説明

肩紐取付環及びその製法、並びに、肩紐及びそれを使用した女性下着

【課題】面倒な取付作業や接着剤・高周波熱接着を使用せずに、肩紐本体と取付環の取付支柱を強固に取り付ける。
【解決手段】(A)枠体(34)と、肩紐テープ通過孔(36)と、前記肩紐テープ通過孔に隣接して形成されている取付支柱(33)からなる取付環(32)であって、前記取付支柱(33)の厚みを枠体(34)の厚みよりも薄くしたもの。(B)肩紐テープ末端に取付環(32)が取り付けられている肩紐(30)であって、肩紐テープの端部(31)と取付環(32)とが糸(35)により縫着されてなるもの。(C)前記肩紐を有する女性用下着。(D)前記取付環(32)の製造方法であって、射出成型用の金型内において取付支柱部分(33)の中央部(37)に対して成形用溶融樹脂を注入する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肩紐及びそれを使用した女性下着に関する。この肩紐を使用する女性下着としては、例えば、ブラジャー、スリップ、ブラスリップ、キャミソール、ボディースーツが挙げられる。さらに本発明は、肩紐において使用する取付環及びその製法にも関する。
【背景技術】
【0002】
従来の肩紐は本願添付の図5及び図6に示すようなものである。図5は従来の肩紐がブラジャーに取り付けられている状態を説明するためのブラジャーの斜視図であり、図6は従来の肩紐の使用態様における要部の見取図である。
【0003】
図5、図6において、1は肩紐本体、2はその一端部近傍部分、3は肩紐本体の一端部、4は肩紐用取付環10の中央部に位置する取付支柱11の外周に巻き付けられている肩紐本体部分、6は肩紐本体の一端部3を縫製により肩紐本体の一端部近傍部分2に縫い合わせている縫製ライン、7は肩紐本体1が反転される部分、5は肩紐本体1が前記の如く反転されて取付環10に挿入されている部分を表している。肩紐本体の一端部3は、取付環10の中央部に位置する取付支柱11の外周に巻き付けられて肩紐本体の一端部近傍部分2に重ね合わされて縫製ライン6で縫い合わせて取付環10の取付支柱11から外れないようにされている。
【0004】
一般に衣類にこの肩紐を取り付けるには、この肩紐本体の他方の端が反転されて図6に示されるように再度取付環10に挿入された状態にして使用される。9は肩紐本体が再度取付環10に挿入される部分の取付環の下側に潜り込む部分を示している。この際、反転部7は、図5に示すように、衣類本体(この場合は、ブラジャー22)に取り付けられている肩紐挿入環20に挿入されており、肩紐本体の他方の端は衣類本体の後側21に例えば縫製などの適宜の手段で取り付けられている。そして、衣類着用時に着用者の体型や好みのフィット感に応じて、取付環10の位置を肩紐本体1上で上下にスライドさせることにより肩紐の長さを調整できるようになっている。
【0005】
この従来の肩紐には、取付環が取り付けられている部分の厚みが、符号で引用すると下から2の厚み、3の厚み、9の厚み、10の厚み、4の厚み、5の厚みの合計6層の厚みとなるため、他の部分に比べてかなり厚くなる。そのため着用者に与える圧迫感、違和感が大きく、また、この部分の厚みが厚いと比較的タイトなアウターウェアーを着用した場合に、その部分の厚みがアウターウェアーにも影響し、外部からその部分の盛り上がりが見えやすく見苦しいという問題があった。
【0006】
これを解消するために、下記特許文献1では、取付環に肩紐本体の一端部が取り付けられている衣類用肩紐であって、前記肩紐本体の一端部が前記取付環に取り付けられている機構が、
(A)肩紐本体1の一端部から取付環23の取付支柱24の外周を回り、前記肩紐本体の前記一端部に至る糸状物の複数のループ25により取り付けられてなる構造の取り付け構造を有してなる衣類用肩紐(本願添付の図7参照)、又は
(B)取付環26の取付支柱27に肩紐本体1の一端部が接着されて取り付けられてなる構造の取り付け構造を有してなる衣類用肩紐(本願添付の図8参照)、
であるものを提案している。
【特許文献1】特開2000−96325公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記(A)の肩紐によると、取付環23の取付支柱24と肩紐本体1は複数の糸状物ループ25により固定される。しかし、このような構造は、テープが引っ張られたとき糸に直接負荷がかかるので、強度が弱く、また、ループ25が支柱をスライドしてテープがずれる等の欠点があり、決して安定的な支持構造とはいえない。また、テープ生地の端部にループ25を設定するのは困難な加工作業である。
【0008】
上記(B)の肩紐によると、取付環26の取付支柱27と肩紐本体1は「接着」される。同公報[0060]によると、「接着は、接着剤を用いる方法でも良いが、熱融着可能な場合には、熱融着により取り付ける方が接着剤のはみ出しや接着剤の厚みなどが問題にならず好ましく、特に高周波熱接着が可能な場合には、高周波熱接着は熱接着加工が容易で且つきれいに仕上ることができ接着力も十分に保つことができるので好ましい」とされている。しかし、接着剤を使用したときには、それが直接肌に当接するものであるだけに、安全面で不安が残る。一方、熱溶着によれば、テープ生地を高周波熱接着すると、生地が硬化して肌触りがよくないという欠点がある。
【0009】
本発明は、特許文献1が指摘する問題を、特許文献1とは別のアプローチにより解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の、肩紐取付用の取付環は、枠体と、肩紐テープ通過孔と、前記枠体に隣接して形成されている取付支柱からなる取付環であって、前記取付支柱部分を枠体よりも薄くしたことを特徴とする。
【0011】
本発明の肩紐は、肩紐テープ末端に取付環が取り付けられている肩紐であって、肩紐テープの端部と取付環とが糸により縫着されてなることを特徴とする。
【0012】
本発明の女性用下着は、前記の肩紐を使用したことを特徴とする。
【0013】
本発明の取付環の製造方法は、取付環の形状をした射出成型用の金型内において取付支柱部分の中央部に相当する個所から成形用溶融樹脂を注入することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、比較的厚みの厚い肩紐本体が取付支柱の外周の周り回っていないので、図6で説明した少なくとも符号3と4の部分の層が存在しなくなる。その結果、取付環が取り付けられている部分の肩紐の厚みが薄くでき、着用者に与える圧迫感、違和感を軽減できる。また、この部分の厚みが比較的薄くなるので比較的タイトなアウターウェアーを着用した場合においても、その部分の厚みがアウターウェアーにも大きく影響し、外部からその部分の盛り上がりが大きく見えやすく見苦しいという問題が軽減しうる。
【0015】
さらに、本発明の肩紐は、肩紐本体の一端部と取付環の取付支柱とが糸により縫着されているのであるから、肩紐本体の一端部から取付環の取付支柱の外周を回り肩紐本体の一端部に至る複数のループを形成するような面倒な取付作業の必要がない。また、接着剤を使用する必要がないので安全である。さらに、高周波熱接着も必要がないので、生地が硬化する恐れもない。
【0016】
また、本発明の取付環の製造方法によると、溶融樹脂が全体に満遍なく行き渡り、不良品がほとんどでなくなる。なお、従来の方法は、サイドゲート方式であり、側面から注入するため、本願発明の取付環のようにくびれのある製品には適用しにくいものであった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
取付環の全体形状は、中央部に取付支柱を有する略8の字型である。このようにすることにより、肩紐テープを糸で縫着したとき、取付支柱の両端で樹脂がバリのように外側にはみ出しても、この部分は略「8」の字のくびれの部分に位置するので、着用者の肌に接して不快感を与えることはなくなる。また、本発明では、全体形状を単に略「8」の字型にするだけでなく、取付支柱の長手方向長さを、肩紐テープ通過孔の長手方向長さよりも短いものにすることが好ましい。そうすることにより、はみ出した樹脂を肩紐テープが隠すので、美観を損ねることもない。
【0018】
本発明では、肩紐本体の一端部と取付環の取付支柱とが糸により縫着されるのであるから、取付環の取付支柱をミシン針が何度も貫通する。したがって、取付環の材料や厚みは十分に吟味する必要がある。
【0019】
材料としては、軟質樹脂が好ましい。軟質樹脂としては、ゴム(天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、等)や熱可塑性エラストマー(ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、ナイロン等)などが使用可能である。
【0020】
厚みに関していえば、少なくとも取付支柱部分を他の部分よりも薄くして、加工に適した厚みにしておくことが好ましい。例えば、取付支柱部分の厚みは枠体の厚みの40〜80%、好ましくは50〜70%、最も好ましいのは60%程度である。ミシン針が抵抗なく貫通できるように、ミシンによる縫製前に取付支柱に小さな貫通孔を複数個開けておくこともできる。
【実施例1】
【0021】
以下、添付の図面に基づき、本発明の実施例を説明する。
【0022】
図1は、本発明の肩紐30において使用する取付環32の斜視図である。図2は肩紐本体の一端部31を取付環32に取り付けた状態の斜視図である。図3は、図2の3−3断面図(図2の状態を上下反転させている)である。図4は、取付環の使用状態を示す断面図である。
【0023】
図1に示すように、この取付環32は、楕円形状の2つの枠体34、それぞれの枠体34内の肩紐貫通孔36、これら2つの枠体34に挟まれた取付支柱33を有し、全体は略「8」の字型である。枠体34の肩紐方向の長さや幅は、使用する肩紐テープ30の幅(図2のb)に応じて異なってくるが、この実施例では、枠体の大きさは、肩紐方向の長さL1が16.9mm、幅L2が15.0mmである。なお、この実施例では、枠体34を楕円形としたが、円形状又は方形状としてもよい。
【0024】
図3に示すように、取付支柱部分33は他の部分に比べて薄く形成されている。この実施例では、枠体34の厚み(図3のE)が2.0mmであるのに対して、取付支柱部分33の厚み(図3のD)は1.2mmであって、後者は前者の60%の厚みである。
【0025】
図2に示すように、肩紐貫通孔の孔の長さaと、肩紐テープの幅bと、取付支柱部分33の長さc(図2)とはほぼ同じ長さであり、肩紐貫通孔36の孔の長さaは、使用する肩紐テープ30の幅に応じたものとなる。この実施例では、a,b,cすべて約10.0mmである。
【0026】
取付環32は、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、ナイロン等の軟質樹脂で形成されている。成形するときは取付環32の形状の金型(図示せず)内に射出成形して行うが、その際、取付支柱33の表側又は裏側の中央部37(図1)に相当する個所から溶融樹脂を注入する。注入した溶融樹脂が冷却されて固まった後、金型を分離して、取付環32を取り出す。
【0027】
この取付環32と肩紐本体30の一端部31とは、図2に示すように、糸35により縫着されている。取付環の取付支柱33をミシン針が何度も貫通しながら往復することにより、両者は強固に固定される。糸35は、取付支柱部分33の全体を縫着してもよいし、強度さえ保たれれば一部でもよい。全体を縫着したとき、糸35が取付支柱部分33の両端の樹脂38を押し出してバリのように突出
することがある。何も手当をしなければこの部分が着用者の肌を刺激することがある。しかし、本実施例では、両端の樹脂38は「8」の字のくびれの部分に位置するので、着用者の肌に接触することはない。
【0028】
図示しないが、ミシン針の貫通が容易となるように、ミシンによる縫製前に取付環に小さな貫通孔を多数設けておくこともできる。
【0029】
本発明の肩紐取付環32を使用すれば、図4に示すように、比較的厚みの厚い肩紐本体30が取付支柱33の外周を回っていないので、図10で説明した少なくとも符号3と4の部分の層が存在しなくなる。その結果、取付環が取り付けられている部分の肩紐の厚みが薄くでき、着用者に与える圧迫感、違和感を軽減できる。さらに、本発明では、取付支柱33部分が枠体34よりも薄くなっているので、その分だけ肩紐の厚みが薄くすることができる。このようにして、肩紐の厚みが薄くなるので、比較的タイトなアウターウェアーを着用した場合においても、その部分の厚みがアウターウェアーにも大きく影響し、外部からその部分の盛り上がりが大きく見えやすく見苦しいという問題を軽減することができる。
【0030】
さらに、本発明の肩紐は、肩紐本体の一端部31と取付環の取付支柱33とが糸35により縫着されているのであるから、肩紐本体の一端部から取付環の取付支柱の外周を回り肩紐本体の一端部に至る複数のループを形成するような面倒な取付作業の必要がない。また、接着剤を使用する必要がないので安全である。さらに、高周波熱接着も必要がないので、生地が硬化する恐れもない。
【0031】
また、本発明の取付環の製造方法によると、取付環32の形状の金型内で取付支柱33の表側又は裏側の中央部37に相当する個所から溶融樹脂を注入するので、溶融樹脂が全体に満遍なく行き渡り、不良品がほとんどでなくなる。従来の方法は、サイドゲート方式であり、側面から注入するため、本願発明の取付環32のようにくびれのある製品には適用しにくいものであった。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明第1実施例の肩紐において使用する取付環の斜視図である。
【図2】第1実施例において肩紐本体の一端部を取付環に取り付けた状態の斜視図である。
【図3】図2の3−3断面図(図2の状態を上下反転させている)である。
【図4】取付環の使用状態を示す断面図である。
【図5】第1従来技術の肩紐を有するブラジャーの斜視図である。
【図6】第1従来技術の肩紐の一部斜視図である。
【図7】第2従来技術(特許文献1)の取付環の平面図である。
【図8】第3従来技術(特許文献1)の取付環の斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
(従来例)
10 肩紐用取付環
11 取付支柱
20 肩紐挿入環
22 ブラジャー
(本発明)
30 肩紐本体
31 肩紐一端部
32 取付環
33 取付支柱
34 枠体
35 糸
36 肩紐テープ通過用貫通孔
37 溶融樹脂注入口の位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体(34)と、肩紐テープ通過孔(36)と、前記枠体(34)に隣接して形成されている取付支柱(33)からなる取付環であって、前記取付支柱(33)の厚みを枠体(34)の厚みよりも薄くしたことを特徴とする肩紐取付用の取付環(32)。
【請求項2】
前記取付支柱(33)の厚みが枠体(34)の厚みの40〜80%である請求項1記載の取付環(32)。
【請求項3】
全体形状が略「8」の字型であり、前記取付支柱(33)の両端部でくびれが設けられている請求項1又は2記載の取付環(32)。
【請求項4】
肩紐テープ末端に取付環(32)が取り付けられている肩紐(30)であって、肩紐テープの端部(31)と取付環(32)とが糸(35)により縫着されてなることを特徴とする肩紐。
【請求項5】
肩紐テープの端部(31)が肩紐テープ通過孔(36)に隣接して形成されている前記取付支柱(33)に取り付けられている請求項4記載の肩紐。
【請求項6】
前記取付支柱部分(33)の厚みを枠体(34)の厚みよりも薄くした請求項5記載の肩紐。
【請求項7】
取付支柱(33)に小さな貫通孔を複数個開けた請求項5ないし6の何れかに記載の肩紐。
【請求項8】
請求項5ないし7のいずれかに記載の肩紐を使用したことを特徴とする女性用下着。
【請求項9】
取付環(32)の製造方法であって、取付環(32)の形状をした射出成型用の金型内において取付支柱部分(33)の中央部(37)に相当する個所から成形用溶融樹脂を注入することを特徴とする取付環の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−217837(P2007−217837A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−42004(P2006−42004)
【出願日】平成18年2月20日(2006.2.20)
【出願人】(593104039)トリンプ・インターナショナル・ジャパン株式会社 (26)
【出願人】(000114606)モリト株式会社 (198)
【Fターム(参考)】