説明

耐火ライニングの部分補修の施工方法及び部分補修枠

【課題】本発明は、ジャッキで各シールゴムを重合状態で押圧することにより、耐火ライニング面及びコーナ部に各シールゴムが接合し、シールを完全とすることを目的とする。
【解決手段】本発明による耐火ライニングの部分補修の施工方法及び部分補修枠は、部分補修枠(9)の枠部(9a)の側部に設けられ側壁シールゴム(21)を有する一対の側壁シール扉(22)と、前記枠部(9a)の底部に設けられ底面シールゴム(25)を有する底面シール扉(26)と、前記各側壁シール扉(22)を外側へ拡開するための側壁押えジャッキ(5)と、前記底面シール扉(26)を下方へ付勢するための底面押えジャッキ(27)と、を用い、前記各側壁シールゴム(21)と底面シールゴム(25)を重ね合わせた状態で耐火ライニング面(2a)の底面及びコーナ部に前記各シールゴム(21,25)を重ね合わせた状態で接合してシールが行われ、不定形耐火物(6)の注入が行われる方法と構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火ライニングの部分補修の施工方法及び部分補修枠に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種の耐火ライニングの部分補修の施工方法としては、例えば、一般に用いられている構成を図9及び図10に示すことができる。
すなわち、図9において符号1で示されるものは、鍋又はタンディッシュ等の溶融金属容器の鉄皮であり、この鉄皮1の内面には既設の耐火ライニング2が形成されている。
【0003】
図9の耐火ライニング2は、使用後の状態を示し、一部の局部損耗箇所3が発生しており、この局部損耗箇所3を部分解体後、耐火ライニング2の局部損耗箇所3をコンクリートパネル又は鉄板等の板部材4をブランケット4aを介して当接させ、この板部材4を複数のジャッキ5で耐火ライニング2側に押圧している。
前述の図9の構成において、板部材4と耐火ライニング2との間に図10で示される不定形耐火物6を流し込むことにより前記局部損耗箇所3が補修される。
【0004】
また、特許文献1に開示された耐火ライニングの部分成形用型枠においては、図示していないが、既設の耐火ライニングと枠の間に伸縮性の材料を配置し、この材料をエアで膨らませることにより、耐火ライニングとのシールを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭57−62387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の耐火ライニングの部分補修の施工方法は、以上のように構成されているため、次のような課題が存在していた。
すなわち、図9及び図10に示されるコンパネ(コンクリート型枠用パネル)等の板部材を用いたシール方式では、側壁の局部損耗箇所については枠掛けをして比較的簡単にシールが行えるが、底面と側壁のコーナ部分については、既設の耐火ライニングの残存厚みの変化及び補修前の解体範囲によってもコーナ部の形状が変化するため、コンパネや鉄板枠では枠掛けが非常に難しく、多くの作業時間を要していた。
【0007】
また、前述の特許文献1の耐火ライニングの部分成形用型枠においては、伸縮性の材料により既設の耐火ライニングの凹凸面を完全にシールすることができるが、この伸縮性材料を膨らませるための圧縮空気及び圧縮空気を導入するための設備が余分に必要となる。
さらに、例えば、既設の耐火ライニングが金属ワイヤ入りの材料で構成されていた場合、この伸縮性材料に穴が開くことがあり、確実なシールが極めて困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による耐火ライニングの部分補修の施工方法は、使用後の溶融金属容器の補修を必要とする耐火ライニング面に部分補修枠の枠部を設置し、前記耐火ライニング面と前記枠部との間に不定形耐火物を注入して前記耐火ライニング面を補修する耐火ライニングの部分補修の施工方法において、前記枠部の側部に設けられ側壁シールゴムを有する一対の側壁シール扉と、前記枠部の底部に設けられ底面シールゴムを有する底面シール扉と、前記各側壁シール扉を外側へ拡開するための側壁押えジャッキと、前記底面シール扉を下方へ付勢するための底面押えジャッキと、を用い、前記耐火ライニング面の底面及びコーナ部では、前記各側壁シールゴムと底面シールゴムを重ね合わせた状態で接合してシールが行われた後に、前記不定形耐火物の注入が行われる方法であり、また、本発明による部分補修枠は、使用後の溶融金属容器の耐火ライニング面の補修を行うため前記耐火ライニング面に接合する枠部を有する部分補修枠において、前記枠部の側部に設けられ側壁シールゴムを有する一対の側壁シール扉と、前記枠部の底部に設けられ底面シールゴムを有する底面シール扉と、前記各側壁シール扉間に設けられ前記各側壁シール扉を外側へ拡開するための側壁押えジャッキと、前記底面シール扉を下方へ付勢するため前記枠部と前記底面シール扉間に設けられた底面押えジャッキと、からなり、前記側壁シールゴムと底面シールゴムを互いに重ね合わせて配設される構成である。
【発明の効果】
【0009】
本発明による耐火ライニングの部分補修の施工方法及び部分補修枠は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、部分補修枠の枠部の両側及び底部に、一対の側壁シールゴム及び底面シールゴムを有する一対の側壁シール扉及び底面シール扉を有し、各扉を側壁押えジャッキ及び底面押えジャッキで押え、側壁シールゴムと底面シールゴムを互いに二重状として耐火ライニング面に押付けているため、シール性が従来よりも大幅に向上し、従来のコンパネ及び鉄板を用いた枠掛けに対して作業時間も大幅に軽減できる。
また、特に、側壁と底面の境界部(コーナー部)は、各シールゴムが二重状であるため、既設の耐火ライニング側壁と底面コーナ部の形状変化に対しても、従来のような伸縮材料と圧縮空気を使用することなく、簡単かつ確実に前記コーナー部をシールすることができる。そのため、シール構造を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による部分補修枠を示す正面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図1の右側面図である。
【図4】図1の要部の拡大図である。
【図5】図1の要部の拡大詳細図である。
【図6】図5の矢視A図である。
【図7】図5の矢視B図である。
【図8】図5の要部の拡大詳細図である。
【図9】従来の耐火ライニングの部分補修の施工方法を示す断面図である。
【図10】図9の正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、部分補修枠の両側に設けられたシールゴムを有する側壁シール扉及び底面シールゴムを有する底面シール扉を、各々ジャッキで強制的に拡開して耐火ライニングの面に押圧し、シール性及び作業性の向上を得るようにした耐火ライニングの部分補修の施工方法及び部分補修枠を提供することを目的とする。
【実施例】
【0012】
以下、図面と共に本発明による耐火ライニングの部分補修の施工方法及び部分補修枠の好適な実施の形態について説明する。
図1及び図2において、符号1で示されるものは、鍋又はタンディッシュ等からなる溶融金属容器1Aの鉄皮であり、この鉄皮1の内面には所要の厚さの耐火ライニング2が形成されている。
【0013】
図示の図1及び図2における前記耐火ライニング2は、既設の構造で、最初のイニシャル面2bから前記耐火ライニング2に発生した局部損耗箇所3の耐火ライニング面2aには、その補修を行うための部分補修枠9が内設されている。
前記部分補修枠9は、前記溶融金属容器1Aの一端側の内部形状に合わせた形状で構成されており、枠部9aと、この枠部9aの両側に側壁シール扉ヒンジ20を介して曲折自在に設けられ板状の側壁シールゴム21を有する側壁シール扉22と、前記各側壁シールゴム21の外側に設けられたブランケット23と、前記各側壁シール扉22を外側の耐火ライニング2側へ押圧するため各側壁シール扉22間に配設された複数の側壁押えジャッキ5と、前記枠部9aの底部9aAに設けられ底面シール扉ヒンジ24を介して曲折自在で板状の底面シールゴム25を有する底面シール扉26と、前記枠部9aに設けられ前記底面シール扉26を外側へ付勢するため前記枠部9aの底面押えジャッキ支持部材27aと底面シール扉26との間に配設された底面押えジャッキ27とからなり、この部分補修枠9に対し、前記枠部9aの上部に設けられ前記枠部9aの両側に跨る状態で配設された支持部材28aの両端の一対の浮上り防止部材28及び位置決め部材29と、前記枠部9aの上部の長手支持体31aの端部に設けられた浮上り防止レバーブロック31と、前記浮上り防止レバーブロック31にチェーン32を介して接続され固定部33へ係止するためのフック34と、が用いられる。
【0014】
図3から図8で示されるように、前記側壁シールゴム21及び底面シールゴム25は、前記枠部9aの底部9aA及びコーナ部9aB(図8)において互いに重ね合わせ、前記各ジャッキ5,27で押圧された場合に、既設の耐火ライニング2及びそのコーナ部1Acの形状変化に対しても、各シール扉22,26の開き角度と各シールゴム21,25の重なりにより、各シールゴム21,25が追随して変形し、簡単に完全なシールを行うことができる。
また、前記各シールゴム21,25では対応が困難な形状の場合には、前記ブランケット23を補助的に用いることにより、より完全なシールを行うことができる。
【0015】
次に、本発明による部分補修枠9を用いて溶融金属容器1A内の局部損耗箇所3の耐火ライニング2の補修を行う場合について説明する(図1〜図8を参照)。
(1) まず、使用後の溶融金属容器1Aの局部損耗箇所3の耐火物の解体を行う(図示せず)。
(2) 前記溶融金属容器1Aの縁部1Aa上に位置決め部材29を設置する。
(3) 部分補修枠9を溶融金属容器1A内に設置する。
(4) 脱枠用ジャッキ30を垂直方向に作動させて前記溶融金属容器1A内の部分補修枠9の設置レベルを調整する。
(5) 浮上り防止部材28及び浮上り防止レバーブロック31を前記溶融金属容器1Aの縁部1Aa上に設置し、フック34を固定部33に係止して浮上り防止レバーブロック31を操作することにより、部分補修枠9の浮上りが防止される。
(6) 次に、前記各ジャッキ5,27を作動させると、各シールゴム21,25、木材40とブランケット23を介して、耐火ライニング2との境界部のシールを行うことができる。
(7) 前述の部分補修枠9の内設が完了した状態で、図10と同様に不定形耐火物6を部分補修枠9と耐火ライニング2との間に流し込んで注入することにより、局部損耗箇所3は補修される。
(8) 前記不定形耐火物6が固化した状態で、前述の浮上り防止レバーブロック31、位置決め部材29、浮上り防止部材28等を除去し、前記脱枠用ジャッキ30を作動させることにより、部分補修枠9が溶融金属容器1Aから脱枠される(図示せず)。
(9) 次に、前記溶融金属容器1Aから脱枠された部分補修枠9の清掃等のメンテナンスが行われる(図示せず)。
【符号の説明】
【0016】
1 鉄皮
1A 溶融金属容器
1Aa 縁部
2 耐火ライニング
2a 耐火ライニング面
3 局部損耗箇所
5 側壁押えジャッキ
6 不定形耐火物
9 部分補修枠
9a 枠部
9aA 底部
9aB コーナ部
20 側壁シール扉ヒンジ
21 側壁シールゴム
22 側壁シール扉
23 ブランケット
24 底面シール扉ヒンジ
25 底面シールゴム
26 底面シール扉
27 底面押えジャッキ
28 浮上り防止部材
29 位置決め部材
30 脱枠用ジャッキ
31 浮上り防止レバーブロック
32 チェーン
33 固定部
34 フック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用後の溶融金属容器(1A)の補修を必要とする局部損耗箇所(3)の耐火ライニング面(2a)に部分補修枠(9)の枠部(9a)を設置し、前記耐火ライニング面(2a)と前記枠部(9a)との間に不定形耐火物(6)を注入して前記耐火ライニング面(2a)を補修する耐火ライニングの部分補修の施工方法において、
前記枠部(9a)の側部に設けられ側壁シールゴム(21)を有する一対の側壁シール扉(22)と、前記枠部(9a)の底部(9aA)に設けられ底面シールゴム(25)を有する底面シール扉(26)と、前記各側壁シール扉(22)を外側へ拡開するための側壁押えジャッキ(5)と、前記底面シール扉(26)を下方へ付勢するための底面押えジャッキ(27)と、を用い、前記耐火ライニング面(2a)の底面(1Ab)及びコーナ部(1Ac)では、前記各側壁シールゴム(21)と底面シールゴム(25)を重ね合わせた状態で接合してシールが行われた後に、前記不定形耐火物(6)の注入が行われることを特徴とする耐火ライニングの部分補修の施工方法。
【請求項2】
使用後の溶融金属容器(1A)の耐火ライニング面(2a)の補修を行うため前記耐火ライニング面(2a)に接合する枠部(9a)を有する部分補修枠(9)において、
前記枠部(9a)の側部に設けられ側壁シールゴム(21)を有する一対の側壁シール扉(22)と、前記枠部(9a)の底部(9aA)に設けられ底面シールゴム(25)を有する底面シール扉(26)と、前記各側壁シール扉(22)間に設けられ前記各側壁シール扉(22)を外側へ拡開するための側壁押えジャッキ(5)と、前記底面シール扉(26)を下方へ付勢するため前記枠部(9a)と前記底面シール扉(26)間に設けられた底面押えジャッキ(27)と、からなり、前記側壁シールゴム(21)と底面シールゴム(25)を互いに重ね合わせて配設されることを特徴とする部分補修枠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−33286(P2011−33286A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181263(P2009−181263)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.レバーブロック
【出願人】(000001971)品川リフラクトリーズ株式会社 (112)
【Fターム(参考)】