説明

紙製挟持具の製造システム

【課題】高品質な紙製挟持具を効率的、かつ、経済的に連続生産可能な製造システムを提供する。
【解決手段】厚紙2の長手方向に折り返し用の複数の溝部(凹部2s1〜2s8)を成形する筋入部(筋入工程22a・22b・22c)や、厚紙2の中央部に長手方向に沿って凸部2wを成形する凸部成形部(凸部成形工程22d)や、厚紙2の先端上部を長手方向に沿って折り曲げる先端癖付け曲げ部(先端癖付け曲げ工程22f)や、前記凸部2wの上部近傍にて厚紙2を長手方向に沿って折り曲げる折り返し曲げ部(折り返し曲げ工程22g)や、厚紙2の上端部をさらに扱いて折り癖を付ける折り返し成形部(折り返し成形工程22h)や、折り返した厚紙2を溶着材により圧着して綴じる溶着部(溶着工程22i)等、からなる紙製挟持具1の製造システム(紙製挟持具製造装置20)を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉を挟持する紙製挟持具の製造システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メモ用紙、あるいは、カレンダー等の挟持具として、金属やプラスチックによるクリップやバインダーが公知となっている。ここで、近年の環境問題の観点から、使用済み製品や物品等の廃棄処理において、リサイクル性の向上が望まれている。例えば、先のメモ用紙やカレンダー等の紙製品は、金属やプラスチック等の異質の材料が混用されている場合はリサイクル性が低下する。このことから、紙製挟持具は、メモ用紙やカレンダー等の紙製品のリサイクル性を向上することができる。
このような背景を踏まえ、近年の環境保護の高まりと共に紙製挟持具の需要が注目されている。これらの金属製、或いは、プラスチック製の挟持具に代わる紙製の挟持具は、公知となっている(特許文献1、および、特許文献2を参照)。
【特許文献1】登録実用新案第3001182号公報
【特許文献2】特開平11−321156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記「特許文献1」、および、「特許文献2」に示される紙製挟持具はリサイクル性に優れてはいるが、弾性力の高い厚紙を原材料とするため扱いにくく、正確な折り込み、溶着作業を行うには、人手に拠るしかなかった。
そこで本発明における解決しようとする課題は、高品質な紙製挟持具を効率的、かつ、経済的に連続生産することができる製造システムの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、折り返した短冊状の紙片により構成される紙製挟持具の製造システムであって、紙片の長手方向に折り返し用の複数の溝部を成形する筋入部と、紙片の中央部に長手方向に沿って凸部を成形する凸部成形部と、紙片の先端上部を長手方向に沿って折り曲げる先端癖付け曲げ部と、前記凸部の上部近傍において紙片を長手方向に沿って折り曲げる折り返し曲げ部と、前記先端癖付け曲げ部にて折り曲げた紙片の上端部をさらに扱いて折り癖を付ける折り返し成形部と、折り返した紙片を溶着材により圧着して綴じる溶着部と、成形された紙片の上端部中央に貫通孔を設ける孔明部と、からなるものである。
【0006】
請求項2においては、前記凸部成形部と、先端癖付け曲げ部と、の間には、紙片の中央部に成形した凸部の下隅部に切込みを入れて突出方向と逆方向に折り曲げる逆L切断部を設けるものである。
【0007】
請求項3においては、前記溶着部では、紙片の中央部に成形した凸部と、該凸部の突出側に折り返した紙片の上部と、が溶着材を介して圧着溶着される前に、前記紙片の凸部の突出側に折り返した部位を、前記凸部に対して位置決めをおこなうものである。
【0008】
請求項4においては、前記筋入部と、凸部成形部と、先端癖付け曲げ部と、折り返し曲げ部と、折り返し成形部と、溶着部と、孔明部において、紙片は長手方向を搬送方向に沿わせて、直立の状態にて加工されるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1においては、紙製挟持具の品質の均一化が図れる。すなわち、人手による場合には、作業者の熟練度合いのバラツキが、生産される紙製挟持具の品質へも影響し、そのまま該紙製挟持具の品質のバラツキを発生させるが、本発明による製造システムにより紙製挟持具を生産することで、作業者の熟練度合いに頼ることなく、紙製挟持具の品質の均一化を図ることができる。
また、本発明における製造システムによって紙製挟持具の自動生産を実現することができるため、人手による場合と比べて、生産量もあがり大量生産が可能となり、紙製挟持具の製造コストを大幅に低減することができる。すなわち、紙製挟持具を効率的、かつ、経済的に連続生産することができる製造装置を提供することができる。
【0011】
請求項2においては、紙片の中央部に設けられる凸部に成形された複数の凹部は、所謂凸部の補強材として機能し、後述の溶着部(溶着工程)における、紙片の凸部と該凸部の突出側に折り返された紙片の上層部を圧着溶着する際に、紙片の上端部に成形される矩形断面形状が崩れることなく、確実にその形状を保持することができるため、高品質な紙製挟持具の自動生産を実現することができる。
【0012】
請求項3においては、折り返された紙片の上端部に成形される断面形状を完全な矩形状に規制することができ、高品質な紙製挟持具の自動生産を実現することができる。
【0013】
請求項4においては、搬送方向の左右両側の空間を利用して各部(筋入部と、凸部成形部と、先端癖付け曲げ部と、折り返し曲げ部と、折り返し成形部と、溶着部と、孔明部)における製造装置を配備することが可能となり、紙製挟持具製造システムの外形を極力小さく抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の実施例であるカレンダーの全体構成を示す斜視図である。
図2は同じくA−A´断面を示す断面構成図である。
図3は同じく紙製挟持具が成形される過程を示す構成図である。
図4は紙製挟持具の折り曲げ位置を示す側面図である。
図5は紙製挟持具製造装置の全体を示す側面図である。
図6は筋入工程を搬送方向から見る正面図である。
図7は筋入工程の工程順序を示すモデル図である。
図8は凸部成形工程を搬送方向から見る正面図である。
図9は凸部成形工程の工程順序を示すモデル図である。
図10は逆L切断工程を搬送方向から見る正面図である。
図11は逆L切断工程の工程順序を示すモデル図である。
図12は先端癖付け曲げ工程を搬送方向から見る正面図である。
図13は先端癖付け曲げ工程の工程順序を示すモデル図である。
図14は折り返し曲げ工程を搬送方向から見る正面図である。
図15は折り返し曲げ工程の工程順序を示すモデル図である。
図16は折り返し工程を搬送方向から見る正面図である。
図17は溶着工程を搬送方向から見る正面図である。
図18は溶着工程の工程順序を示すモデル図である。
【0015】
[紙製挟持具1を用いたカレンダー10]
まず、紙製挟持具1の一実施例であるカレンダー10について、図1を用いて簡単に説明する。なお、本実施例において、カレンダー10は営業活動等に関して利用される宣伝広告入りのカレンダーとしている。
【0016】
カレンダー10は吊下げ部である紙製挟持具1や、該紙製挟持具1に上端を挟持された月毎の日付を示す十二枚のポスター11・11・・・や、背紙5や、ペーパーリング8等により構成されている。
【0017】
ポスター11・11・・・は例えば「古城」の写真であって、十分に美感性が高いポスターである。また、各々のポスター11・11・・・は上部11a・11a・・・と下部11b・11b・・・から構成される見開きの構成とされており、上部11a・11a・・・の下端と下部11b・11b・・・の上端は背紙5と共にペーパーリング8により綴じられている。
【0018】
また、紙製挟持具1の材質は紙のみを材質にして構成されている。紙製挟持具1の表面には会社名、住所、及び電話番号等の宣伝広告部7が印刷されている。カレンダー10の吊下げ部を紙製挟持具1によって構成することにより、紙製挟持具1の紙面には容易に前記宣伝広告部7に関する印刷ができ、安価に広告情報を取入れることができる。また、紙製挟持具1は前面左右中央上部に貫通孔3が設けられることで、壁等に掛止可能としている。
【0019】
[紙製挟持具1]
次に、紙製挟持具1の詳細について、図2を用いて説明する。なお、図2は、図1におけるA−A´断面図を示す。
紙製挟持具1は一枚の厚紙2から成形されており、途中数段に折り曲げられて構成されている。ここで、表層紙(前層紙)2bと裏層紙(後層紙)2aにおいて、短手方向の端側は十分に余白が残されており、特に表層紙2bについては裏層紙2aと比較して、広範な余白が残されている。
【0020】
裏層紙2aの上部にはクランク状に折り曲げられた凸部2wが成形されており、該凸部2wは表層紙2bに向かって突出するよう設けられている。なお、裏層紙2aの下部には背紙5が貼着されている。表層紙2bの下部は裏層紙2a側に向かって上方に折り曲げられており、折り部2cが成形されている。
【0021】
そして、凸部2wの前面と表層紙2bの内面とが溶着剤(ヒートシール剤)を用いて貼付されることで、紙製挟持具1はポスター11・11・・・を裏層紙2aに貼着した背紙5と、表層紙2bの下部において上方に折り曲げられた折り部2cと、の間で挟持することを可能としている。つまり、折り部2cの復元しようとする弾性力が複数の束ねられたポスター11・11・・・を押さえつける構成としている。
【0022】
このように、簡易な構成により紙製挟持具1を構成でき、製造工程を短縮して製造効率を向上することができる。
【0023】
[紙製挟持具1の製造システム(紙製挟持具製造装置20)の概略]
次に、紙製挟持具1の製造システム(紙製挟持具製造装置20)における概略について、図3、および、図4を用いて説明する。
まず、図3(a)に示すように、細長体(短冊状の紙片)によって成形される厚紙2において、図3(b)に示すように、短手方向略中央部に長手方向に沿って二本の屈曲部2p・2qが互いに平行に成形される。ここで、成形された屈曲部を外側(図3に示す上側)から順に第一屈曲部2p、第二屈曲部2qとする。
【0024】
厚紙2において前記第二屈曲部2qの下方には凸部2wが成形される。ここで、前記厚紙2の第一屈曲部2p、第二屈曲部2q、凸部2wは、紙面に対して同一方向に凹又は凸となるものである。
【0025】
次に、図3(c)に示すように、厚紙2は二本の第一、第二屈曲部2p・2qを谷側として、折り曲げられる。そして、図3(d)に示すように、厚紙2は最終的に裏層紙2a、表層紙2b、折り部2c、及び凸部2wが成形された状態となる。そして、凸部2wの突出側の表面にヒートシール剤を施して表層紙2bと貼付することで、厚紙2のみによる紙製挟持具1が成形される。
【0026】
ここで、厚紙2を実際に折り曲げた場合、図3(d)に示すように、両屈曲部2p・2qの谷側には凹部2s・2sが成形される。これは、厚紙2を折り曲げる際に圧縮された内側の面が飛び出して成形されることから、前記凹部2s・2sの形状は均一とはならず、とりわけ、第一屈曲部2pに示すような完全な「二つ折り」を行う場合には、凹部2sが障害となって、予め定められた第一屈曲部2pに沿って折り曲げることが困難な場合が多かった。
【0027】
そこで、本発明における紙製挟持具1の製造工程では、第一屈曲部2pをさらに近接する二本の溝線2s3・2s4(図4(a)を参照)によって成形することとしているため、予め定められた前記溝線2s3・2s4の箇所によって確実に厚紙2は折り曲げられることとなり、凹部2sの形状を規制することができるのである。
【0028】
すなわち、図4(a)、および、図4(b)に示すように、厚紙2の各折り曲げ部には、折り曲げた際に山側となる面において、予め複数の凹部2s(2s1・2s2・2s3・2s4・2s5・2s6・2s7・2s8)を成形することとしているため、厚紙2の表層面(折り曲げた際に山側となる側の表面)には折り曲げに対する余裕しろができ、折り曲げた際に厚紙2の前記表側の面が引っ張られて破れる心配もない。
【0029】
このような構成とすることで、一枚の紙片により紙製挟持具1を成形することが可能となり、製造工程をシンプルに構成することができる。
【0030】
[紙製挟持具製造装置20]
次に、本発明における紙製挟持具製造装置20について、図5、乃至、図18を用いて説明する。
紙製挟持具製造装置20は搬送方向に沿って延出するフレーム31を具備し、該フレーム31の上面部において、搬送方向上流側から順に投入部21、成形部22、搬出部23を配置して構成されている。また、成形部22はさらに、複数の工程に細分化されており、各工程間に渡り矩形状の搬送レール32がフレーム31の上面より支柱を介して固設されている。
【0031】
搬送レール32の上部左右両側面には二枚のガイド板33・33(図6を参照)が対向して設けられており、投入された短冊状の厚紙2は前記ガイド板33・33の間隙部に保持されつつ、長手方向を搬送方向に沿わせて直立姿勢を保持しながら搬送される。
【0032】
ここで、成形部22を構成する各工程には、例えば図6に示すように、搬送レール32の一方側にフィーダー装置34が設けられている。フィーダー装置34は搬送方向正面視において、厚紙2の下部に直交して設けられるプッシャー35と、搬送方向に沿ってプッシャー35を前進・後退させる上部アクチュエータ36と、これらプッシャー35、および、上部アクチュエータ36を含む全体を、搬送レール32側に接近させる下部アクチュエータ37等により構成される。
【0033】
このように、厚紙2は下端部を搬送レール32に当接することで、上下方向の搬送レベル(搬送時における厚紙2の高さ寸法)を規制されながら、前記プッシャー35にて押出される状態で搬送されるため、各工程における厚紙2のセット位置については、高度な再現性を確保することができる。
【0034】
[投入部21]
次に、投入部21について説明する。
投入部21は主に、投入される複数の短冊状の厚紙2・2・・・を束ねて載置する載置部38や、上下方向に互いに隣接された二組の搬送ベルト39・39等によって構成され、載置部38に投入された厚紙2は一枚ごとに、二組の搬送ベルト39・39の間に挟まれた状態で成形部22へと搬送される。
【0035】
すなわち、束ねられた複数の厚紙2・2・・・は長手方向を上下方向として載置部38にセットされた後、一枚ごとに二組の搬送ベルト39・39の間に挟まれて繰出され、その後、最上流側の搬送レール32の上面に、長手方向を搬送方向に沿って投入される。
【0036】
[成形部22]
次に、成形部22について、図6、および、図7を用いて説明する。
成形部22は前述のとおり、複数の工程に細分化されており、搬送方向上流側から順に、第一、乃至、第三筋入工程22a・22b・22cと、凸部成形工程22dと、逆L切断工程22eと、先端癖付け曲げ工程22fと、折り返し曲げ工程22gと、折り返し成形工程22hと、溶着工程22iと、孔明工程22jと、により構成される。
【0037】
[第一、乃至、第三筋入工程22a・22b・22c]
まず、図6、および、図7を用いて、第一、乃至、第三筋入工程22a・22b・22cの詳細について説明する。
第一、乃至、第三筋入工程22a・22b・22cはともに、短冊状の厚紙2に長手方向の溝線(すなわち、図4(a)に示す複数の凹部2s1・2s2・・・2s8)を成形する工程であり、昇降機能を有するチャッキング部42や、プレス部41等により構成される。
【0038】
チャッキング部42は搬送レール32の鉛直上方に配設されており、かつ、該チャッキング部42の下部には開閉自在の爪部40が具備されている。爪部40は搬送方向左右側に対向して設けられる二枚の爪板40a・40aより構成され、該爪板40a・40aは互いに対向方向に向かってスライド移動が可能な構成となっている。
【0039】
また、チャッキング部42の上部には、図示せぬ電動シリンダー等からなるアクチュエータの可動ロッドの先端部が接続されており、チャッキング部42を昇降作動自在としている。
【0040】
プレス部41は搬送レール32の左右両側部に対向して配置する爪板44と固定板45により構成される。ここで、爪板44については搬送方向に直交して移動するスライド機構が設けられており、本実施例では、爪板44をスライドさせる駆動機構として、駆動モータや、該駆動モータの出力軸に組み付けられるカム板等が設けられている。そして、中心軸を偏心させた前記カム板が回転することで、該カム板と当接する爪板44を出入自在としているが、これに限定されるものではなく、例えば、爪板44を、油圧シリンダー等を介して作動させてもよい。
【0041】
爪板44は上下に分割された二本の部材(上板44a、下板44b)からなり、正面視にて互いに厚紙2に向かって窄まった「くちばし」形状から成形されている。なお、上下両板44a・44bは搬送方向に沿って延出する板部材からなり、厚紙2の長手方向の寸法と比べて若干長く成形されている。従って、爪板44は一回のプレス(圧縮)動作によって、厚紙2の全領域に渡り、前述した長手方向の溝線を成形することができる。
【0042】
固定板45は爪板44との対向面において、搬送方向正面視にて、上下方向中央に向かって緩やかに湾曲して凹ませた断面形状にて成形されており、これら爪板44と固定板45との間に挟んで、短冊状の厚紙2が圧縮されることで、該厚紙2には長手方向の溝線が成形される。
【0043】
すなわち、各筋入工程22a・22b・22cに厚紙2が搬送されると、図7(a)に示すように、まずチャッキング部42が厚紙2の上端部近傍まで下降移動し、爪部40を構成する爪板40a・40aが互いに対向方向に向かってスライド移動することで、前記爪部40が閉じられ、厚紙2の上端部が保持される。厚紙2を掴んだチャッキング部42は、その状態を保持しつつ、予め定められた設定距離だけ上昇移動し、一旦停止する(図7(b)に示す状態)。その後、上述の駆動モータが駆動してカム板が回転され、図7(c)に示すように、爪板44が厚紙2を圧縮する。
【0044】
ここで、上板44aおよび下板44bの根元部には図示せぬ圧縮コイルが各々設けられており、上下両板44a・44bは前記圧縮コイルによって常に外側に向かって付勢されている。そして、上下両板44a・44bの先端部が厚紙2の表面に当接すると、前記圧縮コイルバネが圧縮されることで衝撃力は吸収され、その状態を保持しつつ、更に、上下両板44a・44bの先端部が厚紙2の表面に食い込むことで、厚紙2に長手方向の溝線が成形されるのである。
【0045】
その後、図7(d)に示すように、プレス部41は厚紙2から離間され、チャッキング部42が設定距離だけ再び上昇移動した後一旦停止し、図7(b)および(c)に示す圧縮加工が繰り返し行われる。そして、予め設定された本数の溝線が厚紙2に成形されると、チャッキング部42は厚紙2の下端部が搬送レール32の上面近傍に達するまで下降移動して、爪板40a・40aが搬送方向左右両側にスライド移動することにより厚紙2は開放され、上述のフィーダー装置34(図6参照)によって、前記厚紙2は次の工程の凸部成形工程22dへと搬出される。
【0046】
なお、本実施例における第一、乃至、第三筋入工程22a・22b・22cでは、厚紙2に成形される溝線の凸方向や、該溝線の深さ等の理由から、図4(b)に示す凹部2s1、乃至、2s3については第一筋入工程22aによって行われ、凹部2s4、2s5、2s8については第二筋入工程22bによって行われ、凹部2s6、2s7については第三筋入工程22cによって行われる。
【0047】
[凸部成形工程22d]
次に、図8、および、図9を用いて、凸部成形工程22dの詳細について説明する。
凸部成形工程22dは厚紙2の略中央部に凸部2wを成形する装置であり、主に、上下方向に並べて配置される上型板48と下型板49、および、上下両型板48・49に対向して配置される横型板50により構成される。これら複数の型板48・49・50はともに搬送方向に沿って延出して配置され、搬送レール32の上方において、平面視にて平行に設けられる。
【0048】
前記複数の型板48・49・50には各々電動シリンダー等からなるアクチュエータが具備されており、上型板48、および、下型板49については昇降移動を可能とし、また、横型板50については水平方向でのスライド移動を可能としている。
【0049】
上型板48は断面視略矩形状の部材であり、該上型板48の搬送レール32側の側面48aは搬送レール32の中心軸に沿うようにして配置される。また、上型板48の搬送レール32側との対向側の面は、下部において断面視矩形状にえぐられており、かつ、前記上型板48の先端下部48bは斜下方に鋭くとがっている。
【0050】
下型板49も上型板48と同様、断面視略矩形状の部材から構成されており、該下型板49の搬送レール32側の側面49a(上型板48と同一側の面)が搬送レール32の中心軸に沿うようにして配置される。また、下型板49において、搬送レール32側の先端部では上部がえぐられ、断面視「L」字状に成形されており、前記下型板49の先端上部49bは斜上方に鋭くとがっている。
【0051】
横型板50も上型板48と同様、断面視略矩形状の部材から構成されており、搬送レール32側の側面中央部において、矩形状の突出部50aが設けられている。なお、突出部50aの外形は、上述の上型板48の先端下部48bの下面、および、下型板49の先端上部49bの上面に沿うように、鋭角に成形されている。
【0052】
このような形状からなる各型板48・49・50によって厚紙2は圧縮加工され、略中央部において、長手方向に伸びる凸部2wが成形される。
【0053】
すなわち、搬送レール32に沿って厚紙2が凸部成形工程22dに搬送されると、図9(a)に示すように、横型板50が厚紙2側にスライド移動され、該厚紙2の略中央部を押出す。このとき、厚紙2の上部、および、下部の側面は上型板48、および、下型板49の各側面48a・49aに当接され、厚紙2の押出された箇所(湾曲部2f)は前記上下両型板48・49側に、湾曲に膨らんだ状態となる。
【0054】
その後、図9(b)に示すように、上型板48は下降移動し、また、下型板49が上昇移動することで、厚紙2の湾曲部2fは前記上下両型板48・49、および、横型板50によって挟み込まれることで折り込まれ、厚紙2の略中央部に凸部2wが成形される。そして、図9(c)に示すように、凸部2wの成形後は、上型板48が上昇移動し、かつ、下型板49が下降移動した後、横型板50が厚紙2から離間して、フィーダー装置34(図8参照)によって厚紙2が次の工程の逆L切断工程22e(あるいは、先端癖付け曲げ工程22f)へと搬出される。
【0055】
なお、厚紙2には上述のとおり、第二、および、第三筋入工程22b・22cによって、予め凹部2s5・2s6・2s7・2s8が成形されており、該凹部2s5・2s6・2s7・2s8に沿って厚紙2が折り込まれることで凸部2wが成形されることから、凸部2wの形状についての精度を容易に確保することができる。また、凸部2wの成形される箇所は前記凹部2s5・2s6・2s7・2s8の成形される位置によって定まるため、厚紙2における凸部2wの成形される位置精度を容易に確保することができる。さらに、凸部2wは上型板48、および、下型板49から開放されると、自身の弾性力によって、前記上型板48に当接されていた面は上方に向かって、かつ、前記下型版49に当接されていた面は下方に向かって、各々僅かに復元移動するため、横型板50は前記凸部2wに引っかかることもなく、容易に厚紙2から離れることができる。
【0056】
[逆L切断工程22e]
次に、図10、および、図11を用いて、逆L切断工程22eの詳細を説明する。
逆L切断工程22eは、厚紙2の凸部2w下部において、搬送方向に沿って一定間隔に切込みを設け、凸部2wの突出方向と逆方向に折り曲げることで、厚紙2の強度を持たせるための工程である。
【0057】
なお、逆L切断工程22eによる凸部2wへの加工は完成した紙製挟持具1全体の美観に影響を与えることから、他に厚紙2の特性により、十分な剛性が確保することが可能な場合等であれば、前記逆L切断工程22eを省略することも可能である。なお、逆L切断工程22eを省略する場合には、凸部成形工程22dによる工程作業の終了後、厚紙2は後述の先端癖付け曲げ工程22fへと搬送される。
【0058】
逆L切断工程22eは主に搬送レール32の上部に設けられる切込み刃25・25・・・や、曲げ部材26等により構成される。また、切込み刃25・25・・・は断面視において、厚紙2の凸部2wにおける突出方向と反対側に配置され、曲げ部材26は切込み刃25・25・・・との対向側に設けられる。
【0059】
切込み刃25・25・・・は搬送方向に沿って櫛歯状に一列に配列された複数の刃から構成され、かつ、該切込み刃25・25・・・の先端部は鋭角に突出されている。また、切込み刃25・25・・・には電動シリンダー等からなるアクチュエータが具備されており、該アクチュエータの可動ロッドが伸長した状態において切込み刃25・25・・・の先端部が凸部2wの下端隅部を貫通するよう、斜め上方に配置されている。
【0060】
曲げ部材26は略矩形状の部材から成形されており、かつ、該曲げ部材26は長手方向を搬送方向に沿って配置される。また、曲げ部材26の搬送レール32側の側面下部には、複数の矩形状からなる凸部26a・26a・・・が搬送方向に沿って成形されており厚紙2の凸部2wの下方に位置するように配置されている。
【0061】
そして、厚紙2が逆L切断工程22eに投入されると、図11(a)に示すように、まず、切込み刃25が斜上方から接近し、凸部2wの下隅部において、搬送方向に沿って一定間隔からなる切込みが入れられる。その後、切込み刃25・25・・・が厚紙2からから離れ、移動前の元の位置まで戻ると、曲げ部材26が上昇移動し、図11(b)に示すように凸部26aを介して、凸部2wの下隅部が押し上げられ、複数の凹部2d・2d・・・が搬送方向に沿って一定間隔を空けて成形される。
【0062】
このようにして、前記凸部成形部(凸部成形工程22d)と、後述の先端癖付け曲げ部(先端癖付け曲げ工程22f)と、の間には、紙片(厚紙2)の中央部に成形した凸部2wの下隅部に切込みを入れて突出方向と逆方向に折り曲げる逆L切断部(逆L切断工程22e)を設けるので、厚紙2の中央部に設けられる凸部2wに成形された複数の凹部2d・2d・・・は、所謂凸部2wの補強材として機能し、後述の溶着工程22iにおける、厚紙2の凸部2wと該凸部2wの突出側に折り返された厚紙2の表層紙2bを圧着溶着する際に、厚紙2の上端部に成形される矩形断面形状が崩れることなく、確実にその形状を保持することができるため、高品質な紙製挟持具の自動生産を実現することができる。
【0063】
[先端癖付け曲げ工程22f]
次に、図12、および、図13を用いて、先端癖付け曲げ工程22fの詳細について説明する。
先端癖付け曲げ工程22fは、厚紙2の先端上部を第一屈曲部2p(図4(a)を参照)によって屈曲させ、折り部2cを成形する工程であり、主に搬送レール32の上方に設けられる上型板51や、曲げ板58や、保持板52等により構成される。
【0064】
前記各板51・52・58は略矩形状の部材から成形されており、かつ、これら各板51・52・58は長手方向を搬送方向に沿って配置される。すなわち、断面視において、上型板51は搬送レール32側の側面(図12における右側)が搬送レール32の中心軸に沿うようにして配置され、また、保持板52、および、曲げ板58は上型板51の下方、かつ、上型板51と対向する側に配置されている。
【0065】
上型板51には搬送レール32側の側面の下端部において傾斜部51aが成形されており、また、保持板52には、搬送レール32側の側面の上下中央部において、矩形状の凸部52aが成形されている。なお、保持板52の対向側にはフレーム31(図5を参照)に固設された固定板53が設けられており、保持板52と向き合う面において、凸部52aの形状に沿った凹部53aが成形されている。また、固定板53の凹部53aと対向する側の面は、前記上型板51の傾斜部51aに沿って斜形状に成形される。
【0066】
ここで、上型板51と、保持板52と、曲げ板58には、各々電動シリンダー等からなるアクチュエータが具備されており、上型板51は垂直方向に、また、保持板52、および、曲げ板58については水平方向に、それぞれスライド移動が可能となっている。
【0067】
そして、厚紙2が先端癖付け曲げ工程22fに投入されると、図13(a)に示すように、保持板52が厚紙2に当接することで、保持板52の凸部52aと、固定板53の凹部53aとの間に厚紙2の凸部2wが挟まれ、厚紙2の搬送姿勢が確実に保持される。その後、図13(b)に示すように、曲げ板58が水平方向のスライド移動により厚紙2の上部を押し倒し、厚紙2の先端部は直角に折り曲げられた後、図13(c)に示すように、上型板51が下降移動することで厚紙2の上端部は傾斜部51aに当接され、さらに斜下方へと折り曲げられることで、厚紙2の先端部の折り部2cが成形される。そして、これら一連の動作が終了すると、上型板51と、保持板52と、曲げ板58は一斉にスライド移動される前の元の位置まで戻され(図13(d)参照)、厚紙2は次工程の折り返し曲げ工程22gへと搬出される。
【0068】
[折り返し曲げ工程22g]
次に、図14、および、図15を用いて、折り返し曲げ工程22gの詳細について説明する。
折り返し曲げ工程22gは、厚紙2の折り部2cより下段に成形された第二屈曲部2q(図2を参照)に沿って屈曲させ、表層紙2bを成形する工程であるが、主な構成は前述の先端癖付け曲げ工程22fと同じく、搬送レール32の上方に設けられる上型板54、曲げ板59、および、保持板55と、保持板55の対向側に設けられる固定板56等から成形される。
【0069】
ここで断面視において、上型板54は一方の側面(図14に示す右側)を搬送レール32の中心軸に沿わせるようにして配置されており、また、曲げ板59、および、保持板55は前記上型板54の下方、かつ、前記上型板54と対向する側に配置されている。
【0070】
また、上型板54には搬送レール32側の側面の下端部において、傾斜部54aが成形されており、保持板55には搬送レール32側の側面の上下中央部において、矩形状の凸部55aが成形されている。なお、保持板55の対向側には搬送レール32(図5を参照)に固設された固定板56が設けられており、保持板55と向き合う面において、凸部55aの形状に沿った凹部56aが成形されている。また、固定板56の保持板55と対向する側の面は、上型板54の傾斜部54aに沿って斜形状に成形される。
【0071】
ここで、上型板54、保持板55、および、曲げ板59には、各々電動シリンダー等からなるアクチュエータが具備されており、上型板54は垂直方向に、また、保持板55、および、曲げ板59は水平方向に、それぞれスライド移動が可能となっている。
【0072】
そして、厚紙2が折り返し曲げ工程22gに投入されると、図15(a)に示すように、保持板55が厚紙2に当接することで、保持板55の凸部55aと、固定板56の凹部56aとの間に厚紙2の凸部2wが挟まれ、厚紙2の搬送姿勢が確実に保持される。その後、図15(b)に示すように、曲げ板59が水平方向のスライド移動により厚紙2の上部を押し倒し、厚紙2の先端部は直角に折り曲げられた後、図15(c)に示すように、上型板54が下降移動することで厚紙2の上部は傾斜部54aに当接され、さらに斜下方へと折り曲げられる。そして、これら一連の動作が終了すると、上型板54と、保持板55と、曲げ板59は一斉にスライド移動される前の元の位置まで戻され(図15(d)参照)、厚紙2は次工程の折り返し成形工程22hへと搬出される。
【0073】
[折り返し成形工程22h]
次に、図16を用いて、折り返し成形工程22hの詳細を説明する。
折り返し成形工程22hは、上述の先端癖付け曲げ工程22fにより成形された厚紙2の折り部2cを、さらに内側に折り込むための工程であり、搬送レール60の一方の片側に配置された、複数の回転ローラ57・57・・・、および、駆動ローラ61・61等により構成される。
【0074】
複数の回転ローラ57・57・・・は搬送レール60の一側面側、すなわち、搬送される厚紙2の表層紙2b側(図16に示す左側)において各々軸支して設けられており、かつ、平面視にて搬送方向に沿って一列に並べて並設されている。
【0075】
前記回転ローラ57・57・・・の形状は搬送レール60側に向かって直径寸法が徐々に大きくなる円錐形状に成形されており、かつ、回転ローラ57・57・・・の搬送レール60側先端部の直径は、各々異なった直径寸法によって成形されている。
【0076】
そして、これら複数の回転ローラ57・57・・・の配置は、上流側に最も小さな直径寸法からなる回転ローラ57を配設し、その後、徐々に直径寸法の大きな回転ローラ57を配設して構成されている。すなわち、これら複数の回転ローラ57・57・・・は上流側から下流側に向かって徐々に外周面の傾斜角度が大きくなるように配置されている。
【0077】
前記複数の回転ローラ57・57・・・の下流側(搬送方向後側)には、外周面において互いに隣接する二個の駆動ローラ61・61が設けられており、該駆動ローラ61・61の各々の回転軸が折り部2cの傾斜角度と平行になるようにして配設されている。なお、前記駆動ローラ61・61はウレタンゴム等の弾性部材から成形されており、両駆動ローラ61・61の間に厚紙2の折り部2cが挟み込まれた状態での密着度を高めている。
【0078】
搬送レール60は搬送方向の正面視において、前記複数の回転ローラ57・57・・・の配置される側(図16に示す左側)に傾斜面60aを有する略直角三角形状からなる部材から成形されており、傾斜面60aと対向側の側面において、上下中央部に矩形状の溝部60bが設けられている。
【0079】
折り返し成形工程22hに投入された厚紙2は、凸部2wを溝部60bに規制されながら、搬送レール60に沿って搬送される。この際、まず上流側(搬送方向前側)に配置された回転ローラ57の外周面が折り部2cと当接され、その後、厚紙2は搬送されながら、徐々に傾斜角度の大きな回転ローラ57の外周面と当接されることで、折り部2cはさらに内側に折り畳まれていく。そして、複数の回転ローラ57・57・・・の全てを通過することにより折り畳まれた折り部2cは、その後、二個の駆動ローラ61・61の間に挟み込まれて、強固な折り目が成形されるのである。前記駆動ローラ61・61の間を通過した厚紙2は次の工程の溶着工程22iへと搬出される。
【0080】
[溶着工程22i]
次に、図17、および、図18を用いて、溶着工程22iの詳細を説明する。
溶着工程22iは、厚紙2の凸部2wの突出部と表層紙2bの内面とを圧着溶着する工程であり、主に搬送レール32の上方に設けられる上型板62や、圧着板63(右圧着板63a、および、左圧着板63b)や、支持板64や、熱板65等により構成される。
【0081】
上型板62や、圧着板63や、支持板64は略矩形状の板部材から成形されており、かつ、これら上型板62や、圧着板63や、支持板64は長手方向を搬送方向に沿って配置される。また、上型板62は搬送レール32の鉛直上方に配置されており、上型板62と搬送レール32との間において、上から順に圧着板63と、支持板64と、が配置される。
【0082】
上型板62の下面中央部には、搬送方向正面視において矩形状の窪み62aが設けられており、該窪み62aの幅寸法が厚紙2の上端部(図2に示す第二屈曲部2q)の幅寸法に比べて僅かに大きな値となるようにして、前記窪み62aは成形されている。
【0083】
圧着板63は搬送レール32の左右両側に各々対向して配置される右圧着板63a、および、左圧着板63bによって構成されており、左右両圧着板63a・63bの対向面には、上下略中央部に搬送レール32側に向かって延出する矩形状の凸部63c・63cが成形されている。なお、凸部63cの厚み寸法が、厚紙2の凸部2wの幅寸法に比べて僅かに小さな値となるようにして、前記凸部63cは成形されている。
【0084】
支持板64は搬送レール32の一側面側、すなわち、搬送される厚紙2の表層紙2bが成形されている側(図17に示す左側)に配置されており、前記支持板64の先端下部には、搬送レール32に向かって突出する矩形状の凸部64aが成形されている。
【0085】
熱板65は搬送レール32の一側面側において、支持板64と同じ側に設けられており、前記熱板65の上部において、搬送レール32側には、上方に向かって延出する突出部65aが成形されている。また、下方の基部には電熱ヒータ等が埋没されており、突出部65aの上端部においても十分に熱が伝搬される構成となっている。
【0086】
ここで、上型板62や、圧着板63や、支持板64や、熱板65には、各々電動シリンダー等からなるアクチュエータが具備されており、上型板62や熱板65は垂直方向に、また、圧着板63については水平方向に、それぞれスライド移動が可能となっている。また、支持板64については垂直方向に加えて、さらに水平方向にもスライド移動を可能とするべく、別途アクチュエータが具備されている。
【0087】
そして、厚紙2が溶着工程22iに投入されると、図18(a)に示すように、熱板65が上昇移動し、突出部65aの先端部が厚紙2の凸部2wの突出部に接触することで、該凸部2wの突出部に予め貼付されたヒートシール剤が暖められ、粘着性が復元される。そして、一定時間が経過した後、熱板65は下降移動し、スライド移動される前の元の位置まで戻された後、図18(b)に示すように、支持板64が上昇移動して厚紙2に接近し、また、上型板62が下降移動して、下面に設けられた窪み62aにより厚紙2の上端部を保持する。
【0088】
ここで、厚紙2の上端部の断面形状については、上型板62により下方に押さえ込まれることで厚紙2自身の弾性力により表層紙2bが下方に落ち込み、完全な矩形状を成形することが困難な場合が多い。そこで、図18(c)に示すように、支持板64を一旦上昇移動させることで、凸部64aを介して表層紙2bを持ち上げることで、厚紙2の上端部における断面形状を完全な矩形状に規制するのである。その後、左右両圧着板63a・63bが各々厚紙2に向かって水平方向にスライド移動して接近し、厚紙2の凸部2wと表層紙2bは前記左右両圧着板63a・63bに挟み込まれて圧着溶着される。
【0089】
このように、前記溶着部(溶着工程22i)では、紙片(厚紙2)の中央部に成形した凸部2wと、該凸部2wの突出側に折り返した厚紙2の上部(表層紙2b)と、が溶着材を介して圧着溶着され、該圧着溶着をおこなう前に、前記厚紙2の凸部2wの突出側に折り返した部位を、前記凸部2wに対して位置決めをおこなう、ので、折り返された厚紙2の上端部に成形される断面形状を完全な矩形状に規制することができ、高品質な紙製挟持具の自動生産を実現することができる。
【0090】
[孔明工程22j]
最後に孔明工程22jについて説明する。
孔明工程22jは折り曲げられた厚紙2の上部中央に貫通孔3を穿孔する工程であり、搬送レール32の上方において、搬送方向の左右両側に互いに対向して設けられる抜き打ち板と固定板等により構成されている。
【0091】
前記抜き打ち板には水平方向にスライド移動可能とするべく、電動シリンダー等からなるアクチュエータが設けられており、厚紙2が孔明工程22jに搬送されてくると、前記アクチュエータが作動し、厚紙2が抜き打ち板と固定板との間に挟み込まれて、該厚紙2の上部中央に貫通孔3が打ち抜かれる。
【0092】
その後、厚紙2はフィーダー装置34によって搬出部23に搬送され、搬出部23に設けられるベルトコンベアによって装置外へ搬出される。
【0093】
このように、折り返した短冊状の紙片(厚紙2)により構成される紙製挟持具1の製造システム(紙製挟持具製造装置20)であって、厚紙2の長手方向に折り返し用の複数の溝部(凹部2s1〜2s8)を成形する筋入部(筋入工程22a・22b・22c)と、厚紙2の中央部に長手方向に沿って凸部2wを成形する凸部成形部(凸部成形工程22d)と、厚紙2の先端上部を長手方向に沿って折り曲げる先端癖付け曲げ部(先端癖付け曲げ工程22f)と、前記凸部2wの上部近傍において厚紙2を長手方向に沿って折り曲げる折り返し曲げ部(折り返し曲げ工程22g)と、前記先端癖付け曲げ工程22fにて折り曲げた厚紙2の上端部をさらに扱いて折り癖を付ける折り返し成形部(折り返し成形工程22h)と、折り返した厚紙2を溶着材により圧着して綴じる溶着部(溶着工程22i)と、成形された紙片(紙製挟持具1)の上端部中央に貫通孔3を設ける孔明部(孔明工程22j)と、により紙製挟持具1の製造システム(紙製挟持具製造装置20)を構成するので、紙製挟持具1の品質の均一化が図れる。すなわち、人手による場合には、作業者の熟練度合いのバラツキが、生産される紙製挟持具1の品質へも影響し、そのまま該紙製挟持具の品質のバラツキを発生させるが、本発明による紙製挟持具製造装置20により紙製挟持具1を生産することで、作業者の熟練度合いに頼ることなく、紙製挟持具1の品質の均一化を図ることができる。
また、本発明における紙製挟持具製造装置20によって紙製挟持具1の自動生産を実現することができるため、人手による場合と比べて、生産量もあがり大量生産が可能となり、紙製挟持具1の製造コストを大幅に低減することができる。すなわち、紙製挟持具1を効率的、かつ、経済的に連続生産することができる紙製挟持具製造装置20を提供することができる。
【0094】
また、前記筋入部(筋入工程22a・22b・22c)と、凸部成形部(凸部成形工程22d)と、先端癖付け曲げ部(先端癖付け曲げ工程22f)と、折り返し曲げ部(折り返し曲げ工程22g)と、折り返し成形部(折り返し成形工程22h)と、溶着部(溶着工程22i)と、孔明部(孔明工程22j)において、紙片(厚紙2)は長手方向を搬送方向に沿わせて、直立の状態にて加工されるので、搬送方向の左右両側の空間を利用して各工程(各筋入工程22a・22b・22cと、凸部成形工程22dと、先端癖付け曲げ工程22fと、折り返し曲げ工程22gと、折り返し成形工程22hと、溶着工程22iと、孔明工程22j)における製造工程を配備することが可能となり、紙製挟持具製造装置20の外形を極力小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の実施例であるカレンダーの全体構成を示す斜視図。
【図2】同じくA−A´断面を示す断面構成図。
【図3】同じく紙製挟持具が成形される過程を示す構成図。
【図4】紙製挟持具の折り曲げ位置を示す図であり、(a)は折り曲げられる前の状態を示す側面図であり、(b)は折り曲げられた後の状態を示す側面図。
【図5】紙製挟持具製造装置の全体を示す側面図。
【図6】筋入工程を搬送方向から見る正面図。
【図7】筋入工程の工程順序を示すモデル図。
【図8】凸部成形工程を搬送方向から見る正面図。
【図9】凸部成形工程の工程順序を示すモデル図。
【図10】逆L切断工程を搬送方向から見る正面図。
【図11】逆L切断工程の工程順序を示すモデル図。
【図12】先端癖付け曲げ工程を搬送方向から見る正面図。
【図13】先端癖付け曲げ工程の工程順序を示すモデル図。
【図14】折り返し曲げ工程を搬送方向から見る正面図。
【図15】折り返し曲げ工程の工程順序を示すモデル図。
【図16】折り返し工程を搬送方向から見る図であり、(a)は回転ローラの設置箇所、(b)は駆動ローラの設置箇所を示す正面図。
【図17】溶着工程を搬送方向から見る正面図。
【図18】溶着工程の工程順序を示すモデル図。
【符号の説明】
【0096】
1 紙製挟持具
2 厚紙
2s 凹部
2w 凸部
3 貫通孔
20 紙製挟持具製造装置
21 投入部
22 成形部
22a 第一筋入工程
22b 第二筋入工程
22c 第三筋入工程
22d 凸部成形工程
22e 逆L切断工程
22f 先端癖付け曲げ工程
22g 折り返し曲げ工程
22h 折り返し成形工程
22i 溶着工程
22j 孔明工程
23 搬出部
31 フレーム
32 搬送レール
38 載置部
39 搬送ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り返した短冊状の紙片により構成される紙製挟持具の製造システムであって、
紙片の長手方向に折り返し用の複数の溝部を成形する筋入部と、
紙片の中央部に長手方向に沿って凸部を成形する凸部成形部と、
紙片の先端上部を長手方向に沿って折り曲げる先端癖付け曲げ部と、
前記凸部の上部近傍において紙片を長手方向に沿って折り曲げる折り返し曲げ部と、
前記先端癖付け曲げ部にて折り曲げた紙片の上端部をさらに扱いて折り癖を付ける折り返し成形部と、
折り返した紙片を溶着材により圧着して綴じる溶着部と、
成形された紙片の上端部中央に貫通孔を設ける孔明部と、
からなる、ことを特徴とする、紙製挟持具の製造システム。
【請求項2】
前記凸部成形部と、先端癖付け曲げ部と、の間には、紙片の中央部に成形した凸部の下隅部に切込みを入れて突出方向と逆方向に折り曲げる逆L切断部を設ける、
ことを特徴とする、請求項1に記載の紙製挟持具の製造システム。
【請求項3】
前記溶着部では、紙片の中央部に成形した凸部と、該凸部の突出側に折り返した紙片の上部と、が溶着材を介して圧着溶着される前に、前記紙片の凸部の突出側に折り返した部位を、前記凸部に対して位置決めをおこなう、
ことを特徴とする、請求項1に記載の紙製挟持具の製造システム。
【請求項4】
前記筋入部と、凸部成形部と、先端癖付け曲げ部と、折り返し曲げ部と、折り返し成形部と、溶着部と、孔明部において、
紙片は長手方向を搬送方向に沿わせて、直立の状態にて加工される、
ことを特徴とする、請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の紙製挟持具の製造システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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