説明

耳掻き

【課題】 耳垢を効率的に掻き取ることができる耳掻きの提供を課題とする。複数の掻き取り部を有する従来の耳掻きは、ワイヤー製で大きさの異なる3つの略U字状の掻き取り部を長さ方向にずらして柄に取り付けた構成である。各掻き取り部の中心線は一致しているので、各掻き取り部の頂部は外耳道の表皮の同じ場所を通過する。最初の掻き取り部が耳垢を掻き取ったあとでその同じ場所を2つの掻き取り部が通過することは効率的でない。
【解決手段】 複数の掻き取り部を有し、隣同士の掻き取り部の頂部は幅方向に離れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に一般家庭で使用される耳掻きに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の掻き取り部を有する耳掻きは従来から存在しており、ワイヤーを略U字状に曲げた3つの大きさの異なる掻き取り部を長さ方向にずらして柄に取り付けた耳掻きが存在する(例えば、特許文献1参照。)。また、1本のワイヤーを螺旋状に巻いて掻き取り部を形成したものも存在する(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2004−89585号公報
【特許文献2】特開平11−155756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、耳垢を効率的に掻き取ることができる耳掻きの提供を課題とする。
【0004】
特許文献1の耳掻きは、ワイヤー製で大きさの異なる3つの略U字状の掻き取り部を長さ方向にずらして柄に取り付けた構成である。したがって、各掻き取り部の中心線は一致しているので、外耳道に挿入した掻き取り部を引いて耳垢を掻き取るときに、各掻き取り部の頂部は外耳道の表皮の同じ場所を通過する。耳垢を主に掻き取る部分は掻き取り部の頂部付近であるから、外耳道の表皮の同じ部分を3つの掻き取り部の頂部が順次通過することになる。最初の掻き取り部が耳垢を掻き取ったあとでその同じ場所を2つの掻き取り部が通過することは効率的でない。また、耳垢にはドライタイプとウエットタイプがある。中でもドライタイプの耳垢の場合、特に外耳道の表皮の天井に付着している耳垢を取るときに最初の掻き取り部が剥がした後で取り残した耳垢は下方に落下するので、あとの掻き取り部が取るべき耳垢はほとんど残っていない。したがって、耳垢がドライタイプである使用者にとっても文献1の耳掻きは効率が悪い。
【0005】
文献2の耳掻きは、1本のワイヤーを螺旋状に巻いて掻き取り部を形成したものである。この耳掻きも文献1と同様に各掻き取り部の中心線が一致しているので、文献1の耳掻きと同じ理由で効率的でない。そこで本発明は耳垢を効率的に掻き取ることができる耳掻きを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1は、複数の掻き取り部を有し、隣同士の掻き取り部の頂部は幅方向に離れている構成である。
【0007】
請求項2は、複数の掻き取り部を有し、隣同士の掻き取り部の縁部が交差して重なっている構成である。
【0008】
請求項3は、最外側の少なくとも一方の掻き取り部は幅方向に可動である要素が請求項1又は請求項2に付加された構成である。
【0009】
請求項4は、各掻き取り部はそれぞれの支持部で柄に支持されている要素が請求項1乃至請求項3に付加された構成である。
【0010】
請求項5は、線材で形成された掻き取り部と、柄に取り付けられ前記掻き取り部を支持する支持部を含み、掻き取り部と支持部は線材で一体に形成され、掻き取り部は該掻き取り部により構成される平面方向に扁平である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1は、複数の掻き取り部を有し、隣同士の掻き取り部の頂部は幅方向に離れている構成である。したがって、耳垢を掻き取るときにそれぞれの掻き取り部の頂部が同じ場所を通過しないので耳垢を効率的に掻き取ることができる。複数の掻き取り部全部の幅を有する一つの掻き取り部で代用することも考えられるが、その場合、掻き取り部の頂部の曲率半径が大きいので特に外耳道の表皮に固くこびり付いた耳垢に食い込みにくく、固い耳垢を円滑に掻き取ることができない。本発明は、掻き取り部を複数設け、その複数の掻き取り部の頂部が幅方向に離れているために各掻き取り部の頂部の曲率半径が小さくなる。これにより、頂部の耳垢に対する食い込みが良くなり円滑に耳垢を掻き取ることができる。
【0012】
請求項2は、複数の掻き取り部を有し、隣同士の掻き取り部の縁部が交差して重なっている構成である。掻き取り部の縁部が交差しているので必然的に掻き取り部の頂部が接近する。これにより、2つの頂部間の耳垢も頂部が掻き取る耳垢に引きずられるように出すことができる。
【0013】
請求項3は、最外側の少なくとも一方の掻き取り部は幅方向に可動である。したがって、特に外耳道の小さめの使用者の場合、耳掻き作業中に掻き取り部の頂部よりも外側の縁部が外耳道の表皮に当たったときに、外側の2つの掻き取り部は外耳道の表皮の曲率に合うように接近する。この結果、掻き取り部の縁部が外耳道の表皮にフィットしやすいので効率的に耳垢を掻き取ることができる。
【0014】
請求項4は、各掻き取り部はそれぞれの支持部で柄に支持されている。複数の掻き取り部及びその支持部を別々に形成した方が構造が簡単でコストがかからない。また、支持部をワイヤー等の可撓性を有する材料で形成すれば、掻き取り部の幅方向の移動が円滑に行える。
【0015】
請求項5は、線材で形成された掻き取り部と、柄に取り付けられ前記掻き取り部を支持する支持部を含み、掻き取り部と支持部は線材で一体に形成され、掻き取り部は該掻き取り部により構成される平面方向に扁平である。掻き取り部の断面が偏平のときはその幅広面が平面又は平面に近い湾曲面になるから、耳垢を確実に引っ掛けて耳垢を効率的に掻き取ることができる。従来のように掻き取り部の断面が円形であると耳垢が引っ掛かりにくく、耳垢が掻き取り部の表面を乗り越えてしまうので効率的に耳垢を掻き取ることができない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1に示すように耳掻き1は、柄2と、該柄2に取り付けられた2つのワイヤー部材3,4とから成る。ワイヤー部材3,4はワイヤーをU字状に曲げてほぼ同じ形状に形成されている。一方のワイヤー部材3は、一対の支持部5,5とそれらの折り曲げ部に形成される掻き取り部6とから成る。他方のワイヤー部材4は、一対の支持部7,7とそれらの折り曲げ部に形成される掻き取り部8とから成る。各掻き取り部6,8は幅方向に弧状に延びているがその一部が直線状であってもよい。支持部7,7は直線状でなく曲げられていてもよい。図2に示すように掻き取り部6,8は支持部5,7に対して斜め下方を向くように曲げられている。掻き取り部6,8と支持部5,7のなす角度は110°〜170°が好ましく、中でも120°〜150°が好ましい。各ワイヤー部材3,4の全長は約20mmであり、支持部5,7の全長は約18mmである。支持部5,7の太さは約0.5mmφである。それぞれの掻き取り部6,8の最大幅は約4mmであり、その2つの掻き取り部6,8を合わせた最大幅は約5.5mmである。柄2は偏平に形成されており、通常の使用時に柄を握る場所は柄の中央よりもやや前方の部分であるが、その部分の幅は約6mmであり、厚みは約1.5mmの偏平形状である。柄は偏平である方が持ち易く安定するからである。ただし、本発明はこれらの数値に限定されるものではない。柄は偏平でなくてもよい。柄の一方の表面の長さ方向に溝を設け、柄の断面形状が全体として弧状をなすように形成してもよい。その場合、使用時に耳掻きが見えないときも指先の感触でその上下方向を判別することができる。ワイヤー部材3,4はそれぞれ1本の金属線で形成されているがこれに限定されるものでなく、それよりも細い複数の金属線を撚ったものであってもよい。撚り線の場合、それらを構成する細い金属線はすべて同じでもよく異なる線材の組合せでもよい。例えばステンレス線とチタン線の組合せでもよく、銅線などの抗菌性を有する線材を加えてもよい。さらに、外観を良くするために掻き取り部6,8や支持部5,7にメッキやイオンプレーティングによる表面処理を施したり、掻き取った耳垢が掻き取り部6,8から落ちやすいようにフッ素樹脂の被膜を施してもよい。また、掻き取り部6,8の色彩を黒色系にしてもよい。その場合、白に近い色彩の耳垢との明度差が大きいために耳垢を明確に確認することができるから、どの程度の耳垢が取れたかを判別できる。
【0017】
図3で明らかなように2つのワイヤー部材3,4は幅方向にずらして柄2に取り付けられている。このために、掻き取り部6の頂部9と掻き取り部8の頂部10は幅方向に離れている。頂部9,10の距離は約1.5mmであるがこの数値に限定されるものでなく0.3〜2mmが好ましい範囲である。それぞれの支持部5,7はワイヤーで直線状に形成されて可撓性を有しており、支持部5,7は幅方向に可撓である。したがって、掻き取り部6,8をそれらの外側から内側に押圧すると、ぞれぞれの頂部9,10が接近するように支持部5,7は撓む。図3乃至図6に示すように2つの掻き取り部6,8は交差しており、その交差している部分で接触している。しかし、不使用時においてその部分は非接触であってもよい。この交差によりワイヤー部材3,4の腰を強くすることができる。すなわち、各ワイヤー部材3,4をそれぞれ1本の細いワイヤーで形成した場合には、それ単独では腰が弱く図3における紙面と垂直方向に撓みやすくなり、耳垢への食い込み力が弱くなる。そこで、2つの掻き取り部6,8を重ねることによりワイヤー部材3,4の腰を全体的に強くすることができる。図3において上側のワイヤー部材3が手前になるように設けられているが、下側のワイヤー部材4を手前にしてもよい。
【0018】
図5に示すように支持部5,7の断面は円形であるが、図6に示すように掻き取り部6,8の断面はそれぞれの掻き取り部6,8で構成される平面方向に偏平に形成されている。例えばプレスにより偏平に加工する。掻き取り部6,8の断面の幅は約0.65mmであり、厚みは約0.3mmである。図6から明らかなように断面が偏平のときはその幅広部が平面又は平面に近い湾曲面になるから、耳垢を確実に引っ掛けて耳垢を効率的に掻き取ることができる。従来のように掻き取り部の断面が円形であると耳垢が引っ掛かりにくく、掻き取り部を引いたときに耳垢が掻き取り部の表面を乗り越えてしまうので効率的に耳垢を掻き取ることができない。なお、支持部5,7の断面は円形に限定されるものでなく矩形や多角形や楕円形などでもよい。
【0019】
図3に示すように、ワイヤー部材3の支持部5,5と掻き取り部6との境界でワイヤーに内側向きの屈曲部11,11が形成されている。これにより側方頂部12,12が形成されるのでこの部分でも耳垢を効率的に掻き取ることができる。同様にワイヤー部材4にも屈曲部13,13が形成されて側方頂部14,14が形成されるので耳垢を効率的に掻き取ることができる。
【0020】
図4に示すように、2つの掻き取り部6,8は重なっているが、支持部5,7の付け根は同じ面にあって重なっていない。この理由は、柄2の前端に支持部5,7の根元を挿入して固定するための穴を設けてあるが、支持部ごとに穴を設けずに1つの幅広の穴を設けてその中に支持部5,7の根元が同一平面に一列に並んでいるからである。この方が支持部ごとに穴を設けるよりもコストを軽減することができる。支持部5,7の固定方法は、支持部5,7を穴に挿入した後に柄2の前端部をプレスし支持部5,7を確実に挟んで固着する。ただし、支持部の固定手段はこれに限定されるものでなく接着剤で固着してもよく、他の方法でもよい。
【0021】
図7及び図8は本発明の他の実施例であって、柄15の後端に他の種類の掻き取り部16が設けられたものである。この掻き取り部16は柔軟性を有する合成樹脂で形成されており、図8に示すように複数の円板状部17が形成されていてこの円板状部17によって耳垢を掻き取る。掻き取り部16は釘18によって柄15に取り付けられている。
【0022】
本発明は以上述べた実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で変更が行われる。例えば、掻き取り部は3以上あってもよい。掻き取り部が3つのときは、中央の掻き取り部をその両側の掻き取り部が挟むように順次重ねる構成でもよいが、両側の掻き取り部は中央の掻き取り部の同じ面側にあることがより好ましい。このように構成することによって掻き取り部の合計の厚みは常に掻き取り部2つ分の厚みとすることができる。また、すべてのワイヤー部材を材料や形状が同じである同一品とすることが好ましい。これによって、ワイヤー部材の製造装置は1つあればよいのでコストを削減することができる。ただし、柄に取り付けた複数のワイヤー部材がそれぞれ異なるものであってもよい。また、図3に示す2つのワイヤー部材3,4はそれぞれ長さ方向に延びる中心線に関し対称であるが非対称の形状であってもよい。また、掻き取り部はワイヤーのような線材でなく板材で形成してもよい。すなわち、従来の竹製の耳掻きの掻き取り部のような構成であってもよい。材料は竹以外でもよく例えば金属や合成樹脂であってもよい。また、複数の掻き取り部が単一の支持部に取り付けられていてもよい。また、2つの掻き取り部が同じ線材等で一体に形成されてもよい。例えば、線材をハート形の上半部のように折り曲げて2つの掻き取り部を形成してもよい。この場合、掻き取り部の縁部は交差しないがそれでもよい。また、実施の形態ではワイヤー部材3,4の長さが同一でそれらの掻き取り部6,8の各頂部9,10が揃っているが、ワイヤー部材3,4の長さを違えて掻き取り部の頂部が不揃いになるように形成してもよい。また、それぞれの支持部で支持された隣り合う掻き取り部の縁部を交差させないで、その代わりに支持部を交差させる構成であってもよい。ワイヤー部材は柄に片持状に支持する構成であってもよい。また、柄2の後端部に耳孔掃除用の綿毛を設けてもよく、先端の掻き取り部と異なる種類の掻き取り部を設けて使い分け可能にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の正面図である。
【図2】本発明の平面図である。
【図3】ワイヤー部材を拡大した正面図である。
【図4】ワイヤー部材を拡大した平面図である。
【図5】図4におけるA−A断面図である。
【図6】図4におけるB−B断面図である。
【図7】本発明の他の実施例の正面図である。
【図8】図7の掻き取り部の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 耳掻き
2 柄
3 ワイヤー部材
4 ワイヤー部材
5 支持部
6 掻き取り部
7 支持部
8 掻き取り部
9 掻き取り部の頂部
10 掻き取り部の頂部
11 屈曲部
12 側方頂部
13 屈曲部
14 側方頂部
15 柄
16 掻き取り部
17 円板状部
18 釘

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の掻き取り部を有し、隣同士の掻き取り部の頂部は幅方向に離れていることを特徴とする耳掻き。
【請求項2】
複数の掻き取り部を有し、隣同士の掻き取り部の縁部が交差して重なっていることを特徴とする耳掻き。
【請求項3】
最外側の少なくとも一方の掻き取り部は幅方向に可動である請求項1又は請求項2記載の耳掻き。
【請求項4】
各掻き取り部はそれぞれの支持部で柄に支持されている請求項1乃至請求項3記載の耳掻き。
【請求項5】
線材で形成された掻き取り部と、柄に取り付けられ前記掻き取り部を支持する支持部を含み、掻き取り部と支持部は線材で一体に形成され、掻き取り部は該掻き取り部により構成される平面方向に扁平であることを特徴とする耳掻き。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−220492(P2008−220492A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−60303(P2007−60303)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000001454)株式会社貝印刃物開発センター (123)
【Fターム(参考)】