説明

細胞組織の有効性評価に有用な非ヒト動物、および当該非ヒト動物を用いた細胞組織の有効性測定方法

【課題】「細胞組織利用医薬品等」として使用されるヒト又は動物の細胞組織の有効性を検証するために有用な非ヒト動物およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも表面が生体非反応性材料で形成されたスペーサーが埋め込まれた非ヒト動物であって、当該スペーサーと当該非ヒト動物の組織との間に脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織が移植された、非ヒト動物。また、当該脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織が移植された部分に血管床が形成された、当該非ヒト動物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞組織の有効性を評価するのに使用できる非ヒト動物及びその製造方法に関する。また本発明は、当該非ヒト動物を用いて細胞組織の有効性を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
再生医療の実現化に向け、細胞組織利用医薬品等の有効性、安全性に係る規制が明確化されつつある。ここで「細胞組織利用医薬品等」とは、生物由来医薬品又は生物由来医療用具のうち、ヒト又は動物の細胞や組織から構成されたものをいい、この中には、自己の細胞組織を原材料とする医薬品及び医療用具も含まれる。これらの規制は薬事法上の規定に基づく平成12年1314号通知(非特許文献1)として発出され、昨今の科学技術ならびに知見の進歩に伴い、現在、利用細胞組織の由来に基づいて自家細胞組織利用製品と同種細胞組織利用製品に分類した通知の発出に向けて改訂が行われているところである。
【0003】
こうした細胞組織利用医薬品等の安全安心な利用に向け、その有用性を検証することが不可欠であるものの、in vivo(非ヒト動物)での有用性を検証する手段が著しく少なく、これが再生医療の実用化に向けた規制サイドの問題点であると認識されている。有用性とは、安全性と有効性に峻別されるものである。安全性検証の主眼は移植後の腫瘍源性であり、有効性検証の主眼は、治療目的にかなった機能を生体内で保持しうるか、ということである。
【0004】
これまで安全性検証、例えば腫瘍源性の検証には、免疫不全動物が用いられており、近年特にNOGマウス(重度複合免疫不全マウス)がその検証に用いられつつある。従来の免疫不全マウスでは、胚性幹細胞を移植しても奇形種形成能が低かったが、NOGマウスではたった2個の胚性幹細胞の皮下移植でさえ奇形種形成が認められる。またNOGマウスでは、ヒト腫瘍細胞株を移植しても腫瘤形成を認めることから、NOGマウスへの皮下移植が、「細胞組織利用医薬品等」の安全性検証のモデル動物になると想定されている。
【0005】
一方で、「細胞組織利用医薬品等」の有効性検証のために有望なモデル動物はほとんど存在しないのが現状である。これまで「細胞組織利用医薬品等」として、例えば膵島あるいは再生肝小葉の有効性を検証するために、マウスなど小動物の腎皮膜下にこれらを移植する系が用いられていたが、移植等を行う手技に結果が左右されるため、信頼性、再現性等に問題があった。信頼性および再現性を確保するには、有効性検証を目的とした共通プラットフォームとしてのモデル動物を確立する必要があると考えられる。
【0006】
また、非ヒト動物を用いて「細胞組織利用医薬品等」の有効性を検証するためには、当該「細胞組織利用医薬品等」を移植するためのスペースを当該動物に設ける必要があり、また移植後は、移植した「細胞組織利用医薬品等」の機能を維持しうる血管床の確保も必要である。
【0007】
これまでのところ、これらの条件を満たす非ヒト動物は報告されておらず、このようなモデル動物が待ち望まれていた。
【非特許文献1】医薬発第1314号医薬安全局長通知「ヒト又は動物由来成分を原料として製造される医薬品等の品質及び安全性確保について」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記「細胞組織利用医薬品等」として使用されるヒト又は動物の細胞組織の有効性を検証するために有用な非ヒト動物およびその製造方法を提供することを目的とする。また本発明は、当該非ヒト動物を用いた細胞組織の有効性測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、鋭意検討を重ねていたところ、非ヒト動物に、生体非反応性材料からなる基材をスペーサーとして脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織とともに移植し、一定期間飼育することにより当該移植部のスペーサー周囲に血管床が形成されること、当該移植部からスペーサーを抜き取ることにより、非ヒト動物体内に血管床を有するスペース(ポケット)を人工的に形成することができることを見出した。さらに、本発明者らは、血管床が形成された上記スペース(ポケット)内に細胞組織を移植することにより、その生存を維持しながらも、その機能を評価することができることを見出し、かかる非ヒト動物が、細胞組織の機能発現の評価、すなわち被験細胞組織について「細胞組織利用医薬品等」としての有効性を評価するうえで有効に利用できることを確信した。
【0010】
本願発明は、かかる知見に基づいて完成したものであり、下記の実施形態を包含するものである。
項A−1.
少なくとも表面が生体非反応性材料で形成されたスペーサーが埋め込まれた非ヒト動物であって、当該スペーサーと当該非ヒト動物の組織との間に脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織が移植された、非ヒト動物。
項A−2.
生体非反応性材料が、ポリエステル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル及びポリアクリルアミドからなる群より選択される少なくとも1種である、項A−1に記載の非ヒト動物。
項A−3.
スペーサーが埋め込まれた部位が皮下である、項A−1又はA−2に記載の非ヒト動物。
項A−4.
さらに、脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織が移植された部分に血管床が形成された、項A−1〜A−3のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
項A−5.
非ヒト動物が、1種又は2種以上の臓器の機能が欠失又は抑制された、病態非ヒトモデル動物である、項A−1〜A−4のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
項B−1.
非ヒト動物に、少なくとも表面が生体非反応性材料で形成されたスペーサーと脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織を埋め込む工程を有し、ここで、当該スペーサーと当該非ヒト動物の組織との間に脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織が埋め込まれる状態になることを特徴とする、細胞組織の有効性評価のための非ヒト動物の作製方法。
項B−2.
生体非反応性材料が、ポリエステル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル及びポリアクリルアミドからなる群より選択される少なくとも1種である、項B−1に記載の細胞組織の有効性評価のための非ヒト動物作製方法。
項B−3.
スペーサーを埋め込む部位が皮下である、項B−1又はB−2に記載の細胞組織の有効性評価のための非ヒト動物作製方法。
項B−4.
さらに、スペーサー並びに脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織を埋め込んだ非ヒト動物を飼育し、該スペーサーの周りに血管床を形成させる工程を含む、項B−1〜B−3のいずれか1項に記載の細胞組織の有効性評価のための非ヒト動物作製方法。
項C−1.
項A−4又はA−5に記載の非ヒト動物からスペーサーを除去して得られるスペースに、被験細胞組織を移植する工程、及び当該被験細胞組織の機能を測定する工程を含む、被験細胞組織の有効性を測定する方法。
項C−2.
被験細胞組織がホルモンを産出し得る細胞組織、又は代謝、解毒または物質の生合成に関わる細胞組織である、項C−1に記載の方法。
項D−1.
A−5に記載の非ヒト動物からスペーサーを除去して得られるスペースに、被験細胞組織を移植する工程、及び当該被験細胞組織の機能を測定する工程を含み、
ここで当該被験細胞組織は、機能が欠失又は抑制された臓器と同じ機能を有するものである、
被験細胞組織の有効性を測定する方法。
項D−2.
被験細胞組織がホルモンを産出し得る細胞組織、又は代謝、解毒または物質の生合成に関わる細胞組織である、項D−1に記載の方法。
項E−1.
被験細胞組織が埋め込まれた非ヒト動物であって、当該被験細胞組織と当該非ヒト動物の組織との間に血管床を有する、非ヒト動物。
項E−2.
被験細胞組織が埋め込まれた部位が皮下である、項E−1に記載の非ヒト動物。
項E−3.
被験細胞組織が埋め込まれた非ヒト動物であって、
当該被験細胞組織と当該非ヒト動物の組織との間に血管床を有し、
当該非ヒト動物は1種又は2種以上の臓器の機能が欠失又は抑制された、病態非ヒトモデル動物である、
非ヒト動物。
項E−4.
被験細胞組織が、機能が欠失又は抑制された臓器と同じ機能を有するものである、項E−3に記載の非ヒト動物。
項F−1.
動物に、少なくとも表面が生体非反応性材料で形成されたスペーサーと脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織を埋め込む工程を有し、ここで、当該スペーサーと当該動物の組織との間に脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織が埋め込まれる状態になることを特徴とする、当該スペーサー周りに血管床を形成させる方法。
項G−1.
少なくとも表面が生体非反応性材料で形成されたスペーサーと、脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織とを組み合わせてなる血管床形成剤。
項G−2.
少なくとも表面が生体非反応性材料で形成されたスペーサーと、脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織とを備えた、被験組織移植スペース作製用キット。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、血管床が表面にさらされたスペース(ポケット)を有する非ヒト動物を作製し、提供することができる。当該非ヒト動物は、被験細胞組織の有効性検証を簡便にし得るだけでなく、共通プラットフォームとして作製されることで、有効性検証の信頼性、再現性をも高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(1)非ヒト動物およびその製造方法
本発明は、細胞組織の有効性評価、好ましくは細胞組織について「細胞組織利用医薬品等」としての有効性を評価するのに使用可能な非ヒト動物を提供する。
【0013】
本発明が対象とする非ヒト動物は、スペーサーと、脂肪前駆細胞又は脂肪組織のいずれか一方または両方の組織が移植されたヒト以外の動物である。
【0014】
当該脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織は、非ヒト動物の組織とスペーサーとの間に、好ましくはスペーサーを囲うように移植される。かかる非ヒト動物は、スペーサー並びに脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織が移植された後、適当な期間(通常3日〜10週、好ましくは2〜8週)飼育することにより、移植された脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織が血管床へと分化し、上記スペーサーの周りに血管床が形成される。
【0015】
本発明が対象とする非ヒト動物には、かかるスペーサーの周りに血管床が形成された非ヒト動物が好適に含まれる。かかる血管床が形成された非ヒト動物から、埋め込まれたスペーサーを除去することで、当該非ヒト動物の体内に、被験細胞組織を移植するためのスペース(ポケット)を作成することができる。斯くして形成されたスペースに、被験細胞組織を移植すると、その周囲組織に形成された血管床により、被験細胞組織に栄養源を供給することができるため、虚血等による壊死を防ぐことができるとともに、移植した被験細胞組織を速やかに生体生着させることができる。このため、移植された被験細胞組織は、当該移植部で本来の機能を発揮し、例えば被験細胞組織がホルモン産生に関わる組織である場合は、当該細胞組織から産出されたホルモンは、当該移植部から非ヒト動物の体内に取り込まれ、その機能を発揮し得る。
【0016】
本願発明が対象とする非ヒト動物としては、ヒト以外の例えばラット、ヌードラット、マウス、ヌードマウス、モルモット、ハムスター、ウサギ、イヌ、ネコ、サル等の通常実験に汎用される哺乳動物を挙げることができる。好ましくは、ラット、ヌードラット、マウス、ヌードマウス、モルモット、ハムスター、ウサギ等のげっ歯動物であり、より好ましくは操作や飼育の簡便性からラット、ヌードラット、マウス又はヌードマウスを挙げることができる。また、当該動物は、例えばラット、マウス、ヌードマウス等の場合、6〜12週齢のものを用いることが好ましい。
【0017】
スペーサーは、上記非ヒト動物の体内に、有効性を検証する対象の細胞組織(被験細胞組織)を移植するためのスペース(ポケット)を作成するために用いられる。すなわち、当該スペーサーによれば、非ヒト動物の体内に、生体組織の癒着を防止しながらスペース(ポケット)を作成することができる。当該スペーサーは、非ヒト動物に被験細胞組織を移植する際に取り除かれる。従って、生体組織に癒着せず、容易に取り除くことができるよう、少なくともその表面が生体非反応性材料で形成されたものが好ましい。ここで生体非反応性材料としては、生体組織に影響(例えば、刺激、炎症、変異原性、接着、吸収、溶解など)を与えず、且つ生体組織による影響(例えば、接着、溶解、変質など)を受けない材料であることが好ましい。特に、細胞接着性を有さないものが好ましい。かかる材料としては、具体的にはこのような性質を有するプラスチック(特に合成樹脂プラスチック)が好ましく、例えばポリエステル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリルアミド等が挙げられる。中でもポリエステルが好ましい。これらの生体非反応性材料は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。なお、スペーサーは、少なくともその表面全体が、上記生体非反応性材料で形成されているものであればよいが、スペーサー全体が上記生体非反応性材料で形成されていてもよい。
【0018】
スペーサーの形は特に制限されず、例えば、球状、円筒状、円柱状、円錐状、板状のものが使用できる。但し、とげや鋭角等、周りの組織を刺激する形状部分を有するものは好ましくない。好ましくは板状の形態を有するものである。
【0019】
またスペーサーの大きさは、埋め込まれる非ヒト動物の健康に影響を与えない範囲であれば、特に制限されない。非ヒト動物の種類、埋め込み部位、及び検証に供される被験細胞組織の大きさ(すなわち非ヒト動物体内に形成すべきスペースの大きさ)等に応じて、適時設定することができる。例えば、板状のスペーサーを使用する場合、非ヒト動物としてラットやマウスなどの小動物に対しては、一辺が1〜30mm、好ましくは10〜12mmの長方形または正方形であって、厚さが0.1〜3mm、好ましくは0.5〜1mmのものを用いることができる。また非ヒト動物としてウサギやサル等の中動物に対しては、一辺が1〜300mm、好ましくは50〜100mmの長方形または正方形であって、厚さが0.1〜3mm、好ましくは0.5〜1mmのものを用いることができる。
【0020】
非ヒト動物におけるスペーサー埋め込み部位は、特に制限されず、検証に供される被験細胞組織の性質等に応じて適宜設定可能であるが、スペーサーの埋め込み及び除去並びに被験細胞組織の移植が容易であることから、皮下が好ましい。特に、検証に供される被験細胞組織が、ホルモンを産出し得る細胞組織、又は代謝、解毒または物質の生合成に関わる細胞組織である場合には、皮下が好適である。
【0021】
上記スペーサーとともに非ヒト動物に埋め込まれる脂肪組織は、脂肪細胞を主な構成成分としながら、これ以外の細胞等も数多く含む、ヘテロジーニアスな組織である。脂肪細胞以外の構成成分としては、例えば、脂肪前駆細胞、脂質間質細胞、血管内皮細胞、血管周細胞、および細胞外基質等を挙げることができる。特に、脂肪前駆細胞は、脂肪細胞の前駆細胞であるというだけでなく、種々の刺激により異なった細胞へと分化することが確認されており、間葉系幹細胞と類似した性質を有すると考えられている。かかる脂肪組織は、ヒトも含む種々の動物の皮下、内臓脂肪、大網周辺脂肪組織等の部位から吸引等の常法に従って採取することが可能である。当該脂肪組織は、移植する前に予め細切りしておくことが好ましい。
【0022】
また、スペーサーとともに非ヒト動物に埋め込まれる脂肪前駆細胞としては、間葉系幹細胞と類似した性質を有するものが好ましい。特に血管を形成する能力を有するものが好ましく、中でも皮下に移植したときに血管を形成する能力を有するものがより好ましい。このような脂肪前駆細胞としては、例えば、ADSC(Adipose tissue derived stromal cells)、DFAT-D1(de-differentiated from fat cells of ddY mouse)、3T3-L1、SVF(stromal-vascular faraction)等が挙げられる。また、各種の動物に由来する脂肪前駆細胞は市販されており、適当な販社から購入することもできる。例えばヒト由来脂肪前駆細胞はDSファーマバイオメディカル株式会社やBIOPREDIC International社等から、またラット由来脂肪前駆細胞はタカラバイオ株式会社や株式会社プライマリーセル等から、購入することができる。
【0023】
また、脂肪前駆細胞は、脂肪組織から定法を用いて細胞株として樹立させて得ることもできる。例えば、培養骨髄間葉系細胞、培養脂肪組織血管細胞、培養皮膚線維芽細胞などをもとに、これらの細胞に脂肪細胞への分化誘導刺激を加えることで作成することができる。その代表的な方法は、例えば、Rosenm RD, Spiegelman BM. annual review of cell & developmental biology. 16:145-171, 2001に記載されている。
【0024】
あるいは、脂肪前駆細胞は、脂肪組織をコラゲナーゼ処理した後に遠心分離し、必要に応じて培養を行うことで調製することもできる。特に、ADSC (Adipose tissue derived stromal cells)は、Cinti S, et al., Diabetologia 9, 486, 1973に記載の方法に従って単離調製することができる。
【0025】
なお、このようにして得られた脂肪前駆細胞については、間葉系幹細胞マーカーの発現を調べることで、血管へ分化する分化能の有無を確認することができる。血管へと分化する分化能の有無は、具体的には、フローサイトメトリー等により、対象とする脂肪前駆細胞が、間葉系幹細胞のマーカーとして知られているSca-1及びCD44等、および造血系幹細胞のマーカーであるCD31、CD34、CD45及びCD117等を発現しているか否かを調べることによって確認することができる。具体的には、脂肪前駆細胞が、間葉系幹細胞のマーカー(Sca-1、CD44)を発現し、造血系幹細胞のマーカー(CD31、CD34、CD45及びCD117)を発現しない場合は、血管へ分化する分化能を有するものと判断することができる。
【0026】
脂肪組織及び脂肪前駆細胞は、いずれか一方を用いてもよいし、または両方を組み合わせて用いることもできる。但し、脂肪組織には、脂肪前駆細胞の栄養源となり得るものが含まれているので、脂肪前駆細胞を使用する場合は、脂肪組織と組み合わせて用いることが好ましい。なお、脂肪組織及び脂肪前駆細胞は、移植する動物種と近種由来のものが好ましく、同種由来のものがより好ましい。
【0027】
脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織の移植量は、埋め込まれたスペーサーの大きさによって適宜設定することができる。好ましくは、該スペーサーの周りをまんべんなく覆う程度の量を挙げることができる。特に移植量を制限するものではないが、例えばスペーサーの表面積1cmあたり、脂肪前駆細胞の場合は1×10〜1×10細胞程度、脂肪組織の場合は30〜200μL程度を用いることができる。また、これらを組み合わせて用いる場合、例えばこれらの量を組み合わせて用いることができる。
【0028】
スペーサー、並びに脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織の非ヒト動物への移植は、公知の移植操作に従って行うことができる。
【0029】
例えば、皮下移植の場合は、メス等で非ヒト動物の皮膚を切開し、皮下の真皮と筋膜の間を剥離してポケットを作成後、そこにスペーサーを入れ、さらに非ヒト動物の組織とスペーサーの間、好ましくはスペーサーを取り囲むように、脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織をポケット内に注入すればよい。
【0030】
移植順については、例えばまずスペーサーを埋め込み、次いで脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織を移植してもよい。また、先に脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織を、スペーサーを埋め込む場所に移植し、続いてスペーサーを埋め込んでも良い。さらに、スペーサー表面に予め脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織をのせ、それを埋め込んでもよい。なお、これらのなかでも、まずスペーサーを埋め込み、次いで脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織を移植する方法が、操作が簡便で血管床の発達も良好なため好ましい。
【0031】
斯くして非ヒト動物体内に移植された脂肪前駆細胞または脂肪組織に含まれる脂肪前駆細胞は、非ヒト動物の飼育に伴って、血管へと分化し、血管床を形成する。血管床とは、毛細血管が網目状になった血流が豊富な組織であって、そこから栄養素や酸素などが十分に供給されうる組織である。かかる血管床の形成状況は、スペーサー等を皮下に移植した場合、皮膚の上から肉眼で簡単に観察することができる。具体的には、血管床が形成されると皮膚の上から赤みがかっているのが肉眼で観察できる。
【0032】
なお、移植後の非ヒト動物の飼育条件としては、特に制限されず、通常の飼育条件を採用してもよいし、また抗菌条件下で飼育することもできる。具体的には、通常の飼育条件として温度20〜26℃、相対湿度30〜70%、照明12時間の明暗サイクル、換気回数10回以上/時間の飼育室環境で、収容動物数3匹/ケージで飼育し、固形飼料の自由摂食、自動飲水装置からの自由摂水条件を例示することができる。
【0033】
また、飼育期間は、スペーサー並びに脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織を埋め込んでから、通常3日〜10週、好ましくは2〜8週程度である。但し、飼育期間が10週を経過したとしても、健康状態を保って飼育が継続できる限り、一度形成された血管床は減少又は消失しないため、本発明の非ヒト動物として使用することができる。
【0034】
またさらに、本発明が対象とする非ヒト動物は、スペーサーと、脂肪前駆細胞又は脂肪組織のいずれか一方または両方の組織が移植された、病態非ヒトモデル動物を含む。
【0035】
かかる病態非ヒトモデル動物は、1種又は2種以上の臓器の機能が欠失又は抑制され、かつ、体内に埋め込まれたスペーサーの周りに血管床が形成された非ヒト動物である。
【0036】
機能が欠失又は抑制される臓器としては、例えば膵臓、甲状腺、副甲状腺、下垂体、肝臓、副腎、腎臓等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0037】
臓器の機能の欠失又は抑制は、例えば当該臓器の摘出、薬剤の投与、遺伝子操作等の方法によって行い得る。
【0038】
例えば、このような病態非ヒトモデル動物は、スペーサー並びに脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織を非ヒト動物へ移植した後、飼育する過程において特定の病態を誘発させる薬物を投与することで製造することができる。このような薬物としては、例えば糖尿病モデル動物を製造できるストレプトゾトシンの他、腎不全モデル動物を製造できる葉酸、慢性肝炎モデル動物を製造できる四塩化炭素、急性肝炎モデル動物を製造できるConA(コンカナバリンA)等を例示できる。また、飼育する過程において、1種又は2種以上の臓器の摘出を行っても良いし、臓器の機能に寄与する遺伝子を遺伝子工学的手法により破壊あるいは抑制等してもよい。
【0039】
また、このような病態非ヒトモデル動物は、公知の病態モデル動物に対し、スペーサー並びに脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織を移植することでも、製造することができる。このような公知の病態モデル動物としては、例えば糖尿病自然発症モデルマウスであるNODマウス、免疫不全マウス・ラット、免疫不全動物を含む動物種にstreptoocin等薬剤処理して作成した糖尿病モデル動物、四塩化炭素投与して作成した急性あるいは慢性肝炎もでる動物等が挙げられるが、これに限定されず、様々な公知の病態モデル動物を用いることができる。
【0040】
また、本発明が対象とする非ヒト動物は、被験組織が埋め込まれ、当該被験細胞組織と非ヒト動物の組織との間に血管床を有する非ヒト動物(病態非ヒトモデル動物でもよい)も含む。
【0041】
かかる非ヒト動物は、上述のスペーサーの周りに血管床が形成された非ヒト動物から、スペーサーを取り出してスペースを作り、被験細胞組織を当該スペースに移植することで製造できる。
【0042】
(2)非ヒト動物を用いた被験細胞組織の有効性の測定
上述のようにして得られる、体内に埋め込まれたスペーサー周りに血管床が形成された本発明の非ヒト動物は、被験細胞組織を移植し、該細胞組織の機能発現または機能維持を測定し、有効性を検証するために用いることができる。なお、被験細胞組織の有効性の検証とは、当該被験細胞組織を移植することにより、生体内で当該被験細胞組織が有すると期待される機能を発揮し、かつその機能が維持できるかを測定して検証することを指す。
【0043】
かかる非ヒト動物を用いた本発明の被験細胞組織の有効性測定方法は、上記本発明の非ヒト動物から、まずスペーサーを取り外し、それによって形成されたスペース(ポケット)に、測定対象とする被験細胞組織を移植し(移植工程)、次いで当該被験細胞組織の機能を測定(機能測定工程)することによって行うことができる。
【0044】
なお、被験細胞組織の有効性測定のためには、上述の病態非ヒトモデル動物(スペーサーと、脂肪前駆細胞又は脂肪組織のいずれか一方または両方の組織が移植された、病態非ヒトモデル動物)を用いることが好ましい。
【0045】
特に、被験細胞組織の機能と、同じ機能を有する臓器の働きが欠失又は抑制された病態非ヒトモデル動物は、当該被験細胞組織が有する機能が生体内で発揮されていないため、被験細胞組織の移植により当該機能が発揮されるか否かを測定することで、移植した被験細胞組織が機能しているかを調べることができる。
【0046】
例えば、移植された被験細胞組織についてホルモン産出機能を測定するためには、対応するホルモン産出機能を担う臓器の働きを予め抑制し、そのホルモン産出を抑制させた病態非ヒトモデル動物を使用することが好ましい。
【0047】
また、例えば、被験細胞組織としてインスリンを産出し得る細胞組織(例えば膵島又はその一部、膵臓細胞、あるいはインスリン産出能を有する再生細胞又は再生組織)を用い、当該細胞組織の移植後のインスリン産出機能を測定する場合、非ヒト動物として、膵臓がインスリン産出能を失った糖尿病の病態を示す本発明の病態非ヒトモデル動物を用いることが好ましい。
【0048】
また、例えば被験細胞組織としてチロキシンを産出すると予測される被験細胞組織を移植し、その機能(有効性)を測定する場合、非ヒト動物として、チロキシンを産出する臓器である甲状腺の機能を欠失又は抑制した本発明の病態非ヒト動物を用いることが好ましい。
【0049】
さらにまた、移植された被験細胞組織について、代謝、解毒又は物質の生合成に関わる機能を測定するためには、対応する代謝、解毒又は物質の生合成に関わる機能を担う臓器の働きを予め抑制した病態非ヒトモデル動物を使用することが好ましい。
【0050】
例えば、被験細胞組織として、アンモニアを尿素に変換するなどの解毒機能を有する細胞組織(例えば肝細胞組織)を移植し、その機能(有効性)を測定する場合、非ヒト動物として、アンモニアを尿素に変換する臓器である肝臓の機能を欠失又は抑制した本発明の病態非ヒト動物を用いることが好ましい。
【0051】
(i)移植工程
本発明の非ヒト動物(スペーサーと、脂肪前駆細胞又は脂肪組織のいずれか一方または両方の組織が移植された、病態非ヒトモデル動物を含む)から、まずスペーサーを取り外し、それによって形成されたスペース(ポケット)に、測定対象とする被験細胞組織を移植する。
【0052】
スペーサーの取り出しは、通常の手術手技に従って行うことができる。例えばメス等で切開を行い、スペーサー全体又はその一部を露出させ、露出部をつかんでスペーサー全体を抜き取ればよい。
【0053】
また、ここで用いられる被験細胞組織としては、特に制限されないが、例えばホルモンを産出し得る細胞組織を挙げることができる。ホルモンを産出し得る細胞組織として、具体的には、膵臓、甲状腺、副甲状腺、下垂体、副腎あるいはこれら組織の一部若しくはこれら組織由来の細胞、さらにはこれらの組織由来の培養細胞あるいは再生細胞又は再生組織等を挙げることができる。
【0054】
また、ホルモンを産出しない細胞組織であっても、代謝、解毒または物質の生合成に関わる細胞組織は、本発明において被験細胞組織として用いることができる。かかる細胞組織として、具体的には、肝臓、腎臓あるいはこれら組織の一部若しくはこれら組織由来の細胞、さらにはこれらの組織由来の培養細胞あるいは再生細胞又は再生組織等を挙げることができる。
【0055】
なお、ここで再生細胞又は再生組織とは、1又は2種以上の組織の一部あるいは組織由来細胞を採取し、培養、遺伝子操作、融合、又はこれらを組み合わせた操作等により、製造された細胞又は組織を指す。例えば、各種の培養細胞や培養組織、各種幹細胞(造血幹細胞、間葉系幹細胞、神経幹細胞、ES細胞、iPS細胞等)、及び各種幹細胞から分化誘導して作製される各種細胞、組織等が含まれる。このような再生細胞又は再生組織は、公知の方法を用いて作製することが可能である。一例を挙げれば、国際公開公報第2007/039986号に脂肪組織由来細胞よりインスリン分泌細胞を得る方法が開示されているが、これに限定されない。
【0056】
かかる被験細胞組織の移植は、スペーサーを取り外すことによって形成されたスペースへ、公知の方法を用いて行うことができる。例えば、細胞の場合にはシリンジ等でスペースに注入して移植することができ、また、例えば組織の場合にはスペースに当該組織を埋め込むことにより移植することができるが、これらに限定されない。
【0057】
移植後は、移植された非ヒト動物を、例えば通常の飼育条件で飼育を継続しながら、移植した被験細胞組織の機能測定を行うことができる。ただし、移植した被験細胞組織の機能に応じて、機能測定方法が変わり得ることから、機能測定方法に応じて飼育条件も適宜変更することができる。
【0058】
(ii)機能測定工程
斯くして被験細胞組織が移植された非ヒト動物は、当該被験細胞組織の機能測定に供することができる。通常、移植がなされた直後から、定期的に当該被験細胞組織の機能測定を行う。具体的には、移植された被験組織細胞の機能が維持されるのか、被験組織の機能に応じて適当な手法を用いて定期的に測定を行う。
【0059】
移植した被験細胞組織がホルモンを産出し得る細胞組織である場合、当該被験細胞組織が正常にホルモンを産出すれば、スペース周囲に形成された血管床を通じて、産出されたホルモンが非ヒト動物の体内に吸収され、機能を発現する。従って、非ヒト動物における当該ホルモン量、あるいは当該ホルモンの機能発現の有無を測定することで、移植された被験細胞組織の有効性を検証することができる。具体的には、血中のホルモン量の測定、あるいはホルモンの機能により増減する物質の量の測定を行えばよい。
【0060】
例えば、膵臓組織は血糖値を低下させるホルモンであるインスリンを産出する働きを有していることから、被験細胞組織として膵臓組織を移植した場合、非ヒト動物について血糖値を定期的に測定することで、当該移植した膵臓組織についてインスリン産出機能が維持されているか、有効性を測定することができる。なお、血糖値の測定を行うにあたって、耐糖負荷を行ってもよい。
【0061】
また、例えば、甲状腺はチロキシンを産出する働きを有していることから、被験細胞組織として甲状腺組織を移植した場合、非ヒト動物について例えば血中のチロキシン濃度を定期的に測定することで、当該移植した甲状腺組織についてチロキシン産出機能が維持されているか、有効性を測定することができる。
【0062】
他のホルモン産出機能を有する臓器についても同様である。
【0063】
また、移植した被験細胞組織が代謝、解毒または物質の生合成に関わる細胞組織である場合、当該被験細胞組織が正常に機能すれば、スペース周囲に形成された血管床を通じて被験細胞組織内に取り込まれた物質は、当該被験細胞組織内で正常に代謝、解毒または生合成に供され、所期の物質が生成される。従って、非ヒト動物において生成物(代謝産物、解毒産物、生合成産物)の有無を測定することで、移植された被験細胞組織の有効性を検証することができる。
【0064】
例えば、肝細胞組織はアンモニアを尿素に変換するなどの解毒機能を有することから、被験細胞組織として肝細胞組織を移植した場合、血中のアンモニア及び/又は尿素の濃度をモニタリングすることで、当該移植した肝細胞組織の解毒機能が維持発現しているか、その有効性を検証することができる。
【0065】
以上のように、本発明は、血管床が表面にさらされたスペース(ポケット)を簡便に得られる非ヒト動物を提供することができる。また、当該非ヒト動物を用いた被験細胞組織の有効性の測定方法を提供することができる。
【0066】
従来、細胞組織の有効性評価、好ましくは細胞組織について「細胞組織利用医薬品等」としての有効性を評価するための移植試験は、移植手術者の技量や生体の移植場所を均一とすることが難しく、バリデーションが困難であった。
【0067】
本発明の非ヒト動物であれば、被験組織細胞を移植するためのスペース(ポケット)を簡便に得ることができるため、移植部位が術者の技量によって移植部位がばらつく等の弊害を抑えることができる。体内の同一部位にスペーサーが埋め込まれ、当該スペーサー周りに血管床を有する非ヒト動物を安定供給することで、術者は常に同一部位、すなわち、スペーサーの取り出しにより形成されるスペースに被験細胞組織を移植するこができるからである。
【0068】
さらに、当該スペースは血管床が表面にさらされているため、移植された被験細胞組織には血管床により、栄養源が供給され、虚血等による壊死を防ぐことができるとともに、当該被験細胞組織は速やかに生体生着することができる。また、このため、当該被験細胞組織は、当該移植部で本来の機能を発揮し得る。従って、本発明の非ヒト動物は、移植された被験細胞組織の有効性を測定するのに特に好ましい。
【0069】
(3)血管床形成剤及び被験組織移植スペース作製用キット
本発明は、スペーサーの周りに適量の脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織を組み合わせてなる血管床形成剤も提供する。当該血管床形成剤は、非ヒト動物だけでなく、ヒトも含めた動物(好ましくは哺乳動物)に適用することができる。
【0070】
表面が血管床にさらされた移植用スペースを有する動物を作製するには、スペーサーと動物の組織との間に脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織が埋め込まれる状態になるよう、動物に、スペーサーと脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織を埋め込めばよい。よって、スペーサーの周りに予め脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織を存在させ、血管床形成剤として用いることができる。すなわち、当該血管床形成剤であれば、動物に埋め込むだけで、表面が血管床にさらされた被験組織移植スペースを作製することができる。
【0071】
当該血管床形成剤を製造するには、例えば上に詳述したスペーサーの表面に、脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織を付着させればよい。使用する脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織量は、上述のようにスペーサーの大きさ等に応じて適宜設定できる。
【0072】
なお、当該血管床形成剤は、脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織を生存させるため、凍結保存(例えば−30℃、好ましくは−80℃で保存)することが望ましい。また、使用に際して解凍する場合は、氷上にて解凍することが好ましい。
【0073】
さらに、本発明は、スペーサーと、脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織とを備えた、被験組織移植スペース作製用キットも提供する。当該キットは、例えば上に詳述したスペーサー、及び脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織が備えられており、好ましくは、複数のスペーサーと当該スペーサー移植時に使用する脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織が、移植1回分ごとに小分けされて備えられたものである。また、脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織を移植するためのシリンジを備えてもよい。
【0074】
このようなキットであれば、本願に係る哺乳動物を作製するにあたり、スペーサー及び当該スペーサーを埋め込むのに適量の脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織を毎回計量するなどの手間を省くことができる。また、予め使用するスペーサー、脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織を均一化しておくことで、得られる本発明に係る哺乳動物の質を均一化できる。
【0075】
なお、当該キットは、脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織を生存させるため、少なくとも脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織は凍結保存(例えば−30℃、好ましくは−80℃で保存)することが望ましい。また、使用に際して脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織を解凍する場合は、氷上にて解凍することが好ましい。
【実施例】
【0076】
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
【0077】
調製例1:ADSCの分離及びその解析
(1)分離
本発明の非ヒト動物作製に用いる脂肪前駆細胞として用いるため、ADSC(Adipose tissue derived stromal cells)を以下のようにして調製した。
【0078】
まず、ADSCを、Cinti S, et al., Diabetologia 9, 486, 1973に記載の方法に従って分離した。なお、当該方法の途中で得られる脂肪細胞をとりわけておき、以下の実験例1<スペーサー並びにADSC及び/又は脂肪細胞の移植>で「マウス脂肪細胞」として使用した。
【0079】
分離したADSCは、10 ng/mL EGF,(PeproTech EC Ltd., London, UK)、1 nM dexamethasone 及び100 μM アスコルビン酸(共にSigma-Aldrich)、そして5% FBS (Invitrogen Corp.,)を加えたStem Cell Medium (Nacalai Tesque)にて、37℃、5%CO の条件下培養した。継体は80%コンフルエント状態になった時点(約1〜2週間)で行い、3〜5回継体培養したものを以下の例に用いた。
【0080】
(2)フローサイトメトリーによるADSCの解析
上記(1)で得たADSCが間葉系幹細胞のマーカーを発現しており、血管へ分化し得るものであることを確認するため、当該ADSCのおける間葉系幹細胞のマーカー(Sca1、CD44)、及び造血系幹細胞のマーカー(CD31、CD34、CD45及びCD117)の発現の有無をフローサイトメトリーを用いて検討した。
【0081】
具体的には、フルオロセインイソチオシアネート(FITC)で標識されたLy-6A/E(Sca-I)、CD31、CD34、CD44、CD45、CD117に対するモノクローナル抗体(CD34はSanta Cruz Biotechnology Inc.、残りは全てBD Pharmingen)を用いて、調製例1で得たADSCをフローサイトメトリーにより解析した。なお、アイソタイプが同一の抗体をコントロールとした。
【0082】
解析には、FACSCaliburフローサイトメーター及びCellQuest Pro software (BD Biosciences)を用いた。
【0083】
その結果、上記(1)で分離したADSCは間葉系幹細胞のマーカーとして知られるSca1及びCD44を発現し、造血系幹細胞のマーカーとして知られるCD31、CD34、CD45、CD117を発現していないことが確認できた(図1)。このことから、調製例1で得たADSCは、間葉系幹細胞マーカーを発現した、血管への分化能を有する細胞であると考えられた。
【0084】
調製例2:マウス膵島の調製
被験細胞組織として使用するマウス膵島を、Gotoh M, et. al., Transplantation 40 437, 1985.に記載の方法に従って、採取した。具体的には、XIコラゲナーゼ(0.5mg/ml, Sigma Aldrich Japan)0.5mlを総胆管に注入し、37℃で25分間反応させた。得られた分解断片を回収し、Hanks' Balanced Salt Solutions(HBSS)で洗浄した。膵島は不連続勾配フィコール(Nacalai Tesque)で精製した。このようにして得られた膵島リッチな層を回収し、以下の移植実験に被験細胞組織として用いた。
【0085】
実験例1:細胞組織の有効性評価のための非ヒト動物の作製
調製例2で調製したマウス膵島の有効性を測定するため、調製例1で調製したADSC及びマウス脂肪細胞を用いて、皮下に埋め込んだスペーサーの周りに血管床が形成されたマウスを作製した。またさらに、当該マウスに薬剤を投与して糖尿病モデルマウスとした。
【0086】
なお、当該実験においては、レシピエントマウスとして8週齢C57BL/6J雄マウス(CLEA Japan Inc)を用いた。また、各手術を行うに先立って、2.5%トリブロモエタノールを各マウスの腹腔内に投与し、麻酔を施した。
【0087】
<スペーサー並びにADSC及び/又は脂肪細胞の移植>
まず、レシピエントマウスを4つのグループ(グループI〜グループIV)に分け、それぞれの皮下に、スペーサー(材質:ポリエステル、形状:板状10×12×0.5mm、図2参照)とともに下記のものを移植した。
グループI:ADSC(5×105細胞)とミンチにしたマウス脂肪細胞(150μL)と混合したもの
グループII:ADSC(5×105細胞)
グループIII:ミンチにしたマウス脂肪細胞(150μL)
グループIV:無し(スペーサーのみ)

移植は、メスで各マウスの皮膚を切開し、皮下の真皮と筋膜の間を剥離してできた空間にスペーサーを入れ、さらに非ヒト動物の組織とスペーサーの間にスペーサーを取り囲むように、上記の脂肪前駆細胞(ADSC)及び/又は脂肪組織をシリンジを用いて注入して行った。
【0088】
なお、これらのグループ(グループI〜IV)以外に、何の処置も行わず、同じ条件で飼育するマウスのグループ(コントロール)も用意した。
【0089】
<糖尿病モデルマウスの作製>
上記スペーサー等を移植したマウス(すなわちグループI〜IVのマウス)を、通常の飼育条件で3週間飼育し、3週間めにstreptozotocine(STZ)(280mg/体重kg、Sigma Aldrich Japan)を腹腔内投与(1回)して、糖尿病モデルマウスとした。コントロールのマウスは、当該投与はせず、通常の飼育条件で飼育した。なお、STZは膵臓β細胞に対する特異的な細胞毒性を与え、インスリン欠乏性の糖尿病を誘発することが知られている薬剤である。
【0090】
ここでの糖尿病モデルとは、食後血糖値が>350 mg/dLであることをいう。STZを投与したマウスの血糖値を、投与直後及びその後1週間おきに測定した。具体的には、当該マウスの尾をはさみで少し切断して出血させ、これをポータブルグルコースメーター(Nipro Care Fast meter, Nipro)を用いて測定した。当該測定は各マウスの食後に行った。結果を図3に示す。当該図のグラフでは、○がグループI(n=7)の結果を、●がグループII(n=7)の結果を、△がグループIV(n=5)の結果を示す。
【0091】
これからわかるように、STZ投与(STZip)から1週間後には、グループI、II、IVのマウスの血糖値の平均値は、いずれも500mg/dL近くになり、糖尿病モデルとなったことが確認できた。また、グループIIIについても、STZ投与(STZip)から1週間後に血糖値の平均値が500mg/dL近くになったことを確認した。
【0092】
<血管床形成の評価>
さらに1週間後(すなわち上記スペーサー等の移植より4週間後)、上述の糖尿病モデルマウスからスペーサーを取り出して得られたスペース(移植用スペース)周りの血管床の生成状態を確認した。具体的には、血管床を肉眼で観察するとともに、組織学的検査を行った。
【0093】
(1)肉眼観察
グループIのマウスの皮下に形成された移植用スペースを図4に示す。
【0094】
また、グループI〜IVの各マウスの移植用スペースの表面の写真を図5に示す。グループIでは、血管が新生して赤みがかっており、血管床が発達した移植スペースが形成されていることがわかる。また、グループIIでは、グループIほどの量ではないものの、いくらかの血管新生が観察された。グループIIIでも、少量ではあるが血管新生が観察された。グループIVでは血管新生は観察できなかった。
【0095】
(2)組織学的検査
各マウスの移植用スペース周辺の皮下の組織切片をパラホルム固定後パラフィン包埋、薄切にて作製し(染色無し)、光学顕微鏡で観察した。結果を図6に示す。グループIでは、移植された脂肪組織がおよそ1.5mmの厚みの層となり、その中央にスペーサー領域が存在している。豊富な血液細胞で満たされた血管床がグループIでは観察された。グループIIでは皮下にグループI程ではないものの、血管様形成が見られた。グループIIIでは、グループIと似た移植された脂肪組織の層が観察されたが、血管形成は幾分乏しかった。グループIVではほとんど血管は見られなかった。
【0096】
またさらに、スペース周辺の血管床の評価を行うため、膵島移植前にグループI〜IV及びコントロールの皮下組織切片(グループI〜IVはスペース形成部分を含む部分の皮下組織切片)をパラホルム固定後パラフィン包埋、薄切にて作製し、von Willebrand factorで染色(免疫染色)して、当該切片1×1mm中に存在する血管の数を計測、比較した。これらの切片の観察イメージを図7に示す。なお、イメージ中、血管は赤茶色に染色されている。
【0097】
各グループ及びコントロールの血管数は以下のようになった。
グループI:57±12/mm2
グループII:29±7/mm2
グループIII:21±4/mm2
グループIV:16±4/mm2
コントロール(処置無し):12±3/mm2

当該血管数の結果をグラフ化したものを図8に示す。
【0098】
これらの結果から、スペーサーとともにADSC又は脂肪細胞を移植したグループII、IIIにおいても、コントロールに比べて血管数が有意に増加することがわかった。さらに、スペーサーとともにADSC及び脂肪細胞を移植したグループIは、コントロール及びグループII〜IIIに比べ、血管数が有意に増加することがわかった。
【0099】
また、スペーサーのみ移植したグループIVとコントロールとの間では血管数にほとんど差がなく、スペーサーを埋め込む行為は血管数の増減にほとんど影響しないことが分かった。
【0100】
以上のことから、脂肪前駆細胞又は脂肪組織の移植により血管新生が誘導され血管床が形成さること、比較的脂肪前駆細胞の方が当該誘導能は高いこと、及び、脂肪前駆細胞及び脂肪組織を混合して用いることで、血管新生誘導作用は著しく増強されることがわかった。
【0101】
また、これらの結果から、グループI〜IIIのマウスは、スペーサーを埋め込むことによって形成したスペース(移植用スペース)周辺に血管床が形成されていること、特にグループIのマウスにはより発達した血管床が形成されていることが確認され、当該スペースに被験細胞組織を移植することにより、その有効性(機能の発現及び維持)を評価するのに用いることができると考えられた。
【0102】
実験例2:被験細胞組織(マウス膵島)の有効性の評価
実験例1で作製したマウスの移植用スペースに、調製例2で調製したマウス膵島を被験細胞組織として移植し、その有効性を検討した。
【0103】
<移植用スペースへの膵島の移植>
実験例1で作製したマウスのうち、グループI、II、IVのマウスにおいて、スペーサー等の移植より4週間後、移植したスペーサーを取り出し、当該取り出しによって形成された移植用スペースに、調製例2で回収した膵島600個を移植した。膵島は、シリンジにて当該移植用スペースに注入することで移植した。
【0104】
<移植した膵島の有効性の測定>
膵島移植から3週間後、IPGGTテスト(腹腔内投与によるグルコース負荷試験)を行った。具体的には、グループI及びコントロールの各マウスに16時間以上絶食後2g/体重kgのグルコースを腹腔内投与し、血糖値の経時的変化を測定した。結果をまとめたグラフを図9に示す。なお、○がグループIの結果を、■がコントロールの結果を示す。
【0105】
図9に示されるように、グループIのマウスの血糖値は、無処置であるコントロールマウス(正常マウス)のそれとほとんど同じ経時変化を示した。このことから、グループIに移植された膵島は、正常な膵臓と同じレベルでインスリンを産出していること、また、当該インスリンが血中に運搬され、当該インスリンの働きにより血糖値が正常に保たれていることが確認できた。
【0106】
膵島移植から8週間後、スペーサー領域に移植した膵島(グラフト)の摘出を行った。また、当該摘出前に、グループIについては、スペーサー領域に移植した膵島を含めた皮下組織の組織学検査を行った。
【0107】
組織学的検査は、具体的には、グループIのマウスの膵島を移植した領域を含めた皮下組織を切片化(パラホルム固定後パラフィン包埋、薄切にて作製)し、これをHE染色及びインスリン染色(抗インスリン抗体(シバヤギ社)を用いた免疫染色)して行った。当該染色組織のイメージを図10に示す。左がHE染色イメージ、右がインスリン染色のイメージを示す。当該イメージから、特にインスリン染色において、移植された膵島がよく染色されており、移植された膵島がインスリンを産出していることが確認できた。膵島の細胞では、通常細胞の死亡後2〜3週間でインスリンは検出されなくなるが、今回は膵島移植から8週間経過後であってもインスリン染色によりインスリンが検出されていることから、移植された膵島は移植後も生存し、インスリン産出能も失っていないことがわかった。
【0108】
前述するように、実験例1<糖尿病モデルマウスの作製>において、STZを腹腔内投与してから、各グループの血糖値を週ごとに測定した結果をまとめたグラフを、図3に示すが、図3に示されるように、スペーサーとともにADSC及び脂肪細胞を移植したグループI(○)は膵島の移植(Tx)により、一度重度の糖尿病レベルまで上昇した血糖値(約500mg/dL)が、平常のレベルに低下しており、当該膵島を摘出 (removal of the graft)すると再び血糖値が上昇している。このことからも、グループIに移植された膵島は、正常な膵臓と同じ量のインスリンを産出していること、また、当該インスリンが血中に運搬され、当該インスリンの働きにより血糖値が正常に保たれていることが確認できた。
【0109】
さらに、スペーサーとともにADSCを移植したグループII(●)も、グループI程の血糖値低下は見られないものの、膵島の移植(Tx)により血糖値が低下しており、当該膵島を摘出(removal of the graft)すると再び血糖値が上昇している。このことから、グループIIでは、移植した膵島が正常な膵臓よりは少ない量しかインスリンを産出できていないか、あるいは正常な膵臓と同等の量を産出してはいるものの、その全量が血中へ移行することができず、十分に血糖値を下げることができていないものと推認された。
【0110】
また、スペーサーのみ移植したグループIVでは、膵島の移植(Tx)及び当該膵島の摘出(removal of the graft)によっては血糖値はほとんど変化していない。このことから、グループIVでは、移植した膵島はインスリンを産出できていないか、あるいは産出したインスリンが血中へ移行できず、血糖値を下げることができないものと推認された。
【0111】
なお、グループIIIでは、グループIIとほぼ同等の血管床の形成が観察された(時期<血管床形成の評価>参照)ことから、グループIIIはグループIIと同様の結果となると考えられる。
【0112】
これらの結果(特にグループI又はIIのマウスに膵島を移植した結果)から、調製例3で調製したマウス膵島は、移植後もインスリン産出能を維持しており、当該マウス膵島がマウス糖尿病の治療に有効であることが確認できた。また、表面が血管床にさらされた移植スペースであれば、当該スペースが皮下に存在していても、インスリン等のホルモンを産出する細胞組織を移植した際に、当該細胞組織の機能が発揮され得、その有効性を測定できることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】ADSCに、間葉系幹細胞のマーカーとして知られるSca1及びCD44、造血系幹細胞のマーカーとして知られるCD31、CD34、CD45、CD117が、それぞれ発現しているか否かをフローサイトメトリーにて検討した結果を示す。
【図2】本発明に係るモデル動物に埋め込むスペーサーを示す。
【図3】実験例1において作製したグループI、II、IVのモデルマウスに対し、streptozotocineを投与して糖尿病を誘発させ、その後それぞれのマウスに膵島を移植した時の血糖値の推移を示すグラフである。○がグループIを、●がグループIIを、△がグループIVを示す。また、「STZip」はSTZを腹腔内投与したこと、「Tx」は膵島を移植したこと、「removal of the graft」は移植した膵島を摘出したこと、を示す。
【図4】本発明に係るモデル動物の皮下に形成された移植スペースの写真を示す。なお、当該イメージはスペース上の皮膚(真皮)を持ち上げて撮影したイメージである。
【図5】実験例1において作製したグループI〜IVのモデルマウスにおいて、スペーサーを取り出して形成された移植スペースの表面の写真を示す。
【図6】実験例1において作製したグループI〜IVのモデルマウスにおける移植スペースを含む部分の組織切片を作製し、光学顕微鏡で観察したイメージを示す。
【図7】実験例1において作製したグループI〜IVのモデルマウスにおける移植スペース形成部分の皮下組織切片を作製し、von Willebrand factorで染色(免疫染色)して、当該切片を観察したイメージを示す。
【図8】実験例1において作製したグループI〜IVのモデルマウスにおける移植スペース形成部分の皮下組織切片、及び、何ら処置をしていないコントロールマウスの皮下組織切片を作製し、von Willebrand factorで染色(免疫染色)して当該切片を観察し、1×1mm中に存在する血管の数を数えて計測、比較したグラフを示す。
【図9】グループI及びコントロールの各マウスに2g/体重kgのグルコースを腹腔内投与し、血糖値の経時的変化を測定した結果をまとめたグラフを示す。○がグループIを、■がコントロールを示す。
【図10】グループIのマウスにおいて、スペーサー領域に移植した膵島を含めた皮下組織を切片化し、これをHE染色及びインスリン染色(抗インスリン抗体を用いた免疫染色)して得たイメージを示す。左がHE染色のイメージ、右がインスリン染色のイメージを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表面が生体非反応性材料で形成されたスペーサーが埋め込まれた非ヒト動物であって、当該スペーサーと当該非ヒト動物の組織との間に脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織が移植された、非ヒト動物。
【請求項2】
生体非反応性材料が、ポリエステル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル及びポリアクリルアミドからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の非ヒト動物。
【請求項3】
スペーサーが埋め込まれた部位が皮下である、請求項1又は2に記載の非ヒト動物。
【請求項4】
さらに、脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織が移植された部分に血管床が形成された、請求項1〜3のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項5】
非ヒト動物に、少なくとも表面が生体非反応性材料で形成されたスペーサーと脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織を埋め込む工程を有し、ここで、当該スペーサーと当該非ヒト動物の組織との間に脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織が埋め込まれる状態になることを特徴とする、細胞組織の有効性評価のための非ヒト動物の作製方法。
【請求項6】
生体非反応性材料が、ポリエステル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル及びポリアクリルアミドからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項5に記載の細胞組織の有効性評価のための非ヒト動物作製方法。
【請求項7】
スペーサーを埋め込む部位が皮下である、請求項5又は6に記載の細胞組織の有効性評価のための非ヒト動物作製方法。
【請求項8】
さらに、スペーサー並びに脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織を埋め込んだ非ヒト動物を飼育し、該スペーサーの周りに血管床を形成させる工程を含む、請求項5〜7のいずれか1項に記載の細胞組織の有効性評価のための非ヒト動物作製方法。
【請求項9】
請求項4に記載の非ヒト動物からスペーサーを除去して得られるスペースに、被験細胞組織を移植する工程、及び当該被験細胞組織の機能を測定する工程を含む、被験細胞組織の有効性を測定する方法。
【請求項10】
被験細胞組織がホルモンを産出し得る細胞組織、又は代謝、解毒または物質の生合成に関わる細胞組織である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
動物に、少なくとも表面が生体非反応性材料で形成されたスペーサーと脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織を埋め込む工程を有し、ここで、当該スペーサーと当該動物の組織との間に脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織が埋め込まれる状態になることを特徴とする、当該スペーサー周りに血管床を形成させる方法。
【請求項12】
少なくとも表面が生体非反応性材料で形成されたスペーサーと、脂肪前駆細胞及び/又は脂肪組織とを組み合わせてなる血管床形成剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−154756(P2010−154756A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333258(P2008−333258)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構による委託研究「基礎研究から臨床研究への橋渡し促進技術開発/間葉系幹細胞を用いた再生医療早期実用化のための橋渡し研究」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(300061835)財団法人先端医療振興財団 (28)
【Fターム(参考)】