性ゲル基剤として、例えば、天然ガム類、セルロース誘導体、ビニール重合体、アクリル酸重合体等を用いてもよい。
【0043】
また、上記経口投与剤は、その剤形に応じて慣用の方法、例えば、上記粒子製剤を必要により造粒又は練合した後、製剤化することにより得ることができる。
上記粒子製剤の造粒には、慣用の造粒法、例えば、転動型造粒法、流動層型造粒法等が採用でき、造粒や練合は、通常、賦形剤や結合剤等の担体を用いて行われる。例えば、錠剤の場合、上記粒子製剤と、賦形剤や結合剤等の担体とを混合又は練合し、必要により造粒し、滑沢剤等の添加剤を加えて打錠することにより得ることができる。また、例えば、カプセル剤は、上記粒子製剤又はその造粒物をカプセルに封入することにより得ることができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明の粒子製剤の製造方法によれば、噴霧乾燥法によって簡便かつ効率的に高度に溶出制御された、二層コーティングされた粒子製剤を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0046】
以下の実施例ならびに比較例では、次の薬物と製剤化成分を用いた。
(薬物)
グアヤコールスルホン酸カリウム
(製剤化成分)
HPMCP;ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(信越化学工業(株)、HP55)
エチルセルロース(Dow Chemical社製、Ethocel 10)
オイドラギットS100(Evonik Industries社製、Eudragit−S100)
疎水処理された軽質無水ケイ酸(日本アエロジル社製、Aerosil−R972)
モノイソステアリン酸グリセリル(日光ケミカルズ社製、NIKKOL−MGIS)
【0047】
また、以下の実施例及び比較例では、次の方法により、粒子製剤を製造、評価した。
(薬物の粒子の製造)
グアヤコールスルホン酸カリウム100gを水900gに加えて溶解させた。この溶液を、スプレードライヤー(Mini Spray Dryer B−290、BUCHI Labortechnik AG社製)にて、噴霧液量2mL/min、吸気温度120℃、噴霧空気流量190L/hrにて噴霧乾燥させ、球状のグアヤコールスルホン酸カリウム粒子を得た。
【0048】
(平均粒径の測定)
<被覆粒子製剤>
自動粒子画像分析装置(Malvern Instruments社製、Morphologi(登録商標)−G3)を用いて、粒子数2万個以上から平均粒径を測定した。
<無機粒子の平均粒径>
無機粒子の粒径は、粒子製剤の製造に先だって、事前に測定した。
すなわち、無機粒子のエタノール懸濁液を調製し、超音波処理後、粒径測定システムELSZ−1(大塚電子社製、動的及び電気泳動光散乱法)で平均粒径を測定した。実施例で用いた無機粒子の平均粒径を以下に示した。
疎水性化処理された無機粒子:Aerosil−R972(日本アエロジル社製、平均粒径218.0nm)
【0049】
(溶出試験)
日本薬局方記載のフロースルー法に準じて、溶出試験第1液(pH1.2)、溶出試験第2液(pH6.8)の両方で試験を実施し、薬物の溶出率を測定した。
ただし、セルには、Swinnexフィルターホルダー25mm(日本ミリポア社製)を用いた。粒子製剤が流出しないように、フィルターホルダーにサポートスクリーン(25mmステンレス、日本ミリポア社製)、デュラポアメンブレンフィルター(PVDF、Hydrophilic、0.45μm、25mm、日本ミリポア社製)、シリコンガスケット25mm(スウィネクス(Swinnex)フィルターホルダー用、日本ミリポア社製)を順に備え付けた。送液ポンプには、Masterflex L/S(型式7524−50、Cole Parmer Instrument COMPANY社製)を用い、2.5mL/minで試験液を送液した。それ以外は、日本薬局方のフロースルーセル法に従った。薬物溶出量は、HPLCにて定量した。
【0050】
(比較例1)
表1に示した組成で、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HP55、信越化学工業社製)、疎水性軽質無水ケイ酸(Aerosil−R972、日本アエロジル社製)、モノイソステアリン酸グリセリル(NIKKOL−MGIS、日光ケミカルズ社製)及びアセトンを含有する第一コーティング溶液に、薬物の粒子を懸濁させて懸濁液を調製した。調製した懸濁液を、スプレードライヤー(Mini Spray Dryer B−290、BUCHI Labortechnik AG社製)にて噴霧液量(5mL/min)、吸気温度(80℃)、噴霧空気流量(470L/hr)の条件で噴霧乾燥することにより、平均粒径10.4μmの薬物の粒子に第一被覆層が形成された単層被覆薬物粒子を得た。この単層被覆薬物粒子を粒子製剤とし、pH1.2(溶出試験第1液)、pH6.8(溶出試験第2液)で溶出試験を行った。その結果、それぞれの60分溶出率は50.0%、79.9%であった。単層被覆薬物粒子の回収率は約80%であった。なお、回収率とは(実際の回収量/理論回収量)×100で算出される。
【0051】
【表1】

【0052】
(実施例1)
表2に示した組成で、オイドラギットS100(Evonik Industries社製)、エチルセルロース(Dow Chemical社製、Ethocel 10)、疎水性軽質無水ケイ酸(Aerosil−R972、日本アエロジル社製)、モノイソステアリンサン酸グリセリル(日光ケミカルズ社製、NIKKOL−MGIS)及びエタノールを含有する第二コーティング溶液に、単層被覆薬物粒子(比較例1で製造した被覆薬物粒子)を懸濁させて懸濁液を調製した。調製した懸濁液を、スプレードライヤー(Mini Spray Dryer B−290、BUCHI Labortechnik AG社製)にて噴霧液量(5mL/min)、吸気温度(120℃)、噴霧空気流量(470L/hr)の条件で噴霧乾燥することにより、平均粒径15.5μmの二層コーティングされた粒子製剤を得た。この粒子製剤について、pH1.2(溶出試験第1液)、pH6.8(溶出試験第2液)で溶出試験を行った。その結果、それぞれの60分溶出率は19.4%、30.8%であった。また、得られた粒子製剤の回収率は約80%であった。
二層コーティングすることにより、単層コーティング(比較例1)の場合と比較して、平均粒径の増加と溶出率は低下(抑制)が認められ、有効に溶出が抑制された粒子製剤を得ることができた。
【0053】
【表2】

【0054】
(比較例2)
表3に示したように、第二層コーティング溶液の溶媒をアセトンに換えた以外は、実施例1と同じ条件で二層コーティングされた粒子製剤の調製を試みたが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートからなる第一被覆層が第二コーティング溶液の溶媒として用いたアセトンに溶解したため、噴霧溶液が高粘度化し、二層コーティングのための噴霧を実施することができなかった。
【0055】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によれば、噴霧乾燥法を利用して、薬物の粒子を、セルロース系腸溶性高分子を含む第一被覆層と、上記セルロース系腸溶性高分子と異なる水不溶性高分子を含む第二被覆層とで被覆した粒子製剤を製造することができる。これにより、粒径が小さい場合でも薬物の粒子を有効にコーティングでき、薬物の溶出を有効に抑制できる。そのため、製造した粒子製剤は、そのまま細粒剤として生体に投与できるだけでなく、種々の製剤に成型して投与することもできる。
また、噴霧乾燥時に、特殊な噴霧プロセスや設備(例えば、2種類の噴霧液をそれぞれ別々のノズルから同時に噴霧するような複雑な方法)を必要としないため、設備導入費用、清掃及びメンテナンス費用などを軽減できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物の粒子を、セルロース系腸溶性高分子を含む第一コーティング溶液に溶解及び/又は懸濁させ、噴霧乾燥法により前記薬物の粒子に第一被覆層を形成する工程と、
前記第一被覆層を形成した前記薬物の粒子を、前記セルロース系腸溶性高分子とは異なる水不溶性高分子を含む第二コーティング溶液に懸濁させ、噴霧乾燥法により第二被覆層を形成する工程とを有する
ことを特徴とする粒子製剤の製造方法。
【請求項2】
第一コーティング溶液は、第一極性溶媒を含有する請求項1記載の粒子製剤の製造方法。
【請求項3】
第一極性溶媒は、アセトンである請求項2記載の粒子製剤の製造方法。
【請求項4】
第二コーティング溶液は、第一極性溶媒と異なる第二極性溶媒を含有する請求項2又は3記載の粒子製剤の製造方法。
【請求項5】
第二の極性溶媒は、エタノールである請求項4記載の粒子製剤の製造方法。
【請求項6】
セルロース系腸溶性高分子は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)及び/又はヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)を含む請求項1、2、3、4又は5記載の粒子製剤の製造方法。
【請求項7】
水不溶性高分子は、エチルセルロース、メタクリル酸−アクリル酸メチル共重合体、メタアクリル酸メチル−メタクリル酸ブチル−メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アクリル酸エチル−メタクリル酸メチル−メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル共重合体、及び、アクリル酸エチル−メタクリル酸メチル共重合体からなる群より選択される少なくとも一種を含む請求項1、2、3、4、5又は6記載の粒子製剤の製造方法。
【請求項8】
第二被覆層を形成した粒子製剤の平均粒径が0.1〜200μmである請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の粒子製剤の製造方法。

【公開番号】特開2013−6798(P2013−6798A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141058(P2011−141058)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】