説明

緊急雨漏れ対策棒

【課題】天井からの漏水を飛散させることなく簡便に集水して特定の場所に排水する雨漏れ対策棒を提供する。
【解決手段】その端部を天井と床とに押し付けて立つ緊急雨漏れ対策棒において、棒が中空の水路になっていることおよび床と接している棒の下端に排水口が備えられていること、天井に接している棒の上端が上記水路の受水口となっていること、水路へ水を誘導する誘導口が棒の側面部に備えられていること、誘導口に水を集めるための集水つばを供えていること、複数個の緊急雨漏れ対策棒で1つの集水つばを保持している緊急雨漏れ対策棒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は天井からの漏水を処置するための緊急雨漏れ対策棒に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に関連した先行技術としてはいくつかの側面で切り出すことができる。1つは簡便に柱を立てるという特徴に注目した場合の先行技術であり、1つは、漏水を受ける樋の機能に注目した場合の先行技術であり、1つは、柱と傘の組合せという観点からテントに類似したものと捉えた場合の先行技術である。上記3つの側面について順次先行技術を紹介していく。
まず1つ目として、簡便に柱を立てるという特徴について述べる。伸縮自在棒で天井との間に簡便に柱を立てる方法についてはこれまでいくつかの技術開示がなされている。バネ式の突っ張り棒で家具の天板と天井との間に柱を立ててその家具が倒れることを防止する技術として、特開2006−158809(特許文献1)に技術が開示されており、棚を作るために柱を立てる技術として、特開2005−304991(特許文献2)にその技術が開示されている。伸縮自在棒を壁面に対して突っ張り棒として固定する技術は特開2000−79029(特許文献3)に開示されている。これらの技術は簡便に柱や梁を設置するための技術である。
一方、樋についての先行技術についてはいくつかの技術が開示されている特開平10−205679(特許文献4)には樋のような構造で漏水の応急処置についての技術が示されている。
テントについては、例えば特開2007−16528(特許文献5)で技術開示がなされている。
【特許文献1】特開2006−158809
【特許文献2】特開2005−304991
【特許文献3】特開2000−79029
【特許文献4】特開平10−205679
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以上述べた通り、天井からの漏水を処置するための緊急雨漏れ対策棒の関連技術はいくつか示されている。
まず、伸縮自在棒を床と天井との間で固定するための突っ張りの機構について従来技術の課題を説明する。前記特許文献1に示されている技術では伸縮自在棒を簡便に固定することができるが伸縮自在棒自身に天井からの漏水を受けて床方向に流すための水路が備えられていないので、前記特許文献1の技術では天井からの漏水を処置するために水路を別途設ける必要がある。従来の伸縮自在棒では前記特許文献1以外でも水路を設けたものはなく、天井からの漏水を処置するためには別途水路が必要という課題を抱えている。
天井からの漏水を処置することを、高い位置にある水を所定の位置に導くという観点で捉えると「樋」が本発明に対応する技術として挙げられる。通常、従来の樋は大工や施工の専門家が工具を駆使して建物の外壁等にネジで固定する必要があり、急な天井からの漏水に簡便に対応することは困難であった。前記特許文献2には緊急対応用の技術について示されている。しかしながらこの技術は樋に水路を吊下げる技術であり、吊下げるためのとっかかりがない天井に吊下げることは困難である。
本発明の設置した姿に類似した構造としてテントが挙げられる。しかしながらテントは屋外で日よけや雨よけなどを目的として建てられるものであり、本発明とは目的が違うため構造も異なっている。テントは雨水を屋根で受けてそのまま周辺に流してしまう構造であるので、このテントの構造では天井の雨水を一定の方向に誘導することはできず、屋根の高さからそのまま滴り落ちて床に落ちた雨水が跳ねて下を通行する人がぬれるという懸念もある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の緊急雨漏れ対策棒は、その端部を天井と床とに押し付けて立つ特徴に加えて、前記棒が中空の水路になっていることおよび床と接している前記棒の下端に排水口が備えられていることを第1の特徴とし、
第2に、前記第1の特徴に加えて、天井に接している前記棒の上端が上記水路の受水口となっていることを、
第3に、前記第1または第2の特徴に加えて、前記水路へ水を誘導する誘導口が前記棒の側面部に備えられていることを、
第4に、前記第3の特徴に加えて、前記誘導口に水を集めるための集水つばを供えていることを、
第5に、前記第4の特徴に加えて、複数個の伸縮自在棒で1つの集水つばを保持していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明の緊急雨漏れ対策棒を用いると、天井の漏水に対する応急処置を簡便に迅速に行うことができる。特に地下鉄のホームなどで頻発している天井の亀裂からの漏水にはその効果が明確で顕著である。本発明の緊急雨漏れ対策棒を地下鉄のホームでの漏水の応急処置に用いた場合、作業のために特別な工事区域を設ける必要はなく、また特別な工事の資格や熟練を必要としないため駅の係員でも一人で簡単に設置できる。この緊急雨漏れ対策棒は、駅のホームに限らず漏水やそれに類似した事故において非常に有効であり、あらゆる施設において必要となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明を実施するための最良の形態を実施例1として図1と図2を用いて説明する。まず、図1を使って説明する。緊急雨漏れ対策棒1を床100に立てて天井101に突き立てた例である。前記緊急雨漏れ対策棒はアルミニウム製の中空の筒の脚部2と前記脚部の内側に挿入した細めのアルミニウム製の筒の腕部3とで構成されているこの脚部と腕部との接続部4にはスプリングが入っており床に立てた状態で腕部を天井方向に突き上げて腕部の上端部5を天井に押し付ける構造となっている。図1は天井の亀裂102の部分に生じた漏水103の部分を前記上端部ですっぽりと覆う位置に前記緊急雨漏れ対策棒を立てている状態である。漏水は腕部から脚部までを貫通した水路7を通って前記下端部6に設けた開口である排水口8から排水104として放出される。
【0007】
ここでそれぞれの部分の特徴について詳しく説明する。前記上端部は上部が広く開口しまたゴムで覆われており下部が狭い略円錐台の形状でそのまま筒形状部分につながっている。緊急雨漏れ対策棒は天井のひろい範囲と接触することでその姿勢を安定して保つことができ、また、ひろい範囲の漏水を受けることができる。脚部の下端には排水口がある。この排水口は脚部の筒内部を伝ってきた水を外部に排水するためのスリットである。
【0008】
図2は図1で説明した緊急雨漏れ対策棒をまさにこれから所定の位置に立てようとしている状態を描いている。腕部3を脚部2の筒の中に押し込むようにして緊急雨漏れ対策棒の高さを縮めて亀裂102の真下に置いている。接続部4に入れたスプリングの強度は人の手の力で簡単に押し込めるように設計してある。
【実施例】
【0009】
本発明の実施例2について、図3と図4を用いて説明する。この実施例では緊急雨漏れ対策棒1の腕部3の筒の側面部分に天井からの漏水を受けるための誘導口9を備えている。前記誘導口は筒の側面に複数の穴を設けてその穴に傘を逆さにした形状のアルミニウム製の集水口を取り付けた構造である。この誘導口には集水つば10が取り付けられている。この集水つばも傘を逆さにした形状であり、プラスチック製である。集水つばは図3に示す通り誘導口に乗せた形で取り付けてある。この緊急雨漏れ対策棒は実施例1と同様に、腕部を縮めて所定の位置に設置して、そのまま腕部を伸ばして天井と床との間で突っ張って固定している。集水つばの上端と腕部の上端部5の高さを同じにしておくことで固定時に集水つばが天井に密接した状態となる。図3では柱105から離れた位置の亀裂からの漏水103を前記柱の近傍に立てた緊急雨漏れ対策棒で受けている。本実施例は地下鉄のホーム上の天井の漏水をホームの利用者の邪魔にならないように柱の近くに立てるのに便利な緊急雨漏れ対策棒の例である。緊急雨漏れ対策棒の排水口8は柱近くに設けられた排水溝106にその開口部を向けて立てて、その後、前記集水つばを亀裂の方向にうまく向けている。集水つばは誘導口と完全に固定しているのではなく、集水つばは緊急雨漏れ対策棒を軸として回転できるように固定してある。図4には、図3に描いた緊急雨漏れ対策棒を天井方向から眺めた様子を描いている。この方向から眺めると集水つば10はタマゴ型である。このように偏心した構造なので緊急雨漏れ対策棒を軸に回転させることで漏水を受けることができる。
【0010】
本発明の実施例3について説明する。複数個の伸縮自在棒と1つの集水つばで天井の漏水を受ける実施例である。その構造を図5と図6に示す。図に描かれているのは4本の緊急雨漏れ対策棒1と1つの集水つば10で漏水を受ける構成である。それぞれの緊急雨漏れ対策棒の構造は実施例2で描かれたものと同様であり、集水つばの構造が実施例と異なる。本実施例では集水つば10がその側面図を図5、その上面図を図6に描いてある通り、その中央付近は略四角錐(ピラミッド)形状であり、その4隅は天井に向けて高くせり上げた形状である。この集水つばでは前記4つの緊急雨漏れ対策棒で支えている部分がその周辺よりも低い位置になっていることが特徴である。この形状によって、集水つばのどの位置で受けた水でも4つの緊急雨漏れ対策棒のいずれかの誘導口に注がれることになる。この実施例では漏水103が発生している亀裂102が3箇所存在する場合を示している。図6で漏水のところから蛇行した矢印で描いたように水が集水つば上を流れてそれぞれの緊急雨漏れ対策棒の誘導口に向かっている。
【0011】
本発明の実施例4について説明する。図7と図8にそれぞれ全体の構成図と集水つばの取り付け部分の拡大図を示す。図7の説明をまず行う。図5と同様に天井の複数個所の亀裂102からの漏水103を受けて床に排水する緊急雨漏れ対策棒の例である。集水つば10には排水パイプ11が取り付けられていて、この排水パイプは緊急雨漏れ対策棒1に沿って床まで垂らされている。この例では2本の緊急雨漏れ対策棒にそれぞれ集水つばがとりつけられており、この集水つばにまたがるかっこうで漏水受12を載せてある。集水つば10の取り付け部分について図8を用いて詳しく説明する。図8に描いてあるとおり、集水つば10は緊急雨漏れ対策棒1の側面を掴むかっこうで固定されている。集水つば10は樹脂で作られており、挟み込み部13の内径は伸縮棒の挟み込み部分の位置の太さより若干小さくなっている。集水つば10は緊急雨漏れ対策棒の横から押し込みように取り付ける。取り付けの過程で前記挟み込み部が押し広げられて固定位置に落ち着くと元通り狭まる。この挟み込み部分が緊急雨漏れ対策棒を締め付けるように固定しているのでずり落ちることがない。漏水受12はその端部には下向きの突起がある。この突起を引っ掛け部14と呼ぶ。漏水受12はこの引っ掛け部を集水つばの端部に引っ掛けて固定する。漏水受で受けた水は漏水受の傾斜によって集水つばまで運ばれて前記排水パイプを通って床に流される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】は本発明の実施例1の第1の状態を示す側面から眺めた構成図である。
【図2】は本発明の実施例1の第2の状態を示す側面から眺めた構成図である。
【図3】は本発明の実施例2の側面から眺めた構成図である。
【図4】は本発明の実施例2の上面から眺めた構成図である。
【図5】は本発明の実施例3の側面から眺めた構成図である。
【図6】は本発明の実施例3の上面から眺めた構成図である。
【図7】は本発明の実施例4の側面から眺めた構成図である。
【図8】は本発明の実施例4の構成を示す部分的拡大図である。
【符号の説明】
【0013】
1は緊急雨漏れ対策棒、2は脚部、3は腕部、4は接続部、5は上端部、6は下端部、7は水路、8は排水口下端部分、9は誘導口、10は集水つば、11は排水パイプ、12は漏水受、13は挟み込み部、14は引っ掛け部、100は床、101は天井、102は亀裂、103は漏水、104は排水、105は柱、106は排水溝である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その端部を天井と床とに押し付けて立つ緊急雨漏れ対策棒において、前記棒が中空の水路になっていることおよび床と接している前記棒の下端に排水口が備えられていることを特徴とする緊急雨漏れ対策棒。
【請求項2】
請求項1の緊急雨漏れ対策棒において、天井に接している前記棒の上端が上記水路の受水口となっていることを特徴とする緊急雨漏れ対策棒。
【請求項3】
請求項1または2の緊急雨漏れ対策棒において、前記水路へ水を誘導する誘導口が前記棒の側面部に備えられていることを特徴とする緊急雨漏れ対策棒。
【請求項4】
請求項3の緊急雨漏れ対策棒において、前記誘導口に水を集めるための集水つばを供えていることを特徴とする緊急雨漏れ対策棒。
【請求項5】
請求項4の緊急雨漏れ対策棒において、複数個の緊急雨漏れ対策棒で1つの集水つばを保持していることを特徴とする緊急雨漏れ対策棒。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−285979(P2008−285979A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−156855(P2007−156855)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(505373580)
【Fターム(参考)】