説明

耐熱絶縁層付セパレータ

【課題】本発明は、内部短絡に対する耐性(耐ショート性)に優れた耐熱絶縁層付セパレータを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の耐熱絶縁層付セパレータは、多孔質基体層と、多孔質基体層の片面または両面に形成された無機粒子およびバインダを含む耐熱絶縁層とを備える。そして、当該耐熱絶縁層付セパレータは、下記数式1で表されるRが0.3〜20である点に特徴を有する。


さらに、当該耐熱絶縁層付セパレータは、多孔質基体層の目付に対する、耐熱絶縁層の目付の比が0.5〜2.5である点にも特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱絶縁層付セパレータに関する。より詳しくは、本発明は、電動車両に搭載されるリチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタなどの電気デバイスに好適に用いられうる耐熱絶縁層付セパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化に対処するため、二酸化炭素排出量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、これらの実用化の鍵を握るモータ駆動用二次電池の開発が盛んに行われている。
【0003】
モータ駆動用二次電池としては、携帯電話やノートパソコン等に使用される民生用リチウムイオン二次電池と比較して極めて高い出力特性、および高いエネルギーを有することが求められている。したがって、全ての電池の中で比較的高い理論エネルギーを有するリチウムイオン二次電池が注目を集めており、現在急速に開発が進められている。
【0004】
リチウムイオン二次電池は、一般に、バインダを用いて正極活物質等を正極集電体の両面に塗布した正極と、バインダを用いて負極活物質等を負極集電体の両面に塗布した負極とが、電解質を含むセパレータを介して接続され、電池ケースに収納される構成を有している。セパレータは、電解液を保持して正極と負極との間のリチウムイオン伝導性を確保する機能;正極と負極との間の隔壁としての機能;を併せ持つことが求められる。また、電池が高温となった場合に充放電反応を停止させるために、リチウムイオンの移動を遮断する機能を有していることが望ましく、このようなセパレータとして、従来はポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂から構成される微多孔膜が用いられていた。
【0005】
しかしながら、ポリオレフィンなどの柔らかい材料からなるセパレータを用いた場合、電池製造時に混入した異物片や、電極より剥離した電極活物質層片などがセパレータを貫通し、内部短絡が生じる虞があった。
【0006】
このような問題に対し、例えば特許文献1では、ポリオレフィン等からなる多孔質構造を有する膜の少なくとも片面に、無機微粒子を含む通気性を有する表面保護層(耐熱絶縁層)を形成することによって、内部短絡を防ぐことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−80395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたセパレータは、主に電子機器等に組み込まれる電池に適用することを想定したものである。そのため、当該セパレータを高容量・高出力を有する大型の電動車両用のリチウムイオン二次電池に適用しても、十分に内部短絡を防止できない可能性があることが判明した。
【0009】
そこで、本発明は、内部短絡に対する耐性(耐ショート性)に優れた耐熱絶縁層付セパレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の耐熱絶縁層付セパレータは、多孔質基体層と、多孔質基体層の片面または両面に形成された無機粒子およびバインダを含む耐熱絶縁層とを備える。そして、当該耐熱絶縁層付セパレータは、下記数式1で表されるRが0.3〜20である点に特徴を有する。
【0011】
【数1】

【0012】
さらに、当該耐熱絶縁層付セパレータは、多孔質基体層の目付に対する、耐熱絶縁層の目付の比が0.5〜2.5である点にも特徴を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば十分な耐ショート性を有する耐熱絶縁層付セパレータを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る耐熱絶縁層付セパレータを模式的に表した断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る積層型のリチウムイオン二次電池の全体構造を模式的に表した断面図である。
【図3】異物短絡試験における、荷重に対する抵抗値をプロットしたグラフを示す。
【図4】実施例1〜6ならびに比較例1および2における、Rに対する短絡時の荷重をプロットしたグラフを表す。
【図5】実施例1および7〜11ならびに比較例4および5における、目付比に対する短絡時の荷重をプロットしたグラフを表す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい形態を説明する。本形態は、多孔質基体層と、多孔質基体層の片面または両面に形成された無機粒子およびバインダを含む耐熱絶縁層とを備える耐熱絶縁層付セパレータに関する。当該耐熱絶縁層付セパレータは、上記数式1で表されるRが0.3〜20であり、かつ多孔質基体層の目付に対する、耐熱絶縁層の目付の比が0.5〜2.5である点に特徴を有する。
【0016】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0017】
<耐熱絶縁層付セパレータ>
図1に、本発明の一実施形態に係る耐熱絶縁層付セパレータを模式的に表した断面図を示す。図1の耐熱絶縁層付セパレータ1は、後述の実施例3で作製した耐熱絶縁層付セパレータに対応する。耐熱絶縁層付セパレータ1は、多孔質基体層3の両面に耐熱絶縁層(5a、5b)が形成されてなる。多孔質基体層3は、ポリエチレン(PE:溶融温度130℃)から構成される微多孔膜である。また、耐熱絶縁層(5a、5b)は、バインダであるカルボキシメチルセルロール(CMC)を介してアルミナ(Al)粒子が連結されてなる。耐熱絶縁層(5a、5b)は、アルミナ粒子が形成する隙間により多孔質構造となっているため、耐熱絶縁層付セパレータ1は、全体として多孔質構造を有するため、リチウムイオン伝導性を有するセパレータとして機能する。また、耐熱絶縁層付セパレータ1は、上記数式1で表されるRが1.71であり、多孔質基体層3の目付に対する、耐熱絶縁層(5a、5b)の目付の比が1.2である。このような値のRおよび目付の比を有することにより、耐熱絶縁層付セパレータ1は、従来品よりも優れた耐ショート性を発揮することができる。以下、本形態の耐熱絶縁層付セパレータの各部材について、詳細に説明する。
【0018】
[多孔質基体層]
本形態において、多孔質基体層は、耐熱絶縁層を形成する際の基体として機能する。多孔質基体層を構成する材料は、特に制限はないが、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂などの樹脂材料、金属材料、セルロース系材料などが使用できる。このうち、耐熱絶縁層付セパレータにシャットダウン機能を付与する観点から、樹脂材料からなる多孔質基体層(以下、「樹脂多孔質基体層」とも称する)を用いることが好ましい。
【0019】
樹脂多孔質基体層を構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、またはエチレンおよびプロピレンを共重合して得られる共重合体(エチレン−プロピレン共重合体)、エチレンまたはプロピレンとエチレンおよびプロピレン以外の他のモノマーとを共重合してなる共重合体、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリフッ化ビニリデン(PFDV)、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、フェノール樹脂(PF)、エポキシ樹脂(EP)、メラミン樹脂(MF)、尿素樹脂(UF)、アルキド樹脂、ポリウレタン(PUR)が挙げられる。これらの樹脂は、1種のみが単独で使用されてもよいし、2種以上の混合物として使用されてもよい。
【0020】
樹脂多孔質基体層を構成する樹脂材料は、耐熱絶縁層付セパレータに120〜200℃の温度範囲においてシャットダウン機能を発現させるために、溶融温度が120〜200℃である樹脂を含むことが好ましい。具体的には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、またはエチレンおよびプロピレンを共重合して得られる共重合体(エチレン−プロピレン共重合体)、エチレンまたはプロピレンとエチレンおよびプロピレン以外の他のモノマーとを共重合してなる共重合体を含む樹脂多孔質基体層を用いることが好ましい。樹脂多孔質基体層を構成する樹脂材料が、溶融温度が120〜200℃である樹脂を含む場合、溶融温度が200℃を超える熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂と併用されてもよい。その際の樹脂多孔質基体層全体における溶融温度が120〜200℃である樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70%以上であり、さらに好ましくは90%以上であり、特に好ましくは95%以上であり、最も好ましくは100%である。
【0021】
また、上述の材料からなる層を2以上積層させた積層体を樹脂多孔質基体層として用いてもよい。一例を挙げると、PP/PE/PPの3層構造の樹脂多孔質基体層が挙げられる。当該3層構造の樹脂多孔質基体層は、PEの溶融温度が130℃であることから、電池温度が130℃に達した場合にシャットダウン機能が発現される。万が一さらに電池温度が上昇した場合であっても、PPの溶融温度が170℃であることから全面短絡に達するのを防ぐことができ、より安全性の高いセパレータとすることができる。
【0022】
樹脂多孔質基体層の形状は、特に制限されず、織布、不織布、および微多孔膜などが使用可能である。このうち、高いリチウムイオン伝導性を確保する観点から、微多孔膜であることが好ましい。また、樹脂多孔質基体層の空隙率は、40〜85%であることが好ましく、50〜70%であることが好ましく、55〜60%であることがさらに好ましい。空隙率を上記範囲とすることにより、十分なリチウムイオン伝導性および強度を確保することができる。
【0023】
樹脂多孔質基体の厚さは、特に制限はないが、好ましくは1〜200μmであり、より好ましくは5〜100μmであり、さらに好ましくは7〜30μmであり、特に好ましくは10〜20μmである。厚さが5μm以上であれば電解質の保持性が良好であり、200μm以下であれば抵抗が過度に増大しにくい。
【0024】
[耐熱絶縁層]
耐熱絶縁層は、上記多孔質基体層の片面または両面に配置され、セパレータの強度を補強する機能を有する。特に多孔質基体層が樹脂材料から構成される樹脂多孔質基体層である場合、電池温度が上昇することにより生じる内部応力を緩和し、セパレータの熱収縮による変形等を抑制する役割も果たす。当該耐熱絶縁層は、無機粒子およびバインダを必須に含む。
【0025】
(無機粒子)
無機粒子は、耐熱絶縁層の機械的強度や熱収縮抑制効果に寄与する。無機粒子として使用される材料は特に制限されない。例えば、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタンの酸化物(SiO、Al、ZrO、TiO)、水酸化物、および窒化物、ならびにこれらの複合体が挙げられる。これらの無機粒子は、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、マイカなどの鉱物資源由来のものであってもよいし、人工的に製造されたものであってもよい。また、これらの無機粒子は1種のみが単独で使用されてもよいし、2種以上が併用されてもよい。これらのうち、コストの観点から、シリカ(SiO)またはアルミナ(Al)を用いることが好ましく、アルミナ(Al)を用いることがより好ましい。
【0026】
(バインダ)
バインダは、無機粒子どうしや、無機粒子と樹脂多孔質基体層とを接着させる役割を有する。当該バインダによって、耐熱絶縁層が安定に形成され、また多孔質基体層および耐熱絶縁層の間の剥離を防止される。
【0027】
本形態の耐熱絶縁層に使用されるバインダは、特に制限はなく、従来公知のものを当業者は適宜採用できる。例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリロニトリル、セルロース、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、アクリル酸メチルなどの化合物がバインダとして用いられうる。このうち、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アクリル酸メチル、またはポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用いることが好ましい。これらの化合物は、1種のみが単独で使用されてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0028】
耐熱絶縁層におけるバインダの含有量は、耐熱絶縁層100質量%に対して、2〜20質量%であることが好ましい。バインダの含有量が2質量%以上であると、耐熱絶縁層と多孔質基体層との間の剥離強度を高めることができ、セパレータの耐振動性を向上させることができる。一方、バインダの含有量が20質量%以下であると、無機粒子の隙間が適度に保たれるため、十分なリチウムイオン伝導性を確保することができる。
【0029】
耐熱絶縁層の1層分の厚さは、好ましくは1〜20μmであり、より好ましくは2〜10μmであり、さらに好ましくは3〜7μmである。耐熱絶縁層の厚さがこのような範囲にあると、耐熱絶縁層付セパレータに十分な強度を付与することができるとともに、セパレータ自体の嵩や重さが大きくなりすぎないため好ましい。
【0030】
本形態の耐熱絶縁層付セパレータの全体の厚さは、十分な強度を確保することができる限りにおいて、特に制限はない。ただし、電池のサイズをよりコンパクトにする観点からは、厚すぎない方が好ましい。具体的には、耐熱絶縁層付セパレータ厚さは、10〜50μmであることが好ましく、15〜30μmであることがより好ましい。
【0031】
本形態の耐熱絶縁層付セパレータは、下記数式1で表されるRが0.3〜20である点に特徴を有する。
【0032】
【数2】

【0033】
上記数式1において、「MD(Machine Direction)方向」とは、セパレータをロール状で製造する際の流れ方向を意味し、「TD(Transverse Direction)方向」とは、上記MD方向に対する垂直方向を意味する。MD・TDはフィルム加工の分野で、ロール状の材料、またはそれから切り出したシート状の材料の方向を示すのに一般的に使用される用語である。なお、ロール状の材料を切り出したシート状の耐熱絶縁層付セパレータのMD方向またはTD方向は、耐熱絶縁層または多孔質基体層(特に樹脂多孔質基体層)のSEM観察を行うことにより判別可能である。また、本明細書における「引張強度」および「破断歪」は、後述の実施例に記載の方法により得られる値を採用する。
【0034】
本形態の耐熱絶縁層付セパレータにおけるRは、0.3〜20であることを必須とし、好ましくは0.5〜10であり、より好ましくは0.7〜5である。後述の実施例・比較例で示すように、Rが0.3未満または20を超えると、Rが0.3〜20である場合と比較して小さい荷重で内部短絡が生じうる。よって、Rが0.3〜20であることが、内部短絡を抑制する必須の条件であることが分かる。当該Rは、例えば、後述の製造方法で説明するように、樹脂多孔質基体の延伸条件を調節することにより、制御可能である。
【0035】
なお、MD方向もしくはTD方向の引張強度または破断歪が極端に小さい場合、所望の耐ショート性が得られない場合がある。よって、MD方向およびTD方向の引張強度は、それぞれ10〜150MPあることが好ましく、MD方向およびTD方向の破断歪は、それぞれ10〜150%であることが好ましい。より詳細には、MD方向の引張強度は50〜150MPa,TD方向の引張強度は30〜100MPa、MD方向の破断歪は40〜80%、TD方向の破断歪は40〜100%であることがより好ましい。
【0036】
また、本形態の耐熱絶縁層付セパレータは、多孔質基体層の目付に対する、耐熱絶縁層の目付の比(以下、単に「目付比」とも称する)が0.5〜2.5である点にも特徴を有する。本明細書において、「目付」とは、1m当たりの質量(g)を意味し、単位は[g/m]である。なお、耐熱絶縁層目付の値を多孔質基体層目付の値で除した目付比は単位を有さない。
【0037】
本形態の耐熱絶縁層付セパレータにおける上記目付比は、0.5〜2.5であることを必須とし、好ましくは0.7〜2.2であり、より好ましくは0.9〜1.3である。後述の実施例・比較例で示すように、目付比が0.5未満または2.5を超えると、目付比が0.5〜2.5である場合と比較して小さい荷重で内部短絡が生じる。よって、Rが0.5〜2.5であることもまた、内部短絡を抑制する必須の条件であることが分かる。当該目付比は、例えば、後述の製造方法で説明するように、無機粒子およびバインダを含む分散液を多孔質基体に塗工する量を調節することにより制御することができる。
【0038】
上記Rおよび目付比は互いに独立したパラメータであるが、後述の実施例で示すように、Rが0.5〜10で且つ目付比が0.7〜2.2であることがより好ましく、Rが0.7〜5で且つ目付比が0.9〜1.3の範囲にあることがさらに好ましい。それぞれのパラメータをこのような範囲に制御することにより、耐ショート性をさらに向上させることができる。
【0039】
<耐熱絶縁層付セパレータの製造方法>
本形態の耐熱絶縁層付セパレータは、特に制限はなく、従来公知の技術を適宜参照することにより製造されうる。以下、多孔質基体層として樹脂多孔質基体層を用いた場合の耐熱絶縁層付セパレータの製造方法について説明する。
【0040】
樹脂多孔質基体としてポリオレフィンの微多孔膜を製造する場合、まずポリオレフィンをパラフィン、流動パラフィン、パラフィン油、テトラリン、エチレングリコール、グリセリン、デカリンなどの溶剤に溶解させる。その後これをシート状に押し出し、溶剤を除き、一軸延伸、二軸延伸(同時、逐次)を行うことによって製造されうる。この際、Rを0.3〜20の範囲内に制御するためには、同時二軸延伸または逐次二軸延伸を採用することが好ましい。このように同時二軸延伸または逐次二軸延伸を採用することにより[引張強度×破断歪]がMD・TD方向で極端に異なるのを防ぐことができる。また、延伸温度を上げると、延伸方向への[引張強度×破断歪]がより小さくなる傾向があるため、一軸延伸の場合は、延伸温度は40℃以下とすることが好ましく、30℃以下とすることがより好ましい。
【0041】
次に、樹脂多孔質基体に耐熱絶縁層を形成する方法について説明する。まず無機粒子およびバインダを溶媒に分散した分散液を調製する。そして分散液を樹脂多孔質基体の一方の面または両面に塗布し、溶媒を乾燥させることによって耐熱絶縁層を形成する。
【0042】
この際に用いられる溶媒として、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミド、シクロヘキサン、ヘキサン、水等が用いられる。バインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を採用する場合には、NMPを溶媒として用いることが好ましい。
【0043】
その後、上記分散液を樹脂多孔質基体に塗工する。塗工方法も特に制限はなく、例えば、ナイフコーター法、グラビアコーター法、スクリーン印刷法、マイヤーバー法、ダイコーター法、リバースロールコーター法、インクジェット法、スプレー法、ロールコーター法などが挙げられる。この際、樹脂多孔質基体に対する分散液の塗工量を調節することにより、上述の目付比を所定の範囲に制御することができる。一例を挙げると、耐熱絶縁層の目付が5〜20g/m程度となるように塗工量が調節されうる。
【0044】
分散液を塗工した後、溶剤を除去する温度は、特に制限はなく、使用される溶剤によって適宜設定されうる。例えば、水を溶剤として用いた場合には50〜70℃であることが好ましく、NMPを溶剤として用いた場合には、70〜90℃であることが好ましい。必要により減圧下で溶媒を乾燥させてもよい。また、溶剤を完全に除去せずに、一部残存させてもよい。
【0045】
<電気デバイス>
上述の本形態の耐熱絶縁層付セパレータは、耐ショート性に優れるため、様々な電気デバイスのセパレータとして好適に使用されうる。すなわち、本発明の一形態によると上記耐熱絶縁層付セパレータを含む電気デバイスが提供される。電気デバイスは、セパレータを要するものであれば特に制限はなく、リチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池等の二次電池、および電気二重層キャパシタなどが挙げられる。以下、電気デバイスの一例として、本形態の耐熱絶縁層付セパレータを具備したリチウムイオン二次電池について説明する。
【0046】
図2に、本発明の一実施形態に係る積層型のリチウムイオン二次電池の全体構造を模式的に表した概略図を示す。本実施形態のリチウムイオン二次電池10は、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素17が、電池外装材であるラミネートフィルム22の内部に封止された構造を有する。詳しくは、高分子−金属複合ラミネートフィルムを電池外装材として用いて、その周辺部の全部を熱融着にて接合することにより、発電要素17を収納し密封した構成を有している。
【0047】
発電要素17は、負極集電体11の両面(発電要素の最下層用および最上層用は片面のみ)に負極活物質層12が配置された負極と、電解質層13と、正極集電体14の両面に正極活物質層15が配置された正極とを積層した構成を有している。具体的には、1つの負極活物質層12とこれに隣接する正極活物質層15とが、電解質層13を介して対向するようにして、負極、電解質層13、正極がこの順に積層されている。
【0048】
これにより、隣接する負極、電解質層13および正極は、1つの単電池層16を構成する。したがって、本実施形態のリチウムイオン二次電池10は、単電池層16が複数積層されることで、電気的に並列接続されてなる構成を有するともいえる。また、単電池層16の外周には、隣接する負極集電体11と正極集電体14との間を絶縁するためのシール部(絶縁層)(図示せず)が設けられていてもよい。発電要素17の両最外層に位置する最外層負極集電体11aには、いずれも片面のみに負極活物質層12が配置されている。なお、負極および正極の配置を逆にすることで、発電要素17の両最外層に最外層正極集電体が位置するようにし、該最外層正極集電体の片面のみに正極活物質層が配置されているようにしてもよい。
【0049】
負極集電体11および正極集電体14には、各電極(負極および正極)と導通される負極集電板(負極タブ)18および正極集電板(正極タブ)19がそれぞれ取り付けられ、ラミネートフィルム22の端部に挟まれるようにラミネートフィルム22の外部に導出される構造を有している。負極集電板(負極タブ)18および正極集電板(正極タブ)19は、必要に応じて負極端子リード20および正極端子リード21を介して、各電極の負極集電体11および正極集電体14に超音波溶接や抵抗溶接等により取り付けられていてもよい。ただし、負極集電体11が延長されて負極集電板(負極タブ)18とされ、ラミネートフィルム22から導出されていてもよい。同様に、正極集電体14が延長されて正極集電板(正極タブ)19とされ、同様に電池外装材22から導出される構造としてもよい。
【0050】
図2において、耐熱絶縁層付セパレータは、電解液とともに電解質層13を構成する。図2に示される積層型のリチウムイオン二次電池は、耐熱絶縁層付セパレータを用いることにより、耐ショート性が著しく向上されうる。したがって、本形態のリチウムイオン二次電池を高容量・高出力な電動車両用に適用した場合であっても、十分な安全性および信頼性を提供することが可能となる。
【実施例】
【0051】
本発明の作用効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0052】
<耐熱絶縁層付セパレータの製造>
[実施例1]
ポリエチレン(PE)と、可塑剤である流動パラフィンとの溶融混練物をシート状に押し出し、その際、可塑剤を抽出溶剤にて除去し、さらに延伸(一軸延伸(MD方向)、延伸温度25℃)した。これにより、多孔質基体層としてのポリエチレン微多孔膜(膜厚:16μm 空隙率:55%)を得た。
【0053】
次に、無機粒子であるアルミナ粒子95質量部と、バインダであるカルボキシメチルセルロース5質量部と水に均一に分散させた分散液を調製した。そして、当該分散液を上記PE微多孔膜の両表面にグラビアコーターを用いて塗工した。その後、60℃にて乾燥させることにより水を除去し、微多孔膜の両面に各4.5μmの耐熱絶縁層が形成された、総膜厚25μmのである耐熱絶縁層付セパレータを製造した。
【0054】
[実施例2]
多孔質基体層の作製において、延伸方法を同時二軸延伸(延伸温度25℃)とすることでポリエチレン微多孔膜(膜厚:16μm 空隙率:55%)を得た。これ以外は、実施例1の方法で耐熱絶縁層付セパレータを製造した。
【0055】
[実施例3]
多孔質基体層の作製において、延伸方法を逐次二軸延伸(延伸温度25℃)とすることでポリエチレン微多孔膜(膜厚:16μm 空隙率:55%)を得た。これ以外は、実施例1の方法で耐熱絶縁層付セパレータを製造した。
【0056】
[実施例4]
多孔質基体層の作製において、延伸方法を逐次二軸延伸(延伸温度50℃)とすることでポリエチレン微多孔膜(膜厚:16μm 空隙率:55%)を得たこと以外は、実施例1の方法で耐熱絶縁層付セパレータを製造した。
【0057】
[実施例5]
多孔質基体層の作製において、延伸方法を一軸延伸(TD方向、延伸温度25℃)とすることでポリエチレン微多孔膜(膜厚:16μm 空隙率:55%)を得た。これ以外は、実施例1の方法で耐熱絶縁層付セパレータを製造した。
【0058】
[実施例6]
多孔質基体層の作製において、延伸方法を一軸延伸(TD方向、延伸温度50℃)とすることでポリエチレン微多孔膜(膜厚:16μm 空隙率:55%)を得た。これ以外は、実施例1の方法で耐熱絶縁層付セパレータを製造した。
【0059】
[実施例7]
多孔質基体層の作製において、使用するPE量を調節し、延伸方法を一軸延伸(MD方向、延伸温度25℃)とすることで、ポリエチレン微多孔膜(膜厚:18μm 空隙率:55%)を得た。また、上述の無機粒子およびバインダを含む分散液の塗工量を調整することにより、微多孔膜の両面に各4.0μmの耐熱絶縁層を形成した。これ以外は、実施例1と同様の方法で耐熱絶縁層付セパレータを製造した。
【0060】
[実施例8]
多孔質基体層の作製において、使用するPE量を調節し、延伸方法を一軸延伸(MD方向、延伸温度25℃)とすることで、ポリエチレン微多孔膜(膜厚:17μm 空隙率:55%)を得た。また、上述の無機粒子およびバインダを含む分散液の塗工量を調整することにより、微多孔膜の両面に各4.0μmの耐熱絶縁層を形成した。これ以外は、実施例1と同様の方法で耐熱絶縁層付セパレータを製造した。
【0061】
[実施例9]
多孔質基体層の作製において、使用するPE量および可塑剤量を調節し、延伸方法を一軸延伸(MD方向、延伸温度25℃)とすることで、ポリエチレン微多孔膜(膜厚:15μm 空隙率:60%)を得た。なお、使用された可塑剤は、抽出溶媒によって最終的に全て除去された。また、上述の無機粒子およびバインダを含む分散液の塗工量を調整することにより、微多孔膜の両面に各5.0μmの耐熱絶縁層を形成した。これ以外は、実施例1と同様の方法で耐熱絶縁層付セパレータを製造した。
【0062】
[実施例10]
多孔質基体層の作製において、使用するPE量および可塑剤量を調節し、延伸方法を一軸延伸(MD方向、延伸温度25℃)とすることで、ポリエチレン微多孔膜(膜厚:14μm 空隙率:60%)を得た。また、上述の無機粒子およびバインダを含む分散液の塗工量を調整することにより、微多孔膜の両面に各5.5μmの耐熱絶縁層を形成した。これ以外は、実施例1と同様の方法で耐熱絶縁層付セパレータを製造した。
【0063】
[実施例11]
多孔質基体層の作製において、使用するPE量および可塑剤量を調節し、延伸方法を一軸延伸(MD方向、延伸温度25℃)とすることで、ポリエチレン微多孔膜(膜厚:14μm 空隙率:60%)を得た。また、上述の無機粒子およびバインダを含む分散液の塗工量を調整することにより、微多孔膜の両面に各6.0μmの耐熱絶縁層を形成した。これ以外は、実施例1と同様の方法で耐熱絶縁層付セパレータを製造した。
【0064】
[実施例12]
多孔質基体層の作製において、使用するPE量を調節し、延伸方法を逐次二軸延伸(延伸温度25℃)とすることで、ポリエチレン微多孔膜(膜厚:18μm 空隙率:55%)を得た。また、上述の無機粒子およびバインダを含む分散液の塗工量を調整することにより、微多孔膜の両面に各4.0μmの耐熱絶縁層を形成した。これ以外は、実施例1と同様の方法で耐熱絶縁層付セパレータを製造した。
【0065】
[実施例13]
多孔質基体層の作製において、使用するPE量および可塑剤量を調節し、延伸方法を逐次二軸延伸(延伸温度25℃)とすることで、ポリエチレン微多孔膜(膜厚:14μm 空隙率:60%)を得た。これ以外は、実施例1の方法で耐熱絶縁層付セパレータを製造した。
【0066】
[実施例14]
多孔質基体層の作製において、使用するPE量を調節し、延伸方法を同時二軸延伸(延伸温度25℃)とすることで、ポリエチレン微多孔膜(膜厚:18μm 空隙率:55%)を得た。これ以外は、実施例1の方法で耐熱絶縁層付セパレータを製造した。
【0067】
[実施例15]
多孔質基体層の作製において、使用するPE量を調節し、延伸方法を同時二軸延伸(延伸温度25℃)とすることで、ポリエチレン微多孔膜(膜厚:14μm 空隙率:60%)を得た。これ以外は、実施例1の方法で耐熱絶縁層付セパレータを製造した。
【0068】
[比較例1]
多孔質基体層の作製において、延伸方法を一軸延伸(MD方向、延伸温度50℃)とすることで、ポリエチレン微多孔膜(膜厚:16μm 空隙率:55%)を得た。これ以外は、実施例1と同様の方法で耐熱絶縁層付セパレータを製造した。
【0069】
[比較例2]
多孔質基体層の作製において、樹脂としてポリプロピレン(PP)を用い、延伸方法を一軸延伸(MD方向、延伸温度50℃)とすることで、ポリプロピレン微多孔膜(膜厚:16μm 空隙率:55%)を得た。これ以外は、実施例1と同様の方法で耐熱絶縁層付セパレータを製造した。
【0070】
[比較例3]
多孔質基体層の作製において、使用するPE量を調節し、延伸方法を一軸延伸(MD方向、延伸温度25℃)としたこと以外は、実施例1と同様の方法でポリエチレン微多孔膜(膜厚:25μm 空隙率:55%)を得た。当該ポリエチレン微多孔膜をセパレータとして用いた(すなわち、比較例3のセパレータは耐熱絶縁層を含まない)。
【0071】
[比較例4]
多孔質基体層の作製において、使用するPE量を調節し、延伸方法を一軸延伸(MD方向、延伸温度25℃)とすることで、ポリエチレン微多孔膜(膜厚:19.0μm 空隙率:55%)を得た。また、上述の無機粒子およびバインダを含む分散液の塗工量を調整することにより、微多孔膜の両面に各3.5μmの耐熱絶縁層を形成した。これ以外は、実施例1と同様の方法で耐熱絶縁層付セパレータを製造した。
【0072】
[比較例5]
多孔質基体層の作製において、使用するPE量および可塑剤量を調節し、延伸方法を一軸延伸(MD方向、延伸温度25℃)とすることで、ポリエチレン微多孔膜(膜厚:13.5μm 空隙率:60%)を得た。また、上述の無機粒子およびバインダを含む分散液の塗工量を調整することにより、微多孔膜の両面に各6.0μmの耐熱絶縁層を形成した。これ以外は、実施例1と同様の方法で耐熱絶縁層付セパレータを製造した。
【0073】
<引張強度および破断歪の測定>
実施例および比較例で製造したセパレータを、50mm×10mmにカットし、卓上形精密万能試験機(島津社製)に、セパレータの両端10mmをそれぞれ固定し(チャック間距離30mm)、試験速度50mm/分、25℃にて引張試験を行った。なお、試験はセパレータが破断するまで実施した。当該試験をセパレータのMD方向およびTD方向についてそれぞれ行い、各方向の引張強度および破断歪を測定した。結果を表1に示す。
【0074】
<目付比の算出>
実施例および比較例で製造した耐熱絶縁層付セパレータについて、多孔質基体層の目付に対する耐熱絶縁層の目付(2層の合計値として算出される)の目付比を算出した。結果を表1に示す。
【0075】
<異物短絡試験>
[セル作製]
正極活物質としてLiMnを85質量%、導電助剤としてアセチレンブラック5質量%、バインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)10質量%、およびスラリー粘度調整溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)適量を混合し、正極活物質スラリーを調製した。一方、負極活物質としてグラファイト90質量%、導電助剤としてアセチレンブラック5質量%、バインダとしてPVDF10質量%、およびスラリー粘度調整溶媒としてNMP適量を混合し、負極活物質スラリーを調製した。
【0076】
正極活物質スラリーをアルミ箔に塗工し、乾燥させることで正極を作成した。また、負極活物質スラリーを銅箔に塗工し、乾燥させることで負極を作成した。次に、これら電極を4.8cm×4.8cmにそれぞれカットした。また、上記実施例および比較例で作製したセパレータを5.0cm×5.0cmにカットした。さらに、電極周縁部の活物質を塗工していない部分(部にタブ(正極:Alタブ、負極:Niタブ)を超音波溶接により取り付けた。
【0077】
次に、JIS C8714:2007の「単電池の強制内部短絡試験」に準拠したNi片(高さ×幅×1辺の長さ:0.2×0.1×1mm)を正極とセパレータの間に混入し、セパレータを介して正極と対向するように負極を配置した。そして、最外層(正極・負極のそれぞれの外側)に補強のためのPP板を配置し、真空ラミネートすることで試験用セルを作製した。
【0078】
[評価]
試験用セルのタブに直流抵抗測定機を接続し、セルを圧縮冶具にテープで固定し、アクリル製の5mm×5mmの棒でNi片を0→400Nの荷重で0.1mm/秒の速度で圧縮し、その際の抵抗変化を測定した。
【0079】
図3に測定結果の一例として、荷重に対する抵抗値をプロットしたグラフを示す。荷重0Nの時は抵抗が大きく、抵抗の計測が不可能であるが、荷重が大きくなっていくとNi片がセパレータを貫通し、負極に到達することで内部短絡が生じるため、抵抗が一気に小さくなった。この抵抗が出現する時点の荷重を、内部短絡時の荷重とし、それぞれのセパレータについて評価した。結果を表1に示す。なお、図3のグラフでは内部短絡する前の抵抗値を「0」としてプロットしている。
【0080】
【表1】

【0081】
表1の結果より、Rが0.3〜2.0であり、かつ目付比が0.5〜2.5である実施例1〜15は、Rまたは目付比が当該数値範囲外である比較例1〜5よりも短絡時の荷重が大きい(すなわち耐ショート性に優れる)ことが示された。
【0082】
また、Rが0.5〜10であり、かつ目付比が0.7〜2.2である実施例1〜4、7〜10;さらに、Rが0.7〜5であり、かつ目付比が0.9〜1.3である実施例3では、より一層耐ショート性が向上することが示された。
【0083】
図4に、実施例1〜6ならびに比較例1および2(目付比が略一定(1.19〜1.3))における、Rに対する短絡時の荷重をプロットしたグラフを表す。図4より、耐ショート性は、Rが0.3〜20、さらには0.5〜10、特に0.7〜5の範囲で向上することが分かる。このようにRが1に近づくにつれて耐ショート性が向上するのは、機械的特性(引張強度×破断歪)が弱い一方向の特性が反映されることが防止されるためであると考えられた。
【0084】
図5に、実施例1および7〜11ならびに比較例4および5(Rが略一定(0.33〜0.36))における、目付比に対する短絡時の荷重をプロットしたグラフを表す。図5より、耐ショート性は、目付比が0.5〜2.5、さらには0.7〜2.2、特に0.9〜1.3の範囲で向上することが分かる。目付比が0.5未満の領域では、耐熱絶縁層の機械的強度が十分でないため、内部短絡が起こりやすくなると推定された。一方、目付比が2.5を超える領域では、逆に耐熱絶縁層の脆性が大きくなってしまうため、内部短絡が起こりやすくなると考えられた。
【符号の説明】
【0085】
1 耐熱絶縁層付セパレータ、
3 樹脂多孔質基体層
5a、5b 耐熱絶縁層、
10 リチウムイオン二次電池、
11 負極集電体、
11a 最外層負極集電体、
12 負極活物質層、
13 電解質層、
14 正極集電体、
15 正極活物質層、
16 単電池層、
17 発電要素、
18 負極集電板(負極タブ)、
19 正極集電板(正極タブ)、
20 負極端子リード、
21 正極端子リード、
22 ラミネートフィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質基体層と、
前記多孔質基体層の片面または両面に形成された無機粒子およびバインダを含む耐熱絶縁層と、を備える耐熱絶縁層付セパレータであって、
下記数式1で表されるR:
【数1】

は0.3〜20であり、
前記多孔質基体層の目付に対する、前記耐熱絶縁層の目付の比は0.5〜2.5である、耐熱絶縁層付セパレータ。
【請求項2】
前記Rは0.5〜10であり、
前記多孔質基体層の目付に対する、前記耐熱絶縁層の目付の比は0.7〜2.2である、請求項1に記載の耐熱絶縁層付セパレータ。
【請求項3】
前記Rは0.7〜5であり、
前記多孔質基体層の目付に対する、前記耐熱絶縁層の目付の比は0.9〜1.3である、請求項1に記載の耐熱絶縁層付セパレータ。
【請求項4】
前記多孔質基体層は、溶融温度が120〜200℃である樹脂を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐熱絶縁層付セパレータ。
【請求項5】
前記無機粒子は、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、およびチタンの、酸化物、窒化物、および水酸化物、ならびにこれらの複合体からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐熱絶縁層付セパレータ。
【請求項6】
前記多孔質基体層は、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびエチレン−プロピレン共重合体からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の耐熱絶縁層付セパレータ。
【請求項7】
前記多孔質基体層は、微多孔膜を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の耐熱絶縁層付セパレータ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の耐熱絶縁層付セパレータを含む、電気デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−80636(P2013−80636A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220436(P2011−220436)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】