説明

耳垢取具

【課題】
耳掃除が容易にでき、かつ安全性の高い耳垢取具を得る。
【解決手段】
耳垢取具10は、耳孔入口に装着するガイド筒2と、このガイド筒2の内面に開口端が接着された袋体3と、袋体3を耳内へ挿入する挿入棒4とを備えている。ガイド筒2の外側端部から、耳内へ挿入された袋体3閉塞端3Bまでの長さを耳孔入口から鼓膜9までの距離よりも短寸にし、鼓膜9を傷つけないようになっている。袋体3には粘着剤6が塗布され、挿入棒4を挿し込み、この粘着剤6に耳垢を付着させる。ストッパ4Bは、該挿入棒4の深入れを規制し、挿入棒4の小球部4Dと、袋体3の閉塞部3Bを接着することにより、耳内で耳垢を付着させた状態の袋体3の粘着剤6を耳外に取り出しながら内側に反転させて耳垢をこぼれないようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耳垢取具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、耳垢を除去するのは竹製やプラスチック製の耳かき或いは綿棒を用いるのが一般的である。従来の耳かきでは強く掻くことで外耳道を傷つけるおそれがある。また、耳かき・綿棒共に、耳垢を奥に押し込んでしまったり、取った耳垢を耳内で落下させてしまったりすることがあり、十分に耳垢を取り除くことができないという問題があった。さらに、耳掃除中に誤って深く入れ過ぎることにより鼓膜を傷つける危険や痛みを伴うことがある。
【0003】
このため、従来から耳垢をとりやすくするために、棒の先端に粘着物質をつけ、耳道内の耳垢を粘着物質に付着させて耳垢を除去するものが提案されている。(特許文献1参照)特許文献1に記載の粘着式耳垢取りは、棒の先端に粘着物質をつけて粘着物質に耳垢を付着させることにより耳垢を除去する耳垢取りである。
【特許文献1】特開2000−229045号公報(第2頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の耳垢取りは、器具を深入りさせてしまう危険性がある。また、棒の先に粘着物質をつけているので、粘着部の表面積が小さく、わずかな耳垢の付着ですぐに粘着力が失われるという問題がある。また、耳介や毛髪などに粘着物質が付着して耳孔に挿入する前に粘着力を低下させてしまうこともあり、その場合、耳掃除の途中で新たに棒を交換する必要があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、安全かつ容易に耳垢が取れ、しかも耳掃除の際に痛みのない耳垢取具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る耳垢取具は、耳孔入口に装着されるガイド筒と、開口端がガイド筒内面に接着されて本体を外部に露出させ、内側に粘着剤が塗布された軟質性の袋体と、袋体を閉塞側からガイド筒内を経由させ内外面を反転させて耳孔内に押し込み、袋体の粘着面を耳孔壁に押しつける挿入棒とを備えたものである。
【0007】
請求項1に係る耳垢取具では、耳孔入口に装着されるガイド筒と、開口端がガイド筒内面に接着されて本体を外部に露出させ、内側に粘着剤が塗布された軟質性の袋体と、袋体を閉塞側からガイド筒内を経由させ内外面を反転させて耳孔内に押し込み、袋体の粘着面を耳孔壁に押しつける挿入棒とを備えたことにより、挿入棒の先端を閉塞端に当ててガイド筒内に押し込むと、袋体は徐々に反転されて内側粘着面が耳孔内で外側に露出する。挿入棒を操作して袋体を耳孔壁側に押しつけると、袋体の反転した露出粘着面が耳孔壁に押しつけられ耳垢が粘着面に付着する。挿入棒を引き抜き、ガイド筒を外すと耳垢の付着した袋体を取り出すことができる。
【0008】
本発明の請求項2に係る耳垢取具は、請求項1に記載の耳垢取具において、袋体の長さを耳孔口から鼓膜までの距離より短寸にしたものである。
【0009】
請求項2に係る耳垢取具では、請求項1の耳垢取具において、袋体の長さを耳孔口から鼓膜までの距離より短寸にしたことにより、袋体が鼓膜まで深入りすることがない。
【0010】
本発明の請求項3に係る耳垢取具は、請求項1に記載の耳垢取具において、挿入棒に深入れ防止のためのストッパを設けたものである。
【0011】
請求項3に係る耳垢取具では、請求項1に記載の耳垢取具において、挿入棒に深入れ防止のためのストッパを設けたことにより、袋体を挿入する際に挿入棒を深く入れ過ぎるのを防止する。このため袋体が鼓膜に接触することがない。
【0012】
本発明の請求項4に係る耳垢取具は、請求項1または3に記載の耳垢取具において、挿入棒の挿入側先端と袋体閉塞部を接離自在に構成したものである。
【0013】
請求項4に係る耳垢取具では、請求項1または3に記載の耳垢取具において、挿入棒の挿入側先端と袋体閉塞部を接離自在に構成したことにより、耳孔内において粘着剤面が外側に反転している状態の袋体を、挿入棒を引き出すことによって容易に取り出すことができるとともに、袋体を耳外に取り出しながら耳垢を付着させた袋体粘着面を再び内側に戻すことから、耳から除去した耳垢を耳内外でこぼすことなく回収することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る耳垢取具では、耳孔入口に装着されるガイド筒と、開口端がガイド筒内面に接着されて本体を外部に露出させ、内側に粘着剤が塗布された軟質性の袋体と、袋体を閉塞側からガイド筒内を経由させ内外面を反転させて耳孔内に押し込み、袋体の粘着面を耳孔壁に押しつける挿入棒とを備えたことにより、耳内を傷つけることなく容易かつ確実に耳垢を取ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
耳内を傷つけることなく安全かつ容易に耳垢を取るという目的を、耳孔入口に装着されるガイド筒と、開口端がガイド筒の筒部内面に接着され本体を外部に露出させ、内側に耳垢を付着させるための粘着剤が塗布された軟質性の袋体と、軟質性の袋体を閉塞側からガイド筒内を経由させ内外面を反転させて耳孔内に押し込む挿入棒とを備えて構成し、この挿入棒により袋体の反転された粘着面を耳孔壁に押しつけ耳垢を付着させることにより実現した。
【実施例1】
【0016】
以下、図面に示す実施例により本発明を説明する。図1の(A)および(B)はそれぞれ本発明の一実施例に係る耳垢取具10の各部品の組立て状態を示す説明図である。図2の(A)ないし(C)は、それぞれ本発明の一実施例に係る耳垢取具10のセット状態を示す説明図である。本実施例に係る耳垢取具10はガイド筒2と袋体3と挿入棒4とを備えて構成されている。
【0017】
図1の(A)に示すようにガイド筒2は、筒部2Aを備え、この筒部2Aは、外径が耳孔の内径よりも小径に形成された中空円筒状の筒体で、耳孔内に挿入されるようになっている。この筒部2Aは耳孔に挿入される側が小径に他方が大径の円錐状に形成される。筒部2Aの大径側開口部には、鍔状のストッパ2Bが形成される。ストッパ2Bは、筒部2Aが耳孔入口に入り込むとそれ以上内部へ進入するのを防ぐようになっている。
【0018】
袋体3は、ゴムまたは合成樹脂等の薄い柔軟性を持つ素材で袋状に形成され、内外面が反転可能になっている。すなわち一端が閉塞され、他端が開口した有底円筒形状に形成される。袋体3の閉塞部3Bは、耳内を滑らかに通るよう半球形になっている。袋体3は開口部外周3Aが接着剤5により、ガイド筒2の筒部2A内面に接着され、本体はガイド筒2の小径側開口端から外部に露出されるようになっている(図1の(B)参照)。筒部2A大径側端から袋体閉塞部3Bまでの長さL1は、ガイド筒2を耳孔入口に装着した際、骨部外耳道または鼓膜までに達しない寸法に予め設定されている。すなわち、耳孔入口から耳孔内のうち軟骨部外耳道までの長さに設定され、それより奥の器官である触れると痛みを伴う骨部外耳道や鼓膜9に接触しないようになっている。
【0019】
また、袋体3はガイド筒2に接着された後、図1の(B)に示す状態で露出した表面に耳垢を付着させる粘着剤6を塗布するようになっている。粘着剤6は、図2の(A)に示すように袋体3の外側に使用時に塗布され、耳孔壁にある耳垢を付着させて除去するものである。
【0020】
挿入棒4は、軸部4Cの一端に球状の摘み部4Aが、他端にガイド筒2の内径よりも小径に形成された小球部(挿入側先端)4Dがそれぞれ形成される。また軸部4Cには、挿入側先端の小球部4Dから摘み部4A側に向かって所定の距離L2を確保して耳孔入口の径寸法より長いストッパ4Bが形成されている。挿入棒4は、摘み部4Aを指で持ち、小球部4Dを操作するようになっている。小球部4Dは、図2の(B)に示すように摘み部4Aにより袋体3の閉塞部3Bをガイド筒2に押し込んで袋体3の内外面を反転させるようになっている。また小球部4Dは、袋体3が耳孔内に導入されると摘み部4Aを操作して袋体3の内側3Rから袋体3の外面を耳孔壁に押し付けることができるようになっている。小球部4Dとストッパ4Bとの距離L2は、挿入棒4の小球部4Dが直接耳孔に差し入れられてストッパ4Bが耳介に当たっても、小球部4Dが骨部外耳道または鼓膜9まで達しないようになっている。このためガイド筒2を介して挿入棒4が耳孔内に挿入されても小球部4Dが骨部外耳道または鼓膜9に接触することはない。
【0021】
小球部4Dには接着剤7が塗布され、袋体3に接離可能に接着されるようになっている。すなわち、図2の(A)に示すように、ガイド筒2に接着され外面に粘着剤6が塗布された袋体3に、ガイド筒2のストッパ2B側開口部から小球部4Dを差し入れて、閉塞部3B内面に接着させ、次に小球部4Dを引き戻すと、袋体3は閉塞部3Bが小球部4Dに引っ張られ、図2の(C)に示すように内外面が反転して本体がストッパ2B側開口部に露出するようになっている。こうして袋体3は、ガイド筒2のストッパ2B側で粘着剤6の塗布された面を内側にして、使用前の状態にセットされる。
【0022】
次に上記実施例に係る耳垢取具の作用について説明する。上記実施例に係る耳垢取具10は、使用前に予め下記のような準備をする。
(1)ガイド筒2に袋体3を接着して、袋体3の本体をガイド筒2の小径側開口部から露出させる(図1(B)参照)。
(2)袋体3の露出した外面に粘着剤6を塗布し、挿入棒4の小球部4Dに接着剤7を塗布し、この小球部4Dをガイド筒2を介して袋体3の閉塞部3B内側に押し当てて接着させる(図2(A)参照)。
(3)挿入棒4を小球部4Dを接着させた状態で引き戻す(図2の(B)(C)参照)。
(4)粘着剤6が塗布された面を内側にして袋体3と小球部4Dとを引き離す。
上述の準備をした後に、ガイド筒2を耳孔に装着する。
【0023】
このとき袋体3は内外反転しており、粘着剤6は袋体3の内側にあるので、粘着剤6が耳介や毛髪などに付着することがなく、耳内に到達するまで粘着力が保持される。
(5)挿入棒4の小球部4Dを、袋体3の閉塞部3B外面に接着させ、そのままガイド筒2内へ押し込み(図3参照)、袋体3を反転させて耳孔内へ導入する(図4参照)。
(6)次に摘み部4Aを操作して小球部4Dを袋体3の内側面(非粘着面)3Rに当て、袋体3の粘着面(粘着剤6塗布面)を耳孔壁に押し付ける。このため耳孔内の耳垢は粘着面に付着する。
(7)耳垢を粘着面に付着させた後、挿入棒4を引き抜くと、袋体3は内外面が反転し、耳垢は内側になった粘着面に付着したまま外部に取り出される。
【0024】
ガイド筒2の筒部2Aの大径部端部から袋体3の閉塞部3Bまでの長さL1は、耳孔入口から、耳孔内のうち軟骨部までの長さに設定されているので、耳奥深く入るのを規制するとともに、痛みを伴うことがない。また、挿入棒4の小球部4Dとストッパ4Bとの距離L2は、小球部4Dが直接耳孔に差し入れられてストッパ4Bが耳介に当たっても、小球部4Dが骨部外耳道または鼓膜9まで達しないようになっている。このため挿入棒4が耳孔内に挿入されても小球部4Dが骨部外耳道または鼓膜9に傷つけることはない。したがって耳掃除中に外部からの衝撃や振動、例えば人が耳掃除中の者に腕にぶつかるなどのアクシデントが起こっても、誤って耳垢取具10を耳の奥深く入れてしまう危険性が無く安全である。
【0025】
袋体3は軟質性の材質でできているので、小球部4Dで耳孔内壁に押しつけても耳内が傷つけられることはない。粘着剤6は、耳垢を除去したい部分全体に直接接触しているので、袋体3を綿棒などのように前後動や回転動作をする必要がなく、耳垢を付着させるにあたり粘着力を維持させることができ、粘着剤6に付着した耳垢は、耳内でこぼれおちることがない。また、耳外へ取り出された後の袋体3は、耳垢が付着した粘着剤6が内側になって耳外に出るので、除去した耳垢が耳外でこぼれ落ちて散らばることがなく後始末が簡便で清潔である。このように、本実施例に係る耳垢取り具10では、安全に耳掃除ができ、耳内を傷つけることなく容易かつ確実に耳垢を取ることができる。
【0026】
なお、上記実施例に係る耳垢取具10は、使い捨ての耳垢取具について述べられているが、繰り返し使用に耐えうる材質のものを採用した場合には、繰り返し使用が可能な耳垢取具にすることが可能であるのはいうまでもない。
【0027】
また、ガイド筒2のストッパ2Bの形状は上記実施例のような鍔状の形のものに限られるものではなく、楕円形、扇型などガイド筒が耳孔内に入るのを制止するものであれば、任意の形状であっても差し支えない。さらに、ガイド筒に例えば耳鼻科で使用されている円錐形の耳鏡を採用した場合は、耳ストッパを設けることなくガイド筒の役割を果たすことが可能である。ガイド筒2と挿入棒4は耳掃除としての使用に耐えうる強度を有していれば材質を問わない。接着剤5、接着剤7は、それぞれ接着対象の袋体3とガイド筒2、挿入棒4と袋体3の材質の組み合わせによりそれぞれ適した接着剤が用いられる。
【0028】
上記実施例では、使用前に袋体3に粘着剤6を塗布する方法が採用されているが、これに限られるものではなく、予め袋体に粘着体を塗布したものを使用してもよい。その際には、粘着剤は袋体の内側に塗布され、ガイド筒と袋体とを接着する向きが、上記実施例と反対側である筒部大径部に露出するように接着される。
【0029】
挿入棒4の摘み部4Aについては、持ちやすい形状であれば上記実施例のような球形に限られるものでなく、棒状、リング状など任意の形状で差し支えない。また、軸部4Cの長さを骨部外耳道または鼓膜までに達しない寸法に設定することにより、ストッパ4Bを設けないで挿入棒4を使用することも可能である。その際には摘み部4Aの径をガイド筒2の筒部2B内径よりも大径に設定する。さらに、上記実施例では小球部4Dと、袋体閉塞部3Bを接離自在にしたものについて述べているが、これに限られるものでなく、小球部4Dと袋体閉塞部3Bを接着させたままの状態で使用してもよいし、小球部4Dと袋体閉塞部3Bを接着しないで使用することも可能である。その際、袋体3を耳内から外すには、ストッパ2B部分を持って引き出せばよい。
【0030】
この耳垢取具10は耳内を不用意に傷つける危険性もなく、かつ耳垢の取りこぼしも無く、操作しやすいので、要介護の高齢者や傷病者に対する耳掃除も容易に行うことができる。また、耳垢を即時に引きはがすことができるので、耳掃除を嫌がったり数分でもじっとしていなかったりする幼小児などにも短時間で耳掃除ができる。このようにこの耳垢取具は広範囲の対象者が安全に使用でき、従来よりも実用性が非常に高い。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】(A)、(B)はそれぞれ、本発明の実施例に係る耳垢取具の組立状態を示す説明図およびその耳垢取具の使用状態を示す説明図である。(実施例1)
【図2】(A)ないし(C)はそれぞれ、図1の耳垢取具を耳孔入口に装着する前の状態を示す説明図である。
【図3】耳垢取具の耳内における使用状態を示す説明図である。
【図4】耳垢取具の耳内における使用状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0032】
2 ガイド筒
3 袋体
3B 袋体閉塞部
4 挿入棒
6 粘着剤
10 耳垢取具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耳孔入口に装着されるガイド筒と、
開口端がガイド筒内面に接着されて本体を外部に露出させ、内側に粘着剤が塗布された軟質性の袋体と、
袋体を閉塞側からガイド筒内を経由させ内外面を反転させて耳孔内に押し込み、袋体の粘着面を耳孔壁に押しつける挿入棒とを備えたことを特徴とする耳垢取具。
【請求項2】
袋体の長さを耳孔口から鼓膜までの距離より短寸にしたことを特徴とする請求項1に記載の耳垢取具
【請求項3】
挿入棒に深入れを規制するためのストッパを設けたことを特徴とする請求項1に記載の耳垢取具
【請求項4】
挿入棒の挿入側先端を袋体閉塞部に接離自在に構成したことを特徴とする請求項1または3に記載の耳垢取具

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−86553(P2008−86553A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−270531(P2006−270531)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【出願人】(306011377)
【Fターム(参考)】