説明

精米機の搗精装置

【課題】大型構成の精米機にあっても、除糠筒の着脱に際して、抵抗板の開閉伝動系の煩雑な分解調節作業を要することなく、取扱い重量を小さく抑えてメンテナンス作業の際の取扱いを容易化することができる精米機の搗精装置を提供することにある。
【解決手段】精米機の搗精装置は、前面側から着脱可能な除糠筒3と、その排出口3aに、抵抗板4、開閉アーム4a、進退軸6を備えて構成され、上記除糠筒3には開閉アーム4aを一体的に軸支し、この開閉アーム4aと進退軸6とを連結して両者の間には、同進退軸6の前進方向動作の係合当接によって抵抗板4を弾性加圧する閉鎖側係合機構11と、同進退軸6の後退方向動作の係合当接によって抵抗板4を開く開放側係合機構12とを設け、この開放側係合機構12の相互に係合する係合部の一方は、非係合位置に切替え可能な係脱切替部材15によって構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、籾米に搗精圧を加えて精米処理する精米機の搗精装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示すように、金網状の除糠筒前端の排出口を塞ぐように抵抗板を備え、この抵抗板を開閉調節する抵抗板開閉駆動部を除糠筒と一体化した除糠筒ユニットとして構成した精米機の搗精装置が知られている。この搗精装置は、精米機本体に対して抵抗板開閉駆動部が一体的に付帯したまま除糠筒を着脱できるので、除糠筒の目詰まりの清掃や部品交換の際は、抵抗板伝動系の分解組立に伴う圧力設定調節等の煩雑な作業を要することなく、除糠筒ユニットの着脱作業によって復旧することができるので、抵抗板圧力特性を維持して精米稼動を再開することができる。
【特許文献1】特開2004−358428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、大型構成の精米機の場合は、除糠筒そのものは重量が小さいにもかかわらず、抵抗板開閉部を含む一体構成の除糠筒ユニットとしての重量が大きくなるので、着脱作業に支障を来すという問題を招いている。
【0004】
本発明の目的は、大型構成の精米機にあっても、除糠筒の着脱に際して、抵抗板開閉伝動系の煩雑な分解調節を要することなく、取扱い重量を小さく抑えてメンテナンス作業の際の取扱いを容易化することができる精米機の搗精装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、搗精による糠を分離する除糠筒をその軸線方向に機体の前面側から抜き取り可能に備えるとともに、同除糠筒の前面に開口する排出口を開閉する抵抗板機構を備え、この抵抗板機構は、排出口に臨む抵抗板と、この抵抗板を開閉可能に支持する開閉アームと、この開閉アームを介して抵抗板を進退駆動する進退軸とからなる精米機の搗精装置において、上記除糠筒には抵抗板の開閉アームを一体的に軸支し、この開閉アームと進退軸とを連結して両者の間には、同進退軸の前進方向動作の係合当接によって抵抗板を排出口に所定圧力で弾性加圧する閉鎖側係合機構と、同進退軸の後退方向動作の係合当接によって抵抗板を排出口から引き離す開放側係合機構とを設け、この開放側係合機構の相互に係合する係合部の一方は、非係合位置に切替え可能な係脱切替部材によって構成したことを特徴とする。
【0006】
上記開閉アームと進退軸との間には閉鎖側係合機構および開放側係合機構が介設し、その閉鎖側係合機構により、進退軸の前進方向動作で係合当接される開閉アームを介して抵抗板が排出口に弾性加圧されることにより所定の搗精圧が確保され、また、開放側係合機構により、その係脱切替部材が係合位置にある場合は、進退軸の後退動作により抵抗板が排出口から引き離されて排出口が開放され、また、係脱切替部材が非係合位置に切替えられた場合は、進退軸の後退方向についての相互係合がなされないことから、開放側係合機構による係合当接作用を受けることなく進退軸と開閉アームの相互間が分離可能となる。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1の構成において、前記係脱切替部材は、前記進退軸からその側方に突出して前記開閉アームとの係合当接が可能な片持ちレバー状に形成するとともにこれを同進退軸に対して回動可能に軸支し、その回動範囲の開閉アームには、前後方向に貫通して係脱切替部材との係合を回避する貫通部を形成したことを特徴とする。
上記開放側係合機構の相互係合部の一方をなす係脱切替部材は、片持ちレバー状で進退軸からその側方に突出して形成してこれが回動可能に軸支され、開閉アームとの係合位置においては、進退軸の後退方向動作に伴う係合当接により抵抗板の開放側に作用し、また、開閉アームの前後方向に貫通形成した貫通部の位置では、前後方向に透過されて相互間の係合が回避され、このとき、係脱切替部材を進退軸側に残して除糠筒側が分離可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明により以下の効果を奏する。
請求項1の発明は、閉鎖側係合機構により開閉アームを介して抵抗板を弾性加圧することにより所定の搗精圧が確保され、この閉鎖側係合機構と別構成の開放側係合機構に係脱切替部材を設けることにより、その係合位置では進退軸の後退方向動作によって排出口が開放され、また、係脱切替部材を非係合位置に切替えることにより、進退軸の後退方向についての係合当接作用を受けることなく進退軸と開閉アームの相互間が分離可能となる。
【0009】
このように、開放側係合機構について非係合位置への切替え操作により、抵抗板機構の進退軸を含む駆動側から分離して除糠筒側を抜き取ることができるので、大型構成の精米機にあっても、除糠筒のメンテナンスの際の取扱い重量が最小限に抑えられるとともに、メンテナンス後の除糠筒側の再装着操作と係脱切替部材の復旧操作とにより、開閉アームと進退軸との間の係合関係を容易に復旧できることから、搗精圧設定の変動を招くことなく簡易な操作で元通りの精米運転を再開することができる。
【0010】
請求項2の発明は、進退軸から突出して回動可能な片持ちレバー状に係脱切替部材を構成することにより、係合位置においては排出口が開放可能となり、また、開閉アームの前後方向に貫通形成した貫通部の位置である非係合位置に係脱切替部材を回動操作することによって相互間の係合が回避されることから、係脱切替部材の簡易な回動操作により、係脱切替部材と進退軸およびその駆動部を精米機本体側に残した状態で、除糠筒側の着脱が可能となる。したがって、簡易な構成の開放側係合機構により、係脱切替部材の保護を確保したうえで、除糠筒のメンテナンスをすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
精米機の搗精装置は、その縦断側面図を図1に示し、また、同図のA矢視による前面カバーの部分破断による部分図を図2に示すように、精米機上部の玄米投入部を構成する玄米ホッパ1と、その玄米を受けて精白する搗精ロール2と、その周りを囲んで精米を案内するとともに搗精による分離糠を吸い出すための多孔の筒状材3fからなる除糠筒3と、この除糠筒3の前端に開口する排出口3aを開閉する抵抗板4による抵抗板機構等を備え、これに前面カバー3dを取付けて構成される。
【0012】
詳細には、搗精ロール2は、精米機の背面位置に備えた図示せぬ駆動装置と連結して回転駆動される。除糠筒3は、下方に構成された吸引ダクト5aに臨んで配置されるとともに、搗精部主枠を構成するリング状の支持ベース5b、5cに嵌合するようにその前面から軸線方向に沿って抜き挿し可能に構成される。また、抵抗板4は、開閉可能に支持する開閉アーム4aと、この開閉アーム4aと連結して抵抗板4を開閉するように進退動作する進退軸6と、その進退駆動部7とからなる抵抗板機構を構成する。
【0013】
抵抗板機構の開閉アーム4aは、抵抗板機構の要部拡大による縦断側面図を図3に示すように、排出口3aを形成した除糠筒3の前端部に鍔状に形成した前板3cに支軸3eを設けて軸支する。開閉アーム4aの上端部に貫通するように進退軸6を配置して両者を連結し、その連結部には、進退軸6の前進方向動作の係合当接によって抵抗板4を排出口3aに弾性加圧する閉鎖側係合機構11と、進退軸6の後退方向動作の係合当接によって抵抗板4を排出口3aから引き離す開放側係合機構12とを個別に形成する。これら閉鎖側係合機構11と開放側係合機構12との間には、個別の係合動作を確保しつつ、次に述べる閉鎖側係合機構11による抵抗板4の弾性加圧力の調整幅を確保するために所定の距離Bをとる。
【0014】
閉鎖側係合機構11は、開閉アーム4aと進退軸6との間でそのいずれかに弾発部を設け、この弾発部を介して開閉アーム4aを押し出すように互いに係合可能に構成する。弾発部を進退軸6に構成する形態では、進退軸6にスプリングホルダ6aを形成、このスプリングホルダ6aにコイルスプリング13を取付け、このコイルスプリング13によって開閉アーム4aの背面側から係合当接可能にスライドリング14を設けて構成する。このスライドリング14に作用するコイルスプリング13の弾発力は、進退軸6の進出位置に応じて調節することができるので、抵抗板4を所定の圧力で排出口3aに弾性加圧することができる。
【0015】
開放側係合機構12は、開閉アーム4aを引き戻すように互いに係合可能に構成し、その両係合部の一方を非係合位置に切替え動作可能な係脱切替部材15を設ける。この係脱切替部材15は、相互に係合する係合部をそれぞれの側から分離することなしに係合回避できるように構成することにより、係合回避状態における取扱いを簡易化することができる。
【0016】
係脱切替部材15を進退軸6の側に構成する例については、進退軸6からその側方に突出して開閉アーム4aと係合当接可能な片持ちレバーによって構成し、これを進退軸6の先端の突出軸6aに回動可能に波形座金16を介して軸支する。その係合相手の開閉アーム4aには、係脱切替部材15の係合範囲の一部について相互の係合を回避するために係脱切替部材15の透過動作を許容する前後方向の貫通部4bを形成する。この貫通部4bの位置まで係脱切替部材15を回動操作C(図2参照)することにより、開閉アーム4aと進退軸6との間の係合を回避することができ、また、可動部である係脱切替部材15を搗精部側に残して除糠筒3の側を取り出すことができる。
【0017】
また、上記係脱切替部材15は、実施構成例のように横長部材を中央支持して2つの片持ちレバーを左右両側方に一体に形成することによって安定係合を確保することができ、その両端が係合可能な縦長のスリット状の切欠によって貫通部4bを形成することにより、着脱操作性を向上することができる。
【0018】
上述の如く構成された搗精装置は、進退駆動部7の制御によって進退軸6が前進動作されると、閉鎖側係合機構11のスライドリング14により係合当接される開閉アーム4aを介して抵抗板4が排出口3aに弾性加圧されることから、コイルスプリング13を介して進退軸6の前進位置に応じた搗精圧が確保される。
【0019】
開放側係合機構12の係脱切替部材15が係合位置にある場合は、図4の残米排出時の縦断側面図に示すように、進退軸6の後退方向動作により係脱切替部材15が開閉アーム4aと係合当接してから更に所定距離Dの後退動作により、抵抗板4が排出口3aを開放して除糠筒3の内部の残留米を排出することができる。また、開閉アーム4aの貫通部4bの角度位置に係脱切替部材15を回動することにより、進退軸6の後退方向についての相互係合が回避されることから、開放側係合機構12の作用を受けることなく進退軸6と開閉アーム4aの相互間が分離可能となる。
【0020】
したがって、除糠筒の縦断側面図を図5に示すように、開閉アーム4aを含む除糠筒3の側を搗精部の支持ベース5b、5cから抜き取り、多孔筒部3fの目詰まりの清掃や部品交換によってメンテナンスを行った後、逆動作によってそのまま搗精部に装着することができる。
【0021】
このように、開放側係合機構12についての係合待避操作により進退軸6を含む駆動側から分離して除糠筒3の側の抜き取りが可能となるので、大型構成の精米機にあっても、除糠筒3のメンテナンスの際の取扱い重量が最小限に抑えられるとともに、メンテナンス後の除糠筒3の側の再装着操作と係脱切替部材15の係合位置への回動操作とにより、開閉アーム4aと進退軸6との間の係合関係を容易に復旧できることから、搗精設定の変動を招くことなく簡易な操作で元通りの精米運転を再開することができる。
【0022】
また、係脱切替部材15は、進退軸6から突出する片持ちレバー状として進退軸6に回動可能に軸支し、これを開閉アーム4aに貫通形成した貫通部4bの位置に回動することにより、相互間の係合当接なしに透過可能となることから、進退軸6と係脱切替部材15を精米機本体側に残した状態で開閉アーム4aを含む除糠筒3の側の着脱が可能となる。したがって、簡易な構成の開放側係合機構12により、係脱切替部材15の保護を確保したうえで、除糠筒3のメンテナンス作業をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】搗精装置の縦断側面図
【図2】図1におけるA矢視による前面カバーの一部破断による部分図
【図3】抵抗板機構の要部拡大による縦断側面図
【図4】残米排出時の搗精装置の縦断側面図
【図5】除糠筒部の縦断側面図
【符号の説明】
【0024】
3 除糠筒
3a 排出口
3c 前板
3e 支軸
4 抵抗板
4a 開閉アーム
4b 貫通部
5b 支持ベース
5c 支持ベース
6 進退軸
6a 突出軸
7 進退駆動部
11 閉鎖側係合機構
12 開放側係合機構
13 コイルスプリング
14 スライドリング
15 係脱切替部材
16 波形座金
C 回動角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搗精による糠を分離する除糠筒(3)をその軸線方向に機体の前面側から抜き取り可能に備えるとともに、同除糠筒(3)の前面に開口する排出口(3a)を開閉する抵抗板機構を備え、この抵抗板機構は、排出口(3a)に臨む抵抗板(4)と、この抵抗板(4)を開閉可能に支持する開閉アーム(4a)と、この開閉アーム(4a)を介して抵抗板(4)を進退駆動する進退軸(6)とからなる精米機の搗精装置において、
上記除糠筒(3)には抵抗板(4)の開閉アーム(4a)を一体的に軸支し、この開閉アーム(4a)と進退軸(6)とを連結して両者の間には、同進退軸(6)の前進方向動作の係合当接によって抵抗板(4)を排出口(3a)に所定圧力で弾性加圧する閉鎖側係合機構(11)と、同進退軸(6)の後退方向動作の係合当接によって抵抗板(4)を排出口(3a)から引き離す開放側係合機構(12)とを設け、この開放側係合機構(12)の相互に係合する係合部の一方は、非係合位置に切替え可能な係脱切替部材(15)によって構成したことを特徴とする精米機の搗精装置。
【請求項2】
前記係脱切替部材(15)は、前記進退軸(6)からその側方に突出して前記開閉アーム(4a)との係合当接が可能な片持ちレバー状に形成するとともにこれを同進退軸(6)に対して回動可能に軸支し、その回動範囲の開閉アーム(4a)には、前後方向に貫通して係脱切替部材(15)との係合を回避する貫通部(4b)を形成したことを特徴とする請求項1記載の精米機の搗精装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−220086(P2009−220086A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−70640(P2008−70640)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000113919)マルマス機械株式会社 (10)
【Fターム(参考)】