説明

精製茶抽出物の製造方法

【課題】酸性飲料に添加する際にオリや沈殿により外観を損ねることなく、しかもさまざまな有益な効果を発揮しうる、茶の抽出液から分取した重合カテキンを多く含む茶抽出物を提供する。
【解決手段】茶の抽出液から分取した、含有される重合カテキンの非重合カテキンに対する重量比率が高められた重合カテキン抽出物を、水性液の形態で酸性域にpH調整し、この酸性化された抽出物の水性液から水不溶性固形分を除去する精製茶抽出物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性飲料に添加する際にオリや沈殿により外観を損ねることなく、しかもさまざまな有益な効果を発揮しうる、茶の抽出液から分取した重合カテキンを多く含む茶抽出物を製造する方法、及び当該抽出物を添加した、オリや沈殿を生じない、高品質の酸性飲料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ウーロン茶の効果としては、脂質改善作用などが報告されている。しかしながら、この作用はウーロン茶の大量飲用で認められたものでしかなく、日常生活のなかでそのような大量飲用を続けていくことは難しい。また単純にウーロン茶の濃度を濃くすると、苦味、渋味の増加及びカフェインの増量により、飲料としては適さなくなる。特許文献1には、この課題を解決するため、ウーロン茶に含まれる重合カテキンを多く含む茶抽出物を分取して飲食品に使用する方法が開発されたことが記載されている。当該文献においては、ウーロン茶を活性炭等の吸着剤カラムに供して非重合カテキンを選択的に除去し、非吸着画分として回収される茶抽出物は、脂肪吸収に必要なリパーゼ、特に膵リパーゼを阻害することが記載されている。しかもこの茶抽出物は、渋味や苦味を生じさせる非重合カテキンや香味を損なうカフェインを含まないか若しくは僅かしか含まない。このため、この抽出物を飲食品に添加することにより、飲食品としての香味を損なうことなく、中性脂肪の上昇を抑える効果が期待でき、肥満の予防につながる。食事性脂肪の吸収を抑えるためには、食事とともに摂取することが望ましく、茶から得られた有効成分を強化した飲料は非常に意義が大きい。
【0003】
このような観点から本発明者らは、炭酸飲料、スポーツドリンク、レモンティーのようなフレーバーティー等の酸性飲料においても、重合カテキンを多く含む茶抽出物を配合して新たな機能を付加することを試みた。しかしながらウーロン茶に含まれる重合カテキンを多く含む茶抽出物を酸性状態にすると、白濁(濁りやオリ)を発生しやすくなる傾向があることが明らかとなった。このような白濁は、該茶抽出物を添加した酸性飲料の外観を損ねる恐れがある。
【0004】
従来の、缶やプラスチック容器(PETボトル等)等の密封容器に充填して長期間流通・販売される茶飲料、特に緑茶飲料でも、保存中に含有成分であるタンニン、カフェイン、アミノ酸等の低分子成分や、セルロース、ヘミセルロース、ペクチンなどの高分子成分が会合して白色の固形物を形成し、これが浮遊したり、沈殿したりして製品の外観を損ないやすい。そこで上記白色固形物の析出を防止する方法として、高速遠心分離法、タンナーゼ処理法、カルシウム等の無機塩の添加法等が知られている。
【0005】
しかしながらいずれの方法においても、茶に含まれる重合カテキンを多く含む茶抽出物を酸性飲料に添加することによって沈殿が生じること、また該沈殿をいかに回避するかについては開示されていない。白濁化のメカニズムは複雑であり、従来知られている茶抽出物に対する沈殿防止の方法が、特定の成分、特に重合カテキンを多く含有する茶抽出物を酸性飲料に添加した際に生じる沈殿に対して有効であるかどうかは不明である。
【特許文献1】WO2005/077384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、酸性飲料に添加する際にオリや沈殿により外観を損ねることなく、しかもさまざまな有益な効果を発揮しうる、茶の抽出液から分取した重合カテキンを多く含む茶抽出物を簡便に製造すること、並びに当該抽出物が添加され、オリや沈殿を生じない高品質の酸性飲料を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、さまざまな有益な効果を発揮しうるよう茶抽出液由来の重合カテキンを多く含む茶抽出物を添加した酸性飲料を製造するに際し、該茶抽出物を添加してもオリや沈殿を生じない方法について鋭意検討した結果、茶の抽出液から分取された、重合カテキンを多く含む茶抽出物の水性液を予め酸性にし、酸性条件で沈殿しやすい成分を除去し、得られた精製抽出物を酸性飲料に添加すると、オリや沈殿の発生しない酸性飲料が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
従って、本発明は、以下のものに関する。
1.茶の抽出液から分取した、含有される重合カテキンの非重合カテキンに対する重量比率が高められた重合カテキン抽出物を、水性液の形態で酸性域にpH調整し、この酸性化された抽出物の水性液から水不溶性固形分を除去することを特徴とする、精製茶抽出物の製造方法;
2.前記重合カテキン抽出物が、茶の抽出液を、50℃以上の液温で吸着剤と接触させて非吸着画分として得られる水性液である1記載の方法;
3.前記抽出液の抽出原料となる茶葉が、発酵茶葉又は半発酵茶葉である、1又は2に記載の方法;
4.前記抽出液の抽出原料となる茶葉が、ウーロン茶葉である1又は2に記載の方法;
5.前記酸性域が、pH5.0以下である、1〜4のいずれか1項記載の方法;
6.前記水不溶性固形分の除去が、酸性化された重合カテキン抽出物の水性液を遠心分離することにより行われる、1〜5のいずれか1項記載の方法;
7.1〜6のいずれか1項記載の製造方法により得られた精製茶抽出物;
8.7記載の精製茶抽出物を配合してなる容器詰酸性飲料;
9.重合カテキンの含有量が重量基準で68〜1000ppmである、8記載の容器詰酸性飲料;
10.pHが5.0以下である、8又は9記載の容器詰酸性飲料。
【発明の効果】
【0009】
本発明の抽出物は、予め酸性条件で沈殿しやすい重合カテキン等の成分を一部除去しているため、酸性飲料に添加してもオリや沈殿を生じず外観を損ねることはない。従って、ビン、PETボトル等の透明容器に詰めるのに特に好適な酸性飲料を提供することができる。
【0010】
さらに、本発明の抽出物は、茶由来の苦味・渋味を生じる成分が低減され、重合カテキンを多く含むため、香味を損なうことなくさまざまな有益な効果を発揮しうる酸性飲料を製造することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明において、精製処理の対象となる茶抽出物(重合カテキン抽出物)は、茶の抽出液から分画処理等により分取され、含有される非重合カテキンに対する重合カテキンの重量比率は、原料である抽出液と比較して高められている。好ましくは、含有される重合カテキンの重量は非重合カテキンの少なくとも4倍、より好ましくは少なくとも8倍、さらに好ましくは少なくとも12倍である。
【0012】
本明細書における「重合カテキン」は、以下の条件のHPLCにより分析される成分で、テアフラビン(栗田リサーチセンター製)と同じ溶出時間(参考溶出時間:24min.)のピークとなる成分である(図1参照)。
【0013】
HPLCの条件:
・カラム:TSK-gel ODS-80TsQA(4.6mmφx150mm、東ソー株式会社)
・移動相:A液 水:アセトニトリル:トリフルオロ酢酸=900:100:0.5
B液 水:アセトニトリル:トリフルオロ酢酸=200:800:0.5
・流速:1.0ml/min
・カラム温度:40℃
・グラディエント条件;分析開始から5分後まではB液0%、
5分から11分まででB液8%、
11分から21分まででB液10%、
21分から22分まででB液100%、
22分から30分まで100%保持、
30分から31分までで0%
・検出:A280nm (データ採取時間は30分)、ピーク面積で定量。
・注入量:10μL
・標準物質:ウーロンホモビスフラバンB(略記:OHBF-B)
上記の条件で分析された重合カテキンの典型的なクロマトグラムを、図1に示す。
【0014】
重合カテキンの量は、標準物質としてOHBF−Bを用い、検量線を作成することにより求められる。なお、標準物質であるOHBF−Bは、例えば、Chem. Pharm. Bull 37(12), 3255-3563(1989)に記載の方法や特開2005−336117号公報の実施例3の方法に従って合成したもの(好ましくは純度98%以上の純度まで精製したもの) 、茶葉より単離したものなどを用いることができる。
【0015】
この重合カテキンとしては、非重合のカテキン類((+)−カテキン、(−)−エピカテキン、(+)−ガロカテキン、(−)−エピガロカテキン、(−)−カテキンガレート、(−)−エピカテキンガレート、(−)−ガロカテキンガレート、(−)−エピガロカテキンガレート)が、茶由来酵素、酵素、光等により複数個連結した構造を持つものが例示でき、具体的にはテアルビジン等の慣用名で呼ばれている重合ポリフェノール、式(1)のエピガロカテキンガレート二量体、
【0016】
【化1】

【0017】
式(2)のエピガロカテキンガレート三量体、
【0018】
【化2】

【0019】
式(3)のエピガロカテキンの二量体、
【0020】
【化3】

【0021】
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立してHまたはガロイル基である。)
式(4)のエピガロカテキンの三量体
【0022】
【化4】

【0023】
(式中、R3、R4およびR5は、それぞれ独立してHまたはガロイル基である。)
式(5)のウーロンテアニン-3'-O-ガレート
【0024】
【化5】

【0025】
等の重合体が挙げられる。
尚、非重合カテキンとは、カテキン類((+)−カテキン、(−)−エピカテキン、(+)−ガロカテキン、(−)−エピガロカテキン、(−)−カテキンガレート、(−)−エピカテキンガレート、(−)−ガロカテキンガレート、(−)−エピガロカテキンガレート)の重合していない単量体のものをいう。
【0026】
上記HPLC条件下で、非重合カテキンはそれぞれ別々のピークとして検出され、かつ重合カテキンのピークとは重ならない。従って、重合カテキンの非重合カテキンに対する重量比率は、上記条件下でのHPLC測定により得られたそれぞれの測定値に基づいて得られる含有重量(検量線により得られる)を比較することにより、即ち重合カテキンの含量を、各々の非重合カテキンの含量の総和で除すことにより求めることができる。
【0027】
本明細書における「茶の抽出液」とは、茶葉から水やC1〜C3アルコールを含む有機溶媒を用いて抽出された少なくとも重合カテキンを含有する抽出液である。原料となる茶葉は、少なくとも重合カテキンを含有する抽出液が得られるものであれば特に限定されないが、ウーロン茶等の半発酵茶や紅茶、プーアル茶等の発酵茶あるいは緑茶の茶葉が好ましく、特に重合が進んだ半発酵茶および発酵茶の茶葉が好ましい。ウーロン茶は中国福建省、広東省東部および台湾で製造される部分発酵を行った半発酵茶に分類され、さらに発酵の非常に少ないものから紅茶に近い発酵を行ったものまでさまざまな種類がある。本発明においてはいずれの種類のウーロン茶の茶葉であっても使用することができ、また単独種類の茶葉だけを用いてもよいし、種々の茶葉を人為的にブレンドして使用してもよい。また抽出の方法は、水等を用いて少なくとも重合カテキンを含有する抽出液が得られる方法であれば、いずれの方法であってもよいが、水を用いる抽出法がより好ましい。
【0028】
例えばウーロン茶の葉を必要に応じて細切し、水により適宜抽出する。この抽出の際の水の温度は特に限定されるものではないが、短時間で抽出することで抽出効率を向上させるためには、50〜99℃、さらには80〜99℃であることが好ましい。抽出に使用する水または水溶液は、微アルカリ性にするため、重曹を添加して用いてもよい。重曹は無添加ないし飽和状態までの任意の濃度で添加してよい。例えば温水1Lあたり1.0〜2.0gの重曹を添加してよく、またpH8.0〜8.5、好ましくは約8.2となる量の重曹を添加してもよい。重曹の代わりに、安全性の高い他の弱塩基性物質を用いることもできる。抽出終了後は、必要に応じてすぐに茶葉の分離と濾過を行って透明度の高い抽出液を得てもよい。茶葉の分離のためには、スクリューデカンターを使用したり、ステンレス金網での穏やかな方法で分離処理をした後に遠心分離機を用いて微細な成分を除去することができる。
【0029】
抽出液の濃度は、例えばウーロン茶抽出液を吸着剤に接触させる場合、好ましくはBrix2.0〜6.0、より好ましくはBrix約3.7とするのがよい。
本発明において、精製処理の対象となる重合カテキン抽出物を分取する方法は、上記茶の抽出液から重合カテキンを選択的に濃縮し、含有される重合カテキンの非重合カテキンに対する重量比率を高めることができるものであれば(好ましくは、重合カテキンの含有重量が非重合カテキンの含有重量の少なくとも4倍、より好ましくは少なくとも8倍、さらに好ましくは少なくとも12倍)、いずれの方法であってもよい。このような方法は、例えば特許文献1に記載されている。
【0030】
即ち、茶の抽出液を活性炭及び吸着樹脂から選択される吸着剤と、50℃以上の液温で接触させることにより非重合カテキンを選択的に除去し、目的とする茶抽出物(重合カテキン抽出物)を分取することができる。
【0031】
吸着剤はカラム式で使用すると都合がよく、カラム処理を行う場合、吸着剤の粒径の選択も重要な要因となる。カラムを使用する際の圧力損失を少なくするためには、粒径は大きい方がよいが、分離を効率よく行うために吸着剤の吸着表面積を確保するために粒径は小さい方が好ましい。使用する吸着剤に応じて、最適の粒径を選択することは、当業者が日常的な技術範囲内で行うことができる。粒状の活性炭の場合には、32〜60メッシュの大きさのものが特に好ましい。粒状活性炭の代わりに合成吸着樹脂、例えばポリエチレンを原材料とするものを用いてもよい。市販されているものでは三菱化成のセパビーズSP825(平均細孔径57.4A)、SP850(平均細孔径38.1A)などを好適に用いることができる。吸着剤の使用量は、非重合カテキンとの分離を効率的に行うためには多い方が望ましい。また茶の抽出液と吸着剤との接触時間は、非重合カテキンが吸着剤に吸着されるために十分な時間であるかぎり特に限定されない。カラムを用いて吸着を行う場合、目安としてSV=1〜6、好ましくはSV=約3の流速で行うことができる。
【0032】
このように茶の抽出液を活性炭等の吸着剤カラムに供することにより、非吸着画分として目的とする重合カテキン抽出物の液が回収される。この抽出物の液は、このまま次のpH調整に付してもよいが、その前に必要に応じて濃縮してもよいし、乾固させて保存してもよい。
【0033】
本発明においては、上記で得られた抽出物の水性液のpHを酸性域に調整する。当該抽出物が濃縮物や乾燥物である場合には、適宜、水等の水性溶媒(例えば、C1〜C3アルコール水溶液が含まれる)、好ましくは水で希釈又は溶解してから用いる。重合カテキン抽出物の水性液中の重合カテキンの濃度としては、水不溶性固形分を析出させる濃度であれば特に制限されず、後に、有益な効果を発揮しうる量の重合カテキンを酸性飲料に配合することを考慮して調製することが好ましい。
【0034】
酸性域へのpH調整は、例えば重合カテキン抽出物の溶液に酸性物質を添加することによって行うことができる。酸性物質としては、クエン酸、アスコルビン酸、乳酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、酢酸、グルコン酸、コハク酸、プロピオン酸、アジピン酸、塩酸、リン酸、又はこれらの塩、あるいは天然成分から抽出した果汁類を単独で又は複数組み合わせて使用することができる。なかでも、クエン酸およびリン酸の少なくともいずれか一方を使用することが好ましい。酸性物質は、直接、あるいは予め水に溶解して重合カテキン抽出物の液に添加することができるが、最終製品である酸性飲料に用いる酸性物質を、最終製品のpHと同等あるいは低くなるように添加することが好ましい。
【0035】
重合カテキン抽出物のpHは、具体的には5.0以下、好ましくは4.6未満、より好ましくは4.0以下、さらに好ましくは3.7以下に調整する。この際、精製茶抽出物を配合して製造する容器詰酸性飲料(最終製品)のpHと同じかこれよりも低いpH条件にて、重合カテキン抽出物の溶液を処理することが望ましい。
【0036】
次に、上記のように調製された酸性化抽出物水性液において析出する水不溶性固形分を除去する。水不溶性固形分の除去は、遠心分離やろ過等によって行うことができる。沈殿をより確実に防止するため、酸性化抽出物の水性液は、常温の状態で、好ましくは10℃以下に冷却して、遠心分離等の除去処理を行うとよい。結果として、精製茶抽出物が得られる。
【0037】
得られた精製茶抽出物を他の成分と混合して容器詰酸性飲料が製造される。本発明の容器詰酸性飲料において、重合カテキンの含有量は、重合カテキンの有益な効果を一回の飲用で発揮させる上で、68ppm以上、さらには100ppm以上であることが好ましい。例えば血中中性脂肪の上昇を抑制する効果を発揮させることを目的とするならば、重合カテキンを350mlの容器詰め飲料であれば約160ppm以上、500mlの容器詰め飲料であれば約110ppm以上とすることが好ましい。重合カテキンの含有量の上限は特に限定されないが、酸性飲料の香味等の観点から、1000ppm以下であることが好ましい。尚、本明細書におけるppmとは、特に規定しない限り重量基準(重量/重量)のppmを意味する。
【0038】
本発明の酸性飲料とは、液性が酸性領域にある飲料のことであるが、なかでも、pHが、5.0以下のもの、さらには4.6未満のもの、さらには4.0以下のもの、さらには2.5〜3.7のものが好ましい。具体的には、各種天然果汁、野菜汁を使用した果実飲料や野菜飲料、酸味をつけたニアウォーター、スポーツ飲料、アイソトニック飲料、乳酸菌飲料、レモンティーのようなフレーバーティーなどが含まれる。また酸性飲料は、これらの各種飲料に炭酸を付与したものであってもよい。またコーラやラムネ、ソーダ等の炭酸飲料であってもよい。
【0039】
本発明の酸性飲料は、砂糖、果糖、ショ糖、パラチノース、トレハロース、ラクトース等の糖質、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、還元水飴、還元麦芽糖水飴等の糖アルコール類、スクラロース、ステビア、アスパルテーム等の甘味料、レモン、ライム、オレンジ等からのシトラス油、オレンジ油、ハーブエキス等の香料、酒石酸、りんご酸、酢酸、リン酸、L−アスコルビン酸などの有機酸酸味料、着色剤、さらには、ビタミンA、ビタミンB類、ビタミンD等のビタミン類、食塩、酸化防止剤、各種エステル類、乳化剤、保存料、調味料、ガム、乳化剤、油、アミノ酸、野菜エキス類、花蜜エキス類、pH調整剤、品質安定剤等を含有していてもよい。また、果汁入りの酸性飲料とする場合には、みかん、バレンシオレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツ、カボス、グレープ、アップル、なし、もも、あんず、うめ、バナナ、パイナップル、イチゴ、メロン、パッションフルーツ、プルーンの果汁を含有していてもよい。
【0040】
本発明の容器詰酸性飲料に使用される容器は、一般の飲料と同様にポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶等の通常の形態で提供することができる。ここでいう容器詰酸性飲料とは希釈せずに飲用できるものをいう。
【0041】
本発明の容器詰酸性飲料は、例えば、金属缶のように容器に充填後、加熱殺菌できる場合にあっては食品衛生法に定められた殺菌条件で製造されるが、PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、あらかじめ上記と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換器等で高温短時間殺菌後、一定の温度迄冷却して容器に充填する等の方法が採用される。また無菌下で、充填された容器に別の成分を配合して充填してもよい。更に、中性下で加熱殺菌後、無菌下でpHを酸性に戻す等の操作も可能である。殺菌処理としては、高温短時間殺菌(UHT殺菌)が好ましい。
【実施例】
【0042】
以下、本発明について、実施例をあげて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
重合カテキン量の測定
本実施例においては、試料中の重合カテキン(以下、「茶重合ポリフェノール:TPP」とも記載する)量を以下のようにHPLCで分析・定量した。
【0043】
HPLCの条件:
・カラム:TSK-gel ODS-80TsQA(4.6mmφx150mm、東ソー株式会社)
・移動相:A液 水:アセトニトリル:トリフルオロ酢酸=900:100:0.5
B液 水:アセトニトリル:トリフルオロ酢酸=200:800:0.5
・流速:1.0ml/min
・カラム温度:40℃
・グラディエント条件;分析開始から5分後まではB液の割合を0%に保持、
5分から11分まででB液の割合を8%へ、
11分から21分まででB液の割合を10%へ、
21分から22分まででB液の割合を100%へ、
22分から30分までB液の割合を100%に保持、
30分から31分まででB液の割合を0%へ。
・検出:A280nm
・注入量:10μL
・標準物質:ウーロンホモビスフラバンB(略記:OHBF-B)
・TPPのリテンションタイム:約25分(これは、テアフラビンのピークのリテンションタイムと一致する。
【0044】
標準物質であるOHBF-Bを正確に秤量し、100、200、500μg/ml(ppm)の標準物質の50%CH3CN/水溶液を作成し、原点通過の3点検量で定量する。OHBF-Bは、特許(特開2005-336117の実施例3)の方法に従い合成し純度98%以上の純度まで精製した物を用いる。
【0045】
リパーゼ阻害活性の測定
96穴平底プレートの各ウェルにサンプルを25μl、緩衝液(13mM Tris-HClバッファー(pH8.0、150mM NaCl、1.36mM CaCl2を含む))50μl、4−メチルウンベリフェロンオレイン酸エステル(シグマ)を25μl(終濃度100μM)添加し、30分間室温で放置した。その後リパーゼ(ブタ膵リパーゼ、シグマ)を各ウェルに50μl(最終濃度100U/ml)添加し反応を開始した。30分後0.1Mクエン酸バッファー(pH4.2)を各ウェルに100μl添加することで反応を停止した。反応によって生成した4-メチルウンベリフェロンの蛍光強度(励起波長355nm、蛍光波長460nm)を蛍光プレートリーダー(Labsystems社Fluoroskan Asent CF)を用い測定した。コントロールとしてサンプルの代わりに水を用いたもの、ブランクとしてサンプルの代わりに水、リパーゼの代わりにバッファーを用いたものを用い、下記式を用いてリパーゼ阻害活性を算出した。
リパーゼ阻害活性(%)=100-(A-B)/(C-B)×100
A:サンプルの蛍光強度、B:ブランクの蛍光強度、C :コントロールの蛍光強度
リパーゼ阻害活性に関しては、総ポリフェノールの濃度を基準にIC50を求めた。
【0046】
製造例1
0.15%重曹液(95℃)で600kgのウーロン茶葉を抽出し、抽出液約7000kgを得た。液温を60-65℃に保ち、400kgの粒状活性炭(クラレ社製GW-H32/60)に通し、非重合カテキン、カフェインを除去した。この通過液を減圧濃縮し、Brix10以上のウーロン茶濃縮エキス(以下、「エキスA」と記載する)約900kgを得た。得られたエキスA中の重合カテキン(TPP)の含量を測定したところ、12000ppmであった。また、上記重合カテキンのHPLC分析で得られた非重合カテキンのピークについて、それぞれの非重合カテキンの純品を標準物質として定量しその総和を求めたところ、非重合カテキンの含量は800ppmであった。
【0047】
実施例1
製造例1で製造したエキスA18gにイオン交換水150gを加え、エキスA希釈液とした。エキスA希釈液を75%リン酸でpHを2.5、3又は3.5に調整し、遠心分離(6500rpm、5分)を行った。各液の遠心分離後の上清25g又は50gにイオン交換水を180g加え、再度75%リン酸を用いてpHを遠心分離の前の値(即ち、2.5、3又は3.5)に戻した。それぞれを250mlにメスアップした後、殺菌(85℃、10分間)し、3日間4℃で保管した後、沈殿の有無を目視にて確認した。また重合カテキン(TPP)の量と、リパーゼ阻害活性を測定した。結果を以下の表1に示す。
【0048】
比較例1
製造例1で製造したエキスA18gにイオン交換水150gを加え、エキスA希釈液とした。エキスA希釈液50gにイオン交換水を180g加え、75%リン酸でpH2.5、3、3.5に調整した。リン酸を加えない中性のものはpH6.3だった。それぞれを250mlにメスアップした後、殺菌(85℃、10分間)し、3日間4℃で保管した後、沈殿の有無を目視にて確認した。また重合カテキン(TPP)の量と、リパーゼ阻害活性を測定した。結果を表1に示す。
【0049】
比較例のpH3.5以下のサンプルは、沈殿が発生してしまったため、TPP量が測定できなかった。
【0050】
【表1】

【0051】
表1から明らかな通り、酸性下、特にpH3.5以下で不溶性固形物が除去された本発明の飲料は、全て沈殿が抑制された。それに対し、酸性下で不溶性固形物が除去されなかった比較例のサンプルは、酸性のサンプルで沈殿が生じた。したがって、本発明により、沈殿などを生じることなく、TPPを含有する酸性飲料を製造できることが明らかとなった。
【0052】
また、本発明の精製茶抽出物においては、リパーゼ阻害活性が殆ど低下していなかった。この点も、本発明の利点である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、重合カテキンのHPLCクロマトグラムである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶の抽出液から分取した、含有される重合カテキンの非重合カテキンに対する重量比率が高められた重合カテキン抽出物を、水性液の形態で酸性域にpH調整し、この酸性化された抽出物の水性液から水不溶性固形分を除去することを特徴とする、精製茶抽出物の製造方法。
【請求項2】
前記重合カテキン抽出物が、茶の抽出液を、50℃以上の液温で吸着剤と接触させて非吸着画分として得られる水性液である請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記抽出液の抽出原料となる茶葉が、発酵茶葉又は半発酵茶葉である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記抽出液の抽出原料となる茶葉が、ウーロン茶葉である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記酸性域が、pH5.0以下である、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記水不溶性固形分の除去が、酸性化された重合カテキン抽出物の水性液を遠心分離することにより行われる、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載の製造方法により得られた精製茶抽出物。
【請求項8】
請求項7記載の精製茶抽出物を配合してなる容器詰酸性飲料。
【請求項9】
重合カテキンの含有量が重量基準で68〜1000ppmである、請求項8記載の容器詰酸性飲料。
【請求項10】
pHが5.0以下である、請求項8又は9記載の容器詰酸性飲料。

【図1】
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【公開番号】特開2009−65875(P2009−65875A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235969(P2007−235969)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000001904)サントリー株式会社 (319)
【Fターム(参考)】