説明

組立家屋の棚受け構造

【課題】 間柱が屋内側に開口した溝を有する断面形状であるにもかかわらず棚受けをワンタッチ操作によって迅速に取り付けることができ、しかも、専用の棚受け支柱やその取付け手間が不要で棚受け取付け位置の自由度が高く、棚受け取付け位置の変更を迅速に行うことができるようにした組立家屋の棚受け構造を提供する。
【解決手段】 屋内側に開口した溝aを有する間柱1と間柱1の間に、主板部5と、主板部の左右両端から内側に折曲形成された両側板部6と、各側板部の内端から間柱の溝内に向けて折り曲げ連設された折曲板部7とを備えた壁パネル2を設置した組立家屋において、前記折曲板部に設けた二枚重ね板部に上下方向に間隔を隔てて少なくとも2個の貫通孔aを形成し、これらの貫通孔に、棚受け3a、3b後端に設けられた上側係止片15の爪部15a,15bと下側係止片16の爪部16aを挿入係止させて、棚受け3a、3bを壁パネル2で支持させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、物置やガレージとして使用される組立家屋の棚受け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
屋内側に開口した溝を有する間柱と間柱の間に、主板部と、主板部の左右両端から内側に折曲形成された両側板部と、各側板部の内端から間柱の溝内に向けて折り曲げ連設された折曲板部とを備えた壁パネルを設置した組立家屋においては、屋内に棚板を設ける場合、間柱に棚受けを取り付けるのが一般的である。
【0003】
しかしながら、間柱が屋内側に開口した溝を有する断面形状であるため、間柱に対する棚受けの取付けには、間柱の側面板部と棚受けの一部とを挟持するクランプ機構とその締付けボルト、あるいは、間柱の側面板部と棚受けの一部を連結するボルト・ナットが必要とされ、何れの場合も、棚受け構造の構成部品点数が多く、しかも、工具を用いた取付け作業となり、棚受けの取付けにかなりの時間を要した。
【0004】
ところで、特許文献1には、上下方向に間隔を隔てて複数個の貫通孔が形成された断面L字状の棚受け支柱を壁パネル同士の接合部にボルト・ナットで連結し、棚受けの背面上側に設けられた係止片の爪部を前記貫通孔に挿入係止させて、棚受けを棚受け支柱で支持するようにした組立家屋の棚受け構造が記載されている。
【0005】
この棚受け構造によれば、棚受け支柱に対する棚受けの取付けは、係止片の爪部を貫通孔に挿入係止させるワンタッチ操作によって迅速に行えるが、係止片が棚受けの背面上側だけに設けられているため、棚受けの上方や左右方向への安定性が悪く、しかも、専用の棚受け支柱と、棚受け支柱を取り付けるための手間及び工具が必要であるから、全体として棚受けの取付けに長時間を要する点では、上記の一般的な従来技術とさほど差異はないと言える。また、この棚受け構造では、棚受けを取り付けたい位置に、予め、棚受け支柱を取り付けておかなければならないので、棚受け取付け位置の自由度が低く、棚受け取付け位置の変更には多大の時間を必要とするといった問題点がある。
【0006】
【特許文献1】実開昭54−18004号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題点を踏まえてなされたもので、その目的とするところは、間柱が屋内側に開口した溝を有する断面形状であるにもかかわらず棚受けをワンタッチ操作によって迅速に安定良く取り付けることができ、しかも、専用の棚受け支柱やその取付け手間が不要で棚受け取付け位置の自由度が高く、棚受け取付け位置の変更を迅速に行うことができるようにした組立家屋の棚受け構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明が講じた技術的手段は、次の通りである。即ち、請求項1に記載の発明は、屋内側に開口した溝を有する間柱と間柱の間に、主板部と、主板部の左右両端から内側に折曲形成された両側板部と、各側板部の内端から間柱の溝内に向けて折り曲げ連設された折曲板部とを備えた壁パネルを設置した組立家屋において、前記折曲板部に上下方向に間隔を隔てて少なくとも2個の貫通孔を形成し、これらの貫通孔に、棚受け後端に設けられた上側係止片の爪部と下側係止片の爪部を挿入係止させて、棚受けを壁パネルで支持するように構成したことを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の組立家屋の棚受け構造であって、前記折曲板部に二重に折り曲げ加工された二枚重ね板部を設け、この二枚重ね板部に前記貫通孔を形成する一方、前記上側係止片には、上向きの爪部と下向きの爪部を設けて前記貫通孔の上下両縁部に係止するように構成し、下側係止片には、少なくとも下向きの爪部を設けて前記貫通孔の下縁部に係止するように構成し、棚受けの棚板支持部と前記上側係止片及び下側係止片との間に位置する縦板部を、それらに対して平面視で略直角に折れ曲がった形状とし、この略直角に折れ曲がった板部を壁パネルの折曲板部と面接触するように構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、間柱の溝内に向けて折り曲げ連設された壁パネルの折曲板部に貫通孔を形成して、棚受け後端に設けられた上側係止片の爪部と下側係止片の爪部を挿入係止させるようにしたので、間柱が屋内側に開口した溝を有する断面形状であるにもかかわらず棚受けをワンタッチ操作によって迅速に安定良く取り付けることができ、しかも、壁パネルの折曲板部に棚受けを取り付け、棚受けを壁パネルで支持するようにしたので、専用の棚受け支柱やその取付け手間が不要で棚受け取付け位置の自由度が高く、棚受け取付け位置の変更を迅速に行うことができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、壁パネルの折曲板部に棚受けを取り付け、棚受けを壁パネルで支持するにもかかわらず強固な取付け構造が実現され、棚受けが安定良く支持される。
【0012】
即ち、間柱の溝内に向けて折り曲げ連設された壁パネルの折曲板部に二重に折り曲げ加工された二枚重ね板部を設け、この二枚重ね板部に前記貫通孔を形成するので、壁パネルがカラー鋼板等によって形成された板厚の薄いものであっても、棚受けを支持する部位の強度が高くなる。
【0013】
また、棚板に載置された物品の重量によって、棚受けに鉛直荷重が作用した際、上側係止片には、前方(貫通孔から抜け出す方向)の引張力が作用し、下側係止片には逆方向への圧縮力が作用するが、上側係止片に上向きの爪部と下向きの爪部を設けて貫通孔の上下両縁部に係止するように構成したので、貫通孔の縁部における引張応力が分散されることになる。しかも、棚受けの棚板支持部と前記上側係止片及び下側係止片との間に位置する縦板部を、それらに対して平面視で略直角に折れ曲がった形状とし、この略直角に折れ曲がった板部を壁パネルの折曲板部と面接触させることで、圧縮応力が分散されることになる。
【0014】
従って、壁パネルの折曲板部に二重に折り曲げ加工した二枚重ね板部が設けられ、当該二枚重ね板部に貫通孔が形成されていることと、引張応力及び圧縮応力が分散されることとによって、貫通孔の縁部が変形するのを防止でき、強固な取付け構造が実現され、棚受けが安定良く支持されるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、例えば物置として使用される組立家屋の棚受け構造を例示し、図2〜図7は、その要部を示す。図において、1は、屋内側に開口した溝aを有する間柱であり、間柱1と間柱1の間には、壁パネル2が設置されている。3a,3bは棚受けであり、両棚受け3a,3bは互いに左右対称形に形成されている。4は左右の棚受け3a,3bに架設された棚板である。
【0016】
前記壁パネル2は、図4〜図9に示すように、主板部5と、主板部5の左右両端から内側(屋内側)に折曲形成された両側板部6と、各側板部6の内端から間柱1の溝a内に向けて折り曲げ連設された折曲板部7とを備えている。
【0017】
各折曲板部7は、側板部6の内端から側方へ略直角に折れ曲がった第一板部8と、第一板部8の先端から外側(屋外側)へ略直略に折れ曲がった第二板部9と、第二板部9の外端から側方へ略直角に折れ曲がった第三板部10と、第三板部10の先端から外側へ略直角に折れ曲がった第四板部11とを備えており、第四板部11の外端から第二板部9の内端までを二重に折り曲げ加工された二枚重ね板部としてある。そして、第三板部10における二枚重ね板部には、縦長矩形状の貫通孔bを上下方向に一定間隔を隔てて複数個ずつ形成してある。
【0018】
また、折曲板部7における第一板部8には、図6、図9に示すように、上下方向の複数箇所に連結金具挿入孔cが形成されており、壁パネル2の両側板部6と間柱1の両側面板部には、互いに対向する位置に複数のボルト挿入孔d,eが形成されている。そして、図4に示すように、連結金具挿入孔cに挿入された連結金具12のねじ孔に、前記ボルト挿入孔d,eから挿入したボルト13をねじ込むことによって、間柱1と壁パネル2を連結するように構成してある。
【0019】
尚、間柱1や棚受け3a,3bは厚い(例えば2〜3mm)のカラー鋼板で製造され、壁パネル2はそれらより薄い(例えば0.5mm)のカラー鋼板で製造されている。
【0020】
前記棚受け3a,3bは左右対称形であるため、片側の棚受け3aについてのみ説明すると、当該棚受け3aは、図1〜図3、図5、図6に示すように、水平方向に延びる断面L字状の棚板支持部14と、棚受け後端に前記貫通孔bに対応する上下間隔を隔てて設けられた上側係止片15及び下側係止片16と、棚板支持部14と前記上側係止片15及び下側係止片16との間に位置する縦板部17とを有し、棚板支持部14の前後両端には棚板4を位置決めするための切欠き部f,gが形成されている。
【0021】
棚板4の前後両端には、図2、図3に示すように、前記切欠き部f,gと係合する折曲部4a,4bが形成され、左右両端には棚板支持部14に嵌合する折曲部4cが形成されている。そして、棚板4前端の折曲部4aを棚板支持部14前端の切欠き部fに係合させた状態で、棚板4後端の折曲部4bを棚板支持部14後端の切欠き部gに上方から落とし込んで係合させることによって、棚板4が前後左右に移動しないように構成してある。4d,4eは棚板4の端縁を隠蔽する合成樹脂製の化粧キャップである。
【0022】
前記上側係止片15には、上向きの爪部15aと下向きの爪部15bを設けて前記貫通孔bの上下両縁部に係止するように構成してあり、下側係止片16には、下向きの爪部16aだけを設けて前記貫通孔bの下縁部に係止するように構成してある。
【0023】
前記縦板部17は、図2、図5に示すように、棚板支持部14と前記上側係止片15及び下側係止片16に対して平面視で略直角に折れ曲がった形状(いわゆるZ曲げした形状)とされ、この略直角に折れ曲がった板部(Z曲げ板部)を壁パネル2の折曲板部7における第一板部8と面接触させるように構成してある。
【0024】
上記の構成によれば、間柱1の溝a内に向けて折り曲げ連設された壁パネル2の折曲板部7に貫通孔bを形成して、棚受け3a,3b後端に設けられた上側係止片15の爪部15a,15bと下側係止片16の爪部16aを挿入係止させるようにしたので、間柱1が屋内側に開口した溝aを有する断面形状であるにもかかわらず棚受け3a,3bをワンタッチ操作によって迅速に取り付けることができ、しかも、壁パネル2の折曲板部7に棚受け3a,3bを取り付け、棚受け3a,3bを壁パネル2で支持するようにしたので、専用の棚受け支柱やその取付け手間が不要で棚受け取付け位置の自由度が高く、棚受け取付け位置の変更を迅速に行うことができる。棚板4を左右に連続させて架設する場合には、図7に示すように、間柱1の両側に設置された壁パネル2の折曲板部7に形成された貫通孔bに、夫々、棚受け3a,3bの上側係止片15の爪部15a,15bと下側係止片16の爪部16aを挿入係止することになる。
【0025】
殊に、図示した実施形態の構成によれば、次の理由により、壁パネル2の折曲板部7に棚受け3a,3bを取り付け、棚受け3a,3bを壁パネル2で支持するにもかかわらず強固な取付け構造が実現され、棚受け3a,3bが安定良く支持されるのである。
【0026】
即ち、間柱1の溝a内に向けて折り曲げ連設された壁パネル2の折曲板部7に二重に折り曲げ加工された二枚重ね板部を設け、この二枚重ね板部に前記貫通孔bを形成するので、壁パネル2が薄いカラー鋼板によって形成されたものであるにもかかわらず棚受け3a,3bを支持する部位の強度が高くなる。
【0027】
また、棚板4に載置された物品の重量によって、棚受け3a,3bに鉛直荷重が作用した際、上側係止片15には、前方(貫通孔bから抜け出す方向)の引張力が作用し、下側係止片16には逆方向への圧縮力が作用するが、上側係止片15に上向きの爪部15aと下向きの爪部15bを設けて貫通孔bの上下両縁部に係止するように構成したので、貫通孔bの縁部における引張応力が分散される。しかも、棚受け3a,3bの棚板支持部14と前記上側係止片15及び下側係止片16との間に位置する縦板部17を、それら(棚板支持部14と前記上側係止片15及び下側係止片16)に対して平面視で略直角に折れ曲がった形状とし、この略直角に折れ曲がった板部を壁パネル2の折曲板部7の第一板部8と面接触させることで、圧縮応力が分散される。
【0028】
従って、壁パネル2の折曲板部7に二重に折り曲げ加工した二枚重ね板部が設けられ、当該二枚重ね板部に貫通孔bが形成されていることと、引張応力及び圧縮応力が分散されることとによって、貫通孔bの縁部が変形するのを防止でき、強固な取付け構造が実現され、棚受け3a,3bが安定良く支持されることになる。
【0029】
以上、図示の実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は、図示の実施形態だけに限定されるものではなく、例えば、折曲板部7の全体を二重に折り曲げ加工された二枚重ね板部に構成する等、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る組立家屋の棚受け構造を示す概略斜視図である。
【図2】要部の斜視図である。
【図3】要部の縦断側面図である。
【図4】間柱と壁パネルの連結部を示す横断平面図である。
【図5】棚受け取付け部を示す横断平面図である。
【図6】要部の分解斜視図である。
【図7】棚板を左右に連続させる場合の棚受け取付け部を示す横断平面図である。
【図8】壁パネルの一部切欠き平面図である。
【図9】壁パネルの要部の一部切欠き正面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 間柱
2 壁パネル
3a,3b 棚受け
4 棚板
5 主板部
6 側板部
7 折曲板部
8 第一板部
9 第二板部
10 第三板部
11 第四板部
15 上側係止片
15a,15b 爪部
16 下側係止片
16a 爪部
17 縦板部
a 溝
b 貫通孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内側に開口した溝を有する間柱と間柱の間に、主板部と、主板部の左右両端から内側に折曲形成された両側板部と、各側板部の内端から間柱の溝内に向けて折り曲げ連設された折曲板部とを備えた壁パネルを設置した組立家屋において、前記折曲板部に上下方向に間隔を隔てて少なくとも2個の貫通孔を形成し、これらの貫通孔に、棚受け後端に設けられた上側係止片の爪部と下側係止片の爪部を挿入係止させて、棚受けを壁パネルで支持するように構成したことを特徴とする組立家屋の棚受け構造。
【請求項2】
請求項1に記載の組立家屋の棚受け構造であって、前記折曲板部に二重に折り曲げ加工された二枚重ね板部を設け、この二枚重ね板部に前記貫通孔を形成する一方、前記上側係止片には、上向きの爪部と下向きの爪部を設けて前記貫通孔の上下両縁部に係止するように構成し、下側係止片には、少なくとも下向きの爪部を設けて前記貫通孔の下縁部に係止するように構成し、棚受けの棚板支持部と前記上側係止片及び下側係止片との間に位置する縦板部を、それらに対して平面視で略直角に折れ曲がった形状とし、この略直角に折れ曲がった板部を壁パネルの折曲板部と面接触させるように構成したことを特徴とする組立家屋の棚受け構造


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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