羽根車の損傷検出方法及び装置
【課題】羽根車を用いた流体回転機械に発生する羽根車の摩耗や亀裂、部分的破損と言った損傷を高感度で早期に検出することの出来る流体回転機械の損傷検出方法及び装置の提供。
【解決手段】羽根車5を用いた流体回転機械1の羽根車5の損傷を検出する装置Aにおいて、該機械例えば、遠心式水ポンプ1の流体流入部吸込口2から、該機械1の流体流出部吐出口4に至る流路10の1以上の箇所における流体Fの変動圧力を検出する圧力検出手段圧力センサ6と、前記圧力検出手段6により検出した変動圧力のデータを基にして周波数分析し周波数スペクトルを求める手段(コントロールユニット)8とを備えているので、前記圧力検出手段6により検出した変動圧力のデータを基にして求めた周波数スペクトルを前記記憶手段12に記憶されている各種の周波数スペクトルと比較することにより、現時点における羽根車の状態をリアルタイムに知ることができる。
【解決手段】羽根車5を用いた流体回転機械1の羽根車5の損傷を検出する装置Aにおいて、該機械例えば、遠心式水ポンプ1の流体流入部吸込口2から、該機械1の流体流出部吐出口4に至る流路10の1以上の箇所における流体Fの変動圧力を検出する圧力検出手段圧力センサ6と、前記圧力検出手段6により検出した変動圧力のデータを基にして周波数分析し周波数スペクトルを求める手段(コントロールユニット)8とを備えているので、前記圧力検出手段6により検出した変動圧力のデータを基にして求めた周波数スペクトルを前記記憶手段12に記憶されている各種の周波数スペクトルと比較することにより、現時点における羽根車の状態をリアルタイムに知ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機械の故障診断方法及び装置に関し、特に羽根車を備えた流体回転機械に対しリアルタイムで行うことができる羽根車の損傷検出方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
羽根車を用いた流体回転機械、例えば、軸流、斜流、遠心ポンプや水車、圧縮機、送風機やタービンにおいては、羽根車の摩耗は多発する現象であり、又、羽根車に亀裂が発生したり、部分的に破損することもある。これらの現象は、そのまま放置すれば単に性能や効率の低下、運転騒音や振動の増加等の不具合を生ずるに留まらず、羽根車の致命的な破損等の重大な事故に至る可能性がある。
【0003】
このような不具合に至らないようにするために従来行われてきた方法としては、例えば、機械の一部に振動ピックアップを取付けて振動信号を検出し、その信号の周波数分析を行い、その周波数スペクトルの変化の大きさによって羽根車の摩耗などの損傷を検出し予防保全を行う方法がある(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、ポンプ、送風機、タービン等の高速回転機械において、回転体に発生する亀裂等は、その高速回転機械の振動と関連するので、当該高速回転機械のケーシングの振動等を計測して、その分析結果から回転体に発生する異常現象を検知する異常診断装置が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0005】
これらの異常検出方法は、回転機械のケーシングなど構造体の振動を検出することによって異常検出を行うものである。然るに、回転機械の構造体の振動は、取扱流体の剥離渦のような流れに起因する加振力、回転体の不釣合いによる加振力、羽根車の羽根枚数と回転速度との積に起因する加振力など加振源の数が多いことや、特に各種加振力の大きさに対して回転機械のケーシング等構造体の質量が大きい場合には検出される振動の振幅自体が小さいこと、さらには回転機械及びその据付架台等を含めた機械装置全体としての複雑な固有振動数を持って振動するという事実があり、これらの理由から、検出した振動信号を解析して、羽根車の摩耗や亀裂の発生などを精度良く検出することは非常に困難であった。
【0006】
一方、予防保全や経済性その他の立場から当該機械を運転しながらその時点における羽根車の状態を適切に把握し、それによって必要なときに必要な修理等を行うことで、羽根車の不具合に起因する事故を未然に防ぐ方法及び装置が切望されていた。
【特許文献1】特開平8−75617号公報
【特許文献2】特開平4−315942号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、羽根車を用いた流体回転機械に発生する羽根車の摩耗や亀裂、部分的破損と言った損傷を高感度で早期に検出することの出来る流体回転機械の損傷検出方法及び装置を提供することを目的としている。
【0008】
尚、本発明においては、摩耗、亀裂又は破損についてその状態に至った原因を問うことを目的としていない。即ち、例えば摩耗とは本来の羽根車の肉厚に対して減肉している状態を云い、その原因が例えば水を扱うポンプにおいて該取扱水中に微細な砂粒が含まれることに起因する場合、或いは取扱液により腐食された場合など減肉状態即ち摩耗に至った原因は問わない。同様に亀裂や破損についても例えば水を扱うポンプにおいて該取扱水中に含まれていた石などが羽根車に衝突したことに起因する場合或いは取扱液による腐食に起因する場合、又は羽根車自体に加わる繰り返し応力による疲労に起因する場合、その他亀裂や破損に至った原因は問わない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一般的に、流体回転機械において羽根車は、その運転中に、取扱流体の剥離渦のような流れに起因する加振力、回転体の不釣合いによる加振力、干渉に起因する加振力など、多くの加振源から発生する規則的及び不規則的且つ非定常的加振力、即ちランダム加振力を受ける。
このランダム加振力を受けることにより、羽根車にはその固有振動数を卓越周波数とする振動が励起される。ここで、励起された振動は、これと同一の周波数スペクトルを持つ圧力脈動を流体中に生じさせる。一方、羽根車の固有振動数には、その時点での羽根車の状態が反映される。即ち、羽根車に損傷が生じていれば固有振動数は、その損傷に対して特有に変化する。このため、流体の変動圧力を検出し、そのデータを周波数分析して求めた周波数スペクトルと、数値解析又は実験等の手段で取得した当該羽根車と同一仕様の羽根車の摩耗、亀裂、破損等の損傷が発生した状態における当該取扱流体中での周波数スペクトルのデータベースとを比較することにより、現時点における羽根車の摩耗、亀裂、破損などの発生状況を精度良く検知出来ることに発明者は想到した。ここで、脈動の周波数スペクトルは、干渉による成分、剥離渦による成分、キャビテーションによる成分、羽根車自体の振動による成分など、多くの成分を含むが、発明者は、羽根車自体の振動による成分に着目した。
【0010】
即ち、流体機械運転中の羽根車は、前記ランダム加振力によって加振される結果、必ずその固有振動数での振動を励起し、その周波数スペクトルは取扱流体中に変動圧力として転写され伝播される。即ち、羽根車の固有振動数を卓越周波数とする振動の周波数スペクトルが流体の変動圧力の周波数スペクトルにも現れるのである。他方、羽根車は現に発生している損傷即ち摩耗、亀裂及び破損の種類と進行程度とに応じた特有の固有振動数を有し、その振動の周波数スペクトルを持って振動する。
この事実を利用して、羽根車の健全状態時点における当該取り扱い流体中での周波数スペクトルデータと、前記の夫々の損傷を持つ羽根車の代表的な周波数スペクトルデータとを、予めデータベースとして用意しておき、現時点での取扱流体の変動圧力の周波数スペクトルを、これらと比較することによって、運転を継続しながら精度の高い損傷検出がリアルタイムで出来ることが解った。
尚、前記固有振動数とは現に取扱っている流体中での値であるから、取扱流体が変われば固有振動数も変化するものである。さらに、羽根車の健全状態時点における当該取扱い流体中での変動圧力の周波数スペクトル又は、羽根車に摩耗、亀裂、破損等の損傷を発生した状態における取扱流体中での変動圧力の周波数スペクトルのデータベースは実験から求めることが出来るほか、羽根車自体の振動周波数スペクトルとして数値解析的手法によっても求めることが可能で、又、実験と数値解析を併用することも可能である。
【0011】
羽根車の対称摩耗、或いは微細な亀裂は一般的に回転軸系の構造的不釣合いをもたらさないが、非対称或いは部分的欠損は不釣合いをもたらし、流体の圧力変動のみならず、軸振動としても現れる。本発明において、流体の圧力変動だけでも羽根車の損傷を検出出来るが、軸振動の信号を併用すれば、より高い検出精度を実現出来る。尚、軸振動の周波数スペクトルは実測から求めることが出来るほか、数値解析的手法によっても求めることが可能である。
【0012】
本発明の流体回転機械の羽根車の損傷検出方法は、羽根車(5)を用いた流体回転機械(例えば、遠心式水ポンプ1)の羽根車(5)の損傷を検出する方法において、該機械(1)の流体流入部(吸込口2)から該機械(1)の流体流出部(吐出口4)に至る流路(10)の1以上の箇所における流体(F)の変動圧力を検出する工程(S1)と、検出した変動圧力データを基にして周波数分析し変動圧力の周波数スペクトルを求める工程(S2)と、該工程(S2)で求めた流体変動圧力の周波数スペクトルを、データベースとして用意しておいた当該羽根車(5)の健全状態時点での当該流体回転機械(1)の取扱流体中における羽根車(5)の振動により励起される変動圧力の周波数スペクトル又は羽根車自体の振動周波数スペクトルと比較し、現時点において当該羽根車(5)が健全状態にあるか否かを判定する工程(S3)と、該工程(S3)において健全状態にないと判断した場合に、前記スペクトルを求める工程(S2)で求めた流体変動圧力周波数スペクトルを、摩耗、亀裂及び破損の内の1又は2以上の損傷要因を持った羽根車の振動により前記取扱流体中において励起される変動圧力の周波数スペクトルのデータベース又は羽根車(5)自体の振動周波数スペクトルのデータベースと比較し現時点において発生している損傷の種類及びその進行程度を判断する工程(S4)と、その前記進行程度から現時点で修理等が必要か否かを判定する工程(S5)とを含むことを特徴としている(請求項1)。
【0013】
また、本発明の流体回転機械の羽根車の損傷検出方法は、羽根車(5)を用いた流体回転機械(例えば、遠心式水ポンプ1)の羽根車(5)の損傷を検出する方法において、該機械(1)の流体流入部(吸込口2)から該機械(1)の流体流出部(吐出口4)に至る流路(10)の1以上の箇所における流体(F)の変動圧力を検出する工程(S1)と、当該機械(1)の軸受部(11)の少なくとも1箇所で軸振動を検出する工程(S21)と、検出した変動圧力データと軸振動のデータを基にして周波数分析し変動圧力の周波数スペクトルと軸振動の周波数スペクトルを求める工程(S2、S22)と、該工程(S2、S22)で求めた変動圧力の周波数スペクトルと軸振動の周波数スペクトルを、データベースとして用意しておいた当該羽根車(5)の健全状態時点での当該流体回転機械(1)の取扱流体中における羽根車の振動により励起される変動圧力の周波数スペクトル又は羽根車自体の振動周波数スペクトルと該羽根車及び前記軸受共に健全状態にある場合の組合せにおける軸振動の周波数スペクトルに対して比較し、現時点において該羽根車が健全状態にあるか否かを判定する工程(S3)と、該工程(S3)において健全状態にないと判断した場合に、前記スペクトルを求める工程(S2、S22)で求めた流体変動圧力周波数スペクトルを、摩耗、亀裂及び破損の内の1又は2以上の損傷要因を持った羽根車の振動により前記取扱流体中において励起される変動圧力の周波数スペクトルのデータベース又は羽根車(5)自体の振動周波数スペクトルのデータベースと比較し現時点において発生している損傷の種類及び進行程度を判断する工程(S4)と、その進行程度によって、現時点で修理等が必要か否かを判定する工程(S5)とを含むことを特徴としている(請求項2)。
【0014】
又、本発明の流体回転機械の状態監視方法は、羽根車(5)を具備する流体回転機械(1)の取扱流体(F)の圧力を検出する圧力検出工程(S1)と、該圧力検出工程(S1)で検出された検出値を分析する(例えば、ステップS2で周波数スペクトルを求める)分析工程とを有して前記流体回転機械(1)の状態を監視する流体回転機械(1)の状態監視方法であって、該分析工程では予め記憶されているデータであって前記羽根車(5)の摩耗、亀裂或いは破損を意味するデータ(例えば、データベースとして保持される周波数スペクトル)と前記圧力検出工程で検出された検出値(例えば、ステップS2で求められた周波数スペクトル)とを比較することを特徴としている(請求項3)。
【0015】
当該流体回転機械(1)の運転時に、現に発生している流体変動圧力の周波数スペクトルは、干渉による成分、剥離渦による成分、キャビテーションによる成分、羽根車(5)自体の振動による成分など、多くの成分を含むが、羽根車(5)自体の振動による成分以外の成分は予め予測出来るので、フィルタでそれらの成分を除外してもよいし、または比較に際して、それらの成分を無視して羽根車(5)自体の振動による成分だけに注目してもよい。
【0016】
羽根車(5)に損傷がある場合には軸振動の周波数スペクトルに影響することがあるので、軸振動の周波数スペクトルも併用すれば検出精度が向上する。そのため、羽根車(5)、軸受(11)共に健全状態における軸振動スペクトルをデータベースとして保存していることが望ましい。言うまでもなく、当該羽根車(5)の健全時点での取扱流体(F)中における羽根車の振動により励起される変動圧力の周波数スペクトル又は羽根車自体の振動の周波数スペクトルは、予め求めておくのではなく、前記比較の時点で求めてもよいが、予め求めておきデータとして保存しておくことが好ましい。
【0017】
前記データベースの内容としては、羽根車(5)の3つの損傷態様である摩耗、亀裂及び破損に対して夫々の損傷の進行度にいくつかの段階を設定して、それら損傷の種類と進行度の組合せを代表的な損傷の状態(ケース)とし、各ケースにおいて当該使用流体中における羽根車(5)の振動によって励起される変動圧力の周波数スペクトル又は、羽根車自体の振動の周波数スペクトルのデータを夫々求めてデータベースとして揃えておけばよい。
又、必要に応じ前記羽根車(5)において、前記3種類の損傷態様の内の何れか1種類の損傷態様を持つ場合のみでなく、2種類以上の損傷態様を併せ持つ場合も代表的なケースとして同様に当該使用流体中における変動圧力の周波数スペクトル、又は羽根車自体の振動の周波数スペクトルのデータベースとして揃えておけば、より好ましい。
尚、このデータベースを作成するに際しては、たとえば、実験によって求めてもよいし、数値解析的方法、或いは両者を併用してもよい。
上記のような各種の周波数スペクトルをデータベースとして保持しておけば変動圧力を検出し、それを基にして周波数スペクトルを求めた時点において羽根車が健全状態にあるかどうかと、健全状態ではないと判断した時に羽根車に発生している損傷の種類と進行程度を知ることができ、現時点で修理や交換が必要か否かを判定することができる。なお、流体の変動圧力の検出位置は該流体回転機械の流体入口から出口に至る流路のどの位置でも良いが羽根車の近傍が好ましく、検出箇所の数も複数箇所であることが好ましい。
【0018】
具体的には、摩耗にあっては、羽根車(5)全体に亙る一様な摩耗、又は羽根(53)・主板(51)・側板(52)などに局所的に発生した摩耗と、これらの夫々の摩耗における進行程度との組合せを考慮したデータベースを作っておくことで前記の方法が可能となる。
次に、亀裂に対しては、当該亀裂の発生場所と亀裂の大きさ、即ち亀裂の長さを考慮し、これらを組み合わせたデータベースを作っておくことで前記の方法が可能となる。さらに、破損にあっては、破損の発生場所と破損による欠落部の大きさ等を考慮し、これらを組み合わせたデータベースを作っておくことで前記の方法が可能となる。
【0019】
本発明の流体回転機械の羽根車の損傷検出装置は、羽根車(5)を用いた流体回転機械(1)の羽根車(5)の損傷を検出する装置(A)において、該機械(例えば、遠心式水ポンプ1)の流体流入部(吸込口2)から、該機械(1)の流体流出部(吐出口4)に至る流路(10)の1以上の箇所における流体(F)の変動圧力を検出する圧力検出手段(圧力センサ6)と、前記圧力検出手段(6)により検出した変動圧力のデータを基にして周波数分析し周波数スペクトルを求める手段(コントロールユニット8)と、該羽根車(5)の健全状態時点での該流体回転機械(1)の取扱流体(F)中における該羽根車(5)の振動により励起される変動圧力の周波数スペクトル又は羽根車(5)自体の振動周波数スペクトルを記憶しておく記憶手段(12)と、前記流体回転機械(1)の運転中に、羽根車(5)の損傷要因、即ち摩耗、亀裂及び破損の内の1又は2以上の損傷要因を有する羽根車(5)の振動により当該流体回転機械(1)の取扱流体(F)中において励起される変動圧力の周波数スペクトル又は羽根車(5)自体の振動周波数スペクトルを求め記憶しておく記憶手段(12)と、を備えている(請求項4)。
【0020】
また、本発明の流体回転機械の羽根車の損傷検出装置は、羽根車(5)を用いた流体回転機械(1)の羽根車(5)の損傷を検出する装置(B)において、該機械(1)の流体流入部(2)から、該機械の流体流出部(4)に至る流路(10)の1以上の箇所における流体(F)の変動圧力を検出する圧力検出手段(圧力センサ6)と、該機械(1)の軸受部(11)の少なくとも1箇所で軸振動を検出する手段(振動センサ7)と、前記圧力検出手段(6)により検出した変動圧力のデータと前記軸振動を検出する手段(7)により検出した軸振動のデータを基にして周波数分析し夫々の周波数スペクトルを求める手段(8)と、該羽根車(5)の健全状態時点での該流体回転機械(1)の取扱流体(F)中における該羽根車(5)の振動により励起される変動圧力の周波数スペクトル又は羽根車自体の振動周波数スペクトルと、該羽根車(5及び前記軸受部(11)共に健全状態時点での軸振動の周波数スペクトルを記憶しておく記憶手段(12)と、前記流体回転機械(1)の運転中に、羽根車(5)の損傷要因、即ち摩耗、亀裂及び破損の内の1又は2以上の損傷要因を有する羽根車(5)の振動により該流体回転機械(1)の取扱流体中において励起される変動圧力の周波数スペクトル又は羽根車(5)自体の振動周波数スペクトルを記憶しておく記憶手段(12)と、を備えている(請求項5)。
【0021】
さらに、本発明の流体回転機械の状態監視装置は、羽根車(5)を具備する流体回転機械(1)と、該流体回転機械(1)の取扱流体(F)の変動圧力を検出する圧力検出手段(圧力センサ6)と、該検出手段(6)で得られる検出値を分析する分析手段(コントロールユニット8)とを有し、該分析手段(8)は予め用意されたデータであって前記羽根車(5)の摩耗、亀裂或いは破損を意味するデータ(例えば、周波数スペクトル)が記憶されている記憶手段(12)を備えていることを特徴としている(請求項6)。
【発明の効果】
【0022】
上述した構成及び検出方法を具備する本発明によれば、当該流体回転機械の運転中に、現に発生している流体変動圧力の周波数スペクトルを求めることが出来るので、現時点での羽根車(5)の固有振動数を卓越周波数とする振動の周波数スペクトルが分かる。
そこで、羽根車(5)の健全状態時点での流体回転機械の取扱流体(F)中における羽根車(5)の振動により励起される変動圧力の周波数スペクトル又は羽根車自体の振動の周波数スペクトルをデータベースとして用意しておけば、これと比較することが出来る。比較の結果、現時点における羽根車が健全状態であるか否かが判断出来る。
【0023】
羽根車(5)に損傷がある場合には軸振動の周波数スペクトルに影響することがあるので、軸振動の周波数スペクトルをも併用すれば検出精度が向上する。
【0024】
当該羽根車(5)又は必要に応じてそれと同一仕様の他の羽根車を用いて、羽根車(5)の損傷の種類と、夫々の損傷の種類においてその損傷の進行程度にいくつかの段階を設けて進行程度を識別するためのデータベースを予め構築しておけば、現時点において羽根車(5)が健全状態ではないと判断したときに、現時点での羽根車(5)に発生している損傷の種類とその進行程度を判断することが出来る。
羽根車(5)と軸受(11)が共に健全なときの軸振動のデータベースに関しては、当該機械(例えば、遠心式水ポンプ1)を試運転時に、回転数、流量、圧力(ヘッド)等の運転条件を変えて運転し、夫々の条件における軸振動を測定し、そのデータをコントロールユニット(8)で自動的にデータベース化すればよい。尚、回転数などの運転条件を変えての測定は、当該機械(1)の運転仕様に基づき必要に応じて測定すればよい。
【0025】
前述した手段及び構成を有する検出装置によれば、当該流体回転機械(例えば遠心式水ポンプ1)の運転中に現に発生している流体の変動圧力の周波数スペクトルを求めることが出来る。一方、当該羽根車(5)の健全状態時点での流体回転機械の取扱流体(F)中において、羽根車(5)の振動により励起される変動圧力の周波数スペクトル又は羽根車自体の振動の周波数スペクトル及び、流体回転機械(1)に使用されている羽根車(5)又は該羽根車(5)と同一仕様の他の羽根車であって、羽根車の損傷要因、即ち摩耗、亀裂及び破損の内の1又は2以上の損傷要因を有する羽根車の振動により当該取扱流体(F)中において励起される変動圧力の周波数スペクトル又は羽根車自体の振動の周波数スペクトルをデータベースとして記憶手段(12)に記憶しておくことが出来る。尚、これらの周波数スペクトルは、別途に実験又は数値解析等の手段により夫々求めることが出来る。
【0026】
当該羽根車(5)及び当該流体回転機械(1)の軸受(11)が共に健全状態にある時点における軸振動のデータに関しては、当該流体回転機械(1)の運転条件を必要に応じて変えて運転し、夫々の運転条件における軸振動を測定してデータを得てそれらのデータを基にして求めた軸振動の周波数スペクトルをデータベースとして記憶手段(12)に記憶しておけば良い。尚、必要であれば羽根車(5)に破損があった場合の軸振動のデータは数値解析又は実験等によって得ることも可能である。
【0027】
したがって、上述した方法及び手段によって求めた現に発生している流体の変動圧力の周波数スペクトル、望ましくは、さらに軸振動周波数スペクトルを健全状態時点での羽根車(5)の振動によって励起される変動圧力の周波数スペクトル又は羽根車自体の振動の周波数スペクトル及び、羽根車(5)と軸受(11)とが共に健全状態にある時点での軸振動の周波数スペクトル並びに、損傷要因を持つ羽根車(5)の場合の変動圧力の周波数スペクトル又は羽根車自体の振動の周波数スペクトルに対して比較することによって、現時点において羽根車(5)が健全であるか否か、及び健全でない場合には、発生している損傷の種類を判断することが出来る。
【0028】
また、前記羽根車(5)の損傷要因、すなわち摩耗、亀裂及び破損の各々に対して、夫々その進行程度にいくつかの段階を設定して、それら即ち、損傷の種類と進行程度の組合せからなる各々のケースにおいて当該使用流体中における当該羽根車(5)によって励起される変動圧力の周波数スペクトル又は羽根車自体の振動の周波数スペクトルを例えば、別途の数値解析や実験等によって求め、それらのデータをデータベースとして保存しておくことが出来るので、現に発生している周波数スペクトルを前記データベースに保存してある各種の周波数スペクトルと比較できるから、現に羽根車(5)に発生している損傷の種類や進行程度を当該流体回転機械の運転を停止することなく、継続しながらリアルタイムで判断することが出来る。また、リアルタイムに判断することが出来るので、現時点での修理等が必要であるか否かの判定が出来る。従って、過剰なメンテナンス作業を避けることができ、逆に必要なメンテナンス作業の時期を見のがすこともないので、流体回転機械の適切な保守管理ができる。
尚、前記判定に際しては、コンピュータ(コントロールユニット8)を用いて行っても良いし、人間が判定してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0030】
先ず、図1から図9までを参照して本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による羽根車損傷検出装置Aの概念図である。例えば、渦巻きケーシング3及びそのケーシング3の略中央に配置された羽根車5を有する公知の遠心式水ポンプ1において、運転中の流体圧力検出は、図1の例では吸込口2、渦巻きケーシング3及び吐出口4の合計3箇所で行われる。
【0031】
夫々の圧力検出部には、圧力センサ6が設けられている。圧力センサ6の信号は入力信号ライン9によって制御手段であるコントロールユニット8に伝送される。該コントロールユニット8は、記憶手段12を備えるとともに、周波数分析し、周波数スペクトルを求める機能を有している。
該コントロールユニット8では、運転中に検出した圧力センサ6からの前記入力信号に基づき変動圧力の周波数分析を行い、周波数スペクトルを求める。
そして、その周波数分析して求められた周波数スペクトルは予め前記記憶手段12に内蔵された、健全羽根車と損傷羽根車における変動圧力の周波数スペクトルのデータベースと比較することにより、羽根車5の損傷の有無及び損傷がある場合には、損傷の種類とその進行程度を知ることが出来る。
尚、図1において符号Fは、流体及び流体の流れの方向を、符号10は流体Fの流路を示している。
【0032】
当該遠心式水ポンプ1の運転中に、現に発生している流体変動圧力の周波数スペクトルは、干渉による成分、剥離による成分、キャビテーションによる成分、羽根車5自体の振動による成分等、多くの成分を含むが、羽根車5自体の振動による成分以外の成分はあらかじめ予測出来るので、コントロールユニット8に内蔵されている図示しないフィルタでそれらの成分を除外してもよいし、又は比較に際して、それらの成分を無視して羽根車5の振動による成分だけに注目してもよい。
損傷の有無や、その種類、進行程度の判断などはコントロールユニット8で自動的に行ってもよいし、コントロールユニット8の出力を監視する人間が行ってもよい。
【0033】
尚、流体圧力の検出箇所は当該流体回転機械(遠心式水ポンプ1)への流体流入部から流体流出部に至る間の流路10のいずれか1箇所又は2箇所であってもよいが、信頼性向上という点から吸入口2、渦巻きケーシング3及び吐出口4の3箇所で測定することが好ましい。検知精度を高めるために複数箇所での圧力検出を推奨する。
尚、前記記憶手段(12)に保存してあるデータベースは言うまでもなく変動圧力の周波数スペクトルに替えて、羽根車自体の振動の周波数スペクトルであっても良い。またコントロールユニット(8)が所要の演算機能を有すれば、圧力センサ(6)の信号に基づいて周波数分析し変動圧力の周波数スペクトルを求める際に、シミュレーションにより健全羽根車や損傷を有する羽根車の場合における変動圧力の周波数スペクトルや羽根車自体の振動の周波数スペクトルを求めることもできるが、これらの周波数スペクトルは、別途、数値解析や実験等の手段により予め求めておき、それらのデータを前記記憶手段(12)に記憶させて予めデータベースとして構築しておくのが好ましい。
【0034】
図3は前記遠心式水ポンプ1の運転中に、渦巻きケーシング3に設置した圧力センサ6で実測した羽根車5の健全状態時点における流体変動圧力の周波数スペクトルである。ピークPは羽根車5の水中固有振動数に対応する。損傷が発生すると、固有振動数が変化するので、周波数スペクトルの波形が変わる。その波形の変化から羽根車5に損傷の有無、及び損傷がある場合はその種類と進行程度を割り出すことが出来る。
【0035】
図4は、ある遠心羽根車を対象に、損傷と振動の関係を有限要素解析により調べた際の、当該羽根車5の有限要素モデルを示したものである。
図5に、健全羽根車と摩耗した羽根車の振動特性、即ち周波数スペクトルの比較を示す。図中、横軸は周波数、縦軸は羽根車の振動である。そして、太い実線は健全羽根車5の場合、破線は側板52(後述の図7参照)だけが15%摩耗した場合、点線は主板51(後述の図7参照)だけが15%摩耗した場合、1点鎖線は羽根53(後述の図7参照)だけが15%摩耗した場合、細い実線は羽根車5全体が15%摩耗した場合の結果を夫々表す。摩耗の発生場所により羽根車5の振動特性が相互に異なって変化することが分かる。この変化から羽根車5に摩耗が発生したことと、その摩耗の発生場所と進行程度を特定することが可能である。
【0036】
亀裂が発生した場合の解析例を図6に示す。図中、太い実線は健全羽根車5の場合、破線は羽根車5の直径Dに対して、側板52の図7(図7は、羽根車5の側断面図7−Lと、正面図7−Rとから成る)の7−Rに示す位置に長さ10%Dの亀裂C1が1個だけが発生した場合、点線は主板51の図7の7−Rに示す位置に長さ10%Dの亀裂C2が1個だけが発生した場合、細い実線は羽根53の図7の7−Lに示す位置に長さ10%Dの亀裂C3が1個だけが発生した場合の羽根車5の振動周波数スペクトルを夫々表す。亀裂の発生場所により羽根車5の固有振動数と振動特性がそれぞれ特有に変化することが分かる。この変化を検知することにより羽根車5に亀裂が発生したことと、その亀裂発生場所とその進行程度を特定することが可能である。
【0037】
羽根車5に破損が発生した場合の解析例を図8に示す。図中、太い実線は健全羽根車5の場合、破線は羽根車の直径Dに対して、側板52の図9(図9は、羽根車5の側断面図9−Lと、正面図9−Rとから成る)の9−Rに示す位置に長さ10%D、深さ5%Dの破損B1が発生した場合、点線は主板51の図9の9−Rに示す位置に長さ10%D、深さ5%Dの破損B2が発生した場合、細い実線は羽根53の図9の9−Lに示す位置に10%Dに相当する破損B3が発生した場合の羽根車5の振動周波数スペクトルを夫々表す。破損の発生場所により羽根車5の固有振動数と振動特性が変化することが分かる。この変化を検知することにより羽根車5に破損が発生したことと、その破損の発生位置とその進行程度を特定することが可能である。
【0038】
次に、図2を参照して第1実施形態の羽根車の損傷検出方法を説明する。
先ず、ステップS1において、当該流体回転機械である遠心式水ポンプ1の図示の例では、吸入口2と渦巻きケーシング3と吐出口4近傍の、合計3箇所に圧力センサ6を設置し、その3箇所について流体の変動圧力を検出する。
【0039】
次のステップS2では、コントロールユニット8は、前記検出した変動圧力の情報から、変動圧力の周波数スペクトルを求める。
【0040】
コントロールユニット8は、次のステップS3において、記憶手段12に記憶してある健全状態時点での羽根車5により流体中に生じた変動圧力の周波数スペクトル又は羽根車自体の振動の周波数スペクトルのデータベースと、前記求めた現時点での羽根車の変動圧力周波数スペクトルのデータとを比較して、現時点において羽根車が健全であるか否かを判断する。なお、この判断はコントロールユニット8を用いて自動的に行っても良いし、人間が判断しても良い。
【0041】
健全であると判断された場合(ステップS3のYES)は、ステップS1に戻り、再びステップS1以降を繰り返す。
一方、健全でないと判断された場合(ステップS3のNO)は、次のステップS4に進む。
【0042】
ステップS4で、コントロールユニット8は、損傷の種類とその進行程度を特定した後、ステップS5に進む。なお、ステップS4は、このようにコントロールユニット8を用いて自動的に行っても良いし、人間がこの特定作業を行っても良い。
【0043】
ステップS5では、コントロールユニット8は、当該遠心式水ポンプ1の羽根車5に対して、修理又は交換が必要であるか否かを判断する。なお、ステップS5の判断は、このようにコントロールユニット8を用いて自動的に行っても良いし、人間がこの判断を行っても良い。修理又は交換が必要であれば(ステップS5のYES)、次のステップS6に進み、修理又は交換を行って、制御を終了する。
一方、修理又は交換の必要がないのであれば(ステップS5のNO)、ステップS1に戻り、再びステップS1以降を繰り返す。
【0044】
次に、図10及び図11を参照して本発明の第2実施形態を説明する。
図10及び図11の第2実施形態(検出装置全体を符号Bで示す)は、図1及び図2の第1実施形態に対して、羽根車5の軸受部11の直交する2方向に振動センサ7を2個設置し、その振動センサ7をコントロールユニット8に信号ライン9によって接続したことが異なる。
構成面では、振動センサ7を追加したことを除けば、第1実施形態と実質的に同様である。
【0045】
図11に示す第2実施形態の羽根車の損傷検出方法は、図2の第1実施形態の損傷検出方法に対して、変動圧力の周波数スペクトルを求める工程(ステップS2)と、周波数スペクトルが健全であるか否かを判断する工程(ステップS3)との間に、前記軸受部11で軸振動を検出する工程(ステップS21)及び軸振動の周波数スペクトルを求める工程(ステップS22)を追加(挿入)したことが異なる。
【0046】
流体回転機械1の羽根車5の振動は、必ずその固有振動数を卓越周波数とする周波数スペクトルを持ち、その周波数スペクトルは当該羽根車5に摩耗、亀裂又は破損という損傷が発生した場合には、その損傷の種類、発生場所及びその進行度に応じて特有な形へと変化する。又、当該羽根車5が流体回転機械1に取付けられて運転された場合には、当該流体回転機械1の流路10内において、これと同一の周波数スペクトルを流体F中に変動圧力として生じさせるので、現に運転中の流体回転機械1の流路10中に発生している流体Fの変動圧力を測定できれば、現時点での羽根車5に損傷が発生しているか否か、及び損傷していた場合に、その損傷の種類と発生場所及びその進行程度を判断することが出来る。
さらに、羽根車5に非対称摩耗や部分破損等の損傷が発生すると、必ずアンバランスが生じ、軸振動に表れる。その特徴は、回転数成分の軸振動の増大である。軸振動の信号も併用すれば、羽根車の損傷検知精度を高めることが出来るので併用することが望ましい。
【0047】
上述したような構成及び検出方法を有する第1実施形態及び第2実施形態の羽根車の損傷検出装置及び検出方法によれば、流体回転機械1を運転中に、流体回転機械1の流路10中の流体Fの変動圧力と、望ましくは軸振動をも合わせて測定し、それらの周波数スペクトルから当該流体回転機械1の運転を継続しながら的確に現時点における羽根車5の状態を把握出来るので、損傷した場合には、直ちにその事実を知り、適切な処置を施すことが出来る。したがって、事故に至ることなく、理想的な予防保全が出来る。
【0048】
又、事故回避が可能なことはもちろん、過度な予防保全を無くすことが出来るので、維持経費の節減に大きく貢献出来る。
流体変動圧力の周波数スペクトルは、干渉による成分、剥離による成分、キャビテーションによる成分、羽根車5自体の振動による成分等、多くの成分を含むが、羽根車5自体の振動による成分以外の成分は予め予測出来るので、フィルタでそれらの成分を除外してもよいし、又、比較に際して、それらの成分を無視して羽根車5の振動による成分だけに注目してもよい。
【0049】
従来はこのような手法・手段が採れなかったので、事故に至るケースも稀ではなかった。又、事故に至らぬような予防保全方法はあったが、流体回転機械のケーシングや、軸受の振動を検出することにより行う方法であったので的確性を欠き、予防保全策としては必ずしも十分ではなかった。
【0050】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1実施形態の羽根車損傷検出装置の構成を示した装置概念図。
【図2】本発明の第1実施形態の羽根車の破損検出方法を示したフローチャート。
【図3】健全羽根車を有する遠心式水ポンプの渦巻きケーシングで測定した圧力変動例を示した特性図。
【図4】遠心羽根車の有限要素モデルの例。
【図5】摩耗があった場合の羽根車の振動特性の変化を示した特性図。
【図6】亀裂が発生した場合の羽根車の振動特性の変化を示した特性図。
【図7】亀裂位置の概念図。
【図8】部分的に欠けた場合(部分的破損)の羽根車の振動の変化を示した特性図。
【図9】部分的に欠けた場合(部分的破損)の概念図。
【図10】本発明の第2実施形態の羽根車損傷検出装置の構成を示した装置概念図。
【図11】本発明の第2実施形態の羽根車の破損検出方法を示したフローチャート。
【符号の説明】
【0052】
1・・・流体回転機械/遠心式水ポンプ
2・・・吸込口
3・・・渦巻きケーシング
4・・・吐出口
5・・・羽根車
6・・・圧力センサ
7・・・振動センサ
8・・・コントロールユニット
9・・・入力信号ライン
10・・・流路
11・・・軸受部
12・・・記憶手段
51・・・主板
52・・・側板
53・・・羽根
A・・・羽根車の損傷を検出する装置
B・・・羽根車の損傷を検出する装置
F・・・流体及び流体の流れの方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機械の故障診断方法及び装置に関し、特に羽根車を備えた流体回転機械に対しリアルタイムで行うことができる羽根車の損傷検出方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
羽根車を用いた流体回転機械、例えば、軸流、斜流、遠心ポンプや水車、圧縮機、送風機やタービンにおいては、羽根車の摩耗は多発する現象であり、又、羽根車に亀裂が発生したり、部分的に破損することもある。これらの現象は、そのまま放置すれば単に性能や効率の低下、運転騒音や振動の増加等の不具合を生ずるに留まらず、羽根車の致命的な破損等の重大な事故に至る可能性がある。
【0003】
このような不具合に至らないようにするために従来行われてきた方法としては、例えば、機械の一部に振動ピックアップを取付けて振動信号を検出し、その信号の周波数分析を行い、その周波数スペクトルの変化の大きさによって羽根車の摩耗などの損傷を検出し予防保全を行う方法がある(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、ポンプ、送風機、タービン等の高速回転機械において、回転体に発生する亀裂等は、その高速回転機械の振動と関連するので、当該高速回転機械のケーシングの振動等を計測して、その分析結果から回転体に発生する異常現象を検知する異常診断装置が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0005】
これらの異常検出方法は、回転機械のケーシングなど構造体の振動を検出することによって異常検出を行うものである。然るに、回転機械の構造体の振動は、取扱流体の剥離渦のような流れに起因する加振力、回転体の不釣合いによる加振力、羽根車の羽根枚数と回転速度との積に起因する加振力など加振源の数が多いことや、特に各種加振力の大きさに対して回転機械のケーシング等構造体の質量が大きい場合には検出される振動の振幅自体が小さいこと、さらには回転機械及びその据付架台等を含めた機械装置全体としての複雑な固有振動数を持って振動するという事実があり、これらの理由から、検出した振動信号を解析して、羽根車の摩耗や亀裂の発生などを精度良く検出することは非常に困難であった。
【0006】
一方、予防保全や経済性その他の立場から当該機械を運転しながらその時点における羽根車の状態を適切に把握し、それによって必要なときに必要な修理等を行うことで、羽根車の不具合に起因する事故を未然に防ぐ方法及び装置が切望されていた。
【特許文献1】特開平8−75617号公報
【特許文献2】特開平4−315942号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、羽根車を用いた流体回転機械に発生する羽根車の摩耗や亀裂、部分的破損と言った損傷を高感度で早期に検出することの出来る流体回転機械の損傷検出方法及び装置を提供することを目的としている。
【0008】
尚、本発明においては、摩耗、亀裂又は破損についてその状態に至った原因を問うことを目的としていない。即ち、例えば摩耗とは本来の羽根車の肉厚に対して減肉している状態を云い、その原因が例えば水を扱うポンプにおいて該取扱水中に微細な砂粒が含まれることに起因する場合、或いは取扱液により腐食された場合など減肉状態即ち摩耗に至った原因は問わない。同様に亀裂や破損についても例えば水を扱うポンプにおいて該取扱水中に含まれていた石などが羽根車に衝突したことに起因する場合或いは取扱液による腐食に起因する場合、又は羽根車自体に加わる繰り返し応力による疲労に起因する場合、その他亀裂や破損に至った原因は問わない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一般的に、流体回転機械において羽根車は、その運転中に、取扱流体の剥離渦のような流れに起因する加振力、回転体の不釣合いによる加振力、干渉に起因する加振力など、多くの加振源から発生する規則的及び不規則的且つ非定常的加振力、即ちランダム加振力を受ける。
このランダム加振力を受けることにより、羽根車にはその固有振動数を卓越周波数とする振動が励起される。ここで、励起された振動は、これと同一の周波数スペクトルを持つ圧力脈動を流体中に生じさせる。一方、羽根車の固有振動数には、その時点での羽根車の状態が反映される。即ち、羽根車に損傷が生じていれば固有振動数は、その損傷に対して特有に変化する。このため、流体の変動圧力を検出し、そのデータを周波数分析して求めた周波数スペクトルと、数値解析又は実験等の手段で取得した当該羽根車と同一仕様の羽根車の摩耗、亀裂、破損等の損傷が発生した状態における当該取扱流体中での周波数スペクトルのデータベースとを比較することにより、現時点における羽根車の摩耗、亀裂、破損などの発生状況を精度良く検知出来ることに発明者は想到した。ここで、脈動の周波数スペクトルは、干渉による成分、剥離渦による成分、キャビテーションによる成分、羽根車自体の振動による成分など、多くの成分を含むが、発明者は、羽根車自体の振動による成分に着目した。
【0010】
即ち、流体機械運転中の羽根車は、前記ランダム加振力によって加振される結果、必ずその固有振動数での振動を励起し、その周波数スペクトルは取扱流体中に変動圧力として転写され伝播される。即ち、羽根車の固有振動数を卓越周波数とする振動の周波数スペクトルが流体の変動圧力の周波数スペクトルにも現れるのである。他方、羽根車は現に発生している損傷即ち摩耗、亀裂及び破損の種類と進行程度とに応じた特有の固有振動数を有し、その振動の周波数スペクトルを持って振動する。
この事実を利用して、羽根車の健全状態時点における当該取り扱い流体中での周波数スペクトルデータと、前記の夫々の損傷を持つ羽根車の代表的な周波数スペクトルデータとを、予めデータベースとして用意しておき、現時点での取扱流体の変動圧力の周波数スペクトルを、これらと比較することによって、運転を継続しながら精度の高い損傷検出がリアルタイムで出来ることが解った。
尚、前記固有振動数とは現に取扱っている流体中での値であるから、取扱流体が変われば固有振動数も変化するものである。さらに、羽根車の健全状態時点における当該取扱い流体中での変動圧力の周波数スペクトル又は、羽根車に摩耗、亀裂、破損等の損傷を発生した状態における取扱流体中での変動圧力の周波数スペクトルのデータベースは実験から求めることが出来るほか、羽根車自体の振動周波数スペクトルとして数値解析的手法によっても求めることが可能で、又、実験と数値解析を併用することも可能である。
【0011】
羽根車の対称摩耗、或いは微細な亀裂は一般的に回転軸系の構造的不釣合いをもたらさないが、非対称或いは部分的欠損は不釣合いをもたらし、流体の圧力変動のみならず、軸振動としても現れる。本発明において、流体の圧力変動だけでも羽根車の損傷を検出出来るが、軸振動の信号を併用すれば、より高い検出精度を実現出来る。尚、軸振動の周波数スペクトルは実測から求めることが出来るほか、数値解析的手法によっても求めることが可能である。
【0012】
本発明の流体回転機械の羽根車の損傷検出方法は、羽根車(5)を用いた流体回転機械(例えば、遠心式水ポンプ1)の羽根車(5)の損傷を検出する方法において、該機械(1)の流体流入部(吸込口2)から該機械(1)の流体流出部(吐出口4)に至る流路(10)の1以上の箇所における流体(F)の変動圧力を検出する工程(S1)と、検出した変動圧力データを基にして周波数分析し変動圧力の周波数スペクトルを求める工程(S2)と、該工程(S2)で求めた流体変動圧力の周波数スペクトルを、データベースとして用意しておいた当該羽根車(5)の健全状態時点での当該流体回転機械(1)の取扱流体中における羽根車(5)の振動により励起される変動圧力の周波数スペクトル又は羽根車自体の振動周波数スペクトルと比較し、現時点において当該羽根車(5)が健全状態にあるか否かを判定する工程(S3)と、該工程(S3)において健全状態にないと判断した場合に、前記スペクトルを求める工程(S2)で求めた流体変動圧力周波数スペクトルを、摩耗、亀裂及び破損の内の1又は2以上の損傷要因を持った羽根車の振動により前記取扱流体中において励起される変動圧力の周波数スペクトルのデータベース又は羽根車(5)自体の振動周波数スペクトルのデータベースと比較し現時点において発生している損傷の種類及びその進行程度を判断する工程(S4)と、その前記進行程度から現時点で修理等が必要か否かを判定する工程(S5)とを含むことを特徴としている(請求項1)。
【0013】
また、本発明の流体回転機械の羽根車の損傷検出方法は、羽根車(5)を用いた流体回転機械(例えば、遠心式水ポンプ1)の羽根車(5)の損傷を検出する方法において、該機械(1)の流体流入部(吸込口2)から該機械(1)の流体流出部(吐出口4)に至る流路(10)の1以上の箇所における流体(F)の変動圧力を検出する工程(S1)と、当該機械(1)の軸受部(11)の少なくとも1箇所で軸振動を検出する工程(S21)と、検出した変動圧力データと軸振動のデータを基にして周波数分析し変動圧力の周波数スペクトルと軸振動の周波数スペクトルを求める工程(S2、S22)と、該工程(S2、S22)で求めた変動圧力の周波数スペクトルと軸振動の周波数スペクトルを、データベースとして用意しておいた当該羽根車(5)の健全状態時点での当該流体回転機械(1)の取扱流体中における羽根車の振動により励起される変動圧力の周波数スペクトル又は羽根車自体の振動周波数スペクトルと該羽根車及び前記軸受共に健全状態にある場合の組合せにおける軸振動の周波数スペクトルに対して比較し、現時点において該羽根車が健全状態にあるか否かを判定する工程(S3)と、該工程(S3)において健全状態にないと判断した場合に、前記スペクトルを求める工程(S2、S22)で求めた流体変動圧力周波数スペクトルを、摩耗、亀裂及び破損の内の1又は2以上の損傷要因を持った羽根車の振動により前記取扱流体中において励起される変動圧力の周波数スペクトルのデータベース又は羽根車(5)自体の振動周波数スペクトルのデータベースと比較し現時点において発生している損傷の種類及び進行程度を判断する工程(S4)と、その進行程度によって、現時点で修理等が必要か否かを判定する工程(S5)とを含むことを特徴としている(請求項2)。
【0014】
又、本発明の流体回転機械の状態監視方法は、羽根車(5)を具備する流体回転機械(1)の取扱流体(F)の圧力を検出する圧力検出工程(S1)と、該圧力検出工程(S1)で検出された検出値を分析する(例えば、ステップS2で周波数スペクトルを求める)分析工程とを有して前記流体回転機械(1)の状態を監視する流体回転機械(1)の状態監視方法であって、該分析工程では予め記憶されているデータであって前記羽根車(5)の摩耗、亀裂或いは破損を意味するデータ(例えば、データベースとして保持される周波数スペクトル)と前記圧力検出工程で検出された検出値(例えば、ステップS2で求められた周波数スペクトル)とを比較することを特徴としている(請求項3)。
【0015】
当該流体回転機械(1)の運転時に、現に発生している流体変動圧力の周波数スペクトルは、干渉による成分、剥離渦による成分、キャビテーションによる成分、羽根車(5)自体の振動による成分など、多くの成分を含むが、羽根車(5)自体の振動による成分以外の成分は予め予測出来るので、フィルタでそれらの成分を除外してもよいし、または比較に際して、それらの成分を無視して羽根車(5)自体の振動による成分だけに注目してもよい。
【0016】
羽根車(5)に損傷がある場合には軸振動の周波数スペクトルに影響することがあるので、軸振動の周波数スペクトルも併用すれば検出精度が向上する。そのため、羽根車(5)、軸受(11)共に健全状態における軸振動スペクトルをデータベースとして保存していることが望ましい。言うまでもなく、当該羽根車(5)の健全時点での取扱流体(F)中における羽根車の振動により励起される変動圧力の周波数スペクトル又は羽根車自体の振動の周波数スペクトルは、予め求めておくのではなく、前記比較の時点で求めてもよいが、予め求めておきデータとして保存しておくことが好ましい。
【0017】
前記データベースの内容としては、羽根車(5)の3つの損傷態様である摩耗、亀裂及び破損に対して夫々の損傷の進行度にいくつかの段階を設定して、それら損傷の種類と進行度の組合せを代表的な損傷の状態(ケース)とし、各ケースにおいて当該使用流体中における羽根車(5)の振動によって励起される変動圧力の周波数スペクトル又は、羽根車自体の振動の周波数スペクトルのデータを夫々求めてデータベースとして揃えておけばよい。
又、必要に応じ前記羽根車(5)において、前記3種類の損傷態様の内の何れか1種類の損傷態様を持つ場合のみでなく、2種類以上の損傷態様を併せ持つ場合も代表的なケースとして同様に当該使用流体中における変動圧力の周波数スペクトル、又は羽根車自体の振動の周波数スペクトルのデータベースとして揃えておけば、より好ましい。
尚、このデータベースを作成するに際しては、たとえば、実験によって求めてもよいし、数値解析的方法、或いは両者を併用してもよい。
上記のような各種の周波数スペクトルをデータベースとして保持しておけば変動圧力を検出し、それを基にして周波数スペクトルを求めた時点において羽根車が健全状態にあるかどうかと、健全状態ではないと判断した時に羽根車に発生している損傷の種類と進行程度を知ることができ、現時点で修理や交換が必要か否かを判定することができる。なお、流体の変動圧力の検出位置は該流体回転機械の流体入口から出口に至る流路のどの位置でも良いが羽根車の近傍が好ましく、検出箇所の数も複数箇所であることが好ましい。
【0018】
具体的には、摩耗にあっては、羽根車(5)全体に亙る一様な摩耗、又は羽根(53)・主板(51)・側板(52)などに局所的に発生した摩耗と、これらの夫々の摩耗における進行程度との組合せを考慮したデータベースを作っておくことで前記の方法が可能となる。
次に、亀裂に対しては、当該亀裂の発生場所と亀裂の大きさ、即ち亀裂の長さを考慮し、これらを組み合わせたデータベースを作っておくことで前記の方法が可能となる。さらに、破損にあっては、破損の発生場所と破損による欠落部の大きさ等を考慮し、これらを組み合わせたデータベースを作っておくことで前記の方法が可能となる。
【0019】
本発明の流体回転機械の羽根車の損傷検出装置は、羽根車(5)を用いた流体回転機械(1)の羽根車(5)の損傷を検出する装置(A)において、該機械(例えば、遠心式水ポンプ1)の流体流入部(吸込口2)から、該機械(1)の流体流出部(吐出口4)に至る流路(10)の1以上の箇所における流体(F)の変動圧力を検出する圧力検出手段(圧力センサ6)と、前記圧力検出手段(6)により検出した変動圧力のデータを基にして周波数分析し周波数スペクトルを求める手段(コントロールユニット8)と、該羽根車(5)の健全状態時点での該流体回転機械(1)の取扱流体(F)中における該羽根車(5)の振動により励起される変動圧力の周波数スペクトル又は羽根車(5)自体の振動周波数スペクトルを記憶しておく記憶手段(12)と、前記流体回転機械(1)の運転中に、羽根車(5)の損傷要因、即ち摩耗、亀裂及び破損の内の1又は2以上の損傷要因を有する羽根車(5)の振動により当該流体回転機械(1)の取扱流体(F)中において励起される変動圧力の周波数スペクトル又は羽根車(5)自体の振動周波数スペクトルを求め記憶しておく記憶手段(12)と、を備えている(請求項4)。
【0020】
また、本発明の流体回転機械の羽根車の損傷検出装置は、羽根車(5)を用いた流体回転機械(1)の羽根車(5)の損傷を検出する装置(B)において、該機械(1)の流体流入部(2)から、該機械の流体流出部(4)に至る流路(10)の1以上の箇所における流体(F)の変動圧力を検出する圧力検出手段(圧力センサ6)と、該機械(1)の軸受部(11)の少なくとも1箇所で軸振動を検出する手段(振動センサ7)と、前記圧力検出手段(6)により検出した変動圧力のデータと前記軸振動を検出する手段(7)により検出した軸振動のデータを基にして周波数分析し夫々の周波数スペクトルを求める手段(8)と、該羽根車(5)の健全状態時点での該流体回転機械(1)の取扱流体(F)中における該羽根車(5)の振動により励起される変動圧力の周波数スペクトル又は羽根車自体の振動周波数スペクトルと、該羽根車(5及び前記軸受部(11)共に健全状態時点での軸振動の周波数スペクトルを記憶しておく記憶手段(12)と、前記流体回転機械(1)の運転中に、羽根車(5)の損傷要因、即ち摩耗、亀裂及び破損の内の1又は2以上の損傷要因を有する羽根車(5)の振動により該流体回転機械(1)の取扱流体中において励起される変動圧力の周波数スペクトル又は羽根車(5)自体の振動周波数スペクトルを記憶しておく記憶手段(12)と、を備えている(請求項5)。
【0021】
さらに、本発明の流体回転機械の状態監視装置は、羽根車(5)を具備する流体回転機械(1)と、該流体回転機械(1)の取扱流体(F)の変動圧力を検出する圧力検出手段(圧力センサ6)と、該検出手段(6)で得られる検出値を分析する分析手段(コントロールユニット8)とを有し、該分析手段(8)は予め用意されたデータであって前記羽根車(5)の摩耗、亀裂或いは破損を意味するデータ(例えば、周波数スペクトル)が記憶されている記憶手段(12)を備えていることを特徴としている(請求項6)。
【発明の効果】
【0022】
上述した構成及び検出方法を具備する本発明によれば、当該流体回転機械の運転中に、現に発生している流体変動圧力の周波数スペクトルを求めることが出来るので、現時点での羽根車(5)の固有振動数を卓越周波数とする振動の周波数スペクトルが分かる。
そこで、羽根車(5)の健全状態時点での流体回転機械の取扱流体(F)中における羽根車(5)の振動により励起される変動圧力の周波数スペクトル又は羽根車自体の振動の周波数スペクトルをデータベースとして用意しておけば、これと比較することが出来る。比較の結果、現時点における羽根車が健全状態であるか否かが判断出来る。
【0023】
羽根車(5)に損傷がある場合には軸振動の周波数スペクトルに影響することがあるので、軸振動の周波数スペクトルをも併用すれば検出精度が向上する。
【0024】
当該羽根車(5)又は必要に応じてそれと同一仕様の他の羽根車を用いて、羽根車(5)の損傷の種類と、夫々の損傷の種類においてその損傷の進行程度にいくつかの段階を設けて進行程度を識別するためのデータベースを予め構築しておけば、現時点において羽根車(5)が健全状態ではないと判断したときに、現時点での羽根車(5)に発生している損傷の種類とその進行程度を判断することが出来る。
羽根車(5)と軸受(11)が共に健全なときの軸振動のデータベースに関しては、当該機械(例えば、遠心式水ポンプ1)を試運転時に、回転数、流量、圧力(ヘッド)等の運転条件を変えて運転し、夫々の条件における軸振動を測定し、そのデータをコントロールユニット(8)で自動的にデータベース化すればよい。尚、回転数などの運転条件を変えての測定は、当該機械(1)の運転仕様に基づき必要に応じて測定すればよい。
【0025】
前述した手段及び構成を有する検出装置によれば、当該流体回転機械(例えば遠心式水ポンプ1)の運転中に現に発生している流体の変動圧力の周波数スペクトルを求めることが出来る。一方、当該羽根車(5)の健全状態時点での流体回転機械の取扱流体(F)中において、羽根車(5)の振動により励起される変動圧力の周波数スペクトル又は羽根車自体の振動の周波数スペクトル及び、流体回転機械(1)に使用されている羽根車(5)又は該羽根車(5)と同一仕様の他の羽根車であって、羽根車の損傷要因、即ち摩耗、亀裂及び破損の内の1又は2以上の損傷要因を有する羽根車の振動により当該取扱流体(F)中において励起される変動圧力の周波数スペクトル又は羽根車自体の振動の周波数スペクトルをデータベースとして記憶手段(12)に記憶しておくことが出来る。尚、これらの周波数スペクトルは、別途に実験又は数値解析等の手段により夫々求めることが出来る。
【0026】
当該羽根車(5)及び当該流体回転機械(1)の軸受(11)が共に健全状態にある時点における軸振動のデータに関しては、当該流体回転機械(1)の運転条件を必要に応じて変えて運転し、夫々の運転条件における軸振動を測定してデータを得てそれらのデータを基にして求めた軸振動の周波数スペクトルをデータベースとして記憶手段(12)に記憶しておけば良い。尚、必要であれば羽根車(5)に破損があった場合の軸振動のデータは数値解析又は実験等によって得ることも可能である。
【0027】
したがって、上述した方法及び手段によって求めた現に発生している流体の変動圧力の周波数スペクトル、望ましくは、さらに軸振動周波数スペクトルを健全状態時点での羽根車(5)の振動によって励起される変動圧力の周波数スペクトル又は羽根車自体の振動の周波数スペクトル及び、羽根車(5)と軸受(11)とが共に健全状態にある時点での軸振動の周波数スペクトル並びに、損傷要因を持つ羽根車(5)の場合の変動圧力の周波数スペクトル又は羽根車自体の振動の周波数スペクトルに対して比較することによって、現時点において羽根車(5)が健全であるか否か、及び健全でない場合には、発生している損傷の種類を判断することが出来る。
【0028】
また、前記羽根車(5)の損傷要因、すなわち摩耗、亀裂及び破損の各々に対して、夫々その進行程度にいくつかの段階を設定して、それら即ち、損傷の種類と進行程度の組合せからなる各々のケースにおいて当該使用流体中における当該羽根車(5)によって励起される変動圧力の周波数スペクトル又は羽根車自体の振動の周波数スペクトルを例えば、別途の数値解析や実験等によって求め、それらのデータをデータベースとして保存しておくことが出来るので、現に発生している周波数スペクトルを前記データベースに保存してある各種の周波数スペクトルと比較できるから、現に羽根車(5)に発生している損傷の種類や進行程度を当該流体回転機械の運転を停止することなく、継続しながらリアルタイムで判断することが出来る。また、リアルタイムに判断することが出来るので、現時点での修理等が必要であるか否かの判定が出来る。従って、過剰なメンテナンス作業を避けることができ、逆に必要なメンテナンス作業の時期を見のがすこともないので、流体回転機械の適切な保守管理ができる。
尚、前記判定に際しては、コンピュータ(コントロールユニット8)を用いて行っても良いし、人間が判定してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0030】
先ず、図1から図9までを参照して本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による羽根車損傷検出装置Aの概念図である。例えば、渦巻きケーシング3及びそのケーシング3の略中央に配置された羽根車5を有する公知の遠心式水ポンプ1において、運転中の流体圧力検出は、図1の例では吸込口2、渦巻きケーシング3及び吐出口4の合計3箇所で行われる。
【0031】
夫々の圧力検出部には、圧力センサ6が設けられている。圧力センサ6の信号は入力信号ライン9によって制御手段であるコントロールユニット8に伝送される。該コントロールユニット8は、記憶手段12を備えるとともに、周波数分析し、周波数スペクトルを求める機能を有している。
該コントロールユニット8では、運転中に検出した圧力センサ6からの前記入力信号に基づき変動圧力の周波数分析を行い、周波数スペクトルを求める。
そして、その周波数分析して求められた周波数スペクトルは予め前記記憶手段12に内蔵された、健全羽根車と損傷羽根車における変動圧力の周波数スペクトルのデータベースと比較することにより、羽根車5の損傷の有無及び損傷がある場合には、損傷の種類とその進行程度を知ることが出来る。
尚、図1において符号Fは、流体及び流体の流れの方向を、符号10は流体Fの流路を示している。
【0032】
当該遠心式水ポンプ1の運転中に、現に発生している流体変動圧力の周波数スペクトルは、干渉による成分、剥離による成分、キャビテーションによる成分、羽根車5自体の振動による成分等、多くの成分を含むが、羽根車5自体の振動による成分以外の成分はあらかじめ予測出来るので、コントロールユニット8に内蔵されている図示しないフィルタでそれらの成分を除外してもよいし、又は比較に際して、それらの成分を無視して羽根車5の振動による成分だけに注目してもよい。
損傷の有無や、その種類、進行程度の判断などはコントロールユニット8で自動的に行ってもよいし、コントロールユニット8の出力を監視する人間が行ってもよい。
【0033】
尚、流体圧力の検出箇所は当該流体回転機械(遠心式水ポンプ1)への流体流入部から流体流出部に至る間の流路10のいずれか1箇所又は2箇所であってもよいが、信頼性向上という点から吸入口2、渦巻きケーシング3及び吐出口4の3箇所で測定することが好ましい。検知精度を高めるために複数箇所での圧力検出を推奨する。
尚、前記記憶手段(12)に保存してあるデータベースは言うまでもなく変動圧力の周波数スペクトルに替えて、羽根車自体の振動の周波数スペクトルであっても良い。またコントロールユニット(8)が所要の演算機能を有すれば、圧力センサ(6)の信号に基づいて周波数分析し変動圧力の周波数スペクトルを求める際に、シミュレーションにより健全羽根車や損傷を有する羽根車の場合における変動圧力の周波数スペクトルや羽根車自体の振動の周波数スペクトルを求めることもできるが、これらの周波数スペクトルは、別途、数値解析や実験等の手段により予め求めておき、それらのデータを前記記憶手段(12)に記憶させて予めデータベースとして構築しておくのが好ましい。
【0034】
図3は前記遠心式水ポンプ1の運転中に、渦巻きケーシング3に設置した圧力センサ6で実測した羽根車5の健全状態時点における流体変動圧力の周波数スペクトルである。ピークPは羽根車5の水中固有振動数に対応する。損傷が発生すると、固有振動数が変化するので、周波数スペクトルの波形が変わる。その波形の変化から羽根車5に損傷の有無、及び損傷がある場合はその種類と進行程度を割り出すことが出来る。
【0035】
図4は、ある遠心羽根車を対象に、損傷と振動の関係を有限要素解析により調べた際の、当該羽根車5の有限要素モデルを示したものである。
図5に、健全羽根車と摩耗した羽根車の振動特性、即ち周波数スペクトルの比較を示す。図中、横軸は周波数、縦軸は羽根車の振動である。そして、太い実線は健全羽根車5の場合、破線は側板52(後述の図7参照)だけが15%摩耗した場合、点線は主板51(後述の図7参照)だけが15%摩耗した場合、1点鎖線は羽根53(後述の図7参照)だけが15%摩耗した場合、細い実線は羽根車5全体が15%摩耗した場合の結果を夫々表す。摩耗の発生場所により羽根車5の振動特性が相互に異なって変化することが分かる。この変化から羽根車5に摩耗が発生したことと、その摩耗の発生場所と進行程度を特定することが可能である。
【0036】
亀裂が発生した場合の解析例を図6に示す。図中、太い実線は健全羽根車5の場合、破線は羽根車5の直径Dに対して、側板52の図7(図7は、羽根車5の側断面図7−Lと、正面図7−Rとから成る)の7−Rに示す位置に長さ10%Dの亀裂C1が1個だけが発生した場合、点線は主板51の図7の7−Rに示す位置に長さ10%Dの亀裂C2が1個だけが発生した場合、細い実線は羽根53の図7の7−Lに示す位置に長さ10%Dの亀裂C3が1個だけが発生した場合の羽根車5の振動周波数スペクトルを夫々表す。亀裂の発生場所により羽根車5の固有振動数と振動特性がそれぞれ特有に変化することが分かる。この変化を検知することにより羽根車5に亀裂が発生したことと、その亀裂発生場所とその進行程度を特定することが可能である。
【0037】
羽根車5に破損が発生した場合の解析例を図8に示す。図中、太い実線は健全羽根車5の場合、破線は羽根車の直径Dに対して、側板52の図9(図9は、羽根車5の側断面図9−Lと、正面図9−Rとから成る)の9−Rに示す位置に長さ10%D、深さ5%Dの破損B1が発生した場合、点線は主板51の図9の9−Rに示す位置に長さ10%D、深さ5%Dの破損B2が発生した場合、細い実線は羽根53の図9の9−Lに示す位置に10%Dに相当する破損B3が発生した場合の羽根車5の振動周波数スペクトルを夫々表す。破損の発生場所により羽根車5の固有振動数と振動特性が変化することが分かる。この変化を検知することにより羽根車5に破損が発生したことと、その破損の発生位置とその進行程度を特定することが可能である。
【0038】
次に、図2を参照して第1実施形態の羽根車の損傷検出方法を説明する。
先ず、ステップS1において、当該流体回転機械である遠心式水ポンプ1の図示の例では、吸入口2と渦巻きケーシング3と吐出口4近傍の、合計3箇所に圧力センサ6を設置し、その3箇所について流体の変動圧力を検出する。
【0039】
次のステップS2では、コントロールユニット8は、前記検出した変動圧力の情報から、変動圧力の周波数スペクトルを求める。
【0040】
コントロールユニット8は、次のステップS3において、記憶手段12に記憶してある健全状態時点での羽根車5により流体中に生じた変動圧力の周波数スペクトル又は羽根車自体の振動の周波数スペクトルのデータベースと、前記求めた現時点での羽根車の変動圧力周波数スペクトルのデータとを比較して、現時点において羽根車が健全であるか否かを判断する。なお、この判断はコントロールユニット8を用いて自動的に行っても良いし、人間が判断しても良い。
【0041】
健全であると判断された場合(ステップS3のYES)は、ステップS1に戻り、再びステップS1以降を繰り返す。
一方、健全でないと判断された場合(ステップS3のNO)は、次のステップS4に進む。
【0042】
ステップS4で、コントロールユニット8は、損傷の種類とその進行程度を特定した後、ステップS5に進む。なお、ステップS4は、このようにコントロールユニット8を用いて自動的に行っても良いし、人間がこの特定作業を行っても良い。
【0043】
ステップS5では、コントロールユニット8は、当該遠心式水ポンプ1の羽根車5に対して、修理又は交換が必要であるか否かを判断する。なお、ステップS5の判断は、このようにコントロールユニット8を用いて自動的に行っても良いし、人間がこの判断を行っても良い。修理又は交換が必要であれば(ステップS5のYES)、次のステップS6に進み、修理又は交換を行って、制御を終了する。
一方、修理又は交換の必要がないのであれば(ステップS5のNO)、ステップS1に戻り、再びステップS1以降を繰り返す。
【0044】
次に、図10及び図11を参照して本発明の第2実施形態を説明する。
図10及び図11の第2実施形態(検出装置全体を符号Bで示す)は、図1及び図2の第1実施形態に対して、羽根車5の軸受部11の直交する2方向に振動センサ7を2個設置し、その振動センサ7をコントロールユニット8に信号ライン9によって接続したことが異なる。
構成面では、振動センサ7を追加したことを除けば、第1実施形態と実質的に同様である。
【0045】
図11に示す第2実施形態の羽根車の損傷検出方法は、図2の第1実施形態の損傷検出方法に対して、変動圧力の周波数スペクトルを求める工程(ステップS2)と、周波数スペクトルが健全であるか否かを判断する工程(ステップS3)との間に、前記軸受部11で軸振動を検出する工程(ステップS21)及び軸振動の周波数スペクトルを求める工程(ステップS22)を追加(挿入)したことが異なる。
【0046】
流体回転機械1の羽根車5の振動は、必ずその固有振動数を卓越周波数とする周波数スペクトルを持ち、その周波数スペクトルは当該羽根車5に摩耗、亀裂又は破損という損傷が発生した場合には、その損傷の種類、発生場所及びその進行度に応じて特有な形へと変化する。又、当該羽根車5が流体回転機械1に取付けられて運転された場合には、当該流体回転機械1の流路10内において、これと同一の周波数スペクトルを流体F中に変動圧力として生じさせるので、現に運転中の流体回転機械1の流路10中に発生している流体Fの変動圧力を測定できれば、現時点での羽根車5に損傷が発生しているか否か、及び損傷していた場合に、その損傷の種類と発生場所及びその進行程度を判断することが出来る。
さらに、羽根車5に非対称摩耗や部分破損等の損傷が発生すると、必ずアンバランスが生じ、軸振動に表れる。その特徴は、回転数成分の軸振動の増大である。軸振動の信号も併用すれば、羽根車の損傷検知精度を高めることが出来るので併用することが望ましい。
【0047】
上述したような構成及び検出方法を有する第1実施形態及び第2実施形態の羽根車の損傷検出装置及び検出方法によれば、流体回転機械1を運転中に、流体回転機械1の流路10中の流体Fの変動圧力と、望ましくは軸振動をも合わせて測定し、それらの周波数スペクトルから当該流体回転機械1の運転を継続しながら的確に現時点における羽根車5の状態を把握出来るので、損傷した場合には、直ちにその事実を知り、適切な処置を施すことが出来る。したがって、事故に至ることなく、理想的な予防保全が出来る。
【0048】
又、事故回避が可能なことはもちろん、過度な予防保全を無くすことが出来るので、維持経費の節減に大きく貢献出来る。
流体変動圧力の周波数スペクトルは、干渉による成分、剥離による成分、キャビテーションによる成分、羽根車5自体の振動による成分等、多くの成分を含むが、羽根車5自体の振動による成分以外の成分は予め予測出来るので、フィルタでそれらの成分を除外してもよいし、又、比較に際して、それらの成分を無視して羽根車5の振動による成分だけに注目してもよい。
【0049】
従来はこのような手法・手段が採れなかったので、事故に至るケースも稀ではなかった。又、事故に至らぬような予防保全方法はあったが、流体回転機械のケーシングや、軸受の振動を検出することにより行う方法であったので的確性を欠き、予防保全策としては必ずしも十分ではなかった。
【0050】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1実施形態の羽根車損傷検出装置の構成を示した装置概念図。
【図2】本発明の第1実施形態の羽根車の破損検出方法を示したフローチャート。
【図3】健全羽根車を有する遠心式水ポンプの渦巻きケーシングで測定した圧力変動例を示した特性図。
【図4】遠心羽根車の有限要素モデルの例。
【図5】摩耗があった場合の羽根車の振動特性の変化を示した特性図。
【図6】亀裂が発生した場合の羽根車の振動特性の変化を示した特性図。
【図7】亀裂位置の概念図。
【図8】部分的に欠けた場合(部分的破損)の羽根車の振動の変化を示した特性図。
【図9】部分的に欠けた場合(部分的破損)の概念図。
【図10】本発明の第2実施形態の羽根車損傷検出装置の構成を示した装置概念図。
【図11】本発明の第2実施形態の羽根車の破損検出方法を示したフローチャート。
【符号の説明】
【0052】
1・・・流体回転機械/遠心式水ポンプ
2・・・吸込口
3・・・渦巻きケーシング
4・・・吐出口
5・・・羽根車
6・・・圧力センサ
7・・・振動センサ
8・・・コントロールユニット
9・・・入力信号ライン
10・・・流路
11・・・軸受部
12・・・記憶手段
51・・・主板
52・・・側板
53・・・羽根
A・・・羽根車の損傷を検出する装置
B・・・羽根車の損傷を検出する装置
F・・・流体及び流体の流れの方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽根車を用いた流体回転機械の羽根車の損傷を検出する方法において、該機械の流体流入部から、該機械の流体流出部に至る流路の1以上の箇所における流体の変動圧力を検出する工程と、検出した変動圧力データを基にして周波数分析し変動圧力の周波数スペクトルを求める工程と、該工程で求めた流体変動圧力の周波数スペクトルを、データベースとして用意しておいた当該羽根車の健全状態時点での当該流体回転機械の取扱流体中における羽根車の振動により励起される変動圧力の周波数スペクトル又は羽根車自体の振動周波数スペクトルと比較し現時点において当該羽根車が健全状態にあるか否かを判定する工程と、該工程において健全状態にないと判断した場合に前記スペクトルを求める工程で求めた流体変動圧力周波数スペクトルを摩耗、亀裂及び破損の内の1又は2以上の損傷要因を持った羽根車の振動により前記取扱流体中において励起される変動圧力の周波数スペクトルのデータベース又は羽根車自体の振動周波数スペクトルのデータベースと比較し現時点において発生している損傷の種類及びその進行程度を判断する工程と、その前記進行程度から現時点で修理等が必要か否かを判定する工程とを含むことを特徴とする流体回転機械の羽根車の損傷検出方法。
【請求項2】
羽根車を用いた流体回転機械の羽根車の損傷を検出する方法において、該機械の流体流入部から該機械の流体流出部に至る流路の1以上の箇所における流体の変動圧力を検出する工程と、当該機械の軸受部の少なくとも1箇所で軸振動を検出する工程と、検出した変動圧力データと軸振動のデータを基にして周波数分析し変動圧力の周波数スペクトルと軸振動の周波数スペクトルを求める工程と、該工程で求めた変動圧力の周波数スペクトルと軸振動の周波数スペクトルを、データベースとして用意しておいた当該羽根車の健全状態時点での当該流体回転機械の取扱流体中における羽根車の振動により励起される変動圧力の周波数スペクトル又は羽根車自体の振動周波数スペクトルと該羽根車及び前記軸受共に健全状態にある場合の組合せにおける軸振動の周波数スペクトルに対して比較し、現時点において該羽根車が健全状態にあるか否かを判定する工程と、該工程において健全状態にないと判断した場合に、前記スペクトルを求める工程で求めた流体変動圧力周波数スペクトルを摩耗、亀裂及び破損の内の1又は2以上の損傷要因を持った羽根車の振動により前記取扱流体中において励起される変動圧力の周波数スペクトルのデータベース又は羽根車自体の振動周波数スペクトルのデータベースと比較し現時点において発生している損傷の種類及び進行程度を判断する工程と、その進行程度によって現時点で修理等が必要か否かを判定する工程とを含むことを特徴とする流体回転機械の羽根車の損傷検出方法。
【請求項3】
羽根車を具備する流体データ回転機械の取扱流体の圧力を検出する圧力検出工程と、該圧力検出工程で検出された検出値を分析する分析工程とを有して前記流体回転機械の状態を監視する流体回転機械の状態監視方法であって、該分析工程では予め記憶されているデータであって前記羽根車の摩耗、亀裂或いは破損を意味するデータと前記圧力検出工程で検出された検出値とを比較することを特徴とする流体回転機械の状態監視方法。
【請求項4】
羽根車を用いた流体回転機械の羽根車の損傷を検出する装置において、該機械の流体流入部から該機械の流体流出部に至る流路の1以上の箇所における流体の変動圧力を検出する圧力検出手段と、前記圧力検出手段により検出した変動圧力のデータを基にして周波数分析し周波数スペクトルを求める手段と、該羽根車の健全状態時点での該流体回転機械の取扱流体中における該羽根車の振動により励起される変動圧力の周波数スペクトル又は羽根車自体の振動周波数スペクトルを記憶しておく記憶手段と、前記流体回転機械の運転中に羽根車の損傷要因、即ち摩耗、亀裂及び破損の内の1又は2以上の損傷要因を有する羽根車の振動により当該流体回転機械の取扱流体中において励起される変動圧力の周波数スペクトル又は羽根車自体の振動周波数スペクトルを記憶しておく記憶手段と、を備えたことを特徴とする流体回転機械の羽根車の損傷検出装置。
【請求項5】
羽根車を用いた流体回転機械の羽根車の損傷を検出する装置において、該機械の流体流入部から該機械の流体流出部に至る流路の1以上の箇所における流体の変動圧力を検出する圧力検出手段と、該機械の軸受部の少なくとも1箇所で軸振動を検出する手段と、前記圧力検出手段により検出した変動圧力のデータと前記軸振動を検出する手段により検出した軸振動のデータを基にして周波数分析し夫々の周波数スペクトルを求める手段と、該羽根車の健全状態時点での該流体回転機械の取扱流体中における該羽根車の振動により励起される変動圧力の周波数スペクトル又は羽根車自体の振動周波数スペクトルと、該羽根車及び前記軸受部共に健全状態時点での軸振動の周波数スペクトルを記憶しておく記憶手段と、前記流体回転機械の運転中に、羽根車の損傷要因、即ち摩耗、亀裂及び破損の内の1又は2以上の損傷要因を有する羽根車の振動により該流体回転機械の取扱流体中において励起される変動圧力の周波数スペクトル又は羽根車自体の振動周波数スペクトルを記憶しておく記憶手段と、を備えたことを特徴とする流体回転機械の羽根車の損傷検出装置。
【請求項6】
羽根車を具備する流体回転機械と、該流体回転機械の取扱流体の変動圧力を検出する圧力検出手段と、該検出手段で得られる検出値を分析する分析手段とを有し、該分析手段は予め用意されたデータであって前記羽根車の摩耗、亀裂或いは破損を意味するデータが記憶されている記憶手段を備えていることを特徴とする流体回転機械の状態監視装置。
【請求項1】
羽根車を用いた流体回転機械の羽根車の損傷を検出する方法において、該機械の流体流入部から、該機械の流体流出部に至る流路の1以上の箇所における流体の変動圧力を検出する工程と、検出した変動圧力データを基にして周波数分析し変動圧力の周波数スペクトルを求める工程と、該工程で求めた流体変動圧力の周波数スペクトルを、データベースとして用意しておいた当該羽根車の健全状態時点での当該流体回転機械の取扱流体中における羽根車の振動により励起される変動圧力の周波数スペクトル又は羽根車自体の振動周波数スペクトルと比較し現時点において当該羽根車が健全状態にあるか否かを判定する工程と、該工程において健全状態にないと判断した場合に前記スペクトルを求める工程で求めた流体変動圧力周波数スペクトルを摩耗、亀裂及び破損の内の1又は2以上の損傷要因を持った羽根車の振動により前記取扱流体中において励起される変動圧力の周波数スペクトルのデータベース又は羽根車自体の振動周波数スペクトルのデータベースと比較し現時点において発生している損傷の種類及びその進行程度を判断する工程と、その前記進行程度から現時点で修理等が必要か否かを判定する工程とを含むことを特徴とする流体回転機械の羽根車の損傷検出方法。
【請求項2】
羽根車を用いた流体回転機械の羽根車の損傷を検出する方法において、該機械の流体流入部から該機械の流体流出部に至る流路の1以上の箇所における流体の変動圧力を検出する工程と、当該機械の軸受部の少なくとも1箇所で軸振動を検出する工程と、検出した変動圧力データと軸振動のデータを基にして周波数分析し変動圧力の周波数スペクトルと軸振動の周波数スペクトルを求める工程と、該工程で求めた変動圧力の周波数スペクトルと軸振動の周波数スペクトルを、データベースとして用意しておいた当該羽根車の健全状態時点での当該流体回転機械の取扱流体中における羽根車の振動により励起される変動圧力の周波数スペクトル又は羽根車自体の振動周波数スペクトルと該羽根車及び前記軸受共に健全状態にある場合の組合せにおける軸振動の周波数スペクトルに対して比較し、現時点において該羽根車が健全状態にあるか否かを判定する工程と、該工程において健全状態にないと判断した場合に、前記スペクトルを求める工程で求めた流体変動圧力周波数スペクトルを摩耗、亀裂及び破損の内の1又は2以上の損傷要因を持った羽根車の振動により前記取扱流体中において励起される変動圧力の周波数スペクトルのデータベース又は羽根車自体の振動周波数スペクトルのデータベースと比較し現時点において発生している損傷の種類及び進行程度を判断する工程と、その進行程度によって現時点で修理等が必要か否かを判定する工程とを含むことを特徴とする流体回転機械の羽根車の損傷検出方法。
【請求項3】
羽根車を具備する流体データ回転機械の取扱流体の圧力を検出する圧力検出工程と、該圧力検出工程で検出された検出値を分析する分析工程とを有して前記流体回転機械の状態を監視する流体回転機械の状態監視方法であって、該分析工程では予め記憶されているデータであって前記羽根車の摩耗、亀裂或いは破損を意味するデータと前記圧力検出工程で検出された検出値とを比較することを特徴とする流体回転機械の状態監視方法。
【請求項4】
羽根車を用いた流体回転機械の羽根車の損傷を検出する装置において、該機械の流体流入部から該機械の流体流出部に至る流路の1以上の箇所における流体の変動圧力を検出する圧力検出手段と、前記圧力検出手段により検出した変動圧力のデータを基にして周波数分析し周波数スペクトルを求める手段と、該羽根車の健全状態時点での該流体回転機械の取扱流体中における該羽根車の振動により励起される変動圧力の周波数スペクトル又は羽根車自体の振動周波数スペクトルを記憶しておく記憶手段と、前記流体回転機械の運転中に羽根車の損傷要因、即ち摩耗、亀裂及び破損の内の1又は2以上の損傷要因を有する羽根車の振動により当該流体回転機械の取扱流体中において励起される変動圧力の周波数スペクトル又は羽根車自体の振動周波数スペクトルを記憶しておく記憶手段と、を備えたことを特徴とする流体回転機械の羽根車の損傷検出装置。
【請求項5】
羽根車を用いた流体回転機械の羽根車の損傷を検出する装置において、該機械の流体流入部から該機械の流体流出部に至る流路の1以上の箇所における流体の変動圧力を検出する圧力検出手段と、該機械の軸受部の少なくとも1箇所で軸振動を検出する手段と、前記圧力検出手段により検出した変動圧力のデータと前記軸振動を検出する手段により検出した軸振動のデータを基にして周波数分析し夫々の周波数スペクトルを求める手段と、該羽根車の健全状態時点での該流体回転機械の取扱流体中における該羽根車の振動により励起される変動圧力の周波数スペクトル又は羽根車自体の振動周波数スペクトルと、該羽根車及び前記軸受部共に健全状態時点での軸振動の周波数スペクトルを記憶しておく記憶手段と、前記流体回転機械の運転中に、羽根車の損傷要因、即ち摩耗、亀裂及び破損の内の1又は2以上の損傷要因を有する羽根車の振動により該流体回転機械の取扱流体中において励起される変動圧力の周波数スペクトル又は羽根車自体の振動周波数スペクトルを記憶しておく記憶手段と、を備えたことを特徴とする流体回転機械の羽根車の損傷検出装置。
【請求項6】
羽根車を具備する流体回転機械と、該流体回転機械の取扱流体の変動圧力を検出する圧力検出手段と、該検出手段で得られる検出値を分析する分析手段とを有し、該分析手段は予め用意されたデータであって前記羽根車の摩耗、亀裂或いは破損を意味するデータが記憶されている記憶手段を備えていることを特徴とする流体回転機械の状態監視装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−9581(P2006−9581A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−183467(P2004−183467)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】
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