継手構造およびこの継手構造を備える衝撃式掘削工具
【課題】 脱着が容易で、耐久性に優れた継手構造を提供する。
【解決手段】 独立した２つの継手部材１、２を軸線Ｏ１方向に連結するための継手構造Ｂであって、一方の継手部材１には、その先端側に軸線Ｏ１方向に延出された第１継手部４が設けられており、第１継手部４には、軸線Ｏ１回りに捻れるネジ山を有する少なくとも２つの雄ネジ部６、９が形成され、第１継手部４の先端側に形成された一方の雄ネジ部９が先端雄ネジ部９とされ、先端雄ネジ部９に対して第１継手部４の後端側に形成された他方の雄ネジ部６が後端雄ネジ部６とされており、先端雄ネジ部９の外径が後端雄ネジ部６の外径に対して小径とされる一方、一方の継手部材１と連結される他方の継手部材２には、第１継手部４の先端雄ネジ部９と後端雄ネジ部６とがそれぞれ螺合される先端雌ネジ部１４と後端雌ネジ部１５の２つの雌ネジ部１４、１５が形成された第２継手部１７が設けられている。
【解決手段】 独立した２つの継手部材１、２を軸線Ｏ１方向に連結するための継手構造Ｂであって、一方の継手部材１には、その先端側に軸線Ｏ１方向に延出された第１継手部４が設けられており、第１継手部４には、軸線Ｏ１回りに捻れるネジ山を有する少なくとも２つの雄ネジ部６、９が形成され、第１継手部４の先端側に形成された一方の雄ネジ部９が先端雄ネジ部９とされ、先端雄ネジ部９に対して第１継手部４の後端側に形成された他方の雄ネジ部６が後端雄ネジ部６とされており、先端雄ネジ部９の外径が後端雄ネジ部６の外径に対して小径とされる一方、一方の継手部材１と連結される他方の継手部材２には、第１継手部４の先端雄ネジ部９と後端雄ネジ部６とがそれぞれ螺合される先端雌ネジ部１４と後端雌ネジ部１５の２つの雌ネジ部１４、１５が形成された第２継手部１７が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、例えばトンネル掘削や採石等で、岩盤などの掘削に用いられるロッドやビットなどの衝撃式掘削工具に用いて好適な継手構造およびこの継手構造を備える衝撃式掘削工具に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、例えば削岩機やロータリーパーカッションドリルなどの削孔機は、衝撃式掘削工具の、棒状のロッドやケーシング（一方の継手部材）と、その先端にロックビットなどのビット（他方の継手部材）とが取り付けられ、ロッドやケーシングとともにビットを回転させつつ岩盤などの被削物に打撃させることで被削物の掘削を行うものである。このとき、ビットと対向するロッドやケーシングの後端側が、削岩機や削孔機の油圧式や機械式の打撃装置に接続され、この打撃装置により軸線回りに回転された状態でロッドやケーシングに繰り返し衝撃力が付加される。付加された衝撃力は、ロッドやケーシングを介してビットに伝達され、伝達された衝撃力を受けてビットが被削物に打撃されて、被削物が掘削される。
【０００３】
一般に、ロッドやケーシングとビットとを連結させる継手構造には、それぞれに雄ネジ部もしくは雌ネジ部が設けられ、この雄ネジ部と雌ネジ部とを螺合することで互いを連結するネジ式の継手構造が多用されている。複数のロッドやケーシングの連結、ロッドと打撃装置との連結においても同様の継手構造が多用されている。また、この種の継手構造の雄ネジ部や雌ネジ部は、ネジ山の頂点を結ぶ直線が例えばロッドの軸線と平行する平行ネジとされている（例えば、特許文献１参照。）。このネジ式の継手構造は、螺合された連結部分に繰り返し衝撃力などの大きな力が作用しても安定的に脱着可能であるなどの利点を有する。
【０００４】
一方で、例えば図４に示すような、ロッド１の先端部分をテーパー形状とし、ロッド１と連結されるビット２にロッド１のテーパー形状と係合するテーパー形状の内孔を設け、両テーパー部分が面接触されることで互いを連結する継手構造Ａも存在する。この種の継手構造Ａは、繰り返し衝撃力を受けるような場合においても連結部分の磨耗が少ないという利点を有する。
【特許文献１】特表２００３−５１５０２２号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
しかしながら、上記のネジ式の継手構造では、ロッドやビットなどの継手部材に繰り返し衝撃力が付加されることで岩盤などの被削物から絶えず繰り返し反力が作用され、この反力により、一部のネジ山が他のネジ山と比較して集中的に磨耗され、全てのネジ山が寿命に至る前に、連結部分で継手部材が折損されてしまうという問題があった。
【０００６】
すなわち、上記の継手構造のように雄ネジ部および雌ネジ部が平行ネジとされている場合には、継手部材の軸線方向に作用する反力が、その反力を最初に受ける先端側のネジ山（第１ネジ山）に集中的に作用される。第１ネジ山に集中的に作用された反力は、第１ネジ山が弾性変形を生じることで、順次後端側のネジ山に負荷されてゆく。このため、第１ネジ山と比較して、後端側のネジ山ほど負荷される反力は小さくなり、第１ネジ山は、他のネジ山に比べて集中的に磨耗されてしまう。これにより、連結された両継手部材の第１ネジ山付近に磨耗による隙間が生じ、両継手部材がガタつきを生じ始め、この付近の雌ネジ部側の継手部材（他方の継手部材）に曲げ応力が作用し折損されてしまうという問題があった。
【０００７】
また、雄ネジ部側の継手部材（一方の継手部材）においても、第１ネジ山が磨耗されることによって、連結部分の後端付近に集中的に曲げ応力が作用され折損される場合があるという問題があった。
【０００８】
一方、テーパー部分が面接触されることで継手部材が連結される継手構造においては、継手部材の軸線方向に繰り返し作用される反力によって、一方の継手部材の先端に形成されたテーパー部分が、他方の継手部材の内孔に過剰に貫入されてしまい、接触面の摩擦力で連結された両継手部材を分離できなくなるという問題があった。また、一方の継手部材のテーパー部分が過剰に貫入されることで、他方の継手部材が変形し折損されてしまう場合があるという問題もあった。
【０００９】
このように、継手部材（衝撃式掘削工具）が折損された場合、特に岩盤などの削孔作業中に折損された場合には、折損され孔内に残された衝撃式掘削工具の回収と再度削孔をやり直すために多大な時間と労力を費やす必要が生じるという問題があった。
【００１０】
本発明は、上記事情を鑑み、脱着が容易で、耐久性に優れた継手構造およびこの継手構造を備える衝撃式掘削工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【００１１】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【００１２】
本発明の継手構造は、独立した２つの継手部材を軸線方向に連結するための継手構造であって、一方の継手部材には、その先端側に軸線方向に延出された第１継手部が設けられており、該第１継手部には、前記軸線回りに捻れるネジ山を有する少なくとも２つの雄ネジ部が形成され、前記第１継手部の先端側に形成された一方の雄ネジ部が先端雄ネジ部とされ、該先端雄ネジ部に対して前記第１継手部の後端側に形成された他方の雄ネジ部が後端雄ネジ部とされており、前記先端雄ネジ部の外径が前記後端雄ネジ部の外径に対して小径とされる一方、前記一方の継手部材と連結される他方の継手部材には、前記第１継手部の前記先端雄ネジ部と前記後端雄ネジ部とがそれぞれ螺合される先端雌ネジ部と後端雌ネジ部の２つの雌ネジ部が形成された第２継手部が設けられている。
【００１３】
また、本発明の継手構造は、前記第１継手部の前記先端雄ネジ部と前記後端雄ネジ部との間に、前記後端雄ネジ部から前記先端雄ネジ部に向けて漸次外径が小となるテーパー部が設けられ、前記第２継手部には、前記テーパー部に係合されるテーパー受部が設けられていることが望ましい。
【００１４】
さらに、本発明の衝撃式掘削工具は、上記の継手構造により連結される衝撃式掘削工具であって、前記雄ネジ部と前記雌ネジ部とが互いに螺合した状態で、前記第１継手部の先端面と、前記第２継手部の前記雌ネジ部のネジ孔底面とが互いに当接させられている。
【発明の効果】
【００１５】
本発明の継手構造によれば、先端雄ネジ部の外径が後端雄ネジ部の外径に対して小径とされていることによって、第１継手部の先端雄ネジ部と螺合される第２継手部の先端雌ネジ部に位置する継手部材の外周側の部分の肉厚を大きくとることができる。これにより、先端雄ネジ部のネジ山が磨耗され、先端雌ネジ部付近の継手部材に集中的に曲げ応力が作用した場合においても、この部分の剛性を大きくすることができるため、第２継手部が設けられた継手部材の折損を防止することが可能となる。その一方で、後端雄ネジ部の外径を大きく確保できることによって、回転打撃力を確実に伝達することが可能となる。
【００１６】
また、本発明の継手構造によれば、第１継手部の先端雄ネジ部と後端雄ネジ部との間にテーパー部が設けられ、このテーパー部が第２継手部のテーパー受部と係合されることにより、継手部材の軸線方向に作用する繰り返し反力をテーパー部とテーパー受部との接触面で受けることができる。このため、雄ネジ部および雌ネジ部に作用する反力を低減することができ、耐久性に優れた継手構造とすることが可能となる。
【００１７】
さらに、先端雄ネジ部のネジ山が反力によって磨耗された場合においても、テーパー部とテーパー受部が係合されていることにより、連結される両継手部材を安定させることができるため、第１継手部の後端付近に集中的に曲げ応力が作用することを防止することができる。これにより、第１継手部が設けられた継手部材の折損を防止することが可能となる。
【００１８】
また、本発明の継手構造によれば、このようなテーパー部を設けてもテーパー部を挟んで独立した２つの雄ネジ部が設けられていることにより、両継手部材を一定位置で強固に連結させることができるため、テーパー部が過剰にテーパー受部に貫入されることを防止することができ、これにより、連結される両継手部材の脱着を容易なものとすることができる。
【００１９】
さらに、本発明の衝撃式掘削工具によれば、上記の継手構造の効果を有し、且つ雄ネジ部と雌ネジ部とを螺合した際に、第１継手部の先端面と第２継手部の雌ネジ部のネジ孔底面とが互いに当接させられていることによって、軸線方向に作用する衝撃力を確実に連結された先端側の継手部材に伝達することができる。これにより、掘削性に優れた衝撃式掘削工具とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２０】
以下、図１から図３を参照し、本発明の一実施形態に係る継手構造Ｂおよびこの継手構造Ｂを備えた衝撃式掘削工具Ｃについて説明する。
【００２１】
本発明の一実施形態は、図１から図３に示すように、例えば削岩機やロータリーパーカッションドリルなどの削孔機に取り付けられて、被削物の掘削を行うためのロッド１やロッド１の先端に取り付けられるビット２などの衝撃式掘削工具Ｃに関するものであるとともに、ロッド（一方の継手部材）１とビット（他方の継手部材）２とに備えられ両者を連結させるための継手構造Ｂに関するものである。
【００２２】
衝撃式掘削工具Ｃであるロッド１は、図１に示すように、軸線Ｏ１を中心とした円筒棒状に形成されたロッド本体部３とこのロッド本体部３の先端３ａから軸線Ｏ１方向に延出された第１継手部４とから構成されている。第１継手部４は、ロッド本体部３の先端３ａから軸線Ｏ１方向に延出された第１接続部５と、第１接続部５から延出された後端雄ネジ部（雄ネジ部）６と、後端雄ネジ部６から延出されたテーパー部７と、テーパー部７から第２接続部８を間にして延出された先端雄ネジ部（雄ネジ部）９と、先端雄ネジ部９から延出された先端部１０とから構成されている。
【００２３】
第１接続部５は、軸線Ｏ１方向の中央部分の外径がロッド本体部３の外径よりも小となるようくびれ形状に形成されている。また、後端雄ネジ部６は、外周に例えばロープネジなどの平行ネジが本実施形態では一条で形成されており、ネジ山６ａの頂点の外径Ｒ１がロッド本体部３の外径と等しいものとされている。後端雄ネジ部６と先端雄ネジ部９との間に位置するテーパー部７は、後端雄ネジ部６から先端雄ネジ部９に向けて漸次外径が小となるように形成されている。また、テーパー部７のテーパー角θは、２０°以下とされており、好ましくは５°〜１１°とされている。
【００２４】
第２接続部８は、テーパー部７の先端７ａと先端雄ネジ部９の後端９ａとを結ぶように形成されており、テーパー部７の先端７ａおよび先端雄ネジ部９の後端９ａの外径に対して軸線Ｏ１方向の中央部分の外径が小径とされている。先端雄ネジ部９は、外周に例えばロープネジなどの平行ネジが本実施形態では一条で形成されており、ネジ山９ｂの頂点の外径Ｒ２が後端雄ネジ部６の外径Ｒ１に対して小径とされている。先端部１０は、略円柱状に形成されており、先端雄ネジ部９に対向する先端面１０ａが軸線Ｏ１に直交するものとされている。また、先端部１０は、先端雄ネジ部９に対向する先端面１０ａと外周面１０ｂとが交差する端部１０ｃが曲面形状とされている。
【００２５】
衝撃式掘削工具Ｃであるビット２は、図２に示すように、軸線Ｏ２を中心とした略円筒棒状に形成されており、先端２ａ側が例えば岩盤などの被削物に当接されて被削物を破壊する刃先部１１とされている。刃先部１１は、他の部分よりも先端２ａに向けて外径が漸次大となるように形成されており、その先端部分には、複数の孔１１ａが形成されている。この孔１１ａには、先端１２ａが断面凸の球形とされる例えば超硬合金などの刃部１２が嵌合、ろう付けされて植設されており、刃先部１１の先端面１１ｂに対して刃部１２の先端１２ａが若干突出した状態で固定されている。
【００２６】
また、ビット２には、後端２ｂから刃先部１１に向けて軸線Ｏ２中心の内孔（ネジ孔）１３が設けられている。そして、この内孔１３の内面１３ａには、図１に示したロッド１の先端雄ネジ部９と後端雄ネジ部６とがそれぞれ螺合される先端雌ネジ部１４と後端雌ネジ部１５との２つの雌ネジ部１４、１５と、テーパー部７に係合されるテーパー受部１６とが形成されている。
【００２７】
ここで、ロッド１の第１継手部４が嵌挿されるこの内孔１３部分が第２継手部１７とされ、第２継手部１７の先端１７ａ側には、第１継手部４の先端部１０の先端雄ネジ部９に対向する先端面１０ａと面接触される底面１７ｂが形成されている。このとき、内孔１３に嵌挿される第１継手部４の先端雄ネジ部９の外径Ｒ２が後端雄ネジ部６の外径Ｒ１よりも小径とされているため、第２継手部１７の先端雌ネジ部１４が位置するビット２の肉厚Ｈ１は、後端雌ネジ部１５が位置するビット２の肉厚Ｈ２よりも大きなものとされている。
【００２８】
また、図２から図３に示すように、第２継手部１７には、第１継手部４と第２継手部１７とを連結した際に、第１継手部４と第２継手部１７とが非接触状態とされる逃がし部１８が形成されている。この逃がし部１８は、第１継手部４の先端部１０と、第２接続部８と、後端雄ネジ部６とテーパー部７との接続部分と、第１接続部５と後端雄ネジ部６との接続部分の位置に設けられている。さらに、図２に示すように、ビット１には、第２継手部１７の先端１７ａ側に形成された底面１７ｂに直交し、内孔１３と連通されつつ軸線Ｏ２方向に延設された円柱状の空洞部１９が設けられている。この空洞部１９からは斜めにブロー孔２０が分岐して、ビット２の先端部２ａ外周に形成されたくり粉溝２１の底面に開口させられている。これに対して、ロッド１には、ビット２の空洞部１９に連通して例えば圧縮エアなどを供給する図示せぬ貫通孔が軸線Ｏ１に沿って形成されている。
【００２９】
ついで、図１から図３を参照し、上記の構成からなる継手構造Ｂを備えるロッド１とビット２とを連結させ、繰り返し反力を受けた場合における継手構造Ｂの作用および効果について説明する。
【００３０】
はじめに、図１および図２に示したロッド１とビット２とをそれぞれの軸線Ｏ１、Ｏ２が一致するように配置させつつ、ビット２の内孔１３にロッド１の第１継手部４を挿入する。そして、ロッド１またはビット２、あるいはこの双方を軸線Ｏ１、Ｏ２回りに回転させ、第１継手部４の先端雄ネジ部９と第２継手部１７の先端雌ネジ部１４、および第１継手部４の後端雄ネジ部６と第２継手部１７の後端雌ネジ部１５とを螺合させる。このとき、第１継手部４の先端部１０の先端面１０ａと、第２継手部１７の内孔１３の底面１７ｂとが面接触して当接され、それ以上内孔１３内に第１継手部４が挿入できない状態となるまで回転させる。これにより、図３に示すように、ロッド１とビット２とが連結される。また、このとき、第１継手部４のテーパー部７と第２継手部１７のテーパー受部１６とが面接触状態とされている。さらに、第１継手部４の先端部１０と、第２接続部８と、後端雄ネジ部６とテーパー部７との接続部分と、第１接続部５と後端雄ネジ部６との接続部分とが、第２継手部１７の逃がし部１８の位置に配置される。
【００３１】
このように、第１継手部４と第２継手部１７とが係合されてロッド１とビット２とが連結された状態で、ロッド１の後端に接続された図示せぬ例えば削岩機や削孔機の打撃装置が駆動され、ロッド１とビット２が、軸線Ｏ１、Ｏ２回りに回転されつつ繰り返し衝撃力Ｆ１を付加される。付加された衝撃力Ｆ１は、ロッド１を通じてビット２に伝達され、伝達された衝撃力Ｆ１を受けてビット２が被削物に打撃される。これにより、ビット２の刃部１２によって被削物が掘削される。
【００３２】
このとき、繰り返し衝撃力Ｆ１を受けた被削物から、ロッド１およびビット２に繰り返し反力Ｆ２が作用される。通常、この反力Ｆ２は、ロッド１およびビット２の軸線Ｏ１、Ｏ２方向に作用される。この反力Ｆ２は、第１継手部４の先端部１０の先端面１０ａと、第２継手部１７の内孔１３の底面１７ｂとが面接触して当接されているため、確実に継手構造Ｂに伝達され、先端雄ネジ部９のビット２の先端２ａに近い第１ネジ山９ｂに大きく作用されるとともに、テーパー部７とテーパー受部１６との接触面、さらには後端雄ネジ部６のネジ山６ａに作用される。ここで、テーパー部７とテーパー受部１６とが面接触され、この接触面で反力Ｆ２を受けることが可能とされているため、先端雄ネジ部９の第１ネジ山９ｂは従来の継手構造と比較して、磨耗されにくいものとされている。
【００３３】
一方で、繰り返し反力Ｆ２によって先端雄ネジ部９の第１ネジ山９ｂが磨耗された場合においても、この継手構造Ｂは、テーパー部７とテーパー受部１６とが面接触されているため、ロッド１とビット２とがガタつくことがないものとされる。これにより、磨耗された第１ネジ山９ｂ付近のビット２および後端雄ネジ部６の後端６ｂ付近のロッド１に集中的な曲げ応力が作用することを防止可能とされている。また、第１ネジ山９ｂが磨耗されロッド１とビット２とがガタつくような場合においても、先端雌ネジ部１４が位置するビット２の肉厚Ｈ１が、後端雌ネジ部１５が位置するビット２の肉厚Ｈ２よりも大きなものとされ、先端雌ネジ部（または先端雄ネジ部９）１４が位置するビット２部分が高剛性とされているため、ビット２の折損を防止できるものとされる。
【００３４】
したがって、上記の継手構造Ｂによれば、ロッド１の第１継手部４にそれぞれ独立した先端雄ネジ部９と後端雄ネジ部６とが設けられ、先端雄ネジ部９の外径Ｒ２が後端雄ネジ部６の外径Ｒ１よりも小径とされているため、第２継手部１７の先端雌ネジ部１４付近のビット２の肉厚Ｈ１を大きくすることができ、この部分の剛性を高めることができる。これにより、繰り返し反力Ｆ２を受けて先端雄ネジ部９の第１ネジ山９ｂが磨耗され、集中的に曲げ応力が生じた場合においてもビット２の折損を防止することができる。その一方で、後端雄ネジ部６の外径を大きく確保できることによって、回転打撃力を確実に伝達することが可能となる。
【００３５】
さらに、上記の継手構造Ｂによれば、繰り返し反力Ｆ２をテーパー部７とテーパー受部１６との接触面で受けることができるため、雄ネジ部６、９や雌ネジ部１４、１５の磨耗を低減されることができる。また、先端雄ネジ部９の第１ネジ山９ｂが磨耗された場合においても、テーパー部７とテーパー受部１６によってロッド１とビット２とがガタつくことを防止することができる。よって、ロッド１の後端雄ネジ部６の後端６ｂ付近に集中的な曲げ応力が作用することを防止でき、ロッド１の折損を防止することが可能となる。また、テーパー部７が先端雄ネジ部９と後端雄ネジ部６との間に設けられていることによって、第２継手部１７の内孔１３内のテーパー受部１６にテーパー部７が過剰に貫入されることを防止することができるため、ロッド１とビット２とを容易に脱着することが可能となる。
【００３６】
以上のことから、上記の継手構造Ｂによれば、耐久性に優れた継手構造Ｂとすることが可能になるとともに、連結される継手部材１、２を容易に脱着可能なものとすることができる。
【００３７】
さらに、上記の効果を有する継手構造Ｂを備えた衝撃式掘削工具Ｃは、ロッド１とビット２とを連結した状態で、第１継手部４の先端部１０の先端面１０ａと、第２継手部１７の内孔１３の底面１７ｂとが面接触して当接されるため、確実に衝撃力Ｆ１を伝達することができ、且つその反力Ｆ２を接触面でも受けることができるため、優れた掘削性と耐久性とを有する衝撃式掘削工具Ｃとされる。
【００３８】
なお、本発明は、上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態では、一方の継手部材をロッド１とし、他方の継手部材をビット２として説明を行ったが、本発明は、第１継手部４と第２継手部１７とがそれぞれ設けられ連結される継手部材であれば適用可能であり、特に継手部材の種類が限定されるものではない。また、１つの継手部材１、２に第１継手部４または第２継手部１７が設けられているものとしたが、１つの継手部材１、２に複数の第１継手部４または第２継手部１７が設けられていてもよく、さらに、１つの継手部材１、２に第１継手部４と第２継手部１７とがそれぞれ単数もしくは複数で設けられていてもよいものである。
【００３９】
また、継手部材は、円筒棒状であるものとしたが円柱棒状であってもよいものであり、さらに、断面が円形ではなく矩形状や六角形状などの多角形状とされていてもよいものである。さらに、本実施形態では、先端雄ネジ部９と後端雄ネジ部６とには、ロープネジが形成されているものとしたが、例えば、台形ネジ角ネジなどでもよく、特にネジの形状が限定されるものではない。また、ロープネジが一条で形成されているものとしたが、二条ネジ、三条ネジなどであってもよいものである。
【００４０】
さらに、本実施形態では、第１継手部４の先端雄ネジ部９と後端雄ネジ部６との間にテーパー部７が形成され、且つ第２継手部１７には、テーパー部７に係合されるテーパー受部１６が形成されるものとしたが、この先端雄ネジ部９と後端雄ネジ部６との間は、例えばテーパー形状ではなく、軸線Ｏ１と平行の外周面とされていてもよいものである。さらに、第１継手部４には、第１接続部５や第２接続部８が形成されているものとしたが、特にこれらの接続部が形成されていなくてもよいものである。また、第２継手部１７の内孔１３には、第１継手部４と非接触状態とされる逃がし部１８が形成されているものとしたが、この逃がし部１８は形成されていなくてもよいものであり、逃がし部１８に位置する内面１３ａが第１継手部４と接触されていてもよいものである。
【図面の簡単な説明】
【００４１】
【図１】本発明の一実施形態に係る継手構造を備える一方の継手部材を示す断面図である。
【図２】本発明の一実施形態に係る継手構造を備える他方の継手部材を示す断面図である。
【図３】図１と図２に示した継手部材を連結させた状態を示す断面図である。
【図４】従来のテーパー形状の継手構造を示す図である。
【符号の説明】
【００４２】
１ 一方の継手部材（ロッド）
２ 他方の継手部材（ビット）
３ ロッド本体部
３ａ ロッド本体部の先端
４ 第１継手部
５ 第１接続部
６ 後端雄ネジ部（雄ネジ部）
６ａ 後端雄ネジ部のネジ山
６ｂ 後端雄ネジ部の後端
７ テーパー部
７ａ テーパー部の先端
８ 第２接続部
９ 先端雄ネジ部（雄ネジ部）
９ａ 先端雄ネジ部の後端
９ｂ 第１ネジ山
１０ 先端部
１０ａ 先端面
１０ｂ 外周面
１１ 刃先部
１１ａ 刃先部の溝
１１ｂ 刃先部の先端面
１２ 刃部
１２ａ 刃部の先端
１３ 内孔（ネジ孔）
１３ａ 内孔の内面
１４ 先端雌ネジ部（雌ネジ部）
１５ 後端雌ネジ部（雌ネジ部）
１６ テーパー受部
１７ 第２継手部
１８ 逃がし部
１９ 空洞部
Ｂ 継手構造
Ｃ 衝撃式掘削工具
Ｆ１ 衝撃力
Ｆ２ 反力
Ｈ１ ビットの肉厚
Ｈ２ ビットの肉厚
Ｏ１ ロッドの軸線
Ｏ２ ビットの軸線
Ｒ１ 後端雄ネジ部の外径
Ｒ２ 先端雄ネジ部の外径
【技術分野】
【０００１】
本発明は、例えばトンネル掘削や採石等で、岩盤などの掘削に用いられるロッドやビットなどの衝撃式掘削工具に用いて好適な継手構造およびこの継手構造を備える衝撃式掘削工具に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、例えば削岩機やロータリーパーカッションドリルなどの削孔機は、衝撃式掘削工具の、棒状のロッドやケーシング（一方の継手部材）と、その先端にロックビットなどのビット（他方の継手部材）とが取り付けられ、ロッドやケーシングとともにビットを回転させつつ岩盤などの被削物に打撃させることで被削物の掘削を行うものである。このとき、ビットと対向するロッドやケーシングの後端側が、削岩機や削孔機の油圧式や機械式の打撃装置に接続され、この打撃装置により軸線回りに回転された状態でロッドやケーシングに繰り返し衝撃力が付加される。付加された衝撃力は、ロッドやケーシングを介してビットに伝達され、伝達された衝撃力を受けてビットが被削物に打撃されて、被削物が掘削される。
【０００３】
一般に、ロッドやケーシングとビットとを連結させる継手構造には、それぞれに雄ネジ部もしくは雌ネジ部が設けられ、この雄ネジ部と雌ネジ部とを螺合することで互いを連結するネジ式の継手構造が多用されている。複数のロッドやケーシングの連結、ロッドと打撃装置との連結においても同様の継手構造が多用されている。また、この種の継手構造の雄ネジ部や雌ネジ部は、ネジ山の頂点を結ぶ直線が例えばロッドの軸線と平行する平行ネジとされている（例えば、特許文献１参照。）。このネジ式の継手構造は、螺合された連結部分に繰り返し衝撃力などの大きな力が作用しても安定的に脱着可能であるなどの利点を有する。
【０００４】
一方で、例えば図４に示すような、ロッド１の先端部分をテーパー形状とし、ロッド１と連結されるビット２にロッド１のテーパー形状と係合するテーパー形状の内孔を設け、両テーパー部分が面接触されることで互いを連結する継手構造Ａも存在する。この種の継手構造Ａは、繰り返し衝撃力を受けるような場合においても連結部分の磨耗が少ないという利点を有する。
【特許文献１】特表２００３−５１５０２２号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
しかしながら、上記のネジ式の継手構造では、ロッドやビットなどの継手部材に繰り返し衝撃力が付加されることで岩盤などの被削物から絶えず繰り返し反力が作用され、この反力により、一部のネジ山が他のネジ山と比較して集中的に磨耗され、全てのネジ山が寿命に至る前に、連結部分で継手部材が折損されてしまうという問題があった。
【０００６】
すなわち、上記の継手構造のように雄ネジ部および雌ネジ部が平行ネジとされている場合には、継手部材の軸線方向に作用する反力が、その反力を最初に受ける先端側のネジ山（第１ネジ山）に集中的に作用される。第１ネジ山に集中的に作用された反力は、第１ネジ山が弾性変形を生じることで、順次後端側のネジ山に負荷されてゆく。このため、第１ネジ山と比較して、後端側のネジ山ほど負荷される反力は小さくなり、第１ネジ山は、他のネジ山に比べて集中的に磨耗されてしまう。これにより、連結された両継手部材の第１ネジ山付近に磨耗による隙間が生じ、両継手部材がガタつきを生じ始め、この付近の雌ネジ部側の継手部材（他方の継手部材）に曲げ応力が作用し折損されてしまうという問題があった。
【０００７】
また、雄ネジ部側の継手部材（一方の継手部材）においても、第１ネジ山が磨耗されることによって、連結部分の後端付近に集中的に曲げ応力が作用され折損される場合があるという問題があった。
【０００８】
一方、テーパー部分が面接触されることで継手部材が連結される継手構造においては、継手部材の軸線方向に繰り返し作用される反力によって、一方の継手部材の先端に形成されたテーパー部分が、他方の継手部材の内孔に過剰に貫入されてしまい、接触面の摩擦力で連結された両継手部材を分離できなくなるという問題があった。また、一方の継手部材のテーパー部分が過剰に貫入されることで、他方の継手部材が変形し折損されてしまう場合があるという問題もあった。
【０００９】
このように、継手部材（衝撃式掘削工具）が折損された場合、特に岩盤などの削孔作業中に折損された場合には、折損され孔内に残された衝撃式掘削工具の回収と再度削孔をやり直すために多大な時間と労力を費やす必要が生じるという問題があった。
【００１０】
本発明は、上記事情を鑑み、脱着が容易で、耐久性に優れた継手構造およびこの継手構造を備える衝撃式掘削工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【００１１】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【００１２】
本発明の継手構造は、独立した２つの継手部材を軸線方向に連結するための継手構造であって、一方の継手部材には、その先端側に軸線方向に延出された第１継手部が設けられており、該第１継手部には、前記軸線回りに捻れるネジ山を有する少なくとも２つの雄ネジ部が形成され、前記第１継手部の先端側に形成された一方の雄ネジ部が先端雄ネジ部とされ、該先端雄ネジ部に対して前記第１継手部の後端側に形成された他方の雄ネジ部が後端雄ネジ部とされており、前記先端雄ネジ部の外径が前記後端雄ネジ部の外径に対して小径とされる一方、前記一方の継手部材と連結される他方の継手部材には、前記第１継手部の前記先端雄ネジ部と前記後端雄ネジ部とがそれぞれ螺合される先端雌ネジ部と後端雌ネジ部の２つの雌ネジ部が形成された第２継手部が設けられている。
【００１３】
また、本発明の継手構造は、前記第１継手部の前記先端雄ネジ部と前記後端雄ネジ部との間に、前記後端雄ネジ部から前記先端雄ネジ部に向けて漸次外径が小となるテーパー部が設けられ、前記第２継手部には、前記テーパー部に係合されるテーパー受部が設けられていることが望ましい。
【００１４】
さらに、本発明の衝撃式掘削工具は、上記の継手構造により連結される衝撃式掘削工具であって、前記雄ネジ部と前記雌ネジ部とが互いに螺合した状態で、前記第１継手部の先端面と、前記第２継手部の前記雌ネジ部のネジ孔底面とが互いに当接させられている。
【発明の効果】
【００１５】
本発明の継手構造によれば、先端雄ネジ部の外径が後端雄ネジ部の外径に対して小径とされていることによって、第１継手部の先端雄ネジ部と螺合される第２継手部の先端雌ネジ部に位置する継手部材の外周側の部分の肉厚を大きくとることができる。これにより、先端雄ネジ部のネジ山が磨耗され、先端雌ネジ部付近の継手部材に集中的に曲げ応力が作用した場合においても、この部分の剛性を大きくすることができるため、第２継手部が設けられた継手部材の折損を防止することが可能となる。その一方で、後端雄ネジ部の外径を大きく確保できることによって、回転打撃力を確実に伝達することが可能となる。
【００１６】
また、本発明の継手構造によれば、第１継手部の先端雄ネジ部と後端雄ネジ部との間にテーパー部が設けられ、このテーパー部が第２継手部のテーパー受部と係合されることにより、継手部材の軸線方向に作用する繰り返し反力をテーパー部とテーパー受部との接触面で受けることができる。このため、雄ネジ部および雌ネジ部に作用する反力を低減することができ、耐久性に優れた継手構造とすることが可能となる。
【００１７】
さらに、先端雄ネジ部のネジ山が反力によって磨耗された場合においても、テーパー部とテーパー受部が係合されていることにより、連結される両継手部材を安定させることができるため、第１継手部の後端付近に集中的に曲げ応力が作用することを防止することができる。これにより、第１継手部が設けられた継手部材の折損を防止することが可能となる。
【００１８】
また、本発明の継手構造によれば、このようなテーパー部を設けてもテーパー部を挟んで独立した２つの雄ネジ部が設けられていることにより、両継手部材を一定位置で強固に連結させることができるため、テーパー部が過剰にテーパー受部に貫入されることを防止することができ、これにより、連結される両継手部材の脱着を容易なものとすることができる。
【００１９】
さらに、本発明の衝撃式掘削工具によれば、上記の継手構造の効果を有し、且つ雄ネジ部と雌ネジ部とを螺合した際に、第１継手部の先端面と第２継手部の雌ネジ部のネジ孔底面とが互いに当接させられていることによって、軸線方向に作用する衝撃力を確実に連結された先端側の継手部材に伝達することができる。これにより、掘削性に優れた衝撃式掘削工具とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２０】
以下、図１から図３を参照し、本発明の一実施形態に係る継手構造Ｂおよびこの継手構造Ｂを備えた衝撃式掘削工具Ｃについて説明する。
【００２１】
本発明の一実施形態は、図１から図３に示すように、例えば削岩機やロータリーパーカッションドリルなどの削孔機に取り付けられて、被削物の掘削を行うためのロッド１やロッド１の先端に取り付けられるビット２などの衝撃式掘削工具Ｃに関するものであるとともに、ロッド（一方の継手部材）１とビット（他方の継手部材）２とに備えられ両者を連結させるための継手構造Ｂに関するものである。
【００２２】
衝撃式掘削工具Ｃであるロッド１は、図１に示すように、軸線Ｏ１を中心とした円筒棒状に形成されたロッド本体部３とこのロッド本体部３の先端３ａから軸線Ｏ１方向に延出された第１継手部４とから構成されている。第１継手部４は、ロッド本体部３の先端３ａから軸線Ｏ１方向に延出された第１接続部５と、第１接続部５から延出された後端雄ネジ部（雄ネジ部）６と、後端雄ネジ部６から延出されたテーパー部７と、テーパー部７から第２接続部８を間にして延出された先端雄ネジ部（雄ネジ部）９と、先端雄ネジ部９から延出された先端部１０とから構成されている。
【００２３】
第１接続部５は、軸線Ｏ１方向の中央部分の外径がロッド本体部３の外径よりも小となるようくびれ形状に形成されている。また、後端雄ネジ部６は、外周に例えばロープネジなどの平行ネジが本実施形態では一条で形成されており、ネジ山６ａの頂点の外径Ｒ１がロッド本体部３の外径と等しいものとされている。後端雄ネジ部６と先端雄ネジ部９との間に位置するテーパー部７は、後端雄ネジ部６から先端雄ネジ部９に向けて漸次外径が小となるように形成されている。また、テーパー部７のテーパー角θは、２０°以下とされており、好ましくは５°〜１１°とされている。
【００２４】
第２接続部８は、テーパー部７の先端７ａと先端雄ネジ部９の後端９ａとを結ぶように形成されており、テーパー部７の先端７ａおよび先端雄ネジ部９の後端９ａの外径に対して軸線Ｏ１方向の中央部分の外径が小径とされている。先端雄ネジ部９は、外周に例えばロープネジなどの平行ネジが本実施形態では一条で形成されており、ネジ山９ｂの頂点の外径Ｒ２が後端雄ネジ部６の外径Ｒ１に対して小径とされている。先端部１０は、略円柱状に形成されており、先端雄ネジ部９に対向する先端面１０ａが軸線Ｏ１に直交するものとされている。また、先端部１０は、先端雄ネジ部９に対向する先端面１０ａと外周面１０ｂとが交差する端部１０ｃが曲面形状とされている。
【００２５】
衝撃式掘削工具Ｃであるビット２は、図２に示すように、軸線Ｏ２を中心とした略円筒棒状に形成されており、先端２ａ側が例えば岩盤などの被削物に当接されて被削物を破壊する刃先部１１とされている。刃先部１１は、他の部分よりも先端２ａに向けて外径が漸次大となるように形成されており、その先端部分には、複数の孔１１ａが形成されている。この孔１１ａには、先端１２ａが断面凸の球形とされる例えば超硬合金などの刃部１２が嵌合、ろう付けされて植設されており、刃先部１１の先端面１１ｂに対して刃部１２の先端１２ａが若干突出した状態で固定されている。
【００２６】
また、ビット２には、後端２ｂから刃先部１１に向けて軸線Ｏ２中心の内孔（ネジ孔）１３が設けられている。そして、この内孔１３の内面１３ａには、図１に示したロッド１の先端雄ネジ部９と後端雄ネジ部６とがそれぞれ螺合される先端雌ネジ部１４と後端雌ネジ部１５との２つの雌ネジ部１４、１５と、テーパー部７に係合されるテーパー受部１６とが形成されている。
【００２７】
ここで、ロッド１の第１継手部４が嵌挿されるこの内孔１３部分が第２継手部１７とされ、第２継手部１７の先端１７ａ側には、第１継手部４の先端部１０の先端雄ネジ部９に対向する先端面１０ａと面接触される底面１７ｂが形成されている。このとき、内孔１３に嵌挿される第１継手部４の先端雄ネジ部９の外径Ｒ２が後端雄ネジ部６の外径Ｒ１よりも小径とされているため、第２継手部１７の先端雌ネジ部１４が位置するビット２の肉厚Ｈ１は、後端雌ネジ部１５が位置するビット２の肉厚Ｈ２よりも大きなものとされている。
【００２８】
また、図２から図３に示すように、第２継手部１７には、第１継手部４と第２継手部１７とを連結した際に、第１継手部４と第２継手部１７とが非接触状態とされる逃がし部１８が形成されている。この逃がし部１８は、第１継手部４の先端部１０と、第２接続部８と、後端雄ネジ部６とテーパー部７との接続部分と、第１接続部５と後端雄ネジ部６との接続部分の位置に設けられている。さらに、図２に示すように、ビット１には、第２継手部１７の先端１７ａ側に形成された底面１７ｂに直交し、内孔１３と連通されつつ軸線Ｏ２方向に延設された円柱状の空洞部１９が設けられている。この空洞部１９からは斜めにブロー孔２０が分岐して、ビット２の先端部２ａ外周に形成されたくり粉溝２１の底面に開口させられている。これに対して、ロッド１には、ビット２の空洞部１９に連通して例えば圧縮エアなどを供給する図示せぬ貫通孔が軸線Ｏ１に沿って形成されている。
【００２９】
ついで、図１から図３を参照し、上記の構成からなる継手構造Ｂを備えるロッド１とビット２とを連結させ、繰り返し反力を受けた場合における継手構造Ｂの作用および効果について説明する。
【００３０】
はじめに、図１および図２に示したロッド１とビット２とをそれぞれの軸線Ｏ１、Ｏ２が一致するように配置させつつ、ビット２の内孔１３にロッド１の第１継手部４を挿入する。そして、ロッド１またはビット２、あるいはこの双方を軸線Ｏ１、Ｏ２回りに回転させ、第１継手部４の先端雄ネジ部９と第２継手部１７の先端雌ネジ部１４、および第１継手部４の後端雄ネジ部６と第２継手部１７の後端雌ネジ部１５とを螺合させる。このとき、第１継手部４の先端部１０の先端面１０ａと、第２継手部１７の内孔１３の底面１７ｂとが面接触して当接され、それ以上内孔１３内に第１継手部４が挿入できない状態となるまで回転させる。これにより、図３に示すように、ロッド１とビット２とが連結される。また、このとき、第１継手部４のテーパー部７と第２継手部１７のテーパー受部１６とが面接触状態とされている。さらに、第１継手部４の先端部１０と、第２接続部８と、後端雄ネジ部６とテーパー部７との接続部分と、第１接続部５と後端雄ネジ部６との接続部分とが、第２継手部１７の逃がし部１８の位置に配置される。
【００３１】
このように、第１継手部４と第２継手部１７とが係合されてロッド１とビット２とが連結された状態で、ロッド１の後端に接続された図示せぬ例えば削岩機や削孔機の打撃装置が駆動され、ロッド１とビット２が、軸線Ｏ１、Ｏ２回りに回転されつつ繰り返し衝撃力Ｆ１を付加される。付加された衝撃力Ｆ１は、ロッド１を通じてビット２に伝達され、伝達された衝撃力Ｆ１を受けてビット２が被削物に打撃される。これにより、ビット２の刃部１２によって被削物が掘削される。
【００３２】
このとき、繰り返し衝撃力Ｆ１を受けた被削物から、ロッド１およびビット２に繰り返し反力Ｆ２が作用される。通常、この反力Ｆ２は、ロッド１およびビット２の軸線Ｏ１、Ｏ２方向に作用される。この反力Ｆ２は、第１継手部４の先端部１０の先端面１０ａと、第２継手部１７の内孔１３の底面１７ｂとが面接触して当接されているため、確実に継手構造Ｂに伝達され、先端雄ネジ部９のビット２の先端２ａに近い第１ネジ山９ｂに大きく作用されるとともに、テーパー部７とテーパー受部１６との接触面、さらには後端雄ネジ部６のネジ山６ａに作用される。ここで、テーパー部７とテーパー受部１６とが面接触され、この接触面で反力Ｆ２を受けることが可能とされているため、先端雄ネジ部９の第１ネジ山９ｂは従来の継手構造と比較して、磨耗されにくいものとされている。
【００３３】
一方で、繰り返し反力Ｆ２によって先端雄ネジ部９の第１ネジ山９ｂが磨耗された場合においても、この継手構造Ｂは、テーパー部７とテーパー受部１６とが面接触されているため、ロッド１とビット２とがガタつくことがないものとされる。これにより、磨耗された第１ネジ山９ｂ付近のビット２および後端雄ネジ部６の後端６ｂ付近のロッド１に集中的な曲げ応力が作用することを防止可能とされている。また、第１ネジ山９ｂが磨耗されロッド１とビット２とがガタつくような場合においても、先端雌ネジ部１４が位置するビット２の肉厚Ｈ１が、後端雌ネジ部１５が位置するビット２の肉厚Ｈ２よりも大きなものとされ、先端雌ネジ部（または先端雄ネジ部９）１４が位置するビット２部分が高剛性とされているため、ビット２の折損を防止できるものとされる。
【００３４】
したがって、上記の継手構造Ｂによれば、ロッド１の第１継手部４にそれぞれ独立した先端雄ネジ部９と後端雄ネジ部６とが設けられ、先端雄ネジ部９の外径Ｒ２が後端雄ネジ部６の外径Ｒ１よりも小径とされているため、第２継手部１７の先端雌ネジ部１４付近のビット２の肉厚Ｈ１を大きくすることができ、この部分の剛性を高めることができる。これにより、繰り返し反力Ｆ２を受けて先端雄ネジ部９の第１ネジ山９ｂが磨耗され、集中的に曲げ応力が生じた場合においてもビット２の折損を防止することができる。その一方で、後端雄ネジ部６の外径を大きく確保できることによって、回転打撃力を確実に伝達することが可能となる。
【００３５】
さらに、上記の継手構造Ｂによれば、繰り返し反力Ｆ２をテーパー部７とテーパー受部１６との接触面で受けることができるため、雄ネジ部６、９や雌ネジ部１４、１５の磨耗を低減されることができる。また、先端雄ネジ部９の第１ネジ山９ｂが磨耗された場合においても、テーパー部７とテーパー受部１６によってロッド１とビット２とがガタつくことを防止することができる。よって、ロッド１の後端雄ネジ部６の後端６ｂ付近に集中的な曲げ応力が作用することを防止でき、ロッド１の折損を防止することが可能となる。また、テーパー部７が先端雄ネジ部９と後端雄ネジ部６との間に設けられていることによって、第２継手部１７の内孔１３内のテーパー受部１６にテーパー部７が過剰に貫入されることを防止することができるため、ロッド１とビット２とを容易に脱着することが可能となる。
【００３６】
以上のことから、上記の継手構造Ｂによれば、耐久性に優れた継手構造Ｂとすることが可能になるとともに、連結される継手部材１、２を容易に脱着可能なものとすることができる。
【００３７】
さらに、上記の効果を有する継手構造Ｂを備えた衝撃式掘削工具Ｃは、ロッド１とビット２とを連結した状態で、第１継手部４の先端部１０の先端面１０ａと、第２継手部１７の内孔１３の底面１７ｂとが面接触して当接されるため、確実に衝撃力Ｆ１を伝達することができ、且つその反力Ｆ２を接触面でも受けることができるため、優れた掘削性と耐久性とを有する衝撃式掘削工具Ｃとされる。
【００３８】
なお、本発明は、上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態では、一方の継手部材をロッド１とし、他方の継手部材をビット２として説明を行ったが、本発明は、第１継手部４と第２継手部１７とがそれぞれ設けられ連結される継手部材であれば適用可能であり、特に継手部材の種類が限定されるものではない。また、１つの継手部材１、２に第１継手部４または第２継手部１７が設けられているものとしたが、１つの継手部材１、２に複数の第１継手部４または第２継手部１７が設けられていてもよく、さらに、１つの継手部材１、２に第１継手部４と第２継手部１７とがそれぞれ単数もしくは複数で設けられていてもよいものである。
【００３９】
また、継手部材は、円筒棒状であるものとしたが円柱棒状であってもよいものであり、さらに、断面が円形ではなく矩形状や六角形状などの多角形状とされていてもよいものである。さらに、本実施形態では、先端雄ネジ部９と後端雄ネジ部６とには、ロープネジが形成されているものとしたが、例えば、台形ネジ角ネジなどでもよく、特にネジの形状が限定されるものではない。また、ロープネジが一条で形成されているものとしたが、二条ネジ、三条ネジなどであってもよいものである。
【００４０】
さらに、本実施形態では、第１継手部４の先端雄ネジ部９と後端雄ネジ部６との間にテーパー部７が形成され、且つ第２継手部１７には、テーパー部７に係合されるテーパー受部１６が形成されるものとしたが、この先端雄ネジ部９と後端雄ネジ部６との間は、例えばテーパー形状ではなく、軸線Ｏ１と平行の外周面とされていてもよいものである。さらに、第１継手部４には、第１接続部５や第２接続部８が形成されているものとしたが、特にこれらの接続部が形成されていなくてもよいものである。また、第２継手部１７の内孔１３には、第１継手部４と非接触状態とされる逃がし部１８が形成されているものとしたが、この逃がし部１８は形成されていなくてもよいものであり、逃がし部１８に位置する内面１３ａが第１継手部４と接触されていてもよいものである。
【図面の簡単な説明】
【００４１】
【図１】本発明の一実施形態に係る継手構造を備える一方の継手部材を示す断面図である。
【図２】本発明の一実施形態に係る継手構造を備える他方の継手部材を示す断面図である。
【図３】図１と図２に示した継手部材を連結させた状態を示す断面図である。
【図４】従来のテーパー形状の継手構造を示す図である。
【符号の説明】
【００４２】
１ 一方の継手部材（ロッド）
２ 他方の継手部材（ビット）
３ ロッド本体部
３ａ ロッド本体部の先端
４ 第１継手部
５ 第１接続部
６ 後端雄ネジ部（雄ネジ部）
６ａ 後端雄ネジ部のネジ山
６ｂ 後端雄ネジ部の後端
７ テーパー部
７ａ テーパー部の先端
８ 第２接続部
９ 先端雄ネジ部（雄ネジ部）
９ａ 先端雄ネジ部の後端
９ｂ 第１ネジ山
１０ 先端部
１０ａ 先端面
１０ｂ 外周面
１１ 刃先部
１１ａ 刃先部の溝
１１ｂ 刃先部の先端面
１２ 刃部
１２ａ 刃部の先端
１３ 内孔（ネジ孔）
１３ａ 内孔の内面
１４ 先端雌ネジ部（雌ネジ部）
１５ 後端雌ネジ部（雌ネジ部）
１６ テーパー受部
１７ 第２継手部
１８ 逃がし部
１９ 空洞部
Ｂ 継手構造
Ｃ 衝撃式掘削工具
Ｆ１ 衝撃力
Ｆ２ 反力
Ｈ１ ビットの肉厚
Ｈ２ ビットの肉厚
Ｏ１ ロッドの軸線
Ｏ２ ビットの軸線
Ｒ１ 後端雄ネジ部の外径
Ｒ２ 先端雄ネジ部の外径
【特許請求の範囲】
【請求項１】
独立した２つの継手部材を軸線方向に連結するための継手構造であって、
一方の継手部材には、その先端側に軸線方向に延出された第１継手部が設けられており、該第１継手部には、前記軸線回りに捻れるネジ山を有する少なくとも２つの雄ネジ部が形成され、前記第１継手部の先端側に形成された一方の雄ネジ部が先端雄ネジ部とされ、該先端雄ネジ部に対して前記第１継手部の後端側に形成された他方の雄ネジ部が後端雄ネジ部とされており、前記先端雄ネジ部の外径が前記後端雄ネジ部の外径に対して小径とされる一方、前記一方の継手部材と連結される他方の継手部材には、前記第１継手部の前記先端雄ネジ部と前記後端雄ネジ部とがそれぞれ螺合される先端雌ネジ部と後端雌ネジ部の２つの雌ネジ部が形成された第２継手部が設けられていることを特徴とする継手構造。
【請求項２】
請求項１記載の継手構造において、
前記第１継手部の前記先端雄ネジ部と前記後端雄ネジ部との間には、前記後端雄ネジ部から前記先端雄ネジ部に向けて漸次外径が小となるテーパー部が設けられており、前記第２継手部には、前記テーパー部に係合されるテーパー受部が設けられていることを特徴とする継手構造。
【請求項３】
請求項１または請求項２に記載の継手構造により連結される衝撃式掘削工具であって、
前記雄ネジ部と前記雌ネジ部とが互いに螺合した状態で、前記第１継手部の先端面と、前記第２継手部の前記雌ネジ部のネジ孔底面とが互いに当接させられることを特徴とする衝撃式掘削工具。
【請求項１】
独立した２つの継手部材を軸線方向に連結するための継手構造であって、
一方の継手部材には、その先端側に軸線方向に延出された第１継手部が設けられており、該第１継手部には、前記軸線回りに捻れるネジ山を有する少なくとも２つの雄ネジ部が形成され、前記第１継手部の先端側に形成された一方の雄ネジ部が先端雄ネジ部とされ、該先端雄ネジ部に対して前記第１継手部の後端側に形成された他方の雄ネジ部が後端雄ネジ部とされており、前記先端雄ネジ部の外径が前記後端雄ネジ部の外径に対して小径とされる一方、前記一方の継手部材と連結される他方の継手部材には、前記第１継手部の前記先端雄ネジ部と前記後端雄ネジ部とがそれぞれ螺合される先端雌ネジ部と後端雌ネジ部の２つの雌ネジ部が形成された第２継手部が設けられていることを特徴とする継手構造。
【請求項２】
請求項１記載の継手構造において、
前記第１継手部の前記先端雄ネジ部と前記後端雄ネジ部との間には、前記後端雄ネジ部から前記先端雄ネジ部に向けて漸次外径が小となるテーパー部が設けられており、前記第２継手部には、前記テーパー部に係合されるテーパー受部が設けられていることを特徴とする継手構造。
【請求項３】
請求項１または請求項２に記載の継手構造により連結される衝撃式掘削工具であって、
前記雄ネジ部と前記雌ネジ部とが互いに螺合した状態で、前記第１継手部の先端面と、前記第２継手部の前記雌ネジ部のネジ孔底面とが互いに当接させられることを特徴とする衝撃式掘削工具。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図２】
【図３】
【図４】
【公開番号】特開２００６−２４１８３６（Ｐ２００６−２４１８３６Ａ）
【公開日】平成１８年９月１４日（２００６．９．１４）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００５−５９０７６（Ｐ２００５−５９０７６）
【出願日】平成１７年３月３日（２００５．３．３）
【出願人】（０００００６２６４）三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１８年９月１４日（２００６．９．１４）
【国際特許分類】
【出願日】平成１７年３月３日（２００５．３．３）
【出願人】（０００００６２６４）三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Ｆターム（参考）】
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