説明

緑化用保水性敷設部材の製造法

【課題】保水性を保持して害虫の住処にする事なく、軽量で持ち運び易く、必要なサイズに裁断可能で棚部材、縁部材、街路樹周囲の敷設部材などの緑化用保水性敷設部材を提供するものである。
【解決手段】籾殻とセメントの混合物に少量の粉砕炭と水を加えて混練した泥状の混和物を、網目部材の片面または両面に塗積し、乾燥して製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、草木を植えた庭や公園の縁部材、鑑賞用に手を加えて育てた草葉の植木鉢や樹木の盆栽品などを載置する棚部材、街路樹周囲の給水域を確保する敷設部材など、緑化用品として使用される保水性敷設部材の製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石炭や石油などを燃やして発生する二酸化炭素、メタン、窒素酸化物などの温室効果ガスの増加で、地球の気温は高まり、自然環境や生活環境に大きな悪影響を及ぼしている。また都市の市街地化に鉄筋コンクリート造りの建物が増え、畑や植樹が少なくなり、建物の屋上や道路がアスファルトに覆われ、居住地域の温度を上昇する。特に高層ビルが立ち並ぶ地域ではヒートアイランド化する。この様な地域での輻射熱による温度上昇を防ぐため、高層ビルの屋上に木や芝生を植えて緑化し、少しでも気温を下げる工夫が施されているが、多額な施工費用が罹り過ぎる問題があった。最近では、植物に栄養や水分を効果的に付与する微生物を土に混ぜた薄い層の土壌で、サツキやツツジや芝生などが植えられる屋上緑化技術が開発されている。また一般住宅においても、居間や食堂の単なる延長空間に過ぎなかったアウトドア・リビングのテラスやウッディ・デッキ、ベランダなどが、居間と客間の前に美匠上の工夫を凝らした主庭と同様に、花や木の鉢植え庭園を眺めて楽しむ癒し空間、植樹の蔓を這わせて日陰を作り夏の涼しさを呼ぶ快適空間を創り出すなど、緑化庭園空間に変わりつつある。
【0003】
庭園作りには篩、鍬、移植鏝、ジョロなどの園芸小道具の他に、植木鉢、用土を入れて球根や宿根草を植え付けるコンテナ(容器)、植木鉢などを載せる棚部材、鉢植え植物を吊って楽しむハンギングバスケット(吊り容器)などの園芸用品を使用し、時には縁石や飛石などの重い園芸用品も使用する。
中でも問題視されるのが、棚部材である。鑑賞用に育てた草葉の植木鉢や樹木の盆栽品を直接地面に置くと風通しが悪い上に、鉢の中も乾きも悪く、無駄な葉や茎が伸び易い。水やりや降雨の度に水の跳ね返りで幹や葉を汚し、葉の生育も悪い。また鉢底の水抜穴から侵入する蟻やミミズなどの害虫の影響を受けて病気に成り易い問題があった。この事から棚部材は、庭園作りの必需品であった。特にマンション(またはアパート)住宅において、狭いベランダを有効的に活用し癒し空間の緑化庭園を作るには、多くの数の植木鉢が一様に陽が当たる様に、植木鉢を載せる棚部材を雛壇状に積み上げる様に配置しなければならない。ところが棚部材は、一般に持ち運びの便利さから合成樹脂製または木製が多く使用されているが、合成樹脂製棚は、高い気温や風に曝されると材質が劣化し、欠損する。また木製棚も、やり水や雨水が浸透し徐々に腐っていく問題から、長期間使用できない問題があった。この点ではコンクリート製の棚部材は、材質を劣化する事もなく、長期間にわたって安心して使用できる特長があった。しかしながら、コンクリート製棚部材は、夏の強い陽射しを受けた放射熱で植木鉢の葉や茎の脱水を促す問題、非常に重いが故に簡単に持ち運べない問題、何らかの支障で折損または落下したとき人災を引き起す問題、不要になったときの後処理に困惑する問題、マンションの様に片持ち梁的に設けられたベランダにおいては荷重制限から使用されない問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、植木鉢や盆栽品などの園芸用棚部材として従来から使用される合成樹脂製棚コンクリート製棚の欠点や問題点を解消する事に鑑み、保水性を保持して害虫の住処にする事なく、軽量で持ち運び易く、必要なサイズに裁断可能な棚部材で、縁石や飛石の緑化庭園用品にも使用できる堅牢性を持つ緑化用保水性敷設部材を提供する事を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はその目的を達成したもので、その要旨は、籾殻とセメントの混合物に少量の粉砕炭と水を加えて混練した泥状の混和物を、網目部材の片面または両面に塗積し、乾燥する緑化用保水性敷設部材の製造法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明法によって製造された籾殻とセメントを主骨材とする緑化用保水性敷設部材は、従来の合成樹脂製棚部材の様に風化によって劣化する事もなく、コンクリート製棚部材以上に陽射しの放射熱を放出する事もなく、散水時や降雨時には充分に吸水しまた晴天時は適度の水分を周囲に放出するため日照りの続く夏日でも植木鉢の草木を優しく生育する。また不要になった緑化用保水性敷設部材は、簡単に焼却処理できる利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の緑化用保水性敷設部材の製造法について、詳細に説明する。
本発明の緑化用保水性敷部材は、籾殻とセメントを主骨材に使用する。籾殻は、成熟した稲の殻粒を乾燥した後2本のゴムロール間を通る間に擦られあるいは高速回転するゴム盤に衝突し種実から剥離された外皮で、最後は焼却処分される。しかしながら、籾殻その物は、水を付着しまた山の様に積み上げると嵩んで保水性を有し、軽粒子で取扱い易く、他の混練部材に馴染み易い性質がある。セメントは、本発明において籾殻と後述する粉砕炭との間の接着性を強める接合材料であり、緑化用保水性敷設部材の堅牢性を高める硬質化材料でもある。その接合作用は籾殻と粉砕炭とセメントに適量の水を加えて混練した泥状の混和物で得られるものであり、硬化作用は泥状の混和物を乾燥して得られるものである。本発明において使用するセメントはポルトランドセメント、アルミナセメント、マグネシアセメント、粘土分の多い石灰石を強く焼いてつくるローマンセメントや天然セメントなど各種のセメントが使用される。セメント混合比についても特に限定するものでないが、籾殻や粉砕炭の保水性を維持しかつ接合作用を奏する範囲から、重量比で籾殻1に対し0.6〜1.4倍の混合が好ましい。さらに本発明は、籾殻とセメントの混合物に粉砕炭を混合する。粉砕炭は、各種の木や竹を蒸し焼きにして作ったもので、籾殻と同様に軽く多数の気孔や連通孔で吸水性と保水性を有し、混練して籾殻と馴染み、緑化用保水性敷設部材を大きく嵩張らしめる有効な混合材料である。粉砕炭子の大きさは、使用される緑化用保水性敷設部材の大きさに応じて適宜に選択すればよいが、中でも堅牢な緑化用保水性敷設部材を得るには籾殻と同程度またはやや細かく粉砕する程度が好ましい。また粉砕炭と籾殻の混合比率についても特に限定するものでないが、粉砕炭が籾殻と同様に保水性を有するため、多量な混合は緑化用保水性敷設部材が粘結性を欠き乾燥後に堅牢性を失い型崩れし易い問題から、重量比で籾殻1に対し粉砕炭を0.2〜0.5倍で混合する事が好ましい。さらに本発明においては、必要によっては市販のセメント硬化促進剤の少量を加えて混合してもよい。
上記の様な籾殻とセメントと少量の粉砕炭からなる混合物に適量の水を加えながら混練し、泥状の混和物にする。
【0008】
続いて、この泥状混和物を、網目部材の片面または両面に任意の厚さで塗積し、緑化用保水敷設部材に成形した後、自然乾燥または強制乾燥を施す。網目部材とは、糸や針金を編んだシート状の網あるいは金属板や合成樹脂板や木板など任意な板材に無数の孔を穿設した多孔板からなる裏当て材または芯材になる部材あって、緑化用保水敷設部材の使用中または運搬中に塗積部材の欠落や折損を防止し形状を維持するものである。従って、網目部材は、緑化用保水敷設部材の製品形状に合わせて成形する事が好ましい。さらに該部材を網目形状で使用する事は、緑化用保水敷設部材の軽量化を図ると共に、塗積部材と網目部材の接着性を改善し、緑化用保水敷設部材の形状性を長期間保持する効果を奏する。
この様にして製造される緑化用保水性敷設部材は、保水機能と水分放出機能を備え、堅牢性も兼ね備えている。また緑化用保水性敷設部材が長方形状棚や円板棚あるいは縁石や飛石などのブロックに変わっても、網目部材の形状や大きさが変わるのみで製造工程まで変わるものでない。
【実施例】
【0009】
次に本発明の一実施例について述べる。
表1に一実施例を示す本発明法に基づいて製造した緑化用保水性敷設部材の棚部材(厚み50mm×幅300mm×長さ1200mm)を、屋外庭園にて、高さ700mmの木質支持脚に架設し、その上にツツジの盆栽鉢3個(4kg/個×3個)を載置し、雨風に曝して1年6カ月間の曝露実験を試みた。尚、比較材に、本発明の棚部材と同様の大きさのコンクリート製棚を使用し、同程度の重さのツツジ盆栽鉢3個を載置した。
【表1】


【0010】
その時の両棚部材の曝露実験から、日照りが続く8月において、本発明の緑化用保水性棚部材上のツツジ盆栽鉢は平均4.6日毎に、他方のコンクリート製棚のツツジ盆栽鉢は平均2.6日毎にシャワー散水が必要であった。この違いは明らかに棚部材の材質の相違すなわちシュワー散水したときの水の保水性と熱の籠もり方の相違によるものと判断される。さらに本発明の緑化用保水性棚部材は、大雨に曝されても型崩れや折損する事なく、コンクリート製棚と同様に、いまだに使い続けている。
【産業上の利用可能性】
花木や庭木や芝生に囲まれた家は、緑の上に浮き上がって美しく見える。さらに花壇と園路との境を、赤煉瓦やコンクリートブロックを本発明の緑化用保水性敷設部材のブロックに代えて敷く事で、庭園の自然を美しく見せる。また環境問題に対する意識が高まって屋上、傾斜屋根、壁面など緑化事業が積極的に進められる中で、コンクリートで固められたマンションのベランダでも、浅い箱に土を入れ、小さい木を植え、山水の景色を楽しむ癒しが求められている。こうした環境の中で、本発明の緑化用保水敷設部材は非常に軽いため持ち運び易く、必要なサイズに裁断が可能であり、充分に保水性を保持するなどの利点から、今後園芸用品の一つとして益々使用される可能性が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
籾殻とセメントの混合物に少量の粉砕炭と水を加えて混練した泥状混合物を、網目部材の片面または両面に塗積し、乾燥する事を特徴とする緑化用保水性敷設部材の製造法。

【公開番号】特開2007−97566(P2007−97566A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−321489(P2005−321489)
【出願日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(505276845)有限会社シルバーリサイクル (1)
【Fターム(参考)】