説明

繊維類の防臭方法およびランドリーバッグ

【課題】洗浄前の被洗浄物の臭いが周囲に拡散するのを防止できるとともに、洗浄時の洗浄力を損なわずに、繊維類に臭いが付きにくい防臭効果を付与することができる方法およびランドリーバッグを提供する。
【解決手段】消臭剤を含有する温水可溶性のフィルムからなるランドリーバッグに繊維類を収納し、45℃以上の洗浄液中で洗浄する。または消臭剤を含有する、アルカリ水可溶性またはアルカリ水崩壊性のフィルムからなるランドリーバッグに繊維類を収納し、pH8.5以上の洗浄液中で洗浄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維類の消臭および防臭方法、ならびにランドリーバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば下記特許文献1には、被洗浄物をランドリーバッグに収納し、洗浄時には該ランドリーバッグごと洗濯や殺菌する方法、および該方法に使用できるランドリーバッグが開示されている。ここに記載されているランドリーバッグは、常温付近で耐冷水性、耐湿性を有し、洗浄、殺菌する際の温水または熱水に対して溶解する材料で形成されている。
【特許文献1】特開2001−219941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のランドリーバッグは、被洗浄物と直接接触せずに洗浄を行うことができるものであるが、被洗浄物に防臭効果を付与するものではない。
本発明は、洗浄前の被洗浄物の臭いが周囲に拡散するのを防止できるとともに、洗浄時の洗浄力を損なわずに、繊維類に臭いが付きにくい防臭効果を付与することができる方法およびランドリーバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するために、本発明の繊維類の防臭方法は、消臭剤を含有する温水可溶性のフィルムからなるランドリーバッグに繊維類を収納し、45℃以上の洗浄液中で洗浄することを特徴とする。
または、消臭剤を含有する、アルカリ水可溶性またはアルカリ水崩壊性のフィルムからなるランドリーバッグに繊維類を収納し、pH8.5以上の洗浄液中で洗浄することを特徴とする繊維類の防臭方法である。
また本発明は、消臭剤を含有する、温水可溶性、アルカリ水可溶性、またはアルカリ水崩壊性のフィルムが袋状に成形されたランドリーバッグを提供する。
【発明の効果】
【0005】
本発明の防臭方法によれば、洗浄前の被洗浄物の臭いが周囲に拡散するのを防止できるとともに、洗浄時の洗浄力を損なわずに、繊維類に臭いが付きにくい防臭効果を付与することができる。
本発明のランドリーバッグによれば、洗浄前の被洗浄物の臭いが周囲に拡散するのを防止できる。また該ランドリーバッグに繊維類を収納して洗浄することにより、洗浄時の洗浄力を損なわずに、繊維類に臭いが付きにくい防臭効果を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明で用いられる消臭剤は、臭い成分と化学的に反応することにより、臭いを低減または除去する効果を有するものである。
例えば、光触媒、植物精油、植物抽出液、グリオキザールなど合成消臭剤等を用いることができる。これらの中でも光触媒が好ましい。
光触媒の具体例としては、Se、Ge、Si、Ti、Zn、Cu、Al、Sn、Ga、In、P、As、Sb、C、Cd、S、Te、Ni、Fe、Co、Ag、Mo、Sr、W、Cr、Ba、Pb等の酸化物などの化合物で、水に不溶のものが挙げられる。特に酸化チタン、酸化亜鉛および酸化タングステンから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0007】
消臭剤の使用量は特に規定させるものではないが、ランドリーバッグの全質量に対し、0.001質量%〜40質量%が好ましく、0.005質量%〜20質量%がより好ましい。消臭剤の使用量を上記範囲の下限値以上とすることにより、良好な臭気拡散防止性が得られ、また繊維類に良好な防臭性を付与することができる。一方、消臭剤量が多くなるほどこれらの効果はより向上するが、袋を構成するフィルムの強度が低下する傾向にある。
【0008】
本発明で用いられる吸着剤は、臭い成分を物理的に吸着することにより、臭いを低減または除去する効果を有するものである。
例えば、無機多孔質体、活性炭、グラファイト等が用いられる。
無機多孔質体の例としては、アルミノシリケート(アルミノ珪酸塩)、フィロケイ酸塩、スメクタイト等の層状化合物、ゼオライト、多孔質シリカ、アパタイト等が挙げられる。
前記消臭剤に加えて、吸着剤をフィルムに含有させることにより臭い成分の固定化が生じ、消臭剤の効果を相乗的に発揮させることが可能となる。
特にアパタイトは、タンパク質の吸着に優れており、菌やウイルスの吸着効果による感染防止の効果が得られる点で好ましい。
【0009】
吸着剤の使用量は特に規定させるものではないが、ランドリーバッグの全質量に対し、0.001質量%〜50質量%が好ましく、0.01質量%〜30質量%がより好ましい。吸着剤の使用量を上記範囲の下限値以上とすることにより、良好な臭気拡散防止性が得られ、また繊維類に良好な防臭性を付与することができる。一方、吸着剤量が多くなるほどこれらの効果はより向上するが、フィルム強度が低下する傾向にある。
【0010】
消臭剤および吸着剤の形態は特に限定されないが、消臭剤が吸着剤に含有(例えば含浸または包摂)された状態で、フィルムに含有されていることが好ましい。
例えば消臭剤として植物抽出物や植物製油を用いる場合、これらを吸着剤に含有、好ましくは含浸させることにより消臭剤の劣化や揮発を抑える効果がある。
また、消臭剤として光触媒を用いる場合、これを吸着剤に含有、好ましくは包摂させることにより、光触媒がフィルムに直接接触するのを避けることができ、フィルムの分解を抑制することができるため、フィルムの強度を保持する効果がある。
例えば、特開平11−76835号公報で提案されているような、一次粒子径が0.001〜0.3μmの範囲にある光触媒微粒子を0.01〜70質量%の割合でアルミノ珪酸塩からなる粒子内に含有させた光触媒微粒子含有アルミノ珪酸塩粒子を好適に用いることができる。
【0011】
本発明で用いられる温水可溶性のフィルムとしては、45℃以上の温水で溶解するフィルムが用いられる。該温水可溶性フィルムの溶解温度が45℃未満であると、高温多湿条件下でランドリーバッグを保存した場合、洗浄前にフィルムの崩壊が生じ好ましくない。
本発明における「溶解」とは、フィルム0.5gが50℃の水1リットルに10分以内、好ましくは7分以内に溶解し、溶解後の溶液を8.6号のふるい(局方:2000μm)に通したときに残留物が残らない状態をいうものとする。なお、水中で溶解してフィルムの形状は留めていないが、前記ふるいに通したときに残留物が残る状態を「崩壊」ということとする。
【0012】
温水可溶性フィルムの具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、プルラン、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリビニルメチレンエーテル、キサンタンガム、ガーガム、コラーゲン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシエチルセルロース等や、ポリアクリル酸またはその塩、ポリメタクリル酸またはその塩、ポリイタコン酸またはその塩等のカルボキシル基及び/又はスルホン酸基を有する有機ポリマー及び/又はその塩、N−ビニルアセトアミドの単独重合体もしくはN−ビニルアセトアミドとビニル系モノマーとの共重合体に水溶性の可塑剤であるポリオキシアルキレン基を有する化合物を配合して得られるフィルム等が挙げられる。
特にポリビニルアルコール或いはマレイン酸やイタコン酸で変性されたポリビニルアルコールが好ましい。
【0013】
本発明で用いられるアルカリ水可溶性またはアルカリ水崩壊性のフィルムは、pH8.5〜14、温度5〜100℃の水溶液または水分散液に溶解または崩壊するものである。
具体例としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)系ポリマー、腸溶性ポリマー、変性PVA(ポリビニルアルコール)などのアルカリ水可溶性またはアルカリ水崩壊性ポリマーを構成成分とするフィルムが挙げられる。
また、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース又はセルロースアセテート、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等を構成成分とするフィルム、ポリプロピレン繊維と水不溶性ないし水難溶性のカルボキシメチルセルロース又はカルボキシエチルセルロースを構成成分とするフィルム等も好適に用いることができる。
【0014】
ランドリーバッグを構成するフィルムの厚みは特に制限されず、ランドリーバッグの大きさ、用途、使用形態等により適宜選択できる。好ましい範囲は5〜200μm程度であり、より好ましい範囲は10〜100μm程度である。
【0015】
ランドリーバッグを構成するフィルムの製造方法は特に限定されず、ランドリーバッグの大きさ、厚み、用途等に応じて適宜の製造方法を用いることができる。一般的には、熱溶融成形法、溶液からのキャスト製膜法、ゲル製膜法、湿式製膜法など公知の製膜法が用いられる。
特に温水可溶性フィルムの場合は、特に熱溶融成形法が好ましい。熱溶融成形法は他の方法と比較して、比較的製造コストが安価であるばかりか、溶融状態から冷却される過程においてフィルムが結晶化することにより、耐冷水性、耐湿性、強度等が向上するためランドリーバッグを構成するフィルムを得るのに好適な方法である。
ここで、熱溶融成形法の種類には特に限定が無く、樹脂を融点または軟化点以上の温度に加熱し、フィルムに賦形する方法であれば公知の方法が使用できる。一例として、Tダイ押出成形、インフレーション成形、カレンダー成形などが挙げられるが、耐冷水性、耐湿性、製造コスト等の点からインフレーション成形法が特に好ましい。
【0016】
そして、フィルムに消臭剤または吸着剤を含有させる方法は、例えばフィルム原料を加熱溶融させ、そこに添加、混合する方法を用いることができる。
【0017】
ランドリーバッグの形状は開口部を有する袋状であればよく、特に限定されない。例えば四角形で、その3辺が閉じられ、残りの一辺が開口部となっている袋状とすることができる。かかる形状のランドリーバッグは、例えば筒状に成形されたフィルムの一方の開口部をシールする方法、1枚の矩形のフィルムを二つ折りにして2辺をシールする方法、2枚の矩形のフィルムを重ね合わせて3辺をシールする方法等により製造することができる。
開口部以外の部分を閉じる方法は、ランドリーバッグの溶解性または崩壊性を損なわない方法が好ましい。例えば、ヒートシールによる方法、圧着法等が挙げられる。
ランドリーバッグの大きさも特に制限はないが、通常、幅5〜200cm、長さ10〜500cmの範囲で使用される。
【0018】
またランドリーバッグの開口部は、被洗浄物を入れた後、略気密に封止可能であることが好ましい。開口部の封止手段は、ランドリーバッグの内部を気密にできる手段であればその種類を限定するものではないが、例えば、チャック、粘着剤、折り曲げもしくは縛りによる封止またはクリップ等での挟み止め等が挙げられる。使用現場での簡便性、製造コストの観点より、袋の口を縛るひもを開口部の近傍に取り付けることが特に好ましい。その場合、ひもは水溶性であることが好ましく、特にビニルアルコール系重合体であることが好ましい。さらにこのビニルアルコール系重合体は本発明のランドリーバッグの袋と同じものでも良く、異なっていても良い。好ましくは袋に使用するビニルアルコール系重合体と比較して、より低温で水溶性を示し、溶解速度がはやいことが望ましい。その理由は、洗浄の際にひも部分がより早く溶解し、口が開くことで、ランドリーバッグ全体の溶解時間を短縮できるからである。
【0019】
本発明のランドリーバッグを使用する際は、その中に繊維類を収納し、好ましくは開口部を気密に閉じる。この状態で保管したり、運搬することができる。中の繊維類を洗浄する際には、ランドリーバッグごと洗浄液中に投入して、洗浄作業を行うことができる。
繊維類としては、特に限定されず、織布、不織布、衣類等、一般的に洗浄に供される各種の繊維類が適用可能である。
【0020】
ランドリーバッグが温水可溶性のフィルムからなる場合、洗浄液として45℃以上の温水を用いる。温水の温度は50℃〜90℃が好ましく、さらに好ましくは50℃〜85℃の範囲である。洗浄液の温度が上記範囲より低いとフィルム(ランドリーバッグ)の溶解が十分ではなく、その結果、被洗浄物への不均一な付着が生じ、乾燥後に部分的な硬化が生じるおそれがある他、消臭剤の洗浄液への放出が充分に生じず、繊維の防臭効果が不十分となる。また、洗浄液の温度が上記範囲を超えると、被洗浄物の繊維の劣化が生じる場合がある。特に、綿とポリエステルの混紡からなる繊維類を洗浄する場合には、洗浄液の温度を55℃前後とするのが好ましい。
【0021】
ランドリーバッグがアルカリ水可溶性またはアルカリ水崩壊性のフィルムからなる場合は、pHが8.5以上の洗浄液を用いる。洗浄液のpHの好ましい範囲はpH9.0〜13.0、さらに好ましくは9.5〜12.0の範囲である。洗浄液のpHの値が上記範囲よりも小さいとフィルム(ランドリーバッグ)の溶解が十分ではなく、その結果、被洗浄物への不均一な付着が生じ、乾燥後に部分的な硬化が生じるおそれがある。また、洗浄液のpHが高すぎると被洗浄物の繊維の劣化につながり好ましくない他、すすぎ工程の回数、使用水量を増加させる必要があり好ましくない。pH8.5以上の洗浄液の温度は特に制限されず、常温(20℃)以上であれば、洗浄後の残渣等の問題はないが、フィルム(ランドリーバッグ)の溶解速度の観点からは、洗浄液の温度が高い方が溶解性は良好である。
【0022】
本発明のランドリーバッグの中に繊維類を収納することにより、該繊維類から発生する臭いがランドリーバッグの外部に拡散するのが防止される。ランドリーバッグの開口部を気密に閉じることにより、かかる臭気拡散防止性はより向上される。これは、ランドリーバッグを構成しているフィルムに含有されている消臭剤または吸着剤が、繊維類から発生する臭い成分を分解または吸着するためと推測される。
また、繊維類を収納した状態でランドリーバッグごと洗浄液中で洗浄すると、洗浄液中でランドリーバッグが溶解または崩壊し、繊維類が洗浄される。このときランドリーバッグごと洗浄液に投入することによって、繊維類に対する洗浄力が低下することはない。
また繊維類をランドリーバッグごと洗浄液中に投入して洗浄することによって、洗浄後の繊維類に臭いが付きにくい防臭効果が付与される。このことは、洗浄液中で溶解または崩壊したランドリーバッグに含まれていた消臭剤または吸着剤が、繊維類に付着して防臭効果を発揮すると推測される。消臭剤として光触媒を用いた場合には、防臭効果に加えて抗菌効果も得られる。
本発明のランドリーバッグは、例えば排泄物が付着した繊維類や、加齢臭を発生する繊維類などの運搬および洗浄に有用である。
本発明のランドリーバッグは、病院内での使用に好適であり、繊維類に付着した病原菌やウィルスを、該繊維類とともにランドリーバッグ内に封入することができる。また消臭剤として光触媒を用いた場合には、ランドリーバッグ内での殺菌効果も発揮される。したがって、リネン等の繊維類に付着した病原菌やウィルスに起因する院内感染やリネン搬送者への二次感染を抑制することができる。
【実施例】
【0023】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<ランドリーバッグの製造方法A>
消臭剤を含有する温水可溶性フィルムを製造し、これを袋状に成形してランドリーバッグ(以下、単にバッグということがある。)を得た。
まず、細かく切断したビニロンフィルム(クラレ社製、クラリア)に所定量の消臭剤を混合し、2軸押出機を用い、225℃で溶融混練することでペレットを作製した。該ペレットを用い、シリンダー温度225℃でインフレーション成形を行い、厚さ25μm、折り幅30cmの筒状のフィルムAを得た。これを45cm長さに切断後、一辺をヒートシールすることにより製袋して袋本体を形成した。これとは別に、前記フィルムAと同素材からなる開口部縛り用ひも(幅3cm、長さ20cm)を用意し、このひもを前記で形成した袋本体の開口部付近に、ひもの一端部(長さ約3cm)を袋本体にヒートシールすることによって付属させ、ランドリーバッグを得た。
【0024】
<ランドリーバッグの製造方法B>
消臭剤を含有するアルカリ水可溶性フィルムを製造し、これを袋状に成形してランドリーバッグを得た。
まず、繊維状CMC−H(エーテル化度DS=0.65、ニチリン化学社製)37.5質量%、繊維長3〜20mmのNBKパルプ(針葉樹晒クラフトパルプ)57.5質量%、および所定量の消臭剤からなる混合抄紙原料を1%スラリー溶液とし、十分に攪拌分散させた後、さらにスリーワンモーターによる150rpmの攪拌下に、凝集剤として10質量%硫酸バンド水溶液を対原料あたり5質量%添加し3分間攪拌した。さらに、0.15アニオン系ポリアクリルアミド溶液(ハイホルダー、栗田工業)を対原料あたり0.02質量%添加して3分間撹拌後、0.5%スラリー溶液に希釈し、角型シートマシン(熊谷理機工業社製)により手抄シート(坪量平均60g/m)を作成した。得られたシートを105℃のロール回転乾燥機で乾燥させ、このシート状基体上に、平均重合度500の酢酸ビニルエマルジョン(固形分濃度40質量%)を塗布含浸し、高分子層を形成して積層フィルムBとした。さらに、この積層フィルムBを30cm×45cmの大きさ(1辺は折り返されている)に切断し、2辺をヒートシールすることによって製袋して袋本体を形成した。これとは別に、前記積層体と同素材からなる開口部縛り用ひも(幅3cm、長さ20cm)を用意し、このひもを前記で形成した袋本体の開口部付近に、ひもの一端部(長さ約3cm)を袋本体にヒートシールすることによって付属させ、ランドリーバッグを得た。
【0025】
以下、実施例および比較例で用いた評価方法を説明する。
<臭気拡散性の評価方法>
ランドリーバッグ内にアンモニア水0.5gを浸透させた脱脂綿10gを入れた後、付属の縛り用ひもで開口部を縛り、前記脱脂綿をバッグ内に封入した。1時間天日下に放置した後、バッグを室内に移動した。パネラーは、バッグから約10cmの位置に鼻を近づけ、下記判定基準にて評価を行った。5人のパネラーがそれぞれ評価を行い、その平均点を臭気拡散性とした。
5点:強烈なにおい。
4点:強いにおい。
3点:楽に感知できるにおい。
2点:何のにおいから分かる弱い匂い。
1点:やっと感知できるにおい。
0点:無臭。
【0026】
<破断強度の評価方法>
ランドリーバッグの製造に用いた前記フィルムAまたは前記積層フィルムBに対して、光暴露処理(2004年6月江戸川区平井にて総紫外線量:22.7mJ/m)を行った後、オートグラフ〔(株)島津製作所製〕で引っ張り試験を行い、破断強度(単位;kgf/cm)を測定した。
ランドリーバッグ用途においては、該破断強度が0.9kgf/cm以上であれば合格である。
【0027】
<洗浄方法>
全自動バッチ式洗濯脱水機(株式会社アサヒ製作所製、ECONOMAT10、洗濯容量10kg/回)に、被洗浄物10kgと洗剤100gを投入し、水道水(洗浄液)を用いて10分間洗浄後、すすぎ2回、脱水、乾燥を行った。
洗浄条件(1);洗剤としてアルカリ粉末ランドリー用洗剤(バイオサットハード2000ppm:ライオン株式会社製)を用い、洗浄液の温度を80℃とした。
洗浄条件(2);洗剤としてアルカリ粉末ランドリー用洗剤(バイオサットハード2000ppm:ライオン株式会社製)を用い、洗浄液の温度を40℃とした。
洗浄条件(3);洗剤として中性液体ランドリー用洗剤(液体ハードダッシュ2000ppm:ライオン株式会社製)を用い、洗浄液の温度を80℃とした。
【0028】
<洗浄力の評価方法>
前記洗浄方法において、被洗浄物として前記臭気拡散性試験に用いたのと同じ脱脂綿入りランドリーバッグ、白布(清浄布)に汚れを付けた汚染布(EMPA101、10cm×10cm、5枚)をクロスに取り付けたもの、および綿シーツの合計10kgを用い、洗浄条件(1)、(2)または(3)で洗浄を行った。
洗浄する前と洗浄後の、汚染布の反射率を色差計(シグマ90、日本電色社製)にて測定し、下記式に基づき洗浄力を算出した。
洗浄力(%)=(汚染布の洗浄後の反射率−汚染布の洗浄前の反射率)/(清浄布の反射率−汚染布の洗浄前の反射率)×100
そして、下記判定基準により評価を行った。
◎:洗浄力 51〜60%。
○:洗浄力 41〜50%。
△:洗浄力 31〜40%。
×:洗浄力 21〜30%。
【0029】
<溶解性の評価方法>
洗浄条件(1)〜(3)のそれぞれで用いられる洗剤を溶解させた洗浄液1リットルに、製袋する前の前記フィルムAまたは前記積層フィルムBを0.5g投入し、10分以内攪拌した後、8.6号のふるい(局方:2000μm)に通して残留物の確認を行った。その結果を下記判定基準に従い目視評価を行った。
○:ふるい上に残留物が認められない。
×:ふるい上に残留物が認められる。
【0030】
<防臭性の評価法>
前記洗浄方法において、被洗浄物として市販の肌シャツ3枚を入れたランドリーバッグと綿シーツの合計10kgを用い、洗浄条件(1)、(2)または(3)で洗浄を行った。
洗浄後、肌シャツを取り出し、20℃、40%RHの恒温恒湿室で24時間調湿した後、10cm四方に切って試験片10枚とした。この試験片を約5リットルのガラス製のデシケータに入れ、この中に30質量%のアンモニア水0.1gを添加し屋外にて3時間日光暴露を行った後、試験布を取り出し、5人のパネラーがそれぞれ評価を行い、その平均点を防臭性とした。
5点:強烈なにおい。
4点:強いにおい。
3点:楽に感知できるにおい。
2点:何のにおいから分かる弱い匂い。
1点:やっと感知できるにおい。
0点:無臭。
【0031】
(実施例1〜5及び比較例1〜4)
下記表1、2に示す条件でランドリーバッグを製造して、各評価項目についての評価を行った。評価結果を表1、2に示す。
なお、フィルム製造時に使用する消臭剤としては、下記の消臭剤A、B、またはCを、表1、2に記載の添加量で用いた。表中の数値はランドリーバッグの全質量に対する消臭剤の含有量(単位;質量%)を示している。
・消臭剤A:ライオナイトPC(酸化チタンをアルミノシリケートに包接したもの、ライオン株式会社製)
・消臭剤B:酸化チタン
・消臭剤C:ローズマリーエキス(油溶性ローズマリーエキス、香栄興業株式会社製)
・消臭剤D:ジュピター F4−AP(酸化チタンの表面をアパタイトでコーティングしたもの、昭和電工株式会社製)
【0032】
【表1】

【0033】
【表2】

【0034】
表1、2に示されるように、実施例1〜7のいずれにおいても、溶解性が良好であり、必要な破断強度も得られた。
また、実施例1,2,6,7と比較例1とを比べると、フィルムAに消臭剤を含有させたことによって洗浄力は低下せず、臭気拡散性および防臭性が向上したことがわかる。実施例3,4と比較例2とを比べると、フィルムBに消臭剤を含有させたことによって洗浄力は低下せず、臭気拡散性および防臭性が向上したことがわかる。
比較例3の結果より、フィルムAを用いたランドリーバッグを、40℃の洗浄液で洗浄した場合は溶解性が悪く、消臭剤を含有しているにもかかわらず、防臭性が劣っていた。
比較例4の結果より、フィルムBを用いたランドリーバッグを、中性の洗浄液で洗浄した場合は溶解性が悪く、消臭剤を含有しているにもかかわらず、防臭性が劣っていた。
【0035】
また、洗濯機として、家庭用ドラム式洗濯機(SHARP社製、ES−E61)を用いた試験を行った。すなわち、実施例1に用いたランドリーバッグ(前記臭気拡散性試験に用いたのと同じ脱脂綿入り)、市販のTシャツ(綿100%、B.V.D社製)および汚染布(EMPA101、10cm×10cm、5枚)を取り付けたクロスをあわせて4.5kgを該洗濯機に入れ、粉末アルカリ洗剤(トップ ライオン(株)社製)30gを用いて洗浄を行った結果、実施例1に示す効果(洗浄力、溶解性、防臭性)と同等の効果を発現することを確認した。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
消臭剤を含有する温水可溶性のフィルムからなるランドリーバッグに繊維類を収納し、45℃以上の洗浄液中で洗浄することを特徴とする繊維類の防臭方法。
【請求項2】
消臭剤を含有する、アルカリ水可溶性またはアルカリ水崩壊性のフィルムからなるランドリーバッグに繊維類を収納し、pH8.5以上の洗浄液中で洗浄することを特徴とする繊維類の防臭方法。
【請求項3】
前記フィルムが、さらに吸着剤を含有する請求項1または2に記載の防臭方法。
【請求項4】
前記消臭剤が前記吸着剤に含有されている請求項3記載の防臭方法。
【請求項5】
消臭剤を含有する、温水可溶性、アルカリ水可溶性、またはアルカリ水崩壊性のフィルムが袋状に成形されたランドリーバッグ。
【請求項6】
前記温水可溶性、アルカリ水可溶性、またはアルカリ水崩壊性のフィルムが、さらに吸着剤を含有する請求項5記載のランドリーバッグ。
【請求項7】
前記消臭剤が前記吸着剤に含有されている請求項6記載のランドリーバッグ。



【公開番号】特開2006−204902(P2006−204902A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−374141(P2005−374141)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】