説明

細霧冷房装置

【課題】十分な採光が可能で、目詰まりを生じにくく、かつ水使用量も少なくできる低コストの細霧冷房装置を提供する。
【解決手段】ネット31と、ネット31に対してその一方側に設けられて細霧をネット面へ供給する噴霧ノズル4と、ネット31に対してその他方側に設けられてネット31を一方側から他方側へ通過する気流を生じさせる排気ファン5とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は細霧冷房装置に関し、特に、噴霧ノズルから細霧を噴霧してその気化熱により空気を冷却し冷房を行う細霧冷房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、従来の施設園芸に加えて、作物を人工環境で育成する高度な環境制御の栽培施設が普及しつつある。この場合の施設内の冷房装置として、水の蒸発による冷却メカニズムを利用した運転コストの安い細霧冷房装置が注目されている。このような細霧冷房装置の一種にパッドアンドファンシステムがある。このシステムは、栽培施設の一方の壁面に、水で濡らした格子状の空気透過パッドを設置して、他方の壁面開口に設けたファンで吸引することにより、上記パッドを通過する外気を加湿し、水分の気化によって冷却された外気を栽培施設内に流通させて冷房を行うものである。なお、特許文献1には空気透過パッドの外面に噴霧ノズルによって微細な水滴を吹き付けておき、上記パッドを通過する外気を水滴の気化熱によって冷却する空調システムが開示されている。
【特許文献1】特開2001-215027
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記パッドアンドファンシステムでは、建物の壁面に設けられたパッドによってこの部分の採光が妨げられること、長期使用時に繊維製のパッド内部に藻等が発生して目詰まりを生じること、ハニカム構造のパッドは清掃等のメンテナンスが困難なこと、あるいは気化効率が低いために水の使用量が比較的多いこと等の問題点があった。
【0004】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、十分な採光が可能で、目詰まりを生じにくく、かつ水使用量も少なくできる低コストの細霧冷房装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本第1発明では、ネット(31)と、ネット(31)に対してその一方側に設けられて細霧をネット面へ供給する細霧供給手段(4)と、ネット(31)に対してその他方側に設けられてネット(31)を一方側から他方側へ通過する気流を生じさせる気流発生手段(5)とを備えている。
【0006】
本第1発明においては、細霧が供給されたネットを通過する際に外気は加湿され水分の蒸発により気化熱を奪われて冷却される。この時、冷却空気中に含まれる気化しきれない余剰の水分はネットの繊維に付着して除去される。余剰の水分が除去された冷却空気は、途中で濡れ損を生じさせることなく流通させられて温度上昇を防止し効果的な冷房を行う。本第1発明ではネットを使用していることにより、採光が妨げられることがないとともに、長期使用時にも目詰まりを生じることがない。また、ネットは清掃等のメンテナンスが容易であるとともに、通気性が良いためネットに生じた水皮膜から流通空気中に効率良く気化が行われて水使用量を少なくでき、設置コストも従来のパッドに比して30%から50%低減することができる。
【0007】
本第2発明では、上記ネット(31,32)を互いに平行に2枚以上設ける。本第2発明によれば、冷却空気中の余剰の水分が2枚目以降のネットに付着して除去されるから、さらに濡れ損の発生を防止することができる。
【0008】
本第3発明では、部屋(1)の一方に設けた開口(11)にネット(31,32)を設置してその外方に細霧供給手段(4)を配置するとともに、部屋(1)の他方に設けた開口(12)に気流発生手段(5)を設置する。本第3発明によれば、温室や工場等の部屋内に冷気流を生じさせて、部屋内を効率的に冷房することができる。
【0009】
本第4発明では、筒状筐体(2)の一方の開口(21)にネット(31,32)を設置してその外方に細霧供給手段(4)を配置するとともに、筒状筐体(2)の他方の開口(22)に気流発生手段(6)を設置する。本第4発明によれば、細霧冷房装置をコンパクト化して、部屋内の必要箇所に簡易に設置することができる。
【0010】
なお、上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の細霧冷房装置によれば、十分な採光が可能で、目詰まりを生じにくく、かつ水使用量も少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1実施形態)
図1に本発明の細霧冷房装置を温室に設置した例を示す。図1において、温室1の一方の壁に設けた吸気口11には冷却部Cが設けてあり、冷却部Cは内外方向へ向けて設置された矩形筒状の筐体2を備えている。筐体2の入口開口21には、図2の概略垂直断面図に示すように、これを横断して防虫ネット23が張設され、室外側には開閉ルーバー24が上下方向へ間隔をおいて装着されている。筐体2の室内側に位置する出口開口22の開口縁には内外位置に、開口22を横断するように平行にネット31,32が張設されている。これらネット31,32のメッシュは0.2mm〜0.4mmとしてある。
【0013】
また、上記入口開口21内の筐体2底壁上には細霧供給手段としての噴霧ノズル4が開口21の幅方向へ適宜間隔で複数設けてある(図3)。各噴霧ノズル4は出口開口22方向へ斜め上方に向けて設けてあり(図2)、これら噴霧ノズル4から噴出された20μm〜40μm程度の細霧Wがネット31の全面にほぼ均一に供給されている。なお、筐体2の底壁上にはネット31,32の下部に沿ってタレ受け樋25(図2)が設けられている。一方、温室1の他方の壁に設けた排気口12(図1)には気流発生手段としての排気ファン5が設置されている。
【0014】
このような構造の細霧冷房装置において、排気ファン5を回転させると温室1内が負圧になって筐体2の入口開口21からネット31,32を通って外気が温室1内へ引き込まれる。ネット31,32には既述のように噴霧ノズル4によって細霧Wが供給されており、ネット31を通過する際に外気は加湿され水分の蒸発により気化熱を奪われて冷却される。この時、冷却空気中に含まれる気化しきれない余剰の水分はネット31の繊維に付着しタレ受け樋25へ垂下して大部分が除去される。そして、続くネット32を通過する際にさらに冷却空気中の余剰の水分がネット32に付着してほぼ完全に除去される。なお、タレ受け樋25で回収された水は再度噴霧ノズル4に循環させて再利用することが可能である。
【0015】
このようにして余剰の水分がほぼ完全に除去された冷却空気は、温室1内で濡れ損を生じさせることなく、排気ファン5に向けて温室1内を流通して(図1の矢印)当該温室1内の温度上昇を防止しこれを効果的に冷房する。その効果を図4に示す。図4は本発明の冷房装置を設置した場合(図中実線)と設置しない場合(図中破線)について、夏季における温室1内各所の吸気口11からの距離と、11時から13時までの上記各所の平均気温および平均相対湿度を調べたものである。なお、この場合の温室は遮光資材を施していない透明のプラスチック温室で、温室に入る日射量は比較的大きい。図4より明らかなように、本発明の冷房装置を備えた温室では、吸気口21から離れた地点においてもその温度は吸気口21付近と同程度に維持され、かつ相対湿度も吸気口21近くで一時的に上昇するものの、全体として吸気口21付近と同程度に維持されている。
【0016】
本発明の冷房装置においては、ネット31,32を使用していることにより、外光が十分通過するから吸入口11付近の採光が妨げられることがないとともに、長期使用時にも目詰まりを生じることがない。また、ネット31,32は気化効率が高いために水の使用量を少なくしてランニングコストを低減できるとともに、従来のパッドアンドファンシステムに比して設置コストを30%から50%も低減することができる。
【0017】
(第2実施形態)
図5,図6に示すように、細霧冷房装置を構成する筒状筐体2の出口開口22に気流発生手段としての排気ファン6を一体に設けた構造とすることができ、このような冷房装置を図7に示すように、第1実施形態で説明した冷却部Cと排気ファン5を備えた温室1内の気流流通経路の途中に設置すれば、さらに温室1内の温度、相対湿度および気流の分布を一様にすることができる。
【0018】
なお、上記各実施形態ではネットを2枚設けているが、1枚でも従来に比して十分な効果を得ることができる。また、3枚以上設けても、もちろん良い。また、噴霧ノズルの作動は温室内の温度や相対湿度に応じて自動制御するようにできる。さらに、本発明の細霧冷房装置は温室以外にキノコ栽培施設、あるいは工場や倉庫等にも設置することができる。また、噴霧ノズルから噴出させられる細霧に消臭剤や芳香剤を混ぜ、あるいは細霧を殺菌消毒や静電防止に使用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態を示す細霧冷房装置を設けた温室の概略断面図である。
【図2】細霧冷房装置を構成する冷却部の概略垂直断面図である。
【図3】細霧冷房装置を構成する冷却部の概略水平断面図である。
【図4】温室内の温度および相対湿度の分布を示すグラフである。
【図5】本発明の他の実施形態をしめす、細霧冷房装置を構成する冷却部の概略垂直断面図である。
【図6】細霧冷房装置を構成する冷却部の概略水平断面図である。
【図7】細霧冷房装置を設けた温室の概略断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1…温室(部屋)、11…吸気口(開口)、12…排気口(開口)、2…筐体、21…入口開口、22…出口開口、31,32…ネット、4…噴霧ノズル(細霧供給手段)、5,6…排気ファン(気流発生手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットと、前記ネットに対してその一方側に設けられて細霧をネット面へ供給する細霧供給手段と、ネットに対してその他方側に設けられてネットを一方側から他方側へ通過する気流を生じさせる気流発生手段とを備える細霧冷房装置。
【請求項2】
前記ネットを互いに平行に2枚以上設けた請求項1に記載の細霧冷房装置。
【請求項3】
部屋の一方に設けた開口に前記ネットを設置してその外方に前記細霧供給手段を配置するとともに、前記部屋の他方に設けた開口に前記気流発生手段を設置した請求項1又は2に記載の細霧冷房装置。
【請求項4】
筒状筐体の一方の開口に前記ネットを設置してその外方に前記細霧供給手段を配置するとともに、前記筒状筐体の他方の開口に前記気流発生手段を設置した請求項1又は2に記載の細霧冷房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−281288(P2008−281288A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−126412(P2007−126412)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【出願人】(507155018)株式会社中央グリーンシステム (1)
【Fターム(参考)】