説明

給水弁装置

【課題】電動モータとして出力の小さな小型のものを用いることができ、且つ操作軸にてパイロット式弁部を良好に動作させることのできる給水弁装置を提供する。
【解決手段】パイロット式の弁部及び2次側の流出水路34を通って弁部の側に延出し、流出水路34の側でパイロット弁45を進退移動させる操作軸56とを含み、操作軸56によるパイロット弁45の進退移動の操作により主水路の流量調節を行う給水弁装置24において、操作軸56をステッピングモータにて軸方向に駆動するようになすとともに、背圧室44と流出水路34とを連通させる圧抜孔88及び背圧室44側で圧抜孔88を開閉する圧抜弁92を設けて、細径をなす圧抜ピン54を介し圧抜弁92を開弁させ、背圧室44の籠り圧を圧抜きし、引き続き操作軸56にてパイロット弁45を開弁側に後退移動させるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は給水弁装置に関し、詳しくは2次側の流出水路の側から操作軸にてパイロット式の弁部を操作するようになした給水弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給水弁装置として次のような給水弁装置、即ち(A)(イ)主弁座に向けて進退移動し、主水路の開度を変化させる主弁と、(ロ)主弁の背後に形成され、内部の圧力を主弁に対して閉弁方向の押圧力として作用させる背圧室と、(ハ)主水路における1次側の流入水路の水を背圧室に導いて背圧室の圧力を増大させる導入小孔と、(ニ)主弁を貫通して設けられ、背圧室と主水路における2次側の流出水路とを連通させて背圧室の水を流出水路に抜いて背圧室の圧力を減少させるパイロット孔と、(ホ)背圧室側において、主弁に設けられたパイロット弁座に向けて進退移動するパイロット弁とを有するパイロット式の弁部、及び(B)バルブボデーから2次側の流出水路を通って弁部の側に延出し、流出水路の側でパイロット弁を進退移動させる、パイロット弁とは別体をなす操作軸を含み、操作軸によるパイロット弁の進退移動の操作により、主弁をパイロット弁の進退移動に追従して同方向に進退移動させ、主水路の流量調節を行う給水弁装置が公知である。
【0003】
例えば下記特許文献1にこの種の給水弁装置が開示されている。
図11はその具体例を示している。
図において200はバルブボデーで、1次側の流入水路202と、2次側の流出水路204とが設けられており、それら流入水路202と流出水路204とで形成される主水路上にパイロット式の弁部が設けられている。
208はそのパイロット式の弁部におけるダイヤフラム弁からなる主弁で、主弁座206に向けて進退移動し、主水路の開度を変化させる。
【0004】
210は主弁208の背後に形成された背圧室で、212は主弁208を貫通して背圧室210と1次側の流入水路202とを連通させる導入小孔である。
導入小孔212は、1次側の流入水路202の水を背圧室210に導いて背圧室210の圧力を増大させる。
214は主弁208を貫通し、背圧室210と2次側の流出水路204とを連通させるパイロット孔で、218は背圧室210側において、主弁208に設けられたパイロット弁座216に向けて進退移動するパイロット弁である。
【0005】
この給水弁装置はまた、バルブボデー200から延出し、2次側の流出水路204の側でパイロット弁218を進退移動させる操作軸220を有している。
この給水弁装置では、操作軸220によるパイロット弁218の進退移動の操作により、主弁208をパイロット弁218の進退移動に追従して同方向に進退移動させ、主水路の流量調節を行う。
【0006】
しかしながらこの給水弁装置では、操作軸220をパイロット孔214内に挿入してパイロット弁218に当接させ、操作軸220の軸方向の移動によりパイロット弁218を進退移動させるようになしていることから、パイロット孔214の孔径が必然的に大きくなってしまい、閉弁状態の下でパイロット弁218を開弁させる際に大きな力を必要としてしまう。
【0007】
パイロット弁218及び主弁208の閉弁状態の下で、背圧室210には籠り圧が生じており、パイロット孔214の孔径が大きいと、閉弁状態の下でパイロット弁218に対し、背圧室210内の籠り圧による図中下向きの大きな押付力が発生しており、そのため操作軸220にて閉弁状態にあるパイロット弁218を開弁させる際に、大きな操作力を必要としてしまうのである。
【0008】
この場合、操作軸220を手動操作によって軸方向に移動させ、パイロット弁218を開弁させる場合には上記の問題はそれほど大きな問題とはならないが、操作軸220に電動モータを連結して操作軸220を電動式に駆動するようになした場合、小型で出力の小さい電動モータであると、パイロット弁218を閉弁状態から良好に開弁させることができなくなってしまう(操作荷重が大であるため)。
一方電動モータとして出力の大きな大型のものを用いると、そのことによって給水弁装置が大型化してしまい、また所要コストも高くなってしまう。
また電動モータによる消費電力も大きくなってしまう。
【0009】
尚、パイロット式の弁部におけるパイロット弁を操作軸にて2次側の流出水路の側から操作するようになした給水弁装置については、他に下記特許文献2,特許文献3等にも開示されている。
しかしながらこれら特許文献2,特許文献3に開示のものは、操作軸が停電時の非常用で且つ手動用である点で、本発明とは異なったものである。
【0010】
【特許文献1】特開2007−24059号公報
【特許文献2】特開2000−283322号公報
【特許文献3】特開2000−266196号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は以上のような事情を背景とし、電動モータとして出力の小さな小型のものを用いることができ、且つ操作軸の操作によってパイロット式の弁部を良好に動作させることのできる給水弁装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
而して請求項1のものは、(A)(イ)主弁座に向けて進退移動し、主水路の開度を変化させる主弁と、(ロ)該主弁の背後に形成され、内部の圧力を該主弁に対して閉弁方向の押圧力として作用させる背圧室と、(ハ)前記主水路における1次側の流入水路の水を該背圧室に導いて該背圧室の圧力を増大させる導入小孔と、(ニ)前記主弁を貫通して設けられ、該背圧室と前記主水路における2次側の流出水路とを連通させて該背圧室の水を該流出水路に抜いて該背圧室の圧力を減少させるパイロット孔と、(ホ)該背圧室側において、前記主弁に設けられたパイロット弁座に向けて進退移動するパイロット弁とを有するパイロット式の弁部、及び(B)バルブボデーから前記2次側の流出水路を通って該弁部の側に延出し、該流出水路の側で前記パイロット弁を進退移動させる、該パイロット弁とは別体をなす操作軸を含み、該操作軸による前記パイロット弁の進退移動の操作により、前記主弁を該パイロット弁の進退移動に追従して同方向に進退移動させ、前記主水路の流量調節を行う給水弁装置において、前記操作軸に電動モータを連結して該操作軸を該電動モータにて軸方向に駆動するようになすとともに、前記背圧室と前記流出水路とを連通させる圧抜孔、前記背圧室側で該圧抜孔を開閉する圧抜弁、及び該圧抜弁を開弁させる、前記操作軸よりも細径をなす圧抜ピンを設けて、該圧抜ピンを前記圧抜孔を挿通し前記流出水路側に突出させて該圧抜ピンを前記電動モータにて駆動するようになし、該圧抜ピンを介し該圧抜弁を開弁させて前記背圧室の籠り圧を圧抜きし、引き続き前記操作軸にて前記パイロット弁を開弁側に後退移動させるようになしてあることを特徴とする。
【0013】
請求項2のものは、請求項1において、前記パイロット弁が前記圧抜弁を、前記パイロット孔が前記圧抜孔を兼用していて、該パイロット弁と前記操作軸との間に前記圧抜ピンが介在させてあり、該操作軸にて該圧抜ピンを介し該パイロット弁を閉弁状態から開弁させて前記圧抜きを行い、続いて該圧抜ピンを介し該操作軸にて該パイロット弁を後退移動させるようになしてあることを特徴とする。
【0014】
請求項3のものは、請求項1において、前記圧抜弁が前記パイロット弁とは別途に、前記圧抜孔が前記パイロット孔とは別途にそれぞれ設けてあり、前記電動モータによる駆動にて前記圧抜ピンを介し前記圧抜弁を開弁させた後、前記操作軸にて該パイロット弁を後退移動させるようになしてあることを特徴とする。
【0015】
請求項4のものは、請求項3において、前記圧抜孔が前記パイロット弁を貫通して設けてあって、該圧抜孔が前記背圧室と前記流出水路とを前記パイロット孔を介して連通させるものとなしてあるとともに、前記圧抜弁が前記背圧室側で該圧抜孔を開閉する状態に設けてあって、前記圧抜ピンが該圧抜弁と前記操作軸との間に介在させてあり、該操作軸にて該圧抜ピンを介し該圧抜弁を開弁させた後、閉弁状態にある前記パイロット弁を後退移動させるようになしてあることを特徴とする。
【0016】
請求項5のものは、請求項3において、前記圧抜弁及び前記圧抜孔が、前記パイロット弁及び前記パイロット孔とはそれぞれ別の位置に設けてあって、前記圧抜ピンが前記操作軸を介さずに前記電動モータに連結してあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0017】
以上のように本発明は、操作軸に電動モータを連結して、操作軸を電動モータにて軸方向に駆動するようになすとともに、背圧室と流出水路とを連通させる圧抜孔、及び背圧室側で圧抜孔を開閉する圧抜弁を設け、更に圧抜弁を開閉させる細径の圧抜ピンを圧抜孔を挿通して流出水路側に突出させる状態に設けてこれを電動モータに連結して駆動するようになし、そして圧抜ピンを介し圧抜弁を開弁させて背圧室の籠り圧を圧抜きし、引き続き操作軸にてパイロット弁を開弁側に後退移動させるようになしたものである。
【0018】
本発明では、圧抜ピンが操作軸に対して細径をなしていることから、これに対応して圧抜孔を細径に形成することができ、従って圧抜ピンを電動モータにて開弁させる際に、小さな力でこれを開弁させることができる。
【0019】
而して圧抜弁を開弁させることで、背圧室に生じていた籠り圧を圧抜きでき、背圧室の圧力を一気に降下させることができる。
従ってその後パイロット弁を操作軸にて後退移動させる際に、小さな力でこれを後退移動させることができ、かかるパイロット弁の後退移動により主水路における水量を増大し、流量調節(流調)することができる。
またパイロット弁の前進移動に伴って、流量減少方向に流調することができる。
【0020】
また圧抜弁及びパイロット弁を小さな力で操作することができるため、電動モータとして出力の小さな小型のものを用いることが可能となり、以って給水弁装置をコンパクトに構成でき、また所要コストを安価となすことができる。更に電動モータによる消費電力を小さく抑えることが可能となる。
【0021】
かかる本発明は、背圧室内の水をごく僅かに抜くだけで効果的に背圧室内の圧力を急激に降下させ、背圧室の籠り圧を解消できる点に着目してなされたものである。
【0022】
本発明では、請求項2に従ってパイロット弁にて上記圧抜弁を、パイロット孔にて圧抜孔を兼用させて、そのパイロット弁と操作軸との間に上記の圧抜ピンを介在させ、操作軸にて圧抜ピンを介しパイロット弁を閉弁状態から開弁させて圧抜きを行い、続いて操作軸にてパイロット弁を後退移動させるようになしておくことができる。
この場合において、圧抜ピンはパイロット弁から操作軸側に突出する状態にパイロット弁に一体に設けておくことができる。
【0023】
本発明ではまた、請求項3に従って圧抜弁をパイロット弁とは別途に、また圧抜孔をパイロット孔とは別途にそれぞれ設け、圧抜ピンを介して圧抜弁を開弁させた後、操作軸にてパイロット弁を後退移動させるようになしておくことができる。
【0024】
この場合、圧抜孔の孔径を導入小孔即ち1次側の流入水路の水を背圧室に導く導入小孔の孔径よりも小孔径となし、またパイロット孔の孔径を導入小孔の孔径よりも大孔径となしておくことができる。
【0025】
このようにすることで、圧抜弁を開弁させて圧抜孔を開放したときに、背圧室の圧力低下によってパイロット弁が大きく開弁し、また主弁が開弁してしまうのを防ぐことができる。そしてその後パイロット弁を開弁させることによって、そこで初めて主弁をこれに追従して開弁させることができる。
【0026】
この場合において上記の圧抜孔を、パイロット弁を貫通して背圧室と流出水路とをパイロット孔を介して連通させる状態に設けるとともに、上記の圧抜弁を背圧室側で圧抜孔を開閉する状態に設け、そして圧抜ピンを圧抜弁と操作軸との間に介在させて、操作軸により圧抜ピンを介し圧抜弁を開弁させた後、圧抜ピンを介し又は介さずに直接操作軸にてパイロット弁を後退移動させるようになしておくことができる(請求項4)。
【0027】
このようにすれば、圧抜弁をパイロット弁とは別に設けているにも拘らず同一の操作軸にて圧抜弁とパイロット弁とを移動操作することができる。
【0028】
一方、請求項5に従って圧抜弁及び圧抜孔を、パイロット弁及びパイロット孔とは別の位置に設けて、圧抜ピンを上記の操作軸を介さずに電動モータに連結しておくことができる(請求項5)。
【0029】
このようにすれば、圧抜弁及び圧抜孔、更に圧抜ピンをパイロット弁やパイロット孔と同じ位置に設けた場合のようにパイロット弁周りの構造を複雑化してしまうことがない利点が得られる。
尚この請求項5において、圧抜弁は一旦これを開弁させて背圧室の圧抜きを行った後にこれを閉弁させ、その圧抜弁の閉弁状態の下で操作軸にてパイロット弁を進退移動させるようになすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は水栓で、12は水栓10における吐水管である。
吐水管12は、カウンタ上面等の取付面(図示省略)から起立する形態で設けられている。
吐水管12は、ここでは全体として逆U字状のグースネック形状をなしており、その先端に吐水口14が備えられている。
また吐水管12には、最上位から先端にかけて下向きに下がった下がり形状部且つその先端部の上面に、吐止水と吐水の流量調節とを行う回転式のダイヤル操作部16,赤外線式のセンサ18が設けられている。
【0031】
ここでダイヤル操作部16は電気的操作部として構成してあって、このダイヤル操作部16を回転させると、回転位置検出センサがこれを検知して、その回転位置に応じた信号を発生する。そしてその信号が後述の制御部28に送られる。
センサ18は、発光部から赤外線を発光し、人体による反射光を受光部で受光して人体検知を行うものである。
【0032】
22は給水路で、この給水路22上に本実施形態の給水弁装置24が設けられている。
26はその駆動部となるステッピングモータ(電動モータ)で、給水弁装置24における制御部28に電気的に接続されている。
制御部28にはまた、上記のダイヤル操作部16(詳しくはその回転位置を検出する回転位置検出センサ)が電気的に接続されている。更にこの制御部28には、上記のセンサ18が電気的に接続されている。
【0033】
図2及び図3に、この給水弁装置24の具体的構成が示してある。
図において30はバルブボデーで、分割体30-1,30-2,30-3及び30-4の上下の分割構造とされている。
このバルブボデー30には、1次側の流入水路32と、2次側の流出水路34とが設けられており、それら流入水路32と流出水路34とで形成される主水路上にパイロット式の弁部が設けられている。
【0034】
36は、そのパイロット式の弁部におけるダイヤフラム弁から成る主弁で、この主弁36は、図3にも示しているように硬質の主弁本体38と、これにより保持されたゴム製のダイヤフラム膜40とから成っている。
この主弁36は、主弁座42に向けて進退移動して上記の主水路を開閉し、また開度を変化させる。
【0035】
詳しくは、主弁36は主弁座42への着座によって主水路を遮断し、また主弁座42から図中上向きに離間することによって主水路を開放する。
また主弁座42からの離間量に応じて主水路の開度を大小変化させ、主水路を流れる水の流量を調節する。
【0036】
この主弁36の図中上側、即ち主弁36に対し流出水路34と反対側に背圧室44が設けられている。
背圧室44は、内部の圧力を主弁36に対し図中下向きの閉弁方向の押圧力として作用させる。
主弁36には、これを貫通して1次側の流入水路32と背圧室44とを連通させる導入小孔46が設けられている。
導入小孔46は、流入水路32からの水を背圧室44に導いて背圧室44の圧力を増大させる。
【0037】
主弁36にはまた、これを貫通して背圧室44と2次側の流出水路34とを連通させる、水抜水路としてのパイロット孔48が設けられている。
このパイロット孔48は、背圧室44内の水を流出水路34に抜いて背圧室44の圧力を減少させる。
【0038】
45は、上記パイロット式の弁部におけるプランジャ弁から成るパイロット弁で、その下部にはゴム等の弾性材から成るシール部材47が設けられている。
このパイロット弁45は図中上下方向、即ち主弁36に設けられたパイロット弁座50に対し図中上下方向(軸方向)に進退移動して、パイロット孔48の開度を変化させる。
【0039】
詳しくは、パイロット弁45がパイロット弁座50に着座することでパイロット孔48が閉鎖され、またパイロット弁45がパイロット弁座50から図中上向きに離間することで、パイロット孔48が開放される。
更にパイロット弁45のパイロット弁座50からの離間量に応じてパイロット孔48の開度が変化せしめられる。
【0040】
但しこの実施形態では、実際にはパイロット弁45が図中上下方向に進退移動すると、主弁36がこのパイロット弁45に追従して図中上下方向に進退移動する。
その際、主弁36はパイロット弁座50とパイロット弁45との間に一定の微小な追従間隙を保持した状態で、パイロット弁45の進退移動に追従して同方向に進退移動する。
【0041】
詳しくは、図5(II)に示しているようにパイロット弁45が図中上方向に後退移動すると、背圧室44内からパイロット孔48を通じて流出水路34に抜ける水の量が増大して、背圧室44の圧力が低下する。
すると背圧室44の圧力と流入水路32の圧力とをバランスさせるようにして、主弁36がパイロット弁45の後退移動に追従して上向きに後退移動し、主水路の開度を大として流入水路32から流出水路34に流通する水の量を増大させる(図5(II))。
【0042】
主弁36は、パイロット弁座50とパイロット弁45との間隙を一定に維持しつつ、パイロット弁45の更なる後退移動に追従して同方向に移動し、主水路の開度を更に拡くして、主水路における水の流量を増大変化させる(図5(III))。
【0043】
また逆にパイロット弁45が図中下向きに前進移動すると、図6(I)に示すように背圧室44の圧力と流入水路32の圧力とをバランスさせるようにして、主弁36がパイロット弁45の前進移動に追従して図中下向きに移動し、主水路の開度を減少変化させて、主水路における水の流量を減少させる(図6(II))。
そして最終的に主弁36及びパイロット弁45が主弁座42,パイロット弁座50に着座して、それぞれが閉弁状態となる(図6(III))。
【0044】
尚、図3に示しているように主弁36における主弁本体38には、円筒形状をなすガイド部51が上向きに起立状態に一体に設けられており、このガイド部51によって、パイロット弁45の進退移動時の案内がなされるようになっている。
このパイロット弁45と分割体30-4との間には金属製のコイルばね52が介装されており、このコイルばね52によってパイロット弁45が図中下向き、即ち閉弁方向に付勢されている。
【0045】
図3に示しているようにこの実施形態では、後述の操作軸56に対して細径をなす圧抜ピン54が、パイロット弁45から図中下向きに突出しており、この圧抜ピン54がパイロット孔48を挿通している。
この実施形態では、パイロット弁45が圧抜弁を兼ねており、またパイロット孔48が圧抜孔を兼ねている。
この圧抜孔を兼ねたパイロット孔48には操作軸56は挿入されず、かかるパイロット孔48は圧抜ピン54に対応した孔径で操作軸56よりも細径に形成されている。
【0046】
図3において、56はパイロット弁45に対し図中上下方向に対向して同軸状に配置された操作軸で、この操作軸56は、バルブボデー30から2次側の流出水路34を通って上記のパイロット式の弁部の側に延出し、その流出水路34側でパイロット弁45を介して主弁36を操作する。
【0047】
この操作軸56には、図2に示しているようにステッピングモータ26が連結され、かかる操作軸56がステッピングモータ26にて駆動されるようになっている。
図2において、60はステッピングモータ26の出力軸で、この出力軸60にカム部材62が一体回転状態に組み付けられている。
このカム部材62は円筒形状をなしていて、図4に示しているように中心部に挿入孔64を有しており、そこに出力軸60が上向きに挿入されている。
【0048】
図4に詳しく示しているように、この出力軸60とカム部材62の挿入孔64とには、切落し形状の平坦な係合面66,68がそれぞれ形成されており、出力軸60と挿入孔64とがそれら係合面66と68とにおいて互いに係合させられている。
そしてそれらの係合作用により、カム部材62が出力軸60と一体回転するようになっている。
ここでカム部材62の上面は、周方向に沿って図中反時計方向に移動するにつれ上方に移行する形状の、部分螺旋形状をなすカム面70とされている。
【0049】
一方操作軸56の下端部には、このカム部材62の回転に従動して移動する従動キャップ72が取り付けられている。
従動キャップ72には、その中心部に挿込孔76が形成され、そこに操作軸56が圧入によって挿し込まれている。
【0050】
この従動キャップ72には、下向きに突出する突起74が設けられており、この突起74が、カム部材62における上面のカム面70に図中下向きに当接させられている。
従ってステッピングモータ26の出力軸60が回転し、そしてこれと一体にカム部材62が回転すると、操作軸56がカム面70のカム作用で上下方向に駆動され、パイロット弁45を介して主弁36を動作させる。
【0051】
図2に示しているようにバルブボデー30、詳しくは分割体30-2には、その中心部に凹部77が形成されており、その凹部77の下部に、上記の従動キャップ72が上下に摺動可能に嵌挿されている。
一方凹部77の上部にはグリースキャップ78が嵌挿されている。このグリースキャップ78の内側にはグリース溜りが形成され、そこにグリースが保持されている。
【0052】
このグリースキャップ78と従動キャップ72との間には、金属製のコイルばね80が介装されており、このコイルばね80によって、従動キャップ72が図中下向きに付勢されている。即ち操作軸56がコイルばね80にて図中下向きに付勢されている。
【0053】
上記操作軸56は、分割体30-2の凹部77から、分割体30-3の貫通孔82を貫通して2次側の流出水路34へと突出している。
そして分割体30-3には、図3に示しているようにその貫通孔82の一部が環状の収容凹所84とされ、そこに環状シール部材としての弾性を有するゴム製のOリング86が収容されている。
そしてこのOリング86によって、操作軸56とバルブボデー30との間、詳しくはその分割体30-3との間が水密にシールされている。
【0054】
この実施形態では、図2及び図3に示すように主弁36及びパイロット弁45が閉弁状態の下で、操作軸56をステッピングモータ26により図中上向きに移動させ、操作軸56を圧抜ピン54に当接させてパイロット弁45を僅かに持ち上げることで、背圧室44に生じていた籠り圧を抜くことができる。
このとき、背圧室44内の水を僅かに流出水路34側に抜くだけで、図10(イ)に示しているように背圧室44の籠り圧を抜き、背圧室44の圧力を急激に大きく降下させることができる。
【0055】
操作軸56は、ステッピングモータ26により引き続き図中上向きに押し上げられ、これにより圧抜ピン54を介してパイロット弁45が図中上向きに後退移動させられ、これにより主弁36がパイロット弁45に追従して同方向に後退移動し、その開度を増大変化させて主水路を流れる水の流量を増大させる。
即ち主水路における水の流量を増大側に調節する。
【0056】
また操作軸56を図中下向きに移動させると、パイロット弁45が図中下向きに前進移動し、そしてこれに追従して主弁36が図中下向きに前進移動してその開度を減少変化させる。
そしてこれにより主水路を流れる水の流量を減少させる。
【0057】
以上のように本実施形態では、操作軸56にて圧抜ピン54を僅かに押し上げることで背圧室44内に生じていた籠り圧を圧抜きでき、背圧室44の圧力を一気に降下させることができる。
またこの実施形態ではパイロット孔48の孔径が可及的に小さくされているため、その後にパイロット弁45を操作軸56にて後退移動させる際にも、小さな力でこれを後退移動させることができ、パイロット弁45の後退移動により主水路における水量を増大側に調節(流調)することができる。
またパイロット弁45の前進移動に伴って流量減少方向に流調することができる。
【0058】
本実施形態では、パイロット弁45を小さな力で操作することができるため、ステッピングモータ26として出力の小さな小型のものを用いることが可能となり、以って給水弁装置24をコンパクトに構成でき、また所要コストを安価となすことができる。更にステッピングモータ26による消費電力を小さく抑えることができる。
【0059】
次に図7は、本発明の他の実施形態を示している。
この例は、パイロット弁45の底部にこれを貫通し、背圧室44と流出水路34とを、パイロット孔48を介して連通させる圧抜孔88を設けるとともに、パイロット弁45の円筒部90の内部に、圧抜孔88を開閉する圧抜弁92を設け、これを金属製のコイルばね94にて図中下向き即ち閉弁方向に付勢し、圧抜弁92をパイロット弁45に設けた圧抜弁92用の弁座100に着座させるようになした例である。
尚、パイロット弁45にはキャップ96が螺合されており、そのキャップ96と圧抜弁92との間に、上記のコイルばね94が介装されている。
【0060】
この圧抜弁92からは、操作軸56に対して細径をなす圧抜ピン54が図中下向きに突出し、かかる圧抜ピン54が、パイロット弁45に形成された圧抜孔88を挿通し、操作軸56に対して軸方向に対向せしめられている。
尚、上記のキャップ96からは突出部98が下向きに立ち下がっており、この突出部98が、圧抜弁92に対して対向せしめられている。
この実施形態では、圧抜孔88の孔径Xが導入小孔46の孔径Yに対して小孔径とされており、またパイロット孔48の孔径Zが導入小孔46の孔径Yに対して大孔径とされている。
【0061】
この実施形態では、図8(I)に示しているようにステッピングモータ26により操作軸56を図中上向きに突き上げると、操作軸56が先ず圧抜ピン54に当接して、圧抜弁92を僅かに上昇させる。この時点で背圧室44内に生じていた籠り圧が解消する(円筒部90の内部は連通孔にて背圧室44と連通している)。
【0062】
操作軸56は、引き続いて圧抜ピン54を上向きに押し上げることで、圧抜弁92と突出部98との当接作用により、パイロット弁45を閉弁状態から図中上向きに押し上げ、パイロット弁45を開弁させる。
その後更に操作軸56はパイロット弁45を図中上向きに後退移動させ、主弁36をこれに追従して後退移動させて、その開度を漸次増大させる(図8(II))。
【0063】
この実施形態では、操作軸56にて圧抜弁92を開弁させても、そのことによってパイロット弁45は直ちに閉弁状態から開弁動作せず(図8(I))、その後操作軸56からの操作力が圧抜ピン54,突出部98を介してパイロット弁45に加えられることで、そこで初めてパイロット弁45が閉弁状態から開弁動作する。
【0064】
本実施形態においても、圧抜弁92を開弁させて圧抜孔88を開放することで、背圧室44の籠り圧を解消することができ、その後小さな力でパイロット弁45を開弁させ、またこれに追従して主弁36を開弁させることができる。
【0065】
またこの実施形態では、圧抜弁92をパイロット弁45とは別に設けているにも拘らず、同一の操作軸56にて圧抜弁92とパイロット弁45とを移動操作することができる。
【0066】
図9は本発明の更に他の実施形態を示している。
この例は、上記パイロット弁45とは離れた別の位置において、連通路104にて背圧室44に連通した圧抜室106をバルブボデー30に設けて、そこに圧抜弁92を収容し、この圧抜弁92にて圧抜孔88を開閉させるようになしたものである。
ここで圧抜孔88は連通路104,圧抜室106を介して背圧室44と流出水路34とを連通させるようになしてある。
この実施形態において、連通路104,圧抜室106もまた圧抜孔88の一部をなすものと考えることもできる。
【0067】
この圧抜弁92からは、圧抜ピン54が図中下向きに長く突出しており、この圧抜ピン54が、上記のカム部材62を介してステッピングモータ26に連結されている。
ここでカム部材62には、圧抜弁92用のカム部107が設けられており、このカム部107に、圧抜ピン54を図中上下方向に移動させるためのカム面108が形成されている。
【0068】
ここでカム面108は、操作軸56にてパイロット弁45を開弁させる直前に、圧抜弁92を開弁させるものとなしてある。
またこのカム面108は、図10(ロ),(ハ)に示しているように圧抜弁92を開弁させた後、操作軸56がパイロット弁45を開弁させた後において、圧抜弁92を再び閉弁させるようにその形状が定めてある。
【0069】
尚、パイロット弁45からは操作軸56よりも細径をなすピン110が図中下向きに突出し、操作軸56に対して対向せしめられているが、この実施形態ではピン110は圧抜ピンとしての働きを有していない。
【0070】
但し操作軸56はこのピン110を介してパイロット弁45を移動させるようになしてあり、従ってパイロット孔48の孔径は操作軸56よりも小孔径をなしており、背圧室44の圧抜きを行った後において、パイロット弁45を操作軸56にて開弁させる際の操作抵抗も小となしてある。
【0071】
本実施形態では、圧抜弁92及び圧抜孔88、更に圧抜ピン54をパイロット弁45やパイロット孔48と同じ位置に設けた場合のようにパイロット弁45周りの構造を複雑化してしまうことがない利点が得られる。
【0072】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば上記の圧抜ピンは圧抜弁と別体をなして、これを圧抜弁と操作軸或いはカム部材との間に介在させておくことも可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の一実施形態である給水弁装置を有する水栓の概略全体図である。
【図2】同実施形態の給水弁装置を示す正面断面図である。
【図3】図2の給水弁装置の要部拡大図である。
【図4】同実施形態における駆動力の伝達機構を各部品に分解して示す斜視図である。
【図5】同実施形態の作用説明図である。
【図6】図5に続く作用説明図である。
【図7】本発明の他の実施形態の図である。
【図8】第2実施形態の作用説明図である。
【図9】本発明の更に他の実施形態の図である。
【図10】図9の実施形態の作用説明図である。
【図11】従来の給水弁装置の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0074】
24 給水弁装置
26 ステッピングモータ(電動モータ)
30 バルブボデー
32 流入水路
34 流出水路
36 主弁
42 主弁座
44 背圧室
45 パイロット弁(圧抜弁)
46 導入小孔
48 パイロット孔(圧抜孔)
50 パイロット弁座
54 圧抜孔
56 操作軸
88 圧抜孔
92 圧抜弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(イ)主弁座に向けて進退移動し、主水路の開度を変化させる主弁と、(ロ)該主弁の背後に形成され、内部の圧力を該主弁に対して閉弁方向の押圧力として作用させる背圧室と、(ハ)前記主水路における1次側の流入水路の水を該背圧室に導いて該背圧室の圧力を増大させる導入小孔と、(ニ)前記主弁を貫通して設けられ、該背圧室と前記主水路における2次側の流出水路とを連通させて該背圧室の水を該流出水路に抜いて該背圧室の圧力を減少させるパイロット孔と、(ホ)該背圧室側において、前記主弁に設けられたパイロット弁座に向けて進退移動するパイロット弁とを有するパイロット式の弁部、及び(B)バルブボデーから前記2次側の流出水路を通って該弁部の側に延出し、該流出水路の側で前記パイロット弁を進退移動させる、該パイロット弁とは別体をなす操作軸を含み、該操作軸による前記パイロット弁の進退移動の操作により、前記主弁を該パイロット弁の進退移動に追従して同方向に進退移動させ、前記主水路の流量調節を行う給水弁装置において、
前記操作軸に電動モータを連結して該操作軸を該電動モータにて軸方向に駆動するようになすとともに、
前記背圧室と前記流出水路とを連通させる圧抜孔、前記背圧室側で該圧抜孔を開閉する圧抜弁、及び該圧抜弁を開弁させる、前記操作軸よりも細径をなす圧抜ピンを設けて、該圧抜ピンを前記圧抜孔を挿通し前記流出水路側に突出させて該圧抜ピンを前記電動モータにて駆動するようになし、該圧抜ピンを介し該圧抜弁を開弁させて前記背圧室の籠り圧を圧抜きし、引き続き前記操作軸にて前記パイロット弁を開弁側に後退移動させるようになしてあることを特徴とする給水弁装置。
【請求項2】
請求項1において、前記パイロット弁が前記圧抜弁を、前記パイロット孔が前記圧抜孔を兼用していて、該パイロット弁と前記操作軸との間に前記圧抜ピンが介在させてあり、該操作軸にて該圧抜ピンを介し該パイロット弁を閉弁状態から開弁させて前記圧抜きを行い、続いて該圧抜ピンを介し該操作軸にて該パイロット弁を後退移動させるようになしてあることを特徴とする給水弁装置。
【請求項3】
請求項1において、前記圧抜弁が前記パイロット弁とは別途に、前記圧抜孔が前記パイロット孔とは別途にそれぞれ設けてあり、前記電動モータによる駆動にて前記圧抜ピンを介し前記圧抜弁を開弁させた後、前記操作軸にて該パイロット弁を後退移動させるようになしてあることを特徴とする給水弁装置。
【請求項4】
請求項3において、前記圧抜孔が前記パイロット弁を貫通して設けてあって、該圧抜孔が前記背圧室と前記流出水路とを前記パイロット孔を介して連通させるものとなしてあるとともに、前記圧抜弁が前記背圧室側で該圧抜孔を開閉する状態に設けてあって、前記圧抜ピンが該圧抜弁と前記操作軸との間に介在させてあり、該操作軸にて該圧抜ピンを介し該圧抜弁を開弁させた後、閉弁状態にある前記パイロット弁を後退移動させるようになしてあることを特徴とする給水弁装置。
【請求項5】
請求項3において、前記圧抜弁及び前記圧抜孔が、前記パイロット弁及び前記パイロット孔とはそれぞれ別の位置に設けてあって、前記圧抜ピンが前記操作軸を介さずに前記電動モータに連結してあることを特徴とする給水弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−264485(P2009−264485A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−114679(P2008−114679)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】