線熱源
【課題】機械強度が良く、破壊されにくい線熱源及び該線熱源の製造方法を提供する。
【解決手段】線熱源20は、線状の支持体202と、前記線状の支持体202に被覆された加熱素子と、前記加熱素子204と電気的に接続された二つの電極206と、を含む。前記加熱素子204がカーボンナノチューブ複合構造体を含み、該カーボンナノチューブ複合構造体が少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルム及び基体材料を含み、該カーボンナノチューブフィルム及び基体材料が複合される。前記カーボンナノチューブフィルムが複数のカーボンナノチューブのみからなり、該複数のカーボンナノチューブが、相互に絡み合っている。
【解決手段】線熱源20は、線状の支持体202と、前記線状の支持体202に被覆された加熱素子と、前記加熱素子204と電気的に接続された二つの電極206と、を含む。前記加熱素子204がカーボンナノチューブ複合構造体を含み、該カーボンナノチューブ複合構造体が少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルム及び基体材料を含み、該カーボンナノチューブフィルム及び基体材料が複合される。前記カーボンナノチューブフィルムが複数のカーボンナノチューブのみからなり、該複数のカーボンナノチューブが、相互に絡み合っている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線熱源に関し、特にカーボンナノチューブを利用した線熱源に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱源は、人々の生活及び科学の研究などの分野において重要な役割を果たす。例えば、電気加熱器、電気ストーブ及び赤外線治療器などに応用される。
【0003】
従来の熱源は、例えば、電気抵抗のリード線などの線状発熱体及び二つの電極を含む。前記二つの電極が間隔を置いて設置され、前記線状発熱体の両端に電気的に接続される。前記二つの電極によって、前記線状発熱体に電圧を印加する場合、該線状発熱体が普通の波長で熱を放出する。一般的に、線状熱源の線状発熱体として、金属、合金又は炭素繊維などで製造された電気抵抗リード線を採用する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Kaili Jiang、Qunqing Li、Shoushan Fan、“Spinning continuous carbon nanotube yarns”、Nature、2002年、第419巻、p.801
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、金属、合金又は炭素繊維などで製造された電気抵抗リード線は、下記の欠点がある。第一に、前記電気抵抗リード線から生じる熱が普通の波長で外界に放出するので、電気エネルギーを熱エネルギーに転換する効率が低く、エネルギーが浪費されるという欠点がある。第二に、炭素繊維が厚く、一般的には、数十マイクロメートルであるので、前記線熱源は、極めて小型の構造を製造しにくく、極めて小型の加熱対象を加熱することに応用できない。金属線の直径が小さい場合、強度が悪く、折れやすいので、前記線熱源は、極めて小型の構造を製造しにくく、極めて小型の加熱対象を加熱することに応用できないという欠点がある。第三に、前記電気抵抗リード線の重量が大きいので、前記線熱源の軽量化に不利であるという欠点がある。また、金属の電気抵抗のリード線及び合金電気抵抗のリード線が酸化されやすいので、強度が悪く、強靭性が良くなく、折れやすくなり、応用される範囲が制限されるという欠点がある。
【0006】
従って、本発明は、機械強度が良く、破壊されにくい線熱源及び該線熱源の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
線熱源は、線状の支持体と、前記線状の支持体に被覆された加熱素子と、前記加熱素子と電気的に接続された二つの電極と、を含む。前記加熱素子がカーボンナノチューブ複合構造体を含み、該カーボンナノチューブ複合構造体が少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルム及び基体材料を含み、該カーボンナノチューブフィルム及び基体材料が複合される。前記カーボンナノチューブフィルムが複数のカーボンナノチューブのみからなり、該複数のカーボンナノチューブが、相互に絡み合っている。
【0008】
前記カーボンナノチューブフィルムにおいて、複数の微孔が形成され、前記基体材料が、前記複数の微孔の中に浸透される。
【0009】
前記カーボンナノチューブフィルムは、自立構造を有する。
【0010】
前記加熱素子及び前記線状の支持体の間に反射層が設置されていて、該反射層が前記加熱素子から放出された熱を反射するために用いられる。
【発明の効果】
【0011】
従来の線熱源と比べると、本発明の線熱源には、下記の優れた点がある。
【0012】
前記基体材料と前記自立構造体を有するカーボンナノチューブ構造体とを直接複合し、加熱素子を形成することによって、前記カーボンナノチューブが、前記加熱素子において、カーボンナノチューブ構造体の形態を保持するので、前記加熱素子におけるカーボンナノチューブが、均一的に分布し、導電通路を形成することができ、溶液に分散された濃度が制限されなく、該カーボンナノチューブは、前記加熱素子における含有量が99%に達することができる。従って、前記熱源の放熱温度を高めることができる。
【0013】
前記線熱源において、加熱素子がカーボンナノチューブ構造体を含み、該カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブが均一的に配列され、該加熱素子が均一な厚さ及び抵抗を有するので、該加熱素子は、均一的に熱を放出することができる。前記カーボンナノチューブが電気エネルギーを熱エネルギーに転換する効率が、高いので、前記線熱源は、昇温速度が速く、熱応答速度が速く、熱交換速度が速い。
【0014】
前記加熱素子おけるカーボンナノチューブが、優れた力学性能、優れた靭性及び優れた機械強度を有するので、該加熱素子は、優れた力学性能、優れた靭性と機械強度を有し、使用寿命が長くなる。更に、カーボンナノチューブ構造体及び柔軟性の基体が複合し、前記加熱素子が形成される場合、該加熱素子を利用して、柔軟性の線熱源を製造することができる。
【0015】
前記加熱素子おけるカーボンナノチューブの直径が小さいので、該加熱素子は、厚さが小さい。従って、極めて小型の線熱源を製造することができ、該小型の線熱源を利用して、小型の加熱対象となる素子を加熱することができる。
【0016】
前記カーボンナノチューブ構造体が、超配列カーボンナノチューブアレイから引き出して得られたカーボンナノチューブフィルムからなる場合、前記カーボンナノチューブフィルムにおける複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って、端と端が接続されるので、優れた導電性を有する。従って、前記線熱源は、優れた加熱性能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例に係る線熱源の加熱素子の断面拡大図である。
【図2】本発明の実施例に係る線熱源の加熱素子の断面拡大図である。
【図3】本発明の実施例に係る線熱源における、ドローン構造カーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図4】ドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブセグメントの構造を示す図である。
【図5】図3中のドローン構造カーボンナノチューブフィルムを引き出す見取り図である。
【図6】本発明の実施例に係る線熱源における、プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列されたカーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図7】本発明の実施例に係る線熱源における、プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが等方的に配列されたカーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図8】本発明の実施例に係る線熱源における、綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図9】本発明の実施例に係る線熱源における、綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムの写真である。
【図10】ろ過された綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体の写真である。
【図11】本発明の実施例に係る線熱源における、超長構造カーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図12】本発明の実施例に係る非ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤのSEM写真である。
【図13】本発明の実施例に係るねじれ状のカーボンナノチューブワイヤのSEM写真である。
【図14】本発明の実施例に係る線熱源の製造方法のフローチャートである。
【図15】本発明の実施例1に係る線熱源の構造を示す図である。
【図16】本発明の実施例1に係る線熱源の図15に示すXVI−XVI線に沿って切断した断面図である。
【図17】本発明の実施例1に係る線熱源の図16に示すXVII−XVII線に沿って切断した断面図である。
【図18】本発明の実施例1に係るドローン構造カーボンナノチューブフィルムのカーボンナノチューブの配列方向に沿って、前記カーボンナノチューブ複合構造体を切断し、形成された断面の写真である。
【図19】本発明の実施例1に係る線熱源の製造方法において、グルーを注射する方法で、高分子材料とカーボンナノチューブ構造体とを複合し、カーボンナノチューブ複合構造体を形成するフローチャートである。
【図20】加熱素子が柔軟性のカーボンナノチューブ複合構造体である場合の、線熱源の製造方法のフローチャートである。
【図21】本発明の実施例2に係る線熱源の構造を示す図である。
【図22】本発明の実施例3に係る線熱源の構造を示す図である。
【図23】本発明の実施例4に係る線熱源の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0019】
本発明は、線熱源を提供する。該線熱源は、線状の支持体と、反射層と、加熱素子と、保護層と、二つの電極とを含む。
【0020】
前記線状の支持体は、一次元の構造であり、前記加熱素子を支持することに用いられる。該線状の支持体の材料は、例えば、セラミックス、ガラス、樹脂、石英などの硬性材料であってもよく、プラスチック及び柔らかい繊維などの柔らかい材料であってもよい。前記線状の支持体が柔らかい材料からなる場合、前記線熱源は、任意の形状に湾曲することができる。前記線状の支持体は絶縁材料からなることが好ましい。
【0021】
前記反射層は、前記線状の支持体の一つ表面に設置される。前記加熱素子は、前記反射層の、前記支持体と対向する表面と反対の表面に設置される。前記二つの電極は、間隔を置いて前記加熱素子の表面に設置され、それぞれ、前記加熱素子に電気的に接続される。前記保護層は、前記加熱素子の、前記反射層と対向する表面と反対する表面に設置される。前記線熱源の直径が1.1ミリメートル〜1.1センチメートルであることが好ましい。前記二つの電極は、電源(図示せず)に電気的に接続することに用いられる。
【0022】
前記反射層は、前記加熱素子から放出した熱を外部の空間に反射し、加熱効率を高めることに用いられる。該反射層の材料は、例えば、金属酸化物、金属塩及びセラミックスなどの絶縁材料である。前記反射層の厚さが100マイクロメートル〜0.5ミリメートルである。本実施例において、前記反射層は、酸化アルミニウム膜であり、その厚さが100マイクロメートルである。前記反射層は、スパッターの方法で前記線状の支持体の表面に形成される。勿論、前記反射層を設置せず、即ち、前記加熱素子を前記線状の支持体の表面に直接設置することもできる。
【0023】
前記加熱素子は、カーボンナノチューブ複合構造体である。該カーボンナノチューブ複合構造体は、カーボンナノチューブ構造体及び基体を含む。前記カーボンナノチューブ構造体が自立構造を有する。ここで、自立構造とは、支持体材を利用せず、前記カーボンナノチューブ構造体を独立して利用することができるという形態のことである。すなわち、前記カーボンナノチューブ構造体を対向する両側から支持して、前記カーボンナノチューブ構造体の構造を変化させずに、前記カーボンナノチューブ構造体を懸架させることができることを意味する。
【0024】
前記カーボンナノチューブ構造体は、複数のカーボンナノチューブを含み、該複数のカーボンナノチューブが分子間力で接続され、均一に分布されるので、該カーボンナノチューブ構造体が所定の形状を有する。前記カーボンナノチューブ構造体は、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブの一種又は多種である。前記カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブである場合、直径は0.5ナノメートル〜50ナノメートルであり、前記カーボンナノチューブが二層カーボンナノチューブである場合、直径は1.0ナノメートル〜50ナノメートルであり、前記カーボンナノチューブが多層カーボンナノチューブである場合、直径は1.5ナノメートル〜50ナノメートルである。
【0025】
前記カーボンナノチューブ構造体は、膜状構造又は線状構造体である。前記カーボンナノチューブ構造体において、隣接するカーボンナノチューブの間に隙間があるので、前記カーボンナノチューブ構造体に複数の微孔が形成されている。従って、前記基体材料は、前記カーボンナノチューブ構造体における微孔の中に浸漬し、該カーボンナノチューブ構造体と緊密に結合する。前記カーボンナノチューブ構造体の単位面積当たりの熱容量は、
0(0は含まず)〜2×10−4J/cm2・Kであり、好ましくは、1.7×10−6J/センチメートル2・K以下であることが好ましい。具体的には、前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚の、カーボンナノチューブフィルム、カーボンナノチューブ線状構造体、又はカーボンナノチューブフィルム及びカーボンナノチューブ線状構造体の組み合わせを含む。
【0026】
前記カーボンナノチューブ複合構造体は、膜状のカーボンナノチューブ複合構造体又は、少なくとも一つの線状のカーボンナノチューブ複合構造体を含む。前記カーボンナノチューブ複合構造体は、前記線状の支持体の表面に設置される。
【0027】
一つの例として、前記膜状のカーボンナノチューブ複合構造体は、二次元の構造体である。この場合、前記膜状のカーボンナノチューブ複合構造体は、前記線状の支持体の表面に被覆し、又は前記線状の支持体の表面に巻き付くことができる。前記カーボンナノチューブ構造体と前記基体材料とを複合させる方式によって、前記膜状のカーボンナノチューブ複合構造体の具体的な構造は、下記の二種に分類される。
【0028】
第一種では、図1を参照すると、前記膜状のカーボンナノチューブ複合構造体は、前記支持体の表面に被覆され、膜状のカーボンナノチューブ構造体2044及び基体2042を含む。前記膜状のカーボンナノチューブ構造体2044に複数の微孔があるので、前記基体2042の材料は、該膜状のカーボンナノチューブ構造体2044の微孔の中に浸漬できる。前記膜状のカーボンナノチューブ構造体2044が母体として、前記基体2042の材料が添加材料として、母体とする前記膜状のカーボンナノチューブ構造体2044の微孔の中に添加する。前記膜状のカーボンナノチューブ構造体2044が、複数のカーボンナノチューブフィルムを含む場合、該複数のカーボンナノチューブフィルムが積層して設置される。前記膜状のカーボンナノチューブ構造体2044が、一つのカーボンナノチューブ線状構造体を含む場合、該カーボンナノチューブ線状構造体が膜状の自立構造体に形成される。前記膜状のカーボンナノチューブ構造体2044が、複数のカーボンナノチューブ線状構造体を含む場合、該複数のカーボンナノチューブ線状構造体が平行して設置され、交差して設置され、又は相互に編んで、膜状の自立構造体を形成することができる。前記膜状のカーボンナノチューブ構造体2044が、カーボンナノチューブフィルム及びカーボンナノチューブ線状構造体を含む場合、前記カーボンナノチューブ線状構造体が前記カーボンナノチューブフィルムの少なくとも一つの表面に設置される。
【0029】
第二種では、図2を参照すると、前記膜状のカーボンナノチューブ複合構造体は、カーボンナノチューブ構造体2044及び基体2042を含む。前記基体2042は、膜状の構造であり、前記カーボンナノチューブ構造体2044が前記基体2042の中に分布される。さらに、前記カーボンナノチューブ構造体2044は、前記基体2042の中に均一的に分布されることが好ましい。前記基体2042は、前記カーボンナノチューブ構造体2044を完全に被覆することができる。又は、少なくとも、一部の基体2042の材料が前記カーボンナノチューブ構造体2044の中に浸漬する。前記カーボンナノチューブ構造体2044は、平行して、間隔を置いて設置された複数のカーボンナノチューブ線状構造体を含む場合、該カーボンナノチューブ線状構造体は、前記線状の支持体の一端から、もう一つの端部へ延びる。すなわち、前記カーボンナノチューブ線状構造体の長軸は、前記線状の支持体に平行している。
【0030】
もう一つの例として、前記線状のカーボンナノチューブ複合構造体は、一次元の構造体である。この場合、前記線状のカーボンナノチューブ複合構造体は、下記の二種に分類される。
【0031】
第一種では、前記線状のカーボンナノチューブ複合構造体は、カーボンナノチューブ線状構造体及び基体を含む。前記カーボンナノチューブ線状構造体に多くの微孔があるので、前記基体の材料は、該カーボンナノチューブ線状構造体の微孔の中に浸漬する。
【0032】
第二種では、前記線状のカーボンナノチューブ複合構造体は、カーボンナノチューブ線状構造体及び基体を含む。前記カーボンナノチューブ線状構造体は、前記基体の中に複合される。前記加熱素子が、一つの線状のカーボンナノチューブ複合構造体である場合、該線状のカーボンナノチューブ複合構造体は、前記線状の支持体の表面に巻き付いている。前記加熱素子が、複数の線状のカーボンナノチューブ複合構造体である場合、該複数の線状のカーボンナノチューブ複合構造体は、交差して設置され、膜状の構造が編まれ、前記線状の支持体の表面に被覆、巻き付くことができる。
【0033】
前記カーボンナノチューブフィルムは、均一的に分布された複数のカーボンナノチューブを含む。隣接するカーボンナノチューブは、分子間力で結合されている。前記複数のカーボンナノチューブが配向し又は配向せずに配置されている。前記複数のカーボンナノチューブの配列方式により、前記カーボンナノチューブフィルムは非配向型のカーボンナノチューブフィルム及び配向型のカーボンナノチューブフィルムの二種に分類される。本実施例における非配向型のカーボンナノチューブフィルムでは、カーボンナノチューブが異なる方向に沿って配置され、又は絡み合っている。配向型のカーボンナノチューブフィルムでは、前記複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列している。又は、配向型のカーボンナノチューブフィルムにおいて、配向型のカーボンナノチューブフィルムが二つ以上の領域に分割される場合、各々の領域における複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列されている。この場合、異なる領域におけるカーボンナノチューブの配列方向は異なる。
【0034】
前記カーボンナノチューブ構造体は、積層された複数の前記カーボンナノチューブフィルムを含むことができる。該カーボンナノチューブ構造体の厚さが0.5ナノメートル〜1.0ミリメートルであることが好ましい。前記カーボンナノチューブ構造体の熱応答速度は、該カーボンナノチューブ構造体の厚さと関係がある。前記カーボンナノチューブ構造体は、同じ表面積を有する場合、その厚さが厚ければ、熱応答速度が遅くなり、その厚さが薄ければ、熱応答速度が速くなる。前記カーボンナノチューブ構造体の厚さが1.0マイクロメートル〜1.0ミリメートルである場合、該カーボンナノチューブ構造体が1秒間より短い時間で最高温度に達することができる。例えば、前記カーボンナノチューブ構造体は一枚のカーボンナノチューブフィルムである場合、前記カーボンナノチューブ構造体が0.1ミリ秒間より短い時間で最高温度に達することができる。従って、前記線熱源は、加熱対象を速やかに加熱することができる。
【0035】
本発明のカーボンナノチューブフィルムとしては、以下の(一)から(四)のものが挙げられる。
【0036】
(一)ドローン構造カーボンナノチューブフィルム
前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚のドローン構造カーボンナノチューブフィルムを含む。図3を参照すると、単一の前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルム143aは、超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献1を参照)から引き出して得られ、自立構造を有したものである。単一の前記カーボンナノチューブフィルム143aにおいて、前記複数のカーボンナノチューブの大部分は、前記カーボンナノチューブフィルムの表面に平行に、カーボンナノチューブフィルムを引き出す方向に沿って、且つ、同じ方向に沿って配列されている。前記複数のカーボンナノチューブは、分子間力で端と端が接続されている。
【0037】
微視的には、前記カーボンナノチューブフィルム143aにおいて、前記同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブ以外に、該同じ方向に沿っておらずランダムな方向を向いたカーボンナノチューブも存在している。ここで、該ランダムな方向を向いたカーボンナノチューブは、前記同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブと比べて、割合は小さい。
【0038】
さらに、単一の前記カーボンナノチューブフィルム143aは、複数のカーボンナノチューブセグメント143bを含む。図4を参照すると、前記複数のカーボンナノチューブセグメント143bは、長さ方向に沿って分子間力で端と端が接続されている。それぞれのカーボンナノチューブセグメント143bは、相互に平行に、分子間力で結合された複数のカーボンナノチューブ145を含む。単一の前記カーボンナノチューブセグメント143bにおいて、前記複数のカーボンナノチューブ145の長さは実質的に同じである。前記カーボンナノチューブフィルム143aを有機溶剤に浸漬させることにより、前記カーボンナノチューブフィルム143aの強靭性及び機械強度を高めることができる。前記カーボンナノチューブフィルム143aの厚さが10マイクロメートル以下である場合、該カーボンナノチューブフィルム143aの透光率が96%以上程度に達するため、透明熱源に用いられることも可能である。一枚の前記カーボンナノチューブフィルム143aの単位面積当たりの熱容量は、1.7×10−6J/cm2・K以下である。
【0039】
前記カーボンナノチューブ構造体は、積層された複数の前記カーボンナノチューブフィルム143aを含むことができる。この場合、隣接する前記カーボンナノチューブフィルム143aは、分子間力で結合されている。隣接する前記カーボンナノチューブフィルム143aにおけるカーボンナノチューブ145は、それぞれ0°〜90°の角度で交差している。隣接する前記カーボンナノチューブフィルム143aにおけるカーボンナノチューブ145が0°以上の角度で交差する場合、前記カーボンナノチューブ構造体に複数の微孔が形成され、該微孔の直径が10マイクロメートル以下である。又は、前記複数のカーボンナノチューブフィルム143aは、同一平面上に隙間なく並列されることもできる。
【0040】
前記カーボンナノチューブフィルムの製造方法は次のステップを含む。
【0041】
第一ステップでは、カーボンナノチューブアレイを提供する。該カーボンナノチューブアレイは、超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献1を参照)であり、該超配列カーボンナノチューブアレイの製造方法は、化学気相堆積法を採用する。該製造方法は、次のステップを含む。ステップ(a)では、平らな基材を提供し、該基材はP型のシリコン基材、N型のシリコン基材及び酸化層が形成されたシリコン基材のいずれか一種である。本実施例において、4インチのシリコン基材を選択することが好ましい。ステップ(b)では、前記基材の表面に、均一的に触媒層を形成する。該触媒層の材料は鉄、コバルト、ニッケル及びその2種以上の合金のいずれか一種である。ステップ(c)では、前記触媒層が形成された基材を700℃〜900℃の空気で30分〜90分間アニーリングする。ステップ(d)では、アニーリングされた基材を反応炉に置き、保護ガスで500℃〜740℃の温度で加熱した後で、カーボンを含むガスを導入して、5分〜30分間反応を行って、超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献1)を成長させることができる。該カーボンナノチューブアレイの高さは100マイクロメートル以上である。該カーボンナノチューブアレイは、互いに平行し、基材に垂直に生長する複数のカーボンナノチューブからなる。該カーボンナノチューブは、長さが長いため、部分的にカーボンナノチューブが互いに絡み合っている。生長の条件を制御することによって、前記カーボンナノチューブアレイは、例えば、アモルファスカーボン及び残存する触媒である金属粒子などの不純物を含まなくなる。
【0042】
本実施例において、前記カーボンを含むガスとしては、例えば、アセチレン、エチレン、メタンなどの活性な炭化水素が選択され、エチレンを選択することが好ましい。保護ガスは窒素ガスまたは不活性ガスであり、アルゴンガスが好ましい。
【0043】
本実施例により提供されたカーボンナノチューブアレイは、前記の製造方法により製造されることに制限されず、アーク放電法またはレーザー蒸発法で製造してもよい。
【0044】
第二ステップでは、前記カーボンナノチューブアレイから、少なくとも、一枚のカーボンナノチューブフィルムを引き伸ばす。まず、ピンセットなどの工具を利用して複数のカーボンナノチューブの端部を持つ。例えば、一定の幅を有するテープを利用して複数のカーボンナノチューブの端部を持つ。次に、所定の速度で前記複数のカーボンナノチューブを引き出し、複数のカーボンナノチューブ束からなる連続のカーボンナノチューブフィルムを形成する。
【0045】
前記複数のカーボンナノチューブを引き出す工程において、前記複数のカーボンナノチューブがそれぞれ前記基材から脱離すると、分子間力で前記カーボンナノチューブ束が端と端で接合され、連続のカーボンナノチューブフィルムが形成される(図5を参照)。
【0046】
(二)プレシッド構造カーボンナノチューブフィルム
前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚のプレシッド構造カーボンナノチューブフィルム(pressed carbon nanotube film)を含む。図6又は図7を参照すると、前記プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムにおける複数のカーボンナノチューブは、等方的に配列されているか、所定の方向に沿って配列されているか、または、異なる複数の方向に沿って配列されている。前記カーボンナノチューブフィルムは、押し器具を利用することにより、所定の圧力をかけて前記カーボンナノチューブアレイを押し、該カーボンナノチューブアレイを圧力で倒すことにより形成された、シート状の自立構造を有するものである。前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの配列方向は、前記押し器具の形状及び前記カーボンナノチューブアレイを押す方向により決められている。
【0047】
図6を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが配向して配列される。該カーボンナノチューブフィルムは、同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブを含む。ローラー形状を有する押し器具を利用して、同じ方向に沿って前記カーボンナノチューブアレイを同時に押す場合、基本的に同じ方向に配列されたカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブフィルムが形成される。また、ローラー形状を有する押し器具を利用して、異なる方向に沿って、前記カーボンナノチューブアレイを同時に押す場合、前記異なる方向に沿って、選択的な方向に配列されたカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブフィルムが形成される。
【0048】
図7を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが配向せずに配置される。該カーボンナノチューブフィルムは、等方的に配列されている複数のカーボンナノチューブを含む。隣接するカーボンナノチューブが分子間力で相互に引き合い、接続する。該カーボンナノチューブ構造体が平面等方性を有する。該カーボンナノチューブフィルムは、平面を有する押し器具を利用して、カーボンナノチューブアレイが成長された基板に垂直な方向に沿って前記カーボンナノチューブアレイを押すことにより形成される。
【0049】
前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの傾斜の程度は、前記カーボンナノチューブアレイにかけた圧力に関係する。前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブと該カーボンナノチューブフィルムの表面とは、角度αを成し、該角度αは0°以上15°以下である。好ましくは、前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが該カーボンナノチューブフィルムの表面に平行する。前記圧力が大きくなるほど、前記傾斜の程度が大きくなる。前記カーボンナノチューブフィルムの厚さは、前記カーボンナノチューブアレイの高さ及び該カーボンナノチューブアレイにかけた圧力に関係する。即ち、前記カーボンナノチューブアレイの高さが大きくなるほど、また、該カーボンナノチューブアレイにかけた圧力が小さくなるほど、前記カーボンナノチューブフィルムの厚さが大きくなる。これとは逆に、カーボンナノチューブアレイの高さが小さくなるほど、また、該カーボンナノチューブアレイにかけた圧力が大きくなるほど、前記カーボンナノチューブフィルムの厚さが小さくなる。前記カーボンナノチューブフィルムにおける隣接するカーボンナノチューブの間に隙間があるので、該カーボンナノチューブフィルムにおいて、多くの微孔が形成され、該微孔の直径が10マイクロメートル以下である。
【0050】
(三)綿毛構造カーボンナノチューブフィルム
前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚の綿毛構造カーボンナノチューブフィルム(flocculated carbon nanotube film)を含む。図8及び図9を参照すると、単一の前記綿毛構造カーボンナノチューブフィルムにおいて、複数のカーボンナノチューブは、相互に絡み合い、等方的に配列されている。前記カーボンナノチューブ構造体においては、前記複数のカーボンナノチューブが均一に分布されている。複数のカーボンナノチューブは配向せずに配置されている。単一の前記カーボンナノチューブの長さは、10マイクロメートル以上であり、200マイクロメートル〜900マイクロメートルであると好ましい。前記カーボンナノチューブ構造体は、自立構造の薄膜の形状に形成されている。ここで、自立構造とは、支持体材を利用せず、前記カーボンナノチューブ構造体を独立して利用することができるという形態である。前記複数のカーボンナノチューブは、分子間力で接近して、相互に絡み合って、カーボンナノチューブネット状に形成されている。前記複数のカーボンナノチューブは配向せずに配置されて、多くの微小な穴が形成されている。ここで、単一の前記微小な穴の直径が10マイクロメートル以下になる。前記カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブは、相互に絡み合って配置されるので、該カーボンナノチューブ構造体は柔軟性に優れ、任意の形状に湾曲して形成させることができる。用途に応じて、前記カーボンナノチューブ構造体の長さ及び幅を調整することができる。前記カーボンナノチューブ構造体の厚さは、1.0マイクロメートル〜1.0ミリメートルであり、100マイクロメートルであることが好ましい。
【0051】
前記カーボンナノチューブフィルムの製造方法は、下記のステップを含む。
【0052】
第一ステップでは、前記カーボンナノチューブフィルムのもとになるカーボンナノチューブを提供する。
【0053】
ナイフのような工具で前記カーボンナノチューブを前記基材から剥離し、カーボンナノチューブの原料が形成される。前記カーボンナノチューブは、ある程度互いに絡み合っている。前記カーボンナノチューブの原料においては、該カーボンナノチューブの長さは、10マイクロメートル以上であり、200マイクロメートル〜900マイクロメートルであることが好ましい。
【0054】
第二ステップでは、前記カーボンナノチューブの原料を溶剤に浸漬し、該カーボンナノチューブの原料を処理して、綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を形成する。
【0055】
前記カーボンナノチューブ原料を前記溶剤に浸漬した後、超音波式分散、又は高強度攪拌又は振動などの方法により、前記カーボンナノチューブを綿毛構造に形成させる。前記溶剤は水または揮発性有機溶剤である。超音波式分散方法により、カーボンナノチューブを含む溶剤に対して10〜30分間処理する。カーボンナノチューブは大きな比表面積を有し、カーボンナノチューブの間に大きな分子間力が生じるので、前記カーボンナノチューブはそれぞれもつれて、綿毛構造に形成されている。
【0056】
第三ステップでは、前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を含む溶液をろ過して、最終的な綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を取り出す。
【0057】
まず、濾紙が置かれたファネルを提供する。前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を含む溶剤を濾紙が置かれたファネルにつぎ、しばらく放置して、乾燥させると、綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体が分離される。図10を参照すると、前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブが互いに絡み合って、不規則的な綿毛構造となる。
【0058】
分離された前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を容器に置き、前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を所定の形状に展開し、展開された前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体に所定の圧力を加え、前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体に残留した溶剤を焙り、或いは、該溶剤が自然に蒸発すると、図8と図9に示す綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムが形成される。
【0059】
前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体が展開される面積によって、綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムの厚さと面密度を制御できる。即ち、一定の体積を有する前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体は、展開される面積が大きくなるほど、綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムの厚さと面密度が小さくなる。
【0060】
また、微多孔膜とエアーポンプファネル(Air−pumping Funnel)を利用して綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムが形成される。具体的には、微多孔膜とエアーポンプファネルを提供し、前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を含む溶剤を、前記微多孔膜を通して前記エアーポンプファネルにつぎ、該エアーポンプファネルに抽気し、乾燥させると、綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムが形成される。前記微多孔膜は、平滑な表面を有する。該微多孔膜において、単一の微小孔の直径は、0.22マイクロメートルにされている。前記微多孔膜は平滑な表面を有するので、前記カーボンナノチューブフィルムは容易に前記微多孔膜から剥落することができる。さらに、前記エアーポンプを利用することにより、前記綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムに空気圧をかけるので、均一な綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムを形成させることができる。
【0061】
(四)超長構造カーボンナノチューブフィルム
前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚の超長構造カーボンナノチューブフィルム(ultra−long carbon nanotube film)を含む。図11を参照すると、前記超長構造カーボンナノチューブフィルムは、ほぼ同じ長さを有する複数のカーボンナノチューブを含む。単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおいて、前記複数のカーボンナノチューブは、同じ方向に沿って、均一に並列されている。単一の前記カーボンナノチューブフィルムの厚さは、10ナノメートル〜100マイクロメートルである。前記複数のカーボンナノチューブは、それぞれ前記複数のカーボンナノチューブフィルムの表面に平行に配列され、相互に平行に配列されている。隣接する前記カーボンナノチューブは所定の距離で分離して設置される。前記距離は0マイクロメートル〜5マイクロメートルである。前記距離が0マイクロメートルである場合、隣接する前記カーボンナノチューブは分子間力で接続されている。前記カーボンナノチューブフィルムにおける各々の前記カーボンナノチューブの長さは、前記カーボンナノチューブフィルムの長さと基本的に同じである。単一の前記カーボンナノチューブの長さは、1センチメートル以上であり、1センチメートル〜30センチメートルであることが好ましい。さらに、各々の前記カーボンナノチューブには結節がない。本実施形態において、前記カーボンナノチューブフィルムの厚さは10マイクロメートルである。単一の前記カーボンナノチューブの長さは10センチメートルである。
【0062】
前記カーボンナノチューブ構造体は少なくとも一本のカーボンナノチューブ線状構造体を含むことができる。前記カーボンナノチューブ線状構造体は、少なくとも一本のカーボンナノチューブワイヤを含む。一本の前記カーボンナノチューブワイヤの熱容量は、2×10−4J/cm2・K以下であり、0(0は含まず)〜5×10−5J/cm2・Kであることが好ましい。一本の前記カーボンナノチューブワイヤの直径は4.5nm〜1cmであり、1.0μm〜100μmであることが好ましい。
【0063】
図12を参照すると、前記カーボンナノチューブワイヤ(非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ)は、端と端とが接続された複数のカーボンナノチューブセグメント(図示せず)を含む。前記カーボンナノチューブセグメントは、同じ長さ及び幅を有する。さらに、各々の前記カーボンナノチューブセグメントに、同じ長さの複数のカーボンナノチューブが平行に配列されている。前記複数のカーボンナノチューブはカーボンナノチューブワイヤの中心軸に平行に配列されている。この場合、一本の前記カーボンナノチューブワイヤの直径は、1μm〜1cmである。
【0064】
図13を参照すると、前記カーボンナノチューブワイヤをねじり、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤを形成することができる。ここで、前記複数のカーボンナノチューブは前記カーボンナノチューブワイヤの中心軸を軸に、螺旋状に配列されている。この場合、一本の前記カーボンナノチューブワイヤの直径は、1μm〜1cmである。前記カーボンナノチューブ線状構造体は、前記非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ又はそれらの組み合わせのいずれか一種からなる。
【0065】
前記カーボンナノチューブワイヤを形成する方法は、カーボンナノチューブアレイから引き出してなるカーボンナノチューブフィルムを利用する。前記カーボンナノチューブワイヤを形成する方法は、次の三種がある。第一種では、前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの長手方向に沿って、前記カーボンナノチューブフィルムを所定の幅で切断し、カーボンナノチューブワイヤを形成する。第二種では、前記カーボンナノチューブフィルムを有機溶剤に浸漬させて、前記カーボンナノチューブフィルムを収縮させてカーボンナノチューブワイヤを形成することができる。第三種では、前記カーボンナノチューブフィルムを機械加工(例えば、紡糸工程)してねじれたカーボンナノチューブワイヤを形成する。詳しく説明すれば、まず、前記カーボンナノチューブフィルムを紡糸装置に固定させる。次に、前記紡糸装置を動作させて前記カーボンナノチューブフィルムを回転させ、ねじれたカーボンナノチューブワイヤを形成する。
【0066】
前記カーボンナノチューブ線状構造体が二本以上のカーボンナノチューブワイヤを含む場合、各々のカーボンナノチューブワイヤが平行に配列され、非ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造体を形成する。或いは、各々のカーボンナノチューブワイヤが、螺旋状に配列され、ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造体を形成する。即ち、前記非ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造体におけるカーボンナノチューブワイヤは、前記カーボンナノチューブ線状構造体の長手方向に沿って、配列される。前記ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造体におけるカーボンナノチューブワイヤは、前記線状構造体の軸向に沿って、螺旋状に配列される。
【0067】
前記非ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造体におけるカーボンナノチューブワイヤは、非ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤ又はねじれ状のカーボンナノチューブワイヤである。前記ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造体におけるカーボンナノチューブワイヤは、非ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤ又はねじれ状のカーボンナノチューブワイヤである。
【0068】
前記カーボンナノチューブ線状構造体の直径は、0.5ナノメートル〜2ミリメートルである。単一の前記カーボンナノチューブワイヤの直径が大きく、前記カーボンナノチューブワイヤの数量が多いほど、前記カーボンナノチューブ線状構造体の直径が大きくなる。この逆に、単一の前記カーボンナノチューブワイヤの直径が小さく、前記カーボンナノチューブワイヤの数量が少ないほど、前記カーボンナノチューブ線状構造体の直径が小さくなる。
【0069】
前記カーボンナノチューブワイヤにおけるカーボンナノチューブが配向して配列されるので、該カーボンナノチューブワイヤからなるカーボンナノチューブ線状構造体におけるカーボンナノチューブが配向して配列される。
【0070】
また、前記ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤを揮発性有機溶剤で処理してもよい。前記揮発性有機溶剤の表面力の作用で前記ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤにおける隣接するカーボンナノチューブが分子間力で緊密に接続されるので、該ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤは、直径及び比表面積が小さくなり、大きな密度、優れた機械強度及び優れた強靭性を有する。
【0071】
前記カーボンナノチューブ構造体が、一つの前記カーボンナノチューブ線状構造体を含む場合、該カーボンナノチューブ線状構造体におけるカーボンナノチューブの両端は、それぞれ、前記電極に電気的に接続される。前記カーボンナノチューブ構造体が、複数のカーボンナノチューブ線状構造体を含む場合、該複数のカーボンナノチューブ線状構造体が平行に配列され、又は交叉して配列される。前記交叉して配列されたカーボンナノチューブ線状構造体の交叉する角度は、制限されない。前記各々のカーボンナノチューブ線状構造体を設置する方式が制限されず、均一な加熱素子を形成することができることを確保してもよい。
【0072】
前記基体の材料は、高分子材料及び無機非金属材料などの一種又は数種である。前記線熱源の加熱素子を製造する過程において、前記基体の材料又は該基体の材料に形成された前駆体は、前記カーボンナノチューブ構造体の隙間又は微孔の中に浸透し、該カーボンナノチューブ構造体と緊密に接合することができる。前記基体の材料は固化された後、複合構造を形成するように、所定の温度で液体又は気体でなければならない。また、前記線熱源が作動して生じた熱で、前記線熱源を破壊し、又は変形させないために、前記基体は耐熱性材料からなることが必要である。
【0073】
具体的には、前記高分子材料は、熱可塑性ポリマー及び熱硬化性ポリマーの一種又は数種である。例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、繊維素、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどの一種又は数種である。前記無機非金属材料は、ガラス、セラミックス、半導体材料の一種又は数種である。本実施例において、前記基体の材料は、エポキシ樹脂である。また、前記基体の材料は、柔軟性の高分子材料であってもよい。例えば、シリコンゴム、ポリウレタン、ポリメタクリル酸メチル樹脂の一種又は数種である。
【0074】
前記基体材料は、前記カーボンナノチューブ構造体の微孔の中だけに添加してもよく、前記カーボンナノチューブ構造体を完全に被覆してもよい。前記加熱素子が、複数のカーボンナノチューブ構造体を含む場合、該カーボンナノチューブ構造体が隙間を置いて、或いは、互いに接触して前記基体の材料の中に設置される。前記加熱素子に異なる位置に異なる加熱温度を有させるように、実際の応用に応じて、前記カーボンナノチューブフィルム又はカーボンナノチューブワイヤを前記基体材料における所定の位置に設置することができる。
【0075】
前記基体の材料は、前記カーボンナノチューブ構造体の微孔の中に浸漬するので、該カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブを固定することができる。従って、前記線熱源が使用される過程において、前記カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブが外力で脱離することができない。前記基体の材料で、前記カーボンナノチューブ構造体を被覆させる場合、更に該カーボンナノチューブ構造体を保護でき、該加熱素子と外部とを絶縁させる。また、前記基体材料により、熱を均一的に伝送することができる。前記カーボンナノチューブ構造体が急速に昇温する場合、該基体材料により、前記加熱素子を徐々に昇温させることができる。さらに、前記基体材料は、前記カーボンナノチューブ複合構造体の柔軟性及び強靭性を増加することができる。
【0076】
前記基体材料と前記自立構造体を有するカーボンナノチューブ構造体とを直接複合して製造する加熱素子において、前記カーボンナノチューブは均一的に分布し、その含有量が1%〜99%であるので、前記加熱素子を利用した熱源の放熱温度を高めることができる。前記加熱素子におけるカーボンナノチューブが、均一的に分布し、導電通路を形成することができ、従来技術におけるカーボンナノチューブが、溶液に分散された濃度に制限されることと比べて、該カーボンナノチューブは、前記加熱素子における含有量が99%に達することができる。
【0077】
前記二つの電極は、前記加熱素子に電気的に接続しなければならない。前記二つの電極は導電材料からなり、前記加熱素子の同じ表面、又はそれぞれ記加熱素子の対向する両表面に設置される。前記カーボンナノチューブ構造体の接着性又は導電接着剤を利用して、前記二つの電極を前記加熱素子の、前記反射層と対向する表面に設置することができる。導電接着剤を利用する場合、前記二つの電極と前記カーボンナノチューブ構造体とを電気的に接続させるのと同時に、前記二つの電極を前記カーボンナノチューブ構造体の表面によく固定させることができる。本実施例において、前記導電接着剤は、銀ペーストである。前記二つの電極によって、前記加熱素子に電圧を印加することができる。前記加熱素子が作動する場合、前記二つの電極の間の短路を防止し、該二つの電極の間に所定の抵抗を接続するために、該二つの電極は、所定の距離を置いて設置しなければならない。
【0078】
前記加熱素子の基体材料が、前記カーボンナノチューブ構造体の微孔にしか添加されない場合、前記カーボンナノチューブ構造体における一部のカーボンナノチューブが前記カーボンナノチューブ複合構造体の表面に露出するので、前記電極は、前記加熱素子の表面に設置して、前記カーボンナノチューブ構造体と電気的に接続できる。前記加熱素子の基体材料は、前記カーボンナノチューブ構造体に被覆される場合、前記電極と前記カーボンナノチューブ構造体とに電気的に接続させるために、該電極を前記カーボンナノチューブ複合構造体の中に設置し、前記カーボンナノチューブ構造体に直接に接続させる。前記電極を外部電源に電気的に接続させるために、該電極の一部は、前記カーボンナノチューブ複合構造体の外部に露出し、或いは、二つのリード線により、それぞれ前記二つの電極を、前記カーボンナノチューブ複合構造体の外部に引き出す。
【0079】
前記カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブの配列方向が同じである場合、前記カーボンナノチューブは一つの電極から、もう一つの電極へ延伸するように配列されている。例えば、前記カーボンナノチューブ構造体が、ドローン構造カーボンナノチューブフィルムを含む場合、前記二つの電極を、それぞれ前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの長軸方向に垂直して配置させる。
【0080】
前記電極は、導電フィルム、金属シート又は金属リード線である。前記導電フィルムの材料は、金属、合金、酸化インジウムスズ(ITO)フィルム、酸化アンチモンスズ(ATO)、銀ペースト、導電重合体又はカーボンナノチューブ構造体などである。前記金属は、アルミニウム、銅、タングステン、モリブデン、金、チタン、ネオジム、パラジウム又はセシウムなどである。前記合金は、前記金属の合金である。前記電極がカーボンナノチューブ構造体からなる場合、該カーボンナノチューブ構造体は、ドローン構造カーボンナノチューブフィルム、超長構造カーボンナノチューブフィルム、非ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造体、ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造体を含む。該カーボンナノチューブフィルム又はカーボンナノチューブ線状構造体は、金属性を有するカーボンナノチューブを含むことが必要である。この場合、該カーボンナノチューブ構造体が自体の接着性又は導電接着剤によって、前記反射層又は前記線状支持体202の表面に固定する。前記金属シート又は金属リード線の材料は、銅又はアルミニウムなどである。前記電極が金属シートである場合、該金属シートを、導電接着剤で前記加熱素子の表面に固定することができる。
【0081】
前記二つの電極が前記カーボンナノチューブ構造体である場合、該カーボンナノチューブ構造体が接着性を有するので、前記二つの電極は、直接前記反射層の表面を被覆し、又は巻き付くことができる。或いは、前記二つの電極は、導電接着剤で前記反射層の表面に接着させてもよい。該二つの電極を前記加熱素子に電気的に接続させると同時に、該加熱素子の表面によく固定させる。
【0082】
前記保護層の材料は、例えば、プラスチック、ゴム及び樹脂などの絶縁材料である。前記保護層の厚さは、0.5ミリメートル〜2ミリメートルであることが好ましい。前記保護層を前記加熱素子の、前記反射層と対向する表面と反対する表面に被覆させることにより、前記線熱源を絶縁状態で使用でき、ほこりが前記加熱素子に付着することを防止できる。勿論、前記保護層を設置しなくてもよい。
【0083】
前記線熱源の二つの電極をそれぞれ電源(図示せず)に電気的に接続させ、前記二つの電極により前記加熱素子に電圧を印加した場合、該線熱源における加熱素子のカーボンナノチューブ複合構造体は、所定の波長を有する電磁波を放出することができる。加熱対象が、前記線熱源に直接接触し、又は、前記線熱源と所定の距離を置いて設置されてもよい。前記カーボンナノチューブ構造体から放出された電磁波が生じた熱により、前記加熱対象を加熱することができる。前記加熱素子の寸法及び該加熱素子に印加された電圧を制御することにより、前記加熱素子から放出される熱を制御することができる。前記電圧が一定である場合、前記加熱素子の厚さを変化させることにより、前記加熱素子から放出された電磁波の波長を調整することができる。即ち、前記加熱素子が厚くなるほど、前記加熱素子から放出された電磁波の波長は短くなる。前記加熱素子の厚さが一定である場合、前記加熱素子に印加された電圧が大きくなるほど、前記加熱素子から放出された電磁波の波長は短くなる。従って、前記線熱源は簡単に制御することができる。
【0084】
前記線熱源が応用された場合、前記基体材料の耐熱程度に応じて、前記二つの電極に印加された電圧を制御し、前記カーボンナノチューブ複合構造体の放熱温度を前記基体材料の耐熱温度範囲に制限させることができる。例えば、前記基体材料が高分子ポリマーである場合、前記加熱素子に10V以下の電圧を印加しなければならない。この時、該線熱源の温度が120℃以下になる。前記基体材料がセラミックスである場合、前記加熱素子に10V〜30Vの電圧を印加しなければならない。この時、該線熱源の温度が120℃〜500℃である。前記加熱素子は、熱輻射が安定し、熱放出の効率が高く、放出する熱量が大きいという優れた点がある。
【0085】
前記線熱源のカーボンナノチューブ複合構造体における基体材料は、柔軟性のポリマーであり、前記線状支持体202も柔軟性の材料で製造された場合、該線熱源は、柔軟性の線熱源である。前記線熱源が使用される時、加熱対象を前記線熱源に直接接触してもよく、又は加熱対象を前記線熱源と所定の距離を置いて設置してもよい。
【0086】
図14を参照すると、前記線熱源の製造方法について説明する。
【0087】
第一ステップでは、カーボンナノチューブ構造体及び線状の支持体を提供する。
【0088】
前記カーボンナノチューブ構造体の構造及びその製造方法については、上述の内容を参照する。
【0089】
前記線状の支持体は、一次元の構造であり、前記加熱素子を支持することに用いられる。該線状の支持体の材料は、例えば、セラミックス、ガラス、樹脂、石英などの硬性材料であってもよく、プラスチック及び柔らかい繊維などの柔らかい材料であってもよい。前記線状の支持体が柔らかい材料からなる場合、前記線熱源は、任意の形状に湾曲することができる。前記線状の支持体は絶縁材料からなるとが好ましい。
【0090】
第二ステップでは、前記カーボンナノチューブ構造体を前記線状の支持体の表面に設置する。
【0091】
前記カーボンナノチューブ構造体が接着性を有するので、該カーボンナノチューブ構造体を前記線状の支持体の表面に直接に被覆し、又は巻き付いてもよく、前記カーボンナノチューブ構造体が自体の接着性を利用して、前記線状の支持体の表面に固定される。或いは、シリカゲルなどの接着剤を利用して、前記カーボンナノチューブ構造体を前記線状の支持体の表面に固定する。
【0092】
前記カーボンナノチューブ構造体を前記線状の支持体の表面に設置する前に、塗布又はコーティングなどの方法で該線状の支持体の表面に反射層210を形成する。該反射層の材料は、例えば、金属酸化物、金属塩及びセラミックスなどの絶縁材料である。本実施例において、前記反射層は、酸化アルミニウム膜であり、その厚さが100マイクロメートルである。前記反射層は、前記カーボンナノチューブ構造体から放出された熱を反射し、熱を外界の空間に放出させる。
【0093】
勿論、前記反射層を設置せず、前記加熱素子を前記線状の支持体の表面に直接設置することもできる。
【0094】
第三ステップでは、二つの電極を、間隔を置いて設置し、該二つの電極にカーボンナノチューブ構造体と電気的に接続させる。
【0095】
前記二つの電極は、導電材料からなり、前記カーボンナノチューブ構造体の同じ表面、又はそれぞれ前記カーボンナノチューブ構造体の対向する両表面に設置される。前記二つの電極は、前記カーボンナノチューブ構造体の接着性又は導電接着剤を利用して、前記加熱素子の表面に設置することができる。前記導電接着剤は、前記二つの電極と前記カーボンナノチューブ構造体とが電気的に接続するのと同時に、前記二つの電極を前記カーボンナノチューブ構造体の表面によく固定することができる。前記二つの電極によって、前記加熱素子に電圧を印加することができる。前記加熱素子が加熱される際に、短路を防止するように、所定の抵抗を接続するために、前記二つの電極は、所定の距離を置いて設置しなければならない。
【0096】
前記電極は、導電フィルム、金属シート又は金属リード線である。前記導電フィルムの材料は、金属、合金、酸化インジウムスズ(ITO)フィルム、酸化アンチモンスズ(ATO)、銀ペースト、導電重合体又はカーボンナノチューブ構造体などである。前記導電フィルムは、物理気相堆積法、化学気相堆積法又は他の方法で前記カーボンナノチューブ構造体の表面に形成する。前記金属シート又は金属リード線の材料は、銅又はアルミニウムなどである。該金属シート又は金属リード線は、導電接着剤で前記カーボンナノチューブ構造体の表面に固定することができる。
【0097】
前記電極は、金属性のカーボンナノチューブ構造体であってもよい。該カーボンナノチューブ構造体は、図3、図11、図12又は図13の示すような構造である。
【0098】
勿論、前記カーボンナノチューブ構造体の表面に平行して間隔を置いて設置される二つの電極を形成し、該電極が前記カーボンナノチューブ構造体に電気的に接続する。次に、前記電極が形成されたカーボンナノチューブ構造体を前記線状の支持体の表面に設置する。電極を形成した後、該電極から外部電源に引き出す二つの金属リード線を形成することができる。
【0099】
第四ステップでは、基体材料の予製体を提供し、該基体材料の予製体と前記カーボンナノチューブ構造体とを複合し、カーボンナノチューブ複合構造体を形成する。
【0100】
前記基体材料の予製体は、基体材料からなる溶液、該基体材料を製造する前駆反応物である。該基体材料の予製体は、所定の温度で液体又は気体である。前記基体材料と前記カーボンナノチューブ構造体とが複合する方法は、塗布、堆積、印刷及び浸漬などの一種である。
【0101】
前記基体の材料は、高分子材料及び非金属材料などの一種又は数種である。具体的には、前記高分子材料が熱可塑性ポリマー及び熱硬化性ポリマーの一種又は数種であるので、前記基体材料の予製体は、熱可塑性ポリマー及び熱硬化性ポリマーに形成するポリマー単体の溶液である。或いは、前記熱可塑性ポリマー又は熱硬化性ポリマーが揮発性の有機溶剤に溶解し、形成された混合溶液である。前記非金属材料が、ガラス、セラミックス又は半導体材料などであるので、前記基体材料の予製体は、非金属材料粒子で製造されたペースト、非金属材料を製造する反応気体、気体状態の非金属材料である。具体的には、真空蒸着、スパッター、化学気相堆積法、物理気相堆積法などの方法で気体の基体材料の予製体を形成し、該基体材料の予製体を前記カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブの表面に堆積させる。また、多くの非金属材料粒子を溶剤に分散し、ペーストを形成し、前記基体の材料の予製体とする。
【0102】
前記基体の材料の予製体が液体である場合、該液体の基体の材料の予製体が前記カーボンナノチューブ構造体に浸漬し、該基体の材料の予製体を固化することによって、前記基体の材料を前記カーボンナノチューブ構造体の微孔の中に浸透し、カーボンナノチューブ複合構造体を形成する。前記基体の材料の予製体がペーストである場合、塗布、吹き付け塗装などの方法によって、前記カーボンナノチューブ構造体と複合構造を形成する。
【0103】
前記第三ステップにおいて、電極を形成するステップを、前記第四ステップにおける前記カーボンナノチューブ複合構造体を形成した後に、行なってもよい。前記基体材料が前記カーボンナノチューブ構造体の微孔の中だけに添加する場合、即ち、前記カーボンナノチューブの一部が前記カーボンナノチューブ複合構造体の表面に露出する場合、前記第三ステップと同じ方法で前記二つの電極に前記カーボンナノチューブ構造体と電気的に接続させることができる。前記基体材料が前記カーボンナノチューブ構造体の表面を被覆する場合、前記カーボンナノチューブに前記カーボンナノチューブ複合構造体の表面に露出させるように、切断する方法で前記カーボンナノチューブ複合構造体を切る。その後、前記第三ステップと同じ方法で前記二つの電極に前記露出したカーボンナノチューブ構造体と電気的に接続させることができる。
【0104】
前記保護層の材料は、例えば、プラスチック、ゴム及び樹脂などの絶縁材料である。前記保護層の厚さが制限されず、実際の応用に応じて選択することができる。前記保護層は、接着剤又は機械固定の方法で前記加熱素子の表面に固定する。また、前記保護層の材料が熱可塑性ポリマーである場合、該熱可塑性ポリマーを高温で前記加熱素子の表面に塗布又は被覆し、低温で固化し、前記保護層を形成するようになる。前記保護層の材料が例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの柔軟性のポリマーである場合、熱プレスの方法で前記保護層と前記加熱素子とを結合させる。
【0105】
(実施例1)
図15〜図17を参照すると、本発明実施例1は、線熱源20を提供する。該線熱源20は、線状の支持体202と、反射層210と、加熱素子204と、保護層208と、二つの電極206とを含む。
【0106】
前記反射層210は、前記線状の支持体202の一つ表面に設置される。前記加熱素子204は、前記反射層210の、前記支持体202と対向する表面と反対する表面に設置される。前記二つの電極206は、間隔を置いて前記加熱素子204の表面に設置され、それぞれ、前記加熱素子204に電気的に接続される。前記保護層208は、前記加熱素子204の、前記反射層201と対向する表面と反対する表面に設置される。前記線熱源20の直径が1.1ミリメートル〜1.1センチメートルであることが好ましい。前記二つの電極206は、電源に電気的に接続することに用いられる。
【0107】
前記線状の支持体202は、前記線状の支持体202は、セラミックスの円柱体であり、その直径が1ミリメートルである。
【0108】
前記反射層210は、酸化アルミニウム膜であり、その厚さが100マイクロメートルである。前記反射層210は、スパッターの方法で前記線状の支持体202の表面に形成される。
【0109】
前記加熱素子204におけるカーボンナノチューブ構造体、積層された百枚のドローン構造カーボンナノチューブフィルムであり、基体材料は、エポキシ樹脂である。前記エポキシ樹脂は、前記カーボンナノチューブ構造体の複数の微孔の中に浸透する。前記加熱素子204において、隣接するカーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの配列方向が垂直する。一部のカーボンナノチューブは、前記第一電極12から前記第二電極14へ延伸する方向に沿って配列される。前記加熱素子204は、面積が9平方センチメートルであり、長さが3センチメートルであり、幅が3センチメートルである。前記加熱素子204は、前記反射層210及び前記二つの電極206を被覆し、該二つの電極206に電気的に接続される。該二つの電極206は、ドローン構造カーボンナノチューブフィルムからなる。該二つのカーボンナノチューブフィルムはそれぞれ、前記線状支持体202の長手方向に沿う両端に設置し、前記加熱素子204の内表面に巻き付け、導電接着剤で前記加熱素子204と電気的に接続する。該導電接着剤が銀ペーストであることが好ましい。本実施例における加熱素子204はカーボンナノチューブ構造体からなるので、前記電極206と前記加熱素子204との間が小さいオーミック接触抵抗を有し、前記線熱源20が電気エネルギーを利用する比例を高めることができる。
【0110】
前記保護層208はゴムからなり、その厚さが0.5ミリメートルである。
【0111】
図18は、ドローン構造カーボンナノチューブフィルムを含む前記カーボンナノチューブ複合構造体におけるカーボンナノチューブの長軸方向に垂直な方向沿って、前記カーボンナノチューブ複合構造体を切断し、形成された断面の写真である。図18を参照すると、前記カーボンナノチューブとエポキシ樹脂とが複合した後、前記カーボンナノチューブが前記エポキシ樹脂において、基本的に同じ方向に沿って配列する状態を保持することができることが分かる。
【0112】
図15〜図17を参照して、前記線熱源20の製造方法について説明する。
【0113】
第一ステップでは、カーボンナノチューブ構造体及び線状の支持体202を提供する。
【0114】
前記カーボンナノチューブ構造体の構造及びその製造方法については、上述の内容を参照する。
【0115】
前記線状の支持体202は、前記加熱素子204を支持することに用いられる。該線状の支持体202セラミックスの円柱体であり、その直径が1センチメートルである。
【0116】
第二ステップでは、前記カーボンナノチューブ構造体を前記線状の支持体202の表面に設置する。
【0117】
前記カーボンナノチューブ構造体は、積層された百枚の前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルムを含む。隣接するカーボンナノチューブフィルムは分子間力で緊密に接続される。
【0118】
前記カーボンナノチューブ構造体を前記線状の支持体202の表面に設置する前に、塗布又はコーティングなどの方法で該線状の支持体202の表面に反射層210を形成する。該反射層210の材料は、酸化アルミニウム膜であり、その厚さが100マイクロメートルである。前記反射層210は、前記カーボンナノチューブ構造体から放出された熱を反射し、熱を外界の空間に放出させる。その後、シリカゲルなどの接着剤を利用して、前記カーボンナノチューブ構造体を、前記反射層210の前記線状の支持体202と対向する表面とは反対側の表面に固定する。
【0119】
勿論、前記反射層210を設置せず、前記加熱素子204を前記線状の支持体202の表面に直接設置することもできる。
【0120】
第三ステップでは、二つの電極206を、間隔を置いて設置し、該二つの電極206にカーボンナノチューブ構造体と電気的に接続させる。
【0121】
本実施例において、スパッターの方法で前記カーボンナノチューブ構造体の表面に電極206とする二つのパラジウムフィルムを堆積した後、該二つのパラジウムフィルムをそれぞれ、金属リード線に電気的に接続する。
【0122】
勿論、本実施例において、まず、前記カーボンナノチューブ構造体の表面に平行して間隔を置いて設置される二つの電極206を形成し、該電極206が前記カーボンナノチューブ構造体に電気的に接続する。次に、前記電極206が形成されたカーボンナノチューブ構造体を前記線状の支持体202の表面に設置する。電極206を形成した後、該電極206から外部電源に引き出す二つの金属リード線を形成することができる。
【0123】
第四ステップでは、基体材料の予製体を提供し、該基体材料の予製体と前記カーボンナノチューブ構造体とを複合し、カーボンナノチューブ複合構造体を形成する。
【0124】
本実施例において、グルーを注射する方法で、高分子材料とカーボンナノチューブ構造体とを複合し、カーボンナノチューブ複合構造体を形成する。図19を参照すると、該方法は、下記の工程を含む。
【0125】
第一サブステップでは、液体の熱硬化性の高分子材料を提供する。該液体の熱硬化性の高分子材料の粘度が5パスカル・秒以下であり、室温で前記粘度が30分時間以上を保持することができる。前記熱硬化性の高分子材料は、高分子材料及び、固化剤、改質剤、填料又は稀釈剤などの添加物を含む。
【0126】
前記高分子材料が前記熱硬化性の高分子材料における質量パーセンテージの含有量は、70%〜95%である。前記添加物が前記熱硬化性の高分子材料における質量パーセンテージの含有量は、5%〜30%である。前記高分子材料は、フェノール樹脂(Phenolic resin)、エポキシ樹脂(Epoxy resin)、ビスマレイミド樹脂(Bismaleimide)ポリベンゾオキサジン樹脂(Polybenzoxazines resin)樹脂、シアネート エステル樹脂(Cyanate seter resin)、ポリイミド樹脂、(Polyimide resin)、ポリウレタン(Polyurethane)、ポリメタクリル酸メチル樹脂 (PMMA) などの一種又は数種である。
【0127】
前記固化剤は、前記熱硬化性の高分子材料の固化を加速することに用いられ、脂肪族アミン(Aliphatic amine)、脂環式アミン(Alicyclic amine)、芳香族アミン(Aromatic amine)、ポリアミド(Polyamide)、酸無水物(Acid anhydride)、第三級アミン(Tertiary amines)、樹脂などの一種又は数種である。
【0128】
前記改質剤は、前記熱硬化性の高分子材料の柔軟性、抗せん断性、抗折性、絶縁性などを高めることができる。前記改質剤は、多硫化ゴム(Polysulfide rubber)、ポリアミド樹脂(Polyamide resin)などの一種又は数種である。
【0129】
前記添加物は、前記熱硬化性の高分子材料が固化された時の放熱条件を改善することに用いられ、該熱硬化性の高分子材料の用量を減少し、コストを減少することもできる。前記添加物は、石綿繊維、ガラス繊維、石英の粉末、酸化アルミニウム、シリカゲルの粉などの一種又は数種である。
【0130】
前記稀釈剤は、ジグリシジルエーテル(Diglycidyl ether)、ポリグリシジルエーテル(Polyglycidyl ether)、アリルフェノール(Allylphenol)などの一種又は数種である。
【0131】
本実施例は、エポキシ樹脂で液体の熱硬化性の高分子材料を製造することが好ましい。具体的には、下記のステップを含む。
【0132】
まず、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂及びグリシド酸エステル型エポキシ樹脂の混合物を容器に置き、該混合物を30℃〜60℃に加熱し、且つ該混合物を均一的に混合させるように、該混合物を10分間に撹拌する。
【0133】
次に、脂肪族アミン及びジグリシジルエーテルを前記混合物に添加し、化学反応を行なって、反応産物を形成する。
【0134】
最後に、前記反応産物を30℃〜60℃に加熱し、エポキシ樹脂を含む液体の熱硬化性の高分子材料を形成する。
【0135】
第二サブステップでは、前記液体の熱硬化性の高分子材料で前記カーボンナノチューブ構造体を浸漬する。
【0136】
前記液体の熱硬化性の高分子材料で前記カーボンナノチューブ構造体を浸漬する方法は、下記のステップを含む。
【0137】
まず、前記カーボンナノチューブ構造体が設置された線状支持体202を金型の中に置く。
【0138】
次に、前記カーボンナノチューブ構造体を浸漬するために、前記液体熱硬化性の高分子材料を前記金型の中に注射する。前記液体の熱硬化性の高分子材料が前記カーボンナノチューブ構造体を十分に浸漬するために、該カーボンナノチューブ構造体を浸漬する時間は、10分間以上である。
【0139】
本実施例において、積層された百枚のカーボンナノチューブフィルムをセラミックスの線状支持体202の表面に被覆した後、該線状支持体202を金型の中に置く。液体のエポキシ樹脂を前記金型の中に注射し、前記カーボンナノチューブ構造体を20分間以上浸漬する。
【0140】
前記液体の熱硬化性の高分子材料が前記カーボンナノチューブ構造体を浸漬する方法は、前記注射する方法に限らず、該液体の熱硬化性の高分子材料が毛細管現象により、前記カーボンナノチューブ構造体に吸入され、該カーボンナノチューブ構造体を浸漬させ、或いは、前記カーボンナノチューブ構造体を前記液体の熱硬化性の高分子材料の中に浸漬することができる。
【0141】
第三サブステップでは、前記液体の熱硬化性の高分子材料を固化させ、カーボンナノチューブ高分子材料複合構造体を形成する。
【0142】
本実施例において、エポキシ樹脂を含む熱硬化性の高分子材料を固化させる方法は、下記の工程を含む。
【0143】
まず、加熱装置により、前記金型を50℃〜70℃に加熱して、該温度の下で、前記エポキシ樹脂を含む熱硬化性の高分子材料が液体である。前記熱硬化性の高分子材料が固化される程度を増加するように、前記温度を1時間〜3時間保持し、前記熱硬化性の高分子材料に熱を吸収し続けさせる。
【0144】
次に、前記熱硬化性の高分子材料が固化される程度を増加するように、前記金型を80℃〜100℃に加熱し続けて、該温度の下で1時間〜3時間保持する。
【0145】
その後で、前記熱硬化性の高分子材料が固化される程度を増加するように、前記金型を110℃〜150℃に加熱し続けて、該温度の下で2時間〜20時間保持する。
【0146】
最後、加熱することを止めて、前記金型が室温に下げた後で、離型してカーボンナノチューブ高分子材料複合構造体を形成する。
【0147】
前記加熱方法において、前記金型を直接に110℃〜150℃に加熱することにより、前記熱硬化性の高分子材料を固化することもできる。
【0148】
第五ステップでは、前記加熱素子204の表面に保護層208を形成し、該加熱素子204を被覆するようになる。
【0149】
前記保護層208の材料は、ゴムを採用し、ゴムの厚さが0.5ミリメートルである。前記保護層208は、接着剤又は機械固定の方法で前記加熱素子204の表面に固定する。
【0150】
図20を参照すると、前記実施例1における加熱素子204が柔軟性のカーボンナノチューブ複合構造体である場合、前記線熱源20は、下記の方法により、製造することができる。
【0151】
第一ステップでは、カーボンナノチューブ構造体を提供する。
【0152】
第二ステップでは、柔軟性の基体材料の予製体を提供し、該柔軟性の基体材料の予製体および前記カーボンナノチューブ構造体を複合し、柔軟性のカーボンナノチューブ複合構造体を形成する。
【0153】
第三ステップでは、線状支持体202を提供し、前記柔軟性のカーボンナノチューブ複合構造体を前記線状支持体202の表面に設置する。
【0154】
第四ステップでは、間隔を置いて二つの電極206を設置し、該二つの電極206にそれぞれ前記柔軟性のカーボンナノチューブ複合構造体におけるカーボンナノチューブ構造体に電気的に接続させる。
【0155】
勿論、前記カーボンナノチューブ構造体に電気的に接続するように、間隔を置いて二つの電極206を形成した後、該カーボンナノチューブ構造体及び前記柔軟性の基体材料の予製体を複合し、カーボンナノチューブ複合構造体が形成してもよい。
【0156】
(実施例2)
図21を参照すると、本発明の実施例2による線熱源が提供される。該線熱源30は、加熱素子304、該加熱素子304に間隔を置いて設置され、該加熱素子304に電気的に接続する二つの電極306を含む。前記加熱素子304は、線状のカーボンナノチューブ複合構造体を含む。該線状のカーボンナノチューブ複合構造体は、前記線状のカーボンナノチューブ複合構造体と同じである。前記線状のカーボンナノチューブ複合構造体は、少なくとも、一つのカーボンナノチューブ線状構造体及び基体材料を含み、該基体材料が前記カーボンナノチューブ線状構造体の微孔の中に浸漬される。前記線状のカーボンナノチューブ複合構造体は、基体及び該基体の中に複合された少なくとも一つのカーボンナノチューブ線状構造体を含む。
【0157】
前記カーボンナノチューブ線状構造体を前記金型の中に置って前記液体の熱硬化性の高分子材料を前記金型の中に注射して、該カーボンナノチューブ線状構造体を浸漬した後、加熱することにより、液体の熱硬化性の高分子材料を固化し、線状のカーボンナノチューブ複合構造体を形成するようになることは理解されたい。前記カーボンナノチューブ線状構造体及び基体材料は、実施例1におけるカーボンナノチューブ線状構造体及び基体材料と同じである。前記カーボンナノチューブ線状構造体が自立構造を有するので、前記線状のカーボンナノチューブ複合構造体も自立構造を有する。前記電極306は、前記線状のカーボンナノチューブ複合構造体の表面に設置し、カーボンナノチューブ線状構造体に電気的に接続する。前記電極306の材料は、前記実施例1における電極206の材料と同じである。
【0158】
(実施例3)
図22を参照すると、本発明の実施例3に係る線熱源40が提供される。該線熱源40は、線状の支持体402、該線状の支持体402の表面に設置された反射層410、加熱素子504及び二つの電極(図示せず)を含む。該加熱素子504が一本のカーボンナノチューブ線状構造体を含む。該カーボンナノチューブ線状構造体は、前記反射層410の、前記線状の支持体402と対向する表面と反対側の表面に巻き付いている。該カーボンナノチューブ線状構造体の両端はそれぞれ、二つの電極に電気的に接続されることである。前記カーボンナノチューブ線状構造体は、非ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造体、又はねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造体である。また、前記カーボンナノチューブ線状構造体は、一本のカーボンナノチューブワイヤだけを含んでもよい。
【0159】
前記二つの電極は一本の前記カーボンナノチューブ線状構造体を含む。該カーボンナノチューブ線状構造体は、該線状構造体の長手方向に沿って平行に配列された複数の非ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤを含む。
【0160】
(実施例4)
図23を参照すると、本発明の実施例3に係る線熱源50が提供される。該線熱源50は、線状の支持体502、該線状の支持体502の表面に設置された反射層510、加熱素子504及び二つの電極(図示せず)を含む。前記加熱素子504が複数のカーボンナノチューブ線状構造体を含み、該複数のカーボンナノチューブ線状構造体は交叉して配列されている。一部の前記複数のカーボンナノチューブ線状構造体は平行に配列され、それらの対向する端部はそれぞれ二つの電極に電気的に接続されている。もう一部の前記複数のカーボンナノチューブ線状構造体は、前記カーボンナノチューブ線状構造体に垂直に配列される。前記カーボンナノチューブ線状構造体は、非ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造体、又はねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造体である。
【0161】
前記カーボンナノチューブ構造体が、カーボンナノチューブフィルムとカーボンナノチューブ線状構造体との複合構造でもあってもよい。前記カーボンナノチューブ線状構造体が前記カーボンナノチューブフィルムに設置され、加熱素子504を形成する。
【0162】
前記実施例3及び前記実施例4に係る線熱源の製造方法は、前記実施例1に係る線熱源20の製造方法と基本的に同じである。
【0163】
前記線熱源及び該線熱源の製造方法には、下記の優れた点がある。
【0164】
前記基体材料と前記自立構造体を有するカーボンナノチューブ構造体とを直接に複合し、加熱素子を形成することによって、前記カーボンナノチューブが、前記加熱素子において、カーボンナノチューブ構造体の形態を保持するので、前記加熱素子におけるカーボンナノチューブが、均一的に分布し、導電通路を形成することができ、溶液に分散された濃度が制限されなく、該カーボンナノチューブは、前記加熱素子における含有量が99%に達することができる。従って、前記線熱源の放熱温度が高めることができる。
【0165】
前記線熱源において、加熱素子がカーボンナノチューブ構造体を含み、該カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブが均一的に配列され、該加熱素子が均一な厚さ及び抵抗を有するので、該加熱素子は、均一的に熱を放出することができる。前記カーボンナノチューブが電気エネルギーを熱エネルギーに転換する効率が、高いので、前記線熱源は、昇温速度が速く、熱応答速度が速く、熱交換速度が速い。
【0166】
前記加熱素子おけるカーボンナノチューブは、優れた力学性能、優れた靭性及び優れた機械強度を有するので、該加熱素子は、優れた力学性能、優れた靭性と機械強度を有し、使用寿命が長くなる。更に、カーボンナノチューブ構造体及び柔軟性の基体が複合し、前記加熱素子が形成する場合、該加熱素子を利用して、柔軟性の線熱源を製造することができる。
【0167】
前記加熱素子おけるカーボンナノチューブの直径が小さいので、該加熱素子は、厚さが小さい。従って、極めて小型の線熱源を製造することができ、該小型の線熱源を利用して、小型の加熱対象となる素子を加熱することができる。
【0168】
前記カーボンナノチューブ構造体が、超配列カーボンナノチューブアレイから引き出して得られたカーボンナノチューブフィルムからなる場合、前記カーボンナノチューブフィルムにおける複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って、端と端が接続されるので、優れた導電性を有する。従って、前記線熱源は、優れた加熱性能を有する。
【0169】
前記線熱源の製造方法は、簡単であり、コストが減少し、極めて小型の線熱源を製造することができる。
【符号の説明】
【0170】
20、30、40、50 線熱源
202、402、502 支持体
204、304、404、504 加熱素子
206、306 電極
208 保護層
210、410、510 反射層
143a カーボンナノチューブフィルム
143b カーボンナノチューブセグメント
145 カーボンナノチューブ
2042 基体
2044 カーボンナノチューブ構造体
【技術分野】
【0001】
本発明は、線熱源に関し、特にカーボンナノチューブを利用した線熱源に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱源は、人々の生活及び科学の研究などの分野において重要な役割を果たす。例えば、電気加熱器、電気ストーブ及び赤外線治療器などに応用される。
【0003】
従来の熱源は、例えば、電気抵抗のリード線などの線状発熱体及び二つの電極を含む。前記二つの電極が間隔を置いて設置され、前記線状発熱体の両端に電気的に接続される。前記二つの電極によって、前記線状発熱体に電圧を印加する場合、該線状発熱体が普通の波長で熱を放出する。一般的に、線状熱源の線状発熱体として、金属、合金又は炭素繊維などで製造された電気抵抗リード線を採用する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Kaili Jiang、Qunqing Li、Shoushan Fan、“Spinning continuous carbon nanotube yarns”、Nature、2002年、第419巻、p.801
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、金属、合金又は炭素繊維などで製造された電気抵抗リード線は、下記の欠点がある。第一に、前記電気抵抗リード線から生じる熱が普通の波長で外界に放出するので、電気エネルギーを熱エネルギーに転換する効率が低く、エネルギーが浪費されるという欠点がある。第二に、炭素繊維が厚く、一般的には、数十マイクロメートルであるので、前記線熱源は、極めて小型の構造を製造しにくく、極めて小型の加熱対象を加熱することに応用できない。金属線の直径が小さい場合、強度が悪く、折れやすいので、前記線熱源は、極めて小型の構造を製造しにくく、極めて小型の加熱対象を加熱することに応用できないという欠点がある。第三に、前記電気抵抗リード線の重量が大きいので、前記線熱源の軽量化に不利であるという欠点がある。また、金属の電気抵抗のリード線及び合金電気抵抗のリード線が酸化されやすいので、強度が悪く、強靭性が良くなく、折れやすくなり、応用される範囲が制限されるという欠点がある。
【0006】
従って、本発明は、機械強度が良く、破壊されにくい線熱源及び該線熱源の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
線熱源は、線状の支持体と、前記線状の支持体に被覆された加熱素子と、前記加熱素子と電気的に接続された二つの電極と、を含む。前記加熱素子がカーボンナノチューブ複合構造体を含み、該カーボンナノチューブ複合構造体が少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルム及び基体材料を含み、該カーボンナノチューブフィルム及び基体材料が複合される。前記カーボンナノチューブフィルムが複数のカーボンナノチューブのみからなり、該複数のカーボンナノチューブが、相互に絡み合っている。
【0008】
前記カーボンナノチューブフィルムにおいて、複数の微孔が形成され、前記基体材料が、前記複数の微孔の中に浸透される。
【0009】
前記カーボンナノチューブフィルムは、自立構造を有する。
【0010】
前記加熱素子及び前記線状の支持体の間に反射層が設置されていて、該反射層が前記加熱素子から放出された熱を反射するために用いられる。
【発明の効果】
【0011】
従来の線熱源と比べると、本発明の線熱源には、下記の優れた点がある。
【0012】
前記基体材料と前記自立構造体を有するカーボンナノチューブ構造体とを直接複合し、加熱素子を形成することによって、前記カーボンナノチューブが、前記加熱素子において、カーボンナノチューブ構造体の形態を保持するので、前記加熱素子におけるカーボンナノチューブが、均一的に分布し、導電通路を形成することができ、溶液に分散された濃度が制限されなく、該カーボンナノチューブは、前記加熱素子における含有量が99%に達することができる。従って、前記熱源の放熱温度を高めることができる。
【0013】
前記線熱源において、加熱素子がカーボンナノチューブ構造体を含み、該カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブが均一的に配列され、該加熱素子が均一な厚さ及び抵抗を有するので、該加熱素子は、均一的に熱を放出することができる。前記カーボンナノチューブが電気エネルギーを熱エネルギーに転換する効率が、高いので、前記線熱源は、昇温速度が速く、熱応答速度が速く、熱交換速度が速い。
【0014】
前記加熱素子おけるカーボンナノチューブが、優れた力学性能、優れた靭性及び優れた機械強度を有するので、該加熱素子は、優れた力学性能、優れた靭性と機械強度を有し、使用寿命が長くなる。更に、カーボンナノチューブ構造体及び柔軟性の基体が複合し、前記加熱素子が形成される場合、該加熱素子を利用して、柔軟性の線熱源を製造することができる。
【0015】
前記加熱素子おけるカーボンナノチューブの直径が小さいので、該加熱素子は、厚さが小さい。従って、極めて小型の線熱源を製造することができ、該小型の線熱源を利用して、小型の加熱対象となる素子を加熱することができる。
【0016】
前記カーボンナノチューブ構造体が、超配列カーボンナノチューブアレイから引き出して得られたカーボンナノチューブフィルムからなる場合、前記カーボンナノチューブフィルムにおける複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って、端と端が接続されるので、優れた導電性を有する。従って、前記線熱源は、優れた加熱性能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例に係る線熱源の加熱素子の断面拡大図である。
【図2】本発明の実施例に係る線熱源の加熱素子の断面拡大図である。
【図3】本発明の実施例に係る線熱源における、ドローン構造カーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図4】ドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブセグメントの構造を示す図である。
【図5】図3中のドローン構造カーボンナノチューブフィルムを引き出す見取り図である。
【図6】本発明の実施例に係る線熱源における、プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列されたカーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図7】本発明の実施例に係る線熱源における、プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが等方的に配列されたカーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図8】本発明の実施例に係る線熱源における、綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図9】本発明の実施例に係る線熱源における、綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムの写真である。
【図10】ろ過された綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体の写真である。
【図11】本発明の実施例に係る線熱源における、超長構造カーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図12】本発明の実施例に係る非ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤのSEM写真である。
【図13】本発明の実施例に係るねじれ状のカーボンナノチューブワイヤのSEM写真である。
【図14】本発明の実施例に係る線熱源の製造方法のフローチャートである。
【図15】本発明の実施例1に係る線熱源の構造を示す図である。
【図16】本発明の実施例1に係る線熱源の図15に示すXVI−XVI線に沿って切断した断面図である。
【図17】本発明の実施例1に係る線熱源の図16に示すXVII−XVII線に沿って切断した断面図である。
【図18】本発明の実施例1に係るドローン構造カーボンナノチューブフィルムのカーボンナノチューブの配列方向に沿って、前記カーボンナノチューブ複合構造体を切断し、形成された断面の写真である。
【図19】本発明の実施例1に係る線熱源の製造方法において、グルーを注射する方法で、高分子材料とカーボンナノチューブ構造体とを複合し、カーボンナノチューブ複合構造体を形成するフローチャートである。
【図20】加熱素子が柔軟性のカーボンナノチューブ複合構造体である場合の、線熱源の製造方法のフローチャートである。
【図21】本発明の実施例2に係る線熱源の構造を示す図である。
【図22】本発明の実施例3に係る線熱源の構造を示す図である。
【図23】本発明の実施例4に係る線熱源の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0019】
本発明は、線熱源を提供する。該線熱源は、線状の支持体と、反射層と、加熱素子と、保護層と、二つの電極とを含む。
【0020】
前記線状の支持体は、一次元の構造であり、前記加熱素子を支持することに用いられる。該線状の支持体の材料は、例えば、セラミックス、ガラス、樹脂、石英などの硬性材料であってもよく、プラスチック及び柔らかい繊維などの柔らかい材料であってもよい。前記線状の支持体が柔らかい材料からなる場合、前記線熱源は、任意の形状に湾曲することができる。前記線状の支持体は絶縁材料からなることが好ましい。
【0021】
前記反射層は、前記線状の支持体の一つ表面に設置される。前記加熱素子は、前記反射層の、前記支持体と対向する表面と反対の表面に設置される。前記二つの電極は、間隔を置いて前記加熱素子の表面に設置され、それぞれ、前記加熱素子に電気的に接続される。前記保護層は、前記加熱素子の、前記反射層と対向する表面と反対する表面に設置される。前記線熱源の直径が1.1ミリメートル〜1.1センチメートルであることが好ましい。前記二つの電極は、電源(図示せず)に電気的に接続することに用いられる。
【0022】
前記反射層は、前記加熱素子から放出した熱を外部の空間に反射し、加熱効率を高めることに用いられる。該反射層の材料は、例えば、金属酸化物、金属塩及びセラミックスなどの絶縁材料である。前記反射層の厚さが100マイクロメートル〜0.5ミリメートルである。本実施例において、前記反射層は、酸化アルミニウム膜であり、その厚さが100マイクロメートルである。前記反射層は、スパッターの方法で前記線状の支持体の表面に形成される。勿論、前記反射層を設置せず、即ち、前記加熱素子を前記線状の支持体の表面に直接設置することもできる。
【0023】
前記加熱素子は、カーボンナノチューブ複合構造体である。該カーボンナノチューブ複合構造体は、カーボンナノチューブ構造体及び基体を含む。前記カーボンナノチューブ構造体が自立構造を有する。ここで、自立構造とは、支持体材を利用せず、前記カーボンナノチューブ構造体を独立して利用することができるという形態のことである。すなわち、前記カーボンナノチューブ構造体を対向する両側から支持して、前記カーボンナノチューブ構造体の構造を変化させずに、前記カーボンナノチューブ構造体を懸架させることができることを意味する。
【0024】
前記カーボンナノチューブ構造体は、複数のカーボンナノチューブを含み、該複数のカーボンナノチューブが分子間力で接続され、均一に分布されるので、該カーボンナノチューブ構造体が所定の形状を有する。前記カーボンナノチューブ構造体は、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブの一種又は多種である。前記カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブである場合、直径は0.5ナノメートル〜50ナノメートルであり、前記カーボンナノチューブが二層カーボンナノチューブである場合、直径は1.0ナノメートル〜50ナノメートルであり、前記カーボンナノチューブが多層カーボンナノチューブである場合、直径は1.5ナノメートル〜50ナノメートルである。
【0025】
前記カーボンナノチューブ構造体は、膜状構造又は線状構造体である。前記カーボンナノチューブ構造体において、隣接するカーボンナノチューブの間に隙間があるので、前記カーボンナノチューブ構造体に複数の微孔が形成されている。従って、前記基体材料は、前記カーボンナノチューブ構造体における微孔の中に浸漬し、該カーボンナノチューブ構造体と緊密に結合する。前記カーボンナノチューブ構造体の単位面積当たりの熱容量は、
0(0は含まず)〜2×10−4J/cm2・Kであり、好ましくは、1.7×10−6J/センチメートル2・K以下であることが好ましい。具体的には、前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚の、カーボンナノチューブフィルム、カーボンナノチューブ線状構造体、又はカーボンナノチューブフィルム及びカーボンナノチューブ線状構造体の組み合わせを含む。
【0026】
前記カーボンナノチューブ複合構造体は、膜状のカーボンナノチューブ複合構造体又は、少なくとも一つの線状のカーボンナノチューブ複合構造体を含む。前記カーボンナノチューブ複合構造体は、前記線状の支持体の表面に設置される。
【0027】
一つの例として、前記膜状のカーボンナノチューブ複合構造体は、二次元の構造体である。この場合、前記膜状のカーボンナノチューブ複合構造体は、前記線状の支持体の表面に被覆し、又は前記線状の支持体の表面に巻き付くことができる。前記カーボンナノチューブ構造体と前記基体材料とを複合させる方式によって、前記膜状のカーボンナノチューブ複合構造体の具体的な構造は、下記の二種に分類される。
【0028】
第一種では、図1を参照すると、前記膜状のカーボンナノチューブ複合構造体は、前記支持体の表面に被覆され、膜状のカーボンナノチューブ構造体2044及び基体2042を含む。前記膜状のカーボンナノチューブ構造体2044に複数の微孔があるので、前記基体2042の材料は、該膜状のカーボンナノチューブ構造体2044の微孔の中に浸漬できる。前記膜状のカーボンナノチューブ構造体2044が母体として、前記基体2042の材料が添加材料として、母体とする前記膜状のカーボンナノチューブ構造体2044の微孔の中に添加する。前記膜状のカーボンナノチューブ構造体2044が、複数のカーボンナノチューブフィルムを含む場合、該複数のカーボンナノチューブフィルムが積層して設置される。前記膜状のカーボンナノチューブ構造体2044が、一つのカーボンナノチューブ線状構造体を含む場合、該カーボンナノチューブ線状構造体が膜状の自立構造体に形成される。前記膜状のカーボンナノチューブ構造体2044が、複数のカーボンナノチューブ線状構造体を含む場合、該複数のカーボンナノチューブ線状構造体が平行して設置され、交差して設置され、又は相互に編んで、膜状の自立構造体を形成することができる。前記膜状のカーボンナノチューブ構造体2044が、カーボンナノチューブフィルム及びカーボンナノチューブ線状構造体を含む場合、前記カーボンナノチューブ線状構造体が前記カーボンナノチューブフィルムの少なくとも一つの表面に設置される。
【0029】
第二種では、図2を参照すると、前記膜状のカーボンナノチューブ複合構造体は、カーボンナノチューブ構造体2044及び基体2042を含む。前記基体2042は、膜状の構造であり、前記カーボンナノチューブ構造体2044が前記基体2042の中に分布される。さらに、前記カーボンナノチューブ構造体2044は、前記基体2042の中に均一的に分布されることが好ましい。前記基体2042は、前記カーボンナノチューブ構造体2044を完全に被覆することができる。又は、少なくとも、一部の基体2042の材料が前記カーボンナノチューブ構造体2044の中に浸漬する。前記カーボンナノチューブ構造体2044は、平行して、間隔を置いて設置された複数のカーボンナノチューブ線状構造体を含む場合、該カーボンナノチューブ線状構造体は、前記線状の支持体の一端から、もう一つの端部へ延びる。すなわち、前記カーボンナノチューブ線状構造体の長軸は、前記線状の支持体に平行している。
【0030】
もう一つの例として、前記線状のカーボンナノチューブ複合構造体は、一次元の構造体である。この場合、前記線状のカーボンナノチューブ複合構造体は、下記の二種に分類される。
【0031】
第一種では、前記線状のカーボンナノチューブ複合構造体は、カーボンナノチューブ線状構造体及び基体を含む。前記カーボンナノチューブ線状構造体に多くの微孔があるので、前記基体の材料は、該カーボンナノチューブ線状構造体の微孔の中に浸漬する。
【0032】
第二種では、前記線状のカーボンナノチューブ複合構造体は、カーボンナノチューブ線状構造体及び基体を含む。前記カーボンナノチューブ線状構造体は、前記基体の中に複合される。前記加熱素子が、一つの線状のカーボンナノチューブ複合構造体である場合、該線状のカーボンナノチューブ複合構造体は、前記線状の支持体の表面に巻き付いている。前記加熱素子が、複数の線状のカーボンナノチューブ複合構造体である場合、該複数の線状のカーボンナノチューブ複合構造体は、交差して設置され、膜状の構造が編まれ、前記線状の支持体の表面に被覆、巻き付くことができる。
【0033】
前記カーボンナノチューブフィルムは、均一的に分布された複数のカーボンナノチューブを含む。隣接するカーボンナノチューブは、分子間力で結合されている。前記複数のカーボンナノチューブが配向し又は配向せずに配置されている。前記複数のカーボンナノチューブの配列方式により、前記カーボンナノチューブフィルムは非配向型のカーボンナノチューブフィルム及び配向型のカーボンナノチューブフィルムの二種に分類される。本実施例における非配向型のカーボンナノチューブフィルムでは、カーボンナノチューブが異なる方向に沿って配置され、又は絡み合っている。配向型のカーボンナノチューブフィルムでは、前記複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列している。又は、配向型のカーボンナノチューブフィルムにおいて、配向型のカーボンナノチューブフィルムが二つ以上の領域に分割される場合、各々の領域における複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列されている。この場合、異なる領域におけるカーボンナノチューブの配列方向は異なる。
【0034】
前記カーボンナノチューブ構造体は、積層された複数の前記カーボンナノチューブフィルムを含むことができる。該カーボンナノチューブ構造体の厚さが0.5ナノメートル〜1.0ミリメートルであることが好ましい。前記カーボンナノチューブ構造体の熱応答速度は、該カーボンナノチューブ構造体の厚さと関係がある。前記カーボンナノチューブ構造体は、同じ表面積を有する場合、その厚さが厚ければ、熱応答速度が遅くなり、その厚さが薄ければ、熱応答速度が速くなる。前記カーボンナノチューブ構造体の厚さが1.0マイクロメートル〜1.0ミリメートルである場合、該カーボンナノチューブ構造体が1秒間より短い時間で最高温度に達することができる。例えば、前記カーボンナノチューブ構造体は一枚のカーボンナノチューブフィルムである場合、前記カーボンナノチューブ構造体が0.1ミリ秒間より短い時間で最高温度に達することができる。従って、前記線熱源は、加熱対象を速やかに加熱することができる。
【0035】
本発明のカーボンナノチューブフィルムとしては、以下の(一)から(四)のものが挙げられる。
【0036】
(一)ドローン構造カーボンナノチューブフィルム
前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚のドローン構造カーボンナノチューブフィルムを含む。図3を参照すると、単一の前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルム143aは、超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献1を参照)から引き出して得られ、自立構造を有したものである。単一の前記カーボンナノチューブフィルム143aにおいて、前記複数のカーボンナノチューブの大部分は、前記カーボンナノチューブフィルムの表面に平行に、カーボンナノチューブフィルムを引き出す方向に沿って、且つ、同じ方向に沿って配列されている。前記複数のカーボンナノチューブは、分子間力で端と端が接続されている。
【0037】
微視的には、前記カーボンナノチューブフィルム143aにおいて、前記同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブ以外に、該同じ方向に沿っておらずランダムな方向を向いたカーボンナノチューブも存在している。ここで、該ランダムな方向を向いたカーボンナノチューブは、前記同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブと比べて、割合は小さい。
【0038】
さらに、単一の前記カーボンナノチューブフィルム143aは、複数のカーボンナノチューブセグメント143bを含む。図4を参照すると、前記複数のカーボンナノチューブセグメント143bは、長さ方向に沿って分子間力で端と端が接続されている。それぞれのカーボンナノチューブセグメント143bは、相互に平行に、分子間力で結合された複数のカーボンナノチューブ145を含む。単一の前記カーボンナノチューブセグメント143bにおいて、前記複数のカーボンナノチューブ145の長さは実質的に同じである。前記カーボンナノチューブフィルム143aを有機溶剤に浸漬させることにより、前記カーボンナノチューブフィルム143aの強靭性及び機械強度を高めることができる。前記カーボンナノチューブフィルム143aの厚さが10マイクロメートル以下である場合、該カーボンナノチューブフィルム143aの透光率が96%以上程度に達するため、透明熱源に用いられることも可能である。一枚の前記カーボンナノチューブフィルム143aの単位面積当たりの熱容量は、1.7×10−6J/cm2・K以下である。
【0039】
前記カーボンナノチューブ構造体は、積層された複数の前記カーボンナノチューブフィルム143aを含むことができる。この場合、隣接する前記カーボンナノチューブフィルム143aは、分子間力で結合されている。隣接する前記カーボンナノチューブフィルム143aにおけるカーボンナノチューブ145は、それぞれ0°〜90°の角度で交差している。隣接する前記カーボンナノチューブフィルム143aにおけるカーボンナノチューブ145が0°以上の角度で交差する場合、前記カーボンナノチューブ構造体に複数の微孔が形成され、該微孔の直径が10マイクロメートル以下である。又は、前記複数のカーボンナノチューブフィルム143aは、同一平面上に隙間なく並列されることもできる。
【0040】
前記カーボンナノチューブフィルムの製造方法は次のステップを含む。
【0041】
第一ステップでは、カーボンナノチューブアレイを提供する。該カーボンナノチューブアレイは、超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献1を参照)であり、該超配列カーボンナノチューブアレイの製造方法は、化学気相堆積法を採用する。該製造方法は、次のステップを含む。ステップ(a)では、平らな基材を提供し、該基材はP型のシリコン基材、N型のシリコン基材及び酸化層が形成されたシリコン基材のいずれか一種である。本実施例において、4インチのシリコン基材を選択することが好ましい。ステップ(b)では、前記基材の表面に、均一的に触媒層を形成する。該触媒層の材料は鉄、コバルト、ニッケル及びその2種以上の合金のいずれか一種である。ステップ(c)では、前記触媒層が形成された基材を700℃〜900℃の空気で30分〜90分間アニーリングする。ステップ(d)では、アニーリングされた基材を反応炉に置き、保護ガスで500℃〜740℃の温度で加熱した後で、カーボンを含むガスを導入して、5分〜30分間反応を行って、超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献1)を成長させることができる。該カーボンナノチューブアレイの高さは100マイクロメートル以上である。該カーボンナノチューブアレイは、互いに平行し、基材に垂直に生長する複数のカーボンナノチューブからなる。該カーボンナノチューブは、長さが長いため、部分的にカーボンナノチューブが互いに絡み合っている。生長の条件を制御することによって、前記カーボンナノチューブアレイは、例えば、アモルファスカーボン及び残存する触媒である金属粒子などの不純物を含まなくなる。
【0042】
本実施例において、前記カーボンを含むガスとしては、例えば、アセチレン、エチレン、メタンなどの活性な炭化水素が選択され、エチレンを選択することが好ましい。保護ガスは窒素ガスまたは不活性ガスであり、アルゴンガスが好ましい。
【0043】
本実施例により提供されたカーボンナノチューブアレイは、前記の製造方法により製造されることに制限されず、アーク放電法またはレーザー蒸発法で製造してもよい。
【0044】
第二ステップでは、前記カーボンナノチューブアレイから、少なくとも、一枚のカーボンナノチューブフィルムを引き伸ばす。まず、ピンセットなどの工具を利用して複数のカーボンナノチューブの端部を持つ。例えば、一定の幅を有するテープを利用して複数のカーボンナノチューブの端部を持つ。次に、所定の速度で前記複数のカーボンナノチューブを引き出し、複数のカーボンナノチューブ束からなる連続のカーボンナノチューブフィルムを形成する。
【0045】
前記複数のカーボンナノチューブを引き出す工程において、前記複数のカーボンナノチューブがそれぞれ前記基材から脱離すると、分子間力で前記カーボンナノチューブ束が端と端で接合され、連続のカーボンナノチューブフィルムが形成される(図5を参照)。
【0046】
(二)プレシッド構造カーボンナノチューブフィルム
前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚のプレシッド構造カーボンナノチューブフィルム(pressed carbon nanotube film)を含む。図6又は図7を参照すると、前記プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムにおける複数のカーボンナノチューブは、等方的に配列されているか、所定の方向に沿って配列されているか、または、異なる複数の方向に沿って配列されている。前記カーボンナノチューブフィルムは、押し器具を利用することにより、所定の圧力をかけて前記カーボンナノチューブアレイを押し、該カーボンナノチューブアレイを圧力で倒すことにより形成された、シート状の自立構造を有するものである。前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの配列方向は、前記押し器具の形状及び前記カーボンナノチューブアレイを押す方向により決められている。
【0047】
図6を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが配向して配列される。該カーボンナノチューブフィルムは、同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブを含む。ローラー形状を有する押し器具を利用して、同じ方向に沿って前記カーボンナノチューブアレイを同時に押す場合、基本的に同じ方向に配列されたカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブフィルムが形成される。また、ローラー形状を有する押し器具を利用して、異なる方向に沿って、前記カーボンナノチューブアレイを同時に押す場合、前記異なる方向に沿って、選択的な方向に配列されたカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブフィルムが形成される。
【0048】
図7を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが配向せずに配置される。該カーボンナノチューブフィルムは、等方的に配列されている複数のカーボンナノチューブを含む。隣接するカーボンナノチューブが分子間力で相互に引き合い、接続する。該カーボンナノチューブ構造体が平面等方性を有する。該カーボンナノチューブフィルムは、平面を有する押し器具を利用して、カーボンナノチューブアレイが成長された基板に垂直な方向に沿って前記カーボンナノチューブアレイを押すことにより形成される。
【0049】
前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの傾斜の程度は、前記カーボンナノチューブアレイにかけた圧力に関係する。前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブと該カーボンナノチューブフィルムの表面とは、角度αを成し、該角度αは0°以上15°以下である。好ましくは、前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが該カーボンナノチューブフィルムの表面に平行する。前記圧力が大きくなるほど、前記傾斜の程度が大きくなる。前記カーボンナノチューブフィルムの厚さは、前記カーボンナノチューブアレイの高さ及び該カーボンナノチューブアレイにかけた圧力に関係する。即ち、前記カーボンナノチューブアレイの高さが大きくなるほど、また、該カーボンナノチューブアレイにかけた圧力が小さくなるほど、前記カーボンナノチューブフィルムの厚さが大きくなる。これとは逆に、カーボンナノチューブアレイの高さが小さくなるほど、また、該カーボンナノチューブアレイにかけた圧力が大きくなるほど、前記カーボンナノチューブフィルムの厚さが小さくなる。前記カーボンナノチューブフィルムにおける隣接するカーボンナノチューブの間に隙間があるので、該カーボンナノチューブフィルムにおいて、多くの微孔が形成され、該微孔の直径が10マイクロメートル以下である。
【0050】
(三)綿毛構造カーボンナノチューブフィルム
前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚の綿毛構造カーボンナノチューブフィルム(flocculated carbon nanotube film)を含む。図8及び図9を参照すると、単一の前記綿毛構造カーボンナノチューブフィルムにおいて、複数のカーボンナノチューブは、相互に絡み合い、等方的に配列されている。前記カーボンナノチューブ構造体においては、前記複数のカーボンナノチューブが均一に分布されている。複数のカーボンナノチューブは配向せずに配置されている。単一の前記カーボンナノチューブの長さは、10マイクロメートル以上であり、200マイクロメートル〜900マイクロメートルであると好ましい。前記カーボンナノチューブ構造体は、自立構造の薄膜の形状に形成されている。ここで、自立構造とは、支持体材を利用せず、前記カーボンナノチューブ構造体を独立して利用することができるという形態である。前記複数のカーボンナノチューブは、分子間力で接近して、相互に絡み合って、カーボンナノチューブネット状に形成されている。前記複数のカーボンナノチューブは配向せずに配置されて、多くの微小な穴が形成されている。ここで、単一の前記微小な穴の直径が10マイクロメートル以下になる。前記カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブは、相互に絡み合って配置されるので、該カーボンナノチューブ構造体は柔軟性に優れ、任意の形状に湾曲して形成させることができる。用途に応じて、前記カーボンナノチューブ構造体の長さ及び幅を調整することができる。前記カーボンナノチューブ構造体の厚さは、1.0マイクロメートル〜1.0ミリメートルであり、100マイクロメートルであることが好ましい。
【0051】
前記カーボンナノチューブフィルムの製造方法は、下記のステップを含む。
【0052】
第一ステップでは、前記カーボンナノチューブフィルムのもとになるカーボンナノチューブを提供する。
【0053】
ナイフのような工具で前記カーボンナノチューブを前記基材から剥離し、カーボンナノチューブの原料が形成される。前記カーボンナノチューブは、ある程度互いに絡み合っている。前記カーボンナノチューブの原料においては、該カーボンナノチューブの長さは、10マイクロメートル以上であり、200マイクロメートル〜900マイクロメートルであることが好ましい。
【0054】
第二ステップでは、前記カーボンナノチューブの原料を溶剤に浸漬し、該カーボンナノチューブの原料を処理して、綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を形成する。
【0055】
前記カーボンナノチューブ原料を前記溶剤に浸漬した後、超音波式分散、又は高強度攪拌又は振動などの方法により、前記カーボンナノチューブを綿毛構造に形成させる。前記溶剤は水または揮発性有機溶剤である。超音波式分散方法により、カーボンナノチューブを含む溶剤に対して10〜30分間処理する。カーボンナノチューブは大きな比表面積を有し、カーボンナノチューブの間に大きな分子間力が生じるので、前記カーボンナノチューブはそれぞれもつれて、綿毛構造に形成されている。
【0056】
第三ステップでは、前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を含む溶液をろ過して、最終的な綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を取り出す。
【0057】
まず、濾紙が置かれたファネルを提供する。前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を含む溶剤を濾紙が置かれたファネルにつぎ、しばらく放置して、乾燥させると、綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体が分離される。図10を参照すると、前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブが互いに絡み合って、不規則的な綿毛構造となる。
【0058】
分離された前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を容器に置き、前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を所定の形状に展開し、展開された前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体に所定の圧力を加え、前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体に残留した溶剤を焙り、或いは、該溶剤が自然に蒸発すると、図8と図9に示す綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムが形成される。
【0059】
前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体が展開される面積によって、綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムの厚さと面密度を制御できる。即ち、一定の体積を有する前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体は、展開される面積が大きくなるほど、綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムの厚さと面密度が小さくなる。
【0060】
また、微多孔膜とエアーポンプファネル(Air−pumping Funnel)を利用して綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムが形成される。具体的には、微多孔膜とエアーポンプファネルを提供し、前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を含む溶剤を、前記微多孔膜を通して前記エアーポンプファネルにつぎ、該エアーポンプファネルに抽気し、乾燥させると、綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムが形成される。前記微多孔膜は、平滑な表面を有する。該微多孔膜において、単一の微小孔の直径は、0.22マイクロメートルにされている。前記微多孔膜は平滑な表面を有するので、前記カーボンナノチューブフィルムは容易に前記微多孔膜から剥落することができる。さらに、前記エアーポンプを利用することにより、前記綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムに空気圧をかけるので、均一な綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムを形成させることができる。
【0061】
(四)超長構造カーボンナノチューブフィルム
前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚の超長構造カーボンナノチューブフィルム(ultra−long carbon nanotube film)を含む。図11を参照すると、前記超長構造カーボンナノチューブフィルムは、ほぼ同じ長さを有する複数のカーボンナノチューブを含む。単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおいて、前記複数のカーボンナノチューブは、同じ方向に沿って、均一に並列されている。単一の前記カーボンナノチューブフィルムの厚さは、10ナノメートル〜100マイクロメートルである。前記複数のカーボンナノチューブは、それぞれ前記複数のカーボンナノチューブフィルムの表面に平行に配列され、相互に平行に配列されている。隣接する前記カーボンナノチューブは所定の距離で分離して設置される。前記距離は0マイクロメートル〜5マイクロメートルである。前記距離が0マイクロメートルである場合、隣接する前記カーボンナノチューブは分子間力で接続されている。前記カーボンナノチューブフィルムにおける各々の前記カーボンナノチューブの長さは、前記カーボンナノチューブフィルムの長さと基本的に同じである。単一の前記カーボンナノチューブの長さは、1センチメートル以上であり、1センチメートル〜30センチメートルであることが好ましい。さらに、各々の前記カーボンナノチューブには結節がない。本実施形態において、前記カーボンナノチューブフィルムの厚さは10マイクロメートルである。単一の前記カーボンナノチューブの長さは10センチメートルである。
【0062】
前記カーボンナノチューブ構造体は少なくとも一本のカーボンナノチューブ線状構造体を含むことができる。前記カーボンナノチューブ線状構造体は、少なくとも一本のカーボンナノチューブワイヤを含む。一本の前記カーボンナノチューブワイヤの熱容量は、2×10−4J/cm2・K以下であり、0(0は含まず)〜5×10−5J/cm2・Kであることが好ましい。一本の前記カーボンナノチューブワイヤの直径は4.5nm〜1cmであり、1.0μm〜100μmであることが好ましい。
【0063】
図12を参照すると、前記カーボンナノチューブワイヤ(非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ)は、端と端とが接続された複数のカーボンナノチューブセグメント(図示せず)を含む。前記カーボンナノチューブセグメントは、同じ長さ及び幅を有する。さらに、各々の前記カーボンナノチューブセグメントに、同じ長さの複数のカーボンナノチューブが平行に配列されている。前記複数のカーボンナノチューブはカーボンナノチューブワイヤの中心軸に平行に配列されている。この場合、一本の前記カーボンナノチューブワイヤの直径は、1μm〜1cmである。
【0064】
図13を参照すると、前記カーボンナノチューブワイヤをねじり、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤを形成することができる。ここで、前記複数のカーボンナノチューブは前記カーボンナノチューブワイヤの中心軸を軸に、螺旋状に配列されている。この場合、一本の前記カーボンナノチューブワイヤの直径は、1μm〜1cmである。前記カーボンナノチューブ線状構造体は、前記非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ又はそれらの組み合わせのいずれか一種からなる。
【0065】
前記カーボンナノチューブワイヤを形成する方法は、カーボンナノチューブアレイから引き出してなるカーボンナノチューブフィルムを利用する。前記カーボンナノチューブワイヤを形成する方法は、次の三種がある。第一種では、前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの長手方向に沿って、前記カーボンナノチューブフィルムを所定の幅で切断し、カーボンナノチューブワイヤを形成する。第二種では、前記カーボンナノチューブフィルムを有機溶剤に浸漬させて、前記カーボンナノチューブフィルムを収縮させてカーボンナノチューブワイヤを形成することができる。第三種では、前記カーボンナノチューブフィルムを機械加工(例えば、紡糸工程)してねじれたカーボンナノチューブワイヤを形成する。詳しく説明すれば、まず、前記カーボンナノチューブフィルムを紡糸装置に固定させる。次に、前記紡糸装置を動作させて前記カーボンナノチューブフィルムを回転させ、ねじれたカーボンナノチューブワイヤを形成する。
【0066】
前記カーボンナノチューブ線状構造体が二本以上のカーボンナノチューブワイヤを含む場合、各々のカーボンナノチューブワイヤが平行に配列され、非ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造体を形成する。或いは、各々のカーボンナノチューブワイヤが、螺旋状に配列され、ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造体を形成する。即ち、前記非ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造体におけるカーボンナノチューブワイヤは、前記カーボンナノチューブ線状構造体の長手方向に沿って、配列される。前記ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造体におけるカーボンナノチューブワイヤは、前記線状構造体の軸向に沿って、螺旋状に配列される。
【0067】
前記非ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造体におけるカーボンナノチューブワイヤは、非ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤ又はねじれ状のカーボンナノチューブワイヤである。前記ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造体におけるカーボンナノチューブワイヤは、非ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤ又はねじれ状のカーボンナノチューブワイヤである。
【0068】
前記カーボンナノチューブ線状構造体の直径は、0.5ナノメートル〜2ミリメートルである。単一の前記カーボンナノチューブワイヤの直径が大きく、前記カーボンナノチューブワイヤの数量が多いほど、前記カーボンナノチューブ線状構造体の直径が大きくなる。この逆に、単一の前記カーボンナノチューブワイヤの直径が小さく、前記カーボンナノチューブワイヤの数量が少ないほど、前記カーボンナノチューブ線状構造体の直径が小さくなる。
【0069】
前記カーボンナノチューブワイヤにおけるカーボンナノチューブが配向して配列されるので、該カーボンナノチューブワイヤからなるカーボンナノチューブ線状構造体におけるカーボンナノチューブが配向して配列される。
【0070】
また、前記ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤを揮発性有機溶剤で処理してもよい。前記揮発性有機溶剤の表面力の作用で前記ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤにおける隣接するカーボンナノチューブが分子間力で緊密に接続されるので、該ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤは、直径及び比表面積が小さくなり、大きな密度、優れた機械強度及び優れた強靭性を有する。
【0071】
前記カーボンナノチューブ構造体が、一つの前記カーボンナノチューブ線状構造体を含む場合、該カーボンナノチューブ線状構造体におけるカーボンナノチューブの両端は、それぞれ、前記電極に電気的に接続される。前記カーボンナノチューブ構造体が、複数のカーボンナノチューブ線状構造体を含む場合、該複数のカーボンナノチューブ線状構造体が平行に配列され、又は交叉して配列される。前記交叉して配列されたカーボンナノチューブ線状構造体の交叉する角度は、制限されない。前記各々のカーボンナノチューブ線状構造体を設置する方式が制限されず、均一な加熱素子を形成することができることを確保してもよい。
【0072】
前記基体の材料は、高分子材料及び無機非金属材料などの一種又は数種である。前記線熱源の加熱素子を製造する過程において、前記基体の材料又は該基体の材料に形成された前駆体は、前記カーボンナノチューブ構造体の隙間又は微孔の中に浸透し、該カーボンナノチューブ構造体と緊密に接合することができる。前記基体の材料は固化された後、複合構造を形成するように、所定の温度で液体又は気体でなければならない。また、前記線熱源が作動して生じた熱で、前記線熱源を破壊し、又は変形させないために、前記基体は耐熱性材料からなることが必要である。
【0073】
具体的には、前記高分子材料は、熱可塑性ポリマー及び熱硬化性ポリマーの一種又は数種である。例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、繊維素、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどの一種又は数種である。前記無機非金属材料は、ガラス、セラミックス、半導体材料の一種又は数種である。本実施例において、前記基体の材料は、エポキシ樹脂である。また、前記基体の材料は、柔軟性の高分子材料であってもよい。例えば、シリコンゴム、ポリウレタン、ポリメタクリル酸メチル樹脂の一種又は数種である。
【0074】
前記基体材料は、前記カーボンナノチューブ構造体の微孔の中だけに添加してもよく、前記カーボンナノチューブ構造体を完全に被覆してもよい。前記加熱素子が、複数のカーボンナノチューブ構造体を含む場合、該カーボンナノチューブ構造体が隙間を置いて、或いは、互いに接触して前記基体の材料の中に設置される。前記加熱素子に異なる位置に異なる加熱温度を有させるように、実際の応用に応じて、前記カーボンナノチューブフィルム又はカーボンナノチューブワイヤを前記基体材料における所定の位置に設置することができる。
【0075】
前記基体の材料は、前記カーボンナノチューブ構造体の微孔の中に浸漬するので、該カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブを固定することができる。従って、前記線熱源が使用される過程において、前記カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブが外力で脱離することができない。前記基体の材料で、前記カーボンナノチューブ構造体を被覆させる場合、更に該カーボンナノチューブ構造体を保護でき、該加熱素子と外部とを絶縁させる。また、前記基体材料により、熱を均一的に伝送することができる。前記カーボンナノチューブ構造体が急速に昇温する場合、該基体材料により、前記加熱素子を徐々に昇温させることができる。さらに、前記基体材料は、前記カーボンナノチューブ複合構造体の柔軟性及び強靭性を増加することができる。
【0076】
前記基体材料と前記自立構造体を有するカーボンナノチューブ構造体とを直接複合して製造する加熱素子において、前記カーボンナノチューブは均一的に分布し、その含有量が1%〜99%であるので、前記加熱素子を利用した熱源の放熱温度を高めることができる。前記加熱素子におけるカーボンナノチューブが、均一的に分布し、導電通路を形成することができ、従来技術におけるカーボンナノチューブが、溶液に分散された濃度に制限されることと比べて、該カーボンナノチューブは、前記加熱素子における含有量が99%に達することができる。
【0077】
前記二つの電極は、前記加熱素子に電気的に接続しなければならない。前記二つの電極は導電材料からなり、前記加熱素子の同じ表面、又はそれぞれ記加熱素子の対向する両表面に設置される。前記カーボンナノチューブ構造体の接着性又は導電接着剤を利用して、前記二つの電極を前記加熱素子の、前記反射層と対向する表面に設置することができる。導電接着剤を利用する場合、前記二つの電極と前記カーボンナノチューブ構造体とを電気的に接続させるのと同時に、前記二つの電極を前記カーボンナノチューブ構造体の表面によく固定させることができる。本実施例において、前記導電接着剤は、銀ペーストである。前記二つの電極によって、前記加熱素子に電圧を印加することができる。前記加熱素子が作動する場合、前記二つの電極の間の短路を防止し、該二つの電極の間に所定の抵抗を接続するために、該二つの電極は、所定の距離を置いて設置しなければならない。
【0078】
前記加熱素子の基体材料が、前記カーボンナノチューブ構造体の微孔にしか添加されない場合、前記カーボンナノチューブ構造体における一部のカーボンナノチューブが前記カーボンナノチューブ複合構造体の表面に露出するので、前記電極は、前記加熱素子の表面に設置して、前記カーボンナノチューブ構造体と電気的に接続できる。前記加熱素子の基体材料は、前記カーボンナノチューブ構造体に被覆される場合、前記電極と前記カーボンナノチューブ構造体とに電気的に接続させるために、該電極を前記カーボンナノチューブ複合構造体の中に設置し、前記カーボンナノチューブ構造体に直接に接続させる。前記電極を外部電源に電気的に接続させるために、該電極の一部は、前記カーボンナノチューブ複合構造体の外部に露出し、或いは、二つのリード線により、それぞれ前記二つの電極を、前記カーボンナノチューブ複合構造体の外部に引き出す。
【0079】
前記カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブの配列方向が同じである場合、前記カーボンナノチューブは一つの電極から、もう一つの電極へ延伸するように配列されている。例えば、前記カーボンナノチューブ構造体が、ドローン構造カーボンナノチューブフィルムを含む場合、前記二つの電極を、それぞれ前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの長軸方向に垂直して配置させる。
【0080】
前記電極は、導電フィルム、金属シート又は金属リード線である。前記導電フィルムの材料は、金属、合金、酸化インジウムスズ(ITO)フィルム、酸化アンチモンスズ(ATO)、銀ペースト、導電重合体又はカーボンナノチューブ構造体などである。前記金属は、アルミニウム、銅、タングステン、モリブデン、金、チタン、ネオジム、パラジウム又はセシウムなどである。前記合金は、前記金属の合金である。前記電極がカーボンナノチューブ構造体からなる場合、該カーボンナノチューブ構造体は、ドローン構造カーボンナノチューブフィルム、超長構造カーボンナノチューブフィルム、非ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造体、ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造体を含む。該カーボンナノチューブフィルム又はカーボンナノチューブ線状構造体は、金属性を有するカーボンナノチューブを含むことが必要である。この場合、該カーボンナノチューブ構造体が自体の接着性又は導電接着剤によって、前記反射層又は前記線状支持体202の表面に固定する。前記金属シート又は金属リード線の材料は、銅又はアルミニウムなどである。前記電極が金属シートである場合、該金属シートを、導電接着剤で前記加熱素子の表面に固定することができる。
【0081】
前記二つの電極が前記カーボンナノチューブ構造体である場合、該カーボンナノチューブ構造体が接着性を有するので、前記二つの電極は、直接前記反射層の表面を被覆し、又は巻き付くことができる。或いは、前記二つの電極は、導電接着剤で前記反射層の表面に接着させてもよい。該二つの電極を前記加熱素子に電気的に接続させると同時に、該加熱素子の表面によく固定させる。
【0082】
前記保護層の材料は、例えば、プラスチック、ゴム及び樹脂などの絶縁材料である。前記保護層の厚さは、0.5ミリメートル〜2ミリメートルであることが好ましい。前記保護層を前記加熱素子の、前記反射層と対向する表面と反対する表面に被覆させることにより、前記線熱源を絶縁状態で使用でき、ほこりが前記加熱素子に付着することを防止できる。勿論、前記保護層を設置しなくてもよい。
【0083】
前記線熱源の二つの電極をそれぞれ電源(図示せず)に電気的に接続させ、前記二つの電極により前記加熱素子に電圧を印加した場合、該線熱源における加熱素子のカーボンナノチューブ複合構造体は、所定の波長を有する電磁波を放出することができる。加熱対象が、前記線熱源に直接接触し、又は、前記線熱源と所定の距離を置いて設置されてもよい。前記カーボンナノチューブ構造体から放出された電磁波が生じた熱により、前記加熱対象を加熱することができる。前記加熱素子の寸法及び該加熱素子に印加された電圧を制御することにより、前記加熱素子から放出される熱を制御することができる。前記電圧が一定である場合、前記加熱素子の厚さを変化させることにより、前記加熱素子から放出された電磁波の波長を調整することができる。即ち、前記加熱素子が厚くなるほど、前記加熱素子から放出された電磁波の波長は短くなる。前記加熱素子の厚さが一定である場合、前記加熱素子に印加された電圧が大きくなるほど、前記加熱素子から放出された電磁波の波長は短くなる。従って、前記線熱源は簡単に制御することができる。
【0084】
前記線熱源が応用された場合、前記基体材料の耐熱程度に応じて、前記二つの電極に印加された電圧を制御し、前記カーボンナノチューブ複合構造体の放熱温度を前記基体材料の耐熱温度範囲に制限させることができる。例えば、前記基体材料が高分子ポリマーである場合、前記加熱素子に10V以下の電圧を印加しなければならない。この時、該線熱源の温度が120℃以下になる。前記基体材料がセラミックスである場合、前記加熱素子に10V〜30Vの電圧を印加しなければならない。この時、該線熱源の温度が120℃〜500℃である。前記加熱素子は、熱輻射が安定し、熱放出の効率が高く、放出する熱量が大きいという優れた点がある。
【0085】
前記線熱源のカーボンナノチューブ複合構造体における基体材料は、柔軟性のポリマーであり、前記線状支持体202も柔軟性の材料で製造された場合、該線熱源は、柔軟性の線熱源である。前記線熱源が使用される時、加熱対象を前記線熱源に直接接触してもよく、又は加熱対象を前記線熱源と所定の距離を置いて設置してもよい。
【0086】
図14を参照すると、前記線熱源の製造方法について説明する。
【0087】
第一ステップでは、カーボンナノチューブ構造体及び線状の支持体を提供する。
【0088】
前記カーボンナノチューブ構造体の構造及びその製造方法については、上述の内容を参照する。
【0089】
前記線状の支持体は、一次元の構造であり、前記加熱素子を支持することに用いられる。該線状の支持体の材料は、例えば、セラミックス、ガラス、樹脂、石英などの硬性材料であってもよく、プラスチック及び柔らかい繊維などの柔らかい材料であってもよい。前記線状の支持体が柔らかい材料からなる場合、前記線熱源は、任意の形状に湾曲することができる。前記線状の支持体は絶縁材料からなるとが好ましい。
【0090】
第二ステップでは、前記カーボンナノチューブ構造体を前記線状の支持体の表面に設置する。
【0091】
前記カーボンナノチューブ構造体が接着性を有するので、該カーボンナノチューブ構造体を前記線状の支持体の表面に直接に被覆し、又は巻き付いてもよく、前記カーボンナノチューブ構造体が自体の接着性を利用して、前記線状の支持体の表面に固定される。或いは、シリカゲルなどの接着剤を利用して、前記カーボンナノチューブ構造体を前記線状の支持体の表面に固定する。
【0092】
前記カーボンナノチューブ構造体を前記線状の支持体の表面に設置する前に、塗布又はコーティングなどの方法で該線状の支持体の表面に反射層210を形成する。該反射層の材料は、例えば、金属酸化物、金属塩及びセラミックスなどの絶縁材料である。本実施例において、前記反射層は、酸化アルミニウム膜であり、その厚さが100マイクロメートルである。前記反射層は、前記カーボンナノチューブ構造体から放出された熱を反射し、熱を外界の空間に放出させる。
【0093】
勿論、前記反射層を設置せず、前記加熱素子を前記線状の支持体の表面に直接設置することもできる。
【0094】
第三ステップでは、二つの電極を、間隔を置いて設置し、該二つの電極にカーボンナノチューブ構造体と電気的に接続させる。
【0095】
前記二つの電極は、導電材料からなり、前記カーボンナノチューブ構造体の同じ表面、又はそれぞれ前記カーボンナノチューブ構造体の対向する両表面に設置される。前記二つの電極は、前記カーボンナノチューブ構造体の接着性又は導電接着剤を利用して、前記加熱素子の表面に設置することができる。前記導電接着剤は、前記二つの電極と前記カーボンナノチューブ構造体とが電気的に接続するのと同時に、前記二つの電極を前記カーボンナノチューブ構造体の表面によく固定することができる。前記二つの電極によって、前記加熱素子に電圧を印加することができる。前記加熱素子が加熱される際に、短路を防止するように、所定の抵抗を接続するために、前記二つの電極は、所定の距離を置いて設置しなければならない。
【0096】
前記電極は、導電フィルム、金属シート又は金属リード線である。前記導電フィルムの材料は、金属、合金、酸化インジウムスズ(ITO)フィルム、酸化アンチモンスズ(ATO)、銀ペースト、導電重合体又はカーボンナノチューブ構造体などである。前記導電フィルムは、物理気相堆積法、化学気相堆積法又は他の方法で前記カーボンナノチューブ構造体の表面に形成する。前記金属シート又は金属リード線の材料は、銅又はアルミニウムなどである。該金属シート又は金属リード線は、導電接着剤で前記カーボンナノチューブ構造体の表面に固定することができる。
【0097】
前記電極は、金属性のカーボンナノチューブ構造体であってもよい。該カーボンナノチューブ構造体は、図3、図11、図12又は図13の示すような構造である。
【0098】
勿論、前記カーボンナノチューブ構造体の表面に平行して間隔を置いて設置される二つの電極を形成し、該電極が前記カーボンナノチューブ構造体に電気的に接続する。次に、前記電極が形成されたカーボンナノチューブ構造体を前記線状の支持体の表面に設置する。電極を形成した後、該電極から外部電源に引き出す二つの金属リード線を形成することができる。
【0099】
第四ステップでは、基体材料の予製体を提供し、該基体材料の予製体と前記カーボンナノチューブ構造体とを複合し、カーボンナノチューブ複合構造体を形成する。
【0100】
前記基体材料の予製体は、基体材料からなる溶液、該基体材料を製造する前駆反応物である。該基体材料の予製体は、所定の温度で液体又は気体である。前記基体材料と前記カーボンナノチューブ構造体とが複合する方法は、塗布、堆積、印刷及び浸漬などの一種である。
【0101】
前記基体の材料は、高分子材料及び非金属材料などの一種又は数種である。具体的には、前記高分子材料が熱可塑性ポリマー及び熱硬化性ポリマーの一種又は数種であるので、前記基体材料の予製体は、熱可塑性ポリマー及び熱硬化性ポリマーに形成するポリマー単体の溶液である。或いは、前記熱可塑性ポリマー又は熱硬化性ポリマーが揮発性の有機溶剤に溶解し、形成された混合溶液である。前記非金属材料が、ガラス、セラミックス又は半導体材料などであるので、前記基体材料の予製体は、非金属材料粒子で製造されたペースト、非金属材料を製造する反応気体、気体状態の非金属材料である。具体的には、真空蒸着、スパッター、化学気相堆積法、物理気相堆積法などの方法で気体の基体材料の予製体を形成し、該基体材料の予製体を前記カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブの表面に堆積させる。また、多くの非金属材料粒子を溶剤に分散し、ペーストを形成し、前記基体の材料の予製体とする。
【0102】
前記基体の材料の予製体が液体である場合、該液体の基体の材料の予製体が前記カーボンナノチューブ構造体に浸漬し、該基体の材料の予製体を固化することによって、前記基体の材料を前記カーボンナノチューブ構造体の微孔の中に浸透し、カーボンナノチューブ複合構造体を形成する。前記基体の材料の予製体がペーストである場合、塗布、吹き付け塗装などの方法によって、前記カーボンナノチューブ構造体と複合構造を形成する。
【0103】
前記第三ステップにおいて、電極を形成するステップを、前記第四ステップにおける前記カーボンナノチューブ複合構造体を形成した後に、行なってもよい。前記基体材料が前記カーボンナノチューブ構造体の微孔の中だけに添加する場合、即ち、前記カーボンナノチューブの一部が前記カーボンナノチューブ複合構造体の表面に露出する場合、前記第三ステップと同じ方法で前記二つの電極に前記カーボンナノチューブ構造体と電気的に接続させることができる。前記基体材料が前記カーボンナノチューブ構造体の表面を被覆する場合、前記カーボンナノチューブに前記カーボンナノチューブ複合構造体の表面に露出させるように、切断する方法で前記カーボンナノチューブ複合構造体を切る。その後、前記第三ステップと同じ方法で前記二つの電極に前記露出したカーボンナノチューブ構造体と電気的に接続させることができる。
【0104】
前記保護層の材料は、例えば、プラスチック、ゴム及び樹脂などの絶縁材料である。前記保護層の厚さが制限されず、実際の応用に応じて選択することができる。前記保護層は、接着剤又は機械固定の方法で前記加熱素子の表面に固定する。また、前記保護層の材料が熱可塑性ポリマーである場合、該熱可塑性ポリマーを高温で前記加熱素子の表面に塗布又は被覆し、低温で固化し、前記保護層を形成するようになる。前記保護層の材料が例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの柔軟性のポリマーである場合、熱プレスの方法で前記保護層と前記加熱素子とを結合させる。
【0105】
(実施例1)
図15〜図17を参照すると、本発明実施例1は、線熱源20を提供する。該線熱源20は、線状の支持体202と、反射層210と、加熱素子204と、保護層208と、二つの電極206とを含む。
【0106】
前記反射層210は、前記線状の支持体202の一つ表面に設置される。前記加熱素子204は、前記反射層210の、前記支持体202と対向する表面と反対する表面に設置される。前記二つの電極206は、間隔を置いて前記加熱素子204の表面に設置され、それぞれ、前記加熱素子204に電気的に接続される。前記保護層208は、前記加熱素子204の、前記反射層201と対向する表面と反対する表面に設置される。前記線熱源20の直径が1.1ミリメートル〜1.1センチメートルであることが好ましい。前記二つの電極206は、電源に電気的に接続することに用いられる。
【0107】
前記線状の支持体202は、前記線状の支持体202は、セラミックスの円柱体であり、その直径が1ミリメートルである。
【0108】
前記反射層210は、酸化アルミニウム膜であり、その厚さが100マイクロメートルである。前記反射層210は、スパッターの方法で前記線状の支持体202の表面に形成される。
【0109】
前記加熱素子204におけるカーボンナノチューブ構造体、積層された百枚のドローン構造カーボンナノチューブフィルムであり、基体材料は、エポキシ樹脂である。前記エポキシ樹脂は、前記カーボンナノチューブ構造体の複数の微孔の中に浸透する。前記加熱素子204において、隣接するカーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの配列方向が垂直する。一部のカーボンナノチューブは、前記第一電極12から前記第二電極14へ延伸する方向に沿って配列される。前記加熱素子204は、面積が9平方センチメートルであり、長さが3センチメートルであり、幅が3センチメートルである。前記加熱素子204は、前記反射層210及び前記二つの電極206を被覆し、該二つの電極206に電気的に接続される。該二つの電極206は、ドローン構造カーボンナノチューブフィルムからなる。該二つのカーボンナノチューブフィルムはそれぞれ、前記線状支持体202の長手方向に沿う両端に設置し、前記加熱素子204の内表面に巻き付け、導電接着剤で前記加熱素子204と電気的に接続する。該導電接着剤が銀ペーストであることが好ましい。本実施例における加熱素子204はカーボンナノチューブ構造体からなるので、前記電極206と前記加熱素子204との間が小さいオーミック接触抵抗を有し、前記線熱源20が電気エネルギーを利用する比例を高めることができる。
【0110】
前記保護層208はゴムからなり、その厚さが0.5ミリメートルである。
【0111】
図18は、ドローン構造カーボンナノチューブフィルムを含む前記カーボンナノチューブ複合構造体におけるカーボンナノチューブの長軸方向に垂直な方向沿って、前記カーボンナノチューブ複合構造体を切断し、形成された断面の写真である。図18を参照すると、前記カーボンナノチューブとエポキシ樹脂とが複合した後、前記カーボンナノチューブが前記エポキシ樹脂において、基本的に同じ方向に沿って配列する状態を保持することができることが分かる。
【0112】
図15〜図17を参照して、前記線熱源20の製造方法について説明する。
【0113】
第一ステップでは、カーボンナノチューブ構造体及び線状の支持体202を提供する。
【0114】
前記カーボンナノチューブ構造体の構造及びその製造方法については、上述の内容を参照する。
【0115】
前記線状の支持体202は、前記加熱素子204を支持することに用いられる。該線状の支持体202セラミックスの円柱体であり、その直径が1センチメートルである。
【0116】
第二ステップでは、前記カーボンナノチューブ構造体を前記線状の支持体202の表面に設置する。
【0117】
前記カーボンナノチューブ構造体は、積層された百枚の前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルムを含む。隣接するカーボンナノチューブフィルムは分子間力で緊密に接続される。
【0118】
前記カーボンナノチューブ構造体を前記線状の支持体202の表面に設置する前に、塗布又はコーティングなどの方法で該線状の支持体202の表面に反射層210を形成する。該反射層210の材料は、酸化アルミニウム膜であり、その厚さが100マイクロメートルである。前記反射層210は、前記カーボンナノチューブ構造体から放出された熱を反射し、熱を外界の空間に放出させる。その後、シリカゲルなどの接着剤を利用して、前記カーボンナノチューブ構造体を、前記反射層210の前記線状の支持体202と対向する表面とは反対側の表面に固定する。
【0119】
勿論、前記反射層210を設置せず、前記加熱素子204を前記線状の支持体202の表面に直接設置することもできる。
【0120】
第三ステップでは、二つの電極206を、間隔を置いて設置し、該二つの電極206にカーボンナノチューブ構造体と電気的に接続させる。
【0121】
本実施例において、スパッターの方法で前記カーボンナノチューブ構造体の表面に電極206とする二つのパラジウムフィルムを堆積した後、該二つのパラジウムフィルムをそれぞれ、金属リード線に電気的に接続する。
【0122】
勿論、本実施例において、まず、前記カーボンナノチューブ構造体の表面に平行して間隔を置いて設置される二つの電極206を形成し、該電極206が前記カーボンナノチューブ構造体に電気的に接続する。次に、前記電極206が形成されたカーボンナノチューブ構造体を前記線状の支持体202の表面に設置する。電極206を形成した後、該電極206から外部電源に引き出す二つの金属リード線を形成することができる。
【0123】
第四ステップでは、基体材料の予製体を提供し、該基体材料の予製体と前記カーボンナノチューブ構造体とを複合し、カーボンナノチューブ複合構造体を形成する。
【0124】
本実施例において、グルーを注射する方法で、高分子材料とカーボンナノチューブ構造体とを複合し、カーボンナノチューブ複合構造体を形成する。図19を参照すると、該方法は、下記の工程を含む。
【0125】
第一サブステップでは、液体の熱硬化性の高分子材料を提供する。該液体の熱硬化性の高分子材料の粘度が5パスカル・秒以下であり、室温で前記粘度が30分時間以上を保持することができる。前記熱硬化性の高分子材料は、高分子材料及び、固化剤、改質剤、填料又は稀釈剤などの添加物を含む。
【0126】
前記高分子材料が前記熱硬化性の高分子材料における質量パーセンテージの含有量は、70%〜95%である。前記添加物が前記熱硬化性の高分子材料における質量パーセンテージの含有量は、5%〜30%である。前記高分子材料は、フェノール樹脂(Phenolic resin)、エポキシ樹脂(Epoxy resin)、ビスマレイミド樹脂(Bismaleimide)ポリベンゾオキサジン樹脂(Polybenzoxazines resin)樹脂、シアネート エステル樹脂(Cyanate seter resin)、ポリイミド樹脂、(Polyimide resin)、ポリウレタン(Polyurethane)、ポリメタクリル酸メチル樹脂 (PMMA) などの一種又は数種である。
【0127】
前記固化剤は、前記熱硬化性の高分子材料の固化を加速することに用いられ、脂肪族アミン(Aliphatic amine)、脂環式アミン(Alicyclic amine)、芳香族アミン(Aromatic amine)、ポリアミド(Polyamide)、酸無水物(Acid anhydride)、第三級アミン(Tertiary amines)、樹脂などの一種又は数種である。
【0128】
前記改質剤は、前記熱硬化性の高分子材料の柔軟性、抗せん断性、抗折性、絶縁性などを高めることができる。前記改質剤は、多硫化ゴム(Polysulfide rubber)、ポリアミド樹脂(Polyamide resin)などの一種又は数種である。
【0129】
前記添加物は、前記熱硬化性の高分子材料が固化された時の放熱条件を改善することに用いられ、該熱硬化性の高分子材料の用量を減少し、コストを減少することもできる。前記添加物は、石綿繊維、ガラス繊維、石英の粉末、酸化アルミニウム、シリカゲルの粉などの一種又は数種である。
【0130】
前記稀釈剤は、ジグリシジルエーテル(Diglycidyl ether)、ポリグリシジルエーテル(Polyglycidyl ether)、アリルフェノール(Allylphenol)などの一種又は数種である。
【0131】
本実施例は、エポキシ樹脂で液体の熱硬化性の高分子材料を製造することが好ましい。具体的には、下記のステップを含む。
【0132】
まず、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂及びグリシド酸エステル型エポキシ樹脂の混合物を容器に置き、該混合物を30℃〜60℃に加熱し、且つ該混合物を均一的に混合させるように、該混合物を10分間に撹拌する。
【0133】
次に、脂肪族アミン及びジグリシジルエーテルを前記混合物に添加し、化学反応を行なって、反応産物を形成する。
【0134】
最後に、前記反応産物を30℃〜60℃に加熱し、エポキシ樹脂を含む液体の熱硬化性の高分子材料を形成する。
【0135】
第二サブステップでは、前記液体の熱硬化性の高分子材料で前記カーボンナノチューブ構造体を浸漬する。
【0136】
前記液体の熱硬化性の高分子材料で前記カーボンナノチューブ構造体を浸漬する方法は、下記のステップを含む。
【0137】
まず、前記カーボンナノチューブ構造体が設置された線状支持体202を金型の中に置く。
【0138】
次に、前記カーボンナノチューブ構造体を浸漬するために、前記液体熱硬化性の高分子材料を前記金型の中に注射する。前記液体の熱硬化性の高分子材料が前記カーボンナノチューブ構造体を十分に浸漬するために、該カーボンナノチューブ構造体を浸漬する時間は、10分間以上である。
【0139】
本実施例において、積層された百枚のカーボンナノチューブフィルムをセラミックスの線状支持体202の表面に被覆した後、該線状支持体202を金型の中に置く。液体のエポキシ樹脂を前記金型の中に注射し、前記カーボンナノチューブ構造体を20分間以上浸漬する。
【0140】
前記液体の熱硬化性の高分子材料が前記カーボンナノチューブ構造体を浸漬する方法は、前記注射する方法に限らず、該液体の熱硬化性の高分子材料が毛細管現象により、前記カーボンナノチューブ構造体に吸入され、該カーボンナノチューブ構造体を浸漬させ、或いは、前記カーボンナノチューブ構造体を前記液体の熱硬化性の高分子材料の中に浸漬することができる。
【0141】
第三サブステップでは、前記液体の熱硬化性の高分子材料を固化させ、カーボンナノチューブ高分子材料複合構造体を形成する。
【0142】
本実施例において、エポキシ樹脂を含む熱硬化性の高分子材料を固化させる方法は、下記の工程を含む。
【0143】
まず、加熱装置により、前記金型を50℃〜70℃に加熱して、該温度の下で、前記エポキシ樹脂を含む熱硬化性の高分子材料が液体である。前記熱硬化性の高分子材料が固化される程度を増加するように、前記温度を1時間〜3時間保持し、前記熱硬化性の高分子材料に熱を吸収し続けさせる。
【0144】
次に、前記熱硬化性の高分子材料が固化される程度を増加するように、前記金型を80℃〜100℃に加熱し続けて、該温度の下で1時間〜3時間保持する。
【0145】
その後で、前記熱硬化性の高分子材料が固化される程度を増加するように、前記金型を110℃〜150℃に加熱し続けて、該温度の下で2時間〜20時間保持する。
【0146】
最後、加熱することを止めて、前記金型が室温に下げた後で、離型してカーボンナノチューブ高分子材料複合構造体を形成する。
【0147】
前記加熱方法において、前記金型を直接に110℃〜150℃に加熱することにより、前記熱硬化性の高分子材料を固化することもできる。
【0148】
第五ステップでは、前記加熱素子204の表面に保護層208を形成し、該加熱素子204を被覆するようになる。
【0149】
前記保護層208の材料は、ゴムを採用し、ゴムの厚さが0.5ミリメートルである。前記保護層208は、接着剤又は機械固定の方法で前記加熱素子204の表面に固定する。
【0150】
図20を参照すると、前記実施例1における加熱素子204が柔軟性のカーボンナノチューブ複合構造体である場合、前記線熱源20は、下記の方法により、製造することができる。
【0151】
第一ステップでは、カーボンナノチューブ構造体を提供する。
【0152】
第二ステップでは、柔軟性の基体材料の予製体を提供し、該柔軟性の基体材料の予製体および前記カーボンナノチューブ構造体を複合し、柔軟性のカーボンナノチューブ複合構造体を形成する。
【0153】
第三ステップでは、線状支持体202を提供し、前記柔軟性のカーボンナノチューブ複合構造体を前記線状支持体202の表面に設置する。
【0154】
第四ステップでは、間隔を置いて二つの電極206を設置し、該二つの電極206にそれぞれ前記柔軟性のカーボンナノチューブ複合構造体におけるカーボンナノチューブ構造体に電気的に接続させる。
【0155】
勿論、前記カーボンナノチューブ構造体に電気的に接続するように、間隔を置いて二つの電極206を形成した後、該カーボンナノチューブ構造体及び前記柔軟性の基体材料の予製体を複合し、カーボンナノチューブ複合構造体が形成してもよい。
【0156】
(実施例2)
図21を参照すると、本発明の実施例2による線熱源が提供される。該線熱源30は、加熱素子304、該加熱素子304に間隔を置いて設置され、該加熱素子304に電気的に接続する二つの電極306を含む。前記加熱素子304は、線状のカーボンナノチューブ複合構造体を含む。該線状のカーボンナノチューブ複合構造体は、前記線状のカーボンナノチューブ複合構造体と同じである。前記線状のカーボンナノチューブ複合構造体は、少なくとも、一つのカーボンナノチューブ線状構造体及び基体材料を含み、該基体材料が前記カーボンナノチューブ線状構造体の微孔の中に浸漬される。前記線状のカーボンナノチューブ複合構造体は、基体及び該基体の中に複合された少なくとも一つのカーボンナノチューブ線状構造体を含む。
【0157】
前記カーボンナノチューブ線状構造体を前記金型の中に置って前記液体の熱硬化性の高分子材料を前記金型の中に注射して、該カーボンナノチューブ線状構造体を浸漬した後、加熱することにより、液体の熱硬化性の高分子材料を固化し、線状のカーボンナノチューブ複合構造体を形成するようになることは理解されたい。前記カーボンナノチューブ線状構造体及び基体材料は、実施例1におけるカーボンナノチューブ線状構造体及び基体材料と同じである。前記カーボンナノチューブ線状構造体が自立構造を有するので、前記線状のカーボンナノチューブ複合構造体も自立構造を有する。前記電極306は、前記線状のカーボンナノチューブ複合構造体の表面に設置し、カーボンナノチューブ線状構造体に電気的に接続する。前記電極306の材料は、前記実施例1における電極206の材料と同じである。
【0158】
(実施例3)
図22を参照すると、本発明の実施例3に係る線熱源40が提供される。該線熱源40は、線状の支持体402、該線状の支持体402の表面に設置された反射層410、加熱素子504及び二つの電極(図示せず)を含む。該加熱素子504が一本のカーボンナノチューブ線状構造体を含む。該カーボンナノチューブ線状構造体は、前記反射層410の、前記線状の支持体402と対向する表面と反対側の表面に巻き付いている。該カーボンナノチューブ線状構造体の両端はそれぞれ、二つの電極に電気的に接続されることである。前記カーボンナノチューブ線状構造体は、非ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造体、又はねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造体である。また、前記カーボンナノチューブ線状構造体は、一本のカーボンナノチューブワイヤだけを含んでもよい。
【0159】
前記二つの電極は一本の前記カーボンナノチューブ線状構造体を含む。該カーボンナノチューブ線状構造体は、該線状構造体の長手方向に沿って平行に配列された複数の非ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤを含む。
【0160】
(実施例4)
図23を参照すると、本発明の実施例3に係る線熱源50が提供される。該線熱源50は、線状の支持体502、該線状の支持体502の表面に設置された反射層510、加熱素子504及び二つの電極(図示せず)を含む。前記加熱素子504が複数のカーボンナノチューブ線状構造体を含み、該複数のカーボンナノチューブ線状構造体は交叉して配列されている。一部の前記複数のカーボンナノチューブ線状構造体は平行に配列され、それらの対向する端部はそれぞれ二つの電極に電気的に接続されている。もう一部の前記複数のカーボンナノチューブ線状構造体は、前記カーボンナノチューブ線状構造体に垂直に配列される。前記カーボンナノチューブ線状構造体は、非ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造体、又はねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造体である。
【0161】
前記カーボンナノチューブ構造体が、カーボンナノチューブフィルムとカーボンナノチューブ線状構造体との複合構造でもあってもよい。前記カーボンナノチューブ線状構造体が前記カーボンナノチューブフィルムに設置され、加熱素子504を形成する。
【0162】
前記実施例3及び前記実施例4に係る線熱源の製造方法は、前記実施例1に係る線熱源20の製造方法と基本的に同じである。
【0163】
前記線熱源及び該線熱源の製造方法には、下記の優れた点がある。
【0164】
前記基体材料と前記自立構造体を有するカーボンナノチューブ構造体とを直接に複合し、加熱素子を形成することによって、前記カーボンナノチューブが、前記加熱素子において、カーボンナノチューブ構造体の形態を保持するので、前記加熱素子におけるカーボンナノチューブが、均一的に分布し、導電通路を形成することができ、溶液に分散された濃度が制限されなく、該カーボンナノチューブは、前記加熱素子における含有量が99%に達することができる。従って、前記線熱源の放熱温度が高めることができる。
【0165】
前記線熱源において、加熱素子がカーボンナノチューブ構造体を含み、該カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブが均一的に配列され、該加熱素子が均一な厚さ及び抵抗を有するので、該加熱素子は、均一的に熱を放出することができる。前記カーボンナノチューブが電気エネルギーを熱エネルギーに転換する効率が、高いので、前記線熱源は、昇温速度が速く、熱応答速度が速く、熱交換速度が速い。
【0166】
前記加熱素子おけるカーボンナノチューブは、優れた力学性能、優れた靭性及び優れた機械強度を有するので、該加熱素子は、優れた力学性能、優れた靭性と機械強度を有し、使用寿命が長くなる。更に、カーボンナノチューブ構造体及び柔軟性の基体が複合し、前記加熱素子が形成する場合、該加熱素子を利用して、柔軟性の線熱源を製造することができる。
【0167】
前記加熱素子おけるカーボンナノチューブの直径が小さいので、該加熱素子は、厚さが小さい。従って、極めて小型の線熱源を製造することができ、該小型の線熱源を利用して、小型の加熱対象となる素子を加熱することができる。
【0168】
前記カーボンナノチューブ構造体が、超配列カーボンナノチューブアレイから引き出して得られたカーボンナノチューブフィルムからなる場合、前記カーボンナノチューブフィルムにおける複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って、端と端が接続されるので、優れた導電性を有する。従って、前記線熱源は、優れた加熱性能を有する。
【0169】
前記線熱源の製造方法は、簡単であり、コストが減少し、極めて小型の線熱源を製造することができる。
【符号の説明】
【0170】
20、30、40、50 線熱源
202、402、502 支持体
204、304、404、504 加熱素子
206、306 電極
208 保護層
210、410、510 反射層
143a カーボンナノチューブフィルム
143b カーボンナノチューブセグメント
145 カーボンナノチューブ
2042 基体
2044 カーボンナノチューブ構造体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状の支持体と、前記線状の支持体に被覆された加熱素子と、前記加熱素子と電気的に接続された二つの電極と、を含み、
前記加熱素子がカーボンナノチューブ複合構造体を含み、
該カーボンナノチューブ複合構造体が少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルム及び基体材料を含み、該カーボンナノチューブフィルム及び基体材料が複合され、
前記カーボンナノチューブフィルムが複数のカーボンナノチューブのみからなり、
該複数のカーボンナノチューブが、相互に絡み合っていることを特徴とする線熱源。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブフィルムにおいて、複数の微孔が形成され、前記基体材料が、前記複数の微孔の中に浸透されていることを特徴とする、請求項1に記載の線熱源。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブフィルムは、自立構造を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の線熱源。
【請求項4】
前記加熱素子及び前記線状の支持体の間に反射層が設置され、該反射層が前記加熱素子から放出された熱を反射することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の線熱源。
【請求項1】
線状の支持体と、前記線状の支持体に被覆された加熱素子と、前記加熱素子と電気的に接続された二つの電極と、を含み、
前記加熱素子がカーボンナノチューブ複合構造体を含み、
該カーボンナノチューブ複合構造体が少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルム及び基体材料を含み、該カーボンナノチューブフィルム及び基体材料が複合され、
前記カーボンナノチューブフィルムが複数のカーボンナノチューブのみからなり、
該複数のカーボンナノチューブが、相互に絡み合っていることを特徴とする線熱源。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブフィルムにおいて、複数の微孔が形成され、前記基体材料が、前記複数の微孔の中に浸透されていることを特徴とする、請求項1に記載の線熱源。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブフィルムは、自立構造を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の線熱源。
【請求項4】
前記加熱素子及び前記線状の支持体の間に反射層が設置され、該反射層が前記加熱素子から放出された熱を反射することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の線熱源。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2010−251326(P2010−251326A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97276(P2010−97276)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(598098331)ツィンファ ユニバーシティ (534)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(598098331)ツィンファ ユニバーシティ (534)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]