説明

絶縁金属ベース回路基板及びそれを用いた混成集積回路モジュール

【課題】基板の実装工程時の熱負荷により発生する反り挙動を減少するための回路設計方法及びそれを用いた絶縁金属ベース回路基板及びその回路基板を用いた混成集積回路モジュールを提供する。
【解決手段】金属箔上に絶縁層を介して導体金属を設けてなる絶縁金属ベース回路基板であって、前記導体金属の面積が絶縁金属ベース回路基板回路面の面積の50%以上であることを特徴とする絶縁金属ベース回路基板。導体金属の面積の内、回路部分の面積の占める割合が50%以下であることを特徴とする回路設計方法。それを適用した混成集積回路モジュールと、そのための絶縁金属ベース回路基板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子や発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)素子、チップ抵抗やチップコンデンサなどの表面実装型電子部品を搭載した混成集積回路モジュールに関し、ことに実装工程時の熱負荷により発生する反り挙動を減少するための回路設計方法とそれを適用した混成集積回路モジュールに関する。また、それに用いる絶縁金属ベース回路基板に関するもので、特に、厚さの薄い絶縁金属ベース回路基板に適用すると極めて効果的である。
【背景技術】
【0002】
小型化や実装時の省力化などを可能にする表面実装を実現するために、各種の回路基板が用いられており、これらの回路基板に各種の表面実装電子部品を搭載した混成集積回路モジュールが用いられている。特に、高発熱性電子部品を実装する回路基板として、金属板上に無機充填材を充填したエポキシ樹脂等からなる絶縁層を設け、該絶縁層上に回路を設けた絶縁金属ベース回路基板が用いられている。
【0003】
一方、各種の電子装置は、軽量化、薄型化が求められており、例えば、液晶表示装置は、画面の大型化とともに、薄型化を実現する努力が為されている。そこで、大面積に効率よくLED素子を配することができる絶縁金属ベース回路基板を用いることが考えられる。絶縁金属ベース回路基板上の回路には各種の電子部品が半田や導電樹脂などを介して接合される。しかし、この実装工程時の熱負荷により絶縁金属ベース回路基板が反り挙動を示す場合がある。従来は特に問題とはならなかったが、例えば、特許文献1に示されるような液晶表示装置用途のように、画面の大型化とともに、薄型化を実現する努力が為されている場合、絶縁金属ベース回路基板も、大型化とともに薄型化が要求される。すると、実装工程時の熱負荷により絶縁金属ベース回路基板が反り挙動を示し、半田や導電性樹脂の接合が不充分になるなどの不都合が起きることが懸念される。
【0004】
また、非特許文献1には、プラスチック基板について、反りが発生することが記載されており、基板の線膨張率とヤング率を改善することにより反りが抑制できることが記載されている。
【特許文献1】特開2006−310014号公報
【非特許文献1】シャープ技報 第85号 2003年4月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、基板の実装工程時の熱負荷により発生する反り挙動を減少するための回路設計方法及びそれを用いた絶縁金属ベース回路基板及びその回路基板を用いた混成集積回路モジュールを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、有限要素法を用いた熱弾塑性解析において、いろいろな絶縁金属ベース回路基板の回路パターンを種々変えて、電子部品を半田により接合する混成集積回路について、実装工程に対応する室温から250℃の範囲の熱を負荷する計算を種々行った。その結果、絶縁金属ベース回路基板の金属ベース箔厚みが薄い場合や基板の大きさが大きい場合には、構造上熱負荷により反りが発生すること、ただし、回路設計方法を工夫し、導体金属を回路としてだけではなく構造材として使用することで、その反りを低減させることができることを見いだした。
【0007】
さらに、本発明者は、上記知見に基づき、いろいろに実験的に検討し、次の知見を得て本発明に至ったものである。
【0008】
即ち、本発明は、以下の通りである。
(1)金属箔上に絶縁層を介して導体金属を設けてなる絶縁金属ベース回路基板であって、前記導体金属の面積が絶縁金属ベース回路基板回路面の面積の50%以上であることを特徴とする絶縁金属ベース回路基板である。
(2)本発明は、金属箔上に絶縁層を介して導体金属を設けてなる絶縁金属ベース回路基板であって、前記導体金属の面積の内、回路部分の面積の占める割合が5%以上50%以下であることを特徴とする(1)記載の絶縁金属ベース回路基板である。
(3)絶縁層及び導体金属上に絶縁膜を形成していることを特徴とする(1)又は(2)記載の絶縁金属ベース回路基板である。
(4)(1)〜(3)のいずれか一項記載の絶縁金属ベース回路基板を用いていることを特徴とする混成集積回路モジュールでもある。
【発明の効果】
【0009】
本発明の回路設計方法によれば、基板の大きさが大きくなっても、あるいは、基板厚みが薄くなっても、実装工程時の熱負荷により発生する反り挙動を減少させることができ、電子部品の接合材を確実に接合させることができ、さらに、実使用下においても、その周辺部に接合はがれを生じることがなく、信頼性の高い特徴を有する本発明の混成集積回路モジュールを提供することができる。また、本発明の絶縁金属ベース回路基板は、前記特徴のある混成集積回路モジュールを容易に得られるように予め特定な構造を有しているので、これを用いて得られる混成集積回路モジュールは、実使用条件下で受ける厳しい温度変化によっても半田や導電樹脂などの接合材及びその周辺部にクラックを生じることがなく信頼性の高い特徴を容易に達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の回路設計方法は、導体金属の配置構成を制御することであり、導体金属を(導体)回路としてだけではなく構造材として使用することで、その反りを低減させることができる。
【0011】
本発明の絶縁金属ベース基板は、絶縁層及び導体金属上に絶縁膜を形成している場合も含まれる。絶縁膜は、LED素子、チップ抵抗やチップコンデンサなどの電子部品が半田或いは導電樹脂等の接合材により固定される時、接合材の箇所を特定するためのソルダーレジストとして用いる。さらに、絶縁膜を白色膜にして、光に対して反射率を高くし、LED素子と組み合わせることで、平面光源として使用することもできる。平面光源は、各種の照明として用いる他、テレビやパソコン、携帯電話などの各種液晶パネルのバックライトなどとして用いることができる。
【0012】
本発明の混成集積回路モジュールは、絶縁金属ベース回路基板上に複数の導体金属及び/又は導体回路が設けられた構造を有し、前記回路基板の導体回路上に、例えばLED素子、半導体チップや抵抗チップなどの電子部品が半田或いは導電樹脂等の接合材により固定されており、前記の照明やバックライトなどを含む。
【0013】
前記混成集積回路モジュールは筐体に固定されて使用されるが、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等からなる各種樹脂ケース等に取り付けられる場合もあれば、エポキシ樹脂等に包埋される場合もある。電子部品は一つの導体回路に設けられていても構わないし、一つの電子部品が二つ以上の導体回路上に跨って設けられていても構わない。
【0014】
また、本発明において、導体金属及び/又は導体回路が単一の金属箔で構成されているものであっても、2つ以上の複数の金属層を積層したクラッド箔から構成されているものでも構わない。
【0015】
さらに、本発明において、絶縁層は1層以上の単位絶縁層から構成され、単位絶縁層が一層であっても、複数の単位絶縁層から構成されていても構わない。絶縁層は、回路基板の熱放散性を高く維持するために、いろいろな無機充填材を含有することが好ましい。また、絶縁層が多層構造を有する場合には、樹脂の種類、無機材の種類、樹脂への添加剤等の種類、或いはそれらの量的割合を変更した少なくとも2種類以上の単位絶縁層で構成されている。例えば、単位絶縁層が3層以上で構成されている場合、いずれの単位絶縁層が異なる組成であっても、また隣り合う単位絶縁層が異なる組成で、隣り合わない単位絶縁層が同一組成であっても構わない。
【0016】
本発明において、接合材としては、半田であっても、導電樹脂であっても、電子部品と導体回路材とを接合するものであれば構わないが、接合材が半田であるときには、電子部品と金属ベース回路基板との接合力が高く、従って電子部品から発生する熱が容易に放散しやすいので、好ましい。接合材が半田の場合、その半田は、鉛−錫を含む各種の2元、3元系半田であっても、鉛を含まない各種の2元、3元系半田、例えば金、銀、銅、錫、亜鉛、ビスマス、インジウム、アンチモンなどを含む半田であっても構わない。
【0017】
接合材が導電樹脂の場合、エポキシ或いはアクリル等の樹脂に、金、銀、銅などの金属或いは黒鉛などの導電性材料を1種類含むものであっても、これら金属或いは黒鉛などの導電性材料を2種類以上含むものであっても構わない。
【0018】
本発明者らは、薄型化、大型化した絶縁金属ベース回路基板の実装工程時の熱負荷による反り挙動を軽減し、半田や導電性樹脂の接合信頼性を高めるための回路設計方法及びそれを用いた絶縁金属ベース回路基板及びその回路基板を用いた混成集積回路モジュールを見いだすべく、実装方法、回路基板構造、材料について鋭意検討した結果、絶縁金属ベース回路基板の導体金属及び/又は導体回路配置構成を制御し、導体金属を回路としてだけではなく構造材として使用することで、実装工程時の熱負荷による反り挙動を少なくできる回路基板が得られるという知見を得て、本発明に至ったものである。
【0019】
即ち、本発明は、導体回路金属の配置構成を制御することにより、導体金属を回路としてだけではなく構造材として使用することで、実装工程時の熱負荷による反り挙動を少なくできる絶縁金属ベース回路基板及びその回路基板を用いた混成集積回路モジュールが得られるという知見に基づいたものである。
【0020】
以下、図をもって、本発明を更に詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の混成集積回路モジュールの一例を示す平面図で、図2は図1中のA−A’部分での断面図を示す。本発明の絶縁金属ベース回路基板は、金属箔4の一主面上に絶縁層(A)3が設けられており、絶縁層(A)上に回路2が形成されている。混成集積回路モジュールは、絶縁金属ベース回路基板の所望部分に接合材5を介して表面実装型電子部品1を配置搭載した構造を有している。
【0022】
図3は、本発明の混成集積回路モジュールの別の一例を示す断面図である。本発明の絶縁金属ベース回路基板は、金属箔4の一主面上に絶縁層(A)3が設けられており、絶縁層(A)上に導体回路2が形成され、接合材を使用しない回路部分及び絶縁層(A)の上に絶縁層(B)6を配置した構造を有している。本発明の混成集積回路モジュールは、絶縁金属ベース回路基板の回路の所望部分に接合材5を介して表面実装型電子部品1を配置搭載した構造を有している。
【0023】
本発明の導体金属及び/又は導体回路を構成する金属としては、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、錫、金、銀、モリブデン、チタニウムのいずれか、又はこれらの金属を2種類以上含む合金、或いは前記金属又は合金を使用したクラッド箔等を用いることができる。尚、前記金属箔の製造方法は電解法でも圧延法で作製したものでもよい。
【0024】
また、金属箔上にはNiメッキ、Ni−Auメッキ、半田メッキなどの金属メッキがほどこされていてもかまわない。尚、絶縁層(B)との接着性の点から、前記金属箔の絶縁層(B)に接する側の表面はサンドブラスト、エッチング、各種メッキ処理、カップリング剤処理等の表面処理も適宜選択可能である。
【0025】
導体金属及び/又は導体回路の厚みは0.005mm〜0.400mmが好ましく、更に好ましくは0.01mm〜0.30mmである。0.005mm以上であれば回路基板として十分な導通回路を確保できるし、0.400mm以下ならば回路形成の製造工程上の問題も発生することがない。
【0026】
本発明の導体金属及び/又は導体回路の面積は、図1に示すように、導体金属及び/又は導体回路の面積が絶縁金属ベース回路基板回路面の面積の50%以上、好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上である。
【0027】
基板に導体回路を形成する場合、通常は駆動電流や信号電流を流す回路或いは電位を与える回路など、電気的に活用する部位に導体回路を形成する。基板を大型化する場合などは、図4の比較例に示すように、導体回路の面積は、20%以下になる場合もある。
【0028】
しかし、この場合、実装工程時の熱負荷により絶縁金属ベース回路基板が反り挙動を示す場合があり、接合材である半田や導電性樹脂の接合が不充分になるなどの不都合が起きる危険性が高い。
【0029】
そこで、図1のa部のように構造材として導体金属を形成し、導体金属の面積が絶縁金属ベース回路基板回路面の面積の50%以上、好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上とすることにより、実装工程時の熱負荷による絶縁金属ベース回路基板の反り挙動を低減させ、接合材である半田や導電性樹脂の接合信頼性を向上させることが出来る。
【0030】
本発明においては、基板が大型化するほど、その有効性が顕著であり、図1のa部のように構造材として導体金属を形成し、導体金属及び/又は導体回路の面積が絶縁金属ベース回路基板回路面の面積の50%以上とした場合、導体金属の面積の内、回路部分の面積の占める割合が50%以下、好ましくは45%以下、さらに好ましくは40%以下である。5%未満では、回路基板として実用的ではない。これにより、実装工程時の熱負荷による絶縁金属ベース回路基板の反り挙動を低減させ、接合材である半田や導電性樹脂の接合信頼性を向上させることが出来る。
【0031】
本発明では、(導体)回路とは、絶縁金属ベース回路基板の導体金属の内、駆動電流や信号電流が流れる部位をいう。
【0032】
本発明において、絶縁層(A)の熱伝導率は0.5W/mK以上であり、好ましくは1W/mK以上であり、さらに好ましくは1.5W/mK以上である。0.5W/mK以上の熱伝導率を有する絶縁層を用いた絶縁金属ベース回路基板は、電子部品から発生する熱を効率よく絶縁金属ベース回路基板裏面側に放熱し、さらに、外部に放熱することにより電子部品の蓄熱を低減し、電子部品の温度上昇を小さくするとともに、長寿命の混成集積回路モジュールを提供することができる。
【0033】
また、導体回路と金属箔との間の耐電圧が1kV以上、望ましくは1.5kV以上、さらに望ましくは2kV以上という、耐電圧特性を有することが好ましい。耐電圧が1kV以上であれば、電子部品を搭載したときに、安定して電子部品を稼働させることができる。
【0034】
さらに、絶縁層(A)は、200Kから450Kの温度範囲において、貯蔵弾性率と熱膨張率との積が1kPa/K以上10MPa/K以下のものが好ましく、10kPa/K以上1MPa/K以下のものが特に好ましい。この値が小さいと扱いにくくなり、大きいと接合材への負担が大きくなるからである。
【0035】
絶縁層(A)の厚さは、50μm以上400μm以下が好ましく、更に好ましくは80μm以上200μm以下である。50μm以上であれば電気絶縁性が確保できるし、400μm以下で熱放散性が十分に達成できるし、小型化や薄型化に寄与できる。
【0036】
絶縁層(A)に用いられる樹脂としては、耐熱性、電気絶縁性に優れた樹脂であればどのようなものであっても良いが、耐熱性や寸法安定性の点から熱硬化性樹脂が好ましく、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂などが使用できる。中でも、無機充填材を含みながらも、硬化状態において、金属箔と導体回路との接合力及び絶縁性に優れた二官能性エポキシ樹脂と重付加型硬化剤とを主成分としたものが好ましい。重付加型硬化剤としては、機械的及び電気的性質に優れた酸無水物類やフェノール類が好ましく、熱硬化性樹脂に含まれるエポキシ樹脂のエポキシ当量に対して活性水素等量が0.8〜1倍となるように添加することが絶縁層の機械的及び電気的性質を確保するため好ましい。
【0037】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールF型エポキシ樹脂などの可撓性を有しないエポキシ樹脂やダイマー酸エポキシ樹脂などの可撓性を有するエポキシ樹脂が使用できる。またアクリルゴムなどで予め変性したエポキシ樹脂も使用できる。硬化剤についてはフェノール樹脂などの可撓性を有しない硬化剤や脂肪族系炭化水素のジアミンなどの可撓性を有する硬化剤が使用でき、これらの硬化剤とエポキシ樹脂を組み合わせてよい。また、硬化促進剤についても必要に応じて使用してもよいし、これらの硬化剤以外にポリイミド樹脂、フェノキシ樹脂などの樹脂成分を使用してもよい。
【0038】
具体的なエポキシ樹脂としては、公知のエポキシ樹脂、例えばナフタレン型、フェニルメタン型、テトラキスフェノールメタン型、ビフェニル型、およびビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物型のエポキシ樹脂等があげられるが、このうち応力緩和性という理由で、主鎖がポリエーテル骨格を有し直鎖状であるエポキシ樹脂が好ましい。
【0039】
主鎖がポリエーテル骨格を有し主鎖状であるエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型の水素添加エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、ポリテトラメチレングリコール型エポキシ樹脂に代表される脂肪族エポキシ樹脂、およびポリサルファイド変性エポキシ樹脂等が挙げられ、これらを複数組み合わせて用いることもできる。
【0040】
絶縁金属ベース回路基板に高い耐熱性が必要な場合にはビスフェノールA型エポキシ樹脂を単独、若しくは他のエポキシ樹脂と組み合わせて用いることで電気絶縁性、熱伝導率が共に高く、耐熱性の高い樹脂硬化体が得られることが可能となる。
【0041】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂については、エポキシ当量300以下であることが一層好ましい。エポキシ当量が300以下であれば、高分子タイプになるときに見られる架橋密度の低下によるTgの低下、従って耐熱性の低下を引き起こすことが防止されるからである。また、分子量が大きくなると、液状から固形状となり、無機充填材を硬化性樹脂中にブレンドすることが困難になり、均一な樹脂組成物が得られなくなるという問題をも避けることができる。
【0042】
エポキシ樹脂は加水分解性塩素濃度が600ppm以下であることが好ましい。加水分解性塩素濃度が600ppm以下であれば、金属ベース回路基板として充分な耐湿性を示すことができる。
【0043】
エポキシ樹脂には硬化剤を添加することが一般的である。硬化剤としては、芳香族アミン系樹脂、酸無水物系樹脂、フェノール系樹脂及びジシアンアミドからなる群から選ばれる1種類以上を用いることができる。
【0044】
硬化剤の添加量については、エポキシ樹脂100質量部に対して、5〜50質量部であることが好ましく、10〜35質量部であることが一層好ましい。
【0045】
必要に応じて硬化触媒を使用することもできるが、硬化触媒としては、一般にイミダゾール化合物、有機リン酸化合物、第三級アミン、第四級アンモニウム等が使用され、いずれか1種類以上を選択することができる。添加量については、硬化温度により変化するため特に制限はないが、一般にエポキシ樹脂100質量部に対して0.01質量部以上5質量部以下であることが好ましい。0.01質量部以上ならば十分に硬化するし、5質量部以下ならば回路基板製造工程のおける硬化度合いの制御が容易となる。
【0046】
絶縁層(A)には必要に応じてカップリング剤等の分散助剤、溶剤等の粘度調整助剤など公知の各種助剤を、本発明の目的に反しない限りに於いて、添加することが可能である。
【0047】
絶縁層(A)に含有される無機充填材としては、電気絶縁性で熱伝導性の良好なものが好ましく、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、酸化マグネシウム等が用いられる。これらの無機充填材は、単独でも複数を組み合わせても用いることができる。
【0048】
このうち窒化アルミウムおよび窒化ホウ素が高熱伝導性であるという理由で好ましい。また、酸化ケイ素、窒化ホウ素を用いることで硬化体の誘電率を低く抑えることが可能となり、高周波で用いる電気、電子部品の放熱材料に用いる場合に、電気絶縁性が確保しやすいことから好ましい。更に、ハンドリング性および流動性を向上させるため、前記無機充填材の粒子形状はアスペクト比が1に近いものが好ましい。粗粒子と微粒子を混ぜ合わせると破砕粒子や球状粒子を単独で用いた場合よりも高充填が可能となり、更に好ましい。
【0049】
無機充填材としては、絶縁層の熱伝導特性を向上させる目的で、粗粒子と微粒子等の複数の粒子群を混合使用することができる。例えば、粗粒子と微粒子を混ぜ合わせて用いる場合には、平均粒子径が5μm以上の粗粒子粉と5μm未満の微粒子粉を用いることが好ましい。粗粒子粉と微粒子粉の割合は粗粒子粉が無機充填材全体に対して40〜98体積%が好ましく、より好ましくは50〜96体積%である。
【0050】
又、前記無機充填材の添加量は絶縁層(A)をなす樹脂組成物中40〜75体積%が好ましい。40体積%未満では放熱性の効果が低下し実用上用途が制限されることがあるし、75体積%を超えると樹脂中への分散が難しくなるし、また接着性の低下やボイド残存による耐電圧の低下をきたすためである。
【0051】
また、無機充填材中のナトリウムイオン濃度は、500ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましい。無機充填材中のナトリウムイオン濃度が500ppmを超えると、高温下、直流電圧下においてイオン性不純物の移動が起こり、電気絶縁性が低下する傾向を示す場合がある。
【0052】
金属箔は、アルミニウム、鉄、銅、又はそれら金属の合金、もしくはこれらのクラッド材等からなり、いずれでも構わないが、熱放散性を考慮するとアルミニウム、銅、又はそれらの合金が好ましい。また、必要に応じて、絶縁層との密着性を改良するために、絶縁層との接着面側に、サンドブラスト、エッチング、各種メッキ処理、カップリング剤処理等の表面処理も適宜選択可能である。更に、金属箔を前述した導体回路を形成する技術を利用して回路化することも可能である。
【0053】
金属箔の厚さは0.013mm以上であることが好ましい。好ましくは0.05mm以上である。0.013mm以上であればハンドリング時にしわを生じることもない。上限値については技術的な制限はないが、0.5mm以下の場合には液晶装置のバックライト用のLEDを搭載する回路基板として好適であるが、金属箔の厚さが3mmを超えると絶縁金属ベース回路基板としての用途が見いだせず、実用的でない。
【0054】
本発明において、絶縁層(B)全体の厚みは10〜500μm程度あれば充分であるが、10〜100μmとするときは絶縁金属ベース回路基板を生産性高く製造できるという利点も有することから好ましい。
【0055】
絶縁層(B)に使用される樹脂としては熱硬化型ソルダーレジストの場合はエポキシ樹脂、紫外線硬化型ソルダーレジストの場合はアクリル樹脂、紫外線・熱併用型ソルダーレジストの場合はエポキシ樹脂とアクリル樹脂との併用が望ましい。
【0056】
絶縁膜を白色膜にして、光に対して反射率を高くし、LED素子と組み合わせることで、平面光源として使用することもできる。平面光源は、各種の照明として用いる他、テレビやパソコン、携帯電話などの各種液晶パネルのバックライトなどとして用いることができる。
【0057】
前記の白色膜は、400〜800nmの可視光領域に対して70%以上の反射率、さらに好ましい実施態様においては、450〜470nmと520〜570nm及び620〜660nmに対していずれも80%以上の反射率と持つことが好ましい。
【0058】
白色膜は、具体的には、光硬化樹脂や熱硬化樹脂を含有する樹脂組成物に白色顔料を配合して得ることができる。光硬化型樹脂や熱硬化性樹脂としてはエポキシ樹脂、アクリル樹脂、及びこれらの混合物が好適に用いられるが、これらに制限されるものではない。
【0059】
白色膜に含有される白色顔料としては、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、二酸化チタン、酸化アルミニウム、スメクタイトから選ばれる少なくとも1種以上を含有することが好ましい。
【0060】
前記白色顔料のうち二酸化チタンが最も屈折率が大きく、基板の光の反射率を高める際に用いる場合により好ましい。二酸化チタンには、結晶系がアナターゼ型とルチル型が知られているが、ルチル型のものが安定性に優れるため光触媒作用が弱く、他の構造のものに比べ樹脂成分の劣化が抑制されるので好適に用いることができる。更に、二酸化チタンに各種の表面処理を施し、光触媒作用を抑制したものが好適に用いることができる。表面処理の代表例としては、二酸化ケイ素や水酸化アルミニウム等によるコーティングが挙げられる。また、二酸化チタンに関して、光の散乱効率を高めるために平均粒子径が0.30μm以下であることが好ましい。
【0061】
前記白色顔料のうち、酸化亜鉛は高屈折率及び高放熱性を兼備する材料であり、基板の反射率及び放熱性を高める際に用いる場合により好ましい。また、酸化亜鉛の光の散乱効率を高める場合には、平均粒子径が0.35μm以下であることが好ましい。
【0062】
絶縁層(B)に白色顔料を添加する場合の添加量は、絶縁層全体に対し5〜50体積%が好ましく、更に好ましくは5〜30体積%である。5体積%以上で十分な反射率向上の効果が得られるし、50体積%以下ならば絶縁層を形成する操作に於いて分散ができなくなることもない。
【0063】
尚、回路上に絶縁層(B)を形成する場合には、LEDなど電子部品の接合部やコネクター接合部に相当する部分に予め開口部を設けることで対応すればよい。
【0064】
本発明の絶縁金属ベース回路基板の製造方法に関しては、無機充填材を含有する樹脂に適宜硬化剤等の添加剤を添加した絶縁材料を複数準備し、金属箔及び/又は導体回路用金属箔上に1層又は多層塗布しながら、必要に応じて加熱処理等を施して、硬化させ、その後金属箔よりエッチング等により回路形成する方法、或いは予め絶縁材料からなるシ−トを作製しておき、前記シートを介して金属箔や導体回路用の金属箔を張り合わせた後エッチング等により回路形成する方法等の従来公知の方法で得ることができる。
【0065】
さらに、絶縁層(B)を形成する場合は、前記絶縁金属ベース回路基板上に絶縁層(B)となる、ソルダーレジストや白色膜を塗布し、熱及び光で硬化すればよい。この時、表面実装部品用の接合材を接合する回路部分には塗膜を形成しない。
【0066】
上記の絶縁金属ベース回路基板を用いた混成集積回路モジュールとするためには、所望の位置に接合材を用いて、表面実装部品などを接合すればよい。
【実施例】
【0067】
〔実施例1〜12、比較例1〜6〕
35μm厚の銅箔上に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、「EP−828」)100質量部に対し、硬化剤としてフェノールノボラック(大日本インキ化学工業社製、「TD−2131」)を50質量部加え、平均粒子径が1.2μmである破砕状粗粒子の酸化ケイ素(龍森社製、「A−1」)と平均粒子径が10μmである破砕状粗粒子の酸化ケイ素(龍森社製、「5X」)を合わせて絶縁層中56体積%(球状粗粒子と球状微粒子は質量比が7:3)となるように配合し、硬化後の厚さが150μmになるように塗布層を形成した。つぎに、200μm厚のアルミ箔を張り合わせ、加熱することにより塗布層を硬化させ、絶縁金属ベース基板を得た。
【0068】
さらに、前記の金属ベース基板について、所定の位置をエッチングレジストでマスクして銅箔をエッチングした後、エッチングレジストを除去して非回路の銅金属及び銅回路を形成し、該絶縁金属ベース回路基板平面内にとりうる最大の矩形形状が350mm×350mmの絶縁金属ベース回路基板とした。このときのマスクをいくつか準備し、実施例及び比較例とした。図1のパターンが実施例1、図4のパターンが比較例4である。各実施例及び比較例について、導体金属の面積が基板回路面の面積に占める割合、回路部分の面積が導体金属の面積に占める割合を表1に示した。
【0069】
【表1】

【0070】
前記絶縁金属ベース回路基板上に白色ソルダーレジスト層を塗布し、熱及び光で硬化した。この時、銅回路上の接合材部分には白色塗膜を形成しない。
【0071】
次に、前記操作で得た各々の回路基板のパッドに、実装工程試験として、ERNI社の表面実装型のコネクターを接合材で接合し、混成集積回路モジュールとした。実施例1〜8および比較例1〜4については、錫−銅−銀からなる半田を用い、550Kの温度でリフローにより半田付けを行なった。また、実施例9〜12、比較例5、6については、銀−エポキシからなる導電性接着剤を用い、385Kの温度でリフローにより接合した。接合後、水平なテーブルの上に置いて基板各部のテーブルからの高さを測定し、最高の値を最大の反り量とした。結果を表2に示した。実施例1〜12の最大の反り量は、比較例1〜6の1/2以下となり、本発明のものが優れていることが明瞭である。また、コネクターの半田に接合不良がないかどうかを観察した。その結果は、表3に示した通り、比較例1〜3では、接合不良が認められたのに対し、実施例1〜12では、異常のないことが確認され、本発明のものが優れていることが明瞭である。
【0072】
【表2】

【0073】
さらに、上記各々の混成集積回路モジュールに関して、液相中において233K7分保持後423K7分保持を1サイクルとして所定回数処理するヒートサイクル試験を行い、試験後に各々の混成集積回路を光学顕微鏡で主に接合部分のクラックの発生の有無を観察した。その結果は、表3に示した通り、比較例1〜6では、クラックの発生が認められたのに対し、実施例1〜12は、500回のヒートサイクルでもクラックの発生は少ないことが確認された。さらに、実施例1,2は、1000回のヒートサイクルでもクラックの発生はなく、異常のないことが確認され、本発明のものが耐クラック性にも優れていることが明瞭である。
【0074】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の回路設計方法及びそれを用いた絶縁金属ベース回路基板を用いれば、実装工程における接合不良が発生せず、さらに、実使用条件下で受ける厳しい温度変化によっても電子部品の接合材及びその周辺部にクラックを生じることがなく信頼性の高い混成集積回路ジュールを提供することができ、信頼性が高く産業上有用である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施例に係る混成集積回路モジュールの平面概略図。
【図2】図1におけるA−A’断面概略図。
【図3】本発明の混成集積回路モジュールの他の一例を示す断面概略図。
【図4】本発明の比較例に係る混成集積回路モジュールの平面概略図。
【符号の説明】
【0077】
1 表面実装電子部品
2 導体回路
3 絶縁層(A)
4 金属箔
5 接合材
6 絶縁層(B)
7 導体金属(非回路)
a 導体金属(非回路)
A−A‘ 絶縁金属ベース回路基板の端から重心を通る断面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔上に絶縁層を介して導体金属を設けてなる絶縁金属ベース回路基板であって、前記導体金属の面積が絶縁金属ベース回路基板回路面の面積の50%以上であることを特徴とする絶縁金属ベース回路基板。
【請求項2】
金属箔上に絶縁層を介して導体金属を設けてなる絶縁金属ベース回路基板であって、前記導体金属の面積の内、回路部分の面積の占める割合が5%以上50%以下であることを特徴とする請求項1記載の絶縁金属ベース回路基板。
【請求項3】
絶縁層及び導体金属上に絶縁膜を形成していることを特徴とする請求項1又は2記載の絶縁金属ベース回路基板。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項3記載の絶縁金属ベース回路基板を用いていることを特徴とする混成集積回路モジュール。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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