説明

緊急遮断弁装置

【課題】設備の稼働に支障を来さない状態で、弁体の作動確認が簡易な構造でもって速やかに行えるとともに、故障を少なくし、コストの低減化を図る。
【解決手段】第1、第2シリンダ6、7内にピストンロッド10により連結した第1、第2ピストン8、9を設け、第2ピストン9を、環状体からなるストッパピストン11と、環状溝12に軸線方向に摺動自在に内嵌したバルブ開度規制ピストン13とで構成する。弁体2の全開状態で、環状溝12の溝幅を規制する一方の内壁12aとバルブ開度規制ピストン13との間に間隙aが形成されるようにする。弁体2の全開状態における作動確認時に、第1ピストン8を、弁体2の全開状態の位置から閉弁方向に駆動させたときにおけるバルブ開度規制ピストン13の駆動範囲を、間隙aの軸線方向の幅によって規制することにより、弁体2を予め定めた所望の中間開度に維持させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油精製プラント等における流体の流路や、ガス等のパイプラインなどの途中に設けられる緊急遮断弁装置に係り、特に、プラント等の設備を稼働させながら、弁体の作動を確認しうるようにした緊急遮断弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パイプラインに接続される緊急遮断弁は、プラント等の設備が正常に稼働されているときには弁体を全開状態に維持し、地震等により、設備に異常が発生するなどした際には、弁体を全閉状態となるように作動させて、事故等を未然に防止している。
そのため、緊急遮断弁の信頼性を確保するためには、弁体が正常に作動するか否かの確認を、設備の稼働を中断して、定期的に点検することが行われている。
【0003】
しかし、信頼性をより一層向上させるために、設備の稼働中にも、緊急遮断弁を完全に閉止させることなく、緊急遮断弁が、設備の稼動に支障を来たさない程度の開度、すなわち開度100%の状態から約15〜30%程度閉弁して、作動確認試験、いわゆるパーシャルストロークテストを実施することが望まれている。
【0004】
従来の緊急遮断弁においては、図8および図9に示すように、設備のパイプラインWに接続されたボールバルブからなるバルブ本体01内における弁体02の弁軸03を臨ませたボディ本体04の両端部に、たとえば第1シリンダ05を右側に、この第1シリンダ05とほぼ同径のシリンダ径を有する第2シリンダ06を左側にそれぞれ配置して、第1、第2シリンダ05、06を、互いに軸線方向の同一直線上に位置するように、対称的に隣設するとともに、第1、第2シリンダ05、06内に、ピストンロッド07によって連結された第1、第2ピストン08、09をそれぞれ摺動自在に設けた複動式トルクシリンダからなる構成を有するものがある。
ピストンロッド07には、連係ピン010を介して、揺動アーム011が連係されているとともに、この揺動アーム011に弁軸03を連係させることにより、弁体02を開閉しうるようになっている。
【0005】
このように緊急遮断弁は、設備の稼動による通常時には、第1、第2ピストン08、09における左側方のシリンダ室05a、06aに、流体供給源(図示せず)からの圧力流体を供給するとともに、右側方のシリンダ室05b、06bの圧力流体を排出させて、第1、第2ピストン08、09を右方の開弁方向に駆動させることによって、ピストンロッド07に連係ピン010を介して連係させた揺動アーム011を駆動し、この揺動アーム011の揺動により、弁軸03を回動させて、弁体02が全開状態に維持されるようにしている。
また、稼動中の設備に異常が発生した時などの緊急時にあっては、第1、第2ピストン08、09における右側方のシリンダ室05b、06bに圧力流体を供給するとともに、左側方のシリンダ室05a、06aの圧力流体を排出して、第1、第2ピストン08、09を左方の閉弁方向に駆動させることによって、弁体02を全閉状態にして、プラント設備等におけるパイプラインWの緊急遮断が行われるようになっている。
【0006】
しかし、前記した緊急遮断弁は、弁体02の開度を、全開(100%)と全閉(0%)との2つの動作しか選択し得ないため、設備の稼働中に、弁体02の作動確認を行うことはできない。
【0007】
この問題を解決しうるものとしては、例えばプラント等の設備の稼働中でも緊急遮断動作を確認しうるようにした緊急遮断弁装置もある(特許文献1参照)。
【0008】
前記特許文献1に記載の緊急遮断弁装置は、緊急遮断弁駆動用シリンダに圧力流体を供給する逆止弁や電磁切換弁を実際に動かしながら、それらの作動のみを確認するものであって、弁体自身が正常に作動するか否かを確認することはできない。
そのため、流体の性質等により、万一、弁体もしくは弁ケースの内部が錆付いたり、腐食するなどしていると、緊急時に流路を遮断することができなくなる恐れがある。
【0009】
また、弁体の開度を全開、中開および全閉状態の二段階に開閉する弁装置が知られている(特許文献2参照)。
【0010】
この二段開閉弁装置は、複動式トルクシリンダにおける一方のシリンダに、開度規制用シリンダを隣接し、この開度規制用シリンダ内に設けたストッパピストンのピストンロッドを、トルクシリンダにおける一方のシリンダ内に臨ませて、往復動ピストンの一方に対峙させるとともに、往復動ピストンの閉弁方向の摺動を規制することにより、弁体が全開、全閉状態の他に中間開度に維持されるような構成となっている。
これにより、例えばロータリ車やタンク車、ドラム缶等への定量給油作業時における初期給油段階において、弁体を中間開度にして給油し、弁体の全開状態での急激な給油による静電気の発生を防止し、火災の危険性を回避している。
【0011】
しかし、前記特許文献2に記載の二段開閉弁装置は、本発明の緊急遮断弁装置における設備稼働中の弁体の作動確認とは目的が異なるばかりでなく、複動式トルクシリンダに開度規制用のシングルピストン式シリンダを付設して構成しているために、装置全体の構造が複雑化し、コスト高になる。
また、トルクシリンダにおけるピストンの摺動抵抗も大きく、動作速度が遅いばかりでなく、頻繁に故障し易いという問題があった。
【特許文献1】特開平10−61812号公報
【特許文献2】実公昭61−19206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前記の現状に鑑み、設備の稼働に支障を来さない状態で、弁体の作動確認が簡易な構造でもって速やかに行うことができるとともに、故障を少なくし、コストの低減化を図ることができるようにした緊急遮断弁装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題は「特許請求の範囲」における各請求項に記載するように、次のような構成からなる発明によって解決される。
【0014】
(1) パイプラインに接続されたバルブ本体内における弁体の弁軸を臨ませたボディ本体の両端部に、第1シリンダと第2シリンダとを、互いに軸線方向の同一直線上に位置するように配設するとともに、第1、第2シリンダ内に、弁軸に連係するピストンロッドの両端部に互いに連結された第1ピストンおよび第2ピストンをそれぞれ軸線方向に摺動自在に設け、かつ通常時には、第1、第2シリンダ内を摺動自在な第1、第2ピストンの一側方のシリンダ室に流体供給源からの圧力流体を供給して、第1、第2ピストンをそれぞれ開弁方向に駆動させることにより、ピストンロッドに連係する弁軸を介して、弁体を全開状態にするとともに、緊急時には、第1、第2ピストンの他側方のシリンダ室に圧力流体をそれぞれ切換え供給して、第1、第2ピストンをそれぞれ閉弁方向に駆動させることにより、弁体を全閉状態にする複動式シリンダからなる緊急遮断弁装置において、第2ピストンを、第2シリンダ内に軸線方向に摺動自在に設けられ、かつ環状体の内周面に環状溝が形成されたストッパピストンと、このストッパピストンの環状溝に軸線方向に摺動自在に設けられ、かつ一端に第1ピストンが連結されたピストンロッドの他端に連結したバルブ開度規制ピストンとにより構成するとともに、
弁体の全開時には、第2ピストンのバルブ開度規制ピストンが、ストッパピストンにおける環状溝の溝幅を規制する一方の内壁から他方の内壁に向けて摺動して当接しうるようにして、環状溝の前記一方の内壁とバルブ開度規制ピストンとの間に間隙を形成し、かつ、
弁体の作動確認時には、弁体の全開状態において、第1ピストンの一側方のシリンダ室内の圧力流体を排出し、他側方のシリンダ室に圧力流体を供給しうるように切換えることにより、第1ピストンを、弁体の全開状態の位置から閉弁方向に駆動させたときにおけるバルブ開度規制ピストンの駆動範囲を、前記間隙の軸線方向の幅によって規制することにより、弁体を予め定めた所望の中間開度に維持しうるようにする。
【0015】
(2) 上記(2)項において、第1、第2シリンダ内における第1、第2ピストンの一側方のシリンダ室に流体供給源からの圧力流体をそれぞれ供給し、かつ第1、第2ピストンの他側方のシリンダ室の圧力流体を排出することにより、第1、第2ピストンを弁体の開弁方向に駆動させて、弁体を全開状態にする第1流体作動切換弁と、この第1流体作動切換弁を、緊急遮断時の非通電状態において、第1、第2ピストンの他側方のシリンダ室に圧力流体を供給し、かつ第1、第2ピストンの一側方のシリンダ室の圧力流体を排出することにより、第1、第2ピストンを弁体の閉弁方向に駆動させて、弁体を全閉状態にするように切換える緊急遮断用の第1電磁切換弁と、この第1電磁切換弁と第1流体作動切換弁との間に設けられ、かつ第1電磁切換弁に連動する第1流体作動切換弁を介して、非通電状態にあるとき、弁体の全開状態および全閉状態を許容するとともに、通電状態にあるとき、第2ピストンのストッパピストンを静止状態に維持して、第1ピストン、第2ピストンのバルブ開度規制ピストンを、弁体の全開状態から閉弁方向に向けて駆動しうるように、第1流体作動切換弁を切換える、弁体作動確認用の第2電磁切換弁とによって弁体開閉機構を構成する。
【0016】
(3) 上記(1)項または(2)項において、第1電磁切換弁に連動する第2流体作動切換弁によって弁体作動確認機構を構成し、第2流体作動切換弁を、第2シリンダ内における第2ピストンの一側方のシリンダ室に圧力流体を供給し、かつ第2ピストンの他側方のシリンダ室の圧力流体を排出することにより、第2ピストンを、第1電磁切換弁の通電状態における弁体の全開位置に停止させ、弁体の作動確認時における第2電磁切換弁の通電状態において、第1空気作動弁を切換え、弁体の閉弁方向に駆動する第2ピストンのバルブ開度規制ピストンを、静止状態を維持する第2ピストンのストッパピストンにおける環状溝の一方の内壁に当接させることにより、弁体を予め定めた所望の中間開度に維持しうるようにするとともに、緊急遮断時における第1電磁切換弁の非通電状態において、第2ピストンの他側方のシリンダ室に圧力流体を供給し、かつ、第2ピストンの一側方のシリンダ室の圧力流体を排出することにより、第2ピストンを、弁体の全閉位置に停止させるように切換制御可能とする。
【0017】
(4) 上記(1)〜(3)項のいずれかにおいて、弁体開閉機構における第1電磁切換弁と第2電磁切換弁との間に、弁設置現場において弁体作動確認の手動操作を可能にする手動切換弁を設ける。
【0018】
(5) 上記(1)〜(4)項のいずれかにおいて、弁体の弁軸に、弁体の中間開度動作を検知する検知手段を設ける。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、次のような効果を奏することができる。
【0020】
請求項1記載の発明によれば、第2ピストンを、第2シリンダ内に軸線方向に摺動自在に設けられ、かつ環状体の内周面に環状溝が形成されたストッパピストンと、このストッパピストンの環状溝に軸線方向に摺動自在に設けられ、かつ一端に第1ピストンが連結されたピストンロッドの他端に連結したバルブ開度規制ピストンとにより構成するとともに、弁体の全開時には、第2ピストンのバルブ開度規制ピストンが、ストッパピストンにおける環状溝の溝幅を規制する一方の内壁から他方の内壁に向けて摺動して当接しうるようにして、環状溝の前記一方の内壁とバルブ開度規制ピストンとの間に間隙を形成し、かつ、弁体の作動確認時には、弁体の全開状態において、第1ピストンの一側方のシリンダ室内の圧力流体を排出し、他側方のシリンダ室に圧力流体を供給しうるように切換えることにより、第1ピストンを、弁体の全開状態の位置から閉弁方向に駆動させたときにおけるバルブ開度規制ピストンの駆動範囲を、前記間隙の軸線方向の幅によって規制することにより、弁体を予め定めた所望の中間開度に維持しうるようにしてあるため、弁体は、予め定めた一定の開度以上に閉弁されることはなく、パイプライン等の流路を、設備の稼働に支障を来さない状態で、弁体の作動確認を簡易な構造でもって速やかに行うことができるとともに、故障を少なくすることができる。
さらに、第2ピストンの構成を、ストッパピストンとバルブ開度規制ピストンとに代えるだけで、外見が従来型と同様の複動式トルクシリンダを用いることができるため、コストの低減化を図ることができるとともに、弁体の作動確認を安価に行うことができる。
【0021】
請求項2記載の発明によれば、第1、第2シリンダ内における第1、第2ピストンの一側方のシリンダ室に流体供給源からの圧力流体をそれぞれ供給し、かつ第1、第2ピストンの他側方のシリンダ室の圧力流体を排出することにより、第1、第2ピストンを弁体の開弁方向に駆動させて、弁体を全開状態にする第1流体作動切換弁と、この第1流体作動切換弁を、緊急遮断時の非通電状態において、第1、第2ピストンの他側方のシリンダ室に圧力流体を供給し、かつ第1、第2ピストンの一側方のシリンダ室の圧力流体を排出することにより、第1、第2ピストンを弁体の閉弁方向に駆動させて、弁体を全閉状態にするように切換える緊急遮断用の第1電磁切換弁と、この第1電磁切換弁と第1流体作動切換弁との間に設けられ、かつ第1電磁切換弁に連動する第1流体作動切換弁を介して、非通電状態にあるとき、弁体の全開状態および全閉状態を許容するとともに、通電状態にあるとき、第2ピストンのストッパピストンを静止状態に維持して、第1ピストン、第2ピストンのバルブ開度規制ピストンを、弁体の全開状態から閉弁方向に向けて駆動しうるように、第1流体作動切換弁を切換える、弁体作動確認用の第2電磁切換弁とによって弁体開閉機構を構成してあるため、第1、第2ピストンの駆動による弁体の開閉を速やかに行うことができる。
【0022】
請求項3記載の発明によれば、第1電磁切換弁に連動する第2流体作動切換弁によって弁体作動確認機構を構成し、第2流体作動切換弁を、第2シリンダ内における第2ピストンの一側方のシリンダ室に圧力流体を供給し、かつ第2ピストンの他側方のシリンダ室の圧力流体を排出することにより、第2ピストンを、第1電磁切換弁の通電状態における弁体の全開位置に停止させ、弁体の作動確認時における第2電磁切換弁の通電状態において、第1空気作動弁を切換え、弁体の閉弁方向に駆動する第2ピストンのバルブ開度規制ピストンを、静止状態を維持する第2ピストンのストッパピストンにおける環状溝の一方の内壁に当接させることにより、弁体を予め定めた所望の中間開度に維持しうるようにするとともに、緊急遮断時における第1電磁切換弁の非通電状態において、第2ピストンの他側方のシリンダ室に圧力流体を供給し、かつ、第2ピストンの一側方のシリンダ室の圧力流体を排出することにより、第2ピストンを、弁体の全閉位置に停止させるように切換制御可能としているため、弁体の作動確認時に、ピストンロッドを、弁体の開度規制位置に正確に停止させることができ、弁体を、設備の稼動に支障を来たさない中間開度に維持させることができ、弁体の作動確認テストを、随時簡単に行うことができるとともに、緊急遮断時における弁体の全閉動作も速やかに行うことができる。
【0023】
請求項4記載の発明によれば、弁体開閉機構における第1電磁切換弁と第2電磁切換弁との間に、弁設置現場において弁体作動確認の手動操作を可能にする手動切換弁を設けてあるため、弁体の作動確認を、緊急遮断弁装置より離れた位置からのオンラインと、その設置現場での手動操作との両方で行うことができる。
【0024】
請求項5記載の発明によれば、弁体の弁軸に、弁体の中間開度動作を検知する検知手段を設けてあるため、弁体が正常に作動するか否かを、緊急遮断弁装置より離れた遠隔地からでも、容易に確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明における第1実施形態の緊急遮断弁装置のシリンダ系を縦断して示す弁体全閉状態の正面図、図2は、同じく、シリンダ系を横断して示す弁体全閉状態の平面図、図3は、同じく、シリンダ系を横断して示す弁体全開状態の平面図である。
【0026】
本発明の緊急遮断弁装置は、図1および図2に示すように、たとえばプラント設備等におけるパイプラインWの途中に接続されたボールバルブからなる公知のバルブ本体1と、このバルブ本体1の内部に収容されたボール形の弁体2を、弁軸3を介して開閉制御するシリンダ系の弁駆動制御機構4とによって構成されている。
【0027】
弁駆動制御機構4は、弁体2の弁軸3を臨ませたボディ本体5の両端部に、たとえば第1シリンダ6を右側に、この第1シリンダ6とほぼ同径もしくは大径のシリンダ径からなる第2シリンダ7を左側にそれぞれ配置して、第1、第2シリンダ6、7を互いに軸線方向の同一直線上に位置するように対称的に配設した従来型の複動式トルクシリンダが用いられている。
第1シリンダ6内には、第1ピストン8が、第2シリンダ7内には、第2ピストン9がそれぞれ摺動自在に設けられているとともに、これら第1、第2ピストン8、9は、第1、第2シリンダ6、7間に跨って軸線方向に延びるピストンロッド10の両端部10a、10bにそれぞれ連結されている。
【0028】
第2ピストン9は、第2シリンダ7内に軸線方向に摺動自在に設けた環状体からなるストッパピストン11と、このストッパピストン11における環状体の内周面に形成した環状溝12と、この環状溝12内に軸線方向に摺動自在に内嵌させて設けたバルブ開度規制ピストン13とにより構成されている。
バルブ開度規制ピストン13は、一端部10aに第1ピストン8を連結したピストンロッド10の他端部10bに連結されているとともに、環状溝12の軸線方向に対向する左右の内壁、すなわち環状溝12の溝幅を規制する内壁12a、12b間を摺動しうるように、そのストローク長さが規制されている。
【0029】
第2ピストン9は、図3に示すように、弁体2の全開状態において、ストッパピストン11における環状溝12の右側の内壁12bにバルブ開度規制ピストン13の右側面が当接しうるようになっているとともに、バルブ開度規制ピストン13の左側面と環状溝12の左側の内壁12aとの間に間隙aが形成されるようにし、この間隙aの軸線方向の幅によって、バルブ開度規制ピストン13のストローク長さが規制されて、弁体2を、予め定めた所望の中間開度に設定しうるように、弁体作動確認機構を構成している。
すなわち、前記弁体作動確認機構において、バルブ本体1における弁体2の開度調整は、ストッパピストン11における環状溝12の軸線方向の溝幅を調整して、前記間隙aにおける軸線方向の幅を変更することによって、バルブ開度規制ピストン13の駆動範囲を規制することにより伝わるようになっている。
【0030】
第1、第2ピストン8、9は、通常時に、第1、第2ピストン8、9の左側方のシリンダ室6a、7aに、それぞれポートP1、P2を介して流体供給源からの圧力空気を供給するとともに、第1、第2ピストン8、9における右側方のシリンダ室6b、7bの圧力空気を、それぞれポートP3、P4を介して排出することにより、右方の開弁方向に駆動しうるようになっている。
これにより、第1、第2ピストン8、9間に連結されたピストンロッド10は、右方に駆動させるとともに、ピストンロッド10に連係ピン14を介して連係させた揺動アーム15を反時計回りに揺動させることにより、弁体2の弁軸3を回動させ、図3に示すように、バルブ本体1内の弁体2を全開状態に許容する弁体開閉機構を構成している
【0031】
弁体開閉機構は、緊急時には、第1ピストン8の右側方のシリンダ室6bと第2ピストン9の右側方のシリンダ室7bに、それぞれポートP3、P4を介して、圧力流体を切換え供給し、第1ピストン8と、第2ピストン9の左側方のシリンダ室6a、7aの圧力流体を、ポートP1、P2を介してそれぞれ排出して、第1ピストン8と、第2ピストン9を左方の閉弁方向に駆動させることにより、図1、図2に示すように、バルブ本体1の弁体2を全閉状態となるように許容して、設備のパイプラインWを遮断しうるようになっている。
このとき、第2ピストン9のストッパピストン11に内嵌されたバルブ開度規制ピストン13は、弁体2の全閉状態において、ストッパピストン11における環状溝12の左側の内壁12aに当接して停止するようになっている。
【0032】
弁体作動確認機構は、バルブ本体1における弁体2の作動確認時に、第1ピストン8を、図3に示す弁体2の全開状態の位置から左方の閉弁方向に駆動させたとき、第2ピストン9のストッパピストン11を静止状態に維持したまま、バルブ開度規制ピストン13を左方に駆動させ、バルブ開度規制ピストン13の左側面を環状溝12の左方の内壁12aに当接させて、弁体2が、予め定めた所望の中間開度に維持されるようにしている。
【0033】
次に、弁駆動制御機構4による弁体1の開閉制御状態を、図4〜図6に示す図面に基づいて説明する。
図4は、弁体の全開状態におけるシリンダ制御系の概略図、図5は、同じく、弁体の全閉状態におけるシリンダ制御系の概略図、図6は、同じく、弁体の作動確認時におけるシリンダ制御系の概略図である。
【0034】
図4に示すように、弁体開閉機構の駆動制御回路は、第1空気作動切換弁16と、この第1空気作動切換弁16を切換動作させる緊急遮断用の第1電磁切換弁17と、この第1電磁切換弁17と前記第1空気作動切換弁16との間に接続された弁体作動確認用の第2電磁切換弁18と、第1電磁切換弁17に連動しうるように接続される第2空気作動切換弁19とを有する。
【0035】
第1空気作動切換弁16は、プラント設備の稼動中における通常時に、第2電磁切換弁18の非通電状態において、第1電磁切換弁17を通電状態にすることにより、第1ピストン8の左側方のシリンダ室6aに、流体供給源20からの圧力空気を、フィルタレギュレータ21を通して供給し、第1ピストン8の右側方のシリンダ室6bの圧力空気を排出するように切換え連動させることにより、第1ピストン8を、右方の開弁方向に駆動させて、バルブ本体1の弁体2が全開状態に維持されるようになっている。
【0036】
第2空気作動切換弁19は、前記したバルブ本体1における弁体2の全開状態において、第2ピストン9の左側方のシリンダ室7aに、流体供給源20からの圧力空気を、フィルタレギュレータ21を通して供給し、第2ピストン9における右側方のシリンダ室7bの圧力空気を排出して、第2ピストン9におけるストッパピストン11とバルブ開度規制ピストン13とが協働して右方に駆動させるとともに、バルブ開度規制ピストン13の右側面が環状溝12の右方の内壁12bに当接するまで駆動させることにより、バルブ開度規制ピストン13の左側面と環状溝12の左側の内壁12aとの間に間隙aが形成されるように切換えられる。
【0037】
また、第1空気作動切換弁16は、図5に示すように、第2電磁切換弁18の非通電状態において、緊急遮断時に、第1電磁切換弁17を非通電状態にすると、第1シリンダ6における第1ピストン8の右側方のシリンダ室6bに、エアタンク等の流体供給源20からの圧力空気を、フィルタレギュレータ21を通して供給し、第1ピストン8の左側方のシリンダ室6aの圧力空気を排出して、第1ピストン8を左方の閉弁方向に駆動させることにより、バルブ本体1の弁体2が全閉状態となるように切換えられる。
このとき、第2空気作動切換弁19は、第1電磁切換弁17の非通電状態によって、第2シリンダ7における第2ピストン9の右側方のシリンダ室7bに、流体供給源20からの圧力空気を、フィルタレギュレータ21を通して供給するとともに、第2ピストン9における左側方のシリンダ室7aの圧力空気を排出して、第2ピストン9を左方に駆動させることにより、バルブ本体1における弁体2の全閉状態となるように切換えられる。
【0038】
第1電磁切換弁17、第2電磁切換弁18の通電操作は、プラント設備の制御室に設置されたロジックコントローラ22によって行われるようになっているとともに、このロジックコントローラ22には、ボディ本体5に取り付けられたリミットスイッチ23が接続されている。
このリミットスイッチ23は、弁軸3の回動動作、すなわち弁体2の開閉動作を検知して、ロジックコントローラ22にフィードバックし、後記するバルブ本体1における弁体2の作動確認が遠隔操作の下に行われるようになっている。
また、弁体作動確認後、このフィードバック信号により、第2電磁切換弁18の通電状態が解除され、通常時における弁体2の全開状態に戻される。
【0039】
図4に示す通常時のバルブ本体1における弁体2の全開状態において、弁体2の作動確認作業を行う場合には、図6に示すように、第1電磁切換弁17の通電状態の下で、第2電磁切換弁18を通電すると、第2空気作動切換弁19は、作動しないで、第2ピストン9の左側方のシリンダ室7aに、流体供給源20からの圧力空気を、フィルタレギュレータ21を通して供給し、第2ピストン9における右側方のシリンダ室7bの圧力空気を排出しうる状態を維持して、第1空気作動切換弁16のみが切換わる。
これにより、弁体開閉機構を構成する第1シリンダ6における第1ピストン8の右側方のシリンダ室6bに、流体供給源20からの圧力空気が、フィルタレギュレータ21を通して供給され、第1ピストン8の左側方のシリンダ室6aの圧力空気を排出することにより、第1ピストン8が、弁体2の全開状態の位置から左方の閉弁方向に駆動される。
【0040】
このとき、第2シリンダ7における左側方のシリンダ室7aには、流体供給源20からの圧力空気がフィルタレギュレータ21を通して供給されて、第2ピストン9が圧力空気によって負荷されたままとなっている。
そのため、第2ピストン9のストッパピストン11は、静止状態を維持しているが、第1ピストン8の径がバルブ開度規制ピストン13の径よりも大きく、しかもバルブ開度規制ピストン13の右方への推力が、第1ピストン8の左方への推力よりも小さくなるようにしてあるため、バルブ開度規制ピストン13は、ストッパピストン11の環状溝12との間に形成される間隙a分だけ左方へ駆動して、環状溝12の左方の内壁12aに当接して停止する。
これにより、ピストンロッド10に連係された揺動アーム15が時計回り方向に回動され、バルブ本体1の弁体2が、100%の全開状態から、例えば15〜30%程度に閉弁しうるように作動して、予め定めた所望の中間開度に維持される。
したがって、バルブ本体1の弁体2は、予め定めた一定の開度以上に閉弁されることはなく、プラント設備におけるパイプラインWの流路を、設備の稼働に支障を来さない状態で、弁体作動確認が、簡易な構造で速やかに行うことができる。
【0041】
弁体作動確認中において、本来の緊急遮断信号が第1電磁切換弁17に入力されると、第1電磁切換弁17は非通電状態となって、第2空気作動切換弁19が切り換り、図5に示すように、第2ピストン9のストッパピストン11を左方に駆動させることにより、第1ピストン8の左方への閉弁方向の駆動を許容し、バルブ本体1の弁体2を全閉状態する。
【0042】
また、弁体作動確認後は、リミットスイッチ23からロジックコントローラ22にフィードバックされたフィードバック信号により、第2電磁切換弁18の通電状態が解除され、通常時における弁体2の全開状態に戻される。
【0043】
図7は、本発明の第2実施形態における弁体全閉状態のシリンダ制御系の概略図である。
なお、以下の説明において、前記第1実施形態と構成が重複する部分は、説明を省略する。
【0044】
本実施形態の緊急遮断弁装置では、弁駆動制御機構24の駆動制御回路を構成する緊急遮断用の第1電磁切換弁25と、弁体作動確認用の第2電磁切換弁26との間に、弁設置現場において弁体作動確認の手動操作を可能にする手動切換弁27が設けられている。
この手動切換弁27の押動操作により、第1空気作動切換弁28を切換えて、弁体作動確認を行うようになっており、これにより、バルブ本体における弁体の作動確認を、緊急遮断弁装置より離れた位置からの遠隔操作と、その設置現場での手動操作との両方で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の緊急遮断弁装置における第1実施形態のシリンダ系を縦断して示す正面図である。
【図2】同じく、シリンダ系を横断して示す弁体全閉状態の平面図である。
【図3】同じく、シリンダ系を横断して示す弁体全開状態の平面図である。
【図4】弁体の全開状態におけるシリンダ制御系の概略図である。
【図5】同じく、弁体の全閉状態におけるシリンダ制御系の概略図である。
【図6】同じく、弁体の作動確認時におけるシリンダ制御系の概略図である。
【図7】本発明の第2実施形態における弁体全閉状態のシリンダ制御系の概略図である。
【図8】従来の緊急遮断弁装置におけるシリンダ系を縦断して示す弁体全閉状態の正面図である。
【図9】同じく、シリンダ系を横断して示す平面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 バルブ本体
2 弁体
3 弁軸
4 弁駆動制御機構
5 ボディ本体
6 第1シリンダ
6a シリンダ室
6b シリンダ室
7 第2シリンダ
7a シリンダ室
7b シリンダ室
8 第1ピストン
9 第2ピストン
10 ピストンロッド
10a 端部
10b 端部
11 ストッパピストン(環状体)
12 環状溝
12a 内壁
12b 内壁
13 バルブ開度規制ピストン
14 連係ピン
15 揺動アーム
16 第1空気作動切換弁
17 第1電磁切換弁
18 第2電磁切換弁
19 第2空気作動切換弁
20 流体供給源
21 フィルタレギュレータ
22 ロジックコントローラ
23 リミットスイッチ
24 弁駆動制御機構
25 第1電磁切換弁
26 第2電磁切換弁
27 手動切換弁
28 第1空気作動切換弁
01 バルブ本体
02 弁体
03 弁軸
04 ボディ本体
05 第1シリンダ
05a シリンダ室
05b シリンダ室
06 第2シリンダ
06a シリンダ室
06b シリンダ室
07 ピストンロッド
08 第1ピストン
09 第2ピストン
010 連係ピン
011 揺動アーム
a 間隙
P1〜P4 ポート
W パイプライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプラインに接続されたバルブ本体内における弁体の弁軸を臨ませたボディ本体の両端部に、第1シリンダと第2シリンダとを、互いに軸線方向の同一直線上に位置するように配設するとともに、第1、第2シリンダ内に、弁軸に連係するピストンロッドの両端部に互いに連結された第1ピストンおよび第2ピストンをそれぞれ軸線方向に摺動自在に設け、かつ通常時には、第1、第2シリンダ内を摺動自在な第1、第2ピストンの一側方のシリンダ室に流体供給源からの圧力流体を供給して、第1、第2ピストンをそれぞれ開弁方向に駆動させることにより、ピストンロッドに連係する弁軸を介して、弁体を全開状態にするとともに、緊急時には、第1、第2ピストンの他側方のシリンダ室に圧力流体をそれぞれ切換え供給して、第1、第2ピストンをそれぞれ閉弁方向に駆動させることにより、弁体を全閉状態にする複動式シリンダからなる緊急遮断弁装置において、
第2ピストンを、第2シリンダ内に軸線方向に摺動自在に設けられ、かつ環状体の内周面に環状溝が形成されたストッパピストンと、このストッパピストンの環状溝に軸線方向に摺動自在に設けられ、かつ一端に第1ピストンが連結されたピストンロッドの他端に連結したバルブ開度規制ピストンとにより構成するとともに、
弁体の全開時には、第2ピストンのバルブ開度規制ピストンが、ストッパピストンにおける環状溝の溝幅を規制する一方の内壁から他方の内壁に向けて摺動して当接しうるようにして、環状溝の前記一方の内壁とバルブ開度規制ピストンとの間に間隙を形成し、かつ、
弁体の作動確認時には、弁体の全開状態において、第1ピストンの一側方のシリンダ室内の圧力流体を排出し、他側方のシリンダ室に圧力流体を供給しうるように切換えることにより、第1ピストンを、弁体の全開状態の位置から閉弁方向に駆動させたときにおけるバルブ開度規制ピストンの駆動範囲を、前記間隙の軸線方向の幅によって規制することにより、弁体を予め定めた所望の中間開度に維持しうるようにしたことを特徴とする緊急遮断弁装置。
【請求項2】
第1、第2シリンダ内における第1、第2ピストンの一側方のシリンダ室に流体供給源からの圧力流体をそれぞれ供給し、かつ第1、第2ピストンの他側方のシリンダ室の圧力流体を排出することにより、第1、第2ピストンを弁体の開弁方向に駆動させて、弁体を全開状態にする第1流体作動切換弁と、
この第1流体作動切換弁を、緊急遮断時の非通電状態において、第1、第2ピストンの他側方のシリンダ室に圧力流体を供給し、かつ第1、第2ピストンの一側方のシリンダ室の圧力流体を排出することにより、第1、第2ピストンを弁体の閉弁方向に駆動させて、弁体を全閉状態にするように切換える緊急遮断用の第1電磁切換弁と、
この第1電磁切換弁と第1流体作動切換弁との間に設けられ、かつ第1電磁切換弁に連動する第1流体作動切換弁を介して、非通電状態にあるとき、弁体の全開状態および全閉状態を許容するとともに、通電状態にあるとき、第2ピストンのストッパピストンを静止状態に維持して、第1ピストン、第2ピストンのバルブ開度規制ピストンを、弁体の全開状態から閉弁方向に向けて駆動しうるように、第1流体作動切換弁を切換える、弁体作動確認用の第2電磁切換弁とによって弁体開閉機構を構成した請求項1記載の緊急遮断弁装置。
【請求項3】
第1電磁切換弁に連動する第2流体作動切換弁によって弁体作動確認機構を構成し、第2流体作動切換弁を、第2シリンダ内における第2ピストンの一側方のシリンダ室に圧力流体を供給し、かつ第2ピストンの他側方のシリンダ室の圧力流体を排出することにより、第2ピストンを、第1電磁切換弁の通電状態における弁体の全開位置に停止させ、
弁体の作動確認時における第2電磁切換弁の通電状態において、第1空気作動弁を切換え、弁体の閉弁方向に駆動する第2ピストンのバルブ開度規制ピストンを、静止状態を維持する第2ピストンのストッパピストンにおける環状溝の一方の内壁に当接させることにより、弁体を予め定めた所望の中間開度に維持しうるようにするとともに、
緊急遮断時における第1電磁切換弁の非通電状態において、第2ピストンの他側方のシリンダ室に圧力流体を供給し、かつ、第2ピストンの一側方のシリンダ室の圧力流体を排出することにより、第2ピストンを、弁体の全閉位置に停止させるように切換制御可能とした請求項1または2に記載の緊急遮断弁装置。
【請求項4】
弁体開閉機構における第1電磁切換弁と第2電磁切換弁との間に、弁設置現場において弁体作動確認の手動操作を可能にする手動切換弁を設けた請求項1〜3のいずれかに記載の緊急遮断弁装置。
【請求項5】
弁体の弁軸に、弁体の中間開度動作を検知する検知手段を設けた請求項1〜4のいずれかに記載の緊急遮断弁装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−243499(P2009−243499A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−87888(P2008−87888)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(390006242)タイコ フローコントロールジャパン株式会社 (9)
【Fターム(参考)】