説明

紐靴の止め具および紐靴の止め具を備えた紐靴

【課題】 紐靴を容易に固定しなおかつ個体差に応じて重心を調整できるような靴紐の固定具を提供する。
【解決手段】 長手軸方向に紐通し穴が左右対称に複数設けられた紐靴に着脱自在に係止する紐靴の止め具は、つま先側の第一列の左右の孔に固定する固定手段105を両端に有する弾性体から構成された最初の固定部101と、かかと側の終端列の左右の孔に固定する固定手段105を両端に有する弾性体から構成された最後の固定部102と、互いに交差して最初の固定部101から最後の固定部102まで延長された二本のゴム紐103、104と、前記ゴム紐上の左右の紐通し穴に相当する部分に形成され、前記紐通し穴に固定するための固定手段105と、から形成され、さらに靴2に対して長さ方向、幅方向または両方向に前記ゴム紐の弾性力を調整する弾性力調整手段106を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紐靴の止め具および紐靴の止め具を備えた紐靴に関する。より詳しく述べると、靴紐にワンタッチで装着係止できなおかつ長さ方向、幅方向または両方向の締具合を調整可能な紐靴の止め具および前記紐靴の止め具を備えた紐靴に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、紐締めタイプの靴は、使用者の足に保持するために紐の両端部を蝶結びして着用される。歩行中に蝶結びが緩み、その結果として靴が所望のようにピッタリ合わなくなり、更に悪い場合には、蝶結びが完全に解けて紐の末端をバタバタさせ、つまずいたり、転倒したりすることもある。また、片手に何らかの障害を有する人々にとって、靴紐を結ぶ作業の困難さは深刻である。
【0003】
靴紐を両手で結ぶという作業は、ある程度の器用さを要求され、時間がかかり、煩わしいという経験を多くの人が持っている。また、紐は結ぶことを前提にしているので、結んだ後に紐が余ってしまうことがあり、この余った紐は邪魔になり、踏んでしまう危険がある上、見た目が悪くなる場合が多い。
【0004】
そのため、特許文献1には、ロック装置に設けた2列の整列歯対からなる保持部分に弾性編み紐1本を嵌合させてロックする装置が記載されている。この装置は2本の紐を装置の紐入口から通し、1本1本別々に固定するものであり、非常に手間がかかるという課題を有している。
【0005】
また、特許文献2には、断面V字形の溝であって、向い合った溝内面に多数の山形条の形成された紐挟着溝がV字開口を側方として形成されている靴紐止め具で靴紐を固定することが記載されている。この靴紐止め具は、靴胛部に設けられた紐孔の終端部近くの両側方に縫着して使用するため、2本の紐を1本1本別々に靴の両側方に固定している。
【0006】
また、靴は、身体のバランスを保持するために重要な要素を持っており、一般的に個体差に応じて重心が内側(親指側)にかかるユーザ、あるいは重心が外側(小指側)にかかるユーザ等があり、ひどい場合には外反母指や内反小指に発展する場合がある。
【0007】
このように靴は、歩行時などの重心のバランスを個体差に応じて異なるが、幅方向のいずれかの方向に傾けるくせがあるのが一般的である。
【0008】
【特許文献1】特表平5−501980号公報
【特許文献2】実開平7−33105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そのため、紐靴を容易に固定しなおかつ個体差に応じて重心を調整できるような紐靴の止め具の開発が望まれている。
本発明の課題は、紐靴を容易に固定しなおかつ個体差に応じて重心を調整できるような紐靴の止め具を提供することである。
また、本発明の別の課題は、紐靴を容易に固定しなおかつ個体差に応じて重心を調整できるような紐靴の止め具を有する紐靴を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の第一実施態様に係る発明は、長手軸方向に紐通し穴が左右対称に複数設けられた紐靴に着脱自在に係止する紐靴の止め具に関する。
本発明の第一実施形態に係る紐靴の止め具は、つま先側の第一列の左右の孔に固定する固定手段を両端に有する弾性体から構成された最初の固定部と、かかと側の終端列の左右の孔に固定する固定手段を両端に有する弾性体から構成された最後の固定部と、前記最初の固定部の両端部から次の左右の紐通し穴で折り返して互いに交差して前記最後の固定部まで延長された二本のゴム紐と、前記ゴム紐上の左右の紐通し穴に相当する部分に形成され、前記紐通し穴に固定するための固定手段と、から形成されており、さらに靴に対して長さ方向、幅方向または両方向に前記ゴム紐の弾性力を調整する弾性力調整手段を有している。
【0011】
このように構成された本発明の第一実施形態に係る紐靴の止め具は、紐通し穴に固形手段を固定することにより容易に装着することが可能であるとともに、長さ方向(すなわち、つま先側からかかと側の方向)および幅方向の少なくとも一方(好ましくは両方向)の弾性力を調整可能に構成されているので、両方向の締め具合を自在に調整可能である。
【0012】
本発明の第一実施形態に係る靴紐の止め具において、前記最初の固定部と前記最後の固定部は、各々幅方向に複数の係合部を有しており、前記調整手段は、前記調整手段は、前記最初の固定部と前記最後の固定部の係合部に係合するための係合部を有する帯状物から構成されており、前記水平方向への係合箇所により幅方向の弾性力を調整することが好ましい。
【0013】
また、本発明の第一実施形態に係る靴紐の止め具において、前記最初の固定部と前記最後の固定部は、各々幅方向に1または複数の係合部を有しており、前記調整手段は、前記調整手段は、前記最初の固定部と前記最後の固定部の係合部に係合するための係合部を有する帯状物から構成されており、前記帯状物は前記最初の固定部、前記最後の固定部または両方の固定部に係合するための複数の係合部を有しており、前記帯状部の係合部の係合箇所を変化させることにより長さ方向の弾性力を調整することが好ましい。
【0014】
さらに本発明の第一実施形態に係る靴紐の止め具において、前記二本のゴム紐は、各々少なくとも一部が弾性力の異なるゴム紐から構成することができる。
【0015】
また、本発明の第一実施形態に係る靴紐の止め具において、前記固定部は、フックまたは係止鋲から構成することができる。
【0016】
さらにまた、本発明の第一実施形態に係る靴紐固定具において、前記紐靴の左右に設けられた紐通し穴に対応する部分の固定部を、連結部材により連結することもできる。
【0017】
また、上記課題を解決する本発明の第二実施態様に係る発明は、第一実施形態に係る紐靴の止め具を備えた紐靴に関する。
【0018】
このように構成された紐靴は、紐通し穴に固形手段を固定することにより容易に装着することが可能であるとともに、長さ方向(すなわち、つま先側からかかと側の方向)および幅方向の少なくとも一方(好ましくは両方向)の弾性力を調整可能に構成されているので、両方向の締め具合を自在に調整可能である。
【発明の効果】
【0019】
このように本発明の靴紐係止具および本発明の靴紐の止め具を備えた紐靴は、紐通し穴に固形手段を固定することにより容易に装着することが可能であるとともに、長さ方向(すなわち、つま先側からかかと側の方向)および幅方向の少なくとも一方(好ましくは両方向)の弾性力を調整可能に構成されているので、両方向の締め具合を自在に調整可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
まず、図1から図3に基づいて本発明の第一実施形態に係る紐靴の止め具を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る紐靴の止め具を説明するための図面であり、図2は、図2(a)、(b)、(c)は図1に示す紐靴の止め具の固定部の構成の一例を示す図面であり、図3(a)、(b)、(c)は図1に示す紐靴の止め具の調整手段の一例を示す図面である。
【0021】
図1に示す図面は、紐靴の右足に装着する紐靴の止め具を説明する図面である。なお、図1に示す実施形態では、左右各々4つの紐通し穴を有する紐靴を係止するための紐靴の止め具の例を示すが本発明は、紐通し穴の数に限定されるものではない。
【0022】
図1に示す通り、紐靴の止め具1は、紐靴のつま先側の左右の紐通し穴201を固定するための最初の固定部101と、紐靴のかかと側の左右の紐通し穴201を固定するための最後の固形部102と、最初の固定部101の両端部から次の左右の紐通し穴201で折り返して互いに交差して最後の固定部102まで延長された二本のゴム紐103、104とから主として構成される。
【0023】
本発明における最初の固定部101および最後の固形部102は、図2(a)に示す通りゴム等の弾性力を有する材質で構成されており、各々後述する調整手段を固定するための係止部101aおよび102aを有している。さらに、最初の固形部101および最後の固形部102は、図2(b)または図2(c)に示す通り、固定手段105を有している。
【0024】
また、本発明における最初の固形部101および/または最後の固形部102は、所望に応じて図示しない幅方向の弾性力を調整する調整手段を有していてもよい。このような調整手段は、ベルト式の調整手段など従来公知の調整手段であることができる。
【0025】
なお、固定手段105は、紐靴2の紐通し穴201に挿入して固定するための手段であり、図2(b)に示す通り、フック式の固定手段としたり、図2(c)に示す通り、止め鋲式の固定手段としたりすることができる。本発明においては、着脱が容易である点から図2(b)に示すような、フック式の固定手段であることが好ましい。
【0026】
同様にして、二本のゴム紐103、104は、各左右の紐通し穴201に相当する箇所に最初の固形部101および最後の固形部102と同様に図2(b)または図2(c)に示すような固定手段105を有している。このようなゴム紐103、104の所定箇所に設けられた固定手段105は、最初の固形部101および最後の固形部102の固定手段105と同一な形式であっても、あるいは異なる形式であってもよい。
【0027】
このようにして、本発明の紐靴の止め具1の各固定手段105を各左右の紐通し穴201に相当する箇所に挿入して固定することによって、図1に示す通り、紐靴2に固定されて靴紐と同様な作用を示す。すなわち、各固定手段105を各左右の紐通し穴201に相当する箇所に挿入して固定するという簡単な操作だけで紐靴を簡単に固定することが可能となる。
【0028】
しかも、本発明の紐靴の止め具1では、最初の固形部101、最後の固形部102、二本のゴム紐103、104は全て弾性体から構成されているので、適度の弾性力をもって紐靴2を固定することが可能である。
【0029】
本発明の紐靴の止め具1は、さらにこのようにして装着固定した靴紐の止め具1の弾性力を調整するための調整手段106を有している。
【0030】
図3に示す通り、調整手段106は、本発明の紐靴の止め具1の弾性力を調整するための帯状の調整手段であり、ゴム等の弾性部材あるいはプラスチック、布、プラスチック等の非弾性部材から構成することができる。
【0031】
図3(a)に示す調整手段106は、係止部101aおよび102aと係止するための係止部106a(最初の固形部101の係止部101aと係止)および係止部106b(最初の固形部102の係止部102aと係止)とを各々1ずつ有しており、これらの係止部106aおよび106bにより各々最初の固形部101および最後の固形部102を係止する。
【0032】
また、図3(b)に示す調整手段106は、係止部101aを係止するための1つの係止部106a(最初の固形部101の係止部101aと係止)と係止部102bを係止するための複数の係止部106b(最初の固形部102の係止部102aと係止)とを有しており、これらの係止部106aおよび106bにより各々最初の固形部101および最後の固形部102を係止する。

【0033】
そして、図3(c)に示す調整手段106は係止部101aおよび102aと係止するための係止部106a(最初の固形部101の係止部101aと係止)および係止部106b(最初の固形部102の係止部102aと係止)とを各々複数有しており、これらの係止部106aおよび106bにより各々最初の固形部101および最後の固形部102を係止する。
【0034】
なお、図3(b)および図3(c)に示す調整手段は、一方の側に複数の係止部106aおよび106bを有しているので、これらの複数の係止部106aおよび106bを選択することによって、長さ方向の弾性力を調整することが可能となる。
【0035】
図1および図2(a)に示すように最初の固形部101および最後の固形部102に複数の係止部101a、102aを有する場合、調整手段106の係止部106aおよび106bの係止位置を変化させることによって水平方向の弾性力を適宜変化させることが可能となる。なお、このような調整手段106は、ゴム紐103および104、好ましくはゴム紐103および104の交点で固定されることができる。このようにゴム紐103、104に固定することによって本発明の紐靴の止め具1は一体成形することが可能となる。
【0036】
このように本発明の紐靴の止め具は、水平方向の弾性力を調整することが可能となるので、足に負荷される力を親指側あるいは小指側に調整することが可能となる。例えば、親指側の弾性力を強くする場合には小指側の係止部101a、102bに調整手段の係止部106aおよび106bを係止させることにより達成できる。
【0037】
逆に子指側の弾性力を強くする場合には親指側の係止部101a、102bに調整手段の係止部106aおよび106bを係止させることにより達成できる。
【0038】
このような本発明の紐靴の止め具1は、図1に示す通り靴2の紐通し穴201に、例えば最初の固形部101から順次最後の固形部102に固定していくことによって装着可能であり、逆の操作を行うことにより外すことが可能となる。
【0039】
次に図4に基づいて本発明の第2実施形態に係る紐靴の止め具1を説明する。図4は、本発明の第2実施形態に係る紐靴の止め具を説明するための図面である。
図4に示す実施形態では、図1に示す実施形態において、ゴム紐103および104の弾性力を変化させる以外は図1に示す実施形態と同様であるので、同一部材には同一の符号を附し、その詳細な説明は省略する。
【0040】
図4に示す実施形態では、ゴム紐103およびゴム紐104の弾性力を変化させている。すなわち、親指側に係るゴム紐の弾性力を強くし(図中太線で示す)、一方小指側にかかるゴム紐の弾性力を弱くした紐靴の止め具1に関する。
【0041】
このようにゴム紐の弾性力を親指側に係るゴム紐の弾性力を強くし(図中太線で示す)、一方小指側にかかるゴム紐の弾性力を弱くすることによって、親指側がきつく小指側がゆるく締められた状態(内側)で紐靴の止め具1を紐靴に固定することが可能となる。
【0042】
通常、本発明の紐靴の止め具1は、左右両側で一組であるので左足側は逆の構成となる。また、子指側がきつく親指側がゆるく締められた状態(外側)で紐靴の止め具1を紐靴に固定するためには逆の構成にすればよい。
【0043】
さらに、紐靴の止め具1を長さ方向(上下)対称の構成にすることによって、すなわち、最初の固形部101および最後の固形部102を逆にすることによって、一組の紐靴の止め具1で親指側がきつく小指側がゆるく締められた状態(内側)と子指側がきつく親指側がゆるく締められた状態(外側)との両側の状態に対応することが可能となる。
【0044】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。例えば、最後の固形部102に結び目を模す部材を設けることも本発明の範囲内である。
【0045】
さらに、本発明の紐靴の止め具を備えた靴紐も本発明の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1実施形態に係る紐靴の止め具を説明するための図面である。
【図2】(a)、(b)、(c)は図1に示す紐靴の止め具の固定部の構成の一例を示す図面である。
【図3】(a)、(b)、(c)は図1に示す紐靴の止め具の調整手段の一例を示す図面である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る紐靴の止め具を説明するための図面である。
【符号の説明】
【0047】
1 紐靴の止め具
2 紐靴
101 最初の固定具
102 最後の固定具
103、104 ゴム紐
105 固定手段
106 調整手段
101a、102a、106a、106b 係止部
201 紐通し穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手軸方向に紐通し穴が左右対称に複数設けられた紐靴に着脱自在に係止する紐靴の止め具であって、
つま先側の第一列の左右の孔に固定する固定手段を両端に有する弾性体から構成された最初の固定部と、
かかと側の終端列の左右の孔に固定する固定手段を両端に有する弾性体から構成された最後の固定部と、
前記最初の固定部の両端部から次の左右の紐通し穴で折り返して互いに交差して前記最後の固定部まで延長された二本のゴム紐と、
前記ゴム紐上の左右の紐通し穴に相当する部分に形成され、前記紐通し穴に固定するための固定手段と、
から形成され、
前記紐靴の止め具は、さらに靴に対して長さ方向、幅方向または両方向に前記ゴム紐の弾性力を調整する弾性力調整手段を有していることを特徴とする紐靴の止め具。
【請求項2】
前記最初の固定部と前記最後の固定部は、各々幅方向に複数の係合部を有しており、前記調整手段は、前記最初の固定部と前記最後の固定部の係合部に係合するための係合部を有する帯状物から構成されており、前記水平方向への係合箇所により幅方向の弾性力を調整することを特徴とする請求項1に記載の紐靴の止め具
【請求項3】
前記最初の固定部と前記最後の固定部は、各々幅方向に1または複数の係合部を有しており、前記調整手段は、前記調整手段は、前記最初の固定部と前記最後の固定部の係合部に係合するための係合部を有する帯状物から構成されており、前記帯状物は前記最初の固定部、前記最後の固定部または両方の固定部に係合するための複数の係合部を有しており、
前記帯状部の係合部の係合箇所を変化させることにより長さ方向の弾性力を調整することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の紐靴の止め具。
【請求項4】
前記二本のゴム紐は、各々少なくとも一部が弾性力の異なるゴム紐から構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の紐靴の止め具。
【請求項5】
前記固定部は、フックまたは係止鋲から構成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の紐靴の止め具。
【請求項6】
前記固定部は、前記長さ方向に対して左右方向で連結部材により連結されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の紐靴の止め具。
【請求項7】
前記調整部材は、前記ゴム紐に固定されていることを特徴とする請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の紐靴の止め具。
【請求項8】
請求項1からは請求項7のいずれか1項に記載の紐靴の止め具を備えた紐靴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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