説明

給排装置

【課題】筐体内に外気を送り、さらに筐体内の空気や水を排出し、かつ小型化、簡素化することが可能な給排装置を提供する。
【解決手段】外気圧が筐体の内圧よりも高い場合に開弁する吸気弁6と、吸気弁6から流入する外気の下流側に位置し、非通水性および通気性を有する防水通気膜7と、筐体の内側からの力によって開弁する排出弁4とを備える。外気圧が筐体の内圧よりも高くなると、吸気弁6が開弁して外気が流入し、防水通気膜7を通過して筐体内K1に流入する。一方、筐体の内圧が外気圧よりも高くなると、排出弁4が開弁して筐体内K1の空気や水滴が外に流出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、屋外に設置されている筐体内に外気を送り、また筐体内の空気や水を外に排出する給排装置に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外に設置されている筐体内に結露が発生すると、筐体内の機器に障害が生じる場合がある。このため、筐体内を低湿度に保ち、結露を防止するという筐体構造が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この筐体構造は、筐体に設けられた呼吸穴から外側に向かって順に、通気孔を有するカバーと、シリカゲルと、耐水性(非通水性)および通気性を有する防水通気膜と、シリカゲルと防水通気膜を収容し通気孔を有するケースとが配設されている。そして、防水通気膜によって雨水が筐体内に浸入することが防止されるとともに、水蒸気を含んだ外気はシリカゲルを通過して吸湿されるため、筐体内が低湿度に保たれ、結露が防止される、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−031130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載の筐体構造では、シリカゲルを通過させることで外気を吸湿しているが、経年劣化や設置状況によりシリカゲルの効果が弱まり、シリカゲルを通過させるだけでは外気を十分に除湿することは困難となる。このため、時間の経過とともに、筐体内の湿度が高まり、結露が生じる場合がある。これを防ぐにはシリカゲルの交換が必要である。この筐体構造では、呼吸穴が防水通気膜で覆われているため、前記のようにシリカゲルの効果が弱まった場合には、筐体内に生じた結露による水が外に排出されず、筐体内の機器に障害を与えるおそれがある。また、ケースの通気孔を介して防水通気膜が外気に露出しているため、防水通気膜が経年劣化したり虫害で損傷したりする場合がある。
【0005】
そこでこの発明は、筐体内に外気を送り、さらに筐体内の空気や水を排出することが可能な給排装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、屋外に設置される筐体に設けられる給排装置であって、外気圧が前記筐体の内圧よりも高い場合に開弁する吸気弁と、前記吸気弁から流入する外気の下流側に位置し、非通水性および通気性を有する防水通気膜と、前記筐体の内側からの力によって開弁する排出弁と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、外気圧が筐体の内圧よりも高くなると、吸気弁が開弁して外気が流入し、防水通気膜を通過して筐体内に流入する。また、雨水などは防水通気膜を通過できず、筐体内に流入しない。一方、筐体の内側から力が加わると、例えば、筐体の内圧が外気圧よりも高くなると、排出弁が開弁して、筐体内の空気や水滴が外に流出する。また、筐体内で発生した結露による水滴の自重によって排出弁が開弁し、水滴が外に流出する。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の給排装置において、前記吸気弁と防水通気膜と排出弁とが、上下方向に配設されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、吸気弁および防水通気膜を介して筐体内に外気を送り、さらに、排出弁を介して筐体内の空気や水滴を外に排出することができる。また、防水通気膜によって雨水などが筐体内に流入せず、しかも、防水通気膜が吸気弁よりも下流側、つまり筐体内側に位置するため、外気に露出せず、防水通気膜の経年劣化や虫害が抑制される。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、吸気弁と防水通気膜と排出弁とが上下方向に配設されているため、給排装置を小型化、簡素化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態に係る通気キャップを示す斜視図(a)、正面図(b)、平面図(c)および底面図(d)である。
【図2】図1(c)のA−A断面図である。
【図3】図2の通気キャップのケーシングを示す斜視図(a)とそのB−B断面図(b)である。
【図4】図2の通気キャップの中子体を示す斜視図(a)とそのC−C断面図(b)である。
【図5】図2の通気キャップの排出弁を示す斜視図である。
【図6】図2の通気キャップの吸気塔を示す斜視図(a)とそのD−D断面図(b)である。
【図7】図2の通気キャップの吸気状態を示す断面図である。
【図8】図2の通気キャップの排気(排水)状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0013】
図1は、この発明の実施の形態に係る通気キャップ(給排装置)1を示す斜視図(a)、正面図(b)、平面図(c)および底面図(d)である。この通気キャップ1は、屋外に設置される筐体に取り付けられ、筐体内に外気を送り、また筐体内の空気や水滴を外に排出する装置である。この通気キャップ1は、図2に示すように、ケーシング2と、中子体3と、排出弁4と、吸気塔5と、吸気弁6と、防水通気膜7とを備えている。ここで、筐体は、ほぼ密閉された箱状のもので、無線機の筐体などが挙げられる。
【0014】
ケーシング2は、図3に示すように、外形が正六角形の筒体で、上端部に円環状のツバ部2aが形成されている。上部内側には第1の雌ネジ部2bが形成され、後述する中子体3の第1の雄ネジ部3cが螺合するようになっている。また、下部内側には下端に貫通する給排出口2cが形成され、この給排出口2cと第1の雌ネジ部2bとが連通部2dによって連通している。連通部2dの内径は、第1の雌ネジ部2bの内径よりも小さく設定され、連通部2dと第1の雌ネジ部2bとの境である段差部2eに、後述するように排出弁4が配置されるようになっている。さらに、連通部2dの底面は、後述する水滴などを給排出口2c側に導くように、給排出口2cに向って下がるすり鉢状に形成されている。このような第1の雌ネジ部2b、給排出口2cおよび連通部2dは、同軸上に形成されている。
【0015】
中子体3は、図4に示すように、略円筒状の本体部3aの上端部に、円環状のストッパ部3bが形成され、本体部3aの外周部には、上記の第1の雌ネジ部2bと螺合する第1の雄ネジ部3cが形成されている。本体部3aの下部内側には、下端に貫通する孔が形成され、この孔の内周面に、後述する吸気塔5の第2の雄ネジ部5eが螺合する雌ネジが形成され、第2の雌ネジ部3dとなっている。この第2の雌ネジ部3dから上端に貫通するガイド孔3eが形成され、ガイド孔3eの内径は第2の雌ネジ部3dの内径よりも大きく設定されている。さらに、本体部3aには、下端から垂直上方に向けて切り欠いたスリット部3fが、周方向に4つ(90度ごとに四方に)形成されている。このスリット部3fは、図2に示すように、中子体3とケーシング2とが結合した際に、スリット部3fの上端がケーシング2の上端よりも下に位置するように、その長さが設定されている。
【0016】
排出弁4は、後述するように、筐体の内側からの力のみによって開弁する弁で、ゴムなどの弾性体で構成され、外力によって変形するようになっている。この排出弁4は、図5に示すような平たいリング状で、その外径は、ケーシング2の第1の雌ネジ部2bの内径よりもやや小さく設定され、内径は、吸気塔5の外径とほぼ同寸法に設定されている。
【0017】
吸気塔5は、図6に示すように略円筒形で、上部内側に上端に貫通する上部穴5aが形成され、この上部穴5aから下端に貫通する主孔5bが形成されている。この上部穴5aと主孔5bとは同軸上に形成され、上部穴5aの内径は、後述する吸気弁6の外径よりも大きく設定され、主孔5bの内径は、吸気弁6の外径よりも小さく設定されている。これにより、後述するように、吸気弁6が上部穴5a内に収容され、かつ、上部穴5a内を上下方向に浮動できるようになっている。また、吸気塔5の下端部には、互いに対向する一対の排出部5cが形成されている。この排出部5cは、吸気塔5の外周面から軸心に向って水平に延びて、吸気塔5の下端まで垂直に延びるように切り欠いた形状をしている。そして、後述するように、吸気塔5の外周側に位置する空気や水滴が、この排出部5cを通ってケーシング2の給排出口2c側に流れるようになっている。
【0018】
また、吸気塔5の排出部5c近傍の内部には、主孔5bの内壁をわたるブリッジ5dが形成され、吸気塔5の下端面は、ケーシング2の連通部2dの底面に密接するように、すり鉢状に形成されている。さらに、吸気塔5の外周には、中子体3の第2の雌ネジ部3dと螺合する第2の雄ネジ部5eが形成されている。
【0019】
吸気弁6は、後述するように、外気圧が筐体の内圧よりも高い場合に開弁する弁で、プラスチックなどの軽量な剛体で構成されている。この排出弁4は円板形で、上記のように吸気塔5の上部穴5a内に収容され、上下方向に浮動するものである。
【0020】
防水通気膜7は、非通水性(耐水性)および通気性を有する保護皮膜である。この防水通気膜7は円板形で、その外径は吸気塔5の外径と同径に設定されている。そして、後述するように、吸気塔5の上端面に、すなわち吸気弁6から流入する外気の下流側に、配設されるものである。
【0021】
次に、以上のような構成要素による通気キャップ1の組み付け方法について説明する。まず、図2に示すように、ケーシング2の段差部2eに排出弁4を配置した状態で、第1の雄ネジ部3cを第1の雌ネジ部2bに螺合させ、ケーシング2と中子体3とを締結する。このとき、ケーシング2の外径が正六角形に形成されているため、スパナなどでケーシング2を把持して、容易に締結作業を行うことができる。この締結により、中子体3の本体部3aの下端部と段差部2eとにより排出弁4の外径側が挟まれ、排出弁4の内孔側は、上面のみが本体部3aの下端部に接した状態となる。また、スリット部3fの下方では、排出弁4の内孔側の上面は、本体部3aの下端部に接しない状態となる。これにより、排出弁4の内孔側が、ケーシング2の第1の雌ネジ部2b側(上方)には変形せずに、連通部2d(下方)にのみ変形するようになっている。すなわち、筐体の内側K1からの力(圧力)によってのみ変形して、後述する吸気塔5との間に隙間が形成されて開弁し、筐体の外側K2からの力(圧力)によっては変形、開弁しないようになっている。
【0022】
次に、吸気弁6を吸気塔5の上部穴5a内に収容し、防水通気膜7を吸気塔5の上端面に接合(接着)する。このような吸気塔5の第2の雄ネジ部5eを中子体3の第2の雌ネジ部3dに螺合させ、吸気塔5と中子体3とを締結する。これにより、各構成要素2〜7が一体化し、排出弁4と吸気弁6と防水通気膜7とが上下方向に、かつ同軸上に配設された状態となる。さらに、吸気塔5の下端部が連通部2dの底面に密接した状態となる。ここで、ケーシング2と中子体3とを締結した後に、吸気塔5と中子体3とを締結しているが、吸気塔5と中子体3とを仮締結した後に、ケーシング2と中子体3とを締結してもよい。
【0023】
次に、このような構成の通気キャップ1の作用について説明する。ここで、通気キャップ1は、次のように、筐体の底壁Kに取り付けられているとする。すなわち、図2に示すように、底壁Kに形成された凹状の被嵌合部K3に、中子体3のストッパ部3bが嵌合した状態で、中子体3が底壁Kに装着され、この中子体3に対して上記のようにしてケーシング2などが締結され、通気キャップ1が底壁Kに取り付けられている。
【0024】
まず、外気圧(K2側の気圧)が筐体の内圧(K1側の気圧)よりも高くなると、図7に示すように、ケーシング2の給排出口2cおよび吸気塔5の主孔5bを経由した外気が、吸気弁6を押し上げて、吸気弁6が開弁する。これにより、外気が上部穴5aを通って防水通気膜7を通過し、筐体内K1に流入する。このとき、雨水などは防水通気膜7を通過できず、筐体内K1には流入しない。また、外気の一部が、吸気塔5の排出部5cからケーシング2の連通部2d側に流入するが、上記のように、排出弁4は上方には変形(開弁)しないため、排出弁4側から外気が筐体内K1に流入することはない。
【0025】
一方、筐体の内圧が外気圧よりも高くなると、図8に示すように、中子体3と吸気塔5との隙間および中子体3のスリット部3fを経由した内気(筐体内K1の空気)が、排出弁4の内孔側を押し下げて変形させ、排出弁4が開弁する。これにより、排出弁4と吸気塔5との隙間から内気が流出し、ケーシング2の連通部2d、吸気塔5の排出部5cおよび給排出口2cを通過して外に流出する。
【0026】
このとき、筐体内K1で発生した結露による水滴が内圧によって導かれ、底壁Kの通気キャップ1近傍にある場合には、内気とともに水滴が外に流出する。一方、防水通気膜7を通過した内気は、吸気弁6を押し下げるため吸気弁6は閉弁し、吸気塔5の主孔5bを経由して内気が外に流出することはない。
【0027】
また、筐体の内圧と外気圧とに圧力差がない場合でも、筐体内K1の水滴が中子体3と吸気塔5との隙間に流入すると、水滴の自重によって排出弁4の内孔側が押し下げられる。これにより、排出弁4が開弁し、水滴が外に流出するものである。
【0028】
以上のように、この通気キャップ1によれば、筐体内外の圧力差を利用して、外気圧が高い場合には、吸気弁6および防水通気膜7を介して筐体内K1に外気を送り、筐体の内圧が高い場合や水滴が流入した場合には、排出弁4を介して内気や水滴を外に排出することができる。つまり、筐体内外の圧力差を利用して効率的に、筐体が給排気することができるとともに、筐体内で発生した結露による水滴を外に排出することができる。この結果、筐体内K1の機器への障害が抑制される。
【0029】
また、防水通気膜7によって雨水などが筐体内K1に流入せず、しかも、防水通気膜7が吸気弁6よりも下流側、つまり筐体内K1側に位置するため、防水通気膜7が外気に露出せず、経年劣化や虫害が抑制される。さらに、各構成要素2〜7が一体化し、しかも、排出弁4と吸気弁6と防水通気膜7とが、同軸上で上下方向に配設されているため、通気キャップ1を小型化、簡素化することが可能となる。また、上記のような被嵌合部K3を形成すれば、新規の筐体のみならず、既存の筐体に対しても通気キャップ1を取り付けることができ、既存の筐体を活用して筐体内K1の機器を結露から保護することができる。
【0030】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、すべての構成要素2〜7を一体化しているが、筐体の形状や配設位置などに応じて、吸気側(吸気弁6および防水通気膜7側)と排出側(排出弁4側)とを別体としてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 通気キャップ(給排装置)
2 ケーシング
3 中子体
4 排出弁
5 吸気塔
6 吸気弁
7 防水通気膜
K 筐体の底壁
K1 筐体の内側
K2 筐体の外側


【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外に設置される筐体に設けられる給排装置であって、
外気圧が前記筐体の内圧よりも高い場合に開弁する吸気弁と、
前記吸気弁から流入する外気の下流側に位置し、非通水性および通気性を有する防水通気膜と、
前記筐体の内側からの力によって開弁する排出弁と、
を備えることを特徴とする給排装置。
【請求項2】
前記吸気弁と防水通気膜と排出弁とが、上下方向に配設されている、ことを特徴とする請求項1に記載の給排装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−175057(P2010−175057A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21563(P2009−21563)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】