説明

紫外線発光源の寿命判定方法、紫外線光源装置および紫外線照射装置

【課題】 紫外線を透過させる透過部材を通して紫外線を照射する紫外線発光源において、紫外線センサの出力の絶対値が変化しても、これらに影響されることなく、紫外線発光源の寿命を正確に判定することができる紫外線発光源の寿命判定方法、紫外線光源装置および紫外線照射装置を提供する。また、紫外線発光源を採用した紫外線光源装置や紫外線照射装置において、これらの装置が対象製品を製造している最中に紫外線センサの出力が変化して対象製品を損なうなどの、製品の歩留まりを悪くするような状況を防止する。また、対象製品を製造している最中に、紫外線発光源をメンテナンスしなければならなくなるような状況も回避する。
【解決手段】 透過部材4を透過した紫外線1aのスペクトル形状の時間的変化から紫外線発光源1の寿命を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エキシマランプなどの紫外線発光源の寿命を判定する寿命判定方法と、この紫外線発光源の寿命判定方法を採用した紫外線光源装置および紫外線照射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、液晶テレビなどの薄型テレビの製造工程などで、ガラス基材表面の有機物除去を目的として高強度の紫外線照射が行われている。これは、紫外線の持つ強いエネルギーにより有機物の化学結合を切断し、CO2などのガスに変えることで表面を清浄にするものである。従来は185nmと254nmに発光波長を持つ低圧水銀ランプが用いられていたが、基材の大型化に伴って真空紫外線領域に中心波長を持つエキシマランプが急速に普及している。例えば、キセノンエキシマランプは、低圧水銀ランプより高いエネルギーをもち、172nm以外に発光を持たない。従って、キセノンエキシマランプを採用すれば、投入したエネルギーがすべて波長172nmの紫外線発光になり、紫外線照射の処理効率が高いので、基材大型化によるライン速度の高速化に対応することができるようになる。また、低圧水銀ランプを用いた場合などのように、処理に関係ない波長の紫外線を基材に吸収させて基材の温度を上昇させることがないので、基材を低温で処理することが可能で、温度上昇による熱応力の発生で基板が破損したりすることを避けることができるようになる。
【0003】
そのため、最近ではエキシマランプを採用した種々の光源装置が提案されている。例えば、特許文献1には、紫外線を放射するエキシマランプと、このエキシマランプを取り囲むとともに、一部に紫外線透過部材を有するケーシングとを備え、被処理物の大面積化に対応できるようにしたエキシマランプ光源装置と、その製造方法の技術が開示されている。
【0004】
ところが、このようなエキシマランプを採用した光源装置を基材などの対象製品の洗浄に用いる場合、紫外線照射による有機物除去を確実に行なうためには、紫外線の強度を精度よく観測し、強度の低下が観測された場合には紫外線ランプを速やかに交換しなければならない。
【0005】
そこで、エキシマランプを採用した光源装置として紫外線モニタを備えたものが開発されている。例えば、特許文献2には、エキシマランプと、光照射透過部材を有するとともにこのエキシマランプを収納するランプハウスと、光照射透過部材からの紫外線強度を検出する紫外線モニタとを備え、光照射透過部材からの紫外線強度を容易に測定することができるようにした紫外線照射装置の技術が開示されている。
【0006】
このような紫外線モニタを備えた紫外線照射装置においては、エネルギーレベルの高い紫外線のために、紫外線モニタのセンサが損傷を受けやすく、再現性が良く長期間にわたって安定した観測を行うためには、一般にセンサに高い耐久性が求められる。
【0007】
従来、このような紫外線の測定には、バンドギャップが狭いシリコン等と波長フィルタとを組み合わせたセンサ素子や、光電管等が使用されていた。しかし、このようなセンサは紫外線に対して耐久性が不十分で長時間の測定に耐えられないため、キセノンエキシマランプのような紫外線発光源には利用することができなかった。
【0008】
そこで、近時、耐久性が十分なセンサが求められるようになってきた。例えば、非特許文献1には、ダイヤモンド薄膜を使用して耐久性を高めた紫外線センサの技術が開示されている。
【0009】
ダイヤモンド薄膜は、従来のバンドギャップが狭いシリコン等の素子と異なり、バンドギャップが広い半導体としての性質を持つので、波長フィルタを用いる必要がなく、また、耐熱性及び耐久性が優れているので、信頼性が高いセンサを低コストで実現することができる。例えば、このダイヤモンド薄膜を使用した半導体センサは、従来のシリコン等と波長フィルタとを組み合わせたセンサ素子よりも安価で耐久性が優れている。また、従来の光電管等を使用したセンサに比べて小型化及び軽量化ができるとともに、複雑な回路構成が不要になるという利点がある。
【特許文献1】特開2003−195000号公報
【特許文献2】特開2003−275576号公報
【非特許文献1】林和志、外2名、「高配向性ダイヤモンド薄膜を用いた紫外線センサの開発」、R&D神戸製鋼技報Vol.52、NO.2、pp.23−26
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、ダイヤモンド薄膜を用いて耐久性を高めたセンサを採用しても、従来から指摘されている次のような紫外線センサの問題点は依然として解決されていなかった。すなわち、特許文献2に記載されているような紫外線センサも、非特許文献1に記載されているようなダイヤモンド薄膜を用いたセンサも、従来の紫外線センサは、次のような問題点があった。
【0011】
第1の問題点は、紫外線等の短波長領域の光はエネルギーレベルが高いため、紫外線を照射している間に、雰囲気中に存在する有機物が分解されてセンサ表面に付着する虞があることである。センサ表面に有機物等が付着すると、光の入射量が減るため、検出される信号強度が低下する。
【0012】
第2の問題点は、センサ表面には水が吸着していることがあるが、強い紫外線を受けると、センサ表面に吸着している水が解離してイオン化し、電極間に印加される電界によって、センサ表面を容易に、且つゆっくりと移動するため、電気抵抗が低下する原因となることである。このような場合には、紫外線照射開始又は終了時において数百秒以上の時間的な出力変化が観測されるなど、光の強度に応じた出力が得られないことがある。
【0013】
第3の問題点は、エキシマランプの出力が低下した場合、紫外線発光源そのものの出力が低下したのか、紫外線発光源の前面に配される透過部材が強烈な紫外線を受けて劣化をおこし、透過部材の透過率が変化して透過光の量が減ってしまったのか区別できないことである。例えば、172nmに中心波長を持つキセノンエキシマランプでは、この付近の波長の紫外線が空気中の酸素の吸収を強く受けるので、通常、内部を窒素などで満たした箱にランプと反射鏡とを設置し、石英ガラス透過部材などを通じて基材に紫外線を照射させるが、この石英ガラス透過部材が紫外線により劣化して、透過する光の量が減ってしまうということが起きる。
【0014】
特許文献2に記載されているような紫外線センサや、非特許文献1に記載されているようなダイヤモンド薄膜を用いたセンサなど、従来のセンサは、透過部材を透過してセンサに到達した紫外線の強度を単純に測定し、その強度に基づいて寿命の判定をしていたので、モニタする光源そのものの出力が低下したのか、センサに到達した紫外線の強度が上述のような第1〜第3の問題点により低下したのか区別することができず、正確に光源の寿命を判定することができなかった。
【0015】
また、第4の問題点は、このような第1〜第3の問題点によるセンサ出力の変化は、液晶テレビのガラス基材などの製造工程において、対象製品に紫外線を照射している間に発生する可能性があるということである。そして、製造工程でこのようなトラブルにより対象製品を損なうと、対象製品の歩留まり等に大きな影響を与えてしまうことになったり、製造ラインを止めて紫外線発光源を交換するか、石英ガラス透過部材を交換するかなどのメンテナンスを行わなければならなくなる。
【0016】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、有機物が分解されてセンサ表面に付着したり、センサ表面に吸着している水が解離してイオン化したり、透過部材の透過率が変化したりするなどの原因でセンサの出力の絶対値が変化しても、これらに影響されることなく、紫外線発光源の寿命を正確に判定することができる紫外線発光源の寿命判定方法、紫外線光源装置および紫外線照射装置を提供することを課題にしている。
【0017】
また、紫外線発光源を採用した紫外線光源装置や紫外線照射装置において、これらの装置が対象製品を製造している最中に紫外線センサの出力が変化して対象製品を損なうなどの、製品の歩留まりを悪くするような状況を防止することができるとともに、対象製品を製造している最中に、紫外線発光源をメンテナンスしなければならなくなるような状況も回避することができる、紫外線発光源の寿命判定方法、紫外線光源装置および紫外線照射装置を提供することを課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するための本発明に係る紫外線発光源の寿命判定方法は、紫外線を透過させる透過部材を通して紫外線を照射する紫外線発光源において、上記透過部材を透過した紫外線のスペクトル形状の時間的変化から紫外線発光源の寿命を判定することを特徴とする紫外線発光源の寿命判定方法である。
【0019】
本発明によれば、透過部材を透過した紫外線により有機物が分解されてセンサ表面に付着したり、センサ表面に吸着している水が解離してイオン化したり、透過部材の透過率が変化したりするなどの原因でセンサの出力の絶対値が変化しても、これらの原因に影響を受けないスペクトル形状を基準にし、このスペクトル形状の時間的変化から紫外線発光源の寿命を判定するので、紫外線発光源の寿命を正確に判定することができるようになる。
【0020】
また、紫外線発光源を採用した紫外線光源装置や紫外線照射装置において、対象製品を製造している最中に紫外線センサの出力が変化して対象製品を損なうなどの、製品の歩留まりを悪くするような状況を防止することができる。また、対象製品を製造している最中に紫外線発光源をメンテナンスしなければならなくなるような状況も回避することができるようになる。
【0021】
上記課題を解決するための本発明に係るもう一つの紫外線発光源の寿命判定方法は、紫外線を透過させる透過部材を通して紫外線を照射する紫外線発光源において、上記透過部材を透過した紫外線の少なくとも2つの異なる波長に対する強度比の時間的変化から紫外線発光源の寿命を判定することを特徴とする紫外線発光源の寿命判定方法である。
【0022】
本発明によれば、透過部材を透過した紫外線により有機物が分解されてセンサ表面に付着したり、センサ表面に吸着している水が解離してイオン化したり、透過部材の透過率が変化したりするなどの原因でセンサの出力の絶対値が変化しても、これらの原因に影響を受けない紫外線の異なる波長に対する強度比を基準にし、この強度比の時間的変化から紫外線発光源の寿命を判定するので、すべてのスペクトルを測定することなく紫外線発光源の寿命を正確に判定することができるようになり、装置の簡素化、測定時間の短縮化が可能となる。
【0023】
また、紫外線発光源を採用した紫外線光源装置や紫外線照射装置において、対象製品を製造している最中に紫外線センサの出力が変化して対象製品を損なうなどの、製品の歩留まりを悪くするような状況を防止することができる。また、対象製品を製造している最中に紫外線発光源をメンテナンスしなければならなくなるような状況も回避することができるようになる。
【0024】
ここで、上記少なくとも2つの異なる波長のうち、1つは、紫外線発光源の強度がピークになる波長の近傍の波長であり、残りの少なくとも1つは、最も経時的変化の見られる波長の近傍の波長であることが好ましい。
【0025】
この好ましい態様によれば、第1点を紫外線発光源の強度がピークになる波長の近傍の波長に、残りの少なくとも1点を最も経時的変化の見られる波長の近傍の波長にとることで、紫外線の異なる波長に対する強度比の変化がより鮮明になり、精度の高い測定が可能となる。
【0026】
また、上記紫外線発光源は、キセノンエキシマランプであることが好ましい。
【0027】
この好ましい態様によれば、キセノンエキシマランプは、高いエネルギーをもち、172nm以外に発光を持たないので投入したエネルギーがすべて紫外線発光になり、処理効率が高く。基材大型化とライン速度の高速化に対応することができるようになる。また、処理に関係ない波長の紫外線を基材に吸収させて基材の温度を上昇させることがないので、基材を低温で処理することが可能で、温度上昇による熱応力の発生で基板が破損したりすることを避けることができるようになる。
【0028】
また、上記透過部材は、石英ガラスであることが好ましい。
【0029】
この好ましい態様によれば、紫外領域の光の透過率を選択的に高めることができる。
【0030】
そして、この紫外線発光源の寿命判定方法は、標準紫外線を発生させる校正用紫外線発光源で発生し透過部材を透過した標準紫外線の変化から、透過部材の紫外線劣化による紫外線吸収率を測定するとともに、この紫外線吸収率で、上記紫外線発光源で発生し透過部材を透過した紫外線の強度を補正することにより、透過部材の紫外線劣化の影響を取り除いた上記紫外線発光源の寿命を判定することが好ましい。
【0031】
この好ましい態様によれば、例えば処理用の紫外線発光源が消灯した時に、この処理用の紫外線発光源より小さな出力を持つ校正用紫外線発光源から標準紫外線を透過部材に透過させ、この標準紫外線のスペクトルの変化や特定波長における強度比の変化を測定することにより、透過部材の紫外線劣化を判断することが可能になる。その結果、透過部材の紫外線劣化による紫外線吸収率で、紫外線発光源で発生し透過部材を透過した紫外線の強度を補正して、透過部材の紫外線劣化の影響を取り除いた紫外線発光源の寿命を判定するので、透過部材を透過した紫外線のスペクトル形状の時間的変化や、異なる波長に対する強度比の時間的変化から紫外線発光源の寿命を判定する方法よりも、さらに高精度に紫外線発光源の寿命を判定することができるようになる。
【0032】
また、この紫外線発光源の寿命判定方法は、上記校正用紫外線発光源で発生し透過部材を透過した標準紫外線の変化から、透過部材の紫外線劣化による紫外線吸収率を測定することにより、透過部材の寿命を判定することが好ましい。
【0033】
この好ましい態様によれば、透過部材の寿命を判定することができるので、透過部材だけの劣化を適切に判断して、被処理基材に大きなダメージを与える前に透過部材を取り替えることにより、装置や被処理基材を破損することを防止することができるようになる。また、非常に高価な透過部材を、その寿命期間一杯まで使用することができるので、経済的である。
【0034】
上記課題を解決するための本発明に係る紫外線光源装置は、紫外線を発生させる紫外線発光源と、この紫外線発光源で発生する紫外線を透過させる透過部材とを備えた紫外線光源装置であって、上記紫外線発光源で発生し、透過部材を透過した紫外線のスペクトル形状を測定する測定手段と、上記スペクトル測定手段で測定した紫外線のスペクトル形状を記録保持する記録手段と、上記スペクトル形状の時間的変化から紫外線発光源の寿命を判定する寿命判定手段とを備えたことを特徴とする紫外線光源装置である。
【0035】
本発明によれば、透過部材を透過した紫外線のスペクトル形状を測定するとともに記録保持して、このスペクトル形状の時間的変化から紫外線発光源の寿命を判定するので、前述の原因でセンサの出力の絶対値が変化しても、これらの原因に影響を受けないスペクトル形状を基準にし、このスペクトル形状の時間的変化から紫外線発光源の寿命を判定するので、紫外線発光源の寿命を正確に判定することができるようになる。
【0036】
また、紫外線発光源を採用した紫外線光源装置や紫外線照射装置において、対象製品を製造している最中に紫外線センサの出力が変化して対象製品を損なうなどの、製品の歩留まりを悪くするような状況を防止することができる。また、対象製品を製造している最中に紫外線発光源をメンテナンスしなければならなくなるような状況も回避することができるようになる。
【0037】
上記課題を解決するための本発明に係るもう一つの紫外線光源装置は、紫外線を発生させる紫外線発光源と、この紫外線発光源で発生する紫外線を透過させる透過部材とを備えた紫外線光源装置であって、上記透過部材を透過した紫外線の少なくとも2つの異なる波長に対する強度を測定する測定手段と、上記測定手段で測定した強度を記録保持する記録手段と、上記少なくとも2つの異なる波長に対する強度比の時間的変化から紫外線発光源の寿命を判定する寿命判定手段とを備えたことを特徴とする紫外線光源装置である。
【0038】
本発明によれば、前述の原因でセンサの出力の絶対値が変化しても、これらの原因に影響を受けない紫外線の異なる波長に対する強度比を基準にし、この強度比の時間的変化から紫外線発光源の寿命を判定するので、すべてのスペクトルを測定することなく紫外線発光源の寿命を正確に判定することができるようになり、装置の簡素化、測定時間の短縮化が可能となる。
【0039】
また、紫外線発光源を採用した紫外線光源装置や紫外線照射装置において、対象製品を製造している最中に紫外線センサの出力が変化して対象製品を損なうなどの、製品の歩留まりを悪くするような状況を防止することができる。また、対象製品を製造している最中に紫外線発光源をメンテナンスしなければならなくなるような状況も回避することができるようになる。
【0040】
ここで、上記紫外線光源装置は、上記測定手段は、異なる波長を透過する少なくとも2つのフィルタと、上記フィルタを切り替える切り替え手段と、フィルタを透過した紫外線の強度を測定する紫外線センサとを備えたことが好ましい。
【0041】
この好ましい態様によれば、測定手段が、異なる波長を透過する少なくとも2つのフィルタと、フィルタを切り替える切り替え手段と、フィルタを透過した紫外線の強度を測定する紫外線センサとを備えたもので構成されているので、複数の紫外線センサを必要とせず、一つの紫外線センサで簡単に、透過部材を透過した紫外線の少なくとも2つの異なる波長に対する強度を測定することができるようになる。
【0042】
また、上記紫外線光源装置は、標準紫外線を発生させる校正用紫外線発光源を備え、上記測定手段は、この校正用紫外線発光源で発生し透過部材を透過した標準紫外線の変化から透過部材の紫外線劣化による紫外線吸収率を測定するとともに、この紫外線吸収率で、上記紫外線発光源で発生し透過部材を透過した紫外線の強度を補正することにより、透過部材の紫外線劣化の影響を取り除いた上記紫外線発光源の寿命を判定するものであることが好ましい。
【0043】
この好ましい態様によれば、例えば処理用の紫外線発光源が消灯した時に、この処理用の紫外線発光源より小さな出力を持つ校正用紫外線発光源から標準紫外線を透過部材に透過させ、この標準紫外線のスペクトルの変化や特定波長における強度比の変化を測定することにより、透過部材の紫外線劣化を判断することが可能になる。その結果、透過部材の紫外線劣化による紫外線吸収率で、上記紫外線発光源で発生し透過部材を透過した紫外線の強度を補正して、透過部材の紫外線劣化の影響を取り除いた上記紫外線発光源の寿命を判定するので、透過部材を透過した紫外線のスペクトル形状の時間的変化や、異なる波長に対する強度比の時間的変化から紫外線発光源の寿命を判定する紫外線光源装置よりも、さらに高精度に紫外線発光源の寿命を判定することができるようになる。
【0044】
また、この紫外線光源装置は、校正用紫外線発光源で発生し透過部材を透過した標準紫外線の変化から透過部材の紫外線劣化による紫外線吸収率を測定することにより、透過部材の寿命を判定することが好ましい。
【0045】
この好ましい態様によれば、透過部材の寿命を判定することができるので、透過部材だけの劣化を適切に判断して、被処理基材に大きなダメージを与える前に透過部材を取り替えることにより、装置や被処理基材を破損することを防止することができるようになる。また、非常に高価な透過部材を、その寿命期間一杯まで使用することができるので、経済的である。
【0046】
さらに、この好ましい態様によれば、透過部材を透過した標準紫外線の変化から透過部材の紫外線劣化による紫外線吸収率を測定し、この紫外線吸収率で、上記紫外線発光源で発生し透過部材を透過した紫外線の強度を補正して、透過部材の紫外線劣化の影響を取り除いた上記紫外線発光源の寿命を判定するので、透過部材を透過した紫外線のスペクトル形状の時間的変化や、異なる波長に対する強度比の時間的変化から紫外線発光源の寿命を判定する紫外線光源装置よりも、さらに高精度に紫外線発光源の寿命を判定することができるようになる。
【0047】
また、上記測定手段は、ダイヤモンド薄膜を用いた紫外線センサを備えていることが好ましい。
【0048】
この好ましい態様によれば、紫外線センサがダイヤモンド薄膜を用いたものであるので、より耐久性・安定性の高い紫外線光源装置とすることができる。
【0049】
また、上記ダイヤモンド薄膜は、高配向性ダイヤモンド層からなることが好ましい。
【0050】
この好ましい態様によれば、ダイヤモンド薄膜が、高配向性ダイヤモンド層からなり、多結晶ダイヤモンドにおける結晶粒子の成長方向及び面内方向が共に基板面に対して一定方向に配向しているので、従来のダイヤモンドセンサに比べて検知性能が向上する。
【0051】
ここで、上記ダイヤモンド層は、表面が(100)面であり、結晶粒子が上記基板に対して一方向に配向している高配向性ダイヤモンド層であることが好ましい。その場合は、表面が平坦な(001)ファセットが並ぶ特徴的な表面形態をとっているので、この膜の表面近傍における結晶欠陥密度が、一般的な多結晶膜に比べて小さく、キャリア移動度は1桁以上大きくなる結果、従来のダイヤモンドセンサに比べて検知性能が向上する。
【0052】
さらに、上記課題を解決するための本発明に係る紫外線照射装置は、上記の紫外線光源装置を備え、この紫外線光源装置で発生した紫外線を照射するものであることを特徴とする紫外線照射装置である。
【0053】
本発明に係る紫外線照射装置によれば、上述のような紫外線光源装置で発生した紫外線を対象製品に照射するものであるので、紫外線発光源の寿命を正確に判定できる結果、対象製品の製造途中で、紫外線センサの出力が変化して対象製品を損なうなどの、製品の歩留まりを悪くするような状況を防止することができるだけでなく、対象製品の製造途中で装置をメンテナンスしなければならなくなるような状況も回避することができるようになる。
【発明の効果】
【0054】
以上説明したように、本発明によれば、有機物が分解されてセンサ表面に付着したり、センサ表面に吸着している水が解離してイオン化したり、透過部材の透過率が変化したりするなどの原因でセンサの出力の絶対値が変化しても、これらに影響されることなく、紫外線発光源の寿命を正確に判定することができるようになる。
【0055】
また、紫外線発光源を採用した紫外線光源装置や紫外線照射装置において、紫外線発光源の寿命を正確に判定して、これらの装置において、対象製品を製造している最中に紫外線センサの出力が変化して対象製品を損なうなどの、製品の歩留まりを悪くするような状況を防止することができる。また、対象製品を製造している最中に紫外線発光源をメンテナンスしなければならなくなるような状況も回避することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係る紫外線光源装置10の構成を示す説明図である。
【0057】
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る紫外線光源装置10は、液晶テレビなどの薄型テレビの製造工程などで、例えばガラス基材などの基材表面の有機物除去を目的として高強度の紫外線照射を行うものであり、紫外線発光源1と、この紫外線発光源1で発生する紫外線1aを反射する反射鏡2と、この反射鏡2および紫外線発光源1を収納するランプボックス3と、このランプボックス3の開口部3aに取り付けられ、紫外線発光源1で発生する紫外線1aを透過させる透過部材4と、透過部材4を透過した紫外線1aを測定する測定手段5と、紫外線発光源1の寿命を判定する寿命判定システム6とを備えている。
【0058】
上記紫外線発光源1は、紫外線1aを発生させるための光源であり、本実施形態では、キセノンエキシマランプが採用されている。このキセノンエキシマランプは、低圧水銀ランプより高いエネルギーをもち、172nm以外に発光を持たない。従って、投入したエネルギーがすべて波長172nmの紫外線発光になり、処理効率が高いので、基材大型化によるライン速度の高速化に対応することができるようになる。また、低圧水銀ランプを用いた場合などのように、処理に関係ない波長の紫外線1aを基材に吸収させて基材の温度を上昇させることがないので、基材を低温で処理することが可能で、温度上昇による熱応力の発生で基板が破損したりすることを避けることができるようになる。
【0059】
上記反射鏡2は、紫外線発光源1で発生する紫外線1aを集光して下方に照射する表面が研磨されたステンレス板等で構成されている。
【0060】
上記ランプボックス3は、紫外線発光源1と反射鏡2とを収納する他、ランプボックス3内の空気に含まれる酸素に紫外線1aが吸収されることを防止するために、窒素ガスが封入されている。
【0061】
上記透過部材4は、紫外線発光源1を保護するとともに、この紫外線発光源1で発生する紫外線1aを透過させる部材であり、本実施形態では、石英ガラスで構成されている。
【0062】
上記測定手段5は、分光器5aと紫外線センサ5bとを有している。分光器5aは、例えば回折格子を用いた分光器のように、波長を選択可能なものが採用され、この選択波長は外部より制御することができるように構成されている。この分光器5aにより分光された紫外線1aは紫外線センサ5bに入り,その強度が測定され、この強度に係る電気信号は、ケーブル5cを介して寿命判定システム6に送られる。この紫外線センサ5bは、ダイヤモンド薄膜を用いたセンサであり、本実施形態では、紫外線発光源1で発生し、透過部材4を透過した紫外線1aのスペクトル形状を測定する。この紫外線センサ5bのダイヤモンド薄膜は、高配向性ダイヤモンド層からなり、多結晶ダイヤモンドにおける結晶粒子の成長方向及び面内方向が共に基板面に対して一定方向に配向している。
【0063】
ここで、上記ダイヤモンド層は、表面が(100)面であり、結晶粒子が上記基板に対して一方向に配向している高配向性ダイヤモンド層であることが好ましい。その場合は、表面が平坦な(001)ファセットが並ぶ特徴的な表面形態をとっているので、この膜の表面近傍における結晶欠陥密度が、一般的な多結晶膜に比べて小さく、キャリア移動度は1桁以上大きくなる結果、従来のダイヤモンドセンサに比べて検知性能が向上する。
【0064】
上記寿命判定システム6は、パーソナルコンピュータで構成され、スペクトル測定手段5で測定した紫外線1aのスペクトル形状を記録保持する記録手段6aと、スペクトル形状の時間的変化から紫外線発光源1の寿命を判定する寿命判定手段6bとを備えている。この記録手段6aは、パーソナルコンピュータのハードディスクで構成され、交換時期の紫外線発光源1のスペクトル形状と、スペクトル測定手段5で測定した紫外線1aのスペクトル形状とを数値データとして記録保持するものである。また、寿命判定手段6bは、パーソナルコンピュータのCPUとその記憶領域とで構成され、現在の紫外線発光源1のスペクトル形状が、記録手段6aに記録された交換時期の紫外線発光源1のスペクトル形状に達しているかどうかを比較して紫外線発光源1の寿命を判定するものである。
【0065】
次に、図1〜図3を参照して、第1の実施の形態に係る紫外線光源装置10に採用されている紫外線発光源1の寿命判定方法とその作用について説明する。
【0066】
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る紫外線光源装置10は、透過部材4が、紫外線発光源1で発生する紫外線1aを透過させ、測定手段5が、透過部材4を透過した紫外線1aのスペクトル形状を測定する。そして、パーソナルコンピュータで構成される寿命判定システム6の記録手段6aが、スペクトル測定手段5で測定した紫外線1aのスペクトル形状を記録保持するとともに、現在の紫外線発光源1のスペクトル形状が記録手段6aに記録された交換時期の紫外線発光源1のスペクトル形状に達しているかどうかを、寿命判定システム6の寿命判定手段6bが比較して、紫外線発光源1の寿命を判定する。
【0067】
図2は、紫外線光源装置10の紫外線発光源1のスペクトル形状の時間的変化を示すグラフである。これによれば、紫外線発光源1のスペクトルは、使用前、2000時間使用後とも、155nmから200nmまでの広がりを示すが、2000時間使用後は、その発光スペクトル形状自体が変化しており、中心波長に対して短波長側の出力低下が明瞭である。本実施形態では、この2000時間使用後のスペクトル形状を紫外線発光源1の交換時期のスペクトル形状としている。
【0068】
なお、図3は、透過部材4の紫外線透過率の時間的変化を示すグラフであり、キセノンエキシマランプ発光管に使用される石英ガラス透過部材4の使用前後における分光透過率の変化を示したものである。このように、エキシマランプ2000時間照射後には、石英ガラスのカットオフ波長に近い短波長側で吸収が大きくなっている。
【0069】
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態に係る紫外線光源装置10およびその紫外線発光源1の寿命判定方法によれば、紫外線1aにより有機物が分解されてセンサ表面に付着したり、センサ表面に吸着している水が解離してイオン化したり、透過部材の透過率が変化したりするなどの原因でセンサの出力の絶対値が変化しても、これらの原因に影響を受けないスペクトル形状を基準にし、このスペクトル形状の時間的変化から紫外線発光源1の寿命を判定するので、紫外線発光源1の寿命を正確に判定することができるようになる。
【0070】
また、紫外線発光源1を採用した紫外線光源装置10や紫外線照射装置において、対象製品を製造している最中に紫外線センサの出力が変化して対象製品を損なうなどの、製品の歩留まりを悪くするような状況を防止することができる。また、対象製品を製造している最中に紫外線発光源1をメンテナンスしなければならなくなるような状況も回避することができるようになる。
【0071】
また、紫外線センサ5bがダイヤモンド薄膜を用いたものであるので、より耐久性・安定性の高い紫外線光源装置10とすることができる。
【0072】
さらに、ダイヤモンド薄膜が、高配向性ダイヤモンド層からなり、多結晶ダイヤモンドにおける結晶粒子の成長方向及び面内方向が共に基板面に対して一定方向に配向しているので、従来のダイヤモンドセンサに比べて検知性能が向上する。
【0073】
ここで、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る紫外線光源装置10およびその紫外線発光源1の寿命判定方法の変形例について説明する。
【0074】
本発明の第1の実施の形態の変形例に係る紫外線光源装置10aおよびその紫外線発光源1の寿命判定方法においては、上記測定手段5は、紫外線のスペクトル全体を測定する代わりに、透過部材4を透過した紫外線1aのスペクトルのうち、少なくとも2つの異なる波長に対する強度のみを測定する。
【0075】
また、上記記録手段6aは、測定手段5で測定した少なくとも2つの異なる波長に対する強度のみを記録保持する。
【0076】
そして、上記寿命判定手段6bは、少なくとも2つの異なる波長に対する強度比の時間的変化から紫外線発光源1の寿命を判定する。
【0077】
本変形例では、これら少なくとも2つの異なる波長のうち、1つは、紫外線発光源1の強度がピークになる波長の近傍の波長、すなわち、キセノンエキシマランプの中心波長である172nmとし、残りのもう1つは、最も経時的変化の見られる短波長側の波長の近傍の波長、すなわち165nmとした。
【0078】
図4は、165nmの強度の172nmの強度に対する強度比の時間的変化を示したグラフである。図4を参照して、この強度比は徐々に小さくなり2000時間で、ほぼ、45%に低下する。このことから、本変形例では、165nmの強度の172nmの強度に対する強度比が45%という値をもって、紫外線発光源1の寿命の判定値とする。このときの照射強度の絶対値は照射開始の71%であり、ランプの推奨交換時期と一致している。
【0079】
このように、本発明の第1の実施の形態の変形例に係る紫外線光源装置10aと紫外線発光源1の寿命判定方法によれば、前述の原因でセンサの出力の絶対値が変化しても、これらの原因に影響を受けない紫外線1aの異なる波長に対する強度比を基準にし、この強度比の時間的変化から紫外線発光源1の寿命を判定するので、すべてのスペクトルを測定することなく紫外線発光源1の寿命を正確に判定することができるようになり、装置の簡素化、測定時間の短縮化が可能となる。
【0080】
次に、図5を参照しながら本発明の第2の実施の形態に係る紫外線光源装置20について詳述する。図5は、本発明の第2の実施の形態に係る紫外線光源装置20の構成を示す説明図である。以下、同様の構成については同じ符号を付し、説明の重複を避けるものとする。
【0081】
図5を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る紫外線光源装置20においては、測定手段25は、異なる波長を透過する少なくとも2つのフィルタ25dと、上記フィルタ25dを切り替える切り替え手段25eと、紫外線センサ25bとを備えている。
【0082】
上記紫外線センサ25bは、第1の実施の形態に係る紫外線光源装置10の紫外線センサ5bと同様のダイヤモンド薄膜を用いた紫外線センサが採用されている。
【0083】
上記フィルタ25dは、分光器5aの変わりに対象波長のみを選択的に透過する分光フィルタが採用されている。
【0084】
上記切り替え手段25eは、円盤状のディスク25fと、モーターなどの回転機構25gとを有し、ディスク25fに設けられた2個のフィルタ25dを、回転機構25gを用いて回転させることにより適宜切り替えて紫外線1aの強度を測定する。
【0085】
フィルタ25dで選択された紫外線1aは、測定手段25の紫外線センサ25bに入り、その強度が記録される、測定は、フィルタ25dを切り替えて順次実施され、両者の強度比がある一定の値になったところで、前述のように寿命と判定される。
【0086】
本発明の第2の実施の形態に係る紫外線光源装置20では、165nmと172nmという対象波長は同じであるが、フィルタ25dの透過波長域が大きいため、前述の第1の実施の形態に係る紫外線光源装置10の変形例の判定値45%より高く、2000時間で70%という値になる。それ故、第2の実施の形態では、165nmの強度の172nmの強度に対する強度比が75%という値をもって、紫外線発光源1の寿命と判定している。この値を判定値として、10本のランプの寿命を判定した結果、良好な判定結果が得られた。
【0087】
このように、本発明の第2の実施の形態に係る紫外線光源装置20によれば、測定手段5が、異なる波長を透過する少なくとも2つのフィルタ25dと、フィルタ25dを切り替える切り替え手段25eと、フィルタ25dを透過した紫外線の強度を測定する紫外線センサ25bとを備えたもので構成されているので、一つのセンサで簡単に、透過部材4を透過した紫外線1aの少なくとも2つの異なる波長に対する強度を測定することができるようになる。
【0088】
図6は、本発明の第3の実施の形態に係る紫外線光源装置30の構成を示す説明図である。図6を参照して、本発明の第3の実施の形態に係る紫外線光源装置30は、校正用紫外線発光源31を備え、測定手段25は、この校正用紫外線発光源31で発生し透過部材4を透過した標準紫外線31aの変化から透過部材4の紫外線劣化による紫外線吸収率を測定するとともに、この紫外線吸収率で、紫外線発光源1で発生し透過部材4を透過した紫外線1aの強度を補正することにより、透過部材4の紫外線劣化の影響を取り除いた紫外線発光源1の寿命を判定するものである。
【0089】
また、この紫外線光源装置30は、このように校正用紫外線発光源31で発生し透過部材4を透過した標準紫外線31aの変化から透過部材4の紫外線劣化による紫外線吸収率を測定することにより、透過部材の寿命を判定するようにも構成されている。
【0090】
ここで、上記校正用紫外線発光源31は、寿命判定時に発光させて常にスペクトルが一定の標準紫外線31aを発生させるものである。この校正用紫外線発光源31は、例えば透過部材4が石英ガラスの場合には、石英ガラスのカットオフに近い波長を持つキセノンエキシマランプが好適に用いられる。
【0091】
このように、本発明の第3の実施の形態に係る紫外線光源装置30によれば、例えば処理用の紫外線発光源1が消灯した時に、この処理用の紫外線発光源1より小さな出力を持つ校正用紫外線発光源31から標準紫外線31aを透過部材4に透過させ、この標準紫外線31aのスペクトルの変化や特定波長における強度比の変化を測定することにより、透過部材4の紫外線劣化を判断することが可能になる。その結果、透過部材4の紫外線劣化による紫外線吸収率で、上記紫外線発光源1で発生し透過部材4を透過した紫外線1aの強度を補正して、透過部材4の紫外線劣化の影響を取り除いた上記紫外線発光源1の寿命を判定するので、透過部材4を透過した紫外線1aのスペクトル形状の時間的変化や、異なる波長に対する強度比の時間的変化から紫外線発光源1の寿命を判定する紫外線光源装置10、10a、20よりも、さらに高精度に紫外線発光源の寿命を判定することができるようになる。このように、透過部材4の劣化状態のみをより詳細に調査することにより、精度の高い測定が可能となる。
【0092】
さらに、本発明の第3の実施の形態に係る紫外線光源装置30によれば、透過部材4の紫外線劣化による紫外線吸収率を測定することにより、透過部材の寿命を判定するので、透過部材4だけの劣化を適切に判断して、被処理基材に大きなダメージを与える前に透過部材4を取り替えることにより、装置や被処理基材を破損することを防止することができるようになる。また、非常に高価な透過部材4を、その寿命期間一杯まで使用することができるので、経済的である。
【0093】
上述した実施の形態は本発明の好ましい具体例を例示したものに過ぎず、本発明は上述した実施の形態に限定されない。
【0094】
例えば、上述の実施形態では、いずれも紫外線発光源1は、特に石英ガラス透過部材4のカットオフ波長に近い発光波長を持つキセノンエキシマランプが採用されているが、低圧水銀ランプ、その他の紫外線発光源1への適用を除外するものではない。
【0095】
また、上記透過部材4は、上述の実施形態では、いずれも、石英ガラスが採用されているが、他の材料も採用可能である。
【0096】
また、この透過部材4は、発光した紫外線1aが被照射物に照射されるまでに光路中にあるすべての透過部材4を含む概念であり、紫外線発光源1を保護するとともに、この紫外線発光源1で発生する紫外線1aを透過させる部材であれば、必ずしもランプボックス3に設けられた窓に適用されるものに限らない。例えば、紫外線1aランプの管部材を透過部材4とすることも可能である。
【0097】
また、校正用紫外線発光源31は、一つとは限らず、紫外線発光源1の寿命を判定するための校正用紫外線発光源と、透過部材の寿命を判定するための校正用紫外線発光源とをそれぞれに設けることも可能である。
【0098】
また、同様に、紫外線発光源1の寿命を判定するための測定手段5とは別に、透過部材4の寿命を判定するための測定手段を独立して設けることも可能である。
【0099】
さらに、上述した実施の形態は、紫外線光源装置10、10a、20、30と、それぞれの紫外線発光源1の寿命判定方法について説明したものであるが、本発明は、上記の紫外線光源装置10、10a、20、30を備え、この紫外線光源装置10、10a、20、30で発生した紫外線1aを対象製品に照射するものであることを特徴とする紫外線照射装置にも適用される。
【0100】
このような紫外線照射装置によれば、上述のような紫外線光源装置10、10a、20、30で発生した紫外線1aを、対象製品に照射するものであるので、紫外線発光源1の寿命を正確に判定できる結果、対象製品の製造途中で、紫外線センサの出力が変化して対象製品を損なうなどの、製品の歩留まりを悪くするような状況を防止することができるだけでなく、対象製品の製造途中で装置をメンテナンスしなければならなくなるような状況も回避することができるようになる。
【0101】
その他、本発明の特許請求の範囲内で種々の設計変更が可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る紫外線光源装置の構成を示す説明図である。
【図2】紫外線光源装置の紫外線発光源のスペクトル形状の時間的変化を示すグラフである。
【図3】透過部材の紫外線透過率の時間的変化を示すグラフであり、キセノンエキシマランプ発光管に使用される石英ガラス透過部材の使用前後における分光透過率の変化を示している。
【図4】165nmの強度の172nmの強度に対する強度比の時間的変化を示したグラフである。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る紫外線光源装置の構成を示す説明図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係る紫外線光源装置の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0103】
1 紫外線発光源
1a 紫外線
4 透過部材
5 測定手段
6a 記録手段
6b 寿命判定手段
10、10a、20、30 紫外線光源装置
25b 紫外線センサ
25c フィルタ
25d 切り替え手段
31 校正用紫外線発光源
31a 標準紫外線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線を透過させる透過部材を通して紫外線を照射する紫外線発光源において、
上記透過部材を透過した紫外線のスペクトル形状の時間的変化から紫外線発光源の寿命を判定することを特徴とする紫外線発光源の寿命判定方法。
【請求項2】
紫外線を透過させる透過部材を通して紫外線を照射する紫外線発光源において、
上記透過部材を透過した紫外線の少なくとも2つの異なる波長に対する強度比の時間的変化から紫外線発光源の寿命を判定することを特徴とする紫外線発光源の寿命判定方法。
【請求項3】
請求項2に記載の紫外線発光源の寿命判定方法であって、
少なくとも2つの異なる波長のうち、1つが紫外線発光源の強度がピークになる波長の近傍の波長であり、残りの少なくとも1つが、最も経時的変化の見られる波長の近傍の波長であることを特徴とする紫外線発光源の寿命判定方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の紫外線発光源の寿命判定方法であって、
上記紫外線発光源が、キセノンエキシマランプであることを特徴とする紫外線発光源の寿命判定方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の紫外線発光源の寿命判定方法であって、
上記透過部材が、石英ガラスであることを特徴とする紫外線発光源の寿命判定方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の紫外線発光源の寿命判定方法であって、
標準紫外線を発生させる校正用紫外線発光源で発生し透過部材を透過した標準紫外線の変化から、透過部材の紫外線劣化による紫外線吸収率を測定するとともに、この紫外線吸収率で、上記紫外線発光源で発生し透過部材を透過した紫外線の強度を補正することにより、透過部材の紫外線劣化の影響を取り除いた上記紫外線発光源の寿命を判定することを特徴とする紫外線発光源の寿命判定方法。
【請求項7】
請求項6に記載の紫外線発光源の寿命判定方法であって、
上記校正用紫外線発光源で発生し透過部材を透過した標準紫外線の変化から、透過部材の紫外線劣化による紫外線吸収率を測定することにより、透過部材の寿命を判定することを特徴とする紫外線発光源の寿命判定方法。
【請求項8】
紫外線を発生させる紫外線発光源と、
この紫外線発光源で発生する紫外線を透過させる透過部材とを備えた紫外線光源装置であって、
上記紫外線発光源で発生し、透過部材を透過した紫外線のスペクトル形状を測定する測定手段と、
上記スペクトル測定手段で測定した紫外線のスペクトル形状を記録保持する記録手段と、
上記スペクトル形状の時間的変化から紫外線発光源の寿命を判定する寿命判定手段と
を備えたことを特徴とする紫外線光源装置。
【請求項9】
紫外線を発生させる紫外線発光源と、
この紫外線発光源で発生する紫外線を透過させる透過部材とを備えた紫外線光源装置であって、
上記透過部材を透過した紫外線の少なくとも2つの異なる波長に対する強度を測定する測定手段と、
上記測定手段で測定した強度を記録保持する記録手段と、
上記少なくとも2つの異なる波長に対する強度比の時間的変化から紫外線発光源の寿命を判定する寿命判定手段と
を備えたことを特徴とする紫外線光源装置。
【請求項10】
請求項9に記載の紫外線光源装置であって、
上記測定手段は、異なる波長を透過する少なくとも2つのフィルタと、
上記フィルタを切り替える切り替え手段と、
フィルタを透過した紫外線の強度を測定する紫外線センサと
を備えたことを特徴とする紫外線光源装置。
【請求項11】
請求項8乃至請求項10のいずれかに記載の紫外線光源装置であって、
標準紫外線を発生させる校正用紫外線発光源を備え、
上記測定手段は、この校正用紫外線発光源で発生し透過部材を透過した標準紫外線の変化から透過部材の紫外線劣化による紫外線吸収率を測定するとともに、この紫外線吸収率で、上記紫外線発光源で発生し透過部材を透過した紫外線の強度を補正することにより、透過部材の紫外線劣化の影響を取り除いた上記紫外線発光源の寿命を判定することを特徴とする紫外線光源装置。
【請求項12】
請求項11に記載の紫外線光源装置であって、
上記校正用紫外線発光源で発生し透過部材を透過した標準紫外線の変化から透過部材の紫外線劣化による紫外線吸収率を測定することにより、透過部材の寿命を判定することを特徴とする紫外線光源装置。
【請求項13】
請求項8乃至請求項12のいずれかに記載の紫外線光源装置であって、
上記測定手段は、ダイヤモンド薄膜を用いた紫外線センサを備えていることを特徴とする紫外線光源装置。
【請求項14】
請求項13に記載の紫外線光源装置であって、
上記ダイヤモンド薄膜は、高配向性ダイヤモンド層からなることを特徴とする紫外線光源装置。
【請求項15】
請求項8乃至請求項14のいずれかに記載の紫外線光源装置を備え、この紫外線光源装置で発生した紫外線を照射するものであることを特徴とする紫外線照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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