説明

縦型手摺

【課題】使用上の安全性に優れた縦型手摺を提供する。
【解決手段】上下一対の固定部材1、1と、該一対の固定部材1、1間に介設され使用者によって把持される直棒状の手摺本体2を備えるとともに、手摺本体2をその軸心回りに回転可能とし、且つ回転抵抗付与手段Xによって回転抵抗を付与する。係る構成によれば、手摺本体2を把持して人が歩行する場合、該手摺本体2を強く把持し続けても、手摺本体2が回転することから、手首を曲げる必要性が極めて少なく、自然な体勢で歩行できる。また、手摺本体2に回転抵抗が付与されることから、手摺本体2に体重の一部を掛けた状態で人が歩行する場合、回転抵抗によって、手摺本体2が身体との相対位置に拘らず不用意に回転するとか、過度に回転して身体の歩行が追いつかず体勢が崩れる等のことがなく、手摺本体2を確実に把持して体重の一部を手摺本体2に掛けて、自然な姿勢で安全に歩行できる。これらの結果、安全性に優れた縦型手摺を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、例えば、浴室内とかトイレ内等の比較的人の歩行範囲が狭い場所に設置されるに好適な縦型手摺に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、縦方向(上下方向)に向けて延設される縦型手摺は、例えば、特許文献1に示されるような浴室内の壁面とか、特許文献2に示されるようなトイレ内の壁面に設置されることが多い。このような浴室とかトイレの内部では人の歩行が比較的狭い範囲に限定されることから、ここでの人の歩行挙動は、内部壁面に設置された手摺を把持したまま、該手摺を中心とする略半円状の限られた範囲を歩行するものとなり、係る場合には壁面に沿って横方向へ延設された横型の手摺よりも、壁面に沿って縦方向へ延設された縦型の手摺の方が、上記挙動からして最も自然であると考えられるからである。
【0003】
ところで、このように縦型手摺の場合には、人がこれを把持して体重の一部を掛けたとき、手が滑り落ち易いことから、安定的な歩行挙動を確保するためには手摺を強く掴むことが必要となる。一方、上述のように、縦型手摺を使用する場合、人は手摺を把持したまま、該手摺を中心とする略半円状の範囲を歩行するのが一般的な使用形態であることから、手摺を強く把持すると歩行に伴って手首の曲りが次第に大きくなりスムーズな歩行が阻害されることになる。
【0004】
このような手摺の把持に関する相反する要求から、手摺の使用に際しては、例えば、
(ア)把持力を比較的低く抑えて、掌を手摺表面で滑らせながら連続的に歩行する、(イ)手摺を強く把持して体をある程度歩行させた後、一旦、把持力を緩めて体の位置に対応するように手摺を握り直し、再度歩行を開始する、
等の対応を余儀なくされており、これら何れにおいても、身体の安全且つスムーズな歩行を介助する、という手摺本来の機能が十分に発揮されているとは言えないものである。
【0005】
一方、手摺と同様に人が把持して使用するものとしてドアハンドルがあり、このドアハンドルにおいては、スムーズなドアの開閉を確保する等の観点から、把持部を回転可能に構成したものが提案されており(例えば、特許文献3、4 参照)、このドアハンドルにおける把持部の機能を縦型手摺に持ち込むことも考えられる。
【0006】
しかし、ドアハンドルは、人が同一位置に立ったまま腕の力でドアを開閉するものであって、手摺のような「把持力で人の体重の一部を負担する」という使用条件は無く、このドアハンドルの回転機構では、把持部をいかに軽快且つスムーズに回転させるか、が重要課題とされている。従って、「把持力で人の体重の一部を負担する」という使用条件を全く考慮するところの無いドアハンドルの回転機構を縦型手摺に適用した場合には、手摺が人の挙動に関係なく自由に回転することから、手摺を使用する人の安全性を確保することができず、場合によっては、不必要な手摺の回転によって体勢が崩れて転倒に至ることも懸念される。
【特許文献1】特開平7−150781号公報
【特許文献2】特開2000−197589号公報
【特許文献3】特開2000−179193号公報
【特許文献4】特開2005−23609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本願発明は、縦型手摺の使用条件を考慮した上で、使用上の安全性に優れた縦型手摺を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明では、上記課題を解決するために以下のような構成を採用している。
【0009】
本願の第1の発明では、上下方向に延設状態で壁面Wに配置される縦型手摺において、上記壁面Wに固定される上下一対の固定部材1、1と、該一対の固定部材1、1間に介設され使用者によって把持される直棒状の手摺本体2を備えるとともに、上記手摺本体2をその軸心回りに回転可能とし、且つ回転抵抗付与手段Xによって回転抵抗を付与するようにしたことを特徴としている。
【0010】
本願の第2の発明では、上記第1の発明に係る縦型手摺において、上記回転抵抗付与手段Xを、軸方向への弾性変形量に対応した弾圧力を発生する皿バネ10を備え、該皿バネ10の弾圧力を上記固定部材1と上記手摺本体2の相対摺接面に伝達して該相対摺接面に摩擦力を発生させるように構成したことを特徴としている。
【0011】
本願の第3の発明では、上記第1又は第2の発明に係る縦型手摺において、上記回転抵抗付与手段Xによる回転抵抗を調整する調整手段Yを備えたことを特徴
としている。
【0012】
本願の第4の発明では、上記第3の発明に係る縦型手摺において、上記調整手段Yを、上記皿バネ10の弾性変形量を増減調整する構成としたことを特徴としている。
【0013】
本願の第5の発明では、上記第1、第2、第3又は第4の発明に係る縦型手摺において、上記固定部材1を、上記壁面Wから略直交方向へ延出しその先端に上記手摺本体2が取付けられる構成、又は上記壁面Wから略直交方向へ延出したのち該壁面Wの面方向に沿って側方へ延出しその先端に上記手摺本体2が取付けられる構成としたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本願発明では次のような効果が得られる。
(a)本願の第1の発明に係る手摺装置によれば、上記壁面Wに固定される上下一対の固定部材1、1と、該一対の固定部材1、1間に介設され使用者によって把持される直棒状の手摺本体2を備えるとともに、上記手摺本体2をその軸心回りに回転可能とし、且つ回転抵抗付与手段Xによって回転抵抗を付与するようにしているので、
(a−1) 上記手摺本体2がその軸心回りに回転可能とされていることから、該手摺本体2を把持して人が歩行する場合、該手摺本体2を強く把持し続けても、該手摺本体2に対する身体の相対移動に追従して上記手摺本体2が回転し、該手摺本体2とこれを把持する手指及び掌の相対関係が当初のまま維持され、手首を曲げる必要性が極めて少なく、自然な体勢で歩行できる、
(a−2) 上記回転抵抗付与手段Xによって上記手摺本体2に回転抵抗が付与されることから、該手摺本体2を把持し且つ該手摺本体2に体重の一部を掛けた状態で人が歩行する場合、上記回転抵抗によって、上記手摺本体2が不用意に回転するとか、過度に回転して身体の歩行が追いつかず体勢が崩れる等のことが未然に防止され、
これらの相乗効果として、上記手摺本体2を確実に把持して体重の一部を上記手摺本体2に掛けて、自然な姿勢で安全に歩行することができるなど、安全性に優れた縦型手摺を提供できる。
(b)本願の第2の発明に係る手摺装置よれば、上記(a)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記回転抵抗付与手段Xを、軸方向への弾性変形量に対応した弾圧力を発生する皿バネ10の該弾圧力を上記固定部材1と上記手摺本体2の相対摺接面に伝達して該相対摺接面に摩擦力を発生させるように構成している。
【0015】
ここで、上記皿バネ10は、その特性として、軸方向寸法が小さく、且つ小さな軸方向(厚さ方向)への変形によって大きな弾圧力を発生させることができるものであることから、該皿バネ10によって上記摩擦力を発生させる構成とすることで、例えば、コイルスプリングの弾圧力によって摩擦力を発生させる構成の場合に比して、上記回転抵抗付与手段Xの上記手摺本体2又は上記固定部材1への組み込みが容易であり、その結果、縦型手摺のコンパクト化及び低コスト化が可能となる。
(c)本願の第3の発明に係る手摺装置よれば、上記(a)又は(b)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記回転抵抗付与手段Xによる回転抵抗を調整する調整手段Yを備えている。
【0016】
ここで、人の握力には個人差があり、上記手摺本体2を把持して人が歩行する場合、例えば、握力に対して上記手摺本体2の回転抵抗が大き過ぎると、人の歩行に追随させて上記手摺本体2を回転させることができず、該手摺本体2と掌の間に滑りが生じることになり、逆に、握力に対して上記回転抵抗が小さ過ぎると、人の歩行状態に関係なく上記手摺本体2が不用意に回転することになり、これら何れの場合にも歩行上の安全性が損なわれることになる。
【0017】
この場合、この発明のように、上記調整手段Yによって、手摺を使用する人の握力に対応させて上記手摺本体2の回転抵抗を設定すれば、握力の個人差に影響されることなく、常に安全性の高い歩行が実現され、延いては縦型手摺の商品価値の向上が図れる。
(d)本願の第4の発明に係る手摺装置よれば、上記(c)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記調整手段Yを、上記皿バネ10の弾性変形量を増減調整する構成としているので、該調整手段Yの構成が簡単であり、延いては縦型手摺の低コスト化が促進される。
(e)本願の第5の発明に係る手摺装置よれば、上記(a)、(b)、(c)又は(d)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記固定部材1を、上記壁面Wから略直交方向へ延出しその先端に上記手摺本体2が取付けられる構成、又は上記壁面Wから略直交方向へ延出したのち該壁面Wの面方向に沿って側方へ延出しその先端に上記手摺本体2が取付けられる構成としている。従って、前者の構成、即ち、平面Wに向かって見たとき上記手摺本体2が上記一対の固定部材1、1の固定位置と同一位置に存在する所謂「I形手摺」と、後者の構成、即ち、平面Wに向かって見たとき上記手摺本体2が上記一対の固定部材1、1の固定位置から側方へオフセットした位置に存在する所謂「オフセット手摺」の何れにおいても、上記手摺本体2に回転機能をもたせることができ、その結果、縦型手摺の多用途化、多機能化が促進される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本願発明を好適な実施形態に基づいて具体的に説明する。
【0019】
I:第1の実施形態
図1には、本願発明の第1の実施形態に係る縦型手摺Z1を示している。この縦型手摺Z1は、所謂「オフセット手摺」であって、上下一対の固定部材1、1と該各固定部材1,1間に連結された手摺本体2を備えて構成される。
【0020】
A:固定部材1
上記固定部材1は、樹脂一体成形品で構成され、図1〜図3に示すように、その基端に壁面Wへの固定ブラケット(図示省略)と該固定ブラケットを覆う取付部カバー20が装着された基部1aと、該基部1aの先端に連続して略直交方向へ延出する中間部1bと、該中間部1bの先端に連続して該中間部1bと上記基部1aを含む平面に略直交する方向へ延出する先端部1cを備えた二段屈曲構造をもつ管体であって、上記基部1aの基端を上記壁面Wに締着することで該壁面W側に固定保持される。なお、上側の固定部材1と下側の固定部材1は、各先端部1c、1cの先端同士を同軸上に対向させて壁面Wに固定できるように、反対勝手に形成されている。従って、以下においては、上側の固定部材1を例にとってその構造等を説明する。
【0021】
上記固定部材1の上記先端部1cの端部側の内周には、図3に示すように、次述する樹脂製の内挿体5が取付けられている。この内挿体5は、図4にも示すように、上記固定部材1の先端部1c内に嵌挿可能な外径を有するとともに、その軸心位置には大径穴5aと小径穴5bが連続して形成され、この大径穴5aと小径穴5bの境界部分には、該大径穴5aに臨む座部5cが設けられている。また、上記小径穴5b側の外周面は、他の部分より一段低位となるように小径に形成され、その境界部分には上記小径穴5bの端面側に臨む肩部5dが設けられている。
【0022】
上記内挿体5の上記大径穴5a内には、上下一対の平ワッシャ9,9に挟まれた状態で二枚の皿バネ10、10が背向状態で配置されており、これら各皿バネ10、10をその軸方向(即ち、厚さ方向)へ弾性変形させることで、該弾性変形量に対応した弾圧力が発生する。さらに、上側の平ワッシャ9の上面側には、樹脂製の可動体7が配置されている。
【0023】
このように、上記皿バネ10と可動体7が装着された上記内挿体5は、さらに上記可動体7にワッシャ13を介して六角穴付きの連結ボルト8を嵌挿した状態で、上記固定部材1の先端部1c内に、上記可動体7側を軸方向内側に向けた状態で嵌挿され、且つ上記先端部1cの外面側から螺入された固定ビス6が上記可動体7に設けたビス受け穴5eに係入することで、該先端部1c側に位置決め固定されその軸方向への移動が規制されている。
【0024】
上記内挿体5を上記固定部材1の先端部1c内に固定した状態では、上記連結ボルト8の頭部8aが、該先端部1cと上記中間部1bのコーナ部分に設けたキャップ受け穴18を通して外方に臨んでおり、該キャップ受け穴18を通してレンチ16を先端部1c内に差し入れて上記連結ボルト8を螺回操作することができるようになっている。なお、上記キャップ受け穴18は、キャップ15を挿入することで閉塞される。
【0025】
B:手摺本体2
手摺本体2は、縦型手摺Z1において使用者が把持する把持部分となるものであって、図1〜図4に示すように、金属製の直管でなる芯材3と、該芯材3の外周に嵌挿された軟質樹脂製の被覆材4で構成される。なお、上記被覆材4の軸長は、その両端からそれぞれ上記芯材3の端部が所定長さだけ延出するように設定されている。
【0026】
上記芯材3の両端部寄りの内周には、円板上の端板11が固定されるとともに、該端板11の軸心位置には緩み止め機能をもつナット12が固定されている。
【0027】
C:固定部材1と手摺本体2の組み付け
上記固定部材1と上記手摺本体2の組み付けは、以下の手順で行われる。
【0028】
即ち、上記固定部材1の先端部1cの端部側に、上記手摺本体2の端部に露出している上記芯材3の端部を差し込み、その端面3aを、上記固定部材1側の上記内挿体5の肩部5dに当接させる。この場合、上記固定部材1の先端部1cの端面と上記手摺本体2の上記被覆材4の端面間の隙間は、上記芯材3の端部に予め挿入しておいたリング14によって閉塞される。
【0029】
次に、上記固定部材1のキャップ受け穴18からレンチ16を差し込んで、該レンチ16によって上記連結ボルト8を回して、その先端側を上記手摺本体2側の上記ナット12に締め込む。この連結ボルト8の捩じ込みに伴って、上記手摺本体2が上記固定部材1側に引き寄せられ、上記芯材3の端面3aが上記固定部材1側の内挿体5の肩部5dに当接した時点で、上記手摺本体2の上記固定部材1側への引き寄せが停止され、これら両者の連結が完了する。
【0030】
後は、上記レンチ16によって上記連結ボルト8をさらに捩じ込めば、その捩じ込み量に対応する寸法だけ上記皿バネ10が弾性変形し、その弾性変形量に対応する弾圧力が発生し、この弾圧力が上記連結ボルト8及び上記端板11を介して上記芯材3側に伝達され、該芯材3の端面3aと上記内挿体5の肩部5dの相対摺接面に、上記皿バネ10の弾性変形量に対応した摩擦力が発生する。この相対摺接面に発生した摩擦力は、上記手摺本体2が上記固定部材1に対して相対回転される場合の回転抵抗として現れる。そして、この回転抵抗は、上記連結ボルト8の捩じ込み量を調整して上記皿バネ10の弾性変形量を増減変化させることで調整できる。
【0031】
以上のように上記手摺本体2の両端にそれぞれ上記固定部材1を取付けてこれらを一体化することで縦型手摺Z1が構成される。
【0032】
そして、この縦型手摺Z1では、上記手摺本体2に上記回転抵抗を上回る回転力が掛けられた場合、該手摺本体2は、上記芯材3の端面3aと上記内挿体5の肩部5dの相対摺接面においてこれら両者が相対摺動することで、回転されることになる。この場合、上記手摺本体2の回転力は、上記芯材3から上記端板11を介して上記ナット12に伝達されるが、このナット12が緩み止め機能をもつことから、該ナット12と一体的に上記連結ボルト8も回転することになる。
【0033】
従って、上記手摺本体2の回転に伴って上記ナット12から上記連結ボルト8がねじ戻されて上記皿バネ10の弾性変形量が変化すること、即ち、上記回転抵抗が変化することが未然に防止され、該回転抵抗は上記連結ボルト8の螺回操作によって上記皿バネ10の弾性変形量を積極的に変化させない限り、既設定状態のまま維持されることになる。
【0034】
なお、この縦型手摺Z1では、上記皿バネ10と連結ボルト8及びナット12によって特許請求の範囲中の「回転抵抗付与手段X」が構成される。また、上記連結ボルト8と上記ナット12によって、特許請求の範囲中の「調整手段Y」が構成される。
【0035】
D:縦型手摺Z1の壁面Wへの取付け
上記縦型手摺Z1は、図1に示すように、上記各固定部材1、1の各基部1a、1aが上記壁面W上における同一鉛直線上に位置するようにして、該壁面Wに固定される。
【0036】
この縦型手摺Z1は、壁面Wへの固定部、即ち、上記固定部材1の基部1aと、把持部となる上記手摺本体2が上記壁面Wの面方向に所定量だけオフセットされた形態であることから、例えば、浴室の入口部分のように、上記壁面Wの端部に、ドア開口Vが存在し、人がこのドア開口Vを通って出入りするもので、且つ該壁面Wとドア開口Vの稜線近傍には、固定強度上の理由から上記固定部材1を固定することができないにも拘らず、上記手摺本体2を把持性確保する観点から、できるだけ上記稜線に近づけて配置したいというような設置上の要求がある場合に好適な縦型手摺である。
【0037】
E:縦型手摺Z1の作用効果
上記縦型手摺Z1は、把持部となる上記手摺本体2が上下方向に延設された構成であることから、これを把持し且つ歩行介助のために該手摺本体2に体重の一部を掛けた場合、手が滑り落ち易く、このため、安定的な挙動を確保するために上記手摺本体2を比較的強く掴むことが必要となる。一方、上記手摺本体2を強く把持した場合、例えば、該手摺本体2が、従来のような回転機能をもたない構造であると、歩行に伴って手首の曲りが次第に大きくなりスムーズな歩行が阻害されることは既述の通りである。
【0038】
ところが、この実施形態の縦型手摺Z1においては、上記手摺本体2が回転可能な構造であって、且つ該手摺本体2の回転に対して所要の回転抵抗が付与され、しかもこの回転抵抗を増減調整できるようになっていることから、手が滑り落ち易いという縦型手摺に特有の欠点が克服され、安全性に優れた縦型手摺とされる。
【0039】
即ち、この実施形態に係る縦型手摺Z1では、上記手摺本体2がその軸心回りに回転可能とされていることから、該手摺本体2を把持して人が歩行する場合、該手摺本体2を強く把持し続けても、該手摺本体2に対する身体の相対移動に追従して上記手摺本体2が回転し、該手摺本体2とこれを把持する手指及び掌の相対関係が当初のまま維持され、手首を曲げる必要性が極めて少なく、自然な体勢で歩行できる。
【0040】
また、この縦型手摺Z1では、上記手摺本体2に回転抵抗が付与されることから、該手摺本体2を把持し且つ該手摺本体2に体重の一部を掛けた状態で人が歩行する場合、上記回転抵抗によって、上記手摺本体2が不用意に回転するとか、過度に回転して身体の歩行が追いつかず体勢が崩れる等のことが未然に防止される。
【0041】
これらの相乗効果として、上記手摺本体2を確実に把持して体重の一部を上記手摺本体2に掛けて、自然な姿勢で安全に歩行することができるなど、安全性に優れた縦型手摺を提供できる。
【0042】
さらに、この縦型手摺Z1では、上記皿バネ10の弾性変形量を増減調整することで上記手摺本体2の回転抵抗を調整できるようにしているので、例えば、縦型手摺Z1を使用する人の握力に対応させて上記手摺本体2の回転抵抗を設定すれば、例え人の握力に個人差があっても、この握力の個人差に影響されることなく、常に安全性の高い歩行が実現され、延いては縦型手摺Z1の商品価値が向上することになる。
【0043】
II:第2の実施形態
図5には、本願発明の第2の実施形態に係る縦型手摺Z2を示している。この縦型手摺Z2は、所謂「I型手摺」であって、平面状に延設された壁面Wの中間位置に配置するに好適な縦型手摺であって、上記第1の実施形態に係る縦型手摺Z1の場合と同様に、上下一対の固定部材1、1と該各固定部材1,1間に連結された手摺本体2を備えて構成され、且つ上記手摺本体2が回転機能を備え、しかも該手摺本体2の回転に対して所要の回転抵抗が付与されるとともに、この回転抵抗を増減調整できるものであって、上記第1の実施形態に係る縦型手摺Z1と異なる点は、上記固定部材1の形態のみである。
【0044】
即ち、後述の縦型手摺Z2における上記固定部材1は、その基端に壁面Wへの固定ブラケット(図示省略)と該固定ブラケットを覆う取付部カバー20が装着された基部1aと、該基部1aの先端に連続して略直交方向へ延出する先端部1cを備えたエルボ構造をもつ管体であって、上記基部1aの基端を上記壁面Wに締着することで該壁面W側に固定保持される。
【0045】
この縦型手摺Z2における上記固定部材1以外の構造、及び作用効果は上記第1の実施形態の縦型手摺Z1と同様であるので、これらについては上記第1の実施形態の該当説明を援用し、ここでの説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本願発明の第1の実施形態に係る縦型手摺の全体斜視図である。
【図2】図1に示した縦型手摺の断面図である。
【図3】図2のIII部の拡大図である。
【図4】図1に示した縦型手摺の端部の構造を示す分解斜視図である。
【図5】本願発明の第2の実施形態に係る縦型手摺の全体斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
1 ・・固定部材
2 ・・手摺本体
3 ・・芯材
4 ・・被覆材
5 ・・内挿体
6 ・・固定ビス
7 ・・可動体
8 ・・連結ボルト
9 ・・平ワッシャ
10 ・・皿バネ
11 ・・端板
12 ・・ナット
13 ・・ワッシャ
14 ・・リング
15 ・・キャップ
16 ・・レンチ
17 ・・ビス受け穴
18 ・・キャップ受け穴
20 ・・取付部カバー
W ・・壁面
X ・・回転抵抗付与手段
Y ・・調整手段
Z ・・縦型手摺

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延設状態で壁面(W)に配置される縦型手摺であって、
上記壁面(W)に固定される上下一対の固定部材(1)、(1)と、該一対の固定部材(1)、(1)間に介設され使用者によって把持される直棒状の手摺本体(2)を備えるとともに、
上記手摺本体(2)はその軸心回りに回転可能とされ、且つ回転抵抗付与手段(X)によって回転抵抗が付与される構成であることを特徴とする縦型手摺。
【請求項2】
請求項1において、
上記回転抵抗付与手段(X)が、軸方向への弾性変形量に対応した弾圧力を発生する皿バネ(10)を備え、該皿バネ(10)の弾圧力を上記固定部材(1)と上記手摺本体(2)の相対摺接面に伝達して該相対摺接面に摩擦力を発生させる構成であることを特徴とする縦型手摺。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記回転抵抗付与手段(X)による回転抵抗を調整する調整手段(Y)を備えたことを特徴とする縦型手摺。
【請求項4】
請求項3において、
上記調整手段(Y)は、上記皿バネ(10)の弾性変形量を増減調整する構成であることを特徴とする縦型手摺。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4において、
上記固定部材(1)が、上記壁面(W)から略直交方向へ延出しその先端に上記手摺本体(2)が取付けられる構成、又は上記壁面(W)から略直交方向へ延出したのち該壁面(W)の面方向に沿って側方へ延出しその先端に上記手摺本体(2)が取付けられる構成であることを特徴とする縦型手摺。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−275387(P2009−275387A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126556(P2008−126556)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(599117255)株式会社 シコク (28)
【Fターム(参考)】