組織因子抗体およびその使用
本発明は、正常血漿対照と比べ組織因子介在血液凝固を阻害することがないヒト組織因子に結合能がある抗体を提供する。さらに、本発明の抗体の製造方法および使用方法が記載されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は、正常な組織因子介在血液凝固を阻害することなく組織因子に結合能がある抗体、およびその製造方法、ならびに癌の治療を含むその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術
組織因子(TF)は、第VIIa因子とともにインビボで血液凝固を開始する細胞結合成分である。TFは、219アミノ酸残基細胞外領域、23アミノ酸残基膜貫通領域、および21アミノ酸残基細胞質領域を有する膜貫通糖タンパク質である。TFの細胞外領域は2つのフィブロネクチンIII様ドメイン、およびクラスIIサイトカインとインターフェロン受容体の特徴を示すジスルフィド架橋の分布を有する。TFの細胞質領域は短いが、リン酸化されうる少なくとも1つのセリン残基を含有する。
【0003】
組織因子は、その天然リガンド−第VIIa因子とともに密な複合体(Kd〜pmol)を形成する。複合体においては、VIIaは組織因子を包み込み(バナー(Banner),D.W.ら、Nature380、p.41-46(1996年))、かつ組織因子表面との広範囲の領域の接触を形成する。
【0004】
癌を有する患者は、血栓塞栓性障害の予想発生率よりもはるかに高い発生率を示し、これは一般的にトルソー症候群と呼ばれる。トルソー症候群と一般的に関係した多くの腫瘍型、例えば肺癌、膵臓癌、乳癌、結腸癌、および胃癌は、TF陽性に染色する(フー(Hu),T.ら、Oncol.Res.6、p.321-327(1994年)、カランダー(Callander),N.S.ら、Cancer 70、p.1194-201(1992年))。TFの異常に高い発現は臨床的には、結腸直腸癌(シゲノリ(Shigernori),C.ら、Thromb.Haemost.80、p.894-898(1998年)、セト(Seto),S.ら、Cancer 88、p.295-301(2000年))、および非小細胞肺癌(サワダ(Sawada),M.ら、Br.J.Cancer 79、p.472-477(1999年))を含む多くの腫瘍の不十分な分化と関係があることが示されている。遺伝子発現の分子分析は、TFが乳癌細胞において異なった形で発現されることを示す(キルシュマン(Kirschmann),D.A.ら、Breast Cancer Res.Treat.55、p.127-136(1999年)、シュビルツケ(Schwirzke),M.ら、Anticancer Res.19、p.1801-1814(1999年))。
【0005】
腫瘍組織においては、TFは腫瘍細胞の表面だけではなく腫瘍関連血管内皮細胞でも発現される。TFは胎児血管発達において重要な役割を果たすことが示されている(カルメリート(Carmeliet),P.ら、Nature 383、p.73-75(1996年))。TFは通常、内皮では発現されない。しかし、乳癌(コントリーノ(Contrino),J.ら、Nat.Med.2、p.209-215(1996年)、ショウジ(Shoji),M.ら、Am.J.Pathol.152、p.399-411(1998年))、下垂体腺腫(ニシ(Nishi),T.ら、Cancer 86、p.1354-1361(1999年))、および肺癌(ショウジ(Shoji),M.ら、Am.J.Pathol.152、p.399-411(1998年)、クーマギ(Koomagi),R.、およびボルム(Volm),M.、Int.J Cancer 79、p.19-22(1998年))における腫瘍関連血管内皮細胞はTFを発現することが示されている。腫瘍細胞および腫瘍関連血管内皮細胞によるTFの発現は、腫瘍分泌VEGFおよびTNFによって誘発されることが示されている(ビアハウス(Bierhaus),A.ら、J.Biol.Chem.270、p.26419-26432(1995年)、ツッカー(Zucker),S.ら、Int.J.Cancer 75、p.780-786(1998年)、シェン(Shen),B.Q.ら、J.Biol.Chem.276、p.5281-5286(2001年))。
【0006】
正常な組織においては、TFは皮膚など密な内皮および組織関門により血液タンパク質から分離された細胞においてのみ発現され、TFは通常、血液タンパク質および抗体に容易にアクセス可能ではない。しかし、腫瘍組織においては、腫瘍関連血管内皮細胞のTFは血液タンパク質にさらされる。同時に、腫瘍TFは漏れやすい腫瘍血管系のためアクセス可能でもある。腫瘍細胞は、浸潤過程において最も役割を果たしやすいマトリクスメタロプロテアーゼを分泌し、漏れの原因となりうる。
【0007】
TF−VIIa相互作用部位に結合する抗体はTF−VIIa相互作用を阻害し、したがって血液凝固を阻害または阻止しうる。しかし、大量のその抗体が腫瘍治療に使用されると、患者における有効な出血制御が障害されうる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明の概要
本発明は、その抗体が正常血漿対照と比べると組織因子(TF)介在血液凝固を阻害することがない、ヒト組織因子(hTF)に結合能がある単離された抗体に関する。本発明は、その抗体が正常血漿対照と比べるとTF介在血液凝固を阻害することがなく、かつその抗体がFc介在機序を開始しうる、hTFに結合能がある単離された抗体にも関する。この抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、ヒト化抗体、修飾抗体、その重鎖もしくは軽鎖可変領域、またはFab発現ライブラリーの抗体産物でありうる。本発明はさらに、かかる抗体を産生するハイブリドーマ、およびかかる抗体をコードする核酸分子に関する。
【0009】
本発明はさらに、抗体の重鎖または軽鎖可変領域を含む免疫グロブリン分子に関する。
【0010】
本発明はさらに、hTFへの抗体の結合を阻害することが可能な抗抗体に関する。
【0011】
本発明はさらに、本発明のモノクローナル抗体を生成する方法に関し、この方法は、(a)哺乳動物にhTFの精製細胞外ドメインを含むポリペプチドで免疫するステップと、(b)免疫した哺乳動物のリンパ節から細胞懸濁液を調製するステップと、(c)ステップ(b)の細胞懸濁液からの細胞を骨髄腫細胞と融合させるステップと、(d)(c)における融合から生成されたハイブリドーマからクローンを同定するステップとを含み、クローンはhTFに結合能がある抗体を産生し、正常血漿対照と比べTF介在血液凝固を阻害することがなく、かつ場合により抗体がFc介在機序を開始しうる。
【0012】
本発明はさらに、本発明の抗体の治療上有効量および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。
【0013】
本発明は、患者における癌を治療する方法にも関し、この方法は本発明の抗体の治療上有効量を患者に投与するステップを含む。抗体は、細胞毒性剤または放射性核種に結合されうる。
【0014】
本発明はさらに、本発明の抗体をコードするヌクレオチド配列を有する単離されたポリヌクレオチドに関する。本発明はさらに、本発明の抗体、またはその抗体断片とアミノ酸配列において少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有する単離されたポリヌクレオチドに関する。一部の実施形態においては、かかるポリペプチドは本発明の抗体の免疫特異性を有する。本発明は、単離されたポリヌクレオチドを含むベクター、およびベクターを含む宿主細胞にも関する。
【0015】
本発明はさらに、本発明の抗体の治療上有効量を含む医薬組成物を含むキットに関する。一部の実施形態においては、このキットはさらに、癌を治療するための医薬組成物の使用に関する情報を提供する印刷物、または癌を治療するための医薬組成物の使用に関する情報を提供するあらかじめ録音されたメディアデバイス、またはプランナーを含む。
【0016】
本発明は、本発明の抗体の治療上有効量を含む医薬組成物をそれを必要とする患者に送達する方法にも関し、この方法は、(a)医薬組成物を処方することが許されている医師の身元をコンピュータ可読媒体に登録するステップと、(b)患者に医薬組成物に付随するリスクに関するカウンセリング情報を提供するステップと、(c)付随するリスクにもかかわらず医薬組成物が投与される患者のインフォームドコンセントを得るステップと、(d)インフォームドコンセントを得た後に患者をコンピュータ可読媒体に登録するステップ、および(e)患者の医薬組成物へのアクセスを可能にするステップとを含む。
【0017】
本発明は、医薬組成物の使用に関して消費者を教育する方法にも関し、この方法は、医薬組成物を販売時点で消費者情報とともに分配するステップを含む。
【0018】
本発明は、癌を検出する方法にも関し、この方法は、検出可能剤に結合した本発明の抗体を試料または対象に提供するステップ、かつ癌細胞に結合した検出可能剤を検出するステップを含む。
【0019】
本発明はさらに、本発明の抗体の治療上有効量を含む医薬組成物を識別し、および薬物と同等物を商品化する方法であって、この方法は、(a)ヒト組織因子に結合能がある抗体を単離するステップであって、この抗体は正常血漿対照と比べ組織因子介在血液凝固を阻害することがなく、かつFc介在機序を開始しうるステップと、(b)(a)を反復し、治療上有効であると判明しうる複数の候補抗体を得るステップと、(c)1つのかかる候補抗体について、ヒト以外の動物に投与される場合にその非毒性を証明するステップと、(d)監視下での臨床試験を行い、1つのかかる候補抗体の非毒性および有効性を証明するステップと、(e)規制機関の承認を確保し、癌を治療するための1つのかかる候補抗体を分配するステップ、および(f)活性剤として候補抗体を含む医薬組成物を製造するステップとを含む方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
好ましい実施形態の詳細な説明
正常な組織においては、TFは皮膚など密な内皮および組織関門により血液タンパク質から分離された細胞においてのみ発現される。TFは通常、抗体を含む血液タンパク質にアクセス可能ではないが、それはTHが通常、内皮内血管など血液と直接接触している細胞の表面では発現されないためである。しかし、TFは、TFが血液タンパク質にさらされている腫瘍関連血管内皮細胞を含む多くの型の腫瘍細胞によって発現される。TFは胎児血管発達に関与しており、腫瘍転移と関係がある。したがって、TFは潜在的な腫瘍治療標的であるとみなされている。
【0021】
抗体
本発明は、ヒトTF(hTF)に結合能がある単離された抗体に関し、この抗体は正常血漿対照と比べTF介在血液凝固を阻害することがない。本発明は、hTFに結合能がある単離された抗体にも関し、この抗体は正常血漿対照と比べTF介在血液凝固を阻害することがなく、かつこの抗体は1つもしくはそれ以上のFc介在機序を開始しうる。本発明の抗体は正常なTF介在血液凝固を阻害することがないため、正常な血漿凝固は本発明の抗体で治療された患者において影響されない。
【0022】
本明細書で使用される「単離された」は、その最初の環境(例えば、それが自然発生している場合には自然環境)から除去された物質を指し、したがって、その自然状態から「人間によって」変更される。
【0023】
基本的な抗体構造単位は、各対が1つの「軽」鎖(約25kDa)および1つの「重」鎖(約50−70kDa)を有する、2つの同一の対のポリペプチド鎖から成る四量体を含むことが知られている。各鎖のアミノ末端部は、主に抗原認識に関与する約100〜110もしくはそれ以上のアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシル末端部は、主にFc介在機序に関与する一定の領域を規定する。ヒト軽鎖は、カッパおよびラムダ軽鎖として分類されている。重鎖はミュー、デルタ、ガンマ、アルファ、またはイプシロンとして分類されており、かつ抗体のアイソタイプをそれぞれIgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEとして規定する。一般に、Fundamental Immunology、第7章(ポール(Paul),W.編、第2版、レイブンプレス(Raven Press)、ニューヨーク(N.Y.)(1989年))を参照。各軽/重鎖対の可変領域は、抗原結合部位を形成する。したがって、無傷のIgG抗体は2つの結合部位を有する。二官能性または二重特異性抗体以外で、2つの結合部位は同じである。
【0024】
可変領域はすべて、3つの超可変領域によって一緒に結合された、相補性決定領域すなわちCDRとも呼ばれる比較的保存されたフレームワーク領域(FR)という同じ一般構造を示す。各対の重鎖および軽鎖からのCDRはフレームワーク領域によって調整され、特異的エピトープへの結合を可能にする。N末端からC末端まで、両方の可変領域の軽鎖および重鎖はドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4を含む。各ドメインへのアミノ酸の割当は、カバット(Kabat)、免疫学的関心のタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health、メリーランド州(Md)、ベゼスダ(Bethesda)(1987年および1991年))、コーチア(Chothia)とレスク(Lesk)、J.Mol.Biol.196、p.901-917(1987年)、またはコーチア(Chothia)ら、Nature 342、p.878-883(1989年)の定義に従っている。
【0025】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、無傷の免疫グロブリン分子、および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分または断片、すなわち、免疫特異的に抗原に結合する抗原結合部位を含有する分子を指すように意図されている。本発明の抗体は、hTFへ特異的に結合することができ、正常血漿対照と比べTF介在血液凝固を阻害することがない。一部の実施形態においては、本発明の抗体はhTFへ特異的に結合することができ、正常血漿対照と比べTF介在血液凝固を阻害することがなく、かつ抗体が1つもしくはそれ以上のFc介在機序を開始しうる。
【0026】
本発明の抗体としては、無傷のモノクローナル抗体、多特異的抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、およびキメラ抗体、修飾抗体、一本鎖抗体、一本鎖Fvs(scFv)、ジスルフィド結合Fvs(sdFv)、Fab断片、F(ab’)断片、F(ab’)2断片、Fv断片、Fab発現ライブラリーによって生成される断片、VLまたはVHドメインのいずれかを含む断片、抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本発明の抗体に対する抗Id抗体を含む)、細胞内で作られた抗体(すなわち、細胞内発現抗体)、および抗原結合抗体断片が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の免疫グロブリン分子は、免疫グロブリン分子のすべての型(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)、またはサブクラスでありうる。一部の実施形態においては、免疫グロブリンはIgG1アイソタイプである。他の実施形態においては、免疫グロブリンはIgG2アイソタイプである。さらに他の実施形態においては、免疫グロブリンはIgG4アイソタイプである。免疫グロブリンは、重鎖と軽鎖の両方を有しうる。一連のIgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY重鎖は、カッパまたはラムダ形態の軽鎖と対になりうる。
【0027】
本発明の抗体は、単独もしくは以下の全部または一部と結合して可変領域を含有し得る。すなわち、ヒンジ領域、CH1、CH2、CH3、および/またはFcドメイン。本発明の抗体は、鳥および哺乳動物を含む任意の動物由来でありうる。一部の実施形態においては、抗体はヒト抗体、マウス抗体、ラット抗体、ロバ抗体、ヒツジ抗体、ウサギ抗体、ヤギ抗体、モルモット抗体、ラクダ抗体、ウマ抗体、またはニワトリ抗体である。本明細書で使用される「ヒト」抗体は、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体を含み、かつヒト免疫グロブリンライブラリーから、または1つもしくはそれ以上のヒト免疫グロブリン遺伝子導入動物から単離された抗体を含む。したがって、動物由来の本発明の抗体はヒト組織因子へ結合することができ、かつ正常血漿対照と比べるとTF介在血液凝固を阻害することがないと理解されるべきである。かかる抗体は1つもしくはそれ以上のFc介在機序を開始しうる。
【0028】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同質の抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を含む個々の抗体は、少量で存在しうる可能な自然発生突然変異を除き同一である。通常、異なる決定因子(エピトープ)に対する異なる抗体を含む従来の(ポリクローナル)抗体調製とは対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定因子に対するものであり、したがってきわめて特異的である。その特異的に加えて、モノクローナル抗体は、他の免疫グロブリンによって汚染されていないハイブリドーマ培養物によって合成されるため有利である。「モノクローナル」という修飾語句は、実質的に同質の抗体の集団から得られる抗体の特徴を示し、かつ特定の方法によって抗体の生成を必要とするとみなされていない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、コーラー(Kohler)とミルスタイン(Milstein)、Nature 256、p.495(1975年)によって最初に記載されたハイブリドーマ方法によって製造され、あるいは、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号明細書(カビリー(Cabilly)ら)によって製造されうる。
【0029】
「キメラ」抗体(免疫グロブリン)は、特定の種由来の抗体における対応する配列と同一または同質であり、または特定の抗体クラスまたはサブクラスに属すると同時に、鎖の残りは別の種由来の抗体における対応する配列と同一または同質であり、または別の抗体クラスまたはサブクラス、およびそれらが所望の生物活性を示す限りかかる抗体の断片に属する重鎖および/または軽鎖の一部を有する抗体を指す(米国特許第4,816,567号明細書(カビリー(Cabilly)ら)、モリソン(Morrison)ら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA 81、p.6851-6855(1984年を参照))。
【0030】
ヒト以外(例えば、マウス)の抗体の「ヒト化」形態は、ヒト以外の免疫グロブリン由来の最小の配列を含有するキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはその断片(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、または抗体の他の抗原結合サブ配列)である。大部分、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)からの残基がヒト以外の種(ドナー抗体)、例えば、所望の特異性および親和性を有するマウス、ラット、またはウサギのCDRからの残基によって置換されるヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は対応するヒト以外の残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体においてもまたは持ち込まれたCDRもしくはフレームワーク配列においても見られない残基を含有し得る。これらの修飾は、さらに抗体性能を高め、かつ最適化するためになされる。一般に、ヒト化抗体は、可変ドメインの少なくとも1つ、かつ一般的には2つの実質的にすべてを含むが、ここでCDR領域のすべてまたは実質的にすべてはヒト以外の免疫グロブリンのものに対応し、かつFR領域のすべてまたは実質的にすべてはヒト免疫グロブリン配列にものである。ヒト化抗体は、場合により、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、一般的にはヒト免疫グロブリンのものも含む。詳細については、ジョーンズ(Jones)ら、Nature 321、p.522-525(1986年)、ライヒマン(Reichmann)ら、Nature 332、p.323-329(1988年)、およびプレスタ(Presta)、Curr.Op.Struct.Biol.2、p.593-596(1992年)を参照。
【0031】
「修飾抗体」という用語は、抗体依存細胞細胞毒性(ADCC)および/または補体依存細胞毒性(CDC)(補体介在細胞死滅としても周知)の介在時に抗体の有効性を強化するために、エフェクター機能に関して修飾されている抗体を指す。例えば、システイン残基はFc領域に導入され、それによってこの領域での鎖間ジスルフィド結合形成を可能にしうる。したがって、生成されるホモ二量体抗体は、内在化能力を改善し、かつ/またはADCCおよびCDCを増大させうる。キャロン(Caron)ら、J.Exp.Med.176、p.1191-1195(1992年)、およびショープス(Shopes),B.、J.Immunol.148、p.2918-2922(1992年)を参照。抗腫瘍活性が強化されたホモ二量体は、ウォルフ(Wolff)ら、Cancer Research 53、p.2560-2565(1993年)に記載されているように、ヘテロ二官能性架橋剤を用いて調製もされうる。あるいは、抗体は、二重Fc領域を有し、それによって補体介在溶解およびADCC能力を強化しうるように修飾されうる。スティーブンソン(Stevenson)ら、Anti-Cancer Drug Design 3、p.219-230(1989年)を参照。さらに、抗体を改変し、結果としてADCC活性が強化される糖化パターンを変化させた糖型を生成しうる。米国特許第6,602,684号明細書を参照。
【0032】
二重特異性または二官能性抗体は、2つの異なる重/軽鎖対および2つの異なる結合部位を有する人工的なハイブリッド抗体である。二重特異性抗体は、ハイブリドーマの融合またはF(ab’)断片の結合を含むさまざまな方法によって生成されうる。例えば、ソングシビライ(Songsivilai)とラッハマン(Lachmann)、Clin.Exp.Immunol.79、p.315-321(1990年)、コステルニー(Kostelny)ら、J.Immunol.148、p.1547-1553(1992年)を参照。さらに、二重特異性抗体は「二重特異性抗体(diabodies)」(ホリガー(Holliger)ら、PNAS USA 90、p.6444-6448(1993年))、または「ヤヌシンス(Janusins)」(トラウネッカー(Traunecker)ら、EMBO J.10:p.3655-3659(1991年)およびトラウネッカー(Traunecker)ら、Int.J.Cancer Suppl.7、p.51-52(1992年))として形成されうる。
【0033】
本発明は、本発明の抗体の重鎖または軽鎖可変領域を含む免疫グロブリン分子にも関する。本発明はさらに、hTFに対する本発明の抗体の結合を阻害することが可能な単離された抗体に関し、前記抗体は正常血漿対照と比べTF介在血液凝固を阻害することがない。
【0034】
本発明の抗体は、その交差反応性の観点からも記載または特定されうる。一部の実施形態においては、本発明の抗体は、TFポリペプチド(例えば、ヒトTF(配列番号:2))、またはTFポリペプチドの断片に少なくとも約95%、少なくとも約90%、少なくとも約85%、少なくとも約80%、少なくとも約75%、少なくとも約70%、少なくとも約65%、少なくとも約60%、少なくとも約55%、少なくとも約50%、少なくとも約45%、または少なくとも約40%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドに結合する。一部の実施形態においては、本発明の抗体は、hTFのマウス、サル、ラット、および/またはウサギ同族体、およびその対応するエピトープと交差反応する。他の実施形態においては、上記の交差反応性は、任意の単一の特異的抗原もしくは免疫原性ポリペプチド、または2、3、4、5、もしくはそれ以上の特異的抗原および/または免疫原性ポリペプチドの組合せに対してである。
【0035】
技術上周知のように、2つのポリペプチド間の「配列同一性」は、1つのポリペプチドのアミノ酸配列を第2のポリペプチドの配列と比較することによって決定されている。本明細書で論じられる場合、特定のポリペプチドが別のポリペプチドと少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%同一であるかどうかは、技術上周知の方法およびコンピュータプログラム/ソフトウェアを用いて決定されうる。例えば、BESTFITプログラム(ウィスコンシン(Wisconsin)配列分析パッケージ、ユニックス用バージョン8、ジェネティクス コンピュータ グループ(Genetics Computer Group)、ユニバーシティーリサーチパーク(University Research Park)、575サイエンス ドライブ(Science Drive)、ウィスコンシン州(WI)53711、マディソン(Madison))などであるが、これらに限定されない。BESTFITでは、スミス(Smith)とウォーターマン(Waterman)のローカルホモロジーアルゴリズム、Advances in Applied Mathematics 2、p.482-489(1981年)を使用し、2つの配列間のホモロジーの最良のセグメントを見出す。BESTFITまたは他の配列調整プログラムを用いて、特定の配列が、例えば、本発明による基準配列と95%同一であるかどうかを判定する場合、パラメータは、もちろん、同一性の割合が基準ポリペプチド配列の完全長にわたって計算され、かつ基準配列におけるアミノ酸の総数の5%までのホモロジーのギャップが許されるように設定されている。
【0036】
本発明の抗体は、hTFポリペプチドまたはhTFのポリペプチド断片に免疫特異的に結合しうる。一部の実施形態においては、本発明の抗体はhTFに免疫特異的に結合する。他の実施形態においては、本発明の抗体はhTFの細胞外ドメインに免疫特異的に結合する。本明細書で使用される「hTFの細胞外ドメイン」は、細胞の外側表面上に局在されているhTFの219アミノ酸残基部分を指すよう意図されている(例えば、32アミノ酸N末端リーダー配列および9アミノ酸C末端RGS−His6タグ配列を有するヒト組織因子の細胞外ドメインのヌクレオチド(配列番号:3)およびアミノ酸(配列番号:4)配列を示す図6を参照)。
【0037】
一部の実施形態においては、本発明の抗体は優先的にhTFに結合する。他の実施形態においては、本発明の抗体は免疫特異的にhTFに結合し、かつ他の抗原と交差反応することがない。本発明の抗体は、正常血漿対照と比べTF介在血液凝固を阻害することがない。他の実施形態においては、本発明の抗体は1つもしくはそれ以上のFc介在機序を開始する。
【0038】
「抗原結合抗体断片」という用語は、本発明の抗体の対応する完全長または天然ポリペプチド配列と比べてポリペプチド配列の一部または部分である分子(例えば、ポリペプチド)を指すよう意図されている。ポリペプチド配列の一部または部分は、フルサイズの本発明の抗体の完全長または天然ポリペプチド配列の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%でありうるが、完全長抗体の少なくともある程度の結合特異性を保持し、かつ正常血漿対照と比べTF介在血液凝固を阻害することがなく、場合によりFc介在機序を開始する。
【0039】
本明細書に記載された抗体分子(例えば、VHドメインおよび/またはVLドメイン)の抗原結合抗体断片(誘導体を含む)としては、VHドメイン、VHCDR1、VHCDR2、VHCDR3、VLドメイン、VLCDR1、VLCDR2、またはVLCDR3を含めて、完全長抗体の少なくとも20、少なくとも40、少なくとも60、少なくとも80、少なくとも100、少なくとも120、少なくとも140、少なくとも160、もしくは160超のアミノ酸の断片(誘導体を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。結果として生じる抗体または抗原結合抗体断片は生物活性についてスクリーニングされ、所望の活性(例えば、hTFに結合する能力)を保持する断片を同定することができる。
【0040】
非限定的実施例を通じて、抗体は、第2の抗原に対する抗体の解離定数(KD)またはオフレート(Koff)より小さいKDまたはKoffを有するhTFタンパク質に結合する場合にはhTFに優先的に結合することが考えられうる。他の非限定的実施形態においては、抗体は、第2の抗原に対する抗体のKDまたはKoffより少なくとも一桁小さいKDまたはKoffを有するhTFタンパク質に結合する場合にはhTFに優先的に結合すると考えられうる。他の非限定的実施形態においては、抗体は、第2の抗原に対する抗体のKDまたはKoffより少なくとも二桁小さいKDまたはKoffを有するhTFに結合する場合にはhTFに優先的に結合すると考えられうる。
【0041】
本発明の抗体もそのhTFへの結合親和性に関して記載または特定されうる。一部の実施形態においては、結合親和性は、5×10-2M、10-2M、5×10-3M、10-3M、5×10-4M、または10-4Mより小さい、またはこれに等しい解離定数すなわちKDを有するものを含む。他の実施形態においては、親和性は、5×10-5M、10-5M、5×10-6M、10-6M、5×10-7M、107M、5×10-8Mまたは10-8Mよりも小さい、またはこれに等しい解離定数すなわちKDを有するものを含む。さらに他の実施形態においては、結合親和性は、5×10-9M、10-9M、5×10-10M、10-10M、5×10-11M、10-11M、5×10-12M、10-12M、5×10-13M、10-13M、5×l0-l4M、10-14M、5×l0-l5M、または10-15Mより小さい、またはこれに等しい解離定数すなわちKDを有するものを含む。
【0042】
一部の実施形態においては、本発明の抗体は、5×10-2秒-1、10-2秒-1、5×10-3秒-1、または10-3秒-1より小さい、またはこれに等しいオフレート(Koff)を有するhTFポリペプチドに結合しうる。他の実施形態においては、本発明の抗体は、5×10-4秒-1、10-4秒-1、5×10-5秒-1、または10-5秒-15×10-6秒-1、10-6秒-1、5×10-7秒-1または10-7秒-1より小さい、またはこれに等しいオフレート(Koff)を有するhTFポリペプチドまたはその断片に結合しうる。
【0043】
本発明の一部の実施形態においては、hTFに免疫特異的に結合する抗体は、本発明の細胞株を発現する抗TF抗体によって発現される重鎖のいずれか1つおよび/または本発明の細胞株を発現する抗TF抗体によって発現される軽鎖のいずれか1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドを含有し得る。本発明の他の実施形態においては、hTFに免疫特異的に結合する抗体は、本発明の細胞株を発現する抗TF抗体によって発現される重鎖のVHドメインのいずれか1つおよび/または本発明の細胞株を発現する抗TF抗体によって発現される軽鎖のVLドメインのいずれか1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドを含有し得る。さらに他の実施形態においては、本発明の抗体は、本発明の細胞株を発現する単一の抗TF抗体によって発現されるVHドメインおよびVLドメインのアミノ酸配列を含有し得る。他の実施形態においては、本発明の抗体は、本発明の細胞株を発現する2つの異なる抗TF抗体によって発現されるVHドメインおよびVLドメインのアミノ酸配列を含有し得る。hTFに免疫特異的に結合する本発明の細胞株を発現する抗TF抗体によって発現されるVHおよび/またはVLドメインの抗原結合抗体断片を含む、あるいはこれから成る分子も、これらのVHおよびVLドメイン、分子、および/または断片をコードする核酸分子のように、本発明によって包含される。
【0044】
本発明は、本明細書に記載されている抗体分子(例えば、VHドメインおよび/またはVLドメイン)の変形(誘導体を含む)を含む、あるいはこれから成るポリペプチドも提供し、このポリペプチドはhTFもしくはその断片または変異体に免疫特異的に結合する。「変異体」という用語は、対応する天然ポリペプチドまたはDNA配列と比べそのアミノ酸またはヌクレオチド配列において少なくとも1つもしくはそれ以上の差異を有する分子(例えば、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列)を指す。本発明のアミノ酸配列変異体は、本発明の抗TF抗体のアミノ酸配列と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する。実質的な変異体は、除去された天然配列において少なくとも1つのアミノ酸残基、および同じ位置でその場所において挿入された異なるアミノ酸を有するものである。置換は、分子において1つのみのアミノ酸が置換されているという単一であってもよく、または同じ分子において2つもしくはそれ以上のアミノ酸が置換されているという多重であってもよい。挿入変異体は、アミノ酸のα−カルボキシルまたはα−アミノ官能基のいずれかに結合されている天然アミノ酸配列における特定の位置でアミノ酸に直接隣接して挿入された1つもしくはそれ以上のアミノ酸を有するものである。欠失変異体は、天然アミノ酸配列から除去された1つもしくはそれ以上のアミノ酸を有するものである。通常、欠失変異体は分子の特定の領域において欠失された1つもしくは2つのアミノ酸を有する。例えば、結果としてアミノ酸置換が生じるコード核酸分子の部位指定変異導入またはPCR介在変異導入によることを含む、当業者に周知の標準技術を使用して本発明の抗体に変異を導入することができる。一部の実施形態においては、変異体(誘導体を含む)は、50未満のアミノ酸置換、40未満のアミノ酸置換、30未満のアミノ酸置換、25未満のアミノ酸置換、20未満のアミノ酸置換、15未満のアミノ酸置換、10未満のアミノ酸置換、5未満のアミノ酸置換、4未満のアミノ酸置換、3未満のアミノ酸置換、または2未満のアミノ酸置換を他の基準ポリペプチドに対して有する。一部の実施形態においては、変異体ポリペプチドは同じ免疫特異性を有し、または本発明のポリペプチドと同じエピトープに結合する。
【0045】
同様のアミノ酸を有するポリペプチド、もしくはその断片または変異体が同様の構造および同じ生物活性の多くを有しうることが技術上周知である。したがって、本発明はさらに、単離された一次抗体、またはその抗原結合断片に関し、以下よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含む二次抗体と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有する。すなわち、(a)ハイブリドーマ細胞株TF196(2003年5月15日寄託、ATCC寄託番号:PTA−5196)によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域、(b)ハイブリドーマ細胞株TF260(2003年5月15日寄託、ATCC寄託番号:PTA−5197)によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域、(c)ハイブリドーマ細胞株TF278(2003年12月3日寄託、ATCC寄託番号:PTA−5676)によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域、(d)ハイブリドーマ細胞株TF277(2003年12月3日寄託、ATCC寄託番号:PTA−5675)によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域、(e)ハイブリドーマ細胞株TF392(2003年12月3日寄託、ATCC寄託番号:PTA−5677)によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域、(f)ハイブリドーマ細胞株TF9(2003年12月3日寄託、ATCC寄託番号:PTA−5674)によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域、(g)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域、(h)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域、(i)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域、(j)ハイブリドーマ細胞株TF277によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域、(k)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域、(l)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域、(m)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域、(n)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域、(o)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域、(p)ハイブリドーマ細胞株TF277によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域、(q)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域、(r)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域、(s)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域、(t)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域、(u)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域、(v)ハイブリドーマ細胞株TF277によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域、(w)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域、(x)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域、(y)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域、(z)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域、(aa)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域、(bb)ハイブリドーマ細胞株TF277によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域、(cc)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域、(dd)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域、(ee)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域、(ff)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域、(gg)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域、(hh)ハイブリドーマ細胞株TF277によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域、(ii)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域、(jj)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域。一部の実施形態においては、一次抗体、またはその抗原結合断片は、同じ免疫特異性を有し、または二次抗体と同じエピトープに結合する。
【0046】
本発明は、単離された抗体、またはその抗原結合断片に関し、以下よりなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一のアミノ酸配列を有する。すなわち、(a)配列番号:6もしくは8のポリペプチド、またはATCC寄託番号:PTA−5252もしくはPTA−5253でそれぞれ提供されるcDNA配列によってコードされるポリペプチド(それぞれ、TF260VH/PUC18またはTF260VL/PUC18)、(b)配列番号6もしくは8のポリペプチドドメイン、またはATCC寄託番号:PTA−5252もしくはPTA−5253でそれぞれ提供されるcDNA配列によってコードされるポリペプチド(それぞれ、TF260VH/PUC18またはTF260VL/PUC18)、(c)配列番号6もしくは8のポリペプチドエピトープ、またはATCC寄託番号:PTA−5252もしくはPTA−5253でそれぞれ提供されるcDNA配列によってコードされるポリペプチド(それぞれ、TF260VH/PUC18またはTF260VL/PUC18)、(d)配列番号:6もしくは8の変異体であるポリペプチド、(e)配列番号6もしくは8の種同族体であるポリペプチド、(f)配列番号:10もしくは12のポリペプチド、またはATCC寄託番号:PTA−5250もしくはPTA−5251でそれぞれ包含されるcDNA配列によってコードされるポリペプチド(それぞれ、TF196VH/PUC18またはTF196VL/PUC18)、(g)配列番号:10もしくは12のポリペプチドドメイン、またはATCC寄託番号:PTA−5250もしくはPTA−5251でそれぞれ包含されるcDNA配列によってコードされるポリペプチド(それぞれ、TF196VH/PUC18またはTF196VL/PUC18)、(h)配列番号:10もしくは12のポリペプチドエピトープ、またはATCC寄託番号:PTA−5250もしくはPTA−5251でそれぞれ包含されるcDNA配列によってコードされるポリペプチド(それぞれ、TF196VH/PUC18またはTF196VL/PUC18)、(i)配列番号:10もしくは12の変異体であるポリペプチド、(j)配列番号:10もしくは12の種同族体であるポリペプチド、(k)配列番号:19もしくは21のポリペプチド、またはATCC寄託番号:PTA−5694もしくはPTA−5695でそれぞれ提供されるcDNA配列によってコードされるポリペプチド(それぞれ、TF278VHs/PUC18またはTF278VLs/PUC18)、(l)配列番号:19もしくは21のポリペプチドドメイン、またはATCC寄託番号:PTA−5694もしくはPTA−5695でそれぞれ提供されるcDNA配列によってコードされるポリペプチド(それぞれ、TF278VHs/PUC18またはTF278VLs/PUC18)、(m)配列番号:19もしくは21のポリペプチドエピトープ、またはATCC寄託番号:PTA−5694もしくはPTA−5695でそれぞれ提供されるcDNA配列によってコードされるポリペプチド(それぞれ、TF278VHs/PUC18またはTF278VLs/PUC18)、(n)配列番号:19もしくは21の変異体であるポリペプチド、(o)配列番号19もしくは21の種同族体であるポリペプチド、(p)配列番号:23もしくは25のポリペプチド、(q)配列番号:23もしくは25のポリペプチドドメイン、(r)配列番号:23もしくは25のポリペプチドエピトープ、(s)配列番号:23もしくは25の変異体であるポリペプチド、(t)配列番号:23もしくは25の種同族体であるポリペプチド、(u)配列番号:27のポリペプチド、またはATCC寄託番号:PTA−5696で提供されるcDNA配列によってコードされるポリペプチド(TF392VHs/PUC18)、(v)配列番号:27のポリペプチドドメイン、またはATCC寄託番号:PTA−5696で提供されるcDNA配列によってコードされるポリペプチド(TF392VHs/PUC18)、(w)配列番号:27のポリペプチドエピトープ、またはATCC寄託番号:PTA−5696で提供されるcDNA配列によってコードされるポリペプチド(TF392VHs/PUC18)、(x)配列番号:27の変異体であるポリペプチド、(y)配列番号:27の種同族体であるポリペプチド、(z)配列番号:29もしくは31のポリペプチド、またはATCC寄託番号:PTA−5692もしくはPTA−5693でそれぞれ提供されるcDNA配列によってコードされるポリペプチド(それぞれ、TF9VHs/PUC18またはTF9VL/PUC18)、(aa)配列番号:29もしくは31のポリペプチドドメイン、またはATCC寄託番号:PTA−5692もしくはPTA−5693でそれぞれ提供されるcDNA配列によってコードされるポリペプチド(それぞれ、TF9VHs/PUC18またはTF9VL/PUC18)、(bb)配列番号:29もしくは31のポリペプチドエピトープ、またはATCC寄託番号:PTA−5692もしくはPTA−5693でそれぞれ提供されるcDNA配列によってコードされるポリペプチド(それぞれ、TF9VHs/PUC18またはTF9VL/PUC18)、(cc)配列番号:29もしくは31の変異体であるポリペプチド、および(dd)配列番号:29もしくは31の種同族体であるポリペプチド。一部の実施形態においては、抗体、またはその抗原結合断片は同じ免疫特異性を有し、または配列番号:6、8、10、12、19、21、23、25、27、29、および31よりなる群から選択されるアミノ酸配列によってコードされるポリペプチドと同じエピトープに結合する。
【0047】
本発明は、本明細書に記載された抗体の1つもしくはそれ以上と同じ生物特性の1つもしくはそれ以上を有する抗体も包含する。「生物特性」によって、抗体のインビトロまたはインビボ活性または特性、例えば、正常血漿対照と比べTF介在血液凝固を阻害することなく、TF(例えば、細胞表面で発現されるhTF、または膜埋込みhTF)へ結合する能力などを意味するよう意図されている。場合により、本発明の抗体は、本明細書で特記される抗体の1つと同じエピトープへ結合しうる。かかるエピトープ結合は、技術上周知のアッセイを用いてルーチンに測定されうる。
【0048】
本発明は、ハイブリドーマ細胞株TF260によって生成されるモノクローナル抗体の、またはこれによって認識されるエピトープへの結合を競合する、結合特性を有するモノクローナル抗体にも関する。本発明は、ハイブリドーマ細胞株TF196によって生成されるモノクローナル抗体の、またはこれによって認識されるエピトープへの結合を競合する、結合特性を有するモノクローナル抗体にも関する。本発明は、ハイブリドーマ細胞株TF278によって生成されるモノクローナル抗体の、またはこれによって認識されるエピトープへの結合を競合する、結合特性を有するモノクローナル抗体にも関する。ハイブリドーマ細胞株TF277によって生成されるモノクローナル抗体の、またはこれによって認識されるエピトープへの結合を競合する、結合特性を有するモノクローナル抗体にも関する。ハイブリドーマ細胞株TF392によって生成されるモノクローナル抗体の、またはこれによって認識されるエピトープへの結合を競合する、結合特性を有するモノクローナル抗体にも関する。ハイブリドーマ細胞株TF9によって生成されるモノクローナル抗体の、またはこれによって認識されるエピトープへの結合を競合する、結合特性を有するモノクローナル抗体にも関する。本発明は、ハイブリドーマ細胞株TF260から得られる抗体にも関する。本発明は、ハイブリドーマ細胞株TF196から得られる抗体にも関する。本発明は、ハイブリドーマ細胞株TF278から得られる抗体にも関する。本発明は、ハイブリドーマ細胞株TF277から得られる抗体にも関する。本発明は、ハイブリドーマ細胞株TF392から得られる抗体にも関する。本発明は、ハイブリドーマ細胞株TF9から得られる抗体にも関する。本発明は、ハイブリドーマ細胞株TF260から生成される抗体と同じ免疫特異性を有し、またはこれと同じエピトープに結合する抗体を生成するハイブリドーマ細胞株にも関する。本発明は、ハイブリドーマ細胞株TF196から生成される抗体と同じ免疫特異性を有し、またはこれと同じエピトープに結合する抗体を生成するハイブリドーマ細胞株にも関する。本発明は、ハイブリドーマ細胞株TF278から生成される抗体と同じ免疫特異性を有し、またはこれと同じエピトープに結合する抗体を生成するハイブリドーマ細胞株にも関する。本発明は、ハイブリドーマ細胞株TF277から生成される抗体と同じ免疫特異性を有し、またはこれと同じエピトープに結合する抗体を生成するハイブリドーマ細胞株にも関する。本発明は、ハイブリドーマ細胞株TF392から生成される抗体と同じ免疫特異性を有し、またはこれと同じエピトープに結合する抗体を生成するハイブリドーマ細胞株にも関する。本発明は、ハイブリドーマ細胞株TF9から生成される抗体と同じ免疫特異性を有し、またはこれと同じエピトープに結合する抗体を生成するハイブリドーマ細胞株にも関する。本発明は、ハイブリドーマ細胞株TF260にも関する。本発明は、ハイブリドーマ細胞株TF196にも関する。本発明は、ハイブリドーマ細胞株TF278にも関する。本発明は、ハイブリドーマ細胞株TF277にも関する。本発明は、ハイブリドーマ細胞株TF392にも関する。本発明は、ハイブリドーマ細胞株TF9にも関する。本発明は、配列番号:6、8、10、12、19、21、23、25、27、29、または31のアミノ酸配列を含む抗体にも関する。アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)(ATCC)は、米国、20110−2209、バージニア州(VA)、マナッサス(Manassas)10801ユニバーシティブールバード(University Boulevard)にある。
【0049】
抗体を生成する方法
本発明の抗体は、抗体の合成のための技術上周知の任意の方法によって、例えば、化学合成によって、または組換え発現技術によって生成されうる。他の実施形態においては、多重部位でのマウスの迅速免疫(RIMMS)が使用されうる。例えば、キルパトリック(Kilpatrick),K.E.ら、Hybridoma 16、p.381-389(1997年)を参照。さらに他の実施形態においては、抗体を生成する方法としては、ハイブリドーマ技術、EBV形質転換、ゼノマウス(XenoMouse)(商標)技術(グリーン(Green)ら、Nature Genetics 7、p.13-21(1994年)参照、および本明細書で論じられた他の方法、ならびに以下で論じられる組換えDNA技術の使用によるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
本発明の抗体は技術上周知の適切な任意の方法によって生成されうる。目的とする抗原に対するポリクローナル抗体は技術上周知の種々の手段によって生成されうる。例えば、目的とするポリペプチドは、ウサギ、マウス、ラット等を含むが、これらに限定されない種々の宿主動物に投与され、抗原に特異的なポリクローナル抗体を含有する血清の産生を誘発しうる。種々のアジュバントを使用して、宿主種に応じて免疫応答を増大させることができ、これには、フロイント(完全および不完全)アジュバント、水酸化アルミニウムなどのミネラルゲル、リゾレシチン、プルロニック(pluronic)ポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油エマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノールなどの表面活性物質のほか、BCG(カルメットゲラン菌)およびコリネバクテリウムパルヴムなどの潜在的に有用なヒトアジュバントが挙げられるが、これらに限定されない。かかるアジュバントも技術上周知である。
【0051】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換え、およびファージディスプレイ技術、またはその組合せの使用を含む技術上周知の多種多様の技術を用いて調製されうる。例えば、モノクローナル抗体は、技術上周知であり、かつ、例えば、ハーロー(Harlow)ら、抗体:実験室マニュアル(Antibodies:A Laboratory Manual)収載、(コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、第2版(1988年))、ハマーリング(Hammerling)ら、モノクローナル抗体およびT細胞ハイブリドーマ(Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas)収載、エルゼビア(Elsevier)、ニューヨーク(1981年)、p.563-681に開示されているものを含むハイブリドーマ技術を用いて生成されうる。本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマ技術により生成される抗体に限定されない。「モノクローナル抗体」という用語は、真核、原核、またはファージクローンを含む単一クローン由来である抗体を指し、生成される方法を指すものではない。
【0052】
ハイブリドーマ技術を用いた特異的抗体の生成およびスクリーニング方法はルーチンかつ技術上周知である。非限定的実施例においては、マウスは目的とするポリペプチド、またはかかるペプチドを発現する細胞で免疫されうる。免疫応答が検出され、例えば、抗原に特異的な抗体がマウス血清で検出されると、マウス脾臓が摘出され、かつ脾細胞が単離される。次いで、脾細胞は周知の技術によって適切な骨髄腫細胞、例えば、マウス骨髄腫細胞(P3X63/Ag8.653、ATCC番号CRL−1580、バージニア州(VA)、マナッサス(Manassas)、SP2/0−Ag14、ATCC番号CRL−1581、バージニア州(VA)、マナッサス(Manassas)、P3/NSI/1−Ag4−1(NS−1)、ATCC番号TIB−18、バージニア州(VA)、マナッサス(Manassas))に融合される。ハイブリドーマが選択され、制限希釈によってクローン化される。次いで、ハイブリドーマクローンは、目的とするポリペプチドに結合可能な抗体を分泌する細胞について技術上周知の方法によって分析される。一般に高レベルの抗体を含有する腹水は、陽性ハイブリドーマクローンをマウスに注射することによって生成されうる。
【0053】
したがって、本発明は、モノクローナル抗体、および本発明の抗体を分泌するハイブリドーマ細胞を培養するステップを含む方法によって生成される抗体を生成する方法を提供し、ここでハイブリドーマは、本発明の抗原で免疫された哺乳動物から単離された脾細胞またはリンパ節細胞を骨髄腫細胞と融合し、次いで目的とするポリペプチドに結合することが可能な抗体を分泌するハイブリドーマクローンのための融合から生じるハイブリドーマをスクリーニングすることによって生成される。
【0054】
ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン配列由来の抗体ライブラリーを用いるファージディスプレイ法を含む技術上周知のさまざまな方法によって製造されうる。米国特許第4,444,887号明細書および同第4,716,111号明細書、およびPCT公開国際公開第98/46645号パンフレット、国際公開第98/50433号パンフレット、国際公開第98/24893号パンフレット、国際公開第98/16654号パンフレット、国際公開第96/34096号パンフレット、国際公開第96/33735号パンフレット、および国際公開第91/10741号パンフレットも参照。さらに、抗体は、例えば、CDRグラフト法(欧州特許第239,400号明細書、PCT公開国際公開第91/09967号明細書、米国特許第5,225,539号明細書、同第5,530,101号明細書、および同5,585,089号明細書)、ベニヤリング(veneering)法または再サーフェシング(resurfacing)法(欧州特許第592,106号明細書、欧州特許第519,596号明細書、パドラン(Padlan)、Molecular Immunology 28(4/5)、p.489-498(1991年)、ストゥドニチカ(Studnicka)ら、Protein Engineering 7(6)、p.805-814(1994年)、ログスカ(Roguska)ら、PNAS 91、p.969-973(1994年))、およびチェーンシャフリング(chain shuffling)法(米国特許第5,565,332号明細書)を含む技術上周知のさまざまな技術を用いてヒト化されうる。
【0055】
ヒト抗体は、機能的内在性免疫グロブリンを発現する能力がないが、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現できる遺伝子導入マウスを用いて生成されうる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子複合体は、無作為に、または相同組換え法によってマウス胚幹細胞へ導入されうる。あるいは、ヒト可変領域および定常領域をコードする核酸を、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子に加えてマウス胚幹細胞へ導入することができる。マウス重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子は、相同組換え法によるヒト免疫グロブリン遺伝子座の導入と別々に、またはこれと同時に非機能的になる。一部の実施形態においては、JH領域のホモ接合体欠失が内在性抗体産生を阻止する。修飾胚幹細胞は拡大され、胚盤胞へ微量注入され、キメラマウスを生成する。次いで、キメラマウスは、ヒト抗体を発現するホモ接合性子孫を生成するように育てられる。遺伝子導入マウスは正常なやり方で選択抗原、例えば、目的とするポリペプチドの全部または一部で免疫される。抗原に対するモノクローナル抗体は、従来のハイブリドーマ技術を用いて免疫された遺伝子導入マウスから得られうる。遺伝子導入マウスによって育まれたヒト免疫グロブリントランス遺伝子は、B細胞分化中に再構成し、その後にクラススイッチおよび体細胞変異を受ける。したがって、かかる技術を用いることによって、治療上有用なIgG、IgA、IgM、およびIgE抗体を生成することが可能である。ヒト抗体を生成するためのこの技術の概観については、ロンベルグ(Lonberg)とフサール(Huszar)、Int.Rev.Immunol.13、p.65-93(1995年)を参照。ヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体を生成するためのこの技術、およびかかる抗体を生成するためのプロトコールの詳細な考察については、例えば、PCT公開国際公開第98/24893号パンフレット、国際公開第92/01047号パンフレット、国際公開第96/34096号パンフレット、国際公開第96/33735号パンフレット、欧州特許第0598877号明細書、米国特許第5,413,923号明細書、同5,625,126号明細書、同第5,633,425号明細書、同第5,569,825号明細書、同第5,661,016号明細書、同第5,545,806号明細書、同第5,814,318号明細書、同第5,885,793号明細書、同第5,916,771号明細書、同第5,939,598号明細書、同第6,075,181号明細書、および同第6,114,598号明細書を参照。
【0056】
選択エピトープを認識する完全ヒト抗体は、「誘導選択」と呼ばれる技術を用いて生成されうる。この方法において、選択されたヒト以外のモノクローナル抗体、例えば、マウス抗体を使用して同じエピトープを認識する完全ヒト抗体の選択を誘導する(ジェスパース(Jespers)ら、Bio/technology 12、p.899-903(1988年))。
【0057】
一本鎖Fvsおよび抗体を生成するために使用されうる技術の例としては、米国特許第4,946,778号明細書および同第5,258,498号明細書、ヒューストン(Huston)ら、Methods in Enzymology 203、p.46-88(1991年)、シュー(Shu)ら、PNAS 90、p.7995-7999(1993年)、およびスケラ(Skerra)ら、Science 240、p.1038-1040(1998年)に記載されたものが挙げられる。一本鎖抗体は、アミノ酸架橋によってFv領域の重鎖および軽鎖断片を結合することによって形成され、結果として一本鎖ポリペプチドが生じる。大腸菌(E.coli)における機能的Fv断片のアセンブリのための技術も使用されうる(スケラ(Skerra)ら、Science 242、p.1038-1041(1998年))。
【0058】
さらに、キメラ抗体を生成するための方法は技術上周知である。例えば、モリソン(Morrison)、Science 229、p.1202(1985年)、オイ(Oi)ら、BioTechniques 4、p.214(1986年)、ジリス(Gillies)ら、J.Immunol.Methods 125、p.191-202(1989年)、ノイベルガー(Neuberger)ら、Nature 312、p.604-608(1984年)、タケダ(Takeda)ら、Nature 314、p.452-454(1985年)、米国特許第5,807,715号明細書、同第4,816,567号明細書、および同第4,816,397号明細書を参照。
【0059】
本発明の抗体分子が動物によって生成され、化学的に合成され、または組換え技術によって発現されていると、免疫グロブリン分子の精製のための技術上周知の任意の方法によって、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、およびサイズカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、差別的溶解度(differential solubility)によって、またはタンパク質の精製のための他の標準技術によって精製されうる。さらに、本発明の抗体またはその断片は、本明細書に記載された、またはその他技術上周知の異種ポリペプチド配列に融合され、精製を促進しうる。
【0060】
抗体をコードする核酸分子およびそのポリペプチド
本発明はさらに、本発明の抗体をコードするヌクレオチド配列を有する単離されたポリヌクレオチド分子を提供する。一部の実施形態においては、単離されたポリヌクレオチド分子は、配列番号5、7、9、または11のヌクレオチド配列(それぞれ、TF260VH/PUC18、TF260VL/PUC18、TF196VH/PUC18、またはTF196VL/PUC18で提供、それぞれATCC寄託番号:PTA−5252、PTA−5253、PTA−5250、またはPTA−5251として2003年6月6日寄託)、または配列番号18、20、26、28、または30のヌクレオチド配列(それぞれ、TF278VHs/PUC18、TF278VLs/PUC18、TF392VHs/PUC18、TF9VHs/PUC18またはTF9VL/PUC18で提供、それぞれATCC寄託番号:PTA−5694、PTA−5695、PTA−5696、PTA−5692、またはPTA−5693として2003年12月9日寄託)、または配列番号22もしくは24のヌクレオチド配列、または配列番号6、8、10、12(それぞれ、TF260VH/PUC18、TF260VL/PUC18、TF196VH/PUC18、またはTF196VL/PUC18によってコードされ、それぞれATCC寄託番号:PTA−5252、PTA−5253、PTA−5250、またはPTA−5251として2003年6月6日寄託)、19、21、27、29、31(それぞれ、TF278VHs−PUC18、TF278VLs−PUC18、TF392VHs−PUC18、TF9VHs−PUC18、またはTF9VL−PUC18によってコードされ、それぞれATCC寄託番号:PTA−5694、PTA−5695、PTA−5696、PTA−5692、またはPTA−5693として2003年12月9日寄託)、23もしくは25(縮重変異体を含む)のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列、またはその断片もしくは変異体を含む。
【0061】
本発明はさらに、以下よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含む二次抗体のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有する一次抗体、またはその抗原結合断片をコードするヌクレオチド配列を有する単離されたポリヌクレオチドに関する。すなわち、(a)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域、(b)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域、(c)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域、(d)ハイブリドーマ細胞株TF277によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域、(e)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域、(f)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域、(g)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域、(h)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域、(i)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域、(j)ハイブリドーマ細胞株TF277によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域、(k)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域、(l)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域、(m)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域、(n)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域、(o)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域、(p)ハイブリドーマ細胞株TF277によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域、(q)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域、(r)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域、(s)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域、(t)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域、(u)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域、(v)ハイブリドーマ細胞株TF277によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域、(w)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域、(x)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域、(y)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域、(z)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域、(aa)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域、(bb)ハイブリドーマ細胞株TF277によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域、(cc)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域、(dd)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域、(ee)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域、(ff)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域、(gg)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域、(hh)ハイブリドーマ細胞株TF277によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域、(ii)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域、および(jj)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域。一部の実施形態においては、一次抗体、またはその抗原結合断片は、同じ免疫特異性を有し、または二次抗体と同じエピトープに結合する。
【0062】
本発明はさらに、以下よりなる群から選択されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一のヌクレオチド配列を有する単離されたポリヌクレオチドに関する。すなわち、(a)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域、(b)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域、(c)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域、(d)ハイブリドーマ細胞株TF277によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域、(e)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域、(f)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域、(g)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域、(h)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域、(i)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域、(j)ハイブリドーマ細胞株TF277によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域、(k)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域、(l)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域、(m)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域、(n)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域、(o)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域、(p)ハイブリドーマ細胞株TF277によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域、(q)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域、(r)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域、(s)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域、(t)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域、(u)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域、(v)ハイブリドーマ細胞株TF277によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域、(w)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域、(x)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域、(y)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域、(z)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域、(aa)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域、(bb)ハイブリドーマ細胞株TF277によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域、(cc)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域、(dd)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域、(ee)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域、(ff)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域、(gg)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域、(hh)ハイブリドーマ細胞株TF277によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域、(ii)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域、(jj)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域。一部の実施形態においては、単離されたポリヌクレオチドは、本発明の抗体のVHドメインまたはVLドメインのいずれかと同じ免疫特異性を有するCDR領域を有する抗体、もしくはその抗原結合断片をさらにコードし、またはこれと同じエピトープに結合するアミノ酸配列をコードする。
【0063】
本発明はさらに、正常血漿対照と比べ正常なTF介在血液凝固を阻害することなくhTFに結合し、かつ場合によりFc介在機序を開始しうる抗原結合抗体断片をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド分子に関する。本発明はさらに、ストリンジェントな条件下で配列番号:5、7、9、11、18、20、22、24、26、28、または30のヌクレオチド配列の相補体にハイブリダイズしうるとともに、正常血漿対照と比べ正常なTF介在血液凝固を阻害することなくhTFに結合し、かつ場合によりFc介在機序を開始しうるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有する単離されたポリヌクレオチド分子に関する。本発明はさらに、配列番号:5、7、9、11、18、20、22、24、26、28、または30のいずれかと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するとともに、正常血漿対照と比べ正常なTF介在血液凝固を阻害することなくhTFに結合し、かつ場合によりFc介在機序を開始しうるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド分子に関する。
【0064】
技術上周知のように、2つのヌクレオチド配列間の「配列同一性」は、1つのポリヌクレオチド分子のヌクレオチド配列を第2のポリヌクレオチド分子の配列と比較することによって決定される。本明細書で論じられる場合、特定のヌクレオチド配列が別のヌクレオチドと同一であるかどうかは、技術上周知の方法およびコンピュータプログラム/ソフトウェアを用いて決定されうる。例えば、BESTFITプログラム(ウィスコンシン(Wisconsin)配列分析パッケージ、ユニックス用バージョン8、ジェネティクス コンピュータ グループ(Genetics Computer Group)、ユニバーシティーリサーチパーク(University Research Park)、575サイエンス ドライブ(Science Drive)、ウィスコンシン州(WI)53711、マディソン(Madison))などであるが、これらに限定されない。BESTFITでは、スミス(Smith)とウォーターマン(Waterman)のローカルホモロジーアルゴリズム、Advances in Applied Mathematics 2、p.482-489(1981年)を使用し、2つの配列間のホモロジーの最良のセグメントを見出す。BESTFITまたは他の配列調整プログラムを用いて、特定の配列が、例えば、本発明による基準配列と95%同一であるかどうかを判定する場合、パラメータは、もちろん、同一性の割合が基準ポリペプチド配列の完全長にわたって計算され、かつ基準配列における核酸の総数の5%までのホモロジーのギャップが許されるように設定されている。
【0065】
本明細書で使用される「ストリンジェントな条件」は、第1のポリヌクレオチド分子がハイブリダイズし、65℃で0.5M NaHPO4、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、および1mM EDTA中の第2のフィルター結合ポリヌクレオチド分子に結合されたまま、42℃で0.2×SSC/0.1%SDS中で洗浄することを指す(オースベル(Ausubel)ら(編)、Current Protocols in Molecular Biology、第1巻、グリーン・パブリッシング・アソシエーツ株式会社(Green Publishing Associates,Inc.)およびジョン・ワイリー&サンズ株式会社(John Wiley&Sons,Inc.)、ニューヨーク(1989年)、p.2.10.3)。
【0066】
本発明は、本発明の単離されたポリヌクレオチドを含む組換えベクター、およびベクターを含む宿主細胞にも関する。宿主細胞は、例えば、クローニングベクターまたは発現ベクターでありうる本発明のベクターで遺伝子組換え(形質導入、形質転換、またはトランスフェクト)されている。ベクターは、例えば、プラスミド、ウイルス粒子、ファージ等の形でありうる。組換え宿主細胞は、プロモーターを活性化し、形質転換体を選択し、または本発明の遺伝子を増幅するために必要に応じて変更される従来の栄養培養液で培養されうる。培養条件、例えば、温度、pH等は、発現用に選択された宿主細胞とともに以前に使用されたものでありうるとともに、当業者には自明であろう。
【0067】
本発明はさらに、(a)本発明の単離されたポリヌクレオチドによってコードされた抗体を発現するステップと、(b)抗体を回収するステップとを含む本発明の抗体を製造する方法に関する。
【0068】
本発明のポリペプチドの断片または部分は、ペプチド合成によって対応する完全長ポリペプチドを生成するために使用されうるため、断片は完全長ポリペプチドを生成するための中間体として使用されうる。本発明のポリヌクレオチドの断片または部分を使用して本発明の完全長ポリヌクレオチドを合成することができる。
【0069】
本発明のポリヌクレオチド分子は、組換え技術によってポリペプチドを生成するために使用されうる。したがって、例えば、ポリヌクレオチド分子はポリペプチドを発現させるためのさまざまな発現ベクターのいずれか1つに包含されうる。かかるベクターとしては、染色体、非染色体、および合成DNA配列、例えば、SV40の誘導体;細菌プラスミド;ファージDNA;バキュロウイルス;酵母プラスミド;プラスミドとファージDNAの組合せ由来のベクター、ウイルスDNA、例えば、ワクシニア、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、および仮性狂犬病が挙げられる。しかし、それが複製可能であり、かつ宿主において生存可能である限り他の任意のベクターが使用されうる。
【0070】
適切なDNA配列はさまざまな手段によってベクターへ挿入されうる。一般に、DNA配列は、技術上周知の手段によってベクターにおける適切な制限エンドヌクレアーゼ部位へ挿入されている。かかる手段およびその他は当業者の範囲内であると考えられる。
【0071】
発現ベクターにおけるDNA配列は、mRNA合成を方向づける適切な発現制御配列(プロモーター)に作動的に結合されている。かかるプロモーターの代表例としては、LTRまたはSV40プロモーター、大腸菌(E.coli)lacまたはtrp、ファージラムダPLプロモーター、および原核もしくは真核細胞またはそのウイルスにおける遺伝子の発現を制御することが知られる他のプロモーターが言及されうる。発現ベクターは、翻訳開始のためのリボソーム結合部位、および転写ターミネーターをも含有すべきである。ベクターは、上記のように、発現を増幅させるための適切な配列をも含みうる。
【0072】
さらに、発現ベクターは、ジヒドロ葉酸還元酵素など形質転換宿主細胞の選択のための表現型形質もしくは真核細胞培養のためのネオマイシン耐性、または大腸菌(E.coli)におけるテトラサイクリンもしくはアンピシリン耐性を提供する1つもしくはそれ以上の選択可能なマーカー遺伝子を含有しうる。
【0073】
上記の適切なDNA配列、および適切なプロモーター、または制御配列を含有するベクターを使用して適切な宿主細胞に形質転換させ、宿主細胞がタンパク質を発現することを可能にする。多数の適切なベクターおよびプロモーターは当業者に周知であり、かつ市販されている。以下のベクターは一例として示されている。細菌:pQE70、pQE60、pQE−9(キアゲン(Qiagen))、pBS、pDl0、phagescript、psiX174、pbluescript SK、pbsks、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A(ストラタジーン(Stratagene));ptrc99a、pKK223−3、pKK233−3、pDR540、pRIT5(ファルマシア(Pharmacia))。真核:pWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pXTl、pSG(ストラタジーン(Stratagene))pSVK3、pBPV、pMSG、pSVL(ファルマシア(Pharmacia))。しかし複製可能であり、かつ宿主で安定である限り、任意の他のプラスミドまたはベクターは、使用されうる。
【0074】
プロモーター領域は、CAT(クロラムフェニコール転移酵素)ベクターまたは他のベクターを選択可能なマーカーとともに用いて所望の任意の遺伝子から選択されうる。2つの適切なベクターはPKK233−8およびPCM7である。特に指名された細菌プロモーターとしては、lacI、lacZ、T3、T7、gpt、ラムダPR、PLおよびtrpが挙げられる。真核プロモーターとしては、前初期CMV、HSVチミジンキナーゼ、初期および後期SV40、レトロウイルス由来のLTR、およびマウスメタロチオネイン−Iが挙げられる。適切なベクターおよびプロモーターの選択は当業者の十分にレベル内である。プロモーターは、糖分解酵素、例えば、特に3−ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、α−因子、酸ホスファターゼ、または熱ショックタンパク質等をコードするオペロン由来でありうる。発現される異種構造配列は、翻訳開始および終了配列、かつ、必要に応じて、翻訳タンパク質の分泌を細胞膜周辺腔または細胞外培地へ方向づけることが可能なリーダー配列と適切な段階でアセンブルされる。場合により、異種配列は、所望の特性、例えば、発現組換え生産物の安定化または簡易化精製を与えるN末端またはC末端識別ペプチドを含む融合タンパク質をコードしうる。
【0075】
別の実施形態においては、本発明は上記の構築物を含有する宿主細胞に関する。宿主細胞は、哺乳動物細胞など高等真核細胞、または酵母細胞など下等真核細胞であり、または宿主細胞は細菌細胞など原核細胞でありうる。宿主細胞への構築物の導入は、例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン介在トランスフェクション、またはエレクトロポレーションなど任意の適切な技術によって達成されうる。(デービス(Davis),L.ら、Basic Methods in Molecular Biology、(1986年))。
【0076】
適切な宿主の代表例としては、大腸菌(E.coli)、ストレプトミセス(Streptomyces)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)などの細菌細胞、酵母などの真菌細胞、ショウジョウバエ(Drosophila)およびシロイチモンジョトウ(Spodoptera)Sf9などの昆虫細胞、CHO、COS、またはボウズ(Bowes)メラノーマなど動物細胞、植物細胞等が言及されうる。適切な宿主の選択は、本明細書の開示から当業者の範囲内にあると考えられる。種々の哺乳動物細胞培養系も組換えタンパク質を発現させるために使用されうる。哺乳動物発現系の例としては、グルッツマン(Gluzman)、Cell 23、p.175(1981年)によって記載されたサル腎線維芽細胞のCOS−7株、および適合ベクターを発現させることが可能な他の細胞株、例えば、C127、3T3、CHO、HeLa、およびBHK細胞株が挙げられる。哺乳動物発現ベクターは、複製起点、適切なプロモーター、およびエンハンサーのほか、必要なリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライスドナーおよびアクセプター部位、転写終了配列、および5’フランキング非転写配列を含む。SV40スプライス由来のDNA配列、およびポリアデニル化部位を使用して必要な非転写遺伝子要素を提供することができる。
【0077】
宿主細胞における構築物を従来のやり方で使用し、組換え配列によってコードされる遺伝子産物を生成することができる。あるいは、本発明のポリペプチドは従来のペプチド合成装置によって合成的に生成されうる。
【0078】
成熟タンパク質は、適切なプロモーターの制御下に哺乳動物の細胞、酵母、細菌、または他の細胞で発現されうる。セルフリー翻訳系も使用し、本発明のDNA構築物由来のRNAを用いてかかるタンパク質を生成することができる。原核および真核宿主と使用するための適切なクローニングおよび発現ベクターは、サムブルック(Sambrook)ら、分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)、第2版、コールド・スプリング・ハーバー(Cold Spring Harbor)、ニューヨーク(N.Y.)、(1989年)によって記載されている。
【0079】
高等真核細胞によって本発明のポリペプチドをコードするDNAの転写は、エンハンサー配列をベクターへ挿入することによって増大されうる。エンハンサーはDNAのcis作用要素であり、通常、約10〜300bpであり、プロモーター上で作用し、その転写または発現の増幅を増大させる。例としては、複製起点bp100〜270の後側でのSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後側でのポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。
【0080】
適切な宿主形質の変換、および宿主形質の適切な細胞密度への増殖の後、選択プロモーターは適切な手段(例えば、温度変化、化学的誘導)によって誘導されうるとともに、細胞は追加の期間、培養される。
【0081】
所望のタンパク質が細胞内に保持されている場合、細胞は通常、遠心分離によって収穫され、物理的または化学的手段によって破壊され、結果として生じる粗抽出物がさらなる精製のため保持される。タンパク質の発現において使用される微生物細胞は、凍結融解循環、超音波処理、機械的破壊、または細胞溶解剤の使用、またはその組合せを含めた便利な方法によって破壊される。かかる方法は当業者に周知である。
【0082】
本発明のポリペプチドは、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、およびレクチンクロマトグラフィーを含む方法によって組換え細胞培養から回収され、精製されうる。タンパク質再折畳みステップが、必要に応じて、成熟タンパク質の立体配置の仕上げに使用されうる。最後に、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を最終精製ステップに使用されうる。
【0083】
本発明のポリペプチドは天然精製産物、または化学合成手段の産物でありうるが、原核または真核宿主から組換え技術によって(例えば、細菌、酵母、高等植物、昆虫、および哺乳動物の培養細胞によって)生成されうる。組換え生成法において使用される宿主に応じて、本発明のポリペプチドは糖化され、または非糖化されうる。本発明のポリペプチドは初期メチオニンアミノ酸残基をも含みうる。
【0084】
抗体複合体
本発明の抗体を使用して、インビトロおよびインビボ両方の診断および治療方法において、hTFを精製、検出、および/または標的にすることができる。例えば、抗体は、生物試料におけるhTFのレベルを質的および量的に測定するための免疫アッセイにおいて有用でありうる。例えば、ハーロー(Harlow)ら、抗体:実験室マニュアル(Antibodies:A Laboratory Manual)収載、(コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、第2版(1988年))を参照。
【0085】
本発明の抗体は、任意の型の分子の抗体への共有結合によって修飾または結合される抗体の誘導体を含む。例えば、ただし限定する目的ではなく、抗体誘導体は、例えば、糖化、アセチル化、PEG化、リン酸化、アミド化、周知の保護/遮断基による誘導体化、タンパク質分解的切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質への結合等によって修飾されている抗体を含む。多くの化学的修飾のいずれかは、特異的化学切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成等を含むが、これらに限定されない周知の技術によって実施されうる。さらに、誘導体は1つもしくはそれ以上の非典型的アミノ酸を含有しうる。
【0086】
本発明の抗体は、抗体によって結合されたエピトープを同定するエピトープマッピングに使用されうる。このようにして同定されたエピトープは、同様に、ワクチン候補として、すなわち、個体に免疫し、自然発生形態のhTFに対する抗体を誘発させるために使用されうる。
【0087】
本発明の抗体は、単独で、または他の組成物と組合わせて使用されうる。抗体は、組換え技術によって、NまたはC末端で異種ポリペプチドに融合され、もしくはポリペプチドまたは他の組成物に(共有および非共有結合を含めて)化学的に結合されうる。例えば、本発明の抗体は、検出アッセイにおける標識として、または異種ポリペプチド、薬物、放射性核種、または毒素などエフェクター分子として有用な分子に組換え技術によって融合され、または結合されうる。例えば、PCT公開国際公開第92/08495号パンフレット、国際公開第91/14438号パンフレット、国際公開第89/12624号パンフレット、米国特許第5,314,995号明細書、および欧州特許第0396387号明細書を参照。
【0088】
一部の実施形態においては、本発明の抗体は細胞毒性剤に結合している。「細胞毒性剤」は、細胞に対して毒性あるいはほかの有害な薬剤である。例としては、放射性核種、パクリタキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシンおよびそれらの類似体またはその同族体が挙げられるが、これらに限定されない。細胞毒性剤として有用な放射性核種の例としては、131I、177Lu、90Y、および186Reが挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
本発明は、検出可能剤に結合した本発明の抗体をも包含し、ここで検出可能剤は診断または治療目的に使用されうる。抗体は、例えば、臨床試験法の一環として腫瘍の発生または進行を発見しまたは監視し、例えば、所定の治療計画の有効性を判定するために診断的に使用されうる。検出可能剤の例としては、種々の酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射性物質、種々の陽電子放出断層撮影に用いる陽電子放出金属、および非放射性常磁性金属イオンが挙げられる。検出可能物質は、技術上周知の方法を用いて、抗体に直接的、または中間体(例えば、技術上周知のリンカー)を通じて間接的に連結または結合されうる。例えば、本発明による診断薬として使用するための抗体に結合されうる金属イオンについては、米国特許第4,741,900号明細書を参照。適切な酵素の例としては、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、およびアセチルコリンエステラーゼが挙げられ、適切な補欠分子族複合体の例としては、ストレプトアビジン/ビオチン、およびアビジン/ビオチンが挙げられ、適切な蛍光物質の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、イソチオシアン酸フルオレセイン、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル、およびフィコエリトリンが挙げられ、発光物質の例としては、ルミノールが挙げられ、生物発光物質の例としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンが挙げられ、かつ適切な放射性物質の例としては、ヨウ素(121I、123I、125I、131I)、炭素(14C)、イオウ(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(111In、112In、113mIn、115mIn)、テクネチウム(99Tc、99mTc)、タリウム(201Ti)、ガリウム(68Ga、67Ga)、パラジウム(103Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(133Xe)、フッ素(18F)、153Sm、177Lu、159Gd、149Pm、140La、175Yb、166Ho、90Y、47Sc、186Re、188Re、142Pr、105Rh、および97Ruが挙げられる。
【0090】
他の実施形態においては、本発明の抗体は治療薬に結合されうる。治療薬としては、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルダカルバジン)、アルキル化薬(例えば、メクロレタミン、チオエパ(thioepa)クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、およびロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびシス−ジクロロジアミンプラチナ(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(旧ダウノマイシン)、およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(旧アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン(AMC))、抗分裂剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)、および放射性核種が挙げられるが、これらに限定されない。治療薬として有用な放射性核種の例としては、131I、177Lu、90Y、および186Reが挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
かかる治療部分を抗体に結合させる技術は公知であり、例えば、アルノン(Arnon)ら、「癌治療における薬物の免疫標的のためのモノクローナル抗体(Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy)」、Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy収載、ライスフィールド(Reisfield)ら編、アランR.リス株式会社(Alan R.Liss,Inc.)(1985年)、p.243-256、ヘルストローム(Hellstrom)ら、「薬物送達のための抗体(Antibodies For Drug Delivery)」、Controlled Drug Delivery、第2版収載、ロビンソン(Robinson)ら編、マーセル デッカー株式会社(Marcel Dekker,Inc)(1987年)、p.623-653、トルプ(Thorpe)、「癌治療における細胞毒性薬の抗体担体:概説(Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review)、Monoclonal Antibodies '84:Biological And Clinical Applications収載、ピンチェラ(Pinchera)ら編、(1985年)、p.475-506、「癌治療における放射性標識抗体の治療用途の分析、結果、および今後の予測(Analysis,Results,And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy)」、Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy収載、ボールドウィン(Baldwin)ら編、アカデミックプレス(Academic Press)(1985年)、p.303-316、およびトルプ(Thorpe)ら、「抗体−毒素複合体の調製および細胞毒性(The Preparation And Cytotoxic Properties of Antibody-Toxin Conjugates)」、Immunol.Rev.62、p.119-158(1982年)を参照。
【0092】
本発明は、融合タンパク質を生成するために、目的とするポリペプチドに組換え技術で融合または化学的に結合(共有および非共有結合を含む)された本発明の抗体を包含する。融合は必ずしも直接である必要はないが、リンカー配列を通じて起こりうる。本発明の抗体は、異種タンパク質(例えば、免疫グロブリンFcポリペプチドまたはヒト血清アルブミンポリペプチド)のNまたはC末端のいずれかに融合されうる。例えば、抗体は、アルブミン、例えば、組換えヒト血清アルブミンに融合され(例えば、米国特許第5,876,969号明細書、欧州特許第0413622号明細書、および米国特許第5,766,883号明細書を参照)、結果としてキメラポリペプチドが生じうる。他の実施形態においては、抗体は、ヒト血清アルブミンの成熟形態(すなわち、欧州特許第0322094号明細書の図1および2に示されているヒト血清アルブミンのアミノ酸1−585)に融合されうる。他の実施形態においては、抗体は、ヒト血清アルブミンのアミノ酸残基1−zを含む、あるいはこれから成るポリペプチド断片と融合されうるが、ここでzは、米国特許第5,766,883号明細書に記載されているように369〜419の整数である。ポリペプチドまたは目的とする他の分子に融合または結合した抗体は、インビトロ免疫アッセイおよび技術上周知の方法を用いる精製方法でも使用されうる。例えば、ハーバー(Harbor)ら、上記、およびPCT公開国際公開第93/21232号明細書、欧州特許第439,095号明細書、ナラムラ(Naramura)ら、Immunol.Lett.39、p.91-99(1994年)、米国特許第5,474,981号明細書、ジリーズ(Gillies)ら、PNAS89、p.1428-1432(1992年)、およびフェル(Fell)ら、J.Immunol.146、p.2446-2452(1991年)を参照。
【0093】
抗体は、ペプチドなどマーカー配列に融合され、精製を促進しうる。一部の実施形態においては、マーカーアミノ酸配列は、特に、pQEベクター(キアゲン株式会社(QIAGEN,Inc.)、91311カリフォルニア州(CA)、チャッツワース(Chatsworth)、9259イートンアベニュー(Eton Avenue))で提供されるタグなどヘキサ−ヒスチジンペプチドであり、その多くは市販されている。ゲンツ(Gentz)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA86、p.821-824(1989年)に記載されているように、例えば、ヘキサ−ヒスチジンは融合タンパク質の便利な精製を提供する。精製に有用な他のペプチドタグとしては、インフルエンザ血球凝集素タンパク質由来のエピトープに対応する「HA」タグ(ウィルソン(Wilson)ら、Cell 37、p.767(1984年))、および「フラッグ」タグ(カリフォルニア州(CA)、ストラタジーン(Stratagene))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
本発明の抗体複合体は所定の生物反応を修飾するために使用されうるが、治療薬または薬物部分は典型的な化学治療薬に限定されているとは考えられていない。例えば、薬物部分は所望の生物活性を有するタンパク質またはポリペプチドでありうる。かかるタンパク質としては、例えば、アブリン、リシンA、緑膿菌外毒素、またはジフテリア毒素などの毒素、タンパク質、例えば、腫瘍壊死因子、α−インターフェロン、β−インターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子、組織プラスミノーゲン活性化因子、アポトーシス剤、例えば、TNF−アルファ、TNF−ベータ、AIMI(国際公開WO97/33899号明細書を参照)、AIMII(国際公開WO97/34911号明細書を参照)、Fasリガンド(タカハシ(Takahashi)ら、Int.Immunol.6、p.1567-1574(1994年))、VEGI(国際公開WO99/23105号明細書を参照)、血栓剤または血管新生阻害剤、例えば、アンジオスタチンまたはエンドスタチン、または生物反応修飾因子、例えば、リンフォカイン、インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM−CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G−CSF」)、または他の成長因子が挙げられうる。
【0095】
本発明の抗体は、標的抗原の免疫アッセイまたは精製に有用である固形担体にも付着されうる。かかる固形担体としては、ガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、およびポリプロピレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
あるいは、本発明の抗体は二次抗体に結合され、例えば、米国特許第4,676,980号明細書に記載されている抗体異種複合体を形成しうる。
【0097】
抗体結合のアッセイ
本発明の抗体は、技術上周知の適切な方法によって免疫特異的結合について分析されうる。使用されうる免疫アッセイとして、いくつか挙げると、BIAcore分析、FACS(蛍光活性化セルソーター)分析、免疫蛍光、免疫細胞化学、ウェスタンブロット、放射免疫アッセイ、ELISA(酵素免疫測定法)、「サンドイッチ」免疫アッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降反応、ゲル分散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体固定アッセイ、免疫放射定量アッセイ、蛍光免疫アッセイ、プロテインA免疫アッセイなどの競合および非競合アッセイ系に用いる技術があるが、これらに限定されない。かかるアッセイは、ルーチンかつ技術上公知である(例えば、オースベル(Ausubel)ら編、Current Protocols in Molecular Biology、第1巻、ジョン・ワイリー&サンズ株式会社(John Wiley&Sons,Inc.)、ニューヨーク(1994年)を参照)。例となる免疫アッセイが以下に簡単に記載されている(ただし、限定を目的とするよう意図されていない)。
【0098】
免疫沈降プロトコールは一般に、タンパク質ホスファターゼおよび/またはプロテアーゼ阻害剤(例えば、EDTA、PMSF、アプロチニン、バナジウム酸ナトリウム)が添加されたRIPA緩衝液(1%NP−40またはトリトン(Triton)X−100、1%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDS、0.15 M NaCl、0.01Mリン酸ナトリウム、pH7.2で1%トラジロール(Trasylol))など溶解緩衝液中で細胞の集団を溶解し、目的とする抗体を細胞溶解物に添加し、4℃で一定時間(例えば、1−4時間)インキュベートし、プロテインAおよび/またはプロテインGセファロースビーズを細胞溶解物に添加し、約1時間もしくはそれ以上、4℃でインキュベートし、ビーズを溶解緩衝液中で洗浄し、かつSDS/サンプル緩衝液中にビーズを再懸濁するステップを含む。目的とする抗体の特定の抗原を免疫沈降する能力は、例えば、ウェスタンブロット分析によって評価されうる。当業者は、抗体の抗原への結合を増大させ、バックグラウンドを減少させるよう修飾されうるパラメータに関して理解可能であろう(例えば、セファロースビーズによる細胞溶解物のプレクリアリング(pre-clearing))。さらに、免疫沈澱プロトコールに関する説明については、オースベル(Ausubel)ら編、Current Protocols in Molecular Biology、第1巻、ジョン・ワイリー&サンズ株式会社(John Wiley&Sons,Inc.)、ニューヨーク(1994年)、10.16.1を参照。
【0099】
ウェスタンブロット分析は一般に、タンパク質試料の調製と、ポリアクリルアミドゲル(例えば、抗原の分子量に応じて8%−20%SDS−PAGE)中のタンパク質試料の電気泳動するステップと、タンパク質試料をポリアクリルアミドゲルからニトロセルロース、PVDF、またはナイロンなど膜へ移動させるステップと、膜をブロッキング溶液(例えば、3%BSAまたは脱脂乳を含むPBS)中でブロッキングするステップと、洗浄緩衝液(例えば、PBS−Tween 20)中で膜を洗浄するステップと、培養緩衝液で希釈した一次抗体(目的とする抗体)で膜をインキュベートするステップと、洗浄緩衝液で膜を洗浄するステップと、酵素物質(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)に結合した(一次抗体、例えば、抗ヒト抗体を認識する)二次抗体または培養緩衝液で希釈した放射性分子(例えば、32Pまたは125I)で膜をインキュベートするステップと、洗浄緩衝液で膜を洗浄するステップと、抗原の存在を検出するステップとを含む。当業者は、検出されるシグナルを増大させ、バックグラウンドノイズを削減させるよう修飾されうるパラメータに関して理解可能であろう。さらに、ウェスタンブロットプロトコールに関する説明については、オースベル(Ausubel)ら編、Current Protocols in Molecular Biology、第1巻、ジョン・ワイリー&サンズ株式会社(John Wiley&Sons,Inc.)、ニューヨーク(1994年)、10.8.1を参照。
【0100】
ELISAは、抗原を調製し、96穴マイクロタイタープレートのウェルを抗原でコーティングし、酵素物質(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)など検出可能な化合物に結合した目的とする抗体をウェルに添加し、一定時間インキュベートし、抗原の存在を検出するステップを含む。ELISAにおいては、目的とする抗体は検出可能な化合物に結合される必要はなく、その代わりに、検出可能な化合物に結合した(目的とする抗体を認識する)二次抗体をウェルに添加することができる。さらに、ウェルを抗原でコーティングする代わりに、抗体はウェルにコーティングされうる。この場合、検出可能な化合物に結合した二次抗体は、目的とする抗原のコーティングされたウェルへの添加後に添加されうる。当業者は、検出されるシグナルを増大させるよう修飾されうるパラメータ、および技術上周知のELISAの他の変異形に関して理解可能であろう。さらに、ELISAに関する説明については、オースベル(Ausubel)ら編、Current Protocols in Molecular Biology、第1巻、ジョン・ワイリー&サンズ株式会社(John Wiley&Sons,Inc.)、ニューヨーク(1994年)、11.2.1を参照。
【0101】
抗原への抗体の結合親和性および抗体抗原相互作用のオフレートは、競合結合アッセイによって測定されうる。競合結合アッセイの一例は、増大する量の非標識抗原の存在下に目的とする抗体と標識抗原(例えば、3Hまたは125I)、もしくはその断片、または変異形とのインキュベーション、および標識抗原に結合された抗体の検出を含む放射免疫アッセイである。hTFを目的とする抗体の親和性および結合オフレートは、スキャッチャードプロット分析によるデータから測定されうる。二次抗体との競合も放射免疫アッセイを用いて測定されうる。この場合、hTFは、増大する量の非標識二次抗体の存在下に標識化合物(例えば、3Hまたは125Iで標識された化合物)に結合した目的とする抗体でインキュベートされる。2つの抗体間のこの種類の競合アッセイは、2つの抗体が同一の、または異なるエピトープに結合するかどうかを判定するためにも使用されうる。
【0102】
血液凝固
血液凝固は、3つの相互作用成分、すなわち、血管、血液凝固因子、および血小板を含む複雑な過程である。血液凝固因子は、不活性前駆体として血液中に存在するタンパク質または糖タンパク質である。出血が起こると、凝固カスケードが開始され、不活性凝固因子は活性プロテアーゼまたは酵素に変換される。
【0103】
凝固因子は、共同因子(カルシウム、TF、およびリン脂質など)の助けを借りて凝固カスケードにおいて順に活性化され、結果としてフィブリン塊の最終的形成が生じる。フィブリンは、血液中で不溶性であり、血小板接着および血液凝固の基礎を提供する粘着性の糸状タンパク質である。
【0104】
出血が血管系の損傷外側(皮膚の擦り傷または切り傷)から生じる場合は、外因経路が開始される。損傷が血管内部で生じる場合は、内因経路が活性化される。多くの出血エピソードは両方の経路を活性化する。
【0105】
外因凝固経路は、TFが一部の物理的損傷後の血液にさらされると血管外細胞表面上で誘発される。TFは、第VII因子の活性化および不活性化形態の両方に結合しうるタンパク質である。外因経路においては、少量の循環活性化第VII因子(第VIIa因子)が、その放出後にTFと複合体を形成する。このTF/第VIIa因子複合体は、第IX因子および第X因子を活性化形態に変換することによって凝固を開始する。
【0106】
この反応は、第VIIa因子、第IXa因子、および第Xa因子がTFに結合した追加の第VII因子を活性化するフィードバック機序によって増幅される。第Xa因子は、共同因子、第Va因子、およびリン脂質と複合して、カスケードにおいてプロトロンビン(第II因子としても知られる)をトロンビン(第IIa因子としても知られる)へ活性化し続ける。トロンビンを含む別のフィードバック機序は、第V、第VIII、および第XI因子を活性化するように作用する。第VIIIa因子は血小板表面上で第IXa因子と複合体を形成し、第X因子を活性化し、結果としてより局所のトロンビンの生成をもたらす。トロンビンは、フィブリンの最終的な生成に関与する。
【0107】
内因経路においては、循環活性化第XII因子が、高分子量のキニノゲンおよびプレカリクレインと複合して、曝露された内皮下膜と接触し、凝固を開始し、かつ第XI因子を活性化させる。第XIa因子はカルシウムと複合体を形成し、第IX因子を活性化する。第IXa因子は、第VIIIa因子、カルシウム、およびリン脂質と結合し、結果として第X因子の第Xa因子への活性化、およびその後のトロンビン生成をもたらす。第X因子の活性化後、外因経路と内因経路は結合する。
【0108】
凝血塊形成の最終ステップは、ペプチド結合の切断の結果として血漿可溶性フィブリノゲンの不可溶性フィブリンへの変換である。切断は、プロトロンビンから生成されるタンパク質分解酵素トロンビンの結果として生じる。プロトロンビンのトロンビンへの変換は、カルシウムに加えて、凝固因子と呼ばれる多くのタンパク質を必要とする。フィブリン塊は、血液の形成された要素を取込み、それによって出血部位を封鎖する架橋マトリクスである。形成された要素は、血小板、白血球、および赤血球細胞から成る。
【0109】
TFは、第VIIa因子とともに、インビボで血液凝固を開始させる細胞固定成分である。TFは、219残基の細胞外領域、23残基の膜貫通領域、および21残基の細胞質領域を有する膜貫通糖タンパク質である。TFの細胞外領域は2つのフィブロネクチンIII様ドメイン、およびクラスIIサイトカインとインターフェロン受容体の特徴を示すジスルフィド架橋の分布を有する。TFの細胞質領域は短いが、リン酸化されうる少なくとも1つのセリン残基を含有する。TFは、トロンボプラスチン、第III因子、およびCD142としても知られる。
【0110】
TFは、その天然のリガンド、すなわち、第VIIa因子と堅い複合体(Kd〜pmol)を形成する。複合体において、VIIaはTFを包み込み(バナー(Banner),D.W.ら、Nature 380、p.41-46(1996年))、TF表面との広範囲の接触領域を形成する。TFは、第VIIa因子(fVIIa)に結合し、アロステリックに活性化し、TF/fVIIa複合体は第IXおよびX因子の活性化によってトロンビン生成に関与し、生理的条件下に血液凝固の主要な開始剤である。TF−VIIa相互作用部位に結合する抗体はTF−VIIa相互作用を阻害し、したがって、血液凝固を阻害または遮断しうる。本発明の抗体は、TF、例えば、hTFに結合するが、正常血漿対照と比べTF介在血液凝固を阻害することがない。
【0111】
本明細書で使用される「正常血漿対照」という用語は、例えば、ジョージ・キング・バイオメディカル株式会社(George King BioMedical,Inc.)、カンザス州(Kansas)(プール正常血漿(POOLED NORMAL PLASMA))によって提供される血漿など、正常なヒトドナーからプールされた血漿を意味する。
【0112】
一部の実施形態においては、TF介在血液凝固に対する本発明の抗体の効果は血液凝固アッセイを用いて判定されうる。例えば、技術上周知の血液凝固アッセイ、例えば、モリセイ(Morrissey),J.H.ら、Thrombosis Research 52、p.247-261(1988年)、およびファング(Fang),C.H.ら、Thrombosis and Haemostasis 76、p.361-368(1996年)に記載されているものなどを使用し、血液凝固に対する抗TF抗体の効果を判定することができる。他の血液凝固アッセイとしては、一段階プロトロンビン時間アッセイ(ミアール(Miale)J.B.、Laboratory Medicine,Hematology,CNモスビー(Mosbey)社、セントルイス(St.Louis)(1977年)が挙げられるが、これに限定されず、二段階凝固アッセイ(バーク(Bach)ら、Biochemistry 15、p.4007-20(1986年))も使用されうる。
【0113】
本発明の抗体は「正常血漿対照と比べTF介在血液凝固を阻害することがなく」、ここで、以下の実施例の部に記載されているように行われるhTF凝固アッセイにおいて、抗体で処理した血液サンプルの凝固時間は、正常血漿対照の凝固時間の約150%以下、約140%以下、約130%以下、約120%以下、約110%以下、または約100%以下である。
【0114】
Fc介在機序
一部の実施形態においては、正常血漿対照と比べTF介在血液凝固を阻害することなくhTFに結合能がある本発明の抗体は、1つもしくはそれ以上のFc介在機序を開始しうる。
【0115】
抗体が、パパインまたはペプシンなどのタンパク質分解酵素に曝露されると、いくつかの主要な断片が生成される。抗原結合能を保持する断片は、抗体のY構造の2つの「腕」から成り、ジスルフィド結合によって結合された2つのFab腕を表すF(ab)(断片抗原結合)またはF(аb’)2と呼ばれる。生成される他の主要な断片は、単一の「尾」またはYの中心軸を構成し、溶液から結晶化するその傾向に対してFc(断片結晶)と呼ばれる。IgG、IgA、IgM、またはIgDのFc断片は、各抗体の2つのカルボキシル末端ドメインの二量体から成る(すなわち、IgG、IgA、およびIgDにおけるにおけるCH2およびCH3、およびIgMにおけるCH3およびCH4)。それに反して、IgE Fc断片は、その3つのカルボキシル末端重鎖ドメイン(C2、C3、およびC4)の二量体から成る。
【0116】
Fc断片は抗体の生物「活性部位」を含有するが、これは抗体が他の免疫系分子または細胞と「コミュニケートする」ことを可能にし、したがって、免疫系の防御機能または宿主介在機序を活性化し、かつ調節する。かかるコミュニケーションは、抗体Fc領域内の活性部位がFc受容体と呼ばれる分子に結合する場合に生じる。Fc受容体は、免疫グロブリンFc領域内の活性部位に高い親和性と特異性で結合する分子である。Fc受容体は細胞の外側血漿膜内の膜内在性タンパク質として存在し、または血漿もしくは他の体液中に自由に循環する自由な「可溶性」分子として存在しうる。
【0117】
5つの抗体クラスの各々について、そのクラスのFc領域に特異的に結合し、明確な機能を実行するいくつかの型のFc受容体がある。したがって、IgE Fc受容体は高い親和性でIgE Fc領域または単離されたIgE Fc断片のみに結合する。Fc領域内の異なる位置を認識し、これに結合する異なる型のクラス特異的Fc受容体が存在することが知られている。例えば、一部のIgG Fc受容体はIgGの第2の定常ドメイン(CH2)にのみ結合するが、他の免疫機能を介在するFc受容体は、IgGの第3の定常のドメイン(CH3)のみに結合する。他のIgG Fc受容体は、CH2およびCH3ドメインの両方に位置した活性部位に結合し、単一の単離されたドメインに結合することはできない。
【0118】
抗体の機能の多くは、そのFc受容体との相互作用により介在される。これらの受容体は、マクロファージ、他の白血球、血小板、および胎盤栄養膜細胞を含むさまざまな細胞で見られる。
【0119】
抗体が抗原に結合し、あるいは凝集された後、Fc領域内の活性部位はFc受容体に結合し、これを活性化することができ、抗体と免疫系の残りの部分との重要な結合を提供する。したがって、Fc受容体へのFc結合は、それによって抗体機能が介在される「最終共通路」として特徴づけられうる。抗原結合抗体がFc受容体に結合しない場合は、抗体は免疫系の他の部分を活性化することができず、したがって機能的に不活性にされる。
【0120】
免疫グロブリンのFc領域は、Fc受容体に結合し、複合体は細胞型に応じてさまざまな反応を誘発しうる。マクロファージの場合、反応はファゴサイトーシスおよび抗体依存細胞介在細胞毒性(ADCC)を含みうる。抗体Fc領域活性部位の結合によって活性化されると、Fc受容体はさまざまな重要な免疫殺傷および調節機能を介在する。例えば、一部のIgG Fc受容体は、抗体がそのFab腕によって結合した細胞の直接的殺傷を介在する(抗体依存細胞介在細胞毒性(ADCC))。他のIgG Fc受容体は、IgGによって占有されると、一部の白血球を刺激し、細菌、ウイルス、癌細胞、または他の存在物をファゴサイトーシスとして知られる過程によって、これらを飲み込み、破壊する。Bリンパ球として知られる一部の型の白血球のFc受容体は、その抗体分泌血漿細胞への成長および発達を調節する。
【0121】
抗体またはその活性ペプチド断片のFc部分が結合する特定の型のFc受容体に応じて、ペプチドは免疫機能を開始または阻害しうる。開始は、Fc受容体がFc領域の結合の作用によって活性化される型である場合、あるいは、Fc活性部位ペプチドが受容体を刺激する場合に生じうる。生成される開始の型は、抗体Fc領域−Fc受容体結合によって直接的または間接的に介在される機能を含みうるが、これに限定されない。
【0122】
免疫系機能を開始させる能力は、上記のものを含めて、細菌、ウイルスまたは真菌などによる感染症、免疫系が先天的または後天的条件のいずれかにより不完全である状態、癌、およびヒトまたは動物の他の多くの病気など疾患の治療において治療上有用であることが知られている。かかる免疫刺激は、ワクチンとして投与される一部の注射または経口投与物質に対する体の保護細胞および抗体反応を促進するのにも有用である。このリストは包括的であることが目的ではなく、免疫刺激が治療有用性を有することが認識された疾患または状態の代表例を単に示しているにすぎない。
【0123】
本明細書で使用される「Fc介在機序」は、Fc受容体活性化により介在される外来抗原に対する免疫応答の開始を指す。Fc介在機序としては、抗体依存細胞介在細胞毒性(ADCC)および補体依存細胞毒性(CDC)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0124】
一部の実施形態においては、本発明の抗体がFc介在機序を開始させる場合、その機序は抗体依存細胞介在細胞毒性(ADCC)である。さらに他の実施形態においては、本発明の抗体は補体依存細胞毒性(CDC)を開始しうる。
【0125】
抗体依存細胞介在細胞毒性、または抗体依存細胞性細胞毒性(ADCC)は、それによってナチュラルキラー細胞、Tリンパ球、単球/マクロファージ、および多形核好中球(エフェクター細胞)が外来または感染細胞を破壊するよう誘発される過程である。IgG抗体は最初に、ADCCを介在する細胞による認識のための細胞を感作する標的細胞上の抗原に結合しなければならない。IgG感作標的に曝露されると同時に、ADCCを介在する細胞上のIgG Fc受容体は、標的細胞の表面上の曝露Fc領域に結合する。かかるFc受容体結合は、ADCCを介在する細胞を活性化し、標的細胞を直接溶解し、その死をもたらす。ADCCとしては、白血球の一部のクラス(多形核好中球、単球、およびマクロファージ)によるファゴサイトーシスの刺激、マクロファージ活性化、ナチュラルキラー(NK)細胞活性、BおよびTリンパ球の成長および発達、およびリンフォカイン(殺傷または免疫調節活性を有する分子)のリンパ球による分泌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0126】
補体依存細胞毒性(CDC)(または補体介在細胞毒性、または補体介在細胞溶解)は、それによって外来または感染物質が破壊されうる別の過程である。抗体抗原複合体を形成する外来抗原による抗体相互作用は、結果として抗体のFc領域における構造変化が生じうる。この構造変化は補体因子C1を活性化させ、それによって、補体開始因子C1、C2、C3、およびC4を含む補体活性化カスケードを開始しうる。補体活性化カスケードは、細胞膜傷害複合体(MAC)を形成するC5、C6、C7、C8、およびC9の連続的相互作用で終了する。MACは細胞のリン脂質膜を破壊することによって細胞溶解を介在し、細胞膜における大きな孔を形成する。例えば、レフ(Reff),M.E.ら、Blood 83、p.435-445(1994年)を参照。このようにして、MAC複合体は、本発明の抗体によって認識される抗原を含有する外来または感染物質の細胞死を刺激することができる。さらに、C3およびC4は、炎症のペプチド介在因子として作用しうるが、これは結果として局所性血管拡張、および好中球、マクロファージ、および他の食細胞の移動をもたらす過程である。これらの食細胞はFc受容体を有し、それによって局所性抗体依存細胞性細胞毒性を増大させうる。
【0127】
一部の実施形態においては、本発明の抗体は、中程度から高いADCCおよび/または中程度から高いCDC活性を含むが、これらに限定されない中程度から高いFc介在活性を含む。本発明の抗体は、抗体濃度が10μg/mlであり、標的細胞に対するエフェクター細胞の比が30であり、標的細胞の少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%が溶解される場合に「中程度から高い」ADCC活性を有する。本発明の抗体は、抗体濃度が10μg/mlであり、非希釈ヒト血清またはウサギ血清の存在下、標的細胞の少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%が溶解される場合に「中程度から高い」CDC活性を有する。
【0128】
技術上周知のアッセイのいずれかを使用して本発明の抗体のFc介在機序をモニタリングすることができる。本発明の抗体の1つもしくはそれ以上のFc介在機序を開始させる能力をインビトロまたはインビボでモニタリングすることができる。例えば、抗体のCDC活性およびADCC活性は、オオタ(Ohta)ら、Cancer Immunol.Immunother.36、p.260(1993年)の方法によって測定されうる。他のアッセイとしては、抗体依存細胞介在細胞毒性の51Cr放出アッセイが挙げられるがこれに限定されず、補体介在溶解も使用されうる。Current Protocols in Immunology、コリガン(Coligan),A.M.ら(編)、ワイリー&サンズ株式会社(Wiley&Sons,Inc.)(1991年)、例えば、7.27部、ワング(Wang),B.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96、p.1627-1632(1999年)、マンチェス(Manches),O.ら、Blood 101、p.949-954(2003年)を参照。
【0129】
さらに、Fc介在宿主反応は、反応の抗腫瘍活性がCDCおよび/またはADCCアッセイによって測定されうる従来の免疫アッセイによってインビトロでモニタリングされうる。アッセイ方法は周知であり、実験免疫学便覧(Handbook of Experimental Immunology)、第2巻、ブラックウェル・サイエンティフィック・パブリケーションズ(Blackwell Scientific Publications)、オックスフォード(Oxford)(1986年)に記載されている。さらに、培養癌細胞株に対するヒト化キメラ抗体のCDC活性およびADCC活性は、免疫学実験入門(Manual of Immunological Experiments)、マツハシ(Matsuhashi)ら、学会出版センター(Gakkai Shuppan Center)、日本、1981年)に開示された手順に従って測定されうる。
【0130】
Fc介在機序は、遅延型過過敏反応の進展によって、または皮膚試験反応プロトコール、標準の放射活性放出アッセイを使用することによって、制限希釈アッセイによって、または標準のELISAアッセイを用いるIL−2の血漿レベルを測定することによって、腫瘍細胞に対する対象のリンパ球の毒性を測定するリンパ球刺激アッセイを含むが、これに限定されない当業者に周知の他のインビボまたはインビトロ手段によってインビボでモニタリングされうる。
【0131】
治療用途
本発明は、患者における癌を治療する方法にも関し、この方法は、本発明の抗体の治療上有効量をかかる治療を必要とする患者に投与するステップを含む。一部の実施形態においては、この抗体に基づく治療は、本発明の抗体を動物、より詳しくは哺乳動物、より詳しくはヒト患者に、癌の治療のために投与するステップを含む。
【0132】
「治療上有効量」は、状態、障害、または疾患を治療するために対象または患者に投与される場合、過剰なレベルの副作用なしに臨床的に十分である細胞反応を引き起こすに十分である化合物の量である。さらに詳細については、以下の「製剤および治療投与」の部を参照。
【0133】
「対象」は、ヒト、家畜(domestic and farm animals)を含む哺乳動物として分類されている動物、動物園の動物、競技用動物、コンパニオンアニマル、例えば家庭のペットのほか、例えば、ウシ、ヒツジ、フェレット、ブタ、ウマ、家禽、ウサギ、ヤギ、イヌ、ネコなどを含むが、これらに限定されない他の飼いならされた動物を指す。一部の実施形態においては、コンパニオンアニマルはイヌおよびネコである。他の実施形態においては、対象はヒトである。
【0134】
「患者」は、対象、例えば、状態、障害、または疾患、例えば、癌の治療を必要とするヒトを指す。
【0135】
「治療する」および「治療」という用語は、治療的処置および予防的(prophylactic)または予防的(preventative)措置の両方を指し、ここで目的は、望ましくない生理的状態、障害、または疾患を予防し、阻止し、または抑制し(減少させ)、もしくは有利な、または所望の臨床結果を得ることである。本発明の目的のために、有利な、または所望の臨床結果としては、症状の軽減、状態、障害、または疾患の程度の縮小、状態、障害、または疾患の状態の安定化(すなわち悪化させないこと)、状態、障害、または疾患の進行の遅延、または減速、状態、障害、または疾患状態の改善、緩和(一部または全部に関係なく)、または状態、障害、または疾患の増強または改善が挙げられるが、これらに限定されない。治療としては、過剰なレベルの副作用なしに、臨床的に顕著である細胞反応を引き起こすことも挙げられるが、これに限定されない。治療としては、治療を受けていない場合に予想される生存に比べ生存の延長も挙げられるが、これに限定されない。
【0136】
本発明の治療化合物としては、本発明の抗体および本発明の抗体をコードする核酸が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の抗体は、本明細書に記載された疾患、障害、または状態の1つもしくはそれ以上を含むがこれに限定されない癌と関係した障害または状態を治療するために使用されうる。本発明の抗体は、技術上周知の、または本明細書に記載された薬学的に許容される組成物において提供されうる。
【0137】
「腫瘍」および「癌」は同義的に、かつ、その文法的変形とともに使用され、ヒト、およびブタ、ネコ、イヌ、および高等霊長類を含むヒト以外の動物種の癌、肉腫、リンパ腫、および白血病を含む細胞型の腫瘍を指す。本発明の方法および組成物は、種々の細胞型の癌、肉腫、およびリンパ腫を含む広範囲の血管系(微小血管新生腫瘍)によって特徴づけられうる固形腫瘍の治療に適切である。本発明の治療によって標的化される固形腫瘍としては、扁平上皮細胞癌および類表皮癌を含む頭部頸部の癌、前立腺癌、硬性癌、乳腺腺癌を含む腺癌、リンパ肉腫、線維肉腫、平滑筋肉腫、軟骨腫、前立腺、肺、乳房、卵巣、胃、膵、喉頭、食道、精巣、肝、耳下腺、胆道、結腸、直腸、頚、子宮、子宮内膜、腎、膀胱、または甲状腺の癌、原発性腫瘍および転移、黒色腫、グリア芽細胞腫、カポジ肉腫、非小細胞肺癌、進行性悪性腫瘍、および血液性腫瘍、例えば、白血病などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0138】
本発明の抗体で治療されうる悪性および転移性の状態としては、悪性疾患、固形腫瘍、および本明細書に記載され、あるいは技術上周知の癌が挙げられるが、これらに限定されない(かかる障害の検討のためには、フィッシュマン(Fishman)ら、Medicine,第2版、J.B.リピンコット(Lippincott)社(Co.)、フィラデルフィア(Philadelphia)(1985年)を参照)。したがって、本発明の抗体は、癌に加えて、血管形成を含む他の疾患、障害、および/または状態の治療において有用でありうる。これらの疾患、障害、および/または状態としては、良性腫瘍、例えば、血管腫、聴神経腫、神経線維腫、トラコーマ、および化膿性肉芽腫;アテローム硬化斑;眼内血管形成疾患、例えば、糖尿病網膜症、未熟網膜症、斑状変性、角膜移植拒絶、血管新生緑内障、水晶体後線維増殖症、皮膚潮紅、網膜芽細胞腫、眼のブドウ膜炎および翼状片(Pterygia)(異常な血管増殖);関節リウマチ;乾癬;創傷治癒の遅延;子宮内膜症;脈管形成;肉芽化;過形成性瘢痕(ケロイド);偽関節骨折;強皮症;トラコーマ;血管癒着;心筋血管形成;冠状側副枝;大脳側副枝;動静脈奇形;虚血性四肢血管形成;オスラー−ウェバー(Oslaer-Webber)症候群;斑状新血管形成;毛細血管拡張;血友病関節;血管線維腫;線維性筋性形成異常;創傷肉芽化;クローン病;およびアテローム硬化が挙げられるが、これらに限定されない。
【0139】
転移の治療は、動物モデルにおける腫瘍転移を予防する本発明の抗体の能力によって示されうる。例えば、自然転移モデルおよび肺転移腫瘍モデルは技術上周知の転移モデルである。自然転移腫瘍モデルにおいては、動物には原発性腫瘤を形成する腫瘍細胞が皮下注射される。その後、腫瘍細胞の一部は、肺を含む動物の他の部分に自然に移動する。ツィスマン(Zisman),A.ら、Cancer Research 63、p.4952-59(2003年)、レフ(Lev),D.C.ら、Clin.Exp.Metas.20、p.515-23(2003年)を参照。肺転移腫瘍モデルにおいては、腫瘍細胞の懸濁液がマウスの尾静脈へ注射され、レシピエント動物の肺における転移の形成が評価される。ティアン(Tian)F.ら、Cancer Reseach 63、p.8284-92(2003年)、オガワ(Ogawa),K.ら、Int.J.Cancer 91、p.797-802(2001年)を参照。これらの動物においては、転移の治療において有効である抗体が、レシピエント動物へのその投与と同時に、転移の発生を阻止し、または陰性対照が投与されたレシピエント動物で形成された転移の数と比べ形成する転移の数を減少させる。
【0140】
本発明の抗体を使用して、新生物を含む高増殖性の疾患、障害、および/または状態を治療し、かつ/または診断することができる。この抗体は直接または間接の相互作用を通じて障害の増殖を抑制することができる。例えば、免疫応答を増大させ、特に高増殖性の障害の抗原の質を増大させ、もしくはT細胞を増殖させ、分化させ、または動員することによって、高増殖性疾患、障害、および/または状態は治療され、および/または診断されうる。この免疫応答は、既存の免疫応答を増強させることによって、または新しい免疫応答を開始させることによって増大されうる。
【0141】
本発明の抗体によって治療され、および/または診断される高増殖性疾患、障害、および/または状態の例としては、結腸、肺、腹部、骨、乳房、消化系、肝、膵、腹膜、内分泌腺(副腎、甲状腺、下垂体、精巣、卵巣、胸腺、甲状腺)、眼、頭部頸部、神経系(中枢および末梢)、リンパ系、骨盤、皮膚、軟組織、脾、胸、および尿生殖器系に位置した新生物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0142】
同様に、他の高増殖性疾患、障害、および/または状態は、本発明の抗体によって治療され、および/または診断されうる。かかる高増殖性疾患、障害、および/または状態の例としては、上記の臓器系に位置した新生物に加えて、高ガンマグロブリン血症、リンパ増殖性疾患、障害、および/または状態、パラプロテイン血症、紫斑、類肉腫症、セザリー症候群、ヴァルデンストレーム(Waldenstron)マクログロブリン血症、ゴーシェ病、組織球増殖症、および、他の高増殖性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0143】
本発明は、本発明の抗体の投与によって新血管形成と関連した疾患、障害、および/または状態の治療を提供する。血管形成の内因性促進剤と阻害剤との自然発生の均衡は、阻害影響が優勢であるものである。ラスチンヤッド(Rastinejad)ら、Cell 56、p.345-355(1989年)。創傷治癒、臓器再生、胚発生、および女性生殖過程など新血管形成が正常な生理条件下に生じるまれな場合には、血管形成は厳密に調節され、空間的および時間的に区切られる。固形腫瘍増殖を特徴づけるものなど病的な血管形成の条件下に、これらの調節管理は不十分となる。調節されない血管形成は病的になり、多くの新生物および非新生物疾患の進行を持続する。多くの重篤な疾患が、固形腫瘍増殖および転移、関節炎、眼疾患、障害、および/または状態の一部の型、および乾癬を含む異常な新血管形成によって支配されている。例えば、モーゼス(Moses)らによる概説、Biotech.9、p.630-634(1991年)、フォルクマン(Folkman)ら、N.Engl.J.Med.、333、p.1757-1763(1995年)、アウアーバッハ(Auerbach)ら、J.Microvasc.Res.29、p.401-411(1985年)、フォルクマン(Folkman)、癌研究の進歩(Advances in Cancer Research)、クライン(Klein)とワインハウス(Weinhous)編、アカデミックプレス(Academic Press)、ニューヨーク(1985年))))、p.175-203、パッツ(Patz)、Am.J.Opthalmol.94、p.715-743(1982年)、およびフォルクマン(Folkman)ら、Science 221、p.719-725(1983年)を参照。多くの病的状態では、新血管形成の過程は疾患状態の一因となる。例えば、固形腫瘍の増殖が血管形成に依存することを示す重要なデータが蓄積されている。フォルクマン(Folkman)とクラーグスブルン(Klagsbrun)、Science 235、p.442-447(1987年)。
【0144】
本発明の抗体が治療上使用されうるさらなる手段としては、例えば、補体(CDC)によって、またはエフェクター細胞(ADCC)によって介在される抗体の直接的細胞毒性、または、例えば免疫複合体としての抗体の間接的細胞毒性が挙げられるが、これらに限定されない。
【0145】
本発明の抗体は、他のモノクローナルまたはキメラ抗体と組合わせて、または、例えば、抗体と相互作用するエフェクター細胞の数または活性を増大させるために役立ち、または上記のようにラジオアイソトープまたは他の細胞毒性剤など細胞毒性物に結合されるリンフォカインまたは造血成長因子(例えば、IL−2、IL−3、およびIL−7など)とともに有利に利用されうる。
【0146】
本発明の抗体は、単独で、または他の型の治療(例えば、放射線療法、化学療法、ホルモン療法、免疫療法、抗腫瘍薬、および抗レトロウイルス薬)と組合わせて投与されうる。一部の実施形態においては、本発明の抗体は、単独で、または抗レトロウイルス薬と組合わせて投与されうる。
【0147】
製剤、治療投与、およびキット
本発明は、化合物、例えば、本発明の抗体、または本発明の医薬組成物の有効量の対象への投与によって治療する方法も提供する。一部の実施形態においては、抗体は実質的に精製される(例えば、実質的にその効果を制限し、または望ましくない副作用を生じる物質を含まない)。この抗体は細胞毒性剤に結合されうる。
【0148】
化合物が免疫グロブリンを含むときに使用されうる製剤および投与の方法が本明細書に記載されており、さらに適切な製剤および投与経路は、本明細書の以下に記載されるものの中から選択されうる。
【0149】
種々の送達系、例えば、リポソームでのカプセル化、微粒子、マイクロカプセル、化合物を発現可能である組換え細胞、受容体介在エンドサイトーシス(例えば、ウー(Wu)とウー(Wu)、J.Biol.Chem.262、p.4429-4432(1987年))、レトロウイルスまたは他のベクターなどの一部としての核酸の構成等が周知であり、これらを使用して本発明の化合物または医薬組成物を投与することができる。導入の方法としては、皮内、筋内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻内、硬膜外、および経口経路が挙げられるが、これらに限定されない。化合物または組成物は便利な経路、例えば、注入またはボーラス注入法によって、上皮または粘膜皮膚内膜(例えば、口腔粘膜、直腸および腸粘膜等)を通じる吸収によって投与されうるとともに、他の生物活性剤といっしょに投与されうる。投与は全身または局所に可能である。さらに、本発明の医薬化合物または組成物を、脳室内および硬膜下腔内注射を含む適切な経路によって中枢神経系に導入することが望ましい場合があり、脳室内注射は、例えば、オマヤレザバーなどレザバーに取付けた脳室内カテーテルによって促進されうる。経肺投与も、例えば、吸入器またはネブライザーの使用、およびエアゾール化剤による調製によって使用されうる。
【0150】
一部の実施形態においては、本発明の医薬化合物または組成物を治療を必要とする部位に局所に投与することが望ましく、これは、例えば、ただし限定する目的ではなく、手術中の局所注入、例えば、手術後の創傷包帯と同時に局所適用、注射によって、カテーテルによって、坐剤によって、またはインプラントによって達成されうるが、インプラントは、多孔性、非多孔性、またはゲル状の材料のものであり、sialastic膜、または繊維など膜を含む。本発明の抗体を含むタンパク質を投与する場合には、タンパク質が吸着することがない材料を使用するように注意しなければならない。
【0151】
他の実施形態においては、化合物または組成物はベシクルで、特にリポソームで送達されうる(ランガー(Langer)、Science 249、p.1527-1533(1990年)、トリート(Treat)ら、感染症および癌の治療におけるリポソーム(Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer)収載、ロペス−べレスタイン(Lopez-Berestein)とフィドラー(Fidler)、編、リス(Liss)、ニューヨーク(1989年)、p.353-365、ロペス−べレスタイン(Lopez-Berestein)、前掲書、p.317-327、一般に前掲書を参照。)
【0152】
さらに別の実施形態においては、化合物または組成物は制御放出系で送達されうる。一部の実施形態においては、ポンプを使用することができる(ランガー(Langer)、上掲書、セフトン(Sefton)、CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14、p.201(1987年)、ブッフワルト(Buchwald)ら、Surgery 88、p.507(1980年)、シャウデック(Saudek)ら、N.Engl.J Med.321、p.574(1989年)を参照)。他の実施形態においては、ポリマー材料を使用することができる(制御放出の医療適用(Medical Application of Controlled Release)、ランガー(Langer)とワイズ(Wise)、編、CRCプレス(CRC Pres.)、フロリダ州、ボーカラトーン(Boca Raton)(1974年)、制御された薬物バイオアベイラビリティ、製剤計画および性能(Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance)、スモーレン(Smolen)とボール(Ball)、編、ワイリー(Wiley)、ニューヨーク(1984年)、ランガー(Langer)とペパス(Peppas)、J.,Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23、p.61(1983年)、ラビー(Lavy)ら、Science 228、p.190(1985年)も参照、デューリング(During)ら、Ann.Neurol.25、p.351(1989年)、ハワード(Howard)ら、J.Neurosurg.71、p.105(1989年)を参照)。さらに他の実施形態においては、制御放出系を治療標的、すなわち脳の近くに配置することができ、したがって、全身量の一部分のみを必要とする(例えば、グッドサン(Goodson)、制御放出の医療適用(Medical Application of Controlled Release)収載、上掲書、第2巻、p.115-138(1984年)を参照)。他の制御放出系は、ランガー(Langer)による概説、Science 249:p.1527-1533(1990年)に開示されている。
【0153】
本発明は医薬組成物も提供する。かかる組成物は、治療上有効量の本発明の化合物、および薬学的に許容される担体を含む。一部の実施形態においては、「薬学的に許容される」は、連邦規制機関もしくは州政府によって承認されており、または米国薬局方もしくは動物、より詳しくはヒトにおける使用のために一般に認められている国際的な薬局方に掲載されていることを意味する。「担体」という用語は、それとともに治療薬が投与される希釈剤、補剤、賦形剤(excipient)、または賦形剤(vehicle)を指す。かかる医薬担体は、水、および石油、動物、植物、または合成由来のもの、例えば、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油などを含む油など滅菌液体でありうる。一部の実施形態においては、水は、医薬組成物が静脈内投与される場合に担体として使用されうる。生理食塩水および水性デキストロースおよびグリセロール溶液も液体担体として、特に注射剤用溶液に使用されうる。適切な医薬賦形剤としては、デンプン、ブドウ糖、乳糖、ショ糖、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキンミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。組成物は、必要に応じて、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤も含有しうる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル、散剤、持続放出製剤などの形をとりうる。組成物は、トリグリセリドなど一般的な結合剤および担体とともに坐剤として製剤化されうる。経口製剤は、医薬グレードのマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等など標準の担体を含みうる。適切な医薬担体の例は、E.W.マーチン(Martin)によるRemington's Pharmaceutical Sciencesに記載されている。かかる組成物は、患者に対する適切な投与のために形態を提供するために適切な量の担体とともに、好ましくは精製形態で、治療上有効量の化合物を含有する。製剤は投与方法に適しているべきである。
【0154】
他の実施形態においては、組成物は、ヒトへの静脈内投与に適合した医薬組成物としてルーチンの手順に従って調製される。通常、静脈内投与のための組成物は、滅菌等張性水性緩衝液での溶液である。必要に応じて、組成物は可溶化剤、およびリグノカインなどの局所麻酔薬も含有し、注射部位での痛みを緩和することができる。一般に、成分は別々に、または、例えば、乾燥凍結粉末、または活性剤の量を示すアンプルもしくは小袋(sachette)など気密容器中の水を含まない濃縮物として単位剤形で混合して供給される。組成物が注入によって投与される場合、滅菌医薬グレードの水または生理食塩水を含有する注入ビンで調合されうる。組成物が注射によって投与される場合、成分が投与前に混合されうるように、注射用の滅菌水または生理食塩水のアンプルが供給されうる。
【0155】
疾患または障害、例えば、癌の治療において治療上有効となる本発明の化合物の量は、標準の臨床方法によって判定されうる。さらに、場合により、インビトロアッセイを使用し、最適な用量範囲を確認するために役立てることができる。製剤で使用される正確な用量は、投与経路、および疾患または障害の重篤度によっても決まり、医師の判断および各患者の状況に従って決定されるべきである。有効量は、インビトロまたは動物モデル試験系から得られる用量反応曲線から推定されうる。
【0156】
抗体については、患者に投与される用量は通常、患者の体重の0.1mg/kg〜100mg/kgである。しかし、放射性標識抗体については、投与される用量は低くなり、例えば、患者の体重の0.01mg/kg〜1mg/kgになりうるとともに、毒素免疫複合体については、投与される用量はさらに低くなり、例えば、患者の体重の0.001mg/kgになりうる。一部の実施形態においては、患者に投与される用量は患者の体重の0.001mg/kg〜100mg/kgである。他の実施形態においては、患者に投与される用量が患者の体重の0.01mg/kg〜50mg/kgである。他の実施形態においては、患者に投与される用量が患者の体重の0.1mg/kg〜20mg/kgである。さらに他の実施形態においては、患者に投与される用量が患者の体重の1mg/kg〜10mg/kgである。一般に、ヒト抗体は、外来ポリペプチドに対する免疫応答により他の種由来の抗体よりもヒト体内で長い半減期を有する。したがって、低用量のヒト抗体および低頻度の投与がしばしば可能である。さらに、本発明の抗体の投与の用量および頻度は、例えば、脂質付加などの修飾によって、抗体の(例えば、脳への)摂取および組織透過性を増強させることによって減少されうる。
【0157】
本発明は、本発明の医薬組成物を含むキットも提供する。このキットは、本発明の医薬組成物の1つもしくはそれ以上の成分で充填された1つもしくはそれ以上の容器を含みうる。場合により、かかる容器には注意または印刷された説明書が付随している。
【0158】
例えば、かかる印刷された説明書は、医薬または生物学的製剤の製造、使用、または販売を規制する政府機関によって指示された形でありうるが、その注意は、癌などの状態を治療するためにヒトに投与するための製造、使用、または販売の機関による承認を示している。一部の実施形態においては、キットはさらに、例えば、癌を治療するための医薬組成物の使用に関する情報を提供する印刷物、または、例えば、癌を治療するための医薬組成物の使用に関する情報を提供する、あらかじめ録音されたメディアデバイス、またはプランナーを含む。
【0159】
「印刷物」は、例えば、本、ブックレット、パンフレット、またはリーフレットの1つでありうる。印刷物には癌の治療のための本発明の医薬組成物の使用が記載されうる。可能なフォーマットとしては、ブレットポイントリスト、よくある質問(FAQ)のリスト、またはチャートが挙げられるが、これらに限定されない。さらに与えられる情報は、絵、グラフィック、または他の記号を用いる非文章表現で示されうる。
【0160】
「あらかじめ録音されたメディアデバイス」は、例えば、ビデオテープカセット、DVD(デジタルビデオディスク)、映写スライド、35mm映画、または他の視覚メディアデバイスなど視覚メディアデバイスでありうる。あるいは、あらかじめ録音されたメディアデバイスは、CD−ROM(コンパクトディスク読取専用メモリ)、またはフロッピー(登録商標)ディスクなど対話型ソフトウェアアプリケーションでありうる。あるいは、あらかじめ録音されたメディアデバイスは、例えば、レコード、オーディオカセット、またはオーディオコンパクトディスクなどオーディオメディアデバイスでありうる。あらかじめ録音されたメディアデバイスに含まれている情報には、癌の治療のための本発明の医薬組成物の使用が記載されうる。
【0161】
「プランナー」は、例えば、週1回、月1回、月複数回、年1回、または年複数回のプランナーでありうる。プランナーは日記として使用し、投与量をモニタリングし、投与される用量のトラックを維持し、または、本発明の医薬組成物が定期的に投与されることが困難でありうる将来のイベントのために準備することができる。あるいは、プランナーは、用量が摂取され、かつ用量が摂取されていない場合にモニタリングの手段を提供するカレンダーでありうる。この種のプランナーは、自分自身に投薬するための通常のスケジュールを有する患者に特に有用となる。さらに、プランナーは、自分自身に投薬することができ、忘れっぽくなりうる高齢者、小児、または他の患者群に有用でありうる。当業者は、本発明で使用するために適切である各種の計画ツールを理解するであろう。
【0162】
キットは、キットの他の成分を保存するための容器も含みうる。容器は、例えば、バッグ、ボックス、エンベロープ、または本発明における使用に適切である他の容器でありうる。好ましくは、容器は、本発明の医薬組成物に必要である各成分および/または管理デバイスに適合するように十分に大きい。しかし、場合により、患者のハンドバッグ、ブリーフケース、またはポケットに隠せる小さ目の容器であることが望ましい。
【0163】
本発明の医薬組成物を患者に送達する方法
本発明は、本発明の抗体の治療上有効量を含む医薬組成物をそれを必要とする患者に送達する方法にも関し、この方法は、(a)医薬組成物を処方することが許されている医師の身元をコンピュータ可読媒体に登録するステップと、(b)患者に医薬組成物に付随するリスクに関するカウンセリング情報を提供するステップと、(c)付随するリスクにもかかわらず医薬組成物が投与される患者のインフォームドコンセントを得るステップと、(d)インフォームドコンセントを得た後に患者をコンピュータ可読媒体に登録するステップ、および(e)患者の医薬組成物へのアクセスを可能にするステップとを含む。
【0164】
本発明の薬物送達法は、とりわけ、本発明の医薬組成物を処方する資格のある医師をコンピュータ可読記憶媒体に登録するステップを含む。コンピュータ可読媒体に登録されると、医師は医薬組成物をそれを必要とする患者に処方する資格がありうる。一般的に言えば、コンピュータ可読記憶媒体に登録されるために、医師は、例えば、患者に教育やカウンセリングを提供する種々の局面に応じる必要がありうる。コンピュータ可読記憶媒体における医師の登録は、例えば、郵便、ファクシミリ伝送、またはオンライン伝送で、好ましくは、本発明の医薬組成物に関する教育資料とともに、登録カードまたは書式を医師に提供することによって達成されうる。医師は、そこで要求された情報を提供することによって登録カードまたは書式のすべての項目に記入しうるとともに、登録カードまたは書式は本発明の医薬組成物のメーカーまたは販売業者に、または登録資料の他の正式な受取人に、例えば、郵便、ファクシミリ伝送、またはオンライン伝送で返却されうる。次いで、登録カードまたは書式における医師の情報はコンピュータ可読記憶媒体へ入力される。医師(および以下で論じられる患者)の登録に使用されうる適切なコンピュータ可読記憶媒体は、本出願の開示を把握すれば、当業者には明らかであろう。
【0165】
癌患者を含む患者の検査の過程で、医師は患者の状態が本発明の医薬組成物の投与によって改善されうることを判定しうる。本発明の医薬組成物を処方する前に、医師は、例えば、医薬組成物に関連した種々のリスクと利点について患者に助言することができる。患者は医薬組成物に関連した周知の疑わしいリスクのすべての完全な開示が提供されうる。かかるカウンセリングは口頭、および書面の形で提供されうる。一部の実施形態においては、医師は患者に医薬組成物に関する文献資料、例えば、製品情報、教育資料などを患者に提供することができる。
【0166】
本発明の医薬組成物に付随するリスクに関するカウンセリングを受けることに加えて、本発明の方法はさらに、患者によって署名されるインフォームドコンセントの書式に患者が記入することを必要とする。インフォームドコンセントの書式の記入完了と同時に、患者はコンピュータ可読記憶媒体に登録されうる。患者が登録されるコンピュータ可読記憶媒体は、医師が登録されるコンピュータ可読記憶媒体と同じであり、またはこれと異なりうる。
【0167】
本明細書に記載された方法による医師および患者の1つもしくはそれ以上のコンピュータ可読記憶媒体への登録は、本発明の医薬組成物へのアクセスをモニタリングし、かつ公認する手段を提供する。したがって、コンピュータ可読記憶媒体は、本発明の方法に従うことができない患者へのアクセスを拒否することに役立ちうる。一部の実施形態においては、本発明の医薬組成物へのアクセスは処方箋の形であり、ここで処方する医師はコンピュータ可読記憶媒体に登録されており、医薬組成物の付随リスクに関して患者にカウンセリングを提供し、かつそれを必要とする患者に医薬組成物を処方する前に、患者からインフォームドコンセントを得ている。
【0168】
本発明の医薬組成物に関して消費者を教育する方法
本発明は、本発明の医薬組成物の使用について消費者を教育する方法にも関し、この方法は、医薬組成物を販売時点で消費者情報とともに消費者に分配するステップを含む。一部の実施形態においては、分配は薬剤師または医療提供者を有する販売場所で生じる。
【0169】
本明細書で使用される「消費者情報」という用語は、英語テキスト、非英語テキスト、視覚映像、チャート、電話録音、ウェブサイト、および生の消費者サービス担当者へのアクセスを含むが、これらに限定されない。本発明の一部の実施形態においては、消費者情報は、本発明の医薬組成物の使用説明書、適切な年齢の使用、適応症、禁忌、または警告を提供する。一部の実施形態においては、この方法はさらに、医薬組成物に関する消費者の質問に答える立場にある関係者へ専門的情報を提供するステップを含む。
【0170】
本明細書で使用される「専門的情報」という用語は、医療関係者が医薬組成物に関する顧客の質問に答えることができるように考えられた本発明の医薬組成物に関する情報を含むが、これに限定されない。
【0171】
本明細書で使用される「関係者」は、例えば、医師、医師助手、ナースプラクティショナー、薬剤師、および顧客サービス担当者を含む。
【0172】
本発明はさらに、本発明の抗体の治療上有効量を含む医薬組成物を識別する方法に関し、この方法は、(a)ヒト組織因子に結合能がある抗体を単離するステップであって、この抗体は正常血漿対照と比べ組織因子介在血液凝固を阻害することがなく、かつFc介在機序を開始しうるステップと、(b)(a)を反復し、治療上有効であると判明しうる複数の候補抗体を得るステップと、(c)1つのかかる候補抗体について、ヒト以外の動物に投与される場合にその非毒性を証明するステップと、(d)監視下での臨床試験を行い、かかる候補抗体の非毒性および有効性を証明するステップと、(e)規制機関の承認を確保し、癌を治療するためのかかる1つの候補抗体を分配するステップ、および(f)活性剤として候補抗体を含む医薬組成物を製造するステップとを含む。
【0173】
本明細書で使用される「抗体の単離」という語句は、本明細書で既述されているように、ヒトTF(hTF)に結合能がある抗体の生成および単離に関するアッセイおよびプロトコールの使用を含み、ここで抗体は、インビトロ凝固アッセイによって判定されるように、正常血漿対照と比べTF介在血液凝固を阻害することがない。複数の候補抗体の単離と同時に、この方法はさらに、候補抗体について、ヒト以外の動物に投与される場合にその非毒性を証明するステップを含む。
【0174】
医薬の非毒性を証明する方法は技術上周知であり、ヒト以外の動物に本発明の医薬組成物を投与するステップと、標準の医療検査を行い、医薬組成物が投与されるヒト以外の動物に対する医薬組成物の非毒性効果を証明するステップとを含むが、これらに限定されない。本発明の一部の実施形態においては、この方法はさらに、候補抗体のヒト組織因子への結合能を証明するヒト以外の動物でのインビボ実験を含み、ここで候補抗体は正常血漿対照と比べ組織因子介在血液凝固を阻害することがなく、かつヒト以外の動物モデルにおけるFc介在機序を開始しうる。
【0175】
本明細書で使用される「臨床試験」は、その安全性を評価し、適切な用量範囲を決定し、かつヒトにおけるその使用の潜在的な副作用を確認する候補抗体の試験を指す。さらに、臨床試験系は、癌の治療における医薬組成物の有効性を確認し、かつヒトへの医薬組成物の安全な投与を最適化するために使用される情報を提供するために行われる試験を含む。臨床試験の成功裏の終了と同時に、この方法はさらに、規制機関、例えば、食品医薬品局の承認を確保し、癌の治療のための候補抗体を分配するステップを含む。
【0176】
本明細書に記載された種々の実施形態または選択肢のすべては、ありとあらゆる変形で組合わせられうる。
【0177】
以下の実施例はさらに本発明の例示であるが、本発明の範囲を限定するようには考えられていない。
【実施例】
【0178】
材料
細胞培養試薬は、インビトロジェン社(Invitrogen Corp.)、カリフォルニア州(CA)から購入した。チタンワンチューブ(Titan one Tube)RT−PCRシステムはロシュ(Roche)(スイス、バーゼル(Basel)、カタログ番号1855476)製であった。Ni−NTAアガロースは、キアゲン(Qiagen)(カリフォルニア州(CA)、カタログ番号30210)から入手し、Bio−GelP60はバイオ−ラッド(Bio-Rad)(カリフォルニア州(CA)、カタログ番号150-4161)から入手した。HiTrapプロテインG HPカラムは、アマシャム(Amersham)(英国、バッキンガムシャー州(Buckinghamshire)、カタログ番号17-0404-01)から購入した。マウス抗ヒトTF mAbはカルビオケム(Calbiochem)(カリフォルニア州(CA)、カタログ番号612161)から得た。プール正常ヒト血漿は、ジョージ・キング・バイオメディカル株式会社(George King Bio-Medical Inc.)(カンザス州(KA)、カタログ番号0010-01)製であった。細胞解離溶液はシグマ(Sigma)(ミズーリ州(MO)、カタログ番号C-5914)製であった。
【0179】
hTF発現ベクターの構成
ヒト組織因子(hTF)遺伝子をRT−PCRによってヒト乳癌細胞株SKBR3からクローン化した。手短に言えば、総RNA 1μgをトリゾール(Trizol)試薬(インビトロジェン社(Invitrogen Corp.)、カリフォルニア州(CA)、カタログ番号15596018)を用いて、メーカーの指示に従いSKBR3細胞から単離した。単離されたRNAを逆転写し、チタンワンチューブ(Titan one Tube)RT−PCRシステムを用いて、メーカーの指示に従い、プライマーTF4(5’UTR−ACGGAACCCGCTCGATCTCG(配列番号:13))、およびTF5(3’UTR−TGCAGTAGCTCCAACAGTGC(配列番号:14))で増幅した。最初のPCR産物をさらに、プライマーTF1(5’−ATC TGC GGA TCC ACC ATG GAG ACC CCT GCC TGG CC−3’(配列番号:15))およびTF3(5’−ATC TGC CTC GAG TTA ATG GTG ATG GTG ATG GTG GGA TCC TCT TTC TCT GAA TTC CCC TTT CTC CTG−3’(配列番号:16))を用いて増幅し、32 アミノ酸N末端リーダー配列および9アミノ酸C末端RGS−His6タグ配列を有するhTFの細胞外ドメインをコードするhTF DNA断片を生成する(可溶性hTF)。可溶性hTFは、タンパク質精製のための3’末端でのHis−タグを含む発現ベクターへの挿入のための5’BamHI部位および3’XhoI部位を含んだ。最初のPCR産物も使用して、プライマーTF1およびTF2(5’−ATC TGC CTC GAG TTA ATG GTG ATG GTG ATG GTG GGA TCC TCT TGA AAC ATT CAG TGG GGA GTT CTC−3’(配列番号:17))で完全長hTF遺伝子を生成した。増幅可溶性hTFおよび完全長hTFを配列分析のためにpCR4−TOPOベクター(インビトロジェン社(Invitrogen Corp.)、カリフォルニア州(CA))へクローン化した。DNA断片をコードする可溶性hTF(配列番号:3)および完全長hTF(配列番号:1)もpCEP4およびpcDNA3.1発現ベクター(インビトロジェン社(Invitrogen Corp.)、カリフォルニア州(CA))へクローン化した。
【0180】
可溶性hTFの発現および精製
3×105細胞/ウェルのHEK293細胞をトランスフェクションの前日に6穴プレートにプレーティングした。リポフェクタミン(Lipofectamine)プラス試薬(インビトロジェン社(Invitrogen Corp.)、カリフォルニア州(CA))を用いて3時間37℃でメーカーの指示に従い可溶性hTF/pCEP4プラスミドDNA 1μgで細胞をトランフェクションした。安定トランスフェクト細胞をG418(750μg/ml)含有DMEM培地で細胞を培養することによって選択した。次いで、可溶性hTFタンパク質を1mlサイズのNiアガロースカラムを用いて培養培地300mlから精製し、線形イミダゾールバッファーグラディエント(PBSバッファー中5mM〜100mMイミダゾール)で溶出した。可溶性hTFを含有する画分をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)分析によって同定した。さらに、可溶性hTFをゲルろ過クロマトグラフィーによって精製し、汚染物を除去した。手短に言えば、遠心フィルター(Centrifugal Filter)(ミリポア(Millipore)、マサチューセッツ州(MA)、カタログ番号UFV4BGC25)で約100μlに試料を濃縮させ、PBS中0.7×50cmのBio−Gel P60カラム上へロードした。次いで、タンパク質をPBS中で溶出し、0.5ml画分を回収し、SDS−PAGEによって分析した。可溶性hTFバンドをマウス抗hTF mAb(カルビオケム(Calbiochem)、カリフォルニア州(CA)、カタログ番号612161))を用いて標準ウェスタンブロット法によって検証した。可溶性hTFを含有する画分をあわせた。
【0181】
安定完全長hTF発現細胞株の調製
リポフェクタミン(Lipofectamine)プラス試薬を用いてメーカーの指示(インビトロジェン社(Invitrogen Corp.)、カリフォルニア州(CA))に従い完全長hTF/pcDNA3.1プラスミド(pTF103)でCHO−K1細胞をトランスフェクションした。750μg/mlのG418含有DMEM培地存在下に完全長hTFを安定に発現するクローンを選択した。選択の1週間後、耐性細胞をプレートからTrypsin−EDTA溶液とともに除去し、DMEM/G418培地で3細胞/mlの濃度に希釈した。希釈液の100μlアリコートを1つの96穴プレートの各ウェルへ添加した。単一の細胞クローンを展開し、市販の抗TF抗体(カルビオケム(Calbiochem)、カリフォルニア州(CA)、カタログ番号612161))を用いてFACSによってスクリーニングした。
【0182】
マウスにおけるポリクローナル、抗hTF IgG反応の免疫および測定
多重部位でのマウスの迅速免疫(RIMMS)のプロトコールは、キルパトリック(Kilpatrick),K.E.ら、Hybridoma 16、p.381-389(1997年)によって既述されており、これを用いてマウスにおけるhTFに対する抗体を生成した。手短に言えば、8週齢のメスBalb/cマウス3匹の各々に対し、精製可溶性hTF(10μg/ml)の皮下注射を4回、11日間に、3−5日おきに投与した。各回の免疫のために、マウスを麻酔し、次いで、完全フロイントアジュバント(CFA)中の免疫原でうなじの2部位およびふくらはぎと股間の両方に部位当り40−50μlを注射し、RIBIアジュバント(シグマ(Sigma)、ミズーリ州(MO)、セントルイス(St.Louis))中で並列部位(下部および中央部ふくらはぎ、大腿部、および腋窩)において部位あたり40−50μlの用量で皮下注射した。初回注射前および最後のブーストの2日後に血液サンプルを取り、免疫原に対する抗体反応についてELISAで分析した。ELISAでは、96穴ELISAプレートをPBS中100μl/ウェル、pH7.4、37℃、2時間、免疫原(2μg/ml)でコーティングした。プレートを0.05%Tween−20(PBS-T)含有PBSで1回洗浄し、150μl/ウェル、37℃、30分間、PBS中1%BSAでブロックした。PBS−Tによる1回の洗浄後、PBS−T中に希釈した免疫前および免疫血漿を100μl/ウェルでプレートに添加した。プレートを37℃、45分間インキュベートし、PBS−Tで3回洗浄した。次いで、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(サザンバイオテク(Southern Biotech)、アラバマ州、バーミングハム(Birmingham)、カタログ番号1031−05)で結合したヤギ抗マウスIgGの1:5000希釈液100μlを各ウェルに添加した。37℃、30分間のインキュベーション後、プレートをPBS−Tで3回洗浄した。TMB−H2O2基質バッファー(ピアス(Pierce)、イリノイ州(IL)、ロックフォード(Rockford))100μl/ウェルを添加することによって抗体結合を視覚化した。反応を室温下、10分間続行し、ELISAプレートリーダーを用いて650nmの波長で読んだ。O.D.測定価が内部陰性対照(二次抗体のみを有するウェル)のものより2倍高い場合に、抗体力価を血清希釈の逆数と規定した。
【0183】
抗体TF278、TF277、TF392、およびTF9を、Balb/cマウス3匹の各々に対し、精製可溶性hTF(10μg/ml)の皮下注射を5回、11日間に、2−4日おきにしたことを除き、上記と同じ方法を用いて生成した。
【0184】
ハイブリドーマの遺伝子
最後のブーストの2日後、その血清が1:10,000より大きいELISA力価を有する免疫したマウスを二酸化炭素で窒息させることで安楽死させた。両側の膝窩、浅鼡径、腋窩、および鰓リンパ節を単離し、ペニシリンおよびストレプトマイシンを含有する新鮮培地で洗浄した。次いで、単一の細胞懸濁液を50%Excell−610および50%RPMI−1640培地を含む血清を含まない培地中でリンパ節から調製した。リンパ節細胞懸濁液を上記の培地で2回洗浄し、400xgで10分間、室温で遠心分離によって回収した。次いで、50mlのコニカルポリプロピレンチューブにおいて、リンパ節細胞を2.5:1の比で50%ポリエチレングリコール1500(PEG、ロシュバイオサイエンス(Roche Bioscience)、カリフォルニア州(CA)、パロアルト(Palo Alto))1mlを添加することによって、マウス骨髄腫細胞(P3X63/Ag8.653、ATCC、バージニア州(VA)、マナッサス(Manassas))と融合した。結果として生じるPEG細胞調製物を1回洗浄し、次いでExcell−610とRPMI−1640の50:50混合物、10%FBS、10%オリゲン クローニング ファクター(Origen Cloning Factor)(アイゲン(Igen)、メリーランド州(MD)、ロックビル(Rockville))、2mM L−グルタミン、100U/mlペニシリンおよびストレプトマイシン、および0.01mMベータ−メルカプトエタノールを含有するハイブリドーマ培地(HM)中に再懸濁し、平底96穴プレートへ2×105細胞/100μl/ウェルで分配した。7%CO2で37℃、18時間インキュベーション後、2×HAT(GIBCO-BRL、ニューヨーク州(NY)、グランドアイランド(Grand Island))を補充したHM 100μlを各ウェルに添加した。培地を96時間後に100μMヒポキサチンおよび16μMチミジンを補充したHMに変更した。HAT選択の7から10日後、プレートをハイブリドーマ増殖について顕微鏡で検査した。さらに、単一のコロニーからのハイブリドーマを24穴プレートで個別に展開し、培養上清をELISAによってhTFに特異的なマウスIgG抗体についてスクリーニングした(下記参照)。
【0185】
ELISAによる抗hTF mAbsの一次スクリーニング
手短に言えば、96穴ELISAプレートをPBS、pH7.4中、37℃、2時間、2μg/ml可溶性hTF 100μl/ウェルでコーティングした。プレートをPBS−Tで1回洗浄し、1%BSA含有PBS150μl/ウェルで37℃、30分間ブロックした。PBS−Tによる1回の洗浄後、ハイブリドーマ上清を100μl/ウェルでプレートに添加した。プレートを37℃、45分間インキュベートし、PBS−Tで3回洗浄した。次いで、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(サザンバイオテクノロジー(Southern Biotechnology)、カタログ番号1031−05)で結合したヤギ抗マウスIgGの1:5000希釈液100μlを各ウェルに添加した。37℃、30分間のインキュベーション後、プレートをPBS−Tで3回洗浄した。TMB−H2O2基質バッファー100μlを各ウェルに添加することによって抗体結合を視覚化した。反応を室温下、10分間続行し、ELISAプレートリーダーを用いて650nmの波長で読んだ。陽性反応を、内部陰性対照(二次抗体Abのみ)のものより2倍高いO.D.測定値と規定した。すべてのELISA陽性クローンをさらにHMで展開し、凍結保存した。
【0186】
フローサイトメトリーによる抗hTF mAbsの二次スクリーニング
完全長hTFを発現する細胞(CHO−K1)を0.25%トリプシン−EDTA溶液で溶離し、2%FBSおよび0.05%NaN3(FACSバッファー)を含有する冷PBS中で2回、400xgで10分間洗浄し、次いでU底96穴マイクロタイタープレートヘ0.5×106細胞/ウェルで分配した。細胞を200xgで4℃、3分間、遠心分離した。吸引による上清の除去後、細胞をハイブリドーマ上清70μl中に再懸濁した。4℃、45分間インキュベーション後、細胞を冷FACSバッファー、220μl/ウェルで、200xgで3分間、遠心分離によって2回洗浄し、1:25FITC標識ヤギ抗マウスIgG(サザンバイオテクノロジー(Southern Biotechnology))50μl中に再懸濁した。細胞を4℃、30分間インキュベートし、次いで冷FACSバッファー、220μl/ウェルで3回洗浄した。最後に、細胞をFACSバッファー0.4ml中に再懸濁し、それらの蛍光強度をフローサイトメーター(FACSscan、ベクトンディッキンソン(Becton Dickinson)で測定し、セルクエスト(Cell Quest)ソフトウェア(ベクトンディッキンソン(Becton Dickinson)を用いて分析した。陽性クローンを、FACSプロフィールにおけるパーセント陽性細胞が、細胞がFITC標識ヤギ抗マウスIgGでのみ染色された場合に得られたプロフィールより少なくとも3倍高いクローンとして同定した。
【0187】
抗hTF mAbsのBIAcore分析
抗hTF mAbsの結合特性をBIAcoreXを用いて評価した。手短に言えば、CM5 BIAcoreバイオセンサチップを器具へドッキングし、1:1のNHS/EDC 55μlで室温下、活性化した。組換え可溶性hTFおよびBSA(0.05M酢酸緩衝液、pH4.5中10μg/ml)をそれぞれフローセル1および2の活性化チップ上に固定した。固定は、1000−2000RUの共鳴反応が達成されるまで5μl/分の流量で行われた。次いで、チップをエタノールアミンHCl、pH8.5、55μlの注入によりブロックした後、50mM NaOH、1M Naclで5回洗浄した。チップへ固定された可溶性hTFへの抗hTF mAbsの結合を測定するために、BIAcoreランニングバッファー(HBS−EP、バイアコア(Biacore)AB、スウェーデン、ウプスラ(Uppsala)、カタログ番号1001−08)中の変動濃度で抗hTF mAbs 30μlを5μl/分の流量でセンサ表面上に注入した。注入相の完了後、同じ流量で360秒間、BIAcoreランニングバッファーで解離をモニタリングした。50mM NaOH 1M NaCl 30μlを用いる注入の間で表面を再生させた。個別のセンサグラムをBIAシミュレーションソフトウェアを用いて分析した。代表的なデータが表3および4に示されている。
【0188】
TF膜抽出物の調製
完全長hTFを発現するCHO−K1細胞(5×107)を細胞溶離溶液で回収し、氷冷1×PBSで1回洗浄した。細胞を膜抽出緩衝液(10mM Tris−HCl、pH=8.0、1mM MgCl2、1mM PMSF、2μg/mlアプロチニン、2μg/mlロイペプチン)2ml中に再懸濁し、ティッシュ テアラー(Tissue Tearor)組織ホミジナイザー(バイオスペック プロダクツ株式会社(Biospec Products,Inc.)、オクラホマ州(OK)、バートルズビル(Bartlesville))で3回、各30秒間、氷上でホモジナイズした。細胞残屑を1500xgで5分間、遠心分離によって除去した。細胞膜を12,000xgで30分間、4℃、遠心分離によって回収した。ペレットを1×PBS中に再懸濁し、等分し、−20℃で保存した。
【0189】
ハイブリドーマIgGの精製
ELISAおよびFACS陽性ハイブリドーマクローンを低IgGハイブリドーマ培地(40%RPMI 1640、40%EX−Cellハイブリドーマ培地、10%低IgG FBS、10%オリゲン(ORIGEN)クローニングファクター、2mM L−グルタミン、10mM HEPES、1mMピルビン酸ナトリウム)中で37℃、7%CO2の湿気のある環境下に培養した。分泌抗体を含有する培養培地40mlを1ml HiTrapプロテインG HPカラム上へロードし、次いでPBS 10mlで洗浄した。結合IgGを0.1Mグリシン、pH3.7、3mlでカラムから溶出し、1M Tris−HCl、pH9.0で中和した。IgG含有画分をプールし、PBS中で透析した。
【0190】
hTF凝固アッセイ
hTF抗体の抗凝固活性をモリセイ(Morrissey),J.H.ら、Thrombosis Research 52、p.247-261(1988年)(2段階プロトロンビン(2st−PT)アッセイとしても知られる)、およびファング(Fang),C.H.ら、Thrombosis and Haemostasis 76、p.361-368(1996年)によるアッセイを用いて測定した。hTF膜抽出物の異なる希釈液をPBSで100μlに調節し、30分間、37℃水浴中で予熱した。次いで、ヒト血漿50μlおよび50mM CaCl2 50μl溶液を混合液に添加し、清潔な使い捨て式プラスチック製キュベットで血液凝固を開始させた。血液凝固を15秒間隔で405nm(A405)での吸光度を測定することによってモニタリングした。A405測定値の変化が15秒で0.01未満に達したところで血液凝固は完了した。結果として180秒の血液凝固時間となるhTF膜希釈を用いてhTF mAbsの阻害効果を試験した。血液凝固に対するhTF mAbの阻害効果を試験するために、hTF膜抽出物を各mAb(最終濃度10μg/ml〜100μg/ml)で37℃、30分間、血液凝固反応の開始前にインキュベートした。
【0191】
【表1】
【0192】
【表2】
注:結果は、24穴プレートで増殖した個別のハイブリドーマの培養上清のFACSスクリーニングによって得られた。パーセント陽性は、安定にTFを発現し、陽性染色したTF34細胞の集団を示す。
【0193】
【表3】
注:正常血漿対照およびB−Fact対照(正常凝固活性の30−50%に希釈されたプールされた正常ヒト血漿(ジョージ・キング・バイオメディカル株式会社(George King Bio-medical,Inc.)、カンザス州(KS)、カタログ番号0040−0)は、われわれのアッセイフォーマットで正常ヒト血液および境界ヒト血液サンプルの血液凝固時間を示した。境界対照よりも凝固時間が短いすべての抗体がリストアップされている。凝固時間の長い唯一の阻害抗体(#84)が示されている。抗体の大部分は凝固を阻害する。
【0194】
【表4】
注:表4においては、表3に示されているのと同じ正常血漿対照およびB−Fact対照(正常凝固活性の30−50%に希釈されたプールされた正常ヒト血漿(ジョージ・キング・バイオメディカル株式会社(George King Bio-medical,Inc.)、カンザス州(KS)、カタログ番号0040−0)が使用された。表4にリストアップされたすべての抗体は、境界対照(B−Fact対照)よりも短い凝固時間を示した。
【0195】
ADCC活性
抗TF抗体TF260、TF278、およびTF392のADCC活性を以下のADCCアッセイを使用して測定した。ヒストパーク(Histopaque)−1077グラディエント遠心分離法(シグマ社(Sigma Co.)、ミズーリ州(MO)、セントルイス(St.Louis))を使用して正常ドナーの末梢血からヒト白血球を単離した。次いで、単離された白血球をエフェクター細胞として使用した。U底96穴プレートにおいて、腫瘍細胞(5×103/ウェル)を、10%FBSを補充したRPMI 1640の総量120μl中で変動濃度の抗ヒトTF mAbsまたは対照抗体の非存在または存在下にエフェクター対標的(E/T)比0:1−40:1でヒストパーク精製済みヒト白血球と混合した。プレートを37℃、5%CO2を含有する湿気のある環境下にインキュベートした。試験抗体なしにエフェクター細胞と混合した標的細胞を陰性対照として使用した。16−18時間のインキュベーション後、50μlアリコートの培養上清を回収し、平底96穴プレート中の乳酸脱水素酵素活性について、サイトトックス(Cytotox)96非放射性細胞毒性アッセイキット(プロメガ社(Promega Co.)、ウィスコンシン州(WI)、マディソン(Madison))を使用し、メーカーの指示に従って分析した。腫瘍細胞の溶解率を以下のように計算した。%細胞毒性=実験的放出−エフェクター自然放出−標的自然放出)/(標的最大放出−標的自然放出)×100。抗TF抗体TF260、TF278、およびTF392のADCC結果は、ドナー6−7人からの3通のサンプルの平均溶解率±S.D.で表され、これは図4A−4Cで確認されうる。ADCCアッセイのために、TF陽性SW900およびTF陰性A549肺腫瘍細胞を標的として使用した。無関係のヒトIgG1を陰性抗体対照として使用した。図4A−4Cは、抗TF抗体TF260、TF278、およびTF392が、陰性抗体対照(hIgG)と比べTF陽性細胞でインキュベートすると%細胞毒性を増大させることを明らかに示す。
【0196】
すべての文書、例えば、本明細書で引用された科学的刊行物、特許、および特許公報は、各個別の文書が具体的かつ個別にその全体が参照することにより組込まれることが示されたと同程度にその全体が参照することにより本明細書に組込まれる。引用された文書が文書の第1ページのみを示す場合、文書の残りのページを含めて、文書の全体が意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0197】
【図1】Ni−アガロースカラムを用いた可溶性ヒト組織因子(hTF)の精製を示す図である。レーン1は分子量マーカーを含む。レーン2は予備精製であり、レーン3−4はフロースルーおよび洗浄試料である。レーン5−9はイミダゾールグラディエントで溶出された画分である。矢印は、可溶性hTFを示す。レーン8におけるようにタンパク質バンドを含む画分11−14をプールし、さらにゲルろ過クロマトグラフィーを用いて精製した。レーン9におけるようにタンパク質バンドを含む画分15−26をプールし、免疫に使用した。
【図2】ゲルろ過クロマトグラフィーを用いたhTFの精製を示す図である。レーン1は分子量マーカーを含む。レーン2−12はゲルろ過カラムから溶出された画分である。レーン6〜12におけるようにタンパク質バンドを有する画分をプールした。両方のバンド(矢印で示した)は、ウェスタン−ブロット分析で示されているように可溶性hTFである。
【図3A】選択されたhTF安定細胞クローンのFACS分析を示す図である。FACS分析は、市販の抗TF抗体(10μg/ml、カルビオケム(Calbiochem)、カリフォルニア州(CA)、カタログ番号612161)を一次抗体として、かつFITC標識ヤギ抗マウスIgG(1:50希釈、サザンバイオテクノロジー(Southern Biotechnology)、アラバマ州(AL))を二次抗体として用いて行った。抗体染色細胞の蛍光強度をフローサイトメーター(FACScan、ベクトンディッキンソン(Becton Dickinson)、ニュージャージー州(NJ))で測定し、セルクエスト(Cell Quest)ソフトウェア(ベクトンディッキンソン(Becton Dickinson)、ニュージャージー州(NJ))を用いて分析した。図3A。非トランスフェクトCHO細胞。図3B。代表的な安定クローン#TF34。図3C。代表的な安定クローン#TF48。
【図3B】選択されたhTF安定細胞クローンのFACS分析を示す図である。FACS分析は、市販の抗TF抗体(10μg/ml、カルビオケム(Calbiochem)、カリフォルニア州(CA)、カタログ番号612161)を一次抗体として、かつFITC標識ヤギ抗マウスIgG(1:50希釈、サザンバイオテクノロジー(Southern Biotechnology)、アラバマ州(AL))を二次抗体として用いて行った。抗体染色細胞の蛍光強度をフローサイトメーター(FACScan、ベクトンディッキンソン(Becton Dickinson)、ニュージャージー州(NJ))で測定し、セルクエスト(Cell Quest)ソフトウェア(ベクトンディッキンソン(Becton Dickinson)、ニュージャージー州(NJ))を用いて分析した。図3A。非トランスフェクトCHO細胞。図3B。代表的な安定クローン#TF34。図3C。代表的な安定クローン#TF48。
【図3C】選択されたhTF安定細胞クローンのFACS分析を示す図である。FACS分析は、市販の抗TF抗体(10μg/ml、カルビオケム(Calbiochem)、カリフォルニア州(CA)、カタログ番号612161)を一次抗体として、かつFITC標識ヤギ抗マウスIgG(1:50希釈、サザンバイオテクノロジー(Southern Biotechnology)、アラバマ州(AL))を二次抗体として用いて行った。抗体染色細胞の蛍光強度をフローサイトメーター(FACScan、ベクトンディッキンソン(Becton Dickinson)、ニュージャージー州(NJ))で測定し、セルクエスト(Cell Quest)ソフトウェア(ベクトンディッキンソン(Becton Dickinson)、ニュージャージー州(NJ))を用いて分析した。図3A。非トランスフェクトCHO細胞。図3B。代表的な安定クローン#TF34。図3C。代表的な安定クローン#TF48。
【図4A】ヒトキメラ抗TF抗体TF260、TF278、およびTF392を用いるADCCアッセイ。TF陽性SW900およびTF陰性A549肺腫瘍細胞を標的として使用した。無関係のヒトIgG1を陰性対照抗体として使用した。
【図4B】ヒトキメラ抗TF抗体TF260、TF278、およびTF392を用いるADCCアッセイ。TF陽性SW900およびTF陰性A549肺腫瘍細胞を標的として使用した。無関係のヒトIgG1を陰性対照抗体として使用した。
【図4C】ヒトキメラ抗TF抗体TF260、TF278、およびTF392を用いるADCCアッセイ。TF陽性SW900およびTF陰性A549肺腫瘍細胞を標的として使用した。無関係のヒトIgG1を陰性対照抗体として使用した。
【図5】32アミノ酸N末端リーダー配列および9アミノ酸C末端RGS−His6タグ配列を有する完全長ヒト組織因子のヌクレオチド(配列番号:1)およびアミノ酸(配列番号:2)配列。
【図6】32アミノ酸N末端リーダー配列および9アミノ酸C末端RGS−His6タグ配列を有するヒト組織因子の細胞外ドメインのヌクレオチド(配列番号:3)およびアミノ酸(配列番号:4)配列。
【図7A】抗体TF260。図7A。TF260VH(TF260VH/PUC18)のヌクレオチド(配列番号:5)およびアミノ酸(配列番号:6)配列。図7B。TF260VL(TF260VL/PUC18)のヌクレオチド(配列番号:7)およびアミノ酸(配列番号:8)配列。
【図7B】抗体TF260。図7A。TF260VH(TF260VH/PUC18)のヌクレオチド(配列番号:5)およびアミノ酸(配列番号:6)配列。図7B。TF260VL(TF260VL/PUC18)のヌクレオチド(配列番号:7)およびアミノ酸(配列番号:8)配列。
【図8A】抗体TF196。図8A。TF196VH(TF196VH/PUC18)のヌクレオチド(配列番号:9)およびアミノ酸(配列番号:10)配列。図8B。TF196VL(TF196VH/PUC18)のヌクレオチド(配列番号:11)およびアミノ酸(配列番号:12)配列。
【図8B】抗体TF196。図8A。TF196VH(TF196VH/PUC18)のヌクレオチド(配列番号:9)およびアミノ酸(配列番号:10)配列。図8B。TF196VL(TF196VH/PUC18)のヌクレオチド(配列番号:11)およびアミノ酸(配列番号:12)配列。
【図9A】抗体TF278。図9A。TF278VH(TF278VHs−PUC18)のヌクレオチド(配列番号:18)およびアミノ酸(配列番号:19)配列。図9B。TF278VL(TF278VLs−PUC18)のヌクレオチド(配列番号:20)およびアミノ酸(配列番号:21)配列。
【図9B】抗体TF278。図9A。TF278VH(TF278VHs−PUC18)のヌクレオチド(配列番号:18)およびアミノ酸(配列番号:19)配列。図9B。TF278VL(TF278VLs−PUC18)のヌクレオチド(配列番号:20)およびアミノ酸(配列番号:21)配列。
【図10A】抗体TF277。図10A。TF277VHのヌクレオチド(配列番号:22)およびアミノ酸(配列番号:23)配列。図10B。TF277VLのヌクレオチド(配列番号:24)およびアミノ酸(配列番号:25)配列。
【図10B】抗体TF277。図10A。TF277VHのヌクレオチド(配列番号:22)およびアミノ酸(配列番号:23)配列。図10B。TF277VLのヌクレオチド(配列番号:24)およびアミノ酸(配列番号:25)配列。
【図11】抗体TF392。TF392VH(TF392VHs−PUC18)のヌクレオチド(配列番号:26)およびアミノ酸(配列番号:27)配列。TF392VLのヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、TF260VLのヌクレオチド(配列番号:7)およびアミノ酸(配列番号:8)配列と同じである。
【図12A】抗体TF9。図12A。TF9VH(TF9VHs−PUC18)のヌクレオチド(配列番号:28)およびアミノ酸(配列番号:29)配列。図12B。TF9VL(TF9VL−PUC18)のヌクレオチド(配列番号:30)およびアミノ酸(配列番号:31)配列。
【図12B】抗体TF9。図12A。TF9VH(TF9VHs−PUC18)のヌクレオチド(配列番号:28)およびアミノ酸(配列番号:29)配列。図12B。TF9VL(TF9VL−PUC18)のヌクレオチド(配列番号:30)およびアミノ酸(配列番号:31)配列。 注:図7A−12Bにおいて、下線を引いたアミノ酸残基は、抗体TF260、TF196、TF278、TF277、TF392、およびTF9のそれぞれVHまたはVL領域のCDR領域を特定する。 注:57ヌクレオチド(19アミノ酸)配列シグナルペプチド:ATG GCT TGG GTG TGG ACC TTG CTA TTC CTG ATG GCA GCT M A W V W T L L F L M A AGCC CAA AGT GCC CAA GCA(配列番号:32) A Q S A Q A (配列番号: 33)をTF260、TF196、TF278、TF277、TF392のVHおよびVL、またはTF9のVHを含有するベクターの作成において使用した。60ヌクレオチド(20アミノ酸)配列シグナルペプチド:ATG GAA TCA CAG ACT CAG GTC TTC CTC TCC CTG CTG CTC M E S Q T Q V F L S L L LTGG ATA TCT GGT ACC TGT GGG (配列番号:34) W I S G T C G (配列番号:35)をTF9のVLを含有するベクターの構成において使用した。
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は、正常な組織因子介在血液凝固を阻害することなく組織因子に結合能がある抗体、およびその製造方法、ならびに癌の治療を含むその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術
組織因子(TF)は、第VIIa因子とともにインビボで血液凝固を開始する細胞結合成分である。TFは、219アミノ酸残基細胞外領域、23アミノ酸残基膜貫通領域、および21アミノ酸残基細胞質領域を有する膜貫通糖タンパク質である。TFの細胞外領域は2つのフィブロネクチンIII様ドメイン、およびクラスIIサイトカインとインターフェロン受容体の特徴を示すジスルフィド架橋の分布を有する。TFの細胞質領域は短いが、リン酸化されうる少なくとも1つのセリン残基を含有する。
【0003】
組織因子は、その天然リガンド−第VIIa因子とともに密な複合体(Kd〜pmol)を形成する。複合体においては、VIIaは組織因子を包み込み(バナー(Banner),D.W.ら、Nature380、p.41-46(1996年))、かつ組織因子表面との広範囲の領域の接触を形成する。
【0004】
癌を有する患者は、血栓塞栓性障害の予想発生率よりもはるかに高い発生率を示し、これは一般的にトルソー症候群と呼ばれる。トルソー症候群と一般的に関係した多くの腫瘍型、例えば肺癌、膵臓癌、乳癌、結腸癌、および胃癌は、TF陽性に染色する(フー(Hu),T.ら、Oncol.Res.6、p.321-327(1994年)、カランダー(Callander),N.S.ら、Cancer 70、p.1194-201(1992年))。TFの異常に高い発現は臨床的には、結腸直腸癌(シゲノリ(Shigernori),C.ら、Thromb.Haemost.80、p.894-898(1998年)、セト(Seto),S.ら、Cancer 88、p.295-301(2000年))、および非小細胞肺癌(サワダ(Sawada),M.ら、Br.J.Cancer 79、p.472-477(1999年))を含む多くの腫瘍の不十分な分化と関係があることが示されている。遺伝子発現の分子分析は、TFが乳癌細胞において異なった形で発現されることを示す(キルシュマン(Kirschmann),D.A.ら、Breast Cancer Res.Treat.55、p.127-136(1999年)、シュビルツケ(Schwirzke),M.ら、Anticancer Res.19、p.1801-1814(1999年))。
【0005】
腫瘍組織においては、TFは腫瘍細胞の表面だけではなく腫瘍関連血管内皮細胞でも発現される。TFは胎児血管発達において重要な役割を果たすことが示されている(カルメリート(Carmeliet),P.ら、Nature 383、p.73-75(1996年))。TFは通常、内皮では発現されない。しかし、乳癌(コントリーノ(Contrino),J.ら、Nat.Med.2、p.209-215(1996年)、ショウジ(Shoji),M.ら、Am.J.Pathol.152、p.399-411(1998年))、下垂体腺腫(ニシ(Nishi),T.ら、Cancer 86、p.1354-1361(1999年))、および肺癌(ショウジ(Shoji),M.ら、Am.J.Pathol.152、p.399-411(1998年)、クーマギ(Koomagi),R.、およびボルム(Volm),M.、Int.J Cancer 79、p.19-22(1998年))における腫瘍関連血管内皮細胞はTFを発現することが示されている。腫瘍細胞および腫瘍関連血管内皮細胞によるTFの発現は、腫瘍分泌VEGFおよびTNFによって誘発されることが示されている(ビアハウス(Bierhaus),A.ら、J.Biol.Chem.270、p.26419-26432(1995年)、ツッカー(Zucker),S.ら、Int.J.Cancer 75、p.780-786(1998年)、シェン(Shen),B.Q.ら、J.Biol.Chem.276、p.5281-5286(2001年))。
【0006】
正常な組織においては、TFは皮膚など密な内皮および組織関門により血液タンパク質から分離された細胞においてのみ発現され、TFは通常、血液タンパク質および抗体に容易にアクセス可能ではない。しかし、腫瘍組織においては、腫瘍関連血管内皮細胞のTFは血液タンパク質にさらされる。同時に、腫瘍TFは漏れやすい腫瘍血管系のためアクセス可能でもある。腫瘍細胞は、浸潤過程において最も役割を果たしやすいマトリクスメタロプロテアーゼを分泌し、漏れの原因となりうる。
【0007】
TF−VIIa相互作用部位に結合する抗体はTF−VIIa相互作用を阻害し、したがって血液凝固を阻害または阻止しうる。しかし、大量のその抗体が腫瘍治療に使用されると、患者における有効な出血制御が障害されうる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明の概要
本発明は、その抗体が正常血漿対照と比べると組織因子(TF)介在血液凝固を阻害することがない、ヒト組織因子(hTF)に結合能がある単離された抗体に関する。本発明は、その抗体が正常血漿対照と比べるとTF介在血液凝固を阻害することがなく、かつその抗体がFc介在機序を開始しうる、hTFに結合能がある単離された抗体にも関する。この抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、ヒト化抗体、修飾抗体、その重鎖もしくは軽鎖可変領域、またはFab発現ライブラリーの抗体産物でありうる。本発明はさらに、かかる抗体を産生するハイブリドーマ、およびかかる抗体をコードする核酸分子に関する。
【0009】
本発明はさらに、抗体の重鎖または軽鎖可変領域を含む免疫グロブリン分子に関する。
【0010】
本発明はさらに、hTFへの抗体の結合を阻害することが可能な抗抗体に関する。
【0011】
本発明はさらに、本発明のモノクローナル抗体を生成する方法に関し、この方法は、(a)哺乳動物にhTFの精製細胞外ドメインを含むポリペプチドで免疫するステップと、(b)免疫した哺乳動物のリンパ節から細胞懸濁液を調製するステップと、(c)ステップ(b)の細胞懸濁液からの細胞を骨髄腫細胞と融合させるステップと、(d)(c)における融合から生成されたハイブリドーマからクローンを同定するステップとを含み、クローンはhTFに結合能がある抗体を産生し、正常血漿対照と比べTF介在血液凝固を阻害することがなく、かつ場合により抗体がFc介在機序を開始しうる。
【0012】
本発明はさらに、本発明の抗体の治療上有効量および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。
【0013】
本発明は、患者における癌を治療する方法にも関し、この方法は本発明の抗体の治療上有効量を患者に投与するステップを含む。抗体は、細胞毒性剤または放射性核種に結合されうる。
【0014】
本発明はさらに、本発明の抗体をコードするヌクレオチド配列を有する単離されたポリヌクレオチドに関する。本発明はさらに、本発明の抗体、またはその抗体断片とアミノ酸配列において少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有する単離されたポリヌクレオチドに関する。一部の実施形態においては、かかるポリペプチドは本発明の抗体の免疫特異性を有する。本発明は、単離されたポリヌクレオチドを含むベクター、およびベクターを含む宿主細胞にも関する。
【0015】
本発明はさらに、本発明の抗体の治療上有効量を含む医薬組成物を含むキットに関する。一部の実施形態においては、このキットはさらに、癌を治療するための医薬組成物の使用に関する情報を提供する印刷物、または癌を治療するための医薬組成物の使用に関する情報を提供するあらかじめ録音されたメディアデバイス、またはプランナーを含む。
【0016】
本発明は、本発明の抗体の治療上有効量を含む医薬組成物をそれを必要とする患者に送達する方法にも関し、この方法は、(a)医薬組成物を処方することが許されている医師の身元をコンピュータ可読媒体に登録するステップと、(b)患者に医薬組成物に付随するリスクに関するカウンセリング情報を提供するステップと、(c)付随するリスクにもかかわらず医薬組成物が投与される患者のインフォームドコンセントを得るステップと、(d)インフォームドコンセントを得た後に患者をコンピュータ可読媒体に登録するステップ、および(e)患者の医薬組成物へのアクセスを可能にするステップとを含む。
【0017】
本発明は、医薬組成物の使用に関して消費者を教育する方法にも関し、この方法は、医薬組成物を販売時点で消費者情報とともに分配するステップを含む。
【0018】
本発明は、癌を検出する方法にも関し、この方法は、検出可能剤に結合した本発明の抗体を試料または対象に提供するステップ、かつ癌細胞に結合した検出可能剤を検出するステップを含む。
【0019】
本発明はさらに、本発明の抗体の治療上有効量を含む医薬組成物を識別し、および薬物と同等物を商品化する方法であって、この方法は、(a)ヒト組織因子に結合能がある抗体を単離するステップであって、この抗体は正常血漿対照と比べ組織因子介在血液凝固を阻害することがなく、かつFc介在機序を開始しうるステップと、(b)(a)を反復し、治療上有効であると判明しうる複数の候補抗体を得るステップと、(c)1つのかかる候補抗体について、ヒト以外の動物に投与される場合にその非毒性を証明するステップと、(d)監視下での臨床試験を行い、1つのかかる候補抗体の非毒性および有効性を証明するステップと、(e)規制機関の承認を確保し、癌を治療するための1つのかかる候補抗体を分配するステップ、および(f)活性剤として候補抗体を含む医薬組成物を製造するステップとを含む方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
好ましい実施形態の詳細な説明
正常な組織においては、TFは皮膚など密な内皮および組織関門により血液タンパク質から分離された細胞においてのみ発現される。TFは通常、抗体を含む血液タンパク質にアクセス可能ではないが、それはTHが通常、内皮内血管など血液と直接接触している細胞の表面では発現されないためである。しかし、TFは、TFが血液タンパク質にさらされている腫瘍関連血管内皮細胞を含む多くの型の腫瘍細胞によって発現される。TFは胎児血管発達に関与しており、腫瘍転移と関係がある。したがって、TFは潜在的な腫瘍治療標的であるとみなされている。
【0021】
抗体
本発明は、ヒトTF(hTF)に結合能がある単離された抗体に関し、この抗体は正常血漿対照と比べTF介在血液凝固を阻害することがない。本発明は、hTFに結合能がある単離された抗体にも関し、この抗体は正常血漿対照と比べTF介在血液凝固を阻害することがなく、かつこの抗体は1つもしくはそれ以上のFc介在機序を開始しうる。本発明の抗体は正常なTF介在血液凝固を阻害することがないため、正常な血漿凝固は本発明の抗体で治療された患者において影響されない。
【0022】
本明細書で使用される「単離された」は、その最初の環境(例えば、それが自然発生している場合には自然環境)から除去された物質を指し、したがって、その自然状態から「人間によって」変更される。
【0023】
基本的な抗体構造単位は、各対が1つの「軽」鎖(約25kDa)および1つの「重」鎖(約50−70kDa)を有する、2つの同一の対のポリペプチド鎖から成る四量体を含むことが知られている。各鎖のアミノ末端部は、主に抗原認識に関与する約100〜110もしくはそれ以上のアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシル末端部は、主にFc介在機序に関与する一定の領域を規定する。ヒト軽鎖は、カッパおよびラムダ軽鎖として分類されている。重鎖はミュー、デルタ、ガンマ、アルファ、またはイプシロンとして分類されており、かつ抗体のアイソタイプをそれぞれIgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEとして規定する。一般に、Fundamental Immunology、第7章(ポール(Paul),W.編、第2版、レイブンプレス(Raven Press)、ニューヨーク(N.Y.)(1989年))を参照。各軽/重鎖対の可変領域は、抗原結合部位を形成する。したがって、無傷のIgG抗体は2つの結合部位を有する。二官能性または二重特異性抗体以外で、2つの結合部位は同じである。
【0024】
可変領域はすべて、3つの超可変領域によって一緒に結合された、相補性決定領域すなわちCDRとも呼ばれる比較的保存されたフレームワーク領域(FR)という同じ一般構造を示す。各対の重鎖および軽鎖からのCDRはフレームワーク領域によって調整され、特異的エピトープへの結合を可能にする。N末端からC末端まで、両方の可変領域の軽鎖および重鎖はドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4を含む。各ドメインへのアミノ酸の割当は、カバット(Kabat)、免疫学的関心のタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health、メリーランド州(Md)、ベゼスダ(Bethesda)(1987年および1991年))、コーチア(Chothia)とレスク(Lesk)、J.Mol.Biol.196、p.901-917(1987年)、またはコーチア(Chothia)ら、Nature 342、p.878-883(1989年)の定義に従っている。
【0025】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、無傷の免疫グロブリン分子、および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分または断片、すなわち、免疫特異的に抗原に結合する抗原結合部位を含有する分子を指すように意図されている。本発明の抗体は、hTFへ特異的に結合することができ、正常血漿対照と比べTF介在血液凝固を阻害することがない。一部の実施形態においては、本発明の抗体はhTFへ特異的に結合することができ、正常血漿対照と比べTF介在血液凝固を阻害することがなく、かつ抗体が1つもしくはそれ以上のFc介在機序を開始しうる。
【0026】
本発明の抗体としては、無傷のモノクローナル抗体、多特異的抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、およびキメラ抗体、修飾抗体、一本鎖抗体、一本鎖Fvs(scFv)、ジスルフィド結合Fvs(sdFv)、Fab断片、F(ab’)断片、F(ab’)2断片、Fv断片、Fab発現ライブラリーによって生成される断片、VLまたはVHドメインのいずれかを含む断片、抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本発明の抗体に対する抗Id抗体を含む)、細胞内で作られた抗体(すなわち、細胞内発現抗体)、および抗原結合抗体断片が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の免疫グロブリン分子は、免疫グロブリン分子のすべての型(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)、またはサブクラスでありうる。一部の実施形態においては、免疫グロブリンはIgG1アイソタイプである。他の実施形態においては、免疫グロブリンはIgG2アイソタイプである。さらに他の実施形態においては、免疫グロブリンはIgG4アイソタイプである。免疫グロブリンは、重鎖と軽鎖の両方を有しうる。一連のIgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY重鎖は、カッパまたはラムダ形態の軽鎖と対になりうる。
【0027】
本発明の抗体は、単独もしくは以下の全部または一部と結合して可変領域を含有し得る。すなわち、ヒンジ領域、CH1、CH2、CH3、および/またはFcドメイン。本発明の抗体は、鳥および哺乳動物を含む任意の動物由来でありうる。一部の実施形態においては、抗体はヒト抗体、マウス抗体、ラット抗体、ロバ抗体、ヒツジ抗体、ウサギ抗体、ヤギ抗体、モルモット抗体、ラクダ抗体、ウマ抗体、またはニワトリ抗体である。本明細書で使用される「ヒト」抗体は、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体を含み、かつヒト免疫グロブリンライブラリーから、または1つもしくはそれ以上のヒト免疫グロブリン遺伝子導入動物から単離された抗体を含む。したがって、動物由来の本発明の抗体はヒト組織因子へ結合することができ、かつ正常血漿対照と比べるとTF介在血液凝固を阻害することがないと理解されるべきである。かかる抗体は1つもしくはそれ以上のFc介在機序を開始しうる。
【0028】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同質の抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を含む個々の抗体は、少量で存在しうる可能な自然発生突然変異を除き同一である。通常、異なる決定因子(エピトープ)に対する異なる抗体を含む従来の(ポリクローナル)抗体調製とは対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定因子に対するものであり、したがってきわめて特異的である。その特異的に加えて、モノクローナル抗体は、他の免疫グロブリンによって汚染されていないハイブリドーマ培養物によって合成されるため有利である。「モノクローナル」という修飾語句は、実質的に同質の抗体の集団から得られる抗体の特徴を示し、かつ特定の方法によって抗体の生成を必要とするとみなされていない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、コーラー(Kohler)とミルスタイン(Milstein)、Nature 256、p.495(1975年)によって最初に記載されたハイブリドーマ方法によって製造され、あるいは、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号明細書(カビリー(Cabilly)ら)によって製造されうる。
【0029】
「キメラ」抗体(免疫グロブリン)は、特定の種由来の抗体における対応する配列と同一または同質であり、または特定の抗体クラスまたはサブクラスに属すると同時に、鎖の残りは別の種由来の抗体における対応する配列と同一または同質であり、または別の抗体クラスまたはサブクラス、およびそれらが所望の生物活性を示す限りかかる抗体の断片に属する重鎖および/または軽鎖の一部を有する抗体を指す(米国特許第4,816,567号明細書(カビリー(Cabilly)ら)、モリソン(Morrison)ら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA 81、p.6851-6855(1984年を参照))。
【0030】
ヒト以外(例えば、マウス)の抗体の「ヒト化」形態は、ヒト以外の免疫グロブリン由来の最小の配列を含有するキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはその断片(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、または抗体の他の抗原結合サブ配列)である。大部分、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)からの残基がヒト以外の種(ドナー抗体)、例えば、所望の特異性および親和性を有するマウス、ラット、またはウサギのCDRからの残基によって置換されるヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は対応するヒト以外の残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体においてもまたは持ち込まれたCDRもしくはフレームワーク配列においても見られない残基を含有し得る。これらの修飾は、さらに抗体性能を高め、かつ最適化するためになされる。一般に、ヒト化抗体は、可変ドメインの少なくとも1つ、かつ一般的には2つの実質的にすべてを含むが、ここでCDR領域のすべてまたは実質的にすべてはヒト以外の免疫グロブリンのものに対応し、かつFR領域のすべてまたは実質的にすべてはヒト免疫グロブリン配列にものである。ヒト化抗体は、場合により、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、一般的にはヒト免疫グロブリンのものも含む。詳細については、ジョーンズ(Jones)ら、Nature 321、p.522-525(1986年)、ライヒマン(Reichmann)ら、Nature 332、p.323-329(1988年)、およびプレスタ(Presta)、Curr.Op.Struct.Biol.2、p.593-596(1992年)を参照。
【0031】
「修飾抗体」という用語は、抗体依存細胞細胞毒性(ADCC)および/または補体依存細胞毒性(CDC)(補体介在細胞死滅としても周知)の介在時に抗体の有効性を強化するために、エフェクター機能に関して修飾されている抗体を指す。例えば、システイン残基はFc領域に導入され、それによってこの領域での鎖間ジスルフィド結合形成を可能にしうる。したがって、生成されるホモ二量体抗体は、内在化能力を改善し、かつ/またはADCCおよびCDCを増大させうる。キャロン(Caron)ら、J.Exp.Med.176、p.1191-1195(1992年)、およびショープス(Shopes),B.、J.Immunol.148、p.2918-2922(1992年)を参照。抗腫瘍活性が強化されたホモ二量体は、ウォルフ(Wolff)ら、Cancer Research 53、p.2560-2565(1993年)に記載されているように、ヘテロ二官能性架橋剤を用いて調製もされうる。あるいは、抗体は、二重Fc領域を有し、それによって補体介在溶解およびADCC能力を強化しうるように修飾されうる。スティーブンソン(Stevenson)ら、Anti-Cancer Drug Design 3、p.219-230(1989年)を参照。さらに、抗体を改変し、結果としてADCC活性が強化される糖化パターンを変化させた糖型を生成しうる。米国特許第6,602,684号明細書を参照。
【0032】
二重特異性または二官能性抗体は、2つの異なる重/軽鎖対および2つの異なる結合部位を有する人工的なハイブリッド抗体である。二重特異性抗体は、ハイブリドーマの融合またはF(ab’)断片の結合を含むさまざまな方法によって生成されうる。例えば、ソングシビライ(Songsivilai)とラッハマン(Lachmann)、Clin.Exp.Immunol.79、p.315-321(1990年)、コステルニー(Kostelny)ら、J.Immunol.148、p.1547-1553(1992年)を参照。さらに、二重特異性抗体は「二重特異性抗体(diabodies)」(ホリガー(Holliger)ら、PNAS USA 90、p.6444-6448(1993年))、または「ヤヌシンス(Janusins)」(トラウネッカー(Traunecker)ら、EMBO J.10:p.3655-3659(1991年)およびトラウネッカー(Traunecker)ら、Int.J.Cancer Suppl.7、p.51-52(1992年))として形成されうる。
【0033】
本発明は、本発明の抗体の重鎖または軽鎖可変領域を含む免疫グロブリン分子にも関する。本発明はさらに、hTFに対する本発明の抗体の結合を阻害することが可能な単離された抗体に関し、前記抗体は正常血漿対照と比べTF介在血液凝固を阻害することがない。
【0034】
本発明の抗体は、その交差反応性の観点からも記載または特定されうる。一部の実施形態においては、本発明の抗体は、TFポリペプチド(例えば、ヒトTF(配列番号:2))、またはTFポリペプチドの断片に少なくとも約95%、少なくとも約90%、少なくとも約85%、少なくとも約80%、少なくとも約75%、少なくとも約70%、少なくとも約65%、少なくとも約60%、少なくとも約55%、少なくとも約50%、少なくとも約45%、または少なくとも約40%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドに結合する。一部の実施形態においては、本発明の抗体は、hTFのマウス、サル、ラット、および/またはウサギ同族体、およびその対応するエピトープと交差反応する。他の実施形態においては、上記の交差反応性は、任意の単一の特異的抗原もしくは免疫原性ポリペプチド、または2、3、4、5、もしくはそれ以上の特異的抗原および/または免疫原性ポリペプチドの組合せに対してである。
【0035】
技術上周知のように、2つのポリペプチド間の「配列同一性」は、1つのポリペプチドのアミノ酸配列を第2のポリペプチドの配列と比較することによって決定されている。本明細書で論じられる場合、特定のポリペプチドが別のポリペプチドと少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%同一であるかどうかは、技術上周知の方法およびコンピュータプログラム/ソフトウェアを用いて決定されうる。例えば、BESTFITプログラム(ウィスコンシン(Wisconsin)配列分析パッケージ、ユニックス用バージョン8、ジェネティクス コンピュータ グループ(Genetics Computer Group)、ユニバーシティーリサーチパーク(University Research Park)、575サイエンス ドライブ(Science Drive)、ウィスコンシン州(WI)53711、マディソン(Madison))などであるが、これらに限定されない。BESTFITでは、スミス(Smith)とウォーターマン(Waterman)のローカルホモロジーアルゴリズム、Advances in Applied Mathematics 2、p.482-489(1981年)を使用し、2つの配列間のホモロジーの最良のセグメントを見出す。BESTFITまたは他の配列調整プログラムを用いて、特定の配列が、例えば、本発明による基準配列と95%同一であるかどうかを判定する場合、パラメータは、もちろん、同一性の割合が基準ポリペプチド配列の完全長にわたって計算され、かつ基準配列におけるアミノ酸の総数の5%までのホモロジーのギャップが許されるように設定されている。
【0036】
本発明の抗体は、hTFポリペプチドまたはhTFのポリペプチド断片に免疫特異的に結合しうる。一部の実施形態においては、本発明の抗体はhTFに免疫特異的に結合する。他の実施形態においては、本発明の抗体はhTFの細胞外ドメインに免疫特異的に結合する。本明細書で使用される「hTFの細胞外ドメイン」は、細胞の外側表面上に局在されているhTFの219アミノ酸残基部分を指すよう意図されている(例えば、32アミノ酸N末端リーダー配列および9アミノ酸C末端RGS−His6タグ配列を有するヒト組織因子の細胞外ドメインのヌクレオチド(配列番号:3)およびアミノ酸(配列番号:4)配列を示す図6を参照)。
【0037】
一部の実施形態においては、本発明の抗体は優先的にhTFに結合する。他の実施形態においては、本発明の抗体は免疫特異的にhTFに結合し、かつ他の抗原と交差反応することがない。本発明の抗体は、正常血漿対照と比べTF介在血液凝固を阻害することがない。他の実施形態においては、本発明の抗体は1つもしくはそれ以上のFc介在機序を開始する。
【0038】
「抗原結合抗体断片」という用語は、本発明の抗体の対応する完全長または天然ポリペプチド配列と比べてポリペプチド配列の一部または部分である分子(例えば、ポリペプチド)を指すよう意図されている。ポリペプチド配列の一部または部分は、フルサイズの本発明の抗体の完全長または天然ポリペプチド配列の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%でありうるが、完全長抗体の少なくともある程度の結合特異性を保持し、かつ正常血漿対照と比べTF介在血液凝固を阻害することがなく、場合によりFc介在機序を開始する。
【0039】
本明細書に記載された抗体分子(例えば、VHドメインおよび/またはVLドメイン)の抗原結合抗体断片(誘導体を含む)としては、VHドメイン、VHCDR1、VHCDR2、VHCDR3、VLドメイン、VLCDR1、VLCDR2、またはVLCDR3を含めて、完全長抗体の少なくとも20、少なくとも40、少なくとも60、少なくとも80、少なくとも100、少なくとも120、少なくとも140、少なくとも160、もしくは160超のアミノ酸の断片(誘導体を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。結果として生じる抗体または抗原結合抗体断片は生物活性についてスクリーニングされ、所望の活性(例えば、hTFに結合する能力)を保持する断片を同定することができる。
【0040】
非限定的実施例を通じて、抗体は、第2の抗原に対する抗体の解離定数(KD)またはオフレート(Koff)より小さいKDまたはKoffを有するhTFタンパク質に結合する場合にはhTFに優先的に結合することが考えられうる。他の非限定的実施形態においては、抗体は、第2の抗原に対する抗体のKDまたはKoffより少なくとも一桁小さいKDまたはKoffを有するhTFタンパク質に結合する場合にはhTFに優先的に結合すると考えられうる。他の非限定的実施形態においては、抗体は、第2の抗原に対する抗体のKDまたはKoffより少なくとも二桁小さいKDまたはKoffを有するhTFに結合する場合にはhTFに優先的に結合すると考えられうる。
【0041】
本発明の抗体もそのhTFへの結合親和性に関して記載または特定されうる。一部の実施形態においては、結合親和性は、5×10-2M、10-2M、5×10-3M、10-3M、5×10-4M、または10-4Mより小さい、またはこれに等しい解離定数すなわちKDを有するものを含む。他の実施形態においては、親和性は、5×10-5M、10-5M、5×10-6M、10-6M、5×10-7M、107M、5×10-8Mまたは10-8Mよりも小さい、またはこれに等しい解離定数すなわちKDを有するものを含む。さらに他の実施形態においては、結合親和性は、5×10-9M、10-9M、5×10-10M、10-10M、5×10-11M、10-11M、5×10-12M、10-12M、5×10-13M、10-13M、5×l0-l4M、10-14M、5×l0-l5M、または10-15Mより小さい、またはこれに等しい解離定数すなわちKDを有するものを含む。
【0042】
一部の実施形態においては、本発明の抗体は、5×10-2秒-1、10-2秒-1、5×10-3秒-1、または10-3秒-1より小さい、またはこれに等しいオフレート(Koff)を有するhTFポリペプチドに結合しうる。他の実施形態においては、本発明の抗体は、5×10-4秒-1、10-4秒-1、5×10-5秒-1、または10-5秒-15×10-6秒-1、10-6秒-1、5×10-7秒-1または10-7秒-1より小さい、またはこれに等しいオフレート(Koff)を有するhTFポリペプチドまたはその断片に結合しうる。
【0043】
本発明の一部の実施形態においては、hTFに免疫特異的に結合する抗体は、本発明の細胞株を発現する抗TF抗体によって発現される重鎖のいずれか1つおよび/または本発明の細胞株を発現する抗TF抗体によって発現される軽鎖のいずれか1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドを含有し得る。本発明の他の実施形態においては、hTFに免疫特異的に結合する抗体は、本発明の細胞株を発現する抗TF抗体によって発現される重鎖のVHドメインのいずれか1つおよび/または本発明の細胞株を発現する抗TF抗体によって発現される軽鎖のVLドメインのいずれか1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドを含有し得る。さらに他の実施形態においては、本発明の抗体は、本発明の細胞株を発現する単一の抗TF抗体によって発現されるVHドメインおよびVLドメインのアミノ酸配列を含有し得る。他の実施形態においては、本発明の抗体は、本発明の細胞株を発現する2つの異なる抗TF抗体によって発現されるVHドメインおよびVLドメインのアミノ酸配列を含有し得る。hTFに免疫特異的に結合する本発明の細胞株を発現する抗TF抗体によって発現されるVHおよび/またはVLドメインの抗原結合抗体断片を含む、あるいはこれから成る分子も、これらのVHおよびVLドメイン、分子、および/または断片をコードする核酸分子のように、本発明によって包含される。
【0044】
本発明は、本明細書に記載されている抗体分子(例えば、VHドメインおよび/またはVLドメイン)の変形(誘導体を含む)を含む、あるいはこれから成るポリペプチドも提供し、このポリペプチドはhTFもしくはその断片または変異体に免疫特異的に結合する。「変異体」という用語は、対応する天然ポリペプチドまたはDNA配列と比べそのアミノ酸またはヌクレオチド配列において少なくとも1つもしくはそれ以上の差異を有する分子(例えば、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列)を指す。本発明のアミノ酸配列変異体は、本発明の抗TF抗体のアミノ酸配列と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する。実質的な変異体は、除去された天然配列において少なくとも1つのアミノ酸残基、および同じ位置でその場所において挿入された異なるアミノ酸を有するものである。置換は、分子において1つのみのアミノ酸が置換されているという単一であってもよく、または同じ分子において2つもしくはそれ以上のアミノ酸が置換されているという多重であってもよい。挿入変異体は、アミノ酸のα−カルボキシルまたはα−アミノ官能基のいずれかに結合されている天然アミノ酸配列における特定の位置でアミノ酸に直接隣接して挿入された1つもしくはそれ以上のアミノ酸を有するものである。欠失変異体は、天然アミノ酸配列から除去された1つもしくはそれ以上のアミノ酸を有するものである。通常、欠失変異体は分子の特定の領域において欠失された1つもしくは2つのアミノ酸を有する。例えば、結果としてアミノ酸置換が生じるコード核酸分子の部位指定変異導入またはPCR介在変異導入によることを含む、当業者に周知の標準技術を使用して本発明の抗体に変異を導入することができる。一部の実施形態においては、変異体(誘導体を含む)は、50未満のアミノ酸置換、40未満のアミノ酸置換、30未満のアミノ酸置換、25未満のアミノ酸置換、20未満のアミノ酸置換、15未満のアミノ酸置換、10未満のアミノ酸置換、5未満のアミノ酸置換、4未満のアミノ酸置換、3未満のアミノ酸置換、または2未満のアミノ酸置換を他の基準ポリペプチドに対して有する。一部の実施形態においては、変異体ポリペプチドは同じ免疫特異性を有し、または本発明のポリペプチドと同じエピトープに結合する。
【0045】
同様のアミノ酸を有するポリペプチド、もしくはその断片または変異体が同様の構造および同じ生物活性の多くを有しうることが技術上周知である。したがって、本発明はさらに、単離された一次抗体、またはその抗原結合断片に関し、以下よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含む二次抗体と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有する。すなわち、(a)ハイブリドーマ細胞株TF196(2003年5月15日寄託、ATCC寄託番号:PTA−5196)によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域、(b)ハイブリドーマ細胞株TF260(2003年5月15日寄託、ATCC寄託番号:PTA−5197)によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域、(c)ハイブリドーマ細胞株TF278(2003年12月3日寄託、ATCC寄託番号:PTA−5676)によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域、(d)ハイブリドーマ細胞株TF277(2003年12月3日寄託、ATCC寄託番号:PTA−5675)によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域、(e)ハイブリドーマ細胞株TF392(2003年12月3日寄託、ATCC寄託番号:PTA−5677)によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域、(f)ハイブリドーマ細胞株TF9(2003年12月3日寄託、ATCC寄託番号:PTA−5674)によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域、(g)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域、(h)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域、(i)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域、(j)ハイブリドーマ細胞株TF277によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域、(k)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域、(l)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域、(m)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域、(n)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域、(o)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域、(p)ハイブリドーマ細胞株TF277によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域、(q)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域、(r)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域、(s)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域、(t)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域、(u)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域、(v)ハイブリドーマ細胞株TF277によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域、(w)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域、(x)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域、(y)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域、(z)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域、(aa)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域、(bb)ハイブリドーマ細胞株TF277によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域、(cc)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域、(dd)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域、(ee)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域、(ff)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域、(gg)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域、(hh)ハイブリドーマ細胞株TF277によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域、(ii)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域、(jj)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域。一部の実施形態においては、一次抗体、またはその抗原結合断片は、同じ免疫特異性を有し、または二次抗体と同じエピトープに結合する。
【0046】
本発明は、単離された抗体、またはその抗原結合断片に関し、以下よりなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一のアミノ酸配列を有する。すなわち、(a)配列番号:6もしくは8のポリペプチド、またはATCC寄託番号:PTA−5252もしくはPTA−5253でそれぞれ提供されるcDNA配列によってコードされるポリペプチド(それぞれ、TF260VH/PUC18またはTF260VL/PUC18)、(b)配列番号6もしくは8のポリペプチドドメイン、またはATCC寄託番号:PTA−5252もしくはPTA−5253でそれぞれ提供されるcDNA配列によってコードされるポリペプチド(それぞれ、TF260VH/PUC18またはTF260VL/PUC18)、(c)配列番号6もしくは8のポリペプチドエピトープ、またはATCC寄託番号:PTA−5252もしくはPTA−5253でそれぞれ提供されるcDNA配列によってコードされるポリペプチド(それぞれ、TF260VH/PUC18またはTF260VL/PUC18)、(d)配列番号:6もしくは8の変異体であるポリペプチド、(e)配列番号6もしくは8の種同族体であるポリペプチド、(f)配列番号:10もしくは12のポリペプチド、またはATCC寄託番号:PTA−5250もしくはPTA−5251でそれぞれ包含されるcDNA配列によってコードされるポリペプチド(それぞれ、TF196VH/PUC18またはTF196VL/PUC18)、(g)配列番号:10もしくは12のポリペプチドドメイン、またはATCC寄託番号:PTA−5250もしくはPTA−5251でそれぞれ包含されるcDNA配列によってコードされるポリペプチド(それぞれ、TF196VH/PUC18またはTF196VL/PUC18)、(h)配列番号:10もしくは12のポリペプチドエピトープ、またはATCC寄託番号:PTA−5250もしくはPTA−5251でそれぞれ包含されるcDNA配列によってコードされるポリペプチド(それぞれ、TF196VH/PUC18またはTF196VL/PUC18)、(i)配列番号:10もしくは12の変異体であるポリペプチド、(j)配列番号:10もしくは12の種同族体であるポリペプチド、(k)配列番号:19もしくは21のポリペプチド、またはATCC寄託番号:PTA−5694もしくはPTA−5695でそれぞれ提供されるcDNA配列によってコードされるポリペプチド(それぞれ、TF278VHs/PUC18またはTF278VLs/PUC18)、(l)配列番号:19もしくは21のポリペプチドドメイン、またはATCC寄託番号:PTA−5694もしくはPTA−5695でそれぞれ提供されるcDNA配列によってコードされるポリペプチド(それぞれ、TF278VHs/PUC18またはTF278VLs/PUC18)、(m)配列番号:19もしくは21のポリペプチドエピトープ、またはATCC寄託番号:PTA−5694もしくはPTA−5695でそれぞれ提供されるcDNA配列によってコードされるポリペプチド(それぞれ、TF278VHs/PUC18またはTF278VLs/PUC18)、(n)配列番号:19もしくは21の変異体であるポリペプチド、(o)配列番号19もしくは21の種同族体であるポリペプチド、(p)配列番号:23もしくは25のポリペプチド、(q)配列番号:23もしくは25のポリペプチドドメイン、(r)配列番号:23もしくは25のポリペプチドエピトープ、(s)配列番号:23もしくは25の変異体であるポリペプチド、(t)配列番号:23もしくは25の種同族体であるポリペプチド、(u)配列番号:27のポリペプチド、またはATCC寄託番号:PTA−5696で提供されるcDNA配列によってコードされるポリペプチド(TF392VHs/PUC18)、(v)配列番号:27のポリペプチドドメイン、またはATCC寄託番号:PTA−5696で提供されるcDNA配列によってコードされるポリペプチド(TF392VHs/PUC18)、(w)配列番号:27のポリペプチドエピトープ、またはATCC寄託番号:PTA−5696で提供されるcDNA配列によってコードされるポリペプチド(TF392VHs/PUC18)、(x)配列番号:27の変異体であるポリペプチド、(y)配列番号:27の種同族体であるポリペプチド、(z)配列番号:29もしくは31のポリペプチド、またはATCC寄託番号:PTA−5692もしくはPTA−5693でそれぞれ提供されるcDNA配列によってコードされるポリペプチド(それぞれ、TF9VHs/PUC18またはTF9VL/PUC18)、(aa)配列番号:29もしくは31のポリペプチドドメイン、またはATCC寄託番号:PTA−5692もしくはPTA−5693でそれぞれ提供されるcDNA配列によってコードされるポリペプチド(それぞれ、TF9VHs/PUC18またはTF9VL/PUC18)、(bb)配列番号:29もしくは31のポリペプチドエピトープ、またはATCC寄託番号:PTA−5692もしくはPTA−5693でそれぞれ提供されるcDNA配列によってコードされるポリペプチド(それぞれ、TF9VHs/PUC18またはTF9VL/PUC18)、(cc)配列番号:29もしくは31の変異体であるポリペプチド、および(dd)配列番号:29もしくは31の種同族体であるポリペプチド。一部の実施形態においては、抗体、またはその抗原結合断片は同じ免疫特異性を有し、または配列番号:6、8、10、12、19、21、23、25、27、29、および31よりなる群から選択されるアミノ酸配列によってコードされるポリペプチドと同じエピトープに結合する。
【0047】
本発明は、本明細書に記載された抗体の1つもしくはそれ以上と同じ生物特性の1つもしくはそれ以上を有する抗体も包含する。「生物特性」によって、抗体のインビトロまたはインビボ活性または特性、例えば、正常血漿対照と比べTF介在血液凝固を阻害することなく、TF(例えば、細胞表面で発現されるhTF、または膜埋込みhTF)へ結合する能力などを意味するよう意図されている。場合により、本発明の抗体は、本明細書で特記される抗体の1つと同じエピトープへ結合しうる。かかるエピトープ結合は、技術上周知のアッセイを用いてルーチンに測定されうる。
【0048】
本発明は、ハイブリドーマ細胞株TF260によって生成されるモノクローナル抗体の、またはこれによって認識されるエピトープへの結合を競合する、結合特性を有するモノクローナル抗体にも関する。本発明は、ハイブリドーマ細胞株TF196によって生成されるモノクローナル抗体の、またはこれによって認識されるエピトープへの結合を競合する、結合特性を有するモノクローナル抗体にも関する。本発明は、ハイブリドーマ細胞株TF278によって生成されるモノクローナル抗体の、またはこれによって認識されるエピトープへの結合を競合する、結合特性を有するモノクローナル抗体にも関する。ハイブリドーマ細胞株TF277によって生成されるモノクローナル抗体の、またはこれによって認識されるエピトープへの結合を競合する、結合特性を有するモノクローナル抗体にも関する。ハイブリドーマ細胞株TF392によって生成されるモノクローナル抗体の、またはこれによって認識されるエピトープへの結合を競合する、結合特性を有するモノクローナル抗体にも関する。ハイブリドーマ細胞株TF9によって生成されるモノクローナル抗体の、またはこれによって認識されるエピトープへの結合を競合する、結合特性を有するモノクローナル抗体にも関する。本発明は、ハイブリドーマ細胞株TF260から得られる抗体にも関する。本発明は、ハイブリドーマ細胞株TF196から得られる抗体にも関する。本発明は、ハイブリドーマ細胞株TF278から得られる抗体にも関する。本発明は、ハイブリドーマ細胞株TF277から得られる抗体にも関する。本発明は、ハイブリドーマ細胞株TF392から得られる抗体にも関する。本発明は、ハイブリドーマ細胞株TF9から得られる抗体にも関する。本発明は、ハイブリドーマ細胞株TF260から生成される抗体と同じ免疫特異性を有し、またはこれと同じエピトープに結合する抗体を生成するハイブリドーマ細胞株にも関する。本発明は、ハイブリドーマ細胞株TF196から生成される抗体と同じ免疫特異性を有し、またはこれと同じエピトープに結合する抗体を生成するハイブリドーマ細胞株にも関する。本発明は、ハイブリドーマ細胞株TF278から生成される抗体と同じ免疫特異性を有し、またはこれと同じエピトープに結合する抗体を生成するハイブリドーマ細胞株にも関する。本発明は、ハイブリドーマ細胞株TF277から生成される抗体と同じ免疫特異性を有し、またはこれと同じエピトープに結合する抗体を生成するハイブリドーマ細胞株にも関する。本発明は、ハイブリドーマ細胞株TF392から生成される抗体と同じ免疫特異性を有し、またはこれと同じエピトープに結合する抗体を生成するハイブリドーマ細胞株にも関する。本発明は、ハイブリドーマ細胞株TF9から生成される抗体と同じ免疫特異性を有し、またはこれと同じエピトープに結合する抗体を生成するハイブリドーマ細胞株にも関する。本発明は、ハイブリドーマ細胞株TF260にも関する。本発明は、ハイブリドーマ細胞株TF196にも関する。本発明は、ハイブリドーマ細胞株TF278にも関する。本発明は、ハイブリドーマ細胞株TF277にも関する。本発明は、ハイブリドーマ細胞株TF392にも関する。本発明は、ハイブリドーマ細胞株TF9にも関する。本発明は、配列番号:6、8、10、12、19、21、23、25、27、29、または31のアミノ酸配列を含む抗体にも関する。アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)(ATCC)は、米国、20110−2209、バージニア州(VA)、マナッサス(Manassas)10801ユニバーシティブールバード(University Boulevard)にある。
【0049】
抗体を生成する方法
本発明の抗体は、抗体の合成のための技術上周知の任意の方法によって、例えば、化学合成によって、または組換え発現技術によって生成されうる。他の実施形態においては、多重部位でのマウスの迅速免疫(RIMMS)が使用されうる。例えば、キルパトリック(Kilpatrick),K.E.ら、Hybridoma 16、p.381-389(1997年)を参照。さらに他の実施形態においては、抗体を生成する方法としては、ハイブリドーマ技術、EBV形質転換、ゼノマウス(XenoMouse)(商標)技術(グリーン(Green)ら、Nature Genetics 7、p.13-21(1994年)参照、および本明細書で論じられた他の方法、ならびに以下で論じられる組換えDNA技術の使用によるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
本発明の抗体は技術上周知の適切な任意の方法によって生成されうる。目的とする抗原に対するポリクローナル抗体は技術上周知の種々の手段によって生成されうる。例えば、目的とするポリペプチドは、ウサギ、マウス、ラット等を含むが、これらに限定されない種々の宿主動物に投与され、抗原に特異的なポリクローナル抗体を含有する血清の産生を誘発しうる。種々のアジュバントを使用して、宿主種に応じて免疫応答を増大させることができ、これには、フロイント(完全および不完全)アジュバント、水酸化アルミニウムなどのミネラルゲル、リゾレシチン、プルロニック(pluronic)ポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油エマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノールなどの表面活性物質のほか、BCG(カルメットゲラン菌)およびコリネバクテリウムパルヴムなどの潜在的に有用なヒトアジュバントが挙げられるが、これらに限定されない。かかるアジュバントも技術上周知である。
【0051】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換え、およびファージディスプレイ技術、またはその組合せの使用を含む技術上周知の多種多様の技術を用いて調製されうる。例えば、モノクローナル抗体は、技術上周知であり、かつ、例えば、ハーロー(Harlow)ら、抗体:実験室マニュアル(Antibodies:A Laboratory Manual)収載、(コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、第2版(1988年))、ハマーリング(Hammerling)ら、モノクローナル抗体およびT細胞ハイブリドーマ(Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas)収載、エルゼビア(Elsevier)、ニューヨーク(1981年)、p.563-681に開示されているものを含むハイブリドーマ技術を用いて生成されうる。本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマ技術により生成される抗体に限定されない。「モノクローナル抗体」という用語は、真核、原核、またはファージクローンを含む単一クローン由来である抗体を指し、生成される方法を指すものではない。
【0052】
ハイブリドーマ技術を用いた特異的抗体の生成およびスクリーニング方法はルーチンかつ技術上周知である。非限定的実施例においては、マウスは目的とするポリペプチド、またはかかるペプチドを発現する細胞で免疫されうる。免疫応答が検出され、例えば、抗原に特異的な抗体がマウス血清で検出されると、マウス脾臓が摘出され、かつ脾細胞が単離される。次いで、脾細胞は周知の技術によって適切な骨髄腫細胞、例えば、マウス骨髄腫細胞(P3X63/Ag8.653、ATCC番号CRL−1580、バージニア州(VA)、マナッサス(Manassas)、SP2/0−Ag14、ATCC番号CRL−1581、バージニア州(VA)、マナッサス(Manassas)、P3/NSI/1−Ag4−1(NS−1)、ATCC番号TIB−18、バージニア州(VA)、マナッサス(Manassas))に融合される。ハイブリドーマが選択され、制限希釈によってクローン化される。次いで、ハイブリドーマクローンは、目的とするポリペプチドに結合可能な抗体を分泌する細胞について技術上周知の方法によって分析される。一般に高レベルの抗体を含有する腹水は、陽性ハイブリドーマクローンをマウスに注射することによって生成されうる。
【0053】
したがって、本発明は、モノクローナル抗体、および本発明の抗体を分泌するハイブリドーマ細胞を培養するステップを含む方法によって生成される抗体を生成する方法を提供し、ここでハイブリドーマは、本発明の抗原で免疫された哺乳動物から単離された脾細胞またはリンパ節細胞を骨髄腫細胞と融合し、次いで目的とするポリペプチドに結合することが可能な抗体を分泌するハイブリドーマクローンのための融合から生じるハイブリドーマをスクリーニングすることによって生成される。
【0054】
ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン配列由来の抗体ライブラリーを用いるファージディスプレイ法を含む技術上周知のさまざまな方法によって製造されうる。米国特許第4,444,887号明細書および同第4,716,111号明細書、およびPCT公開国際公開第98/46645号パンフレット、国際公開第98/50433号パンフレット、国際公開第98/24893号パンフレット、国際公開第98/16654号パンフレット、国際公開第96/34096号パンフレット、国際公開第96/33735号パンフレット、および国際公開第91/10741号パンフレットも参照。さらに、抗体は、例えば、CDRグラフト法(欧州特許第239,400号明細書、PCT公開国際公開第91/09967号明細書、米国特許第5,225,539号明細書、同第5,530,101号明細書、および同5,585,089号明細書)、ベニヤリング(veneering)法または再サーフェシング(resurfacing)法(欧州特許第592,106号明細書、欧州特許第519,596号明細書、パドラン(Padlan)、Molecular Immunology 28(4/5)、p.489-498(1991年)、ストゥドニチカ(Studnicka)ら、Protein Engineering 7(6)、p.805-814(1994年)、ログスカ(Roguska)ら、PNAS 91、p.969-973(1994年))、およびチェーンシャフリング(chain shuffling)法(米国特許第5,565,332号明細書)を含む技術上周知のさまざまな技術を用いてヒト化されうる。
【0055】
ヒト抗体は、機能的内在性免疫グロブリンを発現する能力がないが、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現できる遺伝子導入マウスを用いて生成されうる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子複合体は、無作為に、または相同組換え法によってマウス胚幹細胞へ導入されうる。あるいは、ヒト可変領域および定常領域をコードする核酸を、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子に加えてマウス胚幹細胞へ導入することができる。マウス重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子は、相同組換え法によるヒト免疫グロブリン遺伝子座の導入と別々に、またはこれと同時に非機能的になる。一部の実施形態においては、JH領域のホモ接合体欠失が内在性抗体産生を阻止する。修飾胚幹細胞は拡大され、胚盤胞へ微量注入され、キメラマウスを生成する。次いで、キメラマウスは、ヒト抗体を発現するホモ接合性子孫を生成するように育てられる。遺伝子導入マウスは正常なやり方で選択抗原、例えば、目的とするポリペプチドの全部または一部で免疫される。抗原に対するモノクローナル抗体は、従来のハイブリドーマ技術を用いて免疫された遺伝子導入マウスから得られうる。遺伝子導入マウスによって育まれたヒト免疫グロブリントランス遺伝子は、B細胞分化中に再構成し、その後にクラススイッチおよび体細胞変異を受ける。したがって、かかる技術を用いることによって、治療上有用なIgG、IgA、IgM、およびIgE抗体を生成することが可能である。ヒト抗体を生成するためのこの技術の概観については、ロンベルグ(Lonberg)とフサール(Huszar)、Int.Rev.Immunol.13、p.65-93(1995年)を参照。ヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体を生成するためのこの技術、およびかかる抗体を生成するためのプロトコールの詳細な考察については、例えば、PCT公開国際公開第98/24893号パンフレット、国際公開第92/01047号パンフレット、国際公開第96/34096号パンフレット、国際公開第96/33735号パンフレット、欧州特許第0598877号明細書、米国特許第5,413,923号明細書、同5,625,126号明細書、同第5,633,425号明細書、同第5,569,825号明細書、同第5,661,016号明細書、同第5,545,806号明細書、同第5,814,318号明細書、同第5,885,793号明細書、同第5,916,771号明細書、同第5,939,598号明細書、同第6,075,181号明細書、および同第6,114,598号明細書を参照。
【0056】
選択エピトープを認識する完全ヒト抗体は、「誘導選択」と呼ばれる技術を用いて生成されうる。この方法において、選択されたヒト以外のモノクローナル抗体、例えば、マウス抗体を使用して同じエピトープを認識する完全ヒト抗体の選択を誘導する(ジェスパース(Jespers)ら、Bio/technology 12、p.899-903(1988年))。
【0057】
一本鎖Fvsおよび抗体を生成するために使用されうる技術の例としては、米国特許第4,946,778号明細書および同第5,258,498号明細書、ヒューストン(Huston)ら、Methods in Enzymology 203、p.46-88(1991年)、シュー(Shu)ら、PNAS 90、p.7995-7999(1993年)、およびスケラ(Skerra)ら、Science 240、p.1038-1040(1998年)に記載されたものが挙げられる。一本鎖抗体は、アミノ酸架橋によってFv領域の重鎖および軽鎖断片を結合することによって形成され、結果として一本鎖ポリペプチドが生じる。大腸菌(E.coli)における機能的Fv断片のアセンブリのための技術も使用されうる(スケラ(Skerra)ら、Science 242、p.1038-1041(1998年))。
【0058】
さらに、キメラ抗体を生成するための方法は技術上周知である。例えば、モリソン(Morrison)、Science 229、p.1202(1985年)、オイ(Oi)ら、BioTechniques 4、p.214(1986年)、ジリス(Gillies)ら、J.Immunol.Methods 125、p.191-202(1989年)、ノイベルガー(Neuberger)ら、Nature 312、p.604-608(1984年)、タケダ(Takeda)ら、Nature 314、p.452-454(1985年)、米国特許第5,807,715号明細書、同第4,816,567号明細書、および同第4,816,397号明細書を参照。
【0059】
本発明の抗体分子が動物によって生成され、化学的に合成され、または組換え技術によって発現されていると、免疫グロブリン分子の精製のための技術上周知の任意の方法によって、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、およびサイズカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、差別的溶解度(differential solubility)によって、またはタンパク質の精製のための他の標準技術によって精製されうる。さらに、本発明の抗体またはその断片は、本明細書に記載された、またはその他技術上周知の異種ポリペプチド配列に融合され、精製を促進しうる。
【0060】
抗体をコードする核酸分子およびそのポリペプチド
本発明はさらに、本発明の抗体をコードするヌクレオチド配列を有する単離されたポリヌクレオチド分子を提供する。一部の実施形態においては、単離されたポリヌクレオチド分子は、配列番号5、7、9、または11のヌクレオチド配列(それぞれ、TF260VH/PUC18、TF260VL/PUC18、TF196VH/PUC18、またはTF196VL/PUC18で提供、それぞれATCC寄託番号:PTA−5252、PTA−5253、PTA−5250、またはPTA−5251として2003年6月6日寄託)、または配列番号18、20、26、28、または30のヌクレオチド配列(それぞれ、TF278VHs/PUC18、TF278VLs/PUC18、TF392VHs/PUC18、TF9VHs/PUC18またはTF9VL/PUC18で提供、それぞれATCC寄託番号:PTA−5694、PTA−5695、PTA−5696、PTA−5692、またはPTA−5693として2003年12月9日寄託)、または配列番号22もしくは24のヌクレオチド配列、または配列番号6、8、10、12(それぞれ、TF260VH/PUC18、TF260VL/PUC18、TF196VH/PUC18、またはTF196VL/PUC18によってコードされ、それぞれATCC寄託番号:PTA−5252、PTA−5253、PTA−5250、またはPTA−5251として2003年6月6日寄託)、19、21、27、29、31(それぞれ、TF278VHs−PUC18、TF278VLs−PUC18、TF392VHs−PUC18、TF9VHs−PUC18、またはTF9VL−PUC18によってコードされ、それぞれATCC寄託番号:PTA−5694、PTA−5695、PTA−5696、PTA−5692、またはPTA−5693として2003年12月9日寄託)、23もしくは25(縮重変異体を含む)のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列、またはその断片もしくは変異体を含む。
【0061】
本発明はさらに、以下よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含む二次抗体のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有する一次抗体、またはその抗原結合断片をコードするヌクレオチド配列を有する単離されたポリヌクレオチドに関する。すなわち、(a)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域、(b)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域、(c)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域、(d)ハイブリドーマ細胞株TF277によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域、(e)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域、(f)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域、(g)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域、(h)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域、(i)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域、(j)ハイブリドーマ細胞株TF277によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域、(k)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域、(l)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域、(m)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域、(n)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域、(o)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域、(p)ハイブリドーマ細胞株TF277によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域、(q)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域、(r)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域、(s)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域、(t)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域、(u)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域、(v)ハイブリドーマ細胞株TF277によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域、(w)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域、(x)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域、(y)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域、(z)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域、(aa)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域、(bb)ハイブリドーマ細胞株TF277によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域、(cc)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域、(dd)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域、(ee)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域、(ff)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域、(gg)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域、(hh)ハイブリドーマ細胞株TF277によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域、(ii)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域、および(jj)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域。一部の実施形態においては、一次抗体、またはその抗原結合断片は、同じ免疫特異性を有し、または二次抗体と同じエピトープに結合する。
【0062】
本発明はさらに、以下よりなる群から選択されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一のヌクレオチド配列を有する単離されたポリヌクレオチドに関する。すなわち、(a)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域、(b)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域、(c)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域、(d)ハイブリドーマ細胞株TF277によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域、(e)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域、(f)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域、(g)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域、(h)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域、(i)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域、(j)ハイブリドーマ細胞株TF277によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域、(k)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域、(l)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域、(m)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域、(n)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域、(o)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域、(p)ハイブリドーマ細胞株TF277によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域、(q)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域、(r)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域、(s)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域、(t)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域、(u)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域、(v)ハイブリドーマ細胞株TF277によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域、(w)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域、(x)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域、(y)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域、(z)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域、(aa)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域、(bb)ハイブリドーマ細胞株TF277によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域、(cc)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域、(dd)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域、(ee)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域、(ff)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域、(gg)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域、(hh)ハイブリドーマ細胞株TF277によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域、(ii)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域、(jj)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域。一部の実施形態においては、単離されたポリヌクレオチドは、本発明の抗体のVHドメインまたはVLドメインのいずれかと同じ免疫特異性を有するCDR領域を有する抗体、もしくはその抗原結合断片をさらにコードし、またはこれと同じエピトープに結合するアミノ酸配列をコードする。
【0063】
本発明はさらに、正常血漿対照と比べ正常なTF介在血液凝固を阻害することなくhTFに結合し、かつ場合によりFc介在機序を開始しうる抗原結合抗体断片をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド分子に関する。本発明はさらに、ストリンジェントな条件下で配列番号:5、7、9、11、18、20、22、24、26、28、または30のヌクレオチド配列の相補体にハイブリダイズしうるとともに、正常血漿対照と比べ正常なTF介在血液凝固を阻害することなくhTFに結合し、かつ場合によりFc介在機序を開始しうるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有する単離されたポリヌクレオチド分子に関する。本発明はさらに、配列番号:5、7、9、11、18、20、22、24、26、28、または30のいずれかと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するとともに、正常血漿対照と比べ正常なTF介在血液凝固を阻害することなくhTFに結合し、かつ場合によりFc介在機序を開始しうるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド分子に関する。
【0064】
技術上周知のように、2つのヌクレオチド配列間の「配列同一性」は、1つのポリヌクレオチド分子のヌクレオチド配列を第2のポリヌクレオチド分子の配列と比較することによって決定される。本明細書で論じられる場合、特定のヌクレオチド配列が別のヌクレオチドと同一であるかどうかは、技術上周知の方法およびコンピュータプログラム/ソフトウェアを用いて決定されうる。例えば、BESTFITプログラム(ウィスコンシン(Wisconsin)配列分析パッケージ、ユニックス用バージョン8、ジェネティクス コンピュータ グループ(Genetics Computer Group)、ユニバーシティーリサーチパーク(University Research Park)、575サイエンス ドライブ(Science Drive)、ウィスコンシン州(WI)53711、マディソン(Madison))などであるが、これらに限定されない。BESTFITでは、スミス(Smith)とウォーターマン(Waterman)のローカルホモロジーアルゴリズム、Advances in Applied Mathematics 2、p.482-489(1981年)を使用し、2つの配列間のホモロジーの最良のセグメントを見出す。BESTFITまたは他の配列調整プログラムを用いて、特定の配列が、例えば、本発明による基準配列と95%同一であるかどうかを判定する場合、パラメータは、もちろん、同一性の割合が基準ポリペプチド配列の完全長にわたって計算され、かつ基準配列における核酸の総数の5%までのホモロジーのギャップが許されるように設定されている。
【0065】
本明細書で使用される「ストリンジェントな条件」は、第1のポリヌクレオチド分子がハイブリダイズし、65℃で0.5M NaHPO4、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、および1mM EDTA中の第2のフィルター結合ポリヌクレオチド分子に結合されたまま、42℃で0.2×SSC/0.1%SDS中で洗浄することを指す(オースベル(Ausubel)ら(編)、Current Protocols in Molecular Biology、第1巻、グリーン・パブリッシング・アソシエーツ株式会社(Green Publishing Associates,Inc.)およびジョン・ワイリー&サンズ株式会社(John Wiley&Sons,Inc.)、ニューヨーク(1989年)、p.2.10.3)。
【0066】
本発明は、本発明の単離されたポリヌクレオチドを含む組換えベクター、およびベクターを含む宿主細胞にも関する。宿主細胞は、例えば、クローニングベクターまたは発現ベクターでありうる本発明のベクターで遺伝子組換え(形質導入、形質転換、またはトランスフェクト)されている。ベクターは、例えば、プラスミド、ウイルス粒子、ファージ等の形でありうる。組換え宿主細胞は、プロモーターを活性化し、形質転換体を選択し、または本発明の遺伝子を増幅するために必要に応じて変更される従来の栄養培養液で培養されうる。培養条件、例えば、温度、pH等は、発現用に選択された宿主細胞とともに以前に使用されたものでありうるとともに、当業者には自明であろう。
【0067】
本発明はさらに、(a)本発明の単離されたポリヌクレオチドによってコードされた抗体を発現するステップと、(b)抗体を回収するステップとを含む本発明の抗体を製造する方法に関する。
【0068】
本発明のポリペプチドの断片または部分は、ペプチド合成によって対応する完全長ポリペプチドを生成するために使用されうるため、断片は完全長ポリペプチドを生成するための中間体として使用されうる。本発明のポリヌクレオチドの断片または部分を使用して本発明の完全長ポリヌクレオチドを合成することができる。
【0069】
本発明のポリヌクレオチド分子は、組換え技術によってポリペプチドを生成するために使用されうる。したがって、例えば、ポリヌクレオチド分子はポリペプチドを発現させるためのさまざまな発現ベクターのいずれか1つに包含されうる。かかるベクターとしては、染色体、非染色体、および合成DNA配列、例えば、SV40の誘導体;細菌プラスミド;ファージDNA;バキュロウイルス;酵母プラスミド;プラスミドとファージDNAの組合せ由来のベクター、ウイルスDNA、例えば、ワクシニア、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、および仮性狂犬病が挙げられる。しかし、それが複製可能であり、かつ宿主において生存可能である限り他の任意のベクターが使用されうる。
【0070】
適切なDNA配列はさまざまな手段によってベクターへ挿入されうる。一般に、DNA配列は、技術上周知の手段によってベクターにおける適切な制限エンドヌクレアーゼ部位へ挿入されている。かかる手段およびその他は当業者の範囲内であると考えられる。
【0071】
発現ベクターにおけるDNA配列は、mRNA合成を方向づける適切な発現制御配列(プロモーター)に作動的に結合されている。かかるプロモーターの代表例としては、LTRまたはSV40プロモーター、大腸菌(E.coli)lacまたはtrp、ファージラムダPLプロモーター、および原核もしくは真核細胞またはそのウイルスにおける遺伝子の発現を制御することが知られる他のプロモーターが言及されうる。発現ベクターは、翻訳開始のためのリボソーム結合部位、および転写ターミネーターをも含有すべきである。ベクターは、上記のように、発現を増幅させるための適切な配列をも含みうる。
【0072】
さらに、発現ベクターは、ジヒドロ葉酸還元酵素など形質転換宿主細胞の選択のための表現型形質もしくは真核細胞培養のためのネオマイシン耐性、または大腸菌(E.coli)におけるテトラサイクリンもしくはアンピシリン耐性を提供する1つもしくはそれ以上の選択可能なマーカー遺伝子を含有しうる。
【0073】
上記の適切なDNA配列、および適切なプロモーター、または制御配列を含有するベクターを使用して適切な宿主細胞に形質転換させ、宿主細胞がタンパク質を発現することを可能にする。多数の適切なベクターおよびプロモーターは当業者に周知であり、かつ市販されている。以下のベクターは一例として示されている。細菌:pQE70、pQE60、pQE−9(キアゲン(Qiagen))、pBS、pDl0、phagescript、psiX174、pbluescript SK、pbsks、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A(ストラタジーン(Stratagene));ptrc99a、pKK223−3、pKK233−3、pDR540、pRIT5(ファルマシア(Pharmacia))。真核:pWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pXTl、pSG(ストラタジーン(Stratagene))pSVK3、pBPV、pMSG、pSVL(ファルマシア(Pharmacia))。しかし複製可能であり、かつ宿主で安定である限り、任意の他のプラスミドまたはベクターは、使用されうる。
【0074】
プロモーター領域は、CAT(クロラムフェニコール転移酵素)ベクターまたは他のベクターを選択可能なマーカーとともに用いて所望の任意の遺伝子から選択されうる。2つの適切なベクターはPKK233−8およびPCM7である。特に指名された細菌プロモーターとしては、lacI、lacZ、T3、T7、gpt、ラムダPR、PLおよびtrpが挙げられる。真核プロモーターとしては、前初期CMV、HSVチミジンキナーゼ、初期および後期SV40、レトロウイルス由来のLTR、およびマウスメタロチオネイン−Iが挙げられる。適切なベクターおよびプロモーターの選択は当業者の十分にレベル内である。プロモーターは、糖分解酵素、例えば、特に3−ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、α−因子、酸ホスファターゼ、または熱ショックタンパク質等をコードするオペロン由来でありうる。発現される異種構造配列は、翻訳開始および終了配列、かつ、必要に応じて、翻訳タンパク質の分泌を細胞膜周辺腔または細胞外培地へ方向づけることが可能なリーダー配列と適切な段階でアセンブルされる。場合により、異種配列は、所望の特性、例えば、発現組換え生産物の安定化または簡易化精製を与えるN末端またはC末端識別ペプチドを含む融合タンパク質をコードしうる。
【0075】
別の実施形態においては、本発明は上記の構築物を含有する宿主細胞に関する。宿主細胞は、哺乳動物細胞など高等真核細胞、または酵母細胞など下等真核細胞であり、または宿主細胞は細菌細胞など原核細胞でありうる。宿主細胞への構築物の導入は、例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン介在トランスフェクション、またはエレクトロポレーションなど任意の適切な技術によって達成されうる。(デービス(Davis),L.ら、Basic Methods in Molecular Biology、(1986年))。
【0076】
適切な宿主の代表例としては、大腸菌(E.coli)、ストレプトミセス(Streptomyces)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)などの細菌細胞、酵母などの真菌細胞、ショウジョウバエ(Drosophila)およびシロイチモンジョトウ(Spodoptera)Sf9などの昆虫細胞、CHO、COS、またはボウズ(Bowes)メラノーマなど動物細胞、植物細胞等が言及されうる。適切な宿主の選択は、本明細書の開示から当業者の範囲内にあると考えられる。種々の哺乳動物細胞培養系も組換えタンパク質を発現させるために使用されうる。哺乳動物発現系の例としては、グルッツマン(Gluzman)、Cell 23、p.175(1981年)によって記載されたサル腎線維芽細胞のCOS−7株、および適合ベクターを発現させることが可能な他の細胞株、例えば、C127、3T3、CHO、HeLa、およびBHK細胞株が挙げられる。哺乳動物発現ベクターは、複製起点、適切なプロモーター、およびエンハンサーのほか、必要なリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライスドナーおよびアクセプター部位、転写終了配列、および5’フランキング非転写配列を含む。SV40スプライス由来のDNA配列、およびポリアデニル化部位を使用して必要な非転写遺伝子要素を提供することができる。
【0077】
宿主細胞における構築物を従来のやり方で使用し、組換え配列によってコードされる遺伝子産物を生成することができる。あるいは、本発明のポリペプチドは従来のペプチド合成装置によって合成的に生成されうる。
【0078】
成熟タンパク質は、適切なプロモーターの制御下に哺乳動物の細胞、酵母、細菌、または他の細胞で発現されうる。セルフリー翻訳系も使用し、本発明のDNA構築物由来のRNAを用いてかかるタンパク質を生成することができる。原核および真核宿主と使用するための適切なクローニングおよび発現ベクターは、サムブルック(Sambrook)ら、分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)、第2版、コールド・スプリング・ハーバー(Cold Spring Harbor)、ニューヨーク(N.Y.)、(1989年)によって記載されている。
【0079】
高等真核細胞によって本発明のポリペプチドをコードするDNAの転写は、エンハンサー配列をベクターへ挿入することによって増大されうる。エンハンサーはDNAのcis作用要素であり、通常、約10〜300bpであり、プロモーター上で作用し、その転写または発現の増幅を増大させる。例としては、複製起点bp100〜270の後側でのSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後側でのポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。
【0080】
適切な宿主形質の変換、および宿主形質の適切な細胞密度への増殖の後、選択プロモーターは適切な手段(例えば、温度変化、化学的誘導)によって誘導されうるとともに、細胞は追加の期間、培養される。
【0081】
所望のタンパク質が細胞内に保持されている場合、細胞は通常、遠心分離によって収穫され、物理的または化学的手段によって破壊され、結果として生じる粗抽出物がさらなる精製のため保持される。タンパク質の発現において使用される微生物細胞は、凍結融解循環、超音波処理、機械的破壊、または細胞溶解剤の使用、またはその組合せを含めた便利な方法によって破壊される。かかる方法は当業者に周知である。
【0082】
本発明のポリペプチドは、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、およびレクチンクロマトグラフィーを含む方法によって組換え細胞培養から回収され、精製されうる。タンパク質再折畳みステップが、必要に応じて、成熟タンパク質の立体配置の仕上げに使用されうる。最後に、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を最終精製ステップに使用されうる。
【0083】
本発明のポリペプチドは天然精製産物、または化学合成手段の産物でありうるが、原核または真核宿主から組換え技術によって(例えば、細菌、酵母、高等植物、昆虫、および哺乳動物の培養細胞によって)生成されうる。組換え生成法において使用される宿主に応じて、本発明のポリペプチドは糖化され、または非糖化されうる。本発明のポリペプチドは初期メチオニンアミノ酸残基をも含みうる。
【0084】
抗体複合体
本発明の抗体を使用して、インビトロおよびインビボ両方の診断および治療方法において、hTFを精製、検出、および/または標的にすることができる。例えば、抗体は、生物試料におけるhTFのレベルを質的および量的に測定するための免疫アッセイにおいて有用でありうる。例えば、ハーロー(Harlow)ら、抗体:実験室マニュアル(Antibodies:A Laboratory Manual)収載、(コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、第2版(1988年))を参照。
【0085】
本発明の抗体は、任意の型の分子の抗体への共有結合によって修飾または結合される抗体の誘導体を含む。例えば、ただし限定する目的ではなく、抗体誘導体は、例えば、糖化、アセチル化、PEG化、リン酸化、アミド化、周知の保護/遮断基による誘導体化、タンパク質分解的切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質への結合等によって修飾されている抗体を含む。多くの化学的修飾のいずれかは、特異的化学切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成等を含むが、これらに限定されない周知の技術によって実施されうる。さらに、誘導体は1つもしくはそれ以上の非典型的アミノ酸を含有しうる。
【0086】
本発明の抗体は、抗体によって結合されたエピトープを同定するエピトープマッピングに使用されうる。このようにして同定されたエピトープは、同様に、ワクチン候補として、すなわち、個体に免疫し、自然発生形態のhTFに対する抗体を誘発させるために使用されうる。
【0087】
本発明の抗体は、単独で、または他の組成物と組合わせて使用されうる。抗体は、組換え技術によって、NまたはC末端で異種ポリペプチドに融合され、もしくはポリペプチドまたは他の組成物に(共有および非共有結合を含めて)化学的に結合されうる。例えば、本発明の抗体は、検出アッセイにおける標識として、または異種ポリペプチド、薬物、放射性核種、または毒素などエフェクター分子として有用な分子に組換え技術によって融合され、または結合されうる。例えば、PCT公開国際公開第92/08495号パンフレット、国際公開第91/14438号パンフレット、国際公開第89/12624号パンフレット、米国特許第5,314,995号明細書、および欧州特許第0396387号明細書を参照。
【0088】
一部の実施形態においては、本発明の抗体は細胞毒性剤に結合している。「細胞毒性剤」は、細胞に対して毒性あるいはほかの有害な薬剤である。例としては、放射性核種、パクリタキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシンおよびそれらの類似体またはその同族体が挙げられるが、これらに限定されない。細胞毒性剤として有用な放射性核種の例としては、131I、177Lu、90Y、および186Reが挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
本発明は、検出可能剤に結合した本発明の抗体をも包含し、ここで検出可能剤は診断または治療目的に使用されうる。抗体は、例えば、臨床試験法の一環として腫瘍の発生または進行を発見しまたは監視し、例えば、所定の治療計画の有効性を判定するために診断的に使用されうる。検出可能剤の例としては、種々の酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射性物質、種々の陽電子放出断層撮影に用いる陽電子放出金属、および非放射性常磁性金属イオンが挙げられる。検出可能物質は、技術上周知の方法を用いて、抗体に直接的、または中間体(例えば、技術上周知のリンカー)を通じて間接的に連結または結合されうる。例えば、本発明による診断薬として使用するための抗体に結合されうる金属イオンについては、米国特許第4,741,900号明細書を参照。適切な酵素の例としては、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、およびアセチルコリンエステラーゼが挙げられ、適切な補欠分子族複合体の例としては、ストレプトアビジン/ビオチン、およびアビジン/ビオチンが挙げられ、適切な蛍光物質の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、イソチオシアン酸フルオレセイン、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル、およびフィコエリトリンが挙げられ、発光物質の例としては、ルミノールが挙げられ、生物発光物質の例としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンが挙げられ、かつ適切な放射性物質の例としては、ヨウ素(121I、123I、125I、131I)、炭素(14C)、イオウ(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(111In、112In、113mIn、115mIn)、テクネチウム(99Tc、99mTc)、タリウム(201Ti)、ガリウム(68Ga、67Ga)、パラジウム(103Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(133Xe)、フッ素(18F)、153Sm、177Lu、159Gd、149Pm、140La、175Yb、166Ho、90Y、47Sc、186Re、188Re、142Pr、105Rh、および97Ruが挙げられる。
【0090】
他の実施形態においては、本発明の抗体は治療薬に結合されうる。治療薬としては、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルダカルバジン)、アルキル化薬(例えば、メクロレタミン、チオエパ(thioepa)クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、およびロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびシス−ジクロロジアミンプラチナ(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(旧ダウノマイシン)、およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(旧アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン(AMC))、抗分裂剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)、および放射性核種が挙げられるが、これらに限定されない。治療薬として有用な放射性核種の例としては、131I、177Lu、90Y、および186Reが挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
かかる治療部分を抗体に結合させる技術は公知であり、例えば、アルノン(Arnon)ら、「癌治療における薬物の免疫標的のためのモノクローナル抗体(Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy)」、Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy収載、ライスフィールド(Reisfield)ら編、アランR.リス株式会社(Alan R.Liss,Inc.)(1985年)、p.243-256、ヘルストローム(Hellstrom)ら、「薬物送達のための抗体(Antibodies For Drug Delivery)」、Controlled Drug Delivery、第2版収載、ロビンソン(Robinson)ら編、マーセル デッカー株式会社(Marcel Dekker,Inc)(1987年)、p.623-653、トルプ(Thorpe)、「癌治療における細胞毒性薬の抗体担体:概説(Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review)、Monoclonal Antibodies '84:Biological And Clinical Applications収載、ピンチェラ(Pinchera)ら編、(1985年)、p.475-506、「癌治療における放射性標識抗体の治療用途の分析、結果、および今後の予測(Analysis,Results,And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy)」、Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy収載、ボールドウィン(Baldwin)ら編、アカデミックプレス(Academic Press)(1985年)、p.303-316、およびトルプ(Thorpe)ら、「抗体−毒素複合体の調製および細胞毒性(The Preparation And Cytotoxic Properties of Antibody-Toxin Conjugates)」、Immunol.Rev.62、p.119-158(1982年)を参照。
【0092】
本発明は、融合タンパク質を生成するために、目的とするポリペプチドに組換え技術で融合または化学的に結合(共有および非共有結合を含む)された本発明の抗体を包含する。融合は必ずしも直接である必要はないが、リンカー配列を通じて起こりうる。本発明の抗体は、異種タンパク質(例えば、免疫グロブリンFcポリペプチドまたはヒト血清アルブミンポリペプチド)のNまたはC末端のいずれかに融合されうる。例えば、抗体は、アルブミン、例えば、組換えヒト血清アルブミンに融合され(例えば、米国特許第5,876,969号明細書、欧州特許第0413622号明細書、および米国特許第5,766,883号明細書を参照)、結果としてキメラポリペプチドが生じうる。他の実施形態においては、抗体は、ヒト血清アルブミンの成熟形態(すなわち、欧州特許第0322094号明細書の図1および2に示されているヒト血清アルブミンのアミノ酸1−585)に融合されうる。他の実施形態においては、抗体は、ヒト血清アルブミンのアミノ酸残基1−zを含む、あるいはこれから成るポリペプチド断片と融合されうるが、ここでzは、米国特許第5,766,883号明細書に記載されているように369〜419の整数である。ポリペプチドまたは目的とする他の分子に融合または結合した抗体は、インビトロ免疫アッセイおよび技術上周知の方法を用いる精製方法でも使用されうる。例えば、ハーバー(Harbor)ら、上記、およびPCT公開国際公開第93/21232号明細書、欧州特許第439,095号明細書、ナラムラ(Naramura)ら、Immunol.Lett.39、p.91-99(1994年)、米国特許第5,474,981号明細書、ジリーズ(Gillies)ら、PNAS89、p.1428-1432(1992年)、およびフェル(Fell)ら、J.Immunol.146、p.2446-2452(1991年)を参照。
【0093】
抗体は、ペプチドなどマーカー配列に融合され、精製を促進しうる。一部の実施形態においては、マーカーアミノ酸配列は、特に、pQEベクター(キアゲン株式会社(QIAGEN,Inc.)、91311カリフォルニア州(CA)、チャッツワース(Chatsworth)、9259イートンアベニュー(Eton Avenue))で提供されるタグなどヘキサ−ヒスチジンペプチドであり、その多くは市販されている。ゲンツ(Gentz)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA86、p.821-824(1989年)に記載されているように、例えば、ヘキサ−ヒスチジンは融合タンパク質の便利な精製を提供する。精製に有用な他のペプチドタグとしては、インフルエンザ血球凝集素タンパク質由来のエピトープに対応する「HA」タグ(ウィルソン(Wilson)ら、Cell 37、p.767(1984年))、および「フラッグ」タグ(カリフォルニア州(CA)、ストラタジーン(Stratagene))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
本発明の抗体複合体は所定の生物反応を修飾するために使用されうるが、治療薬または薬物部分は典型的な化学治療薬に限定されているとは考えられていない。例えば、薬物部分は所望の生物活性を有するタンパク質またはポリペプチドでありうる。かかるタンパク質としては、例えば、アブリン、リシンA、緑膿菌外毒素、またはジフテリア毒素などの毒素、タンパク質、例えば、腫瘍壊死因子、α−インターフェロン、β−インターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子、組織プラスミノーゲン活性化因子、アポトーシス剤、例えば、TNF−アルファ、TNF−ベータ、AIMI(国際公開WO97/33899号明細書を参照)、AIMII(国際公開WO97/34911号明細書を参照)、Fasリガンド(タカハシ(Takahashi)ら、Int.Immunol.6、p.1567-1574(1994年))、VEGI(国際公開WO99/23105号明細書を参照)、血栓剤または血管新生阻害剤、例えば、アンジオスタチンまたはエンドスタチン、または生物反応修飾因子、例えば、リンフォカイン、インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM−CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G−CSF」)、または他の成長因子が挙げられうる。
【0095】
本発明の抗体は、標的抗原の免疫アッセイまたは精製に有用である固形担体にも付着されうる。かかる固形担体としては、ガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、およびポリプロピレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
あるいは、本発明の抗体は二次抗体に結合され、例えば、米国特許第4,676,980号明細書に記載されている抗体異種複合体を形成しうる。
【0097】
抗体結合のアッセイ
本発明の抗体は、技術上周知の適切な方法によって免疫特異的結合について分析されうる。使用されうる免疫アッセイとして、いくつか挙げると、BIAcore分析、FACS(蛍光活性化セルソーター)分析、免疫蛍光、免疫細胞化学、ウェスタンブロット、放射免疫アッセイ、ELISA(酵素免疫測定法)、「サンドイッチ」免疫アッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降反応、ゲル分散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体固定アッセイ、免疫放射定量アッセイ、蛍光免疫アッセイ、プロテインA免疫アッセイなどの競合および非競合アッセイ系に用いる技術があるが、これらに限定されない。かかるアッセイは、ルーチンかつ技術上公知である(例えば、オースベル(Ausubel)ら編、Current Protocols in Molecular Biology、第1巻、ジョン・ワイリー&サンズ株式会社(John Wiley&Sons,Inc.)、ニューヨーク(1994年)を参照)。例となる免疫アッセイが以下に簡単に記載されている(ただし、限定を目的とするよう意図されていない)。
【0098】
免疫沈降プロトコールは一般に、タンパク質ホスファターゼおよび/またはプロテアーゼ阻害剤(例えば、EDTA、PMSF、アプロチニン、バナジウム酸ナトリウム)が添加されたRIPA緩衝液(1%NP−40またはトリトン(Triton)X−100、1%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDS、0.15 M NaCl、0.01Mリン酸ナトリウム、pH7.2で1%トラジロール(Trasylol))など溶解緩衝液中で細胞の集団を溶解し、目的とする抗体を細胞溶解物に添加し、4℃で一定時間(例えば、1−4時間)インキュベートし、プロテインAおよび/またはプロテインGセファロースビーズを細胞溶解物に添加し、約1時間もしくはそれ以上、4℃でインキュベートし、ビーズを溶解緩衝液中で洗浄し、かつSDS/サンプル緩衝液中にビーズを再懸濁するステップを含む。目的とする抗体の特定の抗原を免疫沈降する能力は、例えば、ウェスタンブロット分析によって評価されうる。当業者は、抗体の抗原への結合を増大させ、バックグラウンドを減少させるよう修飾されうるパラメータに関して理解可能であろう(例えば、セファロースビーズによる細胞溶解物のプレクリアリング(pre-clearing))。さらに、免疫沈澱プロトコールに関する説明については、オースベル(Ausubel)ら編、Current Protocols in Molecular Biology、第1巻、ジョン・ワイリー&サンズ株式会社(John Wiley&Sons,Inc.)、ニューヨーク(1994年)、10.16.1を参照。
【0099】
ウェスタンブロット分析は一般に、タンパク質試料の調製と、ポリアクリルアミドゲル(例えば、抗原の分子量に応じて8%−20%SDS−PAGE)中のタンパク質試料の電気泳動するステップと、タンパク質試料をポリアクリルアミドゲルからニトロセルロース、PVDF、またはナイロンなど膜へ移動させるステップと、膜をブロッキング溶液(例えば、3%BSAまたは脱脂乳を含むPBS)中でブロッキングするステップと、洗浄緩衝液(例えば、PBS−Tween 20)中で膜を洗浄するステップと、培養緩衝液で希釈した一次抗体(目的とする抗体)で膜をインキュベートするステップと、洗浄緩衝液で膜を洗浄するステップと、酵素物質(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)に結合した(一次抗体、例えば、抗ヒト抗体を認識する)二次抗体または培養緩衝液で希釈した放射性分子(例えば、32Pまたは125I)で膜をインキュベートするステップと、洗浄緩衝液で膜を洗浄するステップと、抗原の存在を検出するステップとを含む。当業者は、検出されるシグナルを増大させ、バックグラウンドノイズを削減させるよう修飾されうるパラメータに関して理解可能であろう。さらに、ウェスタンブロットプロトコールに関する説明については、オースベル(Ausubel)ら編、Current Protocols in Molecular Biology、第1巻、ジョン・ワイリー&サンズ株式会社(John Wiley&Sons,Inc.)、ニューヨーク(1994年)、10.8.1を参照。
【0100】
ELISAは、抗原を調製し、96穴マイクロタイタープレートのウェルを抗原でコーティングし、酵素物質(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)など検出可能な化合物に結合した目的とする抗体をウェルに添加し、一定時間インキュベートし、抗原の存在を検出するステップを含む。ELISAにおいては、目的とする抗体は検出可能な化合物に結合される必要はなく、その代わりに、検出可能な化合物に結合した(目的とする抗体を認識する)二次抗体をウェルに添加することができる。さらに、ウェルを抗原でコーティングする代わりに、抗体はウェルにコーティングされうる。この場合、検出可能な化合物に結合した二次抗体は、目的とする抗原のコーティングされたウェルへの添加後に添加されうる。当業者は、検出されるシグナルを増大させるよう修飾されうるパラメータ、および技術上周知のELISAの他の変異形に関して理解可能であろう。さらに、ELISAに関する説明については、オースベル(Ausubel)ら編、Current Protocols in Molecular Biology、第1巻、ジョン・ワイリー&サンズ株式会社(John Wiley&Sons,Inc.)、ニューヨーク(1994年)、11.2.1を参照。
【0101】
抗原への抗体の結合親和性および抗体抗原相互作用のオフレートは、競合結合アッセイによって測定されうる。競合結合アッセイの一例は、増大する量の非標識抗原の存在下に目的とする抗体と標識抗原(例えば、3Hまたは125I)、もしくはその断片、または変異形とのインキュベーション、および標識抗原に結合された抗体の検出を含む放射免疫アッセイである。hTFを目的とする抗体の親和性および結合オフレートは、スキャッチャードプロット分析によるデータから測定されうる。二次抗体との競合も放射免疫アッセイを用いて測定されうる。この場合、hTFは、増大する量の非標識二次抗体の存在下に標識化合物(例えば、3Hまたは125Iで標識された化合物)に結合した目的とする抗体でインキュベートされる。2つの抗体間のこの種類の競合アッセイは、2つの抗体が同一の、または異なるエピトープに結合するかどうかを判定するためにも使用されうる。
【0102】
血液凝固
血液凝固は、3つの相互作用成分、すなわち、血管、血液凝固因子、および血小板を含む複雑な過程である。血液凝固因子は、不活性前駆体として血液中に存在するタンパク質または糖タンパク質である。出血が起こると、凝固カスケードが開始され、不活性凝固因子は活性プロテアーゼまたは酵素に変換される。
【0103】
凝固因子は、共同因子(カルシウム、TF、およびリン脂質など)の助けを借りて凝固カスケードにおいて順に活性化され、結果としてフィブリン塊の最終的形成が生じる。フィブリンは、血液中で不溶性であり、血小板接着および血液凝固の基礎を提供する粘着性の糸状タンパク質である。
【0104】
出血が血管系の損傷外側(皮膚の擦り傷または切り傷)から生じる場合は、外因経路が開始される。損傷が血管内部で生じる場合は、内因経路が活性化される。多くの出血エピソードは両方の経路を活性化する。
【0105】
外因凝固経路は、TFが一部の物理的損傷後の血液にさらされると血管外細胞表面上で誘発される。TFは、第VII因子の活性化および不活性化形態の両方に結合しうるタンパク質である。外因経路においては、少量の循環活性化第VII因子(第VIIa因子)が、その放出後にTFと複合体を形成する。このTF/第VIIa因子複合体は、第IX因子および第X因子を活性化形態に変換することによって凝固を開始する。
【0106】
この反応は、第VIIa因子、第IXa因子、および第Xa因子がTFに結合した追加の第VII因子を活性化するフィードバック機序によって増幅される。第Xa因子は、共同因子、第Va因子、およびリン脂質と複合して、カスケードにおいてプロトロンビン(第II因子としても知られる)をトロンビン(第IIa因子としても知られる)へ活性化し続ける。トロンビンを含む別のフィードバック機序は、第V、第VIII、および第XI因子を活性化するように作用する。第VIIIa因子は血小板表面上で第IXa因子と複合体を形成し、第X因子を活性化し、結果としてより局所のトロンビンの生成をもたらす。トロンビンは、フィブリンの最終的な生成に関与する。
【0107】
内因経路においては、循環活性化第XII因子が、高分子量のキニノゲンおよびプレカリクレインと複合して、曝露された内皮下膜と接触し、凝固を開始し、かつ第XI因子を活性化させる。第XIa因子はカルシウムと複合体を形成し、第IX因子を活性化する。第IXa因子は、第VIIIa因子、カルシウム、およびリン脂質と結合し、結果として第X因子の第Xa因子への活性化、およびその後のトロンビン生成をもたらす。第X因子の活性化後、外因経路と内因経路は結合する。
【0108】
凝血塊形成の最終ステップは、ペプチド結合の切断の結果として血漿可溶性フィブリノゲンの不可溶性フィブリンへの変換である。切断は、プロトロンビンから生成されるタンパク質分解酵素トロンビンの結果として生じる。プロトロンビンのトロンビンへの変換は、カルシウムに加えて、凝固因子と呼ばれる多くのタンパク質を必要とする。フィブリン塊は、血液の形成された要素を取込み、それによって出血部位を封鎖する架橋マトリクスである。形成された要素は、血小板、白血球、および赤血球細胞から成る。
【0109】
TFは、第VIIa因子とともに、インビボで血液凝固を開始させる細胞固定成分である。TFは、219残基の細胞外領域、23残基の膜貫通領域、および21残基の細胞質領域を有する膜貫通糖タンパク質である。TFの細胞外領域は2つのフィブロネクチンIII様ドメイン、およびクラスIIサイトカインとインターフェロン受容体の特徴を示すジスルフィド架橋の分布を有する。TFの細胞質領域は短いが、リン酸化されうる少なくとも1つのセリン残基を含有する。TFは、トロンボプラスチン、第III因子、およびCD142としても知られる。
【0110】
TFは、その天然のリガンド、すなわち、第VIIa因子と堅い複合体(Kd〜pmol)を形成する。複合体において、VIIaはTFを包み込み(バナー(Banner),D.W.ら、Nature 380、p.41-46(1996年))、TF表面との広範囲の接触領域を形成する。TFは、第VIIa因子(fVIIa)に結合し、アロステリックに活性化し、TF/fVIIa複合体は第IXおよびX因子の活性化によってトロンビン生成に関与し、生理的条件下に血液凝固の主要な開始剤である。TF−VIIa相互作用部位に結合する抗体はTF−VIIa相互作用を阻害し、したがって、血液凝固を阻害または遮断しうる。本発明の抗体は、TF、例えば、hTFに結合するが、正常血漿対照と比べTF介在血液凝固を阻害することがない。
【0111】
本明細書で使用される「正常血漿対照」という用語は、例えば、ジョージ・キング・バイオメディカル株式会社(George King BioMedical,Inc.)、カンザス州(Kansas)(プール正常血漿(POOLED NORMAL PLASMA))によって提供される血漿など、正常なヒトドナーからプールされた血漿を意味する。
【0112】
一部の実施形態においては、TF介在血液凝固に対する本発明の抗体の効果は血液凝固アッセイを用いて判定されうる。例えば、技術上周知の血液凝固アッセイ、例えば、モリセイ(Morrissey),J.H.ら、Thrombosis Research 52、p.247-261(1988年)、およびファング(Fang),C.H.ら、Thrombosis and Haemostasis 76、p.361-368(1996年)に記載されているものなどを使用し、血液凝固に対する抗TF抗体の効果を判定することができる。他の血液凝固アッセイとしては、一段階プロトロンビン時間アッセイ(ミアール(Miale)J.B.、Laboratory Medicine,Hematology,CNモスビー(Mosbey)社、セントルイス(St.Louis)(1977年)が挙げられるが、これに限定されず、二段階凝固アッセイ(バーク(Bach)ら、Biochemistry 15、p.4007-20(1986年))も使用されうる。
【0113】
本発明の抗体は「正常血漿対照と比べTF介在血液凝固を阻害することがなく」、ここで、以下の実施例の部に記載されているように行われるhTF凝固アッセイにおいて、抗体で処理した血液サンプルの凝固時間は、正常血漿対照の凝固時間の約150%以下、約140%以下、約130%以下、約120%以下、約110%以下、または約100%以下である。
【0114】
Fc介在機序
一部の実施形態においては、正常血漿対照と比べTF介在血液凝固を阻害することなくhTFに結合能がある本発明の抗体は、1つもしくはそれ以上のFc介在機序を開始しうる。
【0115】
抗体が、パパインまたはペプシンなどのタンパク質分解酵素に曝露されると、いくつかの主要な断片が生成される。抗原結合能を保持する断片は、抗体のY構造の2つの「腕」から成り、ジスルフィド結合によって結合された2つのFab腕を表すF(ab)(断片抗原結合)またはF(аb’)2と呼ばれる。生成される他の主要な断片は、単一の「尾」またはYの中心軸を構成し、溶液から結晶化するその傾向に対してFc(断片結晶)と呼ばれる。IgG、IgA、IgM、またはIgDのFc断片は、各抗体の2つのカルボキシル末端ドメインの二量体から成る(すなわち、IgG、IgA、およびIgDにおけるにおけるCH2およびCH3、およびIgMにおけるCH3およびCH4)。それに反して、IgE Fc断片は、その3つのカルボキシル末端重鎖ドメイン(C2、C3、およびC4)の二量体から成る。
【0116】
Fc断片は抗体の生物「活性部位」を含有するが、これは抗体が他の免疫系分子または細胞と「コミュニケートする」ことを可能にし、したがって、免疫系の防御機能または宿主介在機序を活性化し、かつ調節する。かかるコミュニケーションは、抗体Fc領域内の活性部位がFc受容体と呼ばれる分子に結合する場合に生じる。Fc受容体は、免疫グロブリンFc領域内の活性部位に高い親和性と特異性で結合する分子である。Fc受容体は細胞の外側血漿膜内の膜内在性タンパク質として存在し、または血漿もしくは他の体液中に自由に循環する自由な「可溶性」分子として存在しうる。
【0117】
5つの抗体クラスの各々について、そのクラスのFc領域に特異的に結合し、明確な機能を実行するいくつかの型のFc受容体がある。したがって、IgE Fc受容体は高い親和性でIgE Fc領域または単離されたIgE Fc断片のみに結合する。Fc領域内の異なる位置を認識し、これに結合する異なる型のクラス特異的Fc受容体が存在することが知られている。例えば、一部のIgG Fc受容体はIgGの第2の定常ドメイン(CH2)にのみ結合するが、他の免疫機能を介在するFc受容体は、IgGの第3の定常のドメイン(CH3)のみに結合する。他のIgG Fc受容体は、CH2およびCH3ドメインの両方に位置した活性部位に結合し、単一の単離されたドメインに結合することはできない。
【0118】
抗体の機能の多くは、そのFc受容体との相互作用により介在される。これらの受容体は、マクロファージ、他の白血球、血小板、および胎盤栄養膜細胞を含むさまざまな細胞で見られる。
【0119】
抗体が抗原に結合し、あるいは凝集された後、Fc領域内の活性部位はFc受容体に結合し、これを活性化することができ、抗体と免疫系の残りの部分との重要な結合を提供する。したがって、Fc受容体へのFc結合は、それによって抗体機能が介在される「最終共通路」として特徴づけられうる。抗原結合抗体がFc受容体に結合しない場合は、抗体は免疫系の他の部分を活性化することができず、したがって機能的に不活性にされる。
【0120】
免疫グロブリンのFc領域は、Fc受容体に結合し、複合体は細胞型に応じてさまざまな反応を誘発しうる。マクロファージの場合、反応はファゴサイトーシスおよび抗体依存細胞介在細胞毒性(ADCC)を含みうる。抗体Fc領域活性部位の結合によって活性化されると、Fc受容体はさまざまな重要な免疫殺傷および調節機能を介在する。例えば、一部のIgG Fc受容体は、抗体がそのFab腕によって結合した細胞の直接的殺傷を介在する(抗体依存細胞介在細胞毒性(ADCC))。他のIgG Fc受容体は、IgGによって占有されると、一部の白血球を刺激し、細菌、ウイルス、癌細胞、または他の存在物をファゴサイトーシスとして知られる過程によって、これらを飲み込み、破壊する。Bリンパ球として知られる一部の型の白血球のFc受容体は、その抗体分泌血漿細胞への成長および発達を調節する。
【0121】
抗体またはその活性ペプチド断片のFc部分が結合する特定の型のFc受容体に応じて、ペプチドは免疫機能を開始または阻害しうる。開始は、Fc受容体がFc領域の結合の作用によって活性化される型である場合、あるいは、Fc活性部位ペプチドが受容体を刺激する場合に生じうる。生成される開始の型は、抗体Fc領域−Fc受容体結合によって直接的または間接的に介在される機能を含みうるが、これに限定されない。
【0122】
免疫系機能を開始させる能力は、上記のものを含めて、細菌、ウイルスまたは真菌などによる感染症、免疫系が先天的または後天的条件のいずれかにより不完全である状態、癌、およびヒトまたは動物の他の多くの病気など疾患の治療において治療上有用であることが知られている。かかる免疫刺激は、ワクチンとして投与される一部の注射または経口投与物質に対する体の保護細胞および抗体反応を促進するのにも有用である。このリストは包括的であることが目的ではなく、免疫刺激が治療有用性を有することが認識された疾患または状態の代表例を単に示しているにすぎない。
【0123】
本明細書で使用される「Fc介在機序」は、Fc受容体活性化により介在される外来抗原に対する免疫応答の開始を指す。Fc介在機序としては、抗体依存細胞介在細胞毒性(ADCC)および補体依存細胞毒性(CDC)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0124】
一部の実施形態においては、本発明の抗体がFc介在機序を開始させる場合、その機序は抗体依存細胞介在細胞毒性(ADCC)である。さらに他の実施形態においては、本発明の抗体は補体依存細胞毒性(CDC)を開始しうる。
【0125】
抗体依存細胞介在細胞毒性、または抗体依存細胞性細胞毒性(ADCC)は、それによってナチュラルキラー細胞、Tリンパ球、単球/マクロファージ、および多形核好中球(エフェクター細胞)が外来または感染細胞を破壊するよう誘発される過程である。IgG抗体は最初に、ADCCを介在する細胞による認識のための細胞を感作する標的細胞上の抗原に結合しなければならない。IgG感作標的に曝露されると同時に、ADCCを介在する細胞上のIgG Fc受容体は、標的細胞の表面上の曝露Fc領域に結合する。かかるFc受容体結合は、ADCCを介在する細胞を活性化し、標的細胞を直接溶解し、その死をもたらす。ADCCとしては、白血球の一部のクラス(多形核好中球、単球、およびマクロファージ)によるファゴサイトーシスの刺激、マクロファージ活性化、ナチュラルキラー(NK)細胞活性、BおよびTリンパ球の成長および発達、およびリンフォカイン(殺傷または免疫調節活性を有する分子)のリンパ球による分泌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0126】
補体依存細胞毒性(CDC)(または補体介在細胞毒性、または補体介在細胞溶解)は、それによって外来または感染物質が破壊されうる別の過程である。抗体抗原複合体を形成する外来抗原による抗体相互作用は、結果として抗体のFc領域における構造変化が生じうる。この構造変化は補体因子C1を活性化させ、それによって、補体開始因子C1、C2、C3、およびC4を含む補体活性化カスケードを開始しうる。補体活性化カスケードは、細胞膜傷害複合体(MAC)を形成するC5、C6、C7、C8、およびC9の連続的相互作用で終了する。MACは細胞のリン脂質膜を破壊することによって細胞溶解を介在し、細胞膜における大きな孔を形成する。例えば、レフ(Reff),M.E.ら、Blood 83、p.435-445(1994年)を参照。このようにして、MAC複合体は、本発明の抗体によって認識される抗原を含有する外来または感染物質の細胞死を刺激することができる。さらに、C3およびC4は、炎症のペプチド介在因子として作用しうるが、これは結果として局所性血管拡張、および好中球、マクロファージ、および他の食細胞の移動をもたらす過程である。これらの食細胞はFc受容体を有し、それによって局所性抗体依存細胞性細胞毒性を増大させうる。
【0127】
一部の実施形態においては、本発明の抗体は、中程度から高いADCCおよび/または中程度から高いCDC活性を含むが、これらに限定されない中程度から高いFc介在活性を含む。本発明の抗体は、抗体濃度が10μg/mlであり、標的細胞に対するエフェクター細胞の比が30であり、標的細胞の少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%が溶解される場合に「中程度から高い」ADCC活性を有する。本発明の抗体は、抗体濃度が10μg/mlであり、非希釈ヒト血清またはウサギ血清の存在下、標的細胞の少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%が溶解される場合に「中程度から高い」CDC活性を有する。
【0128】
技術上周知のアッセイのいずれかを使用して本発明の抗体のFc介在機序をモニタリングすることができる。本発明の抗体の1つもしくはそれ以上のFc介在機序を開始させる能力をインビトロまたはインビボでモニタリングすることができる。例えば、抗体のCDC活性およびADCC活性は、オオタ(Ohta)ら、Cancer Immunol.Immunother.36、p.260(1993年)の方法によって測定されうる。他のアッセイとしては、抗体依存細胞介在細胞毒性の51Cr放出アッセイが挙げられるがこれに限定されず、補体介在溶解も使用されうる。Current Protocols in Immunology、コリガン(Coligan),A.M.ら(編)、ワイリー&サンズ株式会社(Wiley&Sons,Inc.)(1991年)、例えば、7.27部、ワング(Wang),B.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96、p.1627-1632(1999年)、マンチェス(Manches),O.ら、Blood 101、p.949-954(2003年)を参照。
【0129】
さらに、Fc介在宿主反応は、反応の抗腫瘍活性がCDCおよび/またはADCCアッセイによって測定されうる従来の免疫アッセイによってインビトロでモニタリングされうる。アッセイ方法は周知であり、実験免疫学便覧(Handbook of Experimental Immunology)、第2巻、ブラックウェル・サイエンティフィック・パブリケーションズ(Blackwell Scientific Publications)、オックスフォード(Oxford)(1986年)に記載されている。さらに、培養癌細胞株に対するヒト化キメラ抗体のCDC活性およびADCC活性は、免疫学実験入門(Manual of Immunological Experiments)、マツハシ(Matsuhashi)ら、学会出版センター(Gakkai Shuppan Center)、日本、1981年)に開示された手順に従って測定されうる。
【0130】
Fc介在機序は、遅延型過過敏反応の進展によって、または皮膚試験反応プロトコール、標準の放射活性放出アッセイを使用することによって、制限希釈アッセイによって、または標準のELISAアッセイを用いるIL−2の血漿レベルを測定することによって、腫瘍細胞に対する対象のリンパ球の毒性を測定するリンパ球刺激アッセイを含むが、これに限定されない当業者に周知の他のインビボまたはインビトロ手段によってインビボでモニタリングされうる。
【0131】
治療用途
本発明は、患者における癌を治療する方法にも関し、この方法は、本発明の抗体の治療上有効量をかかる治療を必要とする患者に投与するステップを含む。一部の実施形態においては、この抗体に基づく治療は、本発明の抗体を動物、より詳しくは哺乳動物、より詳しくはヒト患者に、癌の治療のために投与するステップを含む。
【0132】
「治療上有効量」は、状態、障害、または疾患を治療するために対象または患者に投与される場合、過剰なレベルの副作用なしに臨床的に十分である細胞反応を引き起こすに十分である化合物の量である。さらに詳細については、以下の「製剤および治療投与」の部を参照。
【0133】
「対象」は、ヒト、家畜(domestic and farm animals)を含む哺乳動物として分類されている動物、動物園の動物、競技用動物、コンパニオンアニマル、例えば家庭のペットのほか、例えば、ウシ、ヒツジ、フェレット、ブタ、ウマ、家禽、ウサギ、ヤギ、イヌ、ネコなどを含むが、これらに限定されない他の飼いならされた動物を指す。一部の実施形態においては、コンパニオンアニマルはイヌおよびネコである。他の実施形態においては、対象はヒトである。
【0134】
「患者」は、対象、例えば、状態、障害、または疾患、例えば、癌の治療を必要とするヒトを指す。
【0135】
「治療する」および「治療」という用語は、治療的処置および予防的(prophylactic)または予防的(preventative)措置の両方を指し、ここで目的は、望ましくない生理的状態、障害、または疾患を予防し、阻止し、または抑制し(減少させ)、もしくは有利な、または所望の臨床結果を得ることである。本発明の目的のために、有利な、または所望の臨床結果としては、症状の軽減、状態、障害、または疾患の程度の縮小、状態、障害、または疾患の状態の安定化(すなわち悪化させないこと)、状態、障害、または疾患の進行の遅延、または減速、状態、障害、または疾患状態の改善、緩和(一部または全部に関係なく)、または状態、障害、または疾患の増強または改善が挙げられるが、これらに限定されない。治療としては、過剰なレベルの副作用なしに、臨床的に顕著である細胞反応を引き起こすことも挙げられるが、これに限定されない。治療としては、治療を受けていない場合に予想される生存に比べ生存の延長も挙げられるが、これに限定されない。
【0136】
本発明の治療化合物としては、本発明の抗体および本発明の抗体をコードする核酸が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の抗体は、本明細書に記載された疾患、障害、または状態の1つもしくはそれ以上を含むがこれに限定されない癌と関係した障害または状態を治療するために使用されうる。本発明の抗体は、技術上周知の、または本明細書に記載された薬学的に許容される組成物において提供されうる。
【0137】
「腫瘍」および「癌」は同義的に、かつ、その文法的変形とともに使用され、ヒト、およびブタ、ネコ、イヌ、および高等霊長類を含むヒト以外の動物種の癌、肉腫、リンパ腫、および白血病を含む細胞型の腫瘍を指す。本発明の方法および組成物は、種々の細胞型の癌、肉腫、およびリンパ腫を含む広範囲の血管系(微小血管新生腫瘍)によって特徴づけられうる固形腫瘍の治療に適切である。本発明の治療によって標的化される固形腫瘍としては、扁平上皮細胞癌および類表皮癌を含む頭部頸部の癌、前立腺癌、硬性癌、乳腺腺癌を含む腺癌、リンパ肉腫、線維肉腫、平滑筋肉腫、軟骨腫、前立腺、肺、乳房、卵巣、胃、膵、喉頭、食道、精巣、肝、耳下腺、胆道、結腸、直腸、頚、子宮、子宮内膜、腎、膀胱、または甲状腺の癌、原発性腫瘍および転移、黒色腫、グリア芽細胞腫、カポジ肉腫、非小細胞肺癌、進行性悪性腫瘍、および血液性腫瘍、例えば、白血病などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0138】
本発明の抗体で治療されうる悪性および転移性の状態としては、悪性疾患、固形腫瘍、および本明細書に記載され、あるいは技術上周知の癌が挙げられるが、これらに限定されない(かかる障害の検討のためには、フィッシュマン(Fishman)ら、Medicine,第2版、J.B.リピンコット(Lippincott)社(Co.)、フィラデルフィア(Philadelphia)(1985年)を参照)。したがって、本発明の抗体は、癌に加えて、血管形成を含む他の疾患、障害、および/または状態の治療において有用でありうる。これらの疾患、障害、および/または状態としては、良性腫瘍、例えば、血管腫、聴神経腫、神経線維腫、トラコーマ、および化膿性肉芽腫;アテローム硬化斑;眼内血管形成疾患、例えば、糖尿病網膜症、未熟網膜症、斑状変性、角膜移植拒絶、血管新生緑内障、水晶体後線維増殖症、皮膚潮紅、網膜芽細胞腫、眼のブドウ膜炎および翼状片(Pterygia)(異常な血管増殖);関節リウマチ;乾癬;創傷治癒の遅延;子宮内膜症;脈管形成;肉芽化;過形成性瘢痕(ケロイド);偽関節骨折;強皮症;トラコーマ;血管癒着;心筋血管形成;冠状側副枝;大脳側副枝;動静脈奇形;虚血性四肢血管形成;オスラー−ウェバー(Oslaer-Webber)症候群;斑状新血管形成;毛細血管拡張;血友病関節;血管線維腫;線維性筋性形成異常;創傷肉芽化;クローン病;およびアテローム硬化が挙げられるが、これらに限定されない。
【0139】
転移の治療は、動物モデルにおける腫瘍転移を予防する本発明の抗体の能力によって示されうる。例えば、自然転移モデルおよび肺転移腫瘍モデルは技術上周知の転移モデルである。自然転移腫瘍モデルにおいては、動物には原発性腫瘤を形成する腫瘍細胞が皮下注射される。その後、腫瘍細胞の一部は、肺を含む動物の他の部分に自然に移動する。ツィスマン(Zisman),A.ら、Cancer Research 63、p.4952-59(2003年)、レフ(Lev),D.C.ら、Clin.Exp.Metas.20、p.515-23(2003年)を参照。肺転移腫瘍モデルにおいては、腫瘍細胞の懸濁液がマウスの尾静脈へ注射され、レシピエント動物の肺における転移の形成が評価される。ティアン(Tian)F.ら、Cancer Reseach 63、p.8284-92(2003年)、オガワ(Ogawa),K.ら、Int.J.Cancer 91、p.797-802(2001年)を参照。これらの動物においては、転移の治療において有効である抗体が、レシピエント動物へのその投与と同時に、転移の発生を阻止し、または陰性対照が投与されたレシピエント動物で形成された転移の数と比べ形成する転移の数を減少させる。
【0140】
本発明の抗体を使用して、新生物を含む高増殖性の疾患、障害、および/または状態を治療し、かつ/または診断することができる。この抗体は直接または間接の相互作用を通じて障害の増殖を抑制することができる。例えば、免疫応答を増大させ、特に高増殖性の障害の抗原の質を増大させ、もしくはT細胞を増殖させ、分化させ、または動員することによって、高増殖性疾患、障害、および/または状態は治療され、および/または診断されうる。この免疫応答は、既存の免疫応答を増強させることによって、または新しい免疫応答を開始させることによって増大されうる。
【0141】
本発明の抗体によって治療され、および/または診断される高増殖性疾患、障害、および/または状態の例としては、結腸、肺、腹部、骨、乳房、消化系、肝、膵、腹膜、内分泌腺(副腎、甲状腺、下垂体、精巣、卵巣、胸腺、甲状腺)、眼、頭部頸部、神経系(中枢および末梢)、リンパ系、骨盤、皮膚、軟組織、脾、胸、および尿生殖器系に位置した新生物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0142】
同様に、他の高増殖性疾患、障害、および/または状態は、本発明の抗体によって治療され、および/または診断されうる。かかる高増殖性疾患、障害、および/または状態の例としては、上記の臓器系に位置した新生物に加えて、高ガンマグロブリン血症、リンパ増殖性疾患、障害、および/または状態、パラプロテイン血症、紫斑、類肉腫症、セザリー症候群、ヴァルデンストレーム(Waldenstron)マクログロブリン血症、ゴーシェ病、組織球増殖症、および、他の高増殖性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0143】
本発明は、本発明の抗体の投与によって新血管形成と関連した疾患、障害、および/または状態の治療を提供する。血管形成の内因性促進剤と阻害剤との自然発生の均衡は、阻害影響が優勢であるものである。ラスチンヤッド(Rastinejad)ら、Cell 56、p.345-355(1989年)。創傷治癒、臓器再生、胚発生、および女性生殖過程など新血管形成が正常な生理条件下に生じるまれな場合には、血管形成は厳密に調節され、空間的および時間的に区切られる。固形腫瘍増殖を特徴づけるものなど病的な血管形成の条件下に、これらの調節管理は不十分となる。調節されない血管形成は病的になり、多くの新生物および非新生物疾患の進行を持続する。多くの重篤な疾患が、固形腫瘍増殖および転移、関節炎、眼疾患、障害、および/または状態の一部の型、および乾癬を含む異常な新血管形成によって支配されている。例えば、モーゼス(Moses)らによる概説、Biotech.9、p.630-634(1991年)、フォルクマン(Folkman)ら、N.Engl.J.Med.、333、p.1757-1763(1995年)、アウアーバッハ(Auerbach)ら、J.Microvasc.Res.29、p.401-411(1985年)、フォルクマン(Folkman)、癌研究の進歩(Advances in Cancer Research)、クライン(Klein)とワインハウス(Weinhous)編、アカデミックプレス(Academic Press)、ニューヨーク(1985年))))、p.175-203、パッツ(Patz)、Am.J.Opthalmol.94、p.715-743(1982年)、およびフォルクマン(Folkman)ら、Science 221、p.719-725(1983年)を参照。多くの病的状態では、新血管形成の過程は疾患状態の一因となる。例えば、固形腫瘍の増殖が血管形成に依存することを示す重要なデータが蓄積されている。フォルクマン(Folkman)とクラーグスブルン(Klagsbrun)、Science 235、p.442-447(1987年)。
【0144】
本発明の抗体が治療上使用されうるさらなる手段としては、例えば、補体(CDC)によって、またはエフェクター細胞(ADCC)によって介在される抗体の直接的細胞毒性、または、例えば免疫複合体としての抗体の間接的細胞毒性が挙げられるが、これらに限定されない。
【0145】
本発明の抗体は、他のモノクローナルまたはキメラ抗体と組合わせて、または、例えば、抗体と相互作用するエフェクター細胞の数または活性を増大させるために役立ち、または上記のようにラジオアイソトープまたは他の細胞毒性剤など細胞毒性物に結合されるリンフォカインまたは造血成長因子(例えば、IL−2、IL−3、およびIL−7など)とともに有利に利用されうる。
【0146】
本発明の抗体は、単独で、または他の型の治療(例えば、放射線療法、化学療法、ホルモン療法、免疫療法、抗腫瘍薬、および抗レトロウイルス薬)と組合わせて投与されうる。一部の実施形態においては、本発明の抗体は、単独で、または抗レトロウイルス薬と組合わせて投与されうる。
【0147】
製剤、治療投与、およびキット
本発明は、化合物、例えば、本発明の抗体、または本発明の医薬組成物の有効量の対象への投与によって治療する方法も提供する。一部の実施形態においては、抗体は実質的に精製される(例えば、実質的にその効果を制限し、または望ましくない副作用を生じる物質を含まない)。この抗体は細胞毒性剤に結合されうる。
【0148】
化合物が免疫グロブリンを含むときに使用されうる製剤および投与の方法が本明細書に記載されており、さらに適切な製剤および投与経路は、本明細書の以下に記載されるものの中から選択されうる。
【0149】
種々の送達系、例えば、リポソームでのカプセル化、微粒子、マイクロカプセル、化合物を発現可能である組換え細胞、受容体介在エンドサイトーシス(例えば、ウー(Wu)とウー(Wu)、J.Biol.Chem.262、p.4429-4432(1987年))、レトロウイルスまたは他のベクターなどの一部としての核酸の構成等が周知であり、これらを使用して本発明の化合物または医薬組成物を投与することができる。導入の方法としては、皮内、筋内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻内、硬膜外、および経口経路が挙げられるが、これらに限定されない。化合物または組成物は便利な経路、例えば、注入またはボーラス注入法によって、上皮または粘膜皮膚内膜(例えば、口腔粘膜、直腸および腸粘膜等)を通じる吸収によって投与されうるとともに、他の生物活性剤といっしょに投与されうる。投与は全身または局所に可能である。さらに、本発明の医薬化合物または組成物を、脳室内および硬膜下腔内注射を含む適切な経路によって中枢神経系に導入することが望ましい場合があり、脳室内注射は、例えば、オマヤレザバーなどレザバーに取付けた脳室内カテーテルによって促進されうる。経肺投与も、例えば、吸入器またはネブライザーの使用、およびエアゾール化剤による調製によって使用されうる。
【0150】
一部の実施形態においては、本発明の医薬化合物または組成物を治療を必要とする部位に局所に投与することが望ましく、これは、例えば、ただし限定する目的ではなく、手術中の局所注入、例えば、手術後の創傷包帯と同時に局所適用、注射によって、カテーテルによって、坐剤によって、またはインプラントによって達成されうるが、インプラントは、多孔性、非多孔性、またはゲル状の材料のものであり、sialastic膜、または繊維など膜を含む。本発明の抗体を含むタンパク質を投与する場合には、タンパク質が吸着することがない材料を使用するように注意しなければならない。
【0151】
他の実施形態においては、化合物または組成物はベシクルで、特にリポソームで送達されうる(ランガー(Langer)、Science 249、p.1527-1533(1990年)、トリート(Treat)ら、感染症および癌の治療におけるリポソーム(Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer)収載、ロペス−べレスタイン(Lopez-Berestein)とフィドラー(Fidler)、編、リス(Liss)、ニューヨーク(1989年)、p.353-365、ロペス−べレスタイン(Lopez-Berestein)、前掲書、p.317-327、一般に前掲書を参照。)
【0152】
さらに別の実施形態においては、化合物または組成物は制御放出系で送達されうる。一部の実施形態においては、ポンプを使用することができる(ランガー(Langer)、上掲書、セフトン(Sefton)、CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14、p.201(1987年)、ブッフワルト(Buchwald)ら、Surgery 88、p.507(1980年)、シャウデック(Saudek)ら、N.Engl.J Med.321、p.574(1989年)を参照)。他の実施形態においては、ポリマー材料を使用することができる(制御放出の医療適用(Medical Application of Controlled Release)、ランガー(Langer)とワイズ(Wise)、編、CRCプレス(CRC Pres.)、フロリダ州、ボーカラトーン(Boca Raton)(1974年)、制御された薬物バイオアベイラビリティ、製剤計画および性能(Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance)、スモーレン(Smolen)とボール(Ball)、編、ワイリー(Wiley)、ニューヨーク(1984年)、ランガー(Langer)とペパス(Peppas)、J.,Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23、p.61(1983年)、ラビー(Lavy)ら、Science 228、p.190(1985年)も参照、デューリング(During)ら、Ann.Neurol.25、p.351(1989年)、ハワード(Howard)ら、J.Neurosurg.71、p.105(1989年)を参照)。さらに他の実施形態においては、制御放出系を治療標的、すなわち脳の近くに配置することができ、したがって、全身量の一部分のみを必要とする(例えば、グッドサン(Goodson)、制御放出の医療適用(Medical Application of Controlled Release)収載、上掲書、第2巻、p.115-138(1984年)を参照)。他の制御放出系は、ランガー(Langer)による概説、Science 249:p.1527-1533(1990年)に開示されている。
【0153】
本発明は医薬組成物も提供する。かかる組成物は、治療上有効量の本発明の化合物、および薬学的に許容される担体を含む。一部の実施形態においては、「薬学的に許容される」は、連邦規制機関もしくは州政府によって承認されており、または米国薬局方もしくは動物、より詳しくはヒトにおける使用のために一般に認められている国際的な薬局方に掲載されていることを意味する。「担体」という用語は、それとともに治療薬が投与される希釈剤、補剤、賦形剤(excipient)、または賦形剤(vehicle)を指す。かかる医薬担体は、水、および石油、動物、植物、または合成由来のもの、例えば、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油などを含む油など滅菌液体でありうる。一部の実施形態においては、水は、医薬組成物が静脈内投与される場合に担体として使用されうる。生理食塩水および水性デキストロースおよびグリセロール溶液も液体担体として、特に注射剤用溶液に使用されうる。適切な医薬賦形剤としては、デンプン、ブドウ糖、乳糖、ショ糖、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキンミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。組成物は、必要に応じて、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤も含有しうる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル、散剤、持続放出製剤などの形をとりうる。組成物は、トリグリセリドなど一般的な結合剤および担体とともに坐剤として製剤化されうる。経口製剤は、医薬グレードのマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等など標準の担体を含みうる。適切な医薬担体の例は、E.W.マーチン(Martin)によるRemington's Pharmaceutical Sciencesに記載されている。かかる組成物は、患者に対する適切な投与のために形態を提供するために適切な量の担体とともに、好ましくは精製形態で、治療上有効量の化合物を含有する。製剤は投与方法に適しているべきである。
【0154】
他の実施形態においては、組成物は、ヒトへの静脈内投与に適合した医薬組成物としてルーチンの手順に従って調製される。通常、静脈内投与のための組成物は、滅菌等張性水性緩衝液での溶液である。必要に応じて、組成物は可溶化剤、およびリグノカインなどの局所麻酔薬も含有し、注射部位での痛みを緩和することができる。一般に、成分は別々に、または、例えば、乾燥凍結粉末、または活性剤の量を示すアンプルもしくは小袋(sachette)など気密容器中の水を含まない濃縮物として単位剤形で混合して供給される。組成物が注入によって投与される場合、滅菌医薬グレードの水または生理食塩水を含有する注入ビンで調合されうる。組成物が注射によって投与される場合、成分が投与前に混合されうるように、注射用の滅菌水または生理食塩水のアンプルが供給されうる。
【0155】
疾患または障害、例えば、癌の治療において治療上有効となる本発明の化合物の量は、標準の臨床方法によって判定されうる。さらに、場合により、インビトロアッセイを使用し、最適な用量範囲を確認するために役立てることができる。製剤で使用される正確な用量は、投与経路、および疾患または障害の重篤度によっても決まり、医師の判断および各患者の状況に従って決定されるべきである。有効量は、インビトロまたは動物モデル試験系から得られる用量反応曲線から推定されうる。
【0156】
抗体については、患者に投与される用量は通常、患者の体重の0.1mg/kg〜100mg/kgである。しかし、放射性標識抗体については、投与される用量は低くなり、例えば、患者の体重の0.01mg/kg〜1mg/kgになりうるとともに、毒素免疫複合体については、投与される用量はさらに低くなり、例えば、患者の体重の0.001mg/kgになりうる。一部の実施形態においては、患者に投与される用量は患者の体重の0.001mg/kg〜100mg/kgである。他の実施形態においては、患者に投与される用量が患者の体重の0.01mg/kg〜50mg/kgである。他の実施形態においては、患者に投与される用量が患者の体重の0.1mg/kg〜20mg/kgである。さらに他の実施形態においては、患者に投与される用量が患者の体重の1mg/kg〜10mg/kgである。一般に、ヒト抗体は、外来ポリペプチドに対する免疫応答により他の種由来の抗体よりもヒト体内で長い半減期を有する。したがって、低用量のヒト抗体および低頻度の投与がしばしば可能である。さらに、本発明の抗体の投与の用量および頻度は、例えば、脂質付加などの修飾によって、抗体の(例えば、脳への)摂取および組織透過性を増強させることによって減少されうる。
【0157】
本発明は、本発明の医薬組成物を含むキットも提供する。このキットは、本発明の医薬組成物の1つもしくはそれ以上の成分で充填された1つもしくはそれ以上の容器を含みうる。場合により、かかる容器には注意または印刷された説明書が付随している。
【0158】
例えば、かかる印刷された説明書は、医薬または生物学的製剤の製造、使用、または販売を規制する政府機関によって指示された形でありうるが、その注意は、癌などの状態を治療するためにヒトに投与するための製造、使用、または販売の機関による承認を示している。一部の実施形態においては、キットはさらに、例えば、癌を治療するための医薬組成物の使用に関する情報を提供する印刷物、または、例えば、癌を治療するための医薬組成物の使用に関する情報を提供する、あらかじめ録音されたメディアデバイス、またはプランナーを含む。
【0159】
「印刷物」は、例えば、本、ブックレット、パンフレット、またはリーフレットの1つでありうる。印刷物には癌の治療のための本発明の医薬組成物の使用が記載されうる。可能なフォーマットとしては、ブレットポイントリスト、よくある質問(FAQ)のリスト、またはチャートが挙げられるが、これらに限定されない。さらに与えられる情報は、絵、グラフィック、または他の記号を用いる非文章表現で示されうる。
【0160】
「あらかじめ録音されたメディアデバイス」は、例えば、ビデオテープカセット、DVD(デジタルビデオディスク)、映写スライド、35mm映画、または他の視覚メディアデバイスなど視覚メディアデバイスでありうる。あるいは、あらかじめ録音されたメディアデバイスは、CD−ROM(コンパクトディスク読取専用メモリ)、またはフロッピー(登録商標)ディスクなど対話型ソフトウェアアプリケーションでありうる。あるいは、あらかじめ録音されたメディアデバイスは、例えば、レコード、オーディオカセット、またはオーディオコンパクトディスクなどオーディオメディアデバイスでありうる。あらかじめ録音されたメディアデバイスに含まれている情報には、癌の治療のための本発明の医薬組成物の使用が記載されうる。
【0161】
「プランナー」は、例えば、週1回、月1回、月複数回、年1回、または年複数回のプランナーでありうる。プランナーは日記として使用し、投与量をモニタリングし、投与される用量のトラックを維持し、または、本発明の医薬組成物が定期的に投与されることが困難でありうる将来のイベントのために準備することができる。あるいは、プランナーは、用量が摂取され、かつ用量が摂取されていない場合にモニタリングの手段を提供するカレンダーでありうる。この種のプランナーは、自分自身に投薬するための通常のスケジュールを有する患者に特に有用となる。さらに、プランナーは、自分自身に投薬することができ、忘れっぽくなりうる高齢者、小児、または他の患者群に有用でありうる。当業者は、本発明で使用するために適切である各種の計画ツールを理解するであろう。
【0162】
キットは、キットの他の成分を保存するための容器も含みうる。容器は、例えば、バッグ、ボックス、エンベロープ、または本発明における使用に適切である他の容器でありうる。好ましくは、容器は、本発明の医薬組成物に必要である各成分および/または管理デバイスに適合するように十分に大きい。しかし、場合により、患者のハンドバッグ、ブリーフケース、またはポケットに隠せる小さ目の容器であることが望ましい。
【0163】
本発明の医薬組成物を患者に送達する方法
本発明は、本発明の抗体の治療上有効量を含む医薬組成物をそれを必要とする患者に送達する方法にも関し、この方法は、(a)医薬組成物を処方することが許されている医師の身元をコンピュータ可読媒体に登録するステップと、(b)患者に医薬組成物に付随するリスクに関するカウンセリング情報を提供するステップと、(c)付随するリスクにもかかわらず医薬組成物が投与される患者のインフォームドコンセントを得るステップと、(d)インフォームドコンセントを得た後に患者をコンピュータ可読媒体に登録するステップ、および(e)患者の医薬組成物へのアクセスを可能にするステップとを含む。
【0164】
本発明の薬物送達法は、とりわけ、本発明の医薬組成物を処方する資格のある医師をコンピュータ可読記憶媒体に登録するステップを含む。コンピュータ可読媒体に登録されると、医師は医薬組成物をそれを必要とする患者に処方する資格がありうる。一般的に言えば、コンピュータ可読記憶媒体に登録されるために、医師は、例えば、患者に教育やカウンセリングを提供する種々の局面に応じる必要がありうる。コンピュータ可読記憶媒体における医師の登録は、例えば、郵便、ファクシミリ伝送、またはオンライン伝送で、好ましくは、本発明の医薬組成物に関する教育資料とともに、登録カードまたは書式を医師に提供することによって達成されうる。医師は、そこで要求された情報を提供することによって登録カードまたは書式のすべての項目に記入しうるとともに、登録カードまたは書式は本発明の医薬組成物のメーカーまたは販売業者に、または登録資料の他の正式な受取人に、例えば、郵便、ファクシミリ伝送、またはオンライン伝送で返却されうる。次いで、登録カードまたは書式における医師の情報はコンピュータ可読記憶媒体へ入力される。医師(および以下で論じられる患者)の登録に使用されうる適切なコンピュータ可読記憶媒体は、本出願の開示を把握すれば、当業者には明らかであろう。
【0165】
癌患者を含む患者の検査の過程で、医師は患者の状態が本発明の医薬組成物の投与によって改善されうることを判定しうる。本発明の医薬組成物を処方する前に、医師は、例えば、医薬組成物に関連した種々のリスクと利点について患者に助言することができる。患者は医薬組成物に関連した周知の疑わしいリスクのすべての完全な開示が提供されうる。かかるカウンセリングは口頭、および書面の形で提供されうる。一部の実施形態においては、医師は患者に医薬組成物に関する文献資料、例えば、製品情報、教育資料などを患者に提供することができる。
【0166】
本発明の医薬組成物に付随するリスクに関するカウンセリングを受けることに加えて、本発明の方法はさらに、患者によって署名されるインフォームドコンセントの書式に患者が記入することを必要とする。インフォームドコンセントの書式の記入完了と同時に、患者はコンピュータ可読記憶媒体に登録されうる。患者が登録されるコンピュータ可読記憶媒体は、医師が登録されるコンピュータ可読記憶媒体と同じであり、またはこれと異なりうる。
【0167】
本明細書に記載された方法による医師および患者の1つもしくはそれ以上のコンピュータ可読記憶媒体への登録は、本発明の医薬組成物へのアクセスをモニタリングし、かつ公認する手段を提供する。したがって、コンピュータ可読記憶媒体は、本発明の方法に従うことができない患者へのアクセスを拒否することに役立ちうる。一部の実施形態においては、本発明の医薬組成物へのアクセスは処方箋の形であり、ここで処方する医師はコンピュータ可読記憶媒体に登録されており、医薬組成物の付随リスクに関して患者にカウンセリングを提供し、かつそれを必要とする患者に医薬組成物を処方する前に、患者からインフォームドコンセントを得ている。
【0168】
本発明の医薬組成物に関して消費者を教育する方法
本発明は、本発明の医薬組成物の使用について消費者を教育する方法にも関し、この方法は、医薬組成物を販売時点で消費者情報とともに消費者に分配するステップを含む。一部の実施形態においては、分配は薬剤師または医療提供者を有する販売場所で生じる。
【0169】
本明細書で使用される「消費者情報」という用語は、英語テキスト、非英語テキスト、視覚映像、チャート、電話録音、ウェブサイト、および生の消費者サービス担当者へのアクセスを含むが、これらに限定されない。本発明の一部の実施形態においては、消費者情報は、本発明の医薬組成物の使用説明書、適切な年齢の使用、適応症、禁忌、または警告を提供する。一部の実施形態においては、この方法はさらに、医薬組成物に関する消費者の質問に答える立場にある関係者へ専門的情報を提供するステップを含む。
【0170】
本明細書で使用される「専門的情報」という用語は、医療関係者が医薬組成物に関する顧客の質問に答えることができるように考えられた本発明の医薬組成物に関する情報を含むが、これに限定されない。
【0171】
本明細書で使用される「関係者」は、例えば、医師、医師助手、ナースプラクティショナー、薬剤師、および顧客サービス担当者を含む。
【0172】
本発明はさらに、本発明の抗体の治療上有効量を含む医薬組成物を識別する方法に関し、この方法は、(a)ヒト組織因子に結合能がある抗体を単離するステップであって、この抗体は正常血漿対照と比べ組織因子介在血液凝固を阻害することがなく、かつFc介在機序を開始しうるステップと、(b)(a)を反復し、治療上有効であると判明しうる複数の候補抗体を得るステップと、(c)1つのかかる候補抗体について、ヒト以外の動物に投与される場合にその非毒性を証明するステップと、(d)監視下での臨床試験を行い、かかる候補抗体の非毒性および有効性を証明するステップと、(e)規制機関の承認を確保し、癌を治療するためのかかる1つの候補抗体を分配するステップ、および(f)活性剤として候補抗体を含む医薬組成物を製造するステップとを含む。
【0173】
本明細書で使用される「抗体の単離」という語句は、本明細書で既述されているように、ヒトTF(hTF)に結合能がある抗体の生成および単離に関するアッセイおよびプロトコールの使用を含み、ここで抗体は、インビトロ凝固アッセイによって判定されるように、正常血漿対照と比べTF介在血液凝固を阻害することがない。複数の候補抗体の単離と同時に、この方法はさらに、候補抗体について、ヒト以外の動物に投与される場合にその非毒性を証明するステップを含む。
【0174】
医薬の非毒性を証明する方法は技術上周知であり、ヒト以外の動物に本発明の医薬組成物を投与するステップと、標準の医療検査を行い、医薬組成物が投与されるヒト以外の動物に対する医薬組成物の非毒性効果を証明するステップとを含むが、これらに限定されない。本発明の一部の実施形態においては、この方法はさらに、候補抗体のヒト組織因子への結合能を証明するヒト以外の動物でのインビボ実験を含み、ここで候補抗体は正常血漿対照と比べ組織因子介在血液凝固を阻害することがなく、かつヒト以外の動物モデルにおけるFc介在機序を開始しうる。
【0175】
本明細書で使用される「臨床試験」は、その安全性を評価し、適切な用量範囲を決定し、かつヒトにおけるその使用の潜在的な副作用を確認する候補抗体の試験を指す。さらに、臨床試験系は、癌の治療における医薬組成物の有効性を確認し、かつヒトへの医薬組成物の安全な投与を最適化するために使用される情報を提供するために行われる試験を含む。臨床試験の成功裏の終了と同時に、この方法はさらに、規制機関、例えば、食品医薬品局の承認を確保し、癌の治療のための候補抗体を分配するステップを含む。
【0176】
本明細書に記載された種々の実施形態または選択肢のすべては、ありとあらゆる変形で組合わせられうる。
【0177】
以下の実施例はさらに本発明の例示であるが、本発明の範囲を限定するようには考えられていない。
【実施例】
【0178】
材料
細胞培養試薬は、インビトロジェン社(Invitrogen Corp.)、カリフォルニア州(CA)から購入した。チタンワンチューブ(Titan one Tube)RT−PCRシステムはロシュ(Roche)(スイス、バーゼル(Basel)、カタログ番号1855476)製であった。Ni−NTAアガロースは、キアゲン(Qiagen)(カリフォルニア州(CA)、カタログ番号30210)から入手し、Bio−GelP60はバイオ−ラッド(Bio-Rad)(カリフォルニア州(CA)、カタログ番号150-4161)から入手した。HiTrapプロテインG HPカラムは、アマシャム(Amersham)(英国、バッキンガムシャー州(Buckinghamshire)、カタログ番号17-0404-01)から購入した。マウス抗ヒトTF mAbはカルビオケム(Calbiochem)(カリフォルニア州(CA)、カタログ番号612161)から得た。プール正常ヒト血漿は、ジョージ・キング・バイオメディカル株式会社(George King Bio-Medical Inc.)(カンザス州(KA)、カタログ番号0010-01)製であった。細胞解離溶液はシグマ(Sigma)(ミズーリ州(MO)、カタログ番号C-5914)製であった。
【0179】
hTF発現ベクターの構成
ヒト組織因子(hTF)遺伝子をRT−PCRによってヒト乳癌細胞株SKBR3からクローン化した。手短に言えば、総RNA 1μgをトリゾール(Trizol)試薬(インビトロジェン社(Invitrogen Corp.)、カリフォルニア州(CA)、カタログ番号15596018)を用いて、メーカーの指示に従いSKBR3細胞から単離した。単離されたRNAを逆転写し、チタンワンチューブ(Titan one Tube)RT−PCRシステムを用いて、メーカーの指示に従い、プライマーTF4(5’UTR−ACGGAACCCGCTCGATCTCG(配列番号:13))、およびTF5(3’UTR−TGCAGTAGCTCCAACAGTGC(配列番号:14))で増幅した。最初のPCR産物をさらに、プライマーTF1(5’−ATC TGC GGA TCC ACC ATG GAG ACC CCT GCC TGG CC−3’(配列番号:15))およびTF3(5’−ATC TGC CTC GAG TTA ATG GTG ATG GTG ATG GTG GGA TCC TCT TTC TCT GAA TTC CCC TTT CTC CTG−3’(配列番号:16))を用いて増幅し、32 アミノ酸N末端リーダー配列および9アミノ酸C末端RGS−His6タグ配列を有するhTFの細胞外ドメインをコードするhTF DNA断片を生成する(可溶性hTF)。可溶性hTFは、タンパク質精製のための3’末端でのHis−タグを含む発現ベクターへの挿入のための5’BamHI部位および3’XhoI部位を含んだ。最初のPCR産物も使用して、プライマーTF1およびTF2(5’−ATC TGC CTC GAG TTA ATG GTG ATG GTG ATG GTG GGA TCC TCT TGA AAC ATT CAG TGG GGA GTT CTC−3’(配列番号:17))で完全長hTF遺伝子を生成した。増幅可溶性hTFおよび完全長hTFを配列分析のためにpCR4−TOPOベクター(インビトロジェン社(Invitrogen Corp.)、カリフォルニア州(CA))へクローン化した。DNA断片をコードする可溶性hTF(配列番号:3)および完全長hTF(配列番号:1)もpCEP4およびpcDNA3.1発現ベクター(インビトロジェン社(Invitrogen Corp.)、カリフォルニア州(CA))へクローン化した。
【0180】
可溶性hTFの発現および精製
3×105細胞/ウェルのHEK293細胞をトランスフェクションの前日に6穴プレートにプレーティングした。リポフェクタミン(Lipofectamine)プラス試薬(インビトロジェン社(Invitrogen Corp.)、カリフォルニア州(CA))を用いて3時間37℃でメーカーの指示に従い可溶性hTF/pCEP4プラスミドDNA 1μgで細胞をトランフェクションした。安定トランスフェクト細胞をG418(750μg/ml)含有DMEM培地で細胞を培養することによって選択した。次いで、可溶性hTFタンパク質を1mlサイズのNiアガロースカラムを用いて培養培地300mlから精製し、線形イミダゾールバッファーグラディエント(PBSバッファー中5mM〜100mMイミダゾール)で溶出した。可溶性hTFを含有する画分をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)分析によって同定した。さらに、可溶性hTFをゲルろ過クロマトグラフィーによって精製し、汚染物を除去した。手短に言えば、遠心フィルター(Centrifugal Filter)(ミリポア(Millipore)、マサチューセッツ州(MA)、カタログ番号UFV4BGC25)で約100μlに試料を濃縮させ、PBS中0.7×50cmのBio−Gel P60カラム上へロードした。次いで、タンパク質をPBS中で溶出し、0.5ml画分を回収し、SDS−PAGEによって分析した。可溶性hTFバンドをマウス抗hTF mAb(カルビオケム(Calbiochem)、カリフォルニア州(CA)、カタログ番号612161))を用いて標準ウェスタンブロット法によって検証した。可溶性hTFを含有する画分をあわせた。
【0181】
安定完全長hTF発現細胞株の調製
リポフェクタミン(Lipofectamine)プラス試薬を用いてメーカーの指示(インビトロジェン社(Invitrogen Corp.)、カリフォルニア州(CA))に従い完全長hTF/pcDNA3.1プラスミド(pTF103)でCHO−K1細胞をトランスフェクションした。750μg/mlのG418含有DMEM培地存在下に完全長hTFを安定に発現するクローンを選択した。選択の1週間後、耐性細胞をプレートからTrypsin−EDTA溶液とともに除去し、DMEM/G418培地で3細胞/mlの濃度に希釈した。希釈液の100μlアリコートを1つの96穴プレートの各ウェルへ添加した。単一の細胞クローンを展開し、市販の抗TF抗体(カルビオケム(Calbiochem)、カリフォルニア州(CA)、カタログ番号612161))を用いてFACSによってスクリーニングした。
【0182】
マウスにおけるポリクローナル、抗hTF IgG反応の免疫および測定
多重部位でのマウスの迅速免疫(RIMMS)のプロトコールは、キルパトリック(Kilpatrick),K.E.ら、Hybridoma 16、p.381-389(1997年)によって既述されており、これを用いてマウスにおけるhTFに対する抗体を生成した。手短に言えば、8週齢のメスBalb/cマウス3匹の各々に対し、精製可溶性hTF(10μg/ml)の皮下注射を4回、11日間に、3−5日おきに投与した。各回の免疫のために、マウスを麻酔し、次いで、完全フロイントアジュバント(CFA)中の免疫原でうなじの2部位およびふくらはぎと股間の両方に部位当り40−50μlを注射し、RIBIアジュバント(シグマ(Sigma)、ミズーリ州(MO)、セントルイス(St.Louis))中で並列部位(下部および中央部ふくらはぎ、大腿部、および腋窩)において部位あたり40−50μlの用量で皮下注射した。初回注射前および最後のブーストの2日後に血液サンプルを取り、免疫原に対する抗体反応についてELISAで分析した。ELISAでは、96穴ELISAプレートをPBS中100μl/ウェル、pH7.4、37℃、2時間、免疫原(2μg/ml)でコーティングした。プレートを0.05%Tween−20(PBS-T)含有PBSで1回洗浄し、150μl/ウェル、37℃、30分間、PBS中1%BSAでブロックした。PBS−Tによる1回の洗浄後、PBS−T中に希釈した免疫前および免疫血漿を100μl/ウェルでプレートに添加した。プレートを37℃、45分間インキュベートし、PBS−Tで3回洗浄した。次いで、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(サザンバイオテク(Southern Biotech)、アラバマ州、バーミングハム(Birmingham)、カタログ番号1031−05)で結合したヤギ抗マウスIgGの1:5000希釈液100μlを各ウェルに添加した。37℃、30分間のインキュベーション後、プレートをPBS−Tで3回洗浄した。TMB−H2O2基質バッファー(ピアス(Pierce)、イリノイ州(IL)、ロックフォード(Rockford))100μl/ウェルを添加することによって抗体結合を視覚化した。反応を室温下、10分間続行し、ELISAプレートリーダーを用いて650nmの波長で読んだ。O.D.測定価が内部陰性対照(二次抗体のみを有するウェル)のものより2倍高い場合に、抗体力価を血清希釈の逆数と規定した。
【0183】
抗体TF278、TF277、TF392、およびTF9を、Balb/cマウス3匹の各々に対し、精製可溶性hTF(10μg/ml)の皮下注射を5回、11日間に、2−4日おきにしたことを除き、上記と同じ方法を用いて生成した。
【0184】
ハイブリドーマの遺伝子
最後のブーストの2日後、その血清が1:10,000より大きいELISA力価を有する免疫したマウスを二酸化炭素で窒息させることで安楽死させた。両側の膝窩、浅鼡径、腋窩、および鰓リンパ節を単離し、ペニシリンおよびストレプトマイシンを含有する新鮮培地で洗浄した。次いで、単一の細胞懸濁液を50%Excell−610および50%RPMI−1640培地を含む血清を含まない培地中でリンパ節から調製した。リンパ節細胞懸濁液を上記の培地で2回洗浄し、400xgで10分間、室温で遠心分離によって回収した。次いで、50mlのコニカルポリプロピレンチューブにおいて、リンパ節細胞を2.5:1の比で50%ポリエチレングリコール1500(PEG、ロシュバイオサイエンス(Roche Bioscience)、カリフォルニア州(CA)、パロアルト(Palo Alto))1mlを添加することによって、マウス骨髄腫細胞(P3X63/Ag8.653、ATCC、バージニア州(VA)、マナッサス(Manassas))と融合した。結果として生じるPEG細胞調製物を1回洗浄し、次いでExcell−610とRPMI−1640の50:50混合物、10%FBS、10%オリゲン クローニング ファクター(Origen Cloning Factor)(アイゲン(Igen)、メリーランド州(MD)、ロックビル(Rockville))、2mM L−グルタミン、100U/mlペニシリンおよびストレプトマイシン、および0.01mMベータ−メルカプトエタノールを含有するハイブリドーマ培地(HM)中に再懸濁し、平底96穴プレートへ2×105細胞/100μl/ウェルで分配した。7%CO2で37℃、18時間インキュベーション後、2×HAT(GIBCO-BRL、ニューヨーク州(NY)、グランドアイランド(Grand Island))を補充したHM 100μlを各ウェルに添加した。培地を96時間後に100μMヒポキサチンおよび16μMチミジンを補充したHMに変更した。HAT選択の7から10日後、プレートをハイブリドーマ増殖について顕微鏡で検査した。さらに、単一のコロニーからのハイブリドーマを24穴プレートで個別に展開し、培養上清をELISAによってhTFに特異的なマウスIgG抗体についてスクリーニングした(下記参照)。
【0185】
ELISAによる抗hTF mAbsの一次スクリーニング
手短に言えば、96穴ELISAプレートをPBS、pH7.4中、37℃、2時間、2μg/ml可溶性hTF 100μl/ウェルでコーティングした。プレートをPBS−Tで1回洗浄し、1%BSA含有PBS150μl/ウェルで37℃、30分間ブロックした。PBS−Tによる1回の洗浄後、ハイブリドーマ上清を100μl/ウェルでプレートに添加した。プレートを37℃、45分間インキュベートし、PBS−Tで3回洗浄した。次いで、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(サザンバイオテクノロジー(Southern Biotechnology)、カタログ番号1031−05)で結合したヤギ抗マウスIgGの1:5000希釈液100μlを各ウェルに添加した。37℃、30分間のインキュベーション後、プレートをPBS−Tで3回洗浄した。TMB−H2O2基質バッファー100μlを各ウェルに添加することによって抗体結合を視覚化した。反応を室温下、10分間続行し、ELISAプレートリーダーを用いて650nmの波長で読んだ。陽性反応を、内部陰性対照(二次抗体Abのみ)のものより2倍高いO.D.測定値と規定した。すべてのELISA陽性クローンをさらにHMで展開し、凍結保存した。
【0186】
フローサイトメトリーによる抗hTF mAbsの二次スクリーニング
完全長hTFを発現する細胞(CHO−K1)を0.25%トリプシン−EDTA溶液で溶離し、2%FBSおよび0.05%NaN3(FACSバッファー)を含有する冷PBS中で2回、400xgで10分間洗浄し、次いでU底96穴マイクロタイタープレートヘ0.5×106細胞/ウェルで分配した。細胞を200xgで4℃、3分間、遠心分離した。吸引による上清の除去後、細胞をハイブリドーマ上清70μl中に再懸濁した。4℃、45分間インキュベーション後、細胞を冷FACSバッファー、220μl/ウェルで、200xgで3分間、遠心分離によって2回洗浄し、1:25FITC標識ヤギ抗マウスIgG(サザンバイオテクノロジー(Southern Biotechnology))50μl中に再懸濁した。細胞を4℃、30分間インキュベートし、次いで冷FACSバッファー、220μl/ウェルで3回洗浄した。最後に、細胞をFACSバッファー0.4ml中に再懸濁し、それらの蛍光強度をフローサイトメーター(FACSscan、ベクトンディッキンソン(Becton Dickinson)で測定し、セルクエスト(Cell Quest)ソフトウェア(ベクトンディッキンソン(Becton Dickinson)を用いて分析した。陽性クローンを、FACSプロフィールにおけるパーセント陽性細胞が、細胞がFITC標識ヤギ抗マウスIgGでのみ染色された場合に得られたプロフィールより少なくとも3倍高いクローンとして同定した。
【0187】
抗hTF mAbsのBIAcore分析
抗hTF mAbsの結合特性をBIAcoreXを用いて評価した。手短に言えば、CM5 BIAcoreバイオセンサチップを器具へドッキングし、1:1のNHS/EDC 55μlで室温下、活性化した。組換え可溶性hTFおよびBSA(0.05M酢酸緩衝液、pH4.5中10μg/ml)をそれぞれフローセル1および2の活性化チップ上に固定した。固定は、1000−2000RUの共鳴反応が達成されるまで5μl/分の流量で行われた。次いで、チップをエタノールアミンHCl、pH8.5、55μlの注入によりブロックした後、50mM NaOH、1M Naclで5回洗浄した。チップへ固定された可溶性hTFへの抗hTF mAbsの結合を測定するために、BIAcoreランニングバッファー(HBS−EP、バイアコア(Biacore)AB、スウェーデン、ウプスラ(Uppsala)、カタログ番号1001−08)中の変動濃度で抗hTF mAbs 30μlを5μl/分の流量でセンサ表面上に注入した。注入相の完了後、同じ流量で360秒間、BIAcoreランニングバッファーで解離をモニタリングした。50mM NaOH 1M NaCl 30μlを用いる注入の間で表面を再生させた。個別のセンサグラムをBIAシミュレーションソフトウェアを用いて分析した。代表的なデータが表3および4に示されている。
【0188】
TF膜抽出物の調製
完全長hTFを発現するCHO−K1細胞(5×107)を細胞溶離溶液で回収し、氷冷1×PBSで1回洗浄した。細胞を膜抽出緩衝液(10mM Tris−HCl、pH=8.0、1mM MgCl2、1mM PMSF、2μg/mlアプロチニン、2μg/mlロイペプチン)2ml中に再懸濁し、ティッシュ テアラー(Tissue Tearor)組織ホミジナイザー(バイオスペック プロダクツ株式会社(Biospec Products,Inc.)、オクラホマ州(OK)、バートルズビル(Bartlesville))で3回、各30秒間、氷上でホモジナイズした。細胞残屑を1500xgで5分間、遠心分離によって除去した。細胞膜を12,000xgで30分間、4℃、遠心分離によって回収した。ペレットを1×PBS中に再懸濁し、等分し、−20℃で保存した。
【0189】
ハイブリドーマIgGの精製
ELISAおよびFACS陽性ハイブリドーマクローンを低IgGハイブリドーマ培地(40%RPMI 1640、40%EX−Cellハイブリドーマ培地、10%低IgG FBS、10%オリゲン(ORIGEN)クローニングファクター、2mM L−グルタミン、10mM HEPES、1mMピルビン酸ナトリウム)中で37℃、7%CO2の湿気のある環境下に培養した。分泌抗体を含有する培養培地40mlを1ml HiTrapプロテインG HPカラム上へロードし、次いでPBS 10mlで洗浄した。結合IgGを0.1Mグリシン、pH3.7、3mlでカラムから溶出し、1M Tris−HCl、pH9.0で中和した。IgG含有画分をプールし、PBS中で透析した。
【0190】
hTF凝固アッセイ
hTF抗体の抗凝固活性をモリセイ(Morrissey),J.H.ら、Thrombosis Research 52、p.247-261(1988年)(2段階プロトロンビン(2st−PT)アッセイとしても知られる)、およびファング(Fang),C.H.ら、Thrombosis and Haemostasis 76、p.361-368(1996年)によるアッセイを用いて測定した。hTF膜抽出物の異なる希釈液をPBSで100μlに調節し、30分間、37℃水浴中で予熱した。次いで、ヒト血漿50μlおよび50mM CaCl2 50μl溶液を混合液に添加し、清潔な使い捨て式プラスチック製キュベットで血液凝固を開始させた。血液凝固を15秒間隔で405nm(A405)での吸光度を測定することによってモニタリングした。A405測定値の変化が15秒で0.01未満に達したところで血液凝固は完了した。結果として180秒の血液凝固時間となるhTF膜希釈を用いてhTF mAbsの阻害効果を試験した。血液凝固に対するhTF mAbの阻害効果を試験するために、hTF膜抽出物を各mAb(最終濃度10μg/ml〜100μg/ml)で37℃、30分間、血液凝固反応の開始前にインキュベートした。
【0191】
【表1】
【0192】
【表2】
注:結果は、24穴プレートで増殖した個別のハイブリドーマの培養上清のFACSスクリーニングによって得られた。パーセント陽性は、安定にTFを発現し、陽性染色したTF34細胞の集団を示す。
【0193】
【表3】
注:正常血漿対照およびB−Fact対照(正常凝固活性の30−50%に希釈されたプールされた正常ヒト血漿(ジョージ・キング・バイオメディカル株式会社(George King Bio-medical,Inc.)、カンザス州(KS)、カタログ番号0040−0)は、われわれのアッセイフォーマットで正常ヒト血液および境界ヒト血液サンプルの血液凝固時間を示した。境界対照よりも凝固時間が短いすべての抗体がリストアップされている。凝固時間の長い唯一の阻害抗体(#84)が示されている。抗体の大部分は凝固を阻害する。
【0194】
【表4】
注:表4においては、表3に示されているのと同じ正常血漿対照およびB−Fact対照(正常凝固活性の30−50%に希釈されたプールされた正常ヒト血漿(ジョージ・キング・バイオメディカル株式会社(George King Bio-medical,Inc.)、カンザス州(KS)、カタログ番号0040−0)が使用された。表4にリストアップされたすべての抗体は、境界対照(B−Fact対照)よりも短い凝固時間を示した。
【0195】
ADCC活性
抗TF抗体TF260、TF278、およびTF392のADCC活性を以下のADCCアッセイを使用して測定した。ヒストパーク(Histopaque)−1077グラディエント遠心分離法(シグマ社(Sigma Co.)、ミズーリ州(MO)、セントルイス(St.Louis))を使用して正常ドナーの末梢血からヒト白血球を単離した。次いで、単離された白血球をエフェクター細胞として使用した。U底96穴プレートにおいて、腫瘍細胞(5×103/ウェル)を、10%FBSを補充したRPMI 1640の総量120μl中で変動濃度の抗ヒトTF mAbsまたは対照抗体の非存在または存在下にエフェクター対標的(E/T)比0:1−40:1でヒストパーク精製済みヒト白血球と混合した。プレートを37℃、5%CO2を含有する湿気のある環境下にインキュベートした。試験抗体なしにエフェクター細胞と混合した標的細胞を陰性対照として使用した。16−18時間のインキュベーション後、50μlアリコートの培養上清を回収し、平底96穴プレート中の乳酸脱水素酵素活性について、サイトトックス(Cytotox)96非放射性細胞毒性アッセイキット(プロメガ社(Promega Co.)、ウィスコンシン州(WI)、マディソン(Madison))を使用し、メーカーの指示に従って分析した。腫瘍細胞の溶解率を以下のように計算した。%細胞毒性=実験的放出−エフェクター自然放出−標的自然放出)/(標的最大放出−標的自然放出)×100。抗TF抗体TF260、TF278、およびTF392のADCC結果は、ドナー6−7人からの3通のサンプルの平均溶解率±S.D.で表され、これは図4A−4Cで確認されうる。ADCCアッセイのために、TF陽性SW900およびTF陰性A549肺腫瘍細胞を標的として使用した。無関係のヒトIgG1を陰性抗体対照として使用した。図4A−4Cは、抗TF抗体TF260、TF278、およびTF392が、陰性抗体対照(hIgG)と比べTF陽性細胞でインキュベートすると%細胞毒性を増大させることを明らかに示す。
【0196】
すべての文書、例えば、本明細書で引用された科学的刊行物、特許、および特許公報は、各個別の文書が具体的かつ個別にその全体が参照することにより組込まれることが示されたと同程度にその全体が参照することにより本明細書に組込まれる。引用された文書が文書の第1ページのみを示す場合、文書の残りのページを含めて、文書の全体が意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0197】
【図1】Ni−アガロースカラムを用いた可溶性ヒト組織因子(hTF)の精製を示す図である。レーン1は分子量マーカーを含む。レーン2は予備精製であり、レーン3−4はフロースルーおよび洗浄試料である。レーン5−9はイミダゾールグラディエントで溶出された画分である。矢印は、可溶性hTFを示す。レーン8におけるようにタンパク質バンドを含む画分11−14をプールし、さらにゲルろ過クロマトグラフィーを用いて精製した。レーン9におけるようにタンパク質バンドを含む画分15−26をプールし、免疫に使用した。
【図2】ゲルろ過クロマトグラフィーを用いたhTFの精製を示す図である。レーン1は分子量マーカーを含む。レーン2−12はゲルろ過カラムから溶出された画分である。レーン6〜12におけるようにタンパク質バンドを有する画分をプールした。両方のバンド(矢印で示した)は、ウェスタン−ブロット分析で示されているように可溶性hTFである。
【図3A】選択されたhTF安定細胞クローンのFACS分析を示す図である。FACS分析は、市販の抗TF抗体(10μg/ml、カルビオケム(Calbiochem)、カリフォルニア州(CA)、カタログ番号612161)を一次抗体として、かつFITC標識ヤギ抗マウスIgG(1:50希釈、サザンバイオテクノロジー(Southern Biotechnology)、アラバマ州(AL))を二次抗体として用いて行った。抗体染色細胞の蛍光強度をフローサイトメーター(FACScan、ベクトンディッキンソン(Becton Dickinson)、ニュージャージー州(NJ))で測定し、セルクエスト(Cell Quest)ソフトウェア(ベクトンディッキンソン(Becton Dickinson)、ニュージャージー州(NJ))を用いて分析した。図3A。非トランスフェクトCHO細胞。図3B。代表的な安定クローン#TF34。図3C。代表的な安定クローン#TF48。
【図3B】選択されたhTF安定細胞クローンのFACS分析を示す図である。FACS分析は、市販の抗TF抗体(10μg/ml、カルビオケム(Calbiochem)、カリフォルニア州(CA)、カタログ番号612161)を一次抗体として、かつFITC標識ヤギ抗マウスIgG(1:50希釈、サザンバイオテクノロジー(Southern Biotechnology)、アラバマ州(AL))を二次抗体として用いて行った。抗体染色細胞の蛍光強度をフローサイトメーター(FACScan、ベクトンディッキンソン(Becton Dickinson)、ニュージャージー州(NJ))で測定し、セルクエスト(Cell Quest)ソフトウェア(ベクトンディッキンソン(Becton Dickinson)、ニュージャージー州(NJ))を用いて分析した。図3A。非トランスフェクトCHO細胞。図3B。代表的な安定クローン#TF34。図3C。代表的な安定クローン#TF48。
【図3C】選択されたhTF安定細胞クローンのFACS分析を示す図である。FACS分析は、市販の抗TF抗体(10μg/ml、カルビオケム(Calbiochem)、カリフォルニア州(CA)、カタログ番号612161)を一次抗体として、かつFITC標識ヤギ抗マウスIgG(1:50希釈、サザンバイオテクノロジー(Southern Biotechnology)、アラバマ州(AL))を二次抗体として用いて行った。抗体染色細胞の蛍光強度をフローサイトメーター(FACScan、ベクトンディッキンソン(Becton Dickinson)、ニュージャージー州(NJ))で測定し、セルクエスト(Cell Quest)ソフトウェア(ベクトンディッキンソン(Becton Dickinson)、ニュージャージー州(NJ))を用いて分析した。図3A。非トランスフェクトCHO細胞。図3B。代表的な安定クローン#TF34。図3C。代表的な安定クローン#TF48。
【図4A】ヒトキメラ抗TF抗体TF260、TF278、およびTF392を用いるADCCアッセイ。TF陽性SW900およびTF陰性A549肺腫瘍細胞を標的として使用した。無関係のヒトIgG1を陰性対照抗体として使用した。
【図4B】ヒトキメラ抗TF抗体TF260、TF278、およびTF392を用いるADCCアッセイ。TF陽性SW900およびTF陰性A549肺腫瘍細胞を標的として使用した。無関係のヒトIgG1を陰性対照抗体として使用した。
【図4C】ヒトキメラ抗TF抗体TF260、TF278、およびTF392を用いるADCCアッセイ。TF陽性SW900およびTF陰性A549肺腫瘍細胞を標的として使用した。無関係のヒトIgG1を陰性対照抗体として使用した。
【図5】32アミノ酸N末端リーダー配列および9アミノ酸C末端RGS−His6タグ配列を有する完全長ヒト組織因子のヌクレオチド(配列番号:1)およびアミノ酸(配列番号:2)配列。
【図6】32アミノ酸N末端リーダー配列および9アミノ酸C末端RGS−His6タグ配列を有するヒト組織因子の細胞外ドメインのヌクレオチド(配列番号:3)およびアミノ酸(配列番号:4)配列。
【図7A】抗体TF260。図7A。TF260VH(TF260VH/PUC18)のヌクレオチド(配列番号:5)およびアミノ酸(配列番号:6)配列。図7B。TF260VL(TF260VL/PUC18)のヌクレオチド(配列番号:7)およびアミノ酸(配列番号:8)配列。
【図7B】抗体TF260。図7A。TF260VH(TF260VH/PUC18)のヌクレオチド(配列番号:5)およびアミノ酸(配列番号:6)配列。図7B。TF260VL(TF260VL/PUC18)のヌクレオチド(配列番号:7)およびアミノ酸(配列番号:8)配列。
【図8A】抗体TF196。図8A。TF196VH(TF196VH/PUC18)のヌクレオチド(配列番号:9)およびアミノ酸(配列番号:10)配列。図8B。TF196VL(TF196VH/PUC18)のヌクレオチド(配列番号:11)およびアミノ酸(配列番号:12)配列。
【図8B】抗体TF196。図8A。TF196VH(TF196VH/PUC18)のヌクレオチド(配列番号:9)およびアミノ酸(配列番号:10)配列。図8B。TF196VL(TF196VH/PUC18)のヌクレオチド(配列番号:11)およびアミノ酸(配列番号:12)配列。
【図9A】抗体TF278。図9A。TF278VH(TF278VHs−PUC18)のヌクレオチド(配列番号:18)およびアミノ酸(配列番号:19)配列。図9B。TF278VL(TF278VLs−PUC18)のヌクレオチド(配列番号:20)およびアミノ酸(配列番号:21)配列。
【図9B】抗体TF278。図9A。TF278VH(TF278VHs−PUC18)のヌクレオチド(配列番号:18)およびアミノ酸(配列番号:19)配列。図9B。TF278VL(TF278VLs−PUC18)のヌクレオチド(配列番号:20)およびアミノ酸(配列番号:21)配列。
【図10A】抗体TF277。図10A。TF277VHのヌクレオチド(配列番号:22)およびアミノ酸(配列番号:23)配列。図10B。TF277VLのヌクレオチド(配列番号:24)およびアミノ酸(配列番号:25)配列。
【図10B】抗体TF277。図10A。TF277VHのヌクレオチド(配列番号:22)およびアミノ酸(配列番号:23)配列。図10B。TF277VLのヌクレオチド(配列番号:24)およびアミノ酸(配列番号:25)配列。
【図11】抗体TF392。TF392VH(TF392VHs−PUC18)のヌクレオチド(配列番号:26)およびアミノ酸(配列番号:27)配列。TF392VLのヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、TF260VLのヌクレオチド(配列番号:7)およびアミノ酸(配列番号:8)配列と同じである。
【図12A】抗体TF9。図12A。TF9VH(TF9VHs−PUC18)のヌクレオチド(配列番号:28)およびアミノ酸(配列番号:29)配列。図12B。TF9VL(TF9VL−PUC18)のヌクレオチド(配列番号:30)およびアミノ酸(配列番号:31)配列。
【図12B】抗体TF9。図12A。TF9VH(TF9VHs−PUC18)のヌクレオチド(配列番号:28)およびアミノ酸(配列番号:29)配列。図12B。TF9VL(TF9VL−PUC18)のヌクレオチド(配列番号:30)およびアミノ酸(配列番号:31)配列。 注:図7A−12Bにおいて、下線を引いたアミノ酸残基は、抗体TF260、TF196、TF278、TF277、TF392、およびTF9のそれぞれVHまたはVL領域のCDR領域を特定する。 注:57ヌクレオチド(19アミノ酸)配列シグナルペプチド:ATG GCT TGG GTG TGG ACC TTG CTA TTC CTG ATG GCA GCT M A W V W T L L F L M A AGCC CAA AGT GCC CAA GCA(配列番号:32) A Q S A Q A (配列番号: 33)をTF260、TF196、TF278、TF277、TF392のVHおよびVL、またはTF9のVHを含有するベクターの作成において使用した。60ヌクレオチド(20アミノ酸)配列シグナルペプチド:ATG GAA TCA CAG ACT CAG GTC TTC CTC TCC CTG CTG CTC M E S Q T Q V F L S L L LTGG ATA TCT GGT ACC TGT GGG (配列番号:34) W I S G T C G (配列番号:35)をTF9のVLを含有するベクターの構成において使用した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト組織因子に結合能がある単離された抗体であって、前記抗体が正常血漿対照と比べ組織因子介在血液凝固を阻害することがなく、かつFc介在機序を開始しうる前記抗体。
【請求項2】
前記Fc介在機序が、抗体依存細胞介在細胞毒性(ADCC)を開始する能力を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記Fc介在機序が、補体依存細胞毒性(CDC)を開始する能力を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
前記抗体が、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、ヒト化抗体、およびFab発現ライブラリーの抗体産物よりなる群から選択される、請求項1に記載の抗体。
【請求項5】
前記抗体が修飾抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項6】
前記抗体が細胞毒性剤に結合している、請求項1に記載の抗体。
【請求項7】
前記細胞毒性剤が、パクリタキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシン、およびラジオアイソトープよりなる群から選択される、請求項6に記載の抗体。
【請求項8】
前記抗体が検出可能剤に結合している、請求項1に記載の抗体。
【請求項9】
前記検出可能剤が、酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射性物質、陽電子放出断層撮影を用いる陽電子放出金属、および非放射性常磁性金属イオンよりなる群から選択される、請求項8に記載の抗体。
【請求項10】
請求項1に記載の抗体の重鎖または軽鎖可変領域を含む免疫グロブリン分子。
【請求項11】
請求項1に記載の抗体のヒト組織因子への結合の阻害能を有する単離された抗抗体。
【請求項12】
ATCC受託番号PTA−5196で寄託されたハイブリドーマ細胞株TF196によって産生されたモノクローナル抗体と同じエピトープに結合するモノクローナル抗体。
【請求項13】
ATCC受託番号PTA−5197で寄託されたハイブリドーマ細胞株TF260によって産生されたモノクローナル抗体と同じエピトープに結合するモノクローナル抗体。
【請求項14】
ATCC受託番号PTA−5196で寄託されたハイブリドーマ細胞株TF196によって産生されたモノクローナル抗体、またはATCC受託番号PTA−5197で寄託されたハイブリドーマ細胞株TF260によって産生されたモノクローナル抗体と同じエピトープへの結合を競合するモノクローナル抗体。
【請求項15】
ATCC受託番号PTA−5196で寄託されたハイブリドーマ細胞株TF196またはATCC受託番号PTA−5197で寄託されたTF260から入手可能な抗体。
【請求項16】
ATCC受託番号PTA5196で寄託されたハイブリドーマ細胞株TF196から得られる抗体の結合特性を有する抗体の産生能を有するハイブリドーマ。
【請求項17】
ATCC受託番号PTA−5196で寄託されたハイブリドーマ細胞株TF196である、請求項16に記載のハイブリドーマ。
【請求項18】
ATCC受託番号PTA−5197で寄託されたハイブリドーマ細胞株TF260から得られる抗体の結合特性を有する抗体の産生能を有するハイブリドーマ。
【請求項19】
ATCC受託番号PTA−5197で寄託されたハイブリドーマ細胞株TF260である、請求項18に記載のハイブリドーマ。
【請求項20】
ATCC受託番号PTA−5676で寄託されたハイブリドーマ細胞株TF278によって産生されるモノクローナル抗体、またはATCC受託番号PTA−5677で寄託されたハイブリドーマ細胞株TF392もしくはATCC受託番号PTA−5674で寄託されたハイブリドーマ細胞株TF9によって産生されるモノクローナル抗体と同じエピトープへの結合を競合するモノクローナル抗体。
【請求項21】
ATCC受託番号PTA−5676で寄託されたハイブリドーマ細胞株TF278、もしくはATCC受託番号PTA−5677で寄託されたハイブリドーマ細胞株TF392、またはATCC受託番号PTA−5674で寄託されたハイブリドーマ細胞株TF9から入手可能な抗体。
【請求項22】
ATCC受託番号PTA5676で寄託されたハイブリドーマ細胞株TF278から得られる抗体の結合特性を有する抗体の産生能を有するハイブリドーマ。
【請求項23】
ATCC受託番号PTA−5676で寄託されたハイブリドーマ細胞株TF278である、請求項22に記載のハイブリドーマ。
【請求項24】
ATCC受託番号PTA−5677で寄託されたハイブリドーマ細胞株TF392から得られる抗体の結合特性を有する抗体の産生能を有するハイブリドーマ。
【請求項25】
ATCC受託番号PTA−5677で寄託されたハイブリドーマ細胞株TF392である、請求項24に記載のハイブリドーマ。
【請求項26】
ATCC受託番号PTA−5674で寄託されたハイブリドーマ細胞株TF9から得られる抗体の結合特性を有する抗体の産生能を有するハイブリドーマ。
【請求項27】
ATCC受託番号PTA−5674で寄託されたハイブリドーマ細胞株TF9である、請求項26に記載のハイブリドーマ。
【請求項28】
請求項1に記載の抗体の治療上有効量を含む医薬組成物および薬学的に許容される担体。
【請求項29】
患者における癌を治療する方法であって、前記方法が請求項28に記載の医薬組成物を前記患者に投与するステップを含む前記方法。
【請求項30】
前記癌が固形腫瘍である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記癌が、非小細胞肺癌、乳癌、結腸癌、および前立腺癌よりなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記医薬組成物が細胞毒性剤に結合した抗体を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
癌を検出する方法であって、前記方法が、請求項8に記載の抗体を試料または対象に提供するステップ、および前記検出可能剤の癌細胞への結合を検出するステップを含む前記方法。
【請求項34】
前記癌が非小細胞肺癌、乳癌、結腸癌、および前立腺癌よりなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
組織因子に結合能があるモノクローナル抗体を生成する方法であって、前記抗体が正常血漿対照と比べ組織因子介在血液凝固を阻害することがなく、かつ前記抗体がFc介在機序を開始することができる前記方法であって、前記方法が、
(a)哺乳動物をヒト組織因子の精製細胞外ドメインで免疫するステップと、
(b)前記免疫した哺乳動物のリンパ節から細胞懸濁液を調製するステップと、
(c)前記(b)の細胞懸濁液からの細胞を骨髄腫細胞と融合させるステップ、および
(d)前記(c)における融合から生成されたハイブリドーマからクローンを同定するステップであって、前記クローンがヒト組織因子に結合能がある抗体を産生し、正常血漿対照と比べ組織因子介在血液凝固を阻害することがなく、かつ前記抗体がFc介在機序を開始することができる前記ステップと
を含む前記方法。
【請求項36】
配列番号:6、8、10、および12よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含む抗体。
【請求項37】
配列番号:19、21、23、25、27、29、および31よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含む抗体。
【請求項38】
配列番号:6、8、10、および12よりなる群から選択されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子。
【請求項39】
配列番号:19、21、23、25、27、29、および31よりなる群から選択されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子。
【請求項40】
(a)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域と、
(b)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域と、
(c)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域と、
(d)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域と、
(e)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域と、
(f)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域と、
(g)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域と、
(h)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域と、
(i)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域と、
(j)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域と、
(k)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域、および
(l)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域と
よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含む抗体をコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項41】
(a)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域と、
(b)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域と、
(c)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域と、
(d)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域と、
(e)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域と、
(f)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域と、
(g)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域と、
(h)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域と、
(i)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域と、
(j)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域と、
(k)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域と、
(l)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域と、
(m)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域と、
(n)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域と、
(o)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域と、
(p)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域と、
(q)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域、および
(r)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域と、
よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含む抗体をコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項42】
配列番号:5、7、9、または11の相補体にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドを含み、正常血漿対照に比べ組織因子介在血液凝固を阻害することなくヒト組織因子に結合しうるポリペプチドをコードし、かつFc介在機序を開始しうる単離された核酸分子。
【請求項43】
配列番号:18、20、22、24、26、28、または30の相補体にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドを含み、正常血漿対照に比べ組織因子介在血液凝固を阻害することなくヒト組織因子に結合しうるポリペプチドをコードし、かつFc介在機序を開始しうる単離された核酸分子。
【請求項44】
請求項40に記載の単離されたポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項45】
請求項41に記載の単離されたポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項46】
請求項44に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項47】
請求項45に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項48】
請求項40に記載の単離されたポリヌクレオチドを含むように遺伝子組換えされた宿主細胞。
【請求項49】
請求項41に記載の単離されたポリヌクレオチドを含むように遺伝子組換えされた宿主細胞。
【請求項50】
抗体を製造する方法であって、
(a)請求項40に記載の単離されたポリヌクレオチドによってコードされた抗体を発現させるステップと、
(b)前記抗体を回収するステップと
を含む前記方法。
【請求項51】
抗体を製造する方法であって、
(a)請求項41に記載の単離されたポリヌクレオチドによってコードされた抗体を発現させるステップと、
(b)前記抗体を回収するステップと
を含む前記方法。
【請求項52】
(a)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域と、
(b)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域と、
(c)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域と、
(d)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域と、
(e)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域と、
(f)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域と、
(g)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域と、
(h)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域と、
(i)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域と、
(j)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域と、
(k)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域、および
(l)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域と
よりなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドであって、前記ポリペプチドが正常血漿対照と比べ組織因子介在血液凝固を阻害することなくヒト組織因子に結合しうるとともに、Fc介在機序を開始しうる前記ポリペプチド。
【請求項53】
(a)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域と、
(b)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域と、
(c)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域と、
(d)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域と、
(e)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域と、
(f)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域と、
(g)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域と、
(h)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域と、
(i)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域と、
(j)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域と、
(k)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域と、
(l)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域と、
(m)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域と、
(n)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域と、
(o)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域と、
(p)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域と、
(q)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域、および
(r)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域と、
よりなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドであって、前記ポリペプチドが正常血漿対照と比べ組織因子介在血液凝固を阻害することなくヒト組織因子に結合しうるとともに、Fc介在機序を開始しうる前記ポリペプチド。
【請求項54】
請求項28に記載の医薬組成物を含むキット。
【請求項55】
その使用のための印刷された説明書をさらに含む、請求項54に記載のキット。
【請求項56】
癌を治療するための前記組成物の使用を説明する印刷物、癌を治療するための前記組成物の使用を説明するあらかじめ録音されたメディアデバイス、またはプランナーをさらに含む、請求項54に記載のキット。
【請求項57】
前記印刷物が本、ブックレット、パンフレット、またはリーフレットである、請求項56に記載のキット。
【請求項58】
前記あらかじめ録音されたメディアデバイスが、DVD、ビデオテープカセット、CD−ROM、オーディオカセット、またはオーディオコンパクトディスクである、請求項56に記載のキット。
【請求項59】
治療上有効量の請求項36に記載の抗体を含む医薬組成物を含むキット。
【請求項60】
その使用のための印刷された説明書をさらに含む、請求項59に記載のキット。
【請求項61】
治療上有効量の請求項37に記載の抗体を含む医薬組成物を含むキット。
【請求項62】
その使用のための印刷された説明書をさらに含む、請求項61に記載のキット。
【請求項63】
請求項28に記載の医薬組成物をそれを必要とする患者に送達する方法であって、前記方法が、
(a)前記医薬組成物を処方することが許されている医師の身元をコンピュータ可読記憶媒体に登録するステップと、
(b)前記患者に前記医薬組成物に付随するリスクに関するカウンセリング情報を提供するステップと、
(c)前記リスクにもかかわらず前記医薬組成物が投与される前記患者のインフォームドコンセントを得るステップと、
(d)前記インフォームドコンセントを得た後に前記患者を前記コンピュータ可読媒体に登録するステップ、および
(e)前記患者の前記医薬組成物へのアクセスを可能にするステップと
を含む前記方法。
【請求項64】
前記医薬組成物への前記アクセスが処方箋である、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
請求項28に記載の医薬組成物に関して消費者を教育する方法であって、前記方法が前記医薬組成物を販売時点で消費者情報とともに消費者に分配するステップを含む前記方法。
【請求項66】
前記消費者情報が、英語テキスト、外国語テキスト、視覚映像、チャート、電話録音、ウェブサイト、および生の消費者サービス担当者へのアクセスよりなる群から選択されるフォーマットで示されている、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記消費者情報が、使用説明書、適切な年齢使用、適応症、禁忌、適切な投与、警告、電話番号、またはウェブサイトアドレスである、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記医薬組成物に関する消費者の質問に答える立場の関係者へ専門的情報を提供するステップをさらに含む、請求項65に記載の方法。
【請求項69】
前記関係者が医師、医師助手、ナースプラクティショナー、薬剤師、または顧客サービス担当者である、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記分配が、薬剤師または医療提供者がいる場所への分配である、請求項65に記載の方法。
【請求項71】
請求項28に記載の医薬組成物を識別し、および薬物と同等物を商品化する方法であって、前記方法が、
(a)ヒト組織因子に結合能がある抗体を単離するステップであって、前記抗体が正常血漿対照と比べ組織因子介在血液凝固を阻害することがなく、かつFc介在機序を開始しうる前記ステップと、
(b)(a)を反復し、治療上有効であると判明しうる複数の候補抗体を得るステップと、
(c)少なくとも1つのかかる候補抗体について、ヒト以外の動物に投与される場合にその非毒性を証明するステップと、
(d)監視下での臨床試験を行い、前記(c)の候補抗体の非毒性および有効性を証明するステップと、
(e)規制機関の承認を確保し、癌を治療するための前記(d)の候補抗体を分配するステップ、および
(f)活性剤として前記(e)の候補抗体を含む医薬組成物を製造するステップと
を含む前記方法。
【請求項72】
前記癌が、非小細胞肺癌、乳癌、結腸癌、および前立腺癌よりなる群から選択される、請求項71に記載の方法。
【請求項1】
ヒト組織因子に結合能がある単離された抗体であって、前記抗体が正常血漿対照と比べ組織因子介在血液凝固を阻害することがなく、かつFc介在機序を開始しうる前記抗体。
【請求項2】
前記Fc介在機序が、抗体依存細胞介在細胞毒性(ADCC)を開始する能力を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記Fc介在機序が、補体依存細胞毒性(CDC)を開始する能力を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
前記抗体が、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、ヒト化抗体、およびFab発現ライブラリーの抗体産物よりなる群から選択される、請求項1に記載の抗体。
【請求項5】
前記抗体が修飾抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項6】
前記抗体が細胞毒性剤に結合している、請求項1に記載の抗体。
【請求項7】
前記細胞毒性剤が、パクリタキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシン、およびラジオアイソトープよりなる群から選択される、請求項6に記載の抗体。
【請求項8】
前記抗体が検出可能剤に結合している、請求項1に記載の抗体。
【請求項9】
前記検出可能剤が、酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射性物質、陽電子放出断層撮影を用いる陽電子放出金属、および非放射性常磁性金属イオンよりなる群から選択される、請求項8に記載の抗体。
【請求項10】
請求項1に記載の抗体の重鎖または軽鎖可変領域を含む免疫グロブリン分子。
【請求項11】
請求項1に記載の抗体のヒト組織因子への結合の阻害能を有する単離された抗抗体。
【請求項12】
ATCC受託番号PTA−5196で寄託されたハイブリドーマ細胞株TF196によって産生されたモノクローナル抗体と同じエピトープに結合するモノクローナル抗体。
【請求項13】
ATCC受託番号PTA−5197で寄託されたハイブリドーマ細胞株TF260によって産生されたモノクローナル抗体と同じエピトープに結合するモノクローナル抗体。
【請求項14】
ATCC受託番号PTA−5196で寄託されたハイブリドーマ細胞株TF196によって産生されたモノクローナル抗体、またはATCC受託番号PTA−5197で寄託されたハイブリドーマ細胞株TF260によって産生されたモノクローナル抗体と同じエピトープへの結合を競合するモノクローナル抗体。
【請求項15】
ATCC受託番号PTA−5196で寄託されたハイブリドーマ細胞株TF196またはATCC受託番号PTA−5197で寄託されたTF260から入手可能な抗体。
【請求項16】
ATCC受託番号PTA5196で寄託されたハイブリドーマ細胞株TF196から得られる抗体の結合特性を有する抗体の産生能を有するハイブリドーマ。
【請求項17】
ATCC受託番号PTA−5196で寄託されたハイブリドーマ細胞株TF196である、請求項16に記載のハイブリドーマ。
【請求項18】
ATCC受託番号PTA−5197で寄託されたハイブリドーマ細胞株TF260から得られる抗体の結合特性を有する抗体の産生能を有するハイブリドーマ。
【請求項19】
ATCC受託番号PTA−5197で寄託されたハイブリドーマ細胞株TF260である、請求項18に記載のハイブリドーマ。
【請求項20】
ATCC受託番号PTA−5676で寄託されたハイブリドーマ細胞株TF278によって産生されるモノクローナル抗体、またはATCC受託番号PTA−5677で寄託されたハイブリドーマ細胞株TF392もしくはATCC受託番号PTA−5674で寄託されたハイブリドーマ細胞株TF9によって産生されるモノクローナル抗体と同じエピトープへの結合を競合するモノクローナル抗体。
【請求項21】
ATCC受託番号PTA−5676で寄託されたハイブリドーマ細胞株TF278、もしくはATCC受託番号PTA−5677で寄託されたハイブリドーマ細胞株TF392、またはATCC受託番号PTA−5674で寄託されたハイブリドーマ細胞株TF9から入手可能な抗体。
【請求項22】
ATCC受託番号PTA5676で寄託されたハイブリドーマ細胞株TF278から得られる抗体の結合特性を有する抗体の産生能を有するハイブリドーマ。
【請求項23】
ATCC受託番号PTA−5676で寄託されたハイブリドーマ細胞株TF278である、請求項22に記載のハイブリドーマ。
【請求項24】
ATCC受託番号PTA−5677で寄託されたハイブリドーマ細胞株TF392から得られる抗体の結合特性を有する抗体の産生能を有するハイブリドーマ。
【請求項25】
ATCC受託番号PTA−5677で寄託されたハイブリドーマ細胞株TF392である、請求項24に記載のハイブリドーマ。
【請求項26】
ATCC受託番号PTA−5674で寄託されたハイブリドーマ細胞株TF9から得られる抗体の結合特性を有する抗体の産生能を有するハイブリドーマ。
【請求項27】
ATCC受託番号PTA−5674で寄託されたハイブリドーマ細胞株TF9である、請求項26に記載のハイブリドーマ。
【請求項28】
請求項1に記載の抗体の治療上有効量を含む医薬組成物および薬学的に許容される担体。
【請求項29】
患者における癌を治療する方法であって、前記方法が請求項28に記載の医薬組成物を前記患者に投与するステップを含む前記方法。
【請求項30】
前記癌が固形腫瘍である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記癌が、非小細胞肺癌、乳癌、結腸癌、および前立腺癌よりなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記医薬組成物が細胞毒性剤に結合した抗体を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
癌を検出する方法であって、前記方法が、請求項8に記載の抗体を試料または対象に提供するステップ、および前記検出可能剤の癌細胞への結合を検出するステップを含む前記方法。
【請求項34】
前記癌が非小細胞肺癌、乳癌、結腸癌、および前立腺癌よりなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
組織因子に結合能があるモノクローナル抗体を生成する方法であって、前記抗体が正常血漿対照と比べ組織因子介在血液凝固を阻害することがなく、かつ前記抗体がFc介在機序を開始することができる前記方法であって、前記方法が、
(a)哺乳動物をヒト組織因子の精製細胞外ドメインで免疫するステップと、
(b)前記免疫した哺乳動物のリンパ節から細胞懸濁液を調製するステップと、
(c)前記(b)の細胞懸濁液からの細胞を骨髄腫細胞と融合させるステップ、および
(d)前記(c)における融合から生成されたハイブリドーマからクローンを同定するステップであって、前記クローンがヒト組織因子に結合能がある抗体を産生し、正常血漿対照と比べ組織因子介在血液凝固を阻害することがなく、かつ前記抗体がFc介在機序を開始することができる前記ステップと
を含む前記方法。
【請求項36】
配列番号:6、8、10、および12よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含む抗体。
【請求項37】
配列番号:19、21、23、25、27、29、および31よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含む抗体。
【請求項38】
配列番号:6、8、10、および12よりなる群から選択されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子。
【請求項39】
配列番号:19、21、23、25、27、29、および31よりなる群から選択されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子。
【請求項40】
(a)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域と、
(b)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域と、
(c)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域と、
(d)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域と、
(e)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域と、
(f)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域と、
(g)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域と、
(h)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域と、
(i)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域と、
(j)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域と、
(k)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域、および
(l)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域と
よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含む抗体をコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項41】
(a)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域と、
(b)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域と、
(c)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域と、
(d)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域と、
(e)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域と、
(f)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域と、
(g)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域と、
(h)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域と、
(i)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域と、
(j)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域と、
(k)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域と、
(l)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域と、
(m)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域と、
(n)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域と、
(o)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域と、
(p)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域と、
(q)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域、および
(r)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域と、
よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含む抗体をコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項42】
配列番号:5、7、9、または11の相補体にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドを含み、正常血漿対照に比べ組織因子介在血液凝固を阻害することなくヒト組織因子に結合しうるポリペプチドをコードし、かつFc介在機序を開始しうる単離された核酸分子。
【請求項43】
配列番号:18、20、22、24、26、28、または30の相補体にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドを含み、正常血漿対照に比べ組織因子介在血液凝固を阻害することなくヒト組織因子に結合しうるポリペプチドをコードし、かつFc介在機序を開始しうる単離された核酸分子。
【請求項44】
請求項40に記載の単離されたポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項45】
請求項41に記載の単離されたポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項46】
請求項44に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項47】
請求項45に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項48】
請求項40に記載の単離されたポリヌクレオチドを含むように遺伝子組換えされた宿主細胞。
【請求項49】
請求項41に記載の単離されたポリヌクレオチドを含むように遺伝子組換えされた宿主細胞。
【請求項50】
抗体を製造する方法であって、
(a)請求項40に記載の単離されたポリヌクレオチドによってコードされた抗体を発現させるステップと、
(b)前記抗体を回収するステップと
を含む前記方法。
【請求項51】
抗体を製造する方法であって、
(a)請求項41に記載の単離されたポリヌクレオチドによってコードされた抗体を発現させるステップと、
(b)前記抗体を回収するステップと
を含む前記方法。
【請求項52】
(a)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域と、
(b)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域と、
(c)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域と、
(d)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域と、
(e)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域と、
(f)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域と、
(g)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域と、
(h)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域と、
(i)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域と、
(j)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域と、
(k)ハイブリドーマ細胞株TF196によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域、および
(l)ハイブリドーマ細胞株TF260によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域と
よりなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドであって、前記ポリペプチドが正常血漿対照と比べ組織因子介在血液凝固を阻害することなくヒト組織因子に結合しうるとともに、Fc介在機序を開始しうる前記ポリペプチド。
【請求項53】
(a)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域と、
(b)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域と、
(c)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも1つのCDR領域と、
(d)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域と、
(e)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域と、
(f)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも2つのCDR領域と、
(g)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域と、
(h)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域と、
(i)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVHドメインの少なくとも3つのCDR領域と、
(j)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域と、
(k)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域と、
(l)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも1つのCDR領域と、
(m)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域と、
(n)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域と、
(o)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも2つのCDR領域と、
(p)ハイブリドーマ細胞株TF278によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域と、
(q)ハイブリドーマ細胞株TF392によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域、および
(r)ハイブリドーマ細胞株TF9によって発現される抗体のVLドメインの少なくとも3つのCDR領域と、
よりなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドであって、前記ポリペプチドが正常血漿対照と比べ組織因子介在血液凝固を阻害することなくヒト組織因子に結合しうるとともに、Fc介在機序を開始しうる前記ポリペプチド。
【請求項54】
請求項28に記載の医薬組成物を含むキット。
【請求項55】
その使用のための印刷された説明書をさらに含む、請求項54に記載のキット。
【請求項56】
癌を治療するための前記組成物の使用を説明する印刷物、癌を治療するための前記組成物の使用を説明するあらかじめ録音されたメディアデバイス、またはプランナーをさらに含む、請求項54に記載のキット。
【請求項57】
前記印刷物が本、ブックレット、パンフレット、またはリーフレットである、請求項56に記載のキット。
【請求項58】
前記あらかじめ録音されたメディアデバイスが、DVD、ビデオテープカセット、CD−ROM、オーディオカセット、またはオーディオコンパクトディスクである、請求項56に記載のキット。
【請求項59】
治療上有効量の請求項36に記載の抗体を含む医薬組成物を含むキット。
【請求項60】
その使用のための印刷された説明書をさらに含む、請求項59に記載のキット。
【請求項61】
治療上有効量の請求項37に記載の抗体を含む医薬組成物を含むキット。
【請求項62】
その使用のための印刷された説明書をさらに含む、請求項61に記載のキット。
【請求項63】
請求項28に記載の医薬組成物をそれを必要とする患者に送達する方法であって、前記方法が、
(a)前記医薬組成物を処方することが許されている医師の身元をコンピュータ可読記憶媒体に登録するステップと、
(b)前記患者に前記医薬組成物に付随するリスクに関するカウンセリング情報を提供するステップと、
(c)前記リスクにもかかわらず前記医薬組成物が投与される前記患者のインフォームドコンセントを得るステップと、
(d)前記インフォームドコンセントを得た後に前記患者を前記コンピュータ可読媒体に登録するステップ、および
(e)前記患者の前記医薬組成物へのアクセスを可能にするステップと
を含む前記方法。
【請求項64】
前記医薬組成物への前記アクセスが処方箋である、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
請求項28に記載の医薬組成物に関して消費者を教育する方法であって、前記方法が前記医薬組成物を販売時点で消費者情報とともに消費者に分配するステップを含む前記方法。
【請求項66】
前記消費者情報が、英語テキスト、外国語テキスト、視覚映像、チャート、電話録音、ウェブサイト、および生の消費者サービス担当者へのアクセスよりなる群から選択されるフォーマットで示されている、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記消費者情報が、使用説明書、適切な年齢使用、適応症、禁忌、適切な投与、警告、電話番号、またはウェブサイトアドレスである、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記医薬組成物に関する消費者の質問に答える立場の関係者へ専門的情報を提供するステップをさらに含む、請求項65に記載の方法。
【請求項69】
前記関係者が医師、医師助手、ナースプラクティショナー、薬剤師、または顧客サービス担当者である、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記分配が、薬剤師または医療提供者がいる場所への分配である、請求項65に記載の方法。
【請求項71】
請求項28に記載の医薬組成物を識別し、および薬物と同等物を商品化する方法であって、前記方法が、
(a)ヒト組織因子に結合能がある抗体を単離するステップであって、前記抗体が正常血漿対照と比べ組織因子介在血液凝固を阻害することがなく、かつFc介在機序を開始しうる前記ステップと、
(b)(a)を反復し、治療上有効であると判明しうる複数の候補抗体を得るステップと、
(c)少なくとも1つのかかる候補抗体について、ヒト以外の動物に投与される場合にその非毒性を証明するステップと、
(d)監視下での臨床試験を行い、前記(c)の候補抗体の非毒性および有効性を証明するステップと、
(e)規制機関の承認を確保し、癌を治療するための前記(d)の候補抗体を分配するステップ、および
(f)活性剤として前記(e)の候補抗体を含む医薬組成物を製造するステップと
を含む前記方法。
【請求項72】
前記癌が、非小細胞肺癌、乳癌、結腸癌、および前立腺癌よりなる群から選択される、請求項71に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図5】
【図6】
【図11】
【図2】
【図5】
【図6】
【図11】
【公表番号】特表2007−525944(P2007−525944A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−513166(P2006−513166)
【出願日】平成16年4月21日(2004.4.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/012206
【国際公開番号】WO2004/094475
【国際公開日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(599108792)ユーロ−セルティーク エス.エイ. (134)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年4月21日(2004.4.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/012206
【国際公開番号】WO2004/094475
【国際公開日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(599108792)ユーロ−セルティーク エス.エイ. (134)
【Fターム(参考)】
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