説明

粘着剤溶液組成物及び表面保護フィルム

【課題】
剥離後には、被着体である物品の表面には粘着剤の残留物または汚染がなく、単位剥離幅当たりの高速剥離力が小さいために大面積の物品から表面保護フイルムをスムーズに剥離することができ、単位剥離幅当たりの低速剥離力が一定値以上であるため小面積の物品から不必要な剥離が生ずることがなく、剥離時の帯電が極めて少ない再剥離性の表面保護フィルム及び該表面保護フィルムを製造するのに有益な粘着剤溶液組成物を提供する。
【解決手段】
ガラス転移点(Tg)が−80℃〜−35℃のアクリル系共重合体、
該アクリル系共重合体100質量部に対して0.1〜10質量部のイオン性液体、
該アクリル系共重合体100質量部に対して0.01〜10質量部の界面活性剤、
及び該アクリル系共重合体100質量部に対して40〜600質量部の溶剤を含有することを特徴とする粘着剤溶液組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤溶液組成物及び表面保護フィルムに関する。更に詳しくは、単位剥離幅当たりの高速剥離力が小さいために大面積の物品から表面保護フイルムをスムーズに剥離することができ、単位剥離幅当たりの低速剥離力が一定値以上であるため小面積の物品から不必要な剥離が生ずることがなく、剥離時の帯電がほとんどない再剥離性の表面保護フィルム及び該表面保護フィルムを製造するのに有益な粘着剤溶液組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
表面保護フィルムは、各種物品を加工する、搬送する、あるいは保管する時にその表面を傷、汚染から保護するために使用されている。
上記表面保護フイルムは、例えばPET等のポリマーフィルム等からなる基材層の上に粘着層が積層されており、基材層は直接外部応力に抗して、物品に傷がつかないように作用し、粘着剤層は保護されるべき物品に該表面保護フィルムを接着させるとともに、剥離時にはスムーズな剥離を可能としている。
【0003】
保護されるべき物品の材質は、ステンレス板やアルミ等の金属板、 塗装した金属板や樹脂板、ガラス板等広範囲のものを対象としているため、上記保護フィルムは種々の用途に適した粘着力を有する必要があり、その粘着力は高湿度下、高温度下で保管されても変化せず、再剥離するときに容易に剥離でき、剥離後には、被着体である物品の表面には粘着剤の残留物または汚染がないことが基本的な物性として要求される。
【0004】
さらに、同一材料の物品であっても、その表面積がさまざまである。
一般に表面保護フィルムを物品表面から剥離する場合は手作業で行われ、その際高速度で剥離される。高速度で表面保護フィルムを剥離する場合には剥離力は大であるため、大面積の物品から表面保護シートを剥離する場合には剥離抵抗力が大きい。従って、大面積の物品から表面保護フィルムをスムーズに剥離するためには、少なくとも単位剥離幅当たりの高速剥離力を小さくする必要がある。一方、小面積の物品の場合には、その面積に比べて剥離が可能な周辺長が大であるため、不必要な剥離が起こりやすくなる。従って、小面積の物品から不必要な剥離が起こらないためには、単位剥離幅他における低速剥離力を一定値以上に保つ必要がある。
【0005】
また、近年は表面保護対象とすべき対象物品としてディスプレイ、偏光板、電子基板、ICチップ等の電子部品の用途が広がっており、これらの物品に表面保護フィルムが使用される場合には、その剥離時に物品の表面に帯電が発生し、異物や塵埃の付着する、更にこれら物品の機能の低下を起こすため、剥離した場合の物品表面の帯電が問題となっている。
【0006】
表面保護フィルムを剥離する際に物品の表面帯電を防止するため、例えば、保護フィルムの基材層に帯電防止性材料を用いる(特許文献1)、あるいは基材層の片面に帯電防止剤を塗布する(特許文献2)等の改良が試みられているが、保護される物品の表面に接する粘着層自体に帯電防止効果がなければ効果が少ない。粘着剤層に帯電防止剤を添加する方法も検討されているが(特許文献3)、多量に帯電防止剤を加えるため剥離した被着体の表面を残留物が汚染する問題があり、帯電防止剤の量を少なくすると十分な帯電防止効果を得ることが困難となる。
【特許文献1】特開平4−292943号公報
【特許文献2】特開平6−123806号公報
【特許文献3】特開2004−536940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決すべくなされたもので、剥離後には、被着体である物品の表面には粘着剤の残留物または汚染がなく、単位剥離幅当たりの高速剥離力が小さいために大面積の物品から表面保護フイルムをスムーズに剥離することができ、単位剥離幅当たりの低速剥離力が一定値以上であるため小面積の物品から不必要な剥離が生ずることがなく、剥離時の帯電が極めて少ない再剥離性の表面保護フィルム及び該表面保護フィルムを製造するのに有益な粘着剤溶液組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく検討を進めた結果、特定のガラス転移点(Tg)を有するアクリル系共重合体、イオン性液体、界面活性剤及び溶剤を含有する粘着剤溶液組成物を使用して、表面保護フィルムを製造することが有効であることを見出し、本発明を完成するに至った
【0009】
即ち、本発明は、
ガラス転移点(Tg)が−80℃〜−35℃のアクリル系共重合体、
該アクリル系共重合体100質量部に対して0.1〜10質量部のイオン性液体、
該アクリル系共重合体100質量部に対して0.01〜10質量部の界面活性剤、
及び該アクリル系共重合体100質量部に対して40〜600質量部の溶剤を含有することを特徴とする粘着剤溶液組成物を提供する。
好ましくは、上記界面活性剤がポリアルキレンオキサイド系ノニオン界面活性剤及びトリアルキルアンモニウムエトサルフェート系カチオン界面活性剤から選ばれた界面活性剤であり、
好ましくは、上記ポリアルキレンオキサイド系ノニオン界面活性剤がポリオキシエチレン及び/又はポリオキシプロピレンであり、
好ましくは、上記ポリアルキレンオキサイド系ノニオン界面活性剤がポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのブロックポリマーであり、
好ましくは、上記イオン性液体の陰イオン部分がフッ素原子を含有し、
好ましくは、上記イオン性液体の陰イオン部分がビストリフルオロメタンスルフォニルイミドイオンを有し、
好ましくは、上記イオン性液体の陽イオン部分がピリジニウム構造を有し、
好ましくは、上記アクリル系共重合体を構成する全単量体の合計を100質量部とすると、該アクリル系共重合体が、ヒドロキシル基を側鎖にもつ単量体を1.0〜10質量部その構成成分として含有する粘着剤溶液組成物を提供する。
【0010】

また、本発明は
ガラス転移点(Tg)が−80℃〜−35℃のアクリル系共重合体、
該アクリル系共重合体100質量部に対して0.1〜10質量部のイオン性液体、
及び該アクリル系共重合体100質量部に対して0.01〜10質量部の界面活性剤、
を含有する粘着層を有することを特徴とする表面保護フィルムを提供する。
好ましくは、上記界面活性剤がポリアルキレンオキサイド系ノニオン界面活性剤及びトリアルキルアンモニウムエトサルフェート系カチオン界面活性剤から選ばれた界面活性剤であり、
好ましくは、上記ポリアルキレンオキサイド系ノニオン界面活性剤がポリオキシエチレン及び/又はポリオキシプロピレンであり、
好ましくは、上記ポリアルキレンオキサイド系ノニオン界面活性剤がポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのブロックポリマーであり、
好ましくは、上記イオン性液体の陰イオン部分がフッ素原子を含有し、
好ましくは、上記イオン性液体の陰イオン部分がビストリフルオロメタンスルフォニルイミドイオンを有し、
好ましくは、上記イオン性液体の陽イオン部分がピリジニウム構造を有し、
好ましくは、上記アクリル系共重合体を構成する全単量体の合計を100質量部とすると、該アクリル系共重合体が、ヒドロキシル基を側鎖にもつ単量体を1.0〜10質量部その構成成分として含有する表面保護フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0011】

本発明は、特定のガラス転移点(Tg)を有したアクリル系共重合体、
該アクリル系共重合体に対して特定量のイオン性液体及び界面活性剤を含有する粘着剤層を有する表面保護フィルム構成とすることにより、剥離後には、被着体である物品の表面には粘着剤の残留物または汚染がなく、単位剥離幅当たりの高速剥離力が小さいために大面積の物品から表面保護フイルムをスムーズに剥離することができ、単位剥離幅当たりの低速剥離力が一定値以上であるため小面積の物品から不必要な剥離が生ずることがなく、剥離時の帯電が極めて少ない再剥離性の表面保護フィルム及び該表面保護フィルムを製造するのに有益な粘着剤溶液組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】

以下、本発明の粘着剤溶液組成物及び表面保護フィルムについて更に詳しく説明する。
本発明の粘着剤溶液組成物は、特定のガラス転移点(Tg)を有するアクリル系共重合体、イオン性液体、溶剤及び界面活性剤を含有する組成物である。
【0013】

上記アクリル系共重合体とは、本発明においては、共重合体を構成する全単量体成分の50重量%以上、好ましくは80重量%以上がアクリル系単量体である共重合体をいう。
上記アクリル系単量体としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、i-ブチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、i-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-ノニルアクリレート、i-ノニルアクリレート、n-デシルアクリレート、n-ドデシルアクリレート等のアクリル酸の炭素数1〜12の直鎖もしくは分枝アルキルエステル;例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、n-ドデシルメタクリレート等のメタクリル酸の炭素数1〜12の直鎖もしくは分枝アルキルエステル、更にはこれらの各種誘導体の1種又は2種以上を選ぶことができる。
【0014】

上記アクリル系共重合体中には、該アクリル系共重合体を硬化剤と反応させる目的で、該アクリル系共重合体中に該共重合体の構成成分として官能基を有する単量体を含むことが好ましい。
上記官能基を有する単量体としては、例えば、分子内にカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体、分子内に水酸基を有するエチレン性不飽和単量体、分子内にグリシジル基を有するエチレン性不飽和単量体、分子内にアミド基,N−置換アミド基を有するエチレン性不飽和単量体、分子内に三級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体等の1種又は2種以上を使用することができる。
【0015】

上記分子内に水酸基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−メチロールアクリルアミド、アリルアルコール、メタリルアルコール等を挙げることができる。
【0016】

上記分子内にカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、桂皮酸、、コハク酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリ レート、マレイン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フマル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,2-ジカルボキシシクロヘキサンモノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ) アクリレート等を挙げることができる。
【0017】

分子内にグリシジル基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルビニルエーテル、グリシジル(メタ)アリルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アリルエーテル等が挙げられる。
【0018】

分子内にアミド基,N−置換アミド基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等が挙げられる。
【0019】

分子内に三級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0020】

上記各種の官能基を有する単量体のうち、一般的によく使用されるイソシアネート系架橋剤との反応性が良好であるため、分子内に水酸基を有するエチレン性不飽和単量体が好ましく、架橋反応を促進する効果をもつことができるため分子内に水酸基を有するエチレン性不飽和単量体に加えて分子内にカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体を含むことが更に好ましい。
【0021】

上記水酸基を有するエチレン性不飽和単量体がアクリル系共重合体中に占める構成量は、アクリル系共重合体を構成する全単量体の合計を100質量部とすると、1.0〜10質量部が好ましく、更に好ましくは1.5〜5質量部であり、特に好ましくは2〜3質量部である。
【0022】

上記水酸基を有するエチレン性不飽和単量体がアクリル系共重合体中に占める構成量が上記上限値を超えると、架橋反応が過剰に進み接着力が低下する。その結果、
飛散防止効果がなくなり、表面保護フィルムが被着体から部分的に分離する浮き現象、剥がれ現象が性ずるので好ましくない。また、上記下限値未満であると、架橋反応が充分に進まず、粘着剤層の凝集力が低下し、剥離後に被着体表面に糊残りが生ずるので好ましくない。
【0023】

上記カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体がアクリル系共重合体中に占める構成量は、アクリル系共重合体を構成する全単量体の合計を100質量部とすると、0.05〜10質量部が好ましく、更に好ましくは0.1〜7質量部であり、特に好ましくは0.3〜5質量部である。
【0024】

上記カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体がアクリル系共重合体中に占める構成量が上記上限値を超えると、イソシアネート架橋剤を配合した場合にその粘着剤溶液組成物のポットライフが短くなり、塗工作業性に問題が生ずるので好ましくない。また、上記下限値未満であると、アクリル系共重合体中の水酸基側鎖とイソシアネート系架橋剤との架橋反応速度が遅くなり、剥離後に被着体表面に糊残りの現象が現れるので好ましくない。
【0025】

上記アクリル系共重合体のガラス転移温度(Tg)は−80〜−35℃であり、−80〜−50℃が好ましい。
ガラス転移温度(Tg)が上記上限値を超えると、粘着剤層の被着体に対する濡れ性が低下するとともに、粘着力が低下するので好ましくない。
また、上記下限値未満であると、適当な単量体原材料を入手するのが困難となる。
【0026】

尚、本発明においてTgとは、共重合体を構成するそれぞれの単量体成分の単独重合体のTgを用いて次式によって求めたものである。

1/Tg=w1/Tg1+w2/Tg2+・・・・・・・・・+w/Tg

但し、Tgは共重合体のガラス転移温度であり、Tg1、Tg2、・・・・・・Tgkは各単量体成分の単独重合体のTgであり、w1、w2、・・・・・・wkは各単量体成分のモル分率を表わし、w1+w2+・・・・・・+wk=1である。
【0027】

上記アクリル系共重合体は、公知の重合法、例えば塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等の重合方法で前記のモノマーを重合することにより製造することができるが、乳化剤等の不純物が入りにくく、重合後に溶剤が配合された重合体が得られることから溶液重合法により製造することが好ましい。
【0028】

本発明の粘着剤溶液組成物にはイオン性液体が含まれる。
本発明において、イオン性液体とは、陰イオンとイオン的に会合する陽イオンとから成り、1気圧のもと50℃で、好ましくは40℃で、より好ましくは26℃で液体である非高分子物質として定義される。
【0029】

上記イオン性液体の陽イオン部分としては、イミダゾリウムイオンなどの環状アミジンイオン、ピリジニウムイオン、アンモニウムイオン、スルホニウムイオン、ホスホニウムイオン等が挙げられるが、表面保護フィルムの粘着剤層に使用された場合、その表面保護フィルムの高速剥離力、低速剥離力の差が比較的少なく、且つ表面保護フィルムを剥離する際の帯電性が低い観点からピリジニウムイオンが好ましい。
【0030】

上記イオン性液体の陰イオン部分としては、C2n+1COO、C2n+1COO、N03、C2n+1SO、(C2n+1SO2、(C2n+1SO、PO2- 、AlCl4、Al2Cl7、ClO 、BF、PF、AsF、SbF 等が挙げられるが、表面保護フィルムの粘着剤層に使用された場合、その表面保護フィルムの高速剥離力が小さく、且つ表面保護フィルムを剥離する際の帯電性が低い観点から、C2n+1SO、(C2n+1SO2、(CnF2n+1SO 等のフッ素原子を含有する陰イオンが好ましく、特に(CF3SO2 (ビストリフルオロメタンスルフォニルイミドイオン)が好ましい
【0031】

本発明の粘着剤溶液組成物中の上記イオン性液体の含有量は、アクリル系共重合体100質量部に対して0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜5質量部である。
イオン性液体の含有量が上記下限値未満であると、剥離時の帯電が起こり、イオン性液体の含有量が上記上限値を越えると、上記表面保護フィルムの不必要な剥離が起こるとともに剥離後に非着帯の表面を残留物で汚染する。
【0032】

本発明の粘着剤組成部中の溶剤は、アクリル系共重合体を均一に溶解して粘着剤溶液組成物を長期的に保存性しても、該組成物が安定性を保ち、その使用に際しては、塗工後の乾燥時に速やかに揮発飛散する。
該溶剤は、溶液重合して得られたアクリル系共重合体中の溶剤をそのまま使用しても良いし、新たに添加してもよい。
【0033】

上記溶剤としては、粘着剤溶液組成物を構成するアクリル系共重合体を溶解する溶剤であれば特に制限は無く、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、t-ブチルベンゼン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、テトラリン、デカリン、芳香族ナフサなどの芳香族炭化水素類;例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、i-オクタン、n-デカン、ジペンテン、石油スピリット、石油ナフサ、テレピン油などの脂肪系もしくは脂環族系炭化水素類;例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸n-アミル、酢酸2-ヒドロキシエチル、酢酸2-ブトキシエチル、酢酸3-メトキシブチル、安息香酸メチルなどのエステル類;例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノンなどのケトン類;例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル類;例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、s-ブチルアルコール、t-ブチルアルコールなどのアルコール類;などを挙げることができる。これらの有機溶媒はそれぞれ単独で、又は2種以上混合して用いることができるが、アルコールなど分子内に水酸基を有する溶剤は前記アクリル系共重合体と架橋剤との反応を妨げるため、使用しないほうが好ましい。
【0034】

本発明の粘着剤溶液組成物中の上記溶剤の含有量は、ハンドリング性及び適当な塗工性を確保する観点から、アクリル系共重合体100質量部に対して40〜600質量部、好ましくは100〜400質量部である。
【0035】

本発明の粘着剤溶液組成物は、界面活性剤を含有する。
上記界面活性剤としては、ノニオン系、カチオン系、アニオン系、両性系のいずれを使用してもよい。
【0036】

上記ノニオン系としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;例えば、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニエルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート等のソルビタン高級脂肪酸エステル類;例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等のポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル類;例えば、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート等のポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル類;例えば、オレイン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド等のグリセリン高級脂肪酸エステル類;例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等のポリオキシアルキレン類及びそれらのブロックコポリマー;等を例示することができる。
【0037】

カチオン系としては、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム塩、アルキルジメチルアンモニウムエトサルフェート等を例示することができる。
【0038】

上記アニオン界面活性剤としては、ラウリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、N-アシル-N-メチルグリシンナトリウム塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテルカルボン酸ナトリウム等のカルボン酸塩;ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、ジメチル-5-スルホイソフタレートナトリウム等のスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンラウリル燐酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルリン酸ナトリウム等の燐酸エステル塩等を挙げられる。
【0039】

上記両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン型界面活性剤、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムペタイン、レシチン、アルキルアミンオキサイドなどを挙げることができる。
【0040】

上記各種の界面活性剤の内、帯電性を低下させる効果が大きい観点から、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等のポリオキシアルキレン類及びアルキルジメチルアンモニウムエトサルフェートから選ばれた界面活性剤が好ましい。
【0041】

ポリオキシアルキレン類のさらに好ましいものとしては、それらのブロックコポリマーが好ましく、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンのブロックポリマーが更に好ましい。
上記ブロックポリマーの更に好ましい態様としては、該ブロックポリマー中のポリオキシエチレンの含有率は、帯電防止性の観点からブロックポリマ−100質量部に対して5〜30質量部が好ましく、更に好ましくは10〜20質量部である。
また、上記ブロックポリマーの分子量は、帯電防止性の観点から500〜3000が好ましく、更に好ましくは1000〜2000である。
【0042】

本発明の粘着剤溶液組成物中の上記ノニオン系界面活性剤の含有量は、アクリル系共重合体100質量部に対して0.01〜10質量部が好ましく、更に好ましくは0.02〜5質量部である。
ノニオン系界面活性剤の含有量が上記下限値未満であると、表面保護フィルムの高速剥離力が大きくなり、且つ表面保護フィルムを剥離する際の帯電性が低くなる効果が低下する。
ノニオン系界面活性剤の含有量が上記上限値を越えると低速剥離力が低下して、不必要な剥離が起きるとともに、剥離時に残留物による被着体表面の汚染が生じる。
【0043】

本発明の粘着剤溶液組成物には、更に、架橋剤、充填材、着色剤、消泡剤、レベリング剤等が含有されていてもよい。
【0044】

特に、架橋剤は本発明の粘着剤溶液組成物を使用して表面保護フィルムを作成する場合に、粘着剤層の粘着特性を向上させる点で適当量、使用前に添加されていることが好ましい。
上記架橋剤としては、アクリル共重合体と反応して架橋構造を形成するものであれば特に限定されるものではないが、例えばイソシアネート、メラミン、エポキシ、多価金属塩、アジリジンが挙げられるが、良好な架橋性を有するという観点からイソシアネート系架橋剤が好ましい。
【0045】

上記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンビスメチルイソシアネート、4,4−メチレンビスシクロヘキシルイソシアネート、トリレンジイソシアネート−3官能アルコール付加物、イソフォロンジイソシアネート−2官能アルコール付加物、イソフォロンジイソシアネート−3官能アルコール付加物、ヘキサメチレンジイソシアネート−2官能アルコール付加物、ヘキサメチレンジイソシアネート−3官能アルコール付加物、トリレンジイソシアネート三量体、イソフォロンジイソシアネート三量体、ヘキサメチレンジイソシアネート三量体、ビュレット型ヘキサメチレンジイソシアネート三量体、n−ブチルイソシアネート、n−ヘキシルイソシアネート、トリメチルシリコンイソシアネート、ジメチルシリコンジイソシアネート、モノメチルシリコントリイソシアネート等が挙げられるが、ヘキサメチレンジイソシアネートが更に好ましい。
【0046】

本発明の粘着剤溶液組成物中の上記架橋剤の配合量は、アクリル系共重合体100重量部に対して0.5〜10重量部が好ましく、更に好ましくは1 〜6.5重量部、特に好ましくは1.5〜5.5重量部である。
架橋剤の含有量が上記下限値未満であると架橋反応が不十分となり、接着シートの保持力が得られなくなり、架橋剤の含有量が上記上限値を越えるとポットライフが短くなる。
【0047】

本発明の粘着剤溶液組成物は、前記アクリル系共重合体、イオン性液体、溶剤、必要に応じてノニオン系界面活性剤、架橋剤、充填材、着色剤、消泡剤、レベリング剤等を公知の方法で配合することにより製造することができる。
【0048】

具体的な製造例としては、例えば、溶液重合で得られたアクリル系共重合体に他の要素を添加し、混合する方法、固形のアクリル系共重合体を溶媒に溶解した後、他の構成要素を添加し、混合する方法等が上げられるが、製造が容易であるという観点から、溶液重合で得られたアクリル系共重合体に他の構成要素を添加し、混合する方法が好ましい。
また、架橋剤はポットライフの観点から表面保護フィルムを製造する直前に添加されるのが好ましい。
【0049】

本発明の表面保護フィルムは、
ガラス転移点(Tg)が−80℃〜−35℃のアクリル系共重合体、
該アクリル系共重合体100質量部に対して0.1〜10質量部のイオン性液体、
及び該アクリル系共重合体100質量部に対して0.01〜10質量部の界面活性剤、
を含有する粘着層を有する。
上記表面保護フィルムは、前記本発明の粘着剤溶液組成物を基材シートの上に直接塗工し、乾燥する直接塗工法、あるいは、一旦離型紙の上に本発明の粘着剤溶液組成物を塗工して乾燥し、離型紙の上に粘着剤層を作成した後、それを基材シートに転着する転着法等の方法で製造することができる。
【0050】

上記基材シートの材料としては、シートを形成する材料であれば特に制限はなく、例えば、アルミニウム、銅、鉄の金属箔、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン、エチレン−4フッ化エチレン共重合体等のポリフッ化エチレン系樹脂、ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン等のビニル重合体、三酢酸セルロース、セロファン等のセルロース系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミド等の合成樹脂フィルム又はシート、上質紙、薄葉紙、グラシン紙、硫酸紙等の紙、硝子繊維、天然繊維、合成繊維等の単層体又は複数の積層体が挙げられる。
【0051】

これらの中で、機械的強度、寸法安定性、平坦性、透明性等に優れる観点から合成樹脂シートが好ましく、特にポリエチレンテレフタレートフィルムがコストパーフォーマンスにも優れるため更に好ましい。
【0052】

また、基材シートに対する粘着剤層の投錨性を上げるために、基材シートの表面をコロナ放電処理、プラズマ処理、プライマーコート、脱脂処理、表面粗面化処理等の公知の易接着性を改良する処理を施しても良いし、帯電防止のために帯電防止層が設けられても良い。
上記基材シートの厚さは特に限定されないが、一般には500μm以下、好ましくは5〜300μm、更に好ましくは10〜200μm程度の厚さを例示することができる。
【0053】

上記転写法で表面保護シートを製造する場合の離型紙としては、基材で例示した合成樹脂シート、紙、布、不織布等を離型処理したものを使用することができる。
離型処理としては、例えば、フッ素系樹脂、パラフィンワックス、モンタンワックス、合成ワックス等のワックス類や、シリコーン等の離型剤を公知のベヒクル例えば、アクリル系樹脂、繊維素系樹脂、ビニル系樹脂等に添加してなる塗料を基材に塗布して該塗料の塗膜を形成したり、離型性の樹脂例えば、フッ素系樹脂、シリコーン、ポリシロキサン、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、電子放射線架橋型の多官能アクリレート、ポリエステル、エポキシ、チタンキレート、ポリイミン等の樹脂を基材に塗布して該樹脂の皮膜を形成したり、前記樹脂をエクストルージョンコートなどで基材上にラミレートし離型層を0.1〜1μm程度の厚さに形成する方法が挙げられる。
【0054】

上記本発明の粘着剤溶液組成物を基材シートへ直接塗工する、又は離型紙上に塗工する場合にはロールコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、コンマコーティング、スクリーン印刷等の慣用の方法により行なうことができる。
【0055】

塗工される粘着剤溶液組成物の厚みは、乾燥厚みで一般には1〜50μm、好ましくは3〜40μm、更に好ましくは10〜30μm程度の厚さを例示することができる。
粘着剤層の厚みが上記上限値を超えると、表面保護フィルムを剥離する際に表面保護フィルムの粘着剤が被着体表面に糊残りするので好ましくない。
また、上記下限値未満であると、表面保護フィルムの被着体に対する接着力が低下し、表面保護フィルムを被着体に貼り合わせた後、被着体及び表面保護フィルムが高温に晒された際に表面保護フィルムの粘着剤層と被着体との間に発泡が起こるので好ましくない。
【0056】

塗工された粘着剤溶液組成物の乾燥は、一般的には50〜130℃で0.5〜5分間、好ましくは70〜120℃で1〜2分間で行われる。
得られた表面保護フィルムは、40℃以下の温度でエージング処理し、架橋反応を充分進めた後使用することが好ましい。
【0057】

本発明の表面保護フィルムを被着体に貼り合せるまで、その粘着剤層を汚染から保護する目的で、粘着剤層の表面に離型紙を積層することができる。
【実施例】
【0058】

以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明の効果を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、実施例及び比較例において用いた試験片の作成、並びに各種の試験方法及び評価方法は以下のとおりである。
【0059】

(1) 試験用表面保護フィルムの作成
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム〔商品名;E5001;東洋紡績(株)製〕上に、乾燥後の塗工量が21g/m2となるように、粘着剤溶液組成物を塗布し、70℃で60秒間熱風循環式乾燥機にて乾燥して粘着剤層を形成して試験用表面保護フィルムを得た。
シリコーン系離型剤で表面処理された厚さ40μmの配向ポリプロピレン剥離フィルム上に上記試験用保護フィルムの粘着剤層面が接するように載置し、加圧ニップロール〔商品名;ラミバッカーLPC1502S;フジプラ(株)製〕を通して圧着して貼り合わせた後、23℃、65%RHで7日間養生を行った。
【0060】

(2) 剥離力
前(1)項により作製した試験用表面保護フィルムを剥離フィルムがついた状態で25mm×150mmにカットしたのち剥離フィルムを剥離し、表面を酢酸エチルにて洗浄処理した偏光板のトリアセチルセルロース面に該表面保護フィルムの粘着層面を重ね、重さ2kg、直径95mm、幅44mmの円筒形のゴムロールにて泡を巻き込まないように該表面保護フィルム積層シート上を2往復させて圧着させ、剥離力測定用の試験サンプルとした。この試験サンプルを23℃、65%RHの条件下で24時間放置してコンディショニング処理した後、低速剥離力を測る場合には剥離速度300mm/min で、高速剥離力を測る場合には剥離速度30m/minで180゜剥離を行い、剥離力を測定した。
【0061】

表面保護フィルムのアセチルセルロース面に対する剥離力は、低速剥離力で5〜100g/25mmが必要であり、好ましくは7〜50g/25mm、更に好ましくは10〜30g/25mmである。
また、高速剥離力は5〜200g/25mmが必要であり、好ましくは10〜150g/25mm、更に好ましくは20〜100g/25mmである。
【0062】

(3)剥離帯電性
前(1)項により作製した試験用表面保護フィルムを剥離フィルムがついた状態で25mm×150mmにカットしたのち剥離フィルムをはがし、表面をエタノールにて洗浄処理した偏光板のトリアセチルセルロース面に該表面保護フィルムの粘着層面を重ね、重さ2kg、直径95mm、幅44mmの円筒形のゴムロールにて泡を巻き込まないように該表面保護フィルムと偏光板からなる積層シート上を2往復させて圧着させ、剥離帯電性測定用の試験サンプルとした。
このサンプルを23℃、65%RHの条件下で24時間放置してコンディショニング処理した後、剥離速度30m/min で180゜剥離を行い、偏光板表面の剥離時の帯電量を春日電機(株)製KSD-0303静電電位測定器を用いて測定した。
剥離帯電性は1.0KV以下が必要であり、 好ましくは0.5KV以下、さらに好ましくは0.3KV以下である。
剥離帯電性が上記下限値以上であれば、被着体が偏光板等の電子物品である場合にその機能に悪影響を与える恐れがある。
【0063】

(4)被着体への汚染性
前(1)項により作製した試験用表面保護フィルムを剥離フィルムがついた状態で25mm×150mmにカットしたのち剥離フィルムを剥離し、表面を酢酸エチルにて洗浄処理した偏光板のトリアセチルセルロース面に該表面保護フィルムの粘着層面を重ね、重さ2kg、直径95mm、幅44mmの円筒形のゴムロールにて泡を巻き込まないように該表面保護フィルム積層シート上を2往復させて圧着させ、剥離力測定用の試験サンプルとした。この試験サンプルを70℃及び60℃、90%RHの条件下で一週間放置後、手剥離し、偏光板の表面を目視により観察し、以下のように評価した。
○ : ブリードがない。
△ : わずかにブリードが認められる。
× : ブリードが存在。
被着体汚染があれば、被着体が偏光板等の電子物品である場合にその機能に悪影響を与える恐れがある。
【0064】

(A)アクリル系共重合体の製造
製造例1
温度計、攪拌機、窒素導入管及び還流冷却器を備えた反応器内に、酢酸エチル30.0重量部を入れ、別の容器にてモノマ組成 2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA) 97.5重量部、4-ヒト゛ロキシフ゛チルアクリレート(4HBA) 2.0重量部、アクリル酸0.5重量部を入れ混合して単量体混合物とし、その中の25.0重量部を反応容器中に加え、次いで該反応容器の空気を窒素ガスで置換した後、重合開始剤としてアゾイソブチロニトリル(AIBN)0.01重量部を添加して、攪拌下に窒素雰囲気中で該反応容器内の混合物温度を71℃に昇温させて初期反応を開始させた。71℃に昇温後約20分後に、還流下で残りの単量体混合物75.0重量部、及び酢酸エチル30.0重量部とAIBN1.25重量部との混合物をそれぞれ約1.5時間で逐次添加して反応させ、更に1.5時間還流状態に温度を維持し反応させた。その後、トルエン25.0重量部にAIBN0.25重量部を溶解させた溶液を60分間かけて還流状態で滴下し、さらに1.5時間反応させた。反応終了後、反応混合物に酢酸エチル96.0重量部を添加して希釈し、固形分35.7重量%のアクリル系共重合体溶液を得た。
【0065】

得られたアクリル系共重合体溶液の粘度は1000mPa・sであり、またアクリル系共重合体は、ガラス転移温度(Tg)約-74.3℃、重量平均分子量(Mw)約53万を有していた。
【0066】

製造例2〜5
単量体組成を表1に示す単量体組成に変更する以外は製造例1と同様にしてアクリル系共重合体溶液を得た。得られたアクリル系共重合体溶液の粘度、固形分、ガラス転移点(Tg)、重量平均分子量(Mw)を表1に示す。


【表1】

【0067】

実施例1
製造例1で得られたアクリル系共重合体溶液278質量部(アクリル共重合体100質量部)に対して酢酸エチル42重量部で希釈した溶液にイオン性液体としてビストリフルオロメタンスルフォニルイミドピリジニウム塩1.0重量部と界面活性剤としてポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンのブロックポリマー(日本油脂株式会社製:商品名プロノン102、分子量1000)1.0重量部を添加し、均一に混合する。その溶液に架橋剤ヘキサメチレンジイソシアネート1.0重量部を添加し、均一に混合して粘着剤溶液組成物を得た。
得られた粘着剤溶液組成物を前述した方法で試験用表面保護フィルムを作成し、前述したテスト方法で各物性を測定した結果を表2に示す。
低速剥離においてはある程度の剥離力を示し、高速剥離においては比較的小さい剥離力を示し、剥離時の剥離帯電量は少ない。
【0068】

実施例2〜6
実施例1で使用した配合条件の代わりに表2に示した各実施例の配合条件を使用する以外は実施例1と同様にして、試験用表面保護フィルムを作成し、前述したテスト方法で各物性を測定した結果を表2に示す。
【0069】

【表2】

【0070】

比較例1
実施例1で使用した製造例1で得られたアクリル共重合体を使用する代わりに、製造例4で得られたガラス転移点(Tg)の高いアクリル共重合体を使用する以外は実施例1と同様にして試験用表面保護フィルムを作成し、前述したテスト方法で各物性を測定した結果を表2に示す。
高速剥離における剥離力が大であり、大面積の物品からの剥離が困難な表面保護フィルムであった。
【0071】

比較例2〜4
実施例1で使用した配合条件の代わりに表2の各比較例の欄に示した配合条件を使用する以外は実施例1と同様にして試験用表面保護フィルムを作成し、前述したテスト方法で各物性を測定した結果を表2に示す。
比較例2で得られた表面保護フィルムの剥離帯電性は低いものの、低速剥離力が小さいために不必要な剥離が起こり、また剥離後の被着体表面にイオン性液体のブリードによる汚染が認められる表面保護フィルムであった。
比較例3及び4で得られた表面保護フィルムは剥離帯電性がかなり高い表面保護フィルムであった。
【産業上の利用可能性】
【0072】

本発明の表面保護フィルムは、ステンレス板やアルミ等の金属板 塗装した金属板や樹脂板、ガラス板等広範囲の材質の物品の表面に対してその表面積の大小にかかわらず表面保護フィルムとして使用することができ、表面保護フィルムをその物品から剥離する時に物品の表面の帯電を抑えるために、異物や塵埃の付着がなく、更にこれら物品の機能の低下を起こすことがないので、ディスプレイ、偏光板、電子基板、ICチップ等の電子部品の表面を保護するのに特に適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移点(Tg)が−80℃〜−35℃のアクリル系共重合体、
該アクリル系共重合体100質量部に対して0.1〜10質量部のイオン性液体、
該アクリル系共重合体100質量部に対して0.01〜10質量部の界面活性剤、
及び該アクリル系共重合体100質量部に対して40〜600質量部の溶剤を含有することを特徴とする粘着剤溶液組成物。
【請求項2】
上記界面活性剤がポリアルキレンオキサイド系ノニオン界面活性剤及びトリアルキルアンモニウムエトサルフェート系カチオン界面活性剤から選ばれた界面活性剤である請求項1に記載の粘着剤溶液組成物。
【請求項3】
上記ポリアルキレンオキサイド系ノニオン界面活性剤がポリオキシエチレン及び/又はポリオキシプロピレンである請求項2に記載の粘着剤溶液組成物。
【請求項4】
上記ポリアルキレンオキサイド系ノニオン界面活性剤がポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのブロックポリマーである請求項2に記載の粘着剤溶液組成物。
【請求項5】
上記イオン性液体の陰イオン部分がフッ素原子を含有する請求項1〜4に記載の粘着剤溶液組成物。
【請求項6】
上記イオン性液体の陰イオン部分がビストリフルオロメタンスルフォニルイミドイオンを有する請求項5に記載の粘着剤溶液組成物。
【請求項7】
上記イオン性液体の陽イオン部分がピリジニウム構造を有する請求項1〜6のいずれかに記載の粘着剤溶液組成物。
【請求項8】
上記アクリル系共重合体を構成する全単量体の合計を100質量部とすると、該アクリル系共重合体が、ヒドロキシル基を側鎖にもつ単量体を1.0〜10質量部その構成成分として含有する請求項1〜7のいずれかに記載の粘着剤溶液組成物。
【請求項9】
ガラス転移点(Tg)が−80℃〜−35℃のアクリル系共重合体、
該アクリル系共重合体100質量部に対して0.1〜10質量部のイオン性液体、
及び該アクリル系共重合体100質量部に対して0.01〜10質量部の界面活性剤、
を含有する粘着層を有することを特徴とする表面保護フィルム。
【請求項10】
上記界面活性剤がポリアルキレンオキサイド系ノニオン界面活性剤及びトリアルキルアンモニウムエトサルフェート系カチオン界面活性剤から選ばれた界面活性剤である請求項9に記載の表面保護フィルム。
【請求項11】
上記ポリアルキレンオキサイド系ノニオン界面活性剤がポリオキシエチレン及び/又はポリオキシプロピレンである請求項10に記載の表面保護フィルム。
【請求項12】
上記ポリアルキレンオキサイド系ノニオン界面活性剤がポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのブロックポリマーである請求項11に記載の表面保護フィルム。
【請求項13】
上記イオン性液体の陰イオン部分がフッ素原子を含有する請求項9〜12に記載の表面保護フィルム。
【請求項14】
上記イオン性液体の陰イオン部分がビストリフルオロメタンスルフォニルイミドイオンを有する請求項12に記載の表面保護フィルム。
【請求項15】
上記イオン性液体の陽イオン部分がピリジニウム構造を有する請求項9〜14のいずれかに記載の表面保護フィルム。
【請求項16】
上記アクリル系共重合体を構成する全単量体の合計を100質量部とすると、該アクリル系共重合体が、ヒドロキシル基を側鎖にもつ単量体を1.0〜10質量部その構成成分として含有する請求項9〜15のいずれかに記載の表面保護フィルム。

【公開番号】特開2007−63298(P2007−63298A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−246935(P2005−246935)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(000004592)日本カーバイド工業株式会社 (165)
【Fターム(参考)】