粘性流体移送ポンプ
【課題】粘性流体移送ポンプにおいて、吸入弁及び排出弁内に異物が付着することによるメンテナンスを不要とすることを、目的とする。
【解決手段】ポンプ室18の容量を変化させるプランジャ13の往復運動により、グリースを吸入弁16からポンプ室18に吸入し且つ排出弁17から排出する、粘性流体移送ポンプにおいて、吸入弁16及び排出弁17はそれぞれ、ポンプ室18を外部に開放する開口(吸入口A16、排出口A17)と、該開口を開閉するように移動する弁体(プランジャ13、弁体23)と、該開口が閉鎖された状態を保ちながら弁体が移動できるように弁体の移動を案内するガイド面(18a、18b)とを備えており、プランジャ13は、吸入弁16の弁体を兼用している。
【解決手段】ポンプ室18の容量を変化させるプランジャ13の往復運動により、グリースを吸入弁16からポンプ室18に吸入し且つ排出弁17から排出する、粘性流体移送ポンプにおいて、吸入弁16及び排出弁17はそれぞれ、ポンプ室18を外部に開放する開口(吸入口A16、排出口A17)と、該開口を開閉するように移動する弁体(プランジャ13、弁体23)と、該開口が閉鎖された状態を保ちながら弁体が移動できるように弁体の移動を案内するガイド面(18a、18b)とを備えており、プランジャ13は、吸入弁16の弁体を兼用している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリース等の粘性流体を移送するための粘性流体移送ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、市販のドラム缶、ペール缶あるいは角缶等の容器に取り付けて、これらの容器内に収納されたグリース等の潤滑剤を直接吸引し、各種産業機械等の潤滑剤ポンプのタンク部や別容器に移送するポンプが知られている。
【0003】
図6は、従来の潤滑剤移送ポンプ400及び移送対象のグリース300が満たされた容器200を示す縦断面図である。潤滑剤移送ポンプ400は、蓋部401、駆動シリンダ402、ポンプシリンダ403、ピストン404、ピストンロッド405、吸入弁406、排出弁407、及び吐出口408を備えている。蓋部401は、容器200の上面(一底面)に取り付けられる。駆動シリンダ402及びポンプシリンダ403は蓋部401に固定されている。ピストン404はポンプシリンダ403内に配置されている。ピストン404の下面とポンプシリンダ403の内面との間に、ポンプ室409が形成されている。ピストンロッド405は、駆動シリンダ402内の駆動ピストン410とピストン404とを連結している。ピストンロッド405内に排出経路405aが形成されており、図示せぬ配管が排出経路405aと吐出口408とを連結している。吸入弁406は、吸入口A406、鋼球411、及びシート面403aを備えている。シート面403aは、ポンプシリンダ403内部の底面に形成されている。排出弁407は、排出口A407、鋼球412、及びシート面404aを備えている。シート面404aは、ピストン404の上面に形成されている。
【0004】
吸入弁406及び排出弁407は逆止弁である。吸入弁406は、容器200の内部からポンプ室409への流れのみを許容する。排出弁407は、ポンプ室409から排出経路405aへの流れのみを許容する。
【0005】
潤滑剤移送ポンプ400は次のように作動する。駆動シリンダ402の駆動によりピストン404が上昇するとき、ポンプ室409の容積が増大する。このとき、ポンプ室409にグリース300が吸入されるように、吸入弁406の鋼球411及び排出弁407の鋼球412に圧力が加わる。吸入弁406の鋼球411は、逆止弁における許容方向の圧力を受け、排出弁407の鋼球412は逆止弁における禁止方向の圧力を受ける。このため、ピストン404が上昇するとき、吸入弁406のみが開放される。具体的には、鋼球411がシート面403aから離れる。一方、駆動シリンダ402の駆動によりピストン404が下降するとき、ポンプ室409の容積が減少する。このとき、ポンプ室409からグリース300が排出されるように、吸入弁406の鋼球411及び排出弁407の鋼球412に圧力が加わる。つまり、吸入弁406の鋼球411は、逆止弁における禁止方向の圧力を受け、排出弁407の鋼球412は逆止弁における許容方向の圧力を受ける。このため、ピストン404が下降するとき、排出弁407のみが開放される。具体的には、鋼球412がシート面404aから離れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−97422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
グリースの使用環境にもよるが、グリースの移送先の装置等で発生した塵挨などが、吐出口408から潤滑剤移送ポンプ400内のグリース300に混入することが避けられない。このような塵挨は、グリース300に対する異物である。
【0008】
上述の潤滑剤移送ポンプ400を移送手段として機能させるためには、吸入弁406及び排出弁407が共に逆止弁として機能する必要がある。ところが、吸入弁406又は排出弁407においてシート面403a、404aに異物が付着すると、鋼球411、412がシート面403a、404aに密着できない。つまり、異物の付着によって弁の閉鎖が妨げられる。吸入弁406が完全に閉じない場合、排出時に一部のグリース300が容器200の内部に逆流するので、排出不良が発生する。排出弁407が完全に閉じない場合、吸入時に一部のグリース300が排出弁407からポンプ室409内に逆流するので、吸入不良が発生する。どちらか一方の弁の閉鎖が妨げられていても、潤滑剤移送ポンプ400が機能しなくなる。
【0009】
シート面403a、404aに付着した異物を除去するには、潤滑剤移送ポンプ400の分解掃除等のメンテナンスが必要である。しかし、潤滑剤移送ポンプ400のメンテナンスは、作業者に重労働を強いると共に、復旧に相当の時間を必要とする。このメンテナンスは、具体的には、潤滑剤移送ポンプ400を容器200からクレーン等により吊上げ取外し、グリース300が多く付着したポンプシリンダ403及びピストン404を分解し、シート面403a、404aを取り出し洗浄する手間を必要とする。
【0010】
そこで、本発明は、粘性流体移送ポンプにおいて、吸入弁及び排出弁内に異物が付着することによるメンテナンスを不要とすることを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ポンプ室の容量を変化させるプランジャの往復運動により、粘性流体を吸入弁からポンプ室に吸入し且つ排出弁から排出する、粘性流体移送ポンプにおいて、吸入弁及び排出弁はそれぞれ、ポンプ室を外部に開放する開口と、該開口を開閉するように移動する弁体と、該開口が閉鎖された状態を保ちながら弁体が移動できるように弁体の移動を案内するガイド面とを備えている、ことを特徴とする粘性流体移送ポンプを提供する。
【0012】
(a)好ましくは、プランジャは、吸入弁の弁体を兼用している。
【0013】
(b)好ましくは、粘性流体移送ポンプは、粘性流体を撹拌する撹拌羽根を備えている。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、開口の周辺に異物が付着することによって弁体の移動範囲が部分的に制限されても、開口を閉鎖することができる。このため、本発明は、異物の付着によって開口に閉鎖不良が発生することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】粘性流体移送ポンプ及び移送対象のグリースが満たされた容器を示す縦断面図である。
【図2】本体及び撹拌羽根を示す縦断面図である。
【図3】本体及び撹拌羽根を示す平断面図である。
【図4】シリンダ部を示す縦断面図である。
【図5】第2実施形態におけるプランジャ及び吸入弁の構成を示す縦断面図である。
【図6】従来の潤滑剤移送ポンプ及び移送対象のグリースが満たされた容器を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態の構成)
図1は、粘性流体移送ポンプ100及び移送対象のグリース300が満たされた容器200を示す縦断面図である。容器200はドラム缶であり、容器200の内部にはグリース300が充填されている。第1実施形態に係る粘性流体移送ポンプ100は、グリース300を容器200の内部から外部へと移送する。
【0017】
図1において、粘性流体移送ポンプ100は、蓋部1、駆動モータ2、支持筒3、本体4、駆動軸5、撹拌羽根6、吐出弁7、及び排出配管8を備えている。蓋部1は、容器200の上面(一底面)に取り付けられる。駆動モータ2は蓋部1に固定されている。支持筒3は蓋部1から下方に延びている。本体4は支持筒3の下端部に固定されている。駆動軸5は、支持筒3の内部に配置されており、駆動モータ2で生成される回転動力を本体4に伝達する。撹拌羽根6は本体4の下方に配置されており、駆動軸5によって駆動される。吐出弁7は蓋部1に固定されており、本体4から移送されるグリース300を容器200の外部に排出することを許容又は禁止する。排出配管8は、本体4から排出されるグリース300を吐出弁7に案内する。
【0018】
図2、図3、及び図4を参照して、本体4を説明する。図2は、本体4及び撹拌羽根6を示す縦断面図である。図3は、本体4及び撹拌羽根6を示す平断面図である。図4は、シリンダ部10を示す縦断面図である。
【0019】
図2、図3において、本体4は、2つのシリンダ部10及びプランジャ駆動部11を備えている。各シリンダ部10は、シリンダケーシング12、吸入弁16、及び排出弁17を備えている。プランジャ駆動部11は、プランジャ13、プランジャケーシング14、軸受15、偏心カム21、及びヨーク22を備えている。
【0020】
シリンダケーシング12内には、ポンプ室18、吸入経路19、及び排出経路20が形成されている。吸入経路19は、容器200の内部に連通している。排出経路20は、排出配管8に連通している。吸入弁16は、ポンプ室18と吸入経路19との間に配置されている。排出弁17は、ポンプ室18と排出経路20との間に配置されている。吸入口A19及び排出口A20は、共に、ポンプ室18を外部に開放する開口である。
【0021】
プランジャ13の先端部はシリンダケーシング12のポンプ室18内に配置されており、プランジャ13の後端部はプランジャケーシング14内に配置されている。プランジャ13は、円柱部13a及びフランジ部13bを有している。円柱部13a及びフランジ部13bは共に円柱形状を有している。フランジ部13bの外径は、円柱部13aの外径よりも大きい。
【0022】
プランジャ駆動部11は、駆動モータ2によって生成される動力をプランジャ13に伝達する。プランジャケーシング14内に駆動軸5が挿入されている。駆動軸5は、軸受15により、プランジャケーシング14に対して回転自在に支持されている。偏心カム21は、駆動軸5に固定されている。偏心カム21は円盤形状を有しており、偏心カム21の軸心は、駆動軸5の軸心に対して偏心している。ヨーク22は、偏心カム21の外側に配置されている。ヨーク22はU字形状を有しており、両端部にプランジャ13の円柱部13aを挿入するための挿通孔22aが形成されている。偏心カム21とヨーク22との間に、プランジャ13のフランジ部13bが配置されている。偏心カム21及びヨーク22は確動カムを構成している。このため、偏心カム21が回転するとき、2つのプランジャ13は偏心カム21に追従しながら、ポンプ室18内において往復運動を行う。ポンプ室18は、プランジャ13が往復運動できるように、駆動軸5の径方向に形成されている。
【0023】
図4を参照して、シリンダ部10をより詳しく説明する。ポンプ室18の内面は、プランジャガイド面18a、排出ガイド面18b、及び連結面18cを含んでいる。プランジャガイド面18aは、開口である吸入口A16を除いて、円柱の側面形状を有している。吸入口A19は、ポンプ室18と吸入経路19との境界面を形成する。同様に、排出ガイド面18bは、開口である排出口A17を除いて、円柱の側面形状を有している。排出口A20は、ポンプ室18と排出経路20との境界面を形成する。プランジャガイド面18aの内径は、排出ガイド面18bの内径よりも大きい。連結面18cは、プランジャガイド面18a及び排出ガイド面18bを連結している。連結面18cは、円錐台の側面形状を有している。
【0024】
プランジャガイド面18aは、往復運動するプランジャ13を案内するための面である。プランジャ13の円柱部13aとプランジャガイド面18aとの間がシールされるように、プランジャ13及びプランジャガイド面18aの寸法は設計されている。
【0025】
吸入弁16は、吸入口A16、弁体、及び弁体の移動を案内するガイド面を備えている。第1実施形態では、プランジャ13が吸入弁16の弁体を兼用し、プランジャガイド面18aが弁体のガイド面を兼用している。
【0026】
プランジャ13の移動方向D13は、吸入口A16の開口方向D16に対して交差している。このため、プランジャ13は吸入口A16を横断するように移動することによって、吸入口A16を開閉する。プランジャ13の移動方向D13において、プランジャガイド面18aは、吸入口A16の両側に形成されている。つまり、プランジャガイド面18aは、吸入口A16よりもポンプ室18の減量側に形成される減量側部位18a1と、吸入口A16よりもポンプ室18の増量側に形成される増量側部位18a2と、を含んでいる。プランジャガイド面18aの減量側部位18a1は、吸入口A16が閉鎖された状態を保ちながらプランジャ13が移動できるように、プランジャ13の移動を案内する。
【0027】
排出弁17は、排出口A17、弁体23、弁体23の移動を案内する排出ガイド面18b、バネ24、及びカバーボルト25を備えている。
【0028】
弁体23は、円柱部23a、フランジ部23b、及び支持部23cを有している。円柱部23a、フランジ部23b、及び支持部23cは円柱形状を有している。フランジ部13bの外径は、円柱部13a及び支持部23cの外径よりも大きい。
【0029】
弁体23の移動方向D23は、排出口A17の開口方向D17に対して交差している。このため、弁体23は排出口A17を横断するように移動することによって、排出口A17を開閉する。弁体23の移動方向D23において、排出ガイド面18bは、排出口A17の両側に配置されている。つまり、排出ガイド面18bは、排出口A17よりもポンプ室18の減量側に形成される減量側部位18b1と、排出口A17よりもポンプ室18の増量側に形成される増量側部位18b2と、を含んでいる。排出ガイド面18bの減量側部位18b1は、排出口A17が閉鎖された状態を保ちながら弁体23が移動できるように、弁体23の移動を案内する。
【0030】
カバーボルト25は、シリンダケーシング12の端部に形成されたネジ穴に取り付けられている。カバーボルト25の内部は軸方向に貫通されており、カバーボルト25の内部に凹部25a及び貫通孔25bが形成されている。凹部25aの底面とフランジ部23bとの間には、バネ24が配置されている。バネ24は、弁体23から脱落しないように、支持部23cの外側に配置されている。バネ24は、弁体23が排出口A17を閉じる方向に、弁体23を付勢する。
【0031】
図2、図3を参照して、撹拌羽根6を説明する。図2に示されるように、撹拌羽根6は、駆動軸5の下端面に固定されている。図3に示されるように、撹拌羽根6は、本体6a、2つの端部フィン6b、及び2つの軸部フィン6cを備えている。本体6aは、水平方向に広がる長手の板状部材である。本体6aは、プランジャケーシング14及び2つのシリンダケーシング12の全体よりも外側に広がっている。2つの端部フィン6bは、本体6aの両端に沿って形成され上方向に延びる板状部分である。2つの軸部フィン6cは、本体6aの長手方向に沿って形成され下方向に延びる板状部分である。
【0032】
(第1実施形態の作動)
図2を参照して、粘性流体移送ポンプ100の作動を説明する。駆動モータ2が起動されると、2つのプランジャ13の往復運動が開始される。2つのシリンダ部10のそれぞれにおいて、プランジャ13の運動により、前進行程及び後進行程が繰り返し行われる。前進行程において、プランジャ13は、ポンプ室18の容量を減少させるように、ポンプ室18内を前進する。後進行程において、プランジャ13は、ポンプ室18の容量を増大させるように、ポンプ室18内を後進する。
【0033】
前進行程において、プランジャ13は、運動範囲Rの後端位置P2から前端位置P1まで移動する。左側のシリンダ部10は、運動範囲Rの後端位置P2にあるプランジャ13を示している。後進行程において、プランジャ13は、運動範囲Rの前端位置P1から後端位置P2まで移動する。右側のシリンダ部10は、運動範囲Rの前端位置P1にあるプランジャ13を示している。
【0034】
排出弁17は、逆止弁である。排出弁17は、ポンプ室18から排出経路20への流れのみを許容し、排出経路20からポンプ室18への流れを禁止する。吸入弁16は、グリース300の流れに関係なく、プランジャ13の位置によってのみ開閉される。
【0035】
後進行程では、プランジャ13の後進に伴って、排出口A17の閉鎖、吸入口A16の開放が順に行われる。以下、順に説明する。後進行程の開始時に、排出口A17は開放されており、吸入口A16は閉鎖されている。プランジャ13が後進するとポンプ室18の容量が増大する。このとき、ポンプ室18にグリース300が吸入されるように、吸入弁16のプランジャ13及び排出弁17の弁体23に圧力が加わる。つまり、プランジャ13は、逆止弁における許容方向の圧力を受け、弁体23は逆止弁における禁止方向の圧力を受ける。このため、プランジャ13の後進が開始されると、弁体23によって排出口A17が閉鎖される。一方、吸入口A16はプランジャ13によって開閉されるため、プランジャ13が吸入口A16よりも後進するまで、吸入口A16は開放されている。このため、更にプランジャ13が後進すると、吸入口A16が開放される。吸入口A16が開放された状態でプランジャ13が後進すると、容器200の内部からポンプ室18内にグリース300が吸入される。この結果、ポンプ室18内にグリース300が蓄えられる。
【0036】
前進行程では、プランジャ13の前進に伴って、吸入口A16の閉鎖、排出口A17の開放が順に行われる。前進行程の開始時に、吸入口A16は開放されており、排出口A17は閉鎖されている。プランジャ13が前進すると、ポンプ室18の容量が減少する。このとき、ポンプ室18からグリース300が排出されるように、吸入弁16のプランジャ13及び排出弁17の弁体23に圧力が加わる。つまり、プランジャ13は、逆止弁における禁止方向の圧力を受け、弁体23は逆止弁における許容方向の圧力を受ける。ただし、吸入口A16はプランジャ13によって開閉されるため、プランジャ13が吸入口A16を閉鎖するまで、吸入口A16は開放されている。吸入口A16が閉鎖されるまで、ポンプ室18内のグリース300が吸入口A16から排出される。吸入口A16が閉鎖された状態でプランジャ13が前進すると、排出口A17が開放される。排出口A17が開放された状態でプランジャ13が前進すると、ポンプ室18から排出経路20にグリース300が排出される。この結果、ポンプ室18内のグリース300が、粘性流体移送ポンプ100の外部に移送される。
【0037】
図1、図6を参照して、撹拌羽根6の作動を説明する。図1は、撹拌羽根6ありでグリース300の移送が行われた場合におけるグリース300の液面を示している。図6は、撹拌羽根6なしでグリース300の移送が行われた場合におけるグリース300の液面を示している。
【0038】
図6には、従来の潤滑剤移送ポンプ400が示されている。潤滑剤移送ポンプ400のポンプシリンダ403の下面には、吸入口A406が開口している。潤滑剤移送ポンプ400の駆動により、容器200内のグリース300は吸入口A406から、潤滑剤移送ポンプ400に吸入される。グリース300は高い粘性を有しているので、グリース300の液面300Sにおいて、吸入口A406の周辺に窪みが形成される。つまり、液面300Sの形状は、平らではなく、凹凸になる。
【0039】
一方、図1には、撹拌羽根6を有する粘性流体移送ポンプ100が示されている。駆動モータ2が起動されると、撹拌羽根6も回転を開始する。駆動モータ2の作動中、撹拌羽根6も繰り返し回転する。撹拌羽根6の回転は、液面300Sの形状が凹凸になることを妨げて、液面300Sの形状を平らにする。
【0040】
(第2実施形態の構成)
第2実施形態は、プランジャ13、吸入弁16、ポンプ室18の構成において、第1実施形態と相違している。第1実施形態では、プランジャ13が吸入弁16の弁体を兼用している。これに対して、第2実施形態では、プランジャ13とは別に吸入弁16の弁体26が設けられている。また、吸入弁16の構成に応じて、ポンプ室18の形状が変更されている。他の構成は、第2実施形態及び第1実施形態において、同一である。
【0041】
図5は、第2実施形態におけるプランジャ13及び吸入弁16の構成を示す縦断面図である。吸入弁16は、吸入口A16、弁体26、弁体26の移動を案内する吸入ガイド面18d、バネ27、及び支持部28を備えている。
【0042】
弁体26は、弁体23と同様に、円柱部26a、フランジ部26b、及び支持部26cを有している。
【0043】
吸入ガイド面18dは、ポンプ室18の内面に含まれている。吸入ガイド面18dは、吸入口A16の開口方向D16に沿って、形成されている。
【0044】
支持部28は、シリンダケーシング12の一部であり、吸入口A16に対向する位置に配置されている。支持部28は、吸入口A16に対向する凹部28aを有している。凹部28aの底面とフランジ部26bとの間には、バネ27が配置されている。バネ27は、弁体26が吸入口A16を閉じる方向に、弁体26を付勢している。
【0045】
弁体26の移動方向D26は、吸入口A16の開口方向D16と平行である。吸入ガイド面18dは、吸入口A16よりもポンプ室18の増量側に形成されている。このため、吸入ガイド面18dは、吸入口A16が閉鎖された状態を保ちながら弁体26が移動できるように、弁体26の移動を案内する。
【0046】
(第2実施形態の作動)
第2実施形態の後進行程及び前進行程における作動を説明する。2つのシリンダ部10のそれぞれにおいて、プランジャ13の運動により、前進行程及び後進行程が繰り返し行われる。第2実施形態と第1実施形態との間で、後進行程及び前進行程における作動が部分的に異なっている。以下、相違点としての後進行程及び前進行程を説明する。
【0047】
後進行程では、プランジャ13の後進に伴って、排出口A17の閉鎖、吸入口A16の開放が順に行われる。以下、順に説明する。後進行程の開始時に、排出口A17は開放されており、吸入口A16は閉鎖されている。プランジャ13が後進するとポンプ室18の容量が増大する。このとき、ポンプ室18にグリース300が吸入されるように、吸入弁16の弁体26及び排出弁17の弁体23に圧力が加わる。つまり、吸入弁16の弁体26は、逆止弁における許容方向の圧力を受け、排出弁17の弁体23は逆止弁における禁止方向の圧力を受ける。このため、プランジャ13の後進が開始されると、吸入口A16が開放されると共に、排出口A17が閉鎖される。吸入口A16が開放された状態でプランジャ13が後進すると、容器200の内部からポンプ室18内にグリース300が吸入される。この結果、ポンプ室18内にグリース300が蓄えられる。
【0048】
前進行程では、プランジャ13の前進に伴って、吸入口A16の閉鎖、排出口A17の開放が順に行われる。前進行程の開始時に、吸入口A16は開放されており、排出口A17は閉鎖されている。プランジャ13が前進すると、ポンプ室18の容量が減少する。このとき、ポンプ室18からグリース300が排出されるように、吸入弁16の弁体26及び排出弁17の弁体23に圧力が加わる。つまり、吸入弁16の弁体26は、逆止弁における禁止方向の圧力を受け、排出弁17の弁体23は逆止弁における許容方向の圧力を受ける。このため、プランジャ13の前進が開始されると、吸入口A16が閉鎖されると共に、排出口A17が開放される。排出口A17が開放された状態でプランジャ13が前進すると、ポンプ室18から排出経路20にグリース300が排出される。この結果、ポンプ室18内のグリース300が、粘性流体移送ポンプ100の外部に移送される。
【0049】
(本実施形態の作用、効果)
本実施形態(第1、第2実施形態)は、次の構成により、次の作用、効果を有する。
【0050】
第1実施形態において、吸入弁16及び排出弁17はそれぞれ、開口(吸入口A16、排出口A17)と、弁体(プランジャ13、弁体23)と、開口が閉鎖された状態を保ちながら弁体が移動できるように弁体の移動を案内するガイド面(プランジャガイド面18aの減量側部位18a1、排出ガイド面18bの減量側部位18b1)とを備えている。第2実施形態において、吸入弁16及び排出弁17はそれぞれ、開口(吸入口A16、排出口A17)と、弁体(弁体26、弁体23)と、開口が閉鎖された状態を保ちながら弁体が移動できるように弁体の移動を案内するガイド面(吸入ガイド面18d、排出ガイド面18bの減量側部位18b1)とを備えている。
【0051】
上記構成により、弁体がガイド面に沿って移動可能な範囲内において、開口が閉鎖される。このため、本実施形態は、開口の周辺に異物が付着することによって弁体の移動範囲が部分的に制限されても、開口を閉鎖することができる。したがって、本実施形態は、異物の付着によって開口に閉鎖不良が発生することを防止できる。
【0052】
第1実施形態では、プランジャ13は吸入弁の弁体を兼用している。
【0053】
このため、本実施形態は、粘性流体移送ポンプ100の構成を簡素化できる。
【0054】
本実施形態は、粘性流体(グリース300)を撹拌する撹拌羽根6を備えている。
【0055】
上記構成により、粘性流体の移送元となる容器200において、液面300Sの形状が凹凸になることが妨げられ、液面300Sの形状が平らになる。このため、本実施形態は、作業者による粘性流体の液面を崩す作業を必要とせず、粘性流体の液量が減少してもエア混入による吸い込み不良を防止できる。
【符号の説明】
【0056】
6 撹拌羽根
13 プランジャ(吸入弁の弁体)
16 吸入弁
17 排出弁
18 ポンプ室
18a ガイド面
18b ガイド面
23 弁体
26 弁体
100 粘性流体移送ポンプ
200 容器
300 グリース(粘性流体)
A16 吸入口(開口)
A17 排出口(開口)
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリース等の粘性流体を移送するための粘性流体移送ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、市販のドラム缶、ペール缶あるいは角缶等の容器に取り付けて、これらの容器内に収納されたグリース等の潤滑剤を直接吸引し、各種産業機械等の潤滑剤ポンプのタンク部や別容器に移送するポンプが知られている。
【0003】
図6は、従来の潤滑剤移送ポンプ400及び移送対象のグリース300が満たされた容器200を示す縦断面図である。潤滑剤移送ポンプ400は、蓋部401、駆動シリンダ402、ポンプシリンダ403、ピストン404、ピストンロッド405、吸入弁406、排出弁407、及び吐出口408を備えている。蓋部401は、容器200の上面(一底面)に取り付けられる。駆動シリンダ402及びポンプシリンダ403は蓋部401に固定されている。ピストン404はポンプシリンダ403内に配置されている。ピストン404の下面とポンプシリンダ403の内面との間に、ポンプ室409が形成されている。ピストンロッド405は、駆動シリンダ402内の駆動ピストン410とピストン404とを連結している。ピストンロッド405内に排出経路405aが形成されており、図示せぬ配管が排出経路405aと吐出口408とを連結している。吸入弁406は、吸入口A406、鋼球411、及びシート面403aを備えている。シート面403aは、ポンプシリンダ403内部の底面に形成されている。排出弁407は、排出口A407、鋼球412、及びシート面404aを備えている。シート面404aは、ピストン404の上面に形成されている。
【0004】
吸入弁406及び排出弁407は逆止弁である。吸入弁406は、容器200の内部からポンプ室409への流れのみを許容する。排出弁407は、ポンプ室409から排出経路405aへの流れのみを許容する。
【0005】
潤滑剤移送ポンプ400は次のように作動する。駆動シリンダ402の駆動によりピストン404が上昇するとき、ポンプ室409の容積が増大する。このとき、ポンプ室409にグリース300が吸入されるように、吸入弁406の鋼球411及び排出弁407の鋼球412に圧力が加わる。吸入弁406の鋼球411は、逆止弁における許容方向の圧力を受け、排出弁407の鋼球412は逆止弁における禁止方向の圧力を受ける。このため、ピストン404が上昇するとき、吸入弁406のみが開放される。具体的には、鋼球411がシート面403aから離れる。一方、駆動シリンダ402の駆動によりピストン404が下降するとき、ポンプ室409の容積が減少する。このとき、ポンプ室409からグリース300が排出されるように、吸入弁406の鋼球411及び排出弁407の鋼球412に圧力が加わる。つまり、吸入弁406の鋼球411は、逆止弁における禁止方向の圧力を受け、排出弁407の鋼球412は逆止弁における許容方向の圧力を受ける。このため、ピストン404が下降するとき、排出弁407のみが開放される。具体的には、鋼球412がシート面404aから離れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−97422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
グリースの使用環境にもよるが、グリースの移送先の装置等で発生した塵挨などが、吐出口408から潤滑剤移送ポンプ400内のグリース300に混入することが避けられない。このような塵挨は、グリース300に対する異物である。
【0008】
上述の潤滑剤移送ポンプ400を移送手段として機能させるためには、吸入弁406及び排出弁407が共に逆止弁として機能する必要がある。ところが、吸入弁406又は排出弁407においてシート面403a、404aに異物が付着すると、鋼球411、412がシート面403a、404aに密着できない。つまり、異物の付着によって弁の閉鎖が妨げられる。吸入弁406が完全に閉じない場合、排出時に一部のグリース300が容器200の内部に逆流するので、排出不良が発生する。排出弁407が完全に閉じない場合、吸入時に一部のグリース300が排出弁407からポンプ室409内に逆流するので、吸入不良が発生する。どちらか一方の弁の閉鎖が妨げられていても、潤滑剤移送ポンプ400が機能しなくなる。
【0009】
シート面403a、404aに付着した異物を除去するには、潤滑剤移送ポンプ400の分解掃除等のメンテナンスが必要である。しかし、潤滑剤移送ポンプ400のメンテナンスは、作業者に重労働を強いると共に、復旧に相当の時間を必要とする。このメンテナンスは、具体的には、潤滑剤移送ポンプ400を容器200からクレーン等により吊上げ取外し、グリース300が多く付着したポンプシリンダ403及びピストン404を分解し、シート面403a、404aを取り出し洗浄する手間を必要とする。
【0010】
そこで、本発明は、粘性流体移送ポンプにおいて、吸入弁及び排出弁内に異物が付着することによるメンテナンスを不要とすることを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ポンプ室の容量を変化させるプランジャの往復運動により、粘性流体を吸入弁からポンプ室に吸入し且つ排出弁から排出する、粘性流体移送ポンプにおいて、吸入弁及び排出弁はそれぞれ、ポンプ室を外部に開放する開口と、該開口を開閉するように移動する弁体と、該開口が閉鎖された状態を保ちながら弁体が移動できるように弁体の移動を案内するガイド面とを備えている、ことを特徴とする粘性流体移送ポンプを提供する。
【0012】
(a)好ましくは、プランジャは、吸入弁の弁体を兼用している。
【0013】
(b)好ましくは、粘性流体移送ポンプは、粘性流体を撹拌する撹拌羽根を備えている。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、開口の周辺に異物が付着することによって弁体の移動範囲が部分的に制限されても、開口を閉鎖することができる。このため、本発明は、異物の付着によって開口に閉鎖不良が発生することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】粘性流体移送ポンプ及び移送対象のグリースが満たされた容器を示す縦断面図である。
【図2】本体及び撹拌羽根を示す縦断面図である。
【図3】本体及び撹拌羽根を示す平断面図である。
【図4】シリンダ部を示す縦断面図である。
【図5】第2実施形態におけるプランジャ及び吸入弁の構成を示す縦断面図である。
【図6】従来の潤滑剤移送ポンプ及び移送対象のグリースが満たされた容器を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態の構成)
図1は、粘性流体移送ポンプ100及び移送対象のグリース300が満たされた容器200を示す縦断面図である。容器200はドラム缶であり、容器200の内部にはグリース300が充填されている。第1実施形態に係る粘性流体移送ポンプ100は、グリース300を容器200の内部から外部へと移送する。
【0017】
図1において、粘性流体移送ポンプ100は、蓋部1、駆動モータ2、支持筒3、本体4、駆動軸5、撹拌羽根6、吐出弁7、及び排出配管8を備えている。蓋部1は、容器200の上面(一底面)に取り付けられる。駆動モータ2は蓋部1に固定されている。支持筒3は蓋部1から下方に延びている。本体4は支持筒3の下端部に固定されている。駆動軸5は、支持筒3の内部に配置されており、駆動モータ2で生成される回転動力を本体4に伝達する。撹拌羽根6は本体4の下方に配置されており、駆動軸5によって駆動される。吐出弁7は蓋部1に固定されており、本体4から移送されるグリース300を容器200の外部に排出することを許容又は禁止する。排出配管8は、本体4から排出されるグリース300を吐出弁7に案内する。
【0018】
図2、図3、及び図4を参照して、本体4を説明する。図2は、本体4及び撹拌羽根6を示す縦断面図である。図3は、本体4及び撹拌羽根6を示す平断面図である。図4は、シリンダ部10を示す縦断面図である。
【0019】
図2、図3において、本体4は、2つのシリンダ部10及びプランジャ駆動部11を備えている。各シリンダ部10は、シリンダケーシング12、吸入弁16、及び排出弁17を備えている。プランジャ駆動部11は、プランジャ13、プランジャケーシング14、軸受15、偏心カム21、及びヨーク22を備えている。
【0020】
シリンダケーシング12内には、ポンプ室18、吸入経路19、及び排出経路20が形成されている。吸入経路19は、容器200の内部に連通している。排出経路20は、排出配管8に連通している。吸入弁16は、ポンプ室18と吸入経路19との間に配置されている。排出弁17は、ポンプ室18と排出経路20との間に配置されている。吸入口A19及び排出口A20は、共に、ポンプ室18を外部に開放する開口である。
【0021】
プランジャ13の先端部はシリンダケーシング12のポンプ室18内に配置されており、プランジャ13の後端部はプランジャケーシング14内に配置されている。プランジャ13は、円柱部13a及びフランジ部13bを有している。円柱部13a及びフランジ部13bは共に円柱形状を有している。フランジ部13bの外径は、円柱部13aの外径よりも大きい。
【0022】
プランジャ駆動部11は、駆動モータ2によって生成される動力をプランジャ13に伝達する。プランジャケーシング14内に駆動軸5が挿入されている。駆動軸5は、軸受15により、プランジャケーシング14に対して回転自在に支持されている。偏心カム21は、駆動軸5に固定されている。偏心カム21は円盤形状を有しており、偏心カム21の軸心は、駆動軸5の軸心に対して偏心している。ヨーク22は、偏心カム21の外側に配置されている。ヨーク22はU字形状を有しており、両端部にプランジャ13の円柱部13aを挿入するための挿通孔22aが形成されている。偏心カム21とヨーク22との間に、プランジャ13のフランジ部13bが配置されている。偏心カム21及びヨーク22は確動カムを構成している。このため、偏心カム21が回転するとき、2つのプランジャ13は偏心カム21に追従しながら、ポンプ室18内において往復運動を行う。ポンプ室18は、プランジャ13が往復運動できるように、駆動軸5の径方向に形成されている。
【0023】
図4を参照して、シリンダ部10をより詳しく説明する。ポンプ室18の内面は、プランジャガイド面18a、排出ガイド面18b、及び連結面18cを含んでいる。プランジャガイド面18aは、開口である吸入口A16を除いて、円柱の側面形状を有している。吸入口A19は、ポンプ室18と吸入経路19との境界面を形成する。同様に、排出ガイド面18bは、開口である排出口A17を除いて、円柱の側面形状を有している。排出口A20は、ポンプ室18と排出経路20との境界面を形成する。プランジャガイド面18aの内径は、排出ガイド面18bの内径よりも大きい。連結面18cは、プランジャガイド面18a及び排出ガイド面18bを連結している。連結面18cは、円錐台の側面形状を有している。
【0024】
プランジャガイド面18aは、往復運動するプランジャ13を案内するための面である。プランジャ13の円柱部13aとプランジャガイド面18aとの間がシールされるように、プランジャ13及びプランジャガイド面18aの寸法は設計されている。
【0025】
吸入弁16は、吸入口A16、弁体、及び弁体の移動を案内するガイド面を備えている。第1実施形態では、プランジャ13が吸入弁16の弁体を兼用し、プランジャガイド面18aが弁体のガイド面を兼用している。
【0026】
プランジャ13の移動方向D13は、吸入口A16の開口方向D16に対して交差している。このため、プランジャ13は吸入口A16を横断するように移動することによって、吸入口A16を開閉する。プランジャ13の移動方向D13において、プランジャガイド面18aは、吸入口A16の両側に形成されている。つまり、プランジャガイド面18aは、吸入口A16よりもポンプ室18の減量側に形成される減量側部位18a1と、吸入口A16よりもポンプ室18の増量側に形成される増量側部位18a2と、を含んでいる。プランジャガイド面18aの減量側部位18a1は、吸入口A16が閉鎖された状態を保ちながらプランジャ13が移動できるように、プランジャ13の移動を案内する。
【0027】
排出弁17は、排出口A17、弁体23、弁体23の移動を案内する排出ガイド面18b、バネ24、及びカバーボルト25を備えている。
【0028】
弁体23は、円柱部23a、フランジ部23b、及び支持部23cを有している。円柱部23a、フランジ部23b、及び支持部23cは円柱形状を有している。フランジ部13bの外径は、円柱部13a及び支持部23cの外径よりも大きい。
【0029】
弁体23の移動方向D23は、排出口A17の開口方向D17に対して交差している。このため、弁体23は排出口A17を横断するように移動することによって、排出口A17を開閉する。弁体23の移動方向D23において、排出ガイド面18bは、排出口A17の両側に配置されている。つまり、排出ガイド面18bは、排出口A17よりもポンプ室18の減量側に形成される減量側部位18b1と、排出口A17よりもポンプ室18の増量側に形成される増量側部位18b2と、を含んでいる。排出ガイド面18bの減量側部位18b1は、排出口A17が閉鎖された状態を保ちながら弁体23が移動できるように、弁体23の移動を案内する。
【0030】
カバーボルト25は、シリンダケーシング12の端部に形成されたネジ穴に取り付けられている。カバーボルト25の内部は軸方向に貫通されており、カバーボルト25の内部に凹部25a及び貫通孔25bが形成されている。凹部25aの底面とフランジ部23bとの間には、バネ24が配置されている。バネ24は、弁体23から脱落しないように、支持部23cの外側に配置されている。バネ24は、弁体23が排出口A17を閉じる方向に、弁体23を付勢する。
【0031】
図2、図3を参照して、撹拌羽根6を説明する。図2に示されるように、撹拌羽根6は、駆動軸5の下端面に固定されている。図3に示されるように、撹拌羽根6は、本体6a、2つの端部フィン6b、及び2つの軸部フィン6cを備えている。本体6aは、水平方向に広がる長手の板状部材である。本体6aは、プランジャケーシング14及び2つのシリンダケーシング12の全体よりも外側に広がっている。2つの端部フィン6bは、本体6aの両端に沿って形成され上方向に延びる板状部分である。2つの軸部フィン6cは、本体6aの長手方向に沿って形成され下方向に延びる板状部分である。
【0032】
(第1実施形態の作動)
図2を参照して、粘性流体移送ポンプ100の作動を説明する。駆動モータ2が起動されると、2つのプランジャ13の往復運動が開始される。2つのシリンダ部10のそれぞれにおいて、プランジャ13の運動により、前進行程及び後進行程が繰り返し行われる。前進行程において、プランジャ13は、ポンプ室18の容量を減少させるように、ポンプ室18内を前進する。後進行程において、プランジャ13は、ポンプ室18の容量を増大させるように、ポンプ室18内を後進する。
【0033】
前進行程において、プランジャ13は、運動範囲Rの後端位置P2から前端位置P1まで移動する。左側のシリンダ部10は、運動範囲Rの後端位置P2にあるプランジャ13を示している。後進行程において、プランジャ13は、運動範囲Rの前端位置P1から後端位置P2まで移動する。右側のシリンダ部10は、運動範囲Rの前端位置P1にあるプランジャ13を示している。
【0034】
排出弁17は、逆止弁である。排出弁17は、ポンプ室18から排出経路20への流れのみを許容し、排出経路20からポンプ室18への流れを禁止する。吸入弁16は、グリース300の流れに関係なく、プランジャ13の位置によってのみ開閉される。
【0035】
後進行程では、プランジャ13の後進に伴って、排出口A17の閉鎖、吸入口A16の開放が順に行われる。以下、順に説明する。後進行程の開始時に、排出口A17は開放されており、吸入口A16は閉鎖されている。プランジャ13が後進するとポンプ室18の容量が増大する。このとき、ポンプ室18にグリース300が吸入されるように、吸入弁16のプランジャ13及び排出弁17の弁体23に圧力が加わる。つまり、プランジャ13は、逆止弁における許容方向の圧力を受け、弁体23は逆止弁における禁止方向の圧力を受ける。このため、プランジャ13の後進が開始されると、弁体23によって排出口A17が閉鎖される。一方、吸入口A16はプランジャ13によって開閉されるため、プランジャ13が吸入口A16よりも後進するまで、吸入口A16は開放されている。このため、更にプランジャ13が後進すると、吸入口A16が開放される。吸入口A16が開放された状態でプランジャ13が後進すると、容器200の内部からポンプ室18内にグリース300が吸入される。この結果、ポンプ室18内にグリース300が蓄えられる。
【0036】
前進行程では、プランジャ13の前進に伴って、吸入口A16の閉鎖、排出口A17の開放が順に行われる。前進行程の開始時に、吸入口A16は開放されており、排出口A17は閉鎖されている。プランジャ13が前進すると、ポンプ室18の容量が減少する。このとき、ポンプ室18からグリース300が排出されるように、吸入弁16のプランジャ13及び排出弁17の弁体23に圧力が加わる。つまり、プランジャ13は、逆止弁における禁止方向の圧力を受け、弁体23は逆止弁における許容方向の圧力を受ける。ただし、吸入口A16はプランジャ13によって開閉されるため、プランジャ13が吸入口A16を閉鎖するまで、吸入口A16は開放されている。吸入口A16が閉鎖されるまで、ポンプ室18内のグリース300が吸入口A16から排出される。吸入口A16が閉鎖された状態でプランジャ13が前進すると、排出口A17が開放される。排出口A17が開放された状態でプランジャ13が前進すると、ポンプ室18から排出経路20にグリース300が排出される。この結果、ポンプ室18内のグリース300が、粘性流体移送ポンプ100の外部に移送される。
【0037】
図1、図6を参照して、撹拌羽根6の作動を説明する。図1は、撹拌羽根6ありでグリース300の移送が行われた場合におけるグリース300の液面を示している。図6は、撹拌羽根6なしでグリース300の移送が行われた場合におけるグリース300の液面を示している。
【0038】
図6には、従来の潤滑剤移送ポンプ400が示されている。潤滑剤移送ポンプ400のポンプシリンダ403の下面には、吸入口A406が開口している。潤滑剤移送ポンプ400の駆動により、容器200内のグリース300は吸入口A406から、潤滑剤移送ポンプ400に吸入される。グリース300は高い粘性を有しているので、グリース300の液面300Sにおいて、吸入口A406の周辺に窪みが形成される。つまり、液面300Sの形状は、平らではなく、凹凸になる。
【0039】
一方、図1には、撹拌羽根6を有する粘性流体移送ポンプ100が示されている。駆動モータ2が起動されると、撹拌羽根6も回転を開始する。駆動モータ2の作動中、撹拌羽根6も繰り返し回転する。撹拌羽根6の回転は、液面300Sの形状が凹凸になることを妨げて、液面300Sの形状を平らにする。
【0040】
(第2実施形態の構成)
第2実施形態は、プランジャ13、吸入弁16、ポンプ室18の構成において、第1実施形態と相違している。第1実施形態では、プランジャ13が吸入弁16の弁体を兼用している。これに対して、第2実施形態では、プランジャ13とは別に吸入弁16の弁体26が設けられている。また、吸入弁16の構成に応じて、ポンプ室18の形状が変更されている。他の構成は、第2実施形態及び第1実施形態において、同一である。
【0041】
図5は、第2実施形態におけるプランジャ13及び吸入弁16の構成を示す縦断面図である。吸入弁16は、吸入口A16、弁体26、弁体26の移動を案内する吸入ガイド面18d、バネ27、及び支持部28を備えている。
【0042】
弁体26は、弁体23と同様に、円柱部26a、フランジ部26b、及び支持部26cを有している。
【0043】
吸入ガイド面18dは、ポンプ室18の内面に含まれている。吸入ガイド面18dは、吸入口A16の開口方向D16に沿って、形成されている。
【0044】
支持部28は、シリンダケーシング12の一部であり、吸入口A16に対向する位置に配置されている。支持部28は、吸入口A16に対向する凹部28aを有している。凹部28aの底面とフランジ部26bとの間には、バネ27が配置されている。バネ27は、弁体26が吸入口A16を閉じる方向に、弁体26を付勢している。
【0045】
弁体26の移動方向D26は、吸入口A16の開口方向D16と平行である。吸入ガイド面18dは、吸入口A16よりもポンプ室18の増量側に形成されている。このため、吸入ガイド面18dは、吸入口A16が閉鎖された状態を保ちながら弁体26が移動できるように、弁体26の移動を案内する。
【0046】
(第2実施形態の作動)
第2実施形態の後進行程及び前進行程における作動を説明する。2つのシリンダ部10のそれぞれにおいて、プランジャ13の運動により、前進行程及び後進行程が繰り返し行われる。第2実施形態と第1実施形態との間で、後進行程及び前進行程における作動が部分的に異なっている。以下、相違点としての後進行程及び前進行程を説明する。
【0047】
後進行程では、プランジャ13の後進に伴って、排出口A17の閉鎖、吸入口A16の開放が順に行われる。以下、順に説明する。後進行程の開始時に、排出口A17は開放されており、吸入口A16は閉鎖されている。プランジャ13が後進するとポンプ室18の容量が増大する。このとき、ポンプ室18にグリース300が吸入されるように、吸入弁16の弁体26及び排出弁17の弁体23に圧力が加わる。つまり、吸入弁16の弁体26は、逆止弁における許容方向の圧力を受け、排出弁17の弁体23は逆止弁における禁止方向の圧力を受ける。このため、プランジャ13の後進が開始されると、吸入口A16が開放されると共に、排出口A17が閉鎖される。吸入口A16が開放された状態でプランジャ13が後進すると、容器200の内部からポンプ室18内にグリース300が吸入される。この結果、ポンプ室18内にグリース300が蓄えられる。
【0048】
前進行程では、プランジャ13の前進に伴って、吸入口A16の閉鎖、排出口A17の開放が順に行われる。前進行程の開始時に、吸入口A16は開放されており、排出口A17は閉鎖されている。プランジャ13が前進すると、ポンプ室18の容量が減少する。このとき、ポンプ室18からグリース300が排出されるように、吸入弁16の弁体26及び排出弁17の弁体23に圧力が加わる。つまり、吸入弁16の弁体26は、逆止弁における禁止方向の圧力を受け、排出弁17の弁体23は逆止弁における許容方向の圧力を受ける。このため、プランジャ13の前進が開始されると、吸入口A16が閉鎖されると共に、排出口A17が開放される。排出口A17が開放された状態でプランジャ13が前進すると、ポンプ室18から排出経路20にグリース300が排出される。この結果、ポンプ室18内のグリース300が、粘性流体移送ポンプ100の外部に移送される。
【0049】
(本実施形態の作用、効果)
本実施形態(第1、第2実施形態)は、次の構成により、次の作用、効果を有する。
【0050】
第1実施形態において、吸入弁16及び排出弁17はそれぞれ、開口(吸入口A16、排出口A17)と、弁体(プランジャ13、弁体23)と、開口が閉鎖された状態を保ちながら弁体が移動できるように弁体の移動を案内するガイド面(プランジャガイド面18aの減量側部位18a1、排出ガイド面18bの減量側部位18b1)とを備えている。第2実施形態において、吸入弁16及び排出弁17はそれぞれ、開口(吸入口A16、排出口A17)と、弁体(弁体26、弁体23)と、開口が閉鎖された状態を保ちながら弁体が移動できるように弁体の移動を案内するガイド面(吸入ガイド面18d、排出ガイド面18bの減量側部位18b1)とを備えている。
【0051】
上記構成により、弁体がガイド面に沿って移動可能な範囲内において、開口が閉鎖される。このため、本実施形態は、開口の周辺に異物が付着することによって弁体の移動範囲が部分的に制限されても、開口を閉鎖することができる。したがって、本実施形態は、異物の付着によって開口に閉鎖不良が発生することを防止できる。
【0052】
第1実施形態では、プランジャ13は吸入弁の弁体を兼用している。
【0053】
このため、本実施形態は、粘性流体移送ポンプ100の構成を簡素化できる。
【0054】
本実施形態は、粘性流体(グリース300)を撹拌する撹拌羽根6を備えている。
【0055】
上記構成により、粘性流体の移送元となる容器200において、液面300Sの形状が凹凸になることが妨げられ、液面300Sの形状が平らになる。このため、本実施形態は、作業者による粘性流体の液面を崩す作業を必要とせず、粘性流体の液量が減少してもエア混入による吸い込み不良を防止できる。
【符号の説明】
【0056】
6 撹拌羽根
13 プランジャ(吸入弁の弁体)
16 吸入弁
17 排出弁
18 ポンプ室
18a ガイド面
18b ガイド面
23 弁体
26 弁体
100 粘性流体移送ポンプ
200 容器
300 グリース(粘性流体)
A16 吸入口(開口)
A17 排出口(開口)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ室の容量を変化させるプランジャの往復運動により、粘性流体を吸入弁からポンプ室に吸入し且つ排出弁から排出する、粘性流体移送ポンプにおいて、
吸入弁及び排出弁はそれぞれ、ポンプ室を外部に開放する開口と、該開口を開閉するように移動する弁体と、該開口が閉鎖された状態を保ちながら弁体が移動できるように弁体の移動を案内するガイド面とを備えている、ことを特徴とする粘性流体移送ポンプ。
【請求項2】
プランジャは、吸入弁の弁体を兼用している、請求項1に記載の粘性流体移送ポンプ。
【請求項3】
粘性流体を撹拌する撹拌羽根を備えている、請求項1又は2に記載の粘性流体移送ポンプ。
【請求項1】
ポンプ室の容量を変化させるプランジャの往復運動により、粘性流体を吸入弁からポンプ室に吸入し且つ排出弁から排出する、粘性流体移送ポンプにおいて、
吸入弁及び排出弁はそれぞれ、ポンプ室を外部に開放する開口と、該開口を開閉するように移動する弁体と、該開口が閉鎖された状態を保ちながら弁体が移動できるように弁体の移動を案内するガイド面とを備えている、ことを特徴とする粘性流体移送ポンプ。
【請求項2】
プランジャは、吸入弁の弁体を兼用している、請求項1に記載の粘性流体移送ポンプ。
【請求項3】
粘性流体を撹拌する撹拌羽根を備えている、請求項1又は2に記載の粘性流体移送ポンプ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2012−122427(P2012−122427A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274869(P2010−274869)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(390008338)広和株式会社 (21)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(390008338)広和株式会社 (21)
【Fターム(参考)】
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