説明

給餌装置、給餌方法

【要 約】
【課題】飼料摂取不足の家畜を容易に発見できる技術を提供する。
【解決手段】家畜15が飼料を摂取する際、摂取量を家畜毎に集計し、摂取量が不足している家畜15が検出されると、家畜15に装着した装着装置に信号を送信し、摂取不足の家畜15の装着装置12のランプを点灯させる。ランプは家畜15の首の後ろ側に配置しておくと、複数の放牧された家畜15を一望するだけで、飼料摂取不足の家畜15を発見することができる。その家畜15は他の家畜15とは別に飼料を摂取させると飼料摂取不足が解消される。また、当該家畜を診察することにより、飼料摂取量低下の主な原因となる、家畜疾病の早期発見にもつながる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜を飼育する技術分野に係り、特に、家畜の成育状況を管理できる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、酪農家は、数十〜百頭程度の乳牛を飼育しており、これら多数の乳牛に対し、適切な量を給餌するため、自動給餌装置が用いられている。特に、子牛の場合、酪農では母乳を飲ませることはなく、給餌装置による哺乳が通常行なわれている。
【0003】
また肉牛の場合も、出産後早めに離乳することによって次回の発情時期を早めることができるので、子牛の母乳摂取を早めに終了させ、以後は自動給餌装置を用いて哺乳させている。
【0004】
一般に、子牛は、柵で仕切られた一定の狭い領域内や牛舎の内部で放牧されており、この領域内に給餌装置を配置すれば、運動とミルクの摂取を行なわせることができる。
しかし、多数の子牛を飼育する場合、強い子牛が給餌装置を占領し、弱い子牛が授乳できない場合があり、ミルクの摂取量が少ない子牛は罹病する確率が高く、死亡するケースも発生する。
【0005】
その対策として、家畜に個体識別のための識別標識を取り付け、家畜が摂取したミルクの分量をコンピュータによって家畜毎に計測し、摂取量が基準値よりも少ない家畜の存在が判明すると、その家畜の識別標識の番号をコンピュータのディスプレイ装置に表示させることが考えられる。
この方法によれば、ミルクの摂取量を一定時間毎に監視し、摂取不足が判明した家畜には、特別にミルクを摂取させるという対策を採ることができる。
【0006】
しかしながら、ディスプレイ装置上の表示内容を一定時間毎に確認するのは煩雑であり、また、ディスプレイ装置上で摂取量が少ない家畜が特定できても、放牧中の多数の家畜の中からその家畜を特定するのは容易ではない。
自動哺乳装置は例えば下記文献に記載されている。
【特許文献1】特開2004−113170号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記従来技術の課題を解決するために創作されたものであり、飼料の摂取量が少ない家畜を容易に識別できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、複数の家畜が放牧される範囲内に設置される給餌器本体と、前記各家畜にそれぞれ装着される装着装置とを有する給餌装置であって、前記装着装置は、ランプと、前記家畜の個体を識別する識別情報が記憶された家畜側制御装置を有し、前記家畜側制御装置は、当該装着装置が有する前記識別情報と、それに対応付けられた点灯指示の信号を受信すると前記ランプを点灯させるように構成され、前記給餌器本体は、家畜に飼料を供給する飼料供給装置と、前記家畜が前記飼料供給装置から摂取した前記飼料の量を測定する本体側制御装置とを有し、前記本体側制御装置は、前記飼料供給装置によって前記飼料が給餌された前記家畜の前記識別情報を読み取り、前記飼料の摂取量を、読み取った前記識別情報に対応付けて記憶し、前記摂取量の所定時間内の集計値と基準値とを比較し、摂取不足を検出すると摂取不足の前記家畜の前記識別情報と、それに対応付けた点灯指示の信号を無線送信する給餌装置である。
また、本発明は、前記家畜側制御装置は、アンテナを内蔵し、前記識別情報が記憶された記憶部を有し、前記本体側制御装置は、前記アンテナを通じて記憶内容を読み取る給餌装置である。
また、本発明は、複数の家畜が移動する移動範囲内に給餌器本体を設置し、前記各家畜にそれぞれ識別情報が賦与され、ランプが取りつけられた装着装置を装着させ、前記給餌器本体から給餌される前記家畜の識別情報を読み取り、前記給餌器本体から前記家畜に供給される飼料の量を測定し、前記飼料の摂取量を前記識別情報と対応付けて記憶し、所定期間内の摂取量と基準値とを比較し、前記飼料の摂取量が不足している家畜の前記ランプを点灯させる給餌方法である。
【発明の効果】
【0009】
飼料摂取量が少ない家畜を容易に発見できるので、対処しやすい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明の給餌装置10の使用状態を説明するための図面であり、図2は、全体のシステムの概略図である。
本発明の給餌装置10は、給餌器本体11と、装着装置12とを有している。
給餌器本体11は家畜15が飼育される領域内に設置されるものであり、ここでは、その領域は柵18で囲われている。他方、装着装置12は小型であり、家畜15に装着させるものである。
【0011】
装着装置12の外観を図3に示す。
装着装置12はベルト30を有しており、両端には締結部33aと被締結部33bが配置されている。ベルト30を家畜15の首や足などに巻き回し、締結部33aと被締結部33bを締結させると、装着装置12は家畜15に装着される。従って、この装着装置12では、ベルト30と締結部33aと被締結部33bとで家畜に装着するための装着部が構成されている。
【0012】
ベルト30上の締結部33aと被締結部33bの間の位置にはランプ31が取りつけられている。ランプ31を外側にし、ベルト30を家畜15の首に巻き回し、締結部33aと被締結部33bとを締結すると、装着装置12は、ランプ31が家畜15の首の背中側に位置した状態で家畜15に装着される。
【0013】
ベルト30にはランプ31に接続された家畜側制御装置32が配置されている。
家畜側制御装置32の回路ブロックを示す図4を参照し、家畜側制御装置32は、その筺体内に、家畜側制御回路35と、識別装置36と、家畜側アンテナ37とが配置されている。家畜側制御回路35には電池38とランプ31と識別装置36と家畜側アンテナ37が接続されている。
【0014】
家畜側制御回路35は、電池38からのランプ31への通電を制御するように構成されており、ランプ31を点灯及び消灯させることができるように構成されている。
ランプ31は、家畜15の背中側で固定されているから、柵内の複数の家畜15を一望すると、ランプ31が点灯している家畜15と消灯している家畜15を区別することができる。
【0015】
識別装置36はROM等の不揮発性の記憶装置であり、例えば二値で数ビット〜数十ビット程度の情報が識別情報として記憶されている。複数の家畜15には、それぞれ装着装置12が装着されており、各装着装置12には、それぞれ異なる値の識別情報が記憶されている。従って、家畜と識別情報は一対一に対応付けられており、家畜15の個体は、装着された装着装置12内の識別情報を読み取ることで特定できるように構成されている。
【0016】
給餌器本体11は、本体側制御装置21と、飼料供給装置51とを有している。
飼料供給装置51には、タンク52が接続されている。タンク52は、家畜に供給する飼料を配置する容器であり、ここではミルクが配置されている。飼料供給装置51には、授乳部53が設けられている。授乳部53は、不図示の柵で囲まれており、一台の授乳部53に対し、家畜15が一頭だけ接近し、授乳部53からミルクを給餌されるように構成されている。
家畜15が授乳部53を口に含み、吸飲すると、飼料供給装置51から家畜15にミルクが供給される。
【0017】
本体側制御装置21には、本体側制御回路25と、記憶装置28と、送受信アンテナ29とを有している。本体側制御回路25には、コンピュータ本体、記憶装置28には、ハードディスクを用いることができる。
【0018】
送受信アンテナ29は本体側制御回路25に接続されており、飼料供給装置51に家畜15が接近すると、本体側制御回路25と家畜側制御回路35は、送受信アンテナ29と家畜側アンテナ37を介して信号を無線で送受信し、本体側制御回路25が、識別装置36内に記憶された識別情報を読み取ることで、飼料供給装置51から給餌される家畜15を特定することができる。
【0019】
飼料供給装置51には不図示のセンサが設けられており、飼料供給装置51が供給するミルクの量が検出され、本体側制御回路25に送信される。
家畜15が授乳部53を吸飲しないときは、給餌器本体11から、ミルクは流出しないように構成されており、飼料供給装置51が供給したミルクの量は、家畜15が吸飲した分量に等しくなっている。
【0020】
従って、本体側制御回路25は、供給量をセンサから受信すると、読み取った識別情報によって特定される家畜の飼料摂取量として、摂取量を識別情報と対応付けて記憶装置28に記憶させる。
【0021】
多数の家畜15が一日に複数回本給餌装置10から飼料(ミルク)を摂取しており、本給餌装置10の本体側制御装置21は、家畜15が摂取する度に、その家畜15の識別情報と対応付けて飼料摂取量を記憶装置28に記憶する。
【0022】
本体側制御装置21には、一乃至複数台の外部コンピュータ14が無線又は有線で接続されており、本体側制御装置21は一日のミルク摂取量を所定時間毎に集計し、外部コンピュータ14からの求めに応じて、表示することができる。また、過去の摂取量も、日付と対応付けて表示することができる。
【0023】
本体側制御装置21には摂取量の基準値が設定されており、所定時刻になったときの各家畜15の摂取量が、その時刻の基準値と比較され、各家畜15毎に、摂取量の確認が行なわれる。
例えば、午前0時を基準とし一時間毎に比較時刻を設定し、午前0時から各比較時刻までの合計の飼料摂取量と、各比較時刻に対応した基準値とを比較することで行なうことができる。
【0024】
そして、比較時刻において飼料の摂取量が基準値に達していない家畜15、即ち、飼料摂取量が不足している家畜15が発見されると、ランプ31を点灯させる信号が、その家畜15の識別情報と対応付けて送受信アンテナ29から送信される。
【0025】
各装着装置12が送信された信号を受信すると、各装着装置12が有する識別情報と照合され、一致した装着装置12のランプ31が点灯される。これにより、ミルク摂取が不足している家畜15を他の牛から区別できるようになり、ランプ31が点灯した家畜15が発見されると、その家畜15は他の家畜15とは別の場所に移動され、そこで不足した飼料が給餌される。
かくて弱い家畜15も十分に飼料を摂取でき、特に、子牛にミルクが供給される場合、子牛の病気や死亡が防止される。
【0026】
点灯したランプ31は、一定時間が経過すると、消灯する。
なお、装着装置12にリセットボタンを設け、飼料摂取不足の家畜15に特別に給餌し、不足が解消されるとリセットボタンによって、点灯したランプ31を消灯させることもできる。装着装置12にリセットボタンを設けず、本体側制御回路25に設けてもよい。
また、外部コンピュータ14から消灯の指示を入力し、対応する装着装置12がそれを受信してランプ31を消灯させるようにしてもよい。
【0027】
なお、飼料摂取量を比較する場合、摂取不足が検出された場合に直ちにランプを点灯させてもよいし、二又は三以上の比較時刻で連続して飼料の摂取不足が検出された場合に限り、ランプを点灯させるようにしてもよい。
比較対象の基準値は、家畜の個体毎(識別情報毎)に異なる値を設定することができるし、一律の基準値を設定することもできる。
【0028】
上記識別装置36はROMの場合であったが、識別情報が記録されたICタグで識別装置36を構成させ、本体側制御装置21に読取装置を設ければ、送受信アンテナ29を用いずに、読取装置によってICタグ内に記録された識別情報を読み取ることができる。
【0029】
なお、上記実施例では屋外の柵内で放牧する場合を説明したが、屋外での飼育に限定されるものではなく、放し飼い牛舎内で子牛などの家畜を生育させる場合も含まれる。
また、上記は家畜としてミルク摂取が必要な子牛に本発明を適用したが、本発明は子牛に限定されるものではなく、他の家畜、家禽にも適用可能である。その場合、ミルクではなく飼料の摂取不足を検出すると、ランプを点灯させるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】給餌装置の使用状態を説明するための図
【図2】本発明の給餌装置の給餌器本体側の構成を説明するための図
【図3】本発明の給餌装置の装着装置側の構成を説明するための図
【図4】家畜側制御装置の回路ブロック図
【符号の説明】
【0031】
11……給餌器本体
12……装着装置
15……家畜
21……本体側制御装置
31……ランプ
32……家畜側制御装置
51……飼料供給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の家畜が放牧される範囲内に設置される給餌器本体と、前記各家畜にそれぞれ装着される装着装置とを有する給餌装置であって、
前記装着装置は、
ランプと、
前記家畜の個体を識別する識別情報が記憶された家畜側制御装置を有し、
前記家畜側制御装置は、当該装着装置が有する前記識別情報と、それに対応付けられた点灯指示の信号を受信すると前記ランプを点灯させるように構成され、
前記給餌器本体は、
家畜に飼料を供給する飼料供給装置と、
前記家畜が前記飼料供給装置から摂取した前記飼料の量を測定する本体側制御装置とを有し、
前記本体側制御装置は、前記飼料供給装置によって前記飼料が給餌された前記家畜の前記識別情報を読み取り、前記飼料の摂取量を、読み取った前記識別情報に対応付けて記憶し、前記摂取量の所定時間内の集計値と基準値とを比較し、摂取不足を検出すると摂取不足の前記家畜の前記識別情報と、それに対応付けた点灯指示の信号を無線送信する給餌装置。
【請求項2】
前記家畜側制御装置は、アンテナを内蔵し、前記識別情報が記憶された記憶部を有し、
前記本体側制御装置は、前記アンテナを通じて記憶内容を読み取る請求項1記載の給餌装置。
【請求項3】
複数の家畜が移動する移動範囲内に給餌器本体を設置し、前記各家畜にそれぞれ識別情報が賦与され、ランプが取りつけられた装着装置を装着させ、
前記給餌器本体から給餌される前記家畜の識別情報を読み取り、前記給餌器本体から前記家畜に供給される飼料の量を測定し、前記飼料の摂取量を前記識別情報と対応付けて記憶し、所定期間内の摂取量と基準値とを比較し、前記飼料の摂取量が不足している家畜の前記ランプを点灯させる給餌方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−22759(P2008−22759A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−197985(P2006−197985)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(506249565)有限会社シェパード (1)
【Fターム(参考)】