説明

脱水濾液の噴霧乾燥装置及び排ガス処理システム

【課題】脱硫装置からの脱硫排水の無排水化を図ることができる脱硫排水からの脱水濾液の噴霧乾燥装置及び排ガス処理システムを提供する。
【解決手段】噴霧乾燥装置50Aの頂(蓋)部51a近傍の側壁51bに設けられ、脱水濾液33の噴霧液33aを乾燥する排ガス18を導入するガス導入口52と、噴霧乾燥装置本体内に設けられ、導入された排ガス18を減速すると共に、排ガス流れを層流Xに変更する整流板53と、層流Xとなった排ガス18中に、脱硫排水30からの脱水濾液33を噴霧する噴霧ノズル54と、噴霧乾燥装置本体の底部近傍の側壁51cに設けられ、脱水濾液33の乾燥に寄与した排ガス18を排出するガス排出口55と、噴霧乾燥装置本体51の底部側に設けられ、噴霧乾燥固形物である灰56を排出する固形物排出手段である排出ホッパ57とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラから排出される排ガスを処理する排ガス処理の際に発生する脱硫排液からの脱水濾液の噴霧乾燥装置及び排ガス処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火力発電設備等に設置されるボイラから排出される排ガスを処理するための排ガス処理システムが知られている。排ガス処理システムは、ボイラからの排ガスから窒素酸化物を除去する脱硝装置と、脱硝装置を通過した排ガスの熱を回収するエアヒータと、熱回収後の排ガス中の煤塵を除去する集塵機と、除塵後の排ガス中の硫黄酸化物を除去するための脱硫装置とを備えている。脱硫装置としては、石灰吸収液等を排ガスと気液接触させて排ガス中の硫黄酸化物を除去する湿式の脱硫装置が一般的に用いられる。
【0003】
湿式の脱硫装置から排出される排水(以下、「脱硫排水」という。)には、塩素イオン、アンモニウムイオン等のイオンや水銀など様々な種類の有害物質が多量に含まれる。このため、脱硫排水をシステム外部に放流する前に脱硫排水からこれらの有害物質を除去する必要があるが、脱硫排水中に含まれるこれら多種類の有害物質の除去処理は複雑であり、処理コストが高いという問題がある。そこで、脱硫排水の処理コストを節減すべく、脱硫排水をシステム外部に放出することなくシステム内で再利用する方法が提案されている。例えば、特許文献1及び2には、脱硝装置、エアヒータ、集塵機、脱硫装置とが接続される主ラインの煙道から分岐して、脱硫排水を噴霧してガス化する設備を別途設置し、主ラインの煙道から排ガスの一部をこの設備内に導入し、設備内の排ガス中に脱硫排水を噴霧して蒸発させることにより有害物質を析出させた後、このガスを主ラインの煙道に戻すように構成された排ガス処理装置が開示されている(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−200818号公報
【特許文献2】特開平9−313881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2の排ガス処理装置では、煙道から排ガスを一部分岐して、脱硫装置からの脱硫排水(又は排液)を噴霧してガス化する設備を設けて、脱硫排水を蒸発させているが、脱硫装置からの脱硫排水は、固形分が含有されているために、噴霧乾燥を良好に行うことができない、という問題がある。
【0006】
さらに、近年、内陸部等における水資源に対する環境配慮のために、排ガス処理設備における無排水化が切望されており、安定して操業することができる無排水化を図る排ガス処理設備の出現が切望されている。
【0007】
この無排水化を実施する設備として、脱硫排水を乾燥する噴霧乾燥機を用いることができるが、ボイラ排ガスを用いて脱硫排水を噴霧乾燥する場合には、以下のような問題がある。
ボイラ排ガス中には、高濃度の灰が含まれており、さらに脱硫排水が蒸発されると排水中に含まれる多量の析出塩が存在するので、その対策が必要となる。
【0008】
本発明は、前記問題に鑑み、脱硫装置からの脱硫排水の無排水化を図ることができる脱硫排水からの脱水濾液の噴霧乾燥装置及び排ガス処理システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、噴霧乾燥装置本体の頂部近傍側壁に設けられ、噴霧液を乾燥する排ガスを導入するガス導入口と、前記噴霧乾燥装置本体内に設けられ、導入された排ガスを減速すると共に、排ガス流れを層流に変更する整流板と、層流となった排ガス中に、脱硫排水からの脱水濾液を噴霧する噴霧ノズルと、前記噴霧乾燥装置本体の底部近傍側壁に設けられ、脱水濾液の乾燥に寄与した排ガスを排出するガス排出口と、前記噴霧乾燥装置本体の底部に設けられ、噴霧乾燥固形物を排出する固形物排出手段と、を具備することを特徴とする脱硫排水からの脱水濾液の噴霧乾燥装置にある。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記噴霧乾燥装置本体内の排ガス導入領域近傍に設けられ、排ガス中の固形分による内壁面の磨耗を防ぐ保護板を有することを特徴とする脱硫排水からの脱水濾液の噴霧乾燥装置にある。
【0011】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記噴霧乾燥装置の内壁周面を洗浄する洗浄手段を有することを特徴とする脱硫排水からの脱水濾液の噴霧乾燥装置にある。
【0012】
第4の発明は、燃料を燃焼させるボイラと、前記ボイラからの排ガスの熱を回収するエアヒータと、熱回収後の排ガス中の煤塵を除去する集塵機と、除塵後の排ガス中に含まれる硫黄酸化物を吸収液で除去する脱硫装置と、前記脱硫装置から排出される脱硫排水から石膏を除去する脱水機と、前記脱水機からの脱水濾液を噴霧する噴霧手段を備えた第1乃至3のいずれか一つの噴霧乾燥装置と、前記噴霧乾燥装置に排ガスの一部を導入する排ガス導入ラインとを具備することを特徴とする排ガス処理システムにある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、噴霧乾燥装置内において、排ガスを層流とし、その層流となった排ガス中に、脱硫排水からの脱水濾液を噴霧ノズルから噴霧することで、脱水濾液の噴霧乾燥が良好となる。この際、導入する排ガスによる磨耗を保護板で保護することとしている。
【0014】
さらに、噴霧乾燥装置内部を洗浄する洗浄手段を有することにより、排ガス中の高濃度の灰と噴霧乾燥後の多量の析出塩を洗浄し、壁面内部にスケールの発生を防止する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、実施例1に係る排ガス処理システムの概略構成図である。
【図2】図2は、実施例1に係る脱硫排液からの脱水濾液の噴霧乾燥装置の概略図である。
【図3−1】図3−1は、図2のA−A断面図であり、噴霧乾燥装置の頂部側に設けた第1の保護板の設置状態を示す概略図である。
【図3−2】図3−2は、そのC部拡大図である。
【図4−1】図4−1は、図2のB−B断面図であり、噴霧乾燥装置の底部側に設けた第2の保護板の設置状態を示す概略図である。
【図4−2】図4−2は、そのD部拡大図である。
【図5】図5は、実施例2に係る脱硫排液からの脱水濾液の噴霧乾燥装置の概略図である。
【図6】図6は、実施例3に係る脱硫排液からの脱水濾液の噴霧乾燥装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0017】
図1は、実施例1に係る排ガス処理システムの概略構成図である。図1に例示される排ガス処理システム10は、例えば石炭を燃料として使用する石炭焚きボイラや重油を燃料として使用する重油焚きボイラ等のボイラ11からの排ガス18から、窒素酸化物(NO)、硫黄酸化物(SO)、水銀(Hg)等の有害物質を除去する装置である。
【0018】
排ガス処理システム10は、燃料Fを燃焼させるボイラ11と、前記ボイラ11からの排ガス18中の窒素酸化物を除去する脱硝装置12と、脱硝後の排ガス18の熱を回収するエアヒータ13と、熱回収後の排ガス18中の煤塵を除去する集塵機14と、除塵後の排ガス18中に含まれる硫黄酸化物を吸収液である石灰スラリー20で除去する脱硫装置15と、前記脱硫装置15から排出される脱硫排水30から石膏31を除去する脱水機32と、前記脱水機32からの脱水濾液33を噴霧する噴霧手段を備えた噴霧乾燥装置50(後述する噴霧乾燥装置50A〜50C)と、前記噴霧乾燥装置50に排ガス18の一部を導入する排ガス導入ラインL11とを具備するものである。これにより、石膏を除去した脱水濾液33を導入した排ガス18を用いて噴霧乾燥装置50において、噴霧乾燥するので、脱硫排水30の無排水化を安定して実施することができる。
【0019】
脱硝装置12は、ボイラ11からガス供給ラインL1を介して供給される排ガス18中の窒素酸化物を除去する装置であり、その内部に脱硝触媒層(図示せず)を有している。脱硝触媒層の前流には還元剤注入器(図示せず)が配置され、この還元剤注入器から排ガス18に還元剤が注入される。ここで還元剤としては、例えばアンモニア、尿素、塩化アンモニウムなどが用いられる。脱硝装置12に導入された排ガス18中の窒素酸化物は、脱硝触媒層と接触することにより、排ガス18中の窒素酸化物が窒素ガス(N)と水(HO)に分解・除去される。また排ガス18中の水銀は、塩素(Cl)分が多くなると、水に可溶な2価の塩化水銀の割合が多くなり、後述する脱硫装置15で水銀が捕集しやすくなる。
【0020】
なお、上記の脱硝装置12は必須のものではなく、ボイラ11からの排ガス18中の窒素酸化物濃度や水銀濃度が微量、あるいは、排ガス18中にこれらの物質が含まれない場合には、脱硝装置12を省略することも可能である。
【0021】
エアヒータ13は、脱硝装置12で窒素酸化物が除去された後、排ガス供給ラインL2を介して供給される排ガス18中の熱を回収する熱交換器である。脱硝装置12を通過した排ガス18の温度は300℃〜400℃程度と高温であるため、エアヒータ13により高温の排ガス18と常温の燃焼用空気との間で熱交換を行う。熱交換により高温となった燃焼用空気は、ボイラ11に供給される。一方、常温の燃焼用空気との熱交換を行った排ガス18は150℃程度まで冷却される。
【0022】
集塵機14は、熱回収後、ガス供給ラインL3を介して供給される排ガス18中の煤塵を除去するものである。集塵機14としては慣性力集塵機、遠心力集塵機、濾過式集塵機、電気集塵機、洗浄集塵機等が挙げられるが、特に限定されない。
【0023】
脱硫装置15は、煤塵が除去された後、ガス供給ラインL4を介して供給される排ガス18中の硫黄酸化物を湿式で除去する装置である。この脱硫装置15では、アルカリ吸収液として石灰スラリー20(水に石灰石粉末を溶解させた水溶液)が用いられ、装置内の温度は30〜80℃程度に調節されている。石灰スラリー20は、石灰スラリー供給装置21から脱硫装置15の塔底部22に供給される。脱硫装置15の塔底部22に供給された石灰スラリー20は、図示しない吸収液送給ラインを介して脱硫装置15内の複数のノズル23に送られ、ノズル23から塔頂部24側に向かって噴出される。脱硫装置15の塔底部22側から上昇してくる排ガス18がノズル23から噴出する石灰スラリー20と気液接触することにより、排ガス18中の硫黄酸化物及び塩化水銀が石灰スラリー20により吸収され、排ガス18から分離、除去される。石灰スラリー20により浄化された排ガス18は、浄化ガス26として脱硫装置15の塔頂部24側より排出され、煙突27から系外に排出される。
【0024】
脱硫装置15の内部において、排ガス18中の硫黄酸化物SOは石灰スラリー20と下記式(1)で表される反応を生じる。
CaCO+SO+0.5HO → CaSO・0.5HO +CO・・・(1)
【0025】
さらに、排ガス18中のSOを吸収した石灰スラリー20は、脱硫装置15の塔底部22に供給される空気(図示せず)により酸化処理され、空気と下記式(2)で表される反応を生じる。
CaSO・0.5HO+0.5O+1.5HO → CaSO・2HO・・・(2)
このようにして、排ガス18中のSOは、脱硫装置15において石膏CaSO・2HOの形で捕獲される。
【0026】
また、上記のように、石灰スラリー20は、脱硫装置15の塔底部22に貯留した液を揚水したものが用いられるが、この揚水される石灰スラリー20には、脱硫装置15の稼働に伴い、反応式(1)、(2)により石膏CaSO・2HOが混合される。以下では、この揚水される石灰石膏スラリー(石膏が混合された石灰スラリー)を吸収液とよぶ。
【0027】
脱硫に用いた吸収液(石灰石膏スラリー)は、脱硫排水30として脱硫装置15の塔底部22から外部に排出され、後述する排水ラインL20を介して脱水機32に送られ、ここで脱水処理される。この脱硫排水30には、石膏の他、水銀等の重金属やCl-、Br-、I-、F-等のハロゲンイオンが含まれている。
【0028】
脱水機32は、脱硫排水30中の石膏31を含む固体分と液体分の脱水濾液33とを分離するものである。脱水機32としては、例えばベルトフィルタ、遠心分離機、デカンタ型遠心沈降機等が用いられる。脱硫装置15から排出された脱硫排水30は、脱水機32により石膏31が分離される。その際、脱硫排水30中の塩化水銀は石膏31に吸着された状態で石膏31とともに液体と分離される。分離した石膏31は、システム外部(以下、「系外」という)に排出される。
一方、分離液である脱水濾液33は脱水ラインL21を介して噴霧乾燥装置50に送られる。なお、脱水濾液33は一時的に排水タンク(図示せず)に貯留するようにしてもよい。
【0029】
噴霧乾燥装置50は、ボイラ11からの排ガス18の主ラインである排ガス供給ラインL2から分岐した排ガス導入ラインL11を介して排ガス18の一部が導入されるガス導入手段と、脱水濾液33を散布又は噴霧する噴霧手段とを具備している。そして、導入される排ガス18の熱により散布又は噴霧された脱水濾液33を蒸発乾燥させている。なお、符号L12は噴霧乾燥装置50で乾燥に寄与した排ガス18をガス供給ラインL3に送給する排ガス送給ラインである。
【0030】
本発明では、脱硫排水30から石膏31を除去した脱水濾液33を噴霧乾燥しているので、噴霧手段での目詰まりを防止することができる。
すなわち、脱硫排水そのものを噴霧するのではないので、脱硫排水が蒸発するのに伴い発生する乾燥粒子の量を大幅に低減させることができる。その結果、乾燥粒子の付着に起因する目詰まりを低減させることができる。また、脱硫排水30を脱水処理することにより、石膏31とともに塩化水銀も分離・除去されるため、排水噴霧時に排ガス18中の水銀濃度が増加するのを防止することができる。
【0031】
また、本実施例では、エアヒータ13へ流入する排ガス18の一部を排ガス供給ラインL2から排ガス導入ラインL11を介して分岐しているので、排ガスの温度が高く(350〜400℃)、脱水濾液33の噴霧乾燥を効率よく行うことができる。
【0032】
図2は、本実施例に係る脱硫排液からの脱水濾液の噴霧乾燥装置の概略図である。
図2に示すように、本実施例の噴霧乾燥装置50Aは、噴霧乾燥装置本体の頂(蓋)部51a近傍の側壁51bに設けられ、脱水濾液33の噴霧液33aを乾燥する排ガス18を導入するガス導入口52と、噴霧乾燥装置本体内に設けられ、導入された排ガス18を減速すると共に、排ガス流れを層流Xに変更する整流板53と、層流Xとなった排ガス18中に、脱硫排水30からの脱水濾液33を噴霧する噴霧ノズル54と、噴霧乾燥装置本体の底部を排ガス18の主煙道であるガス供給ラインL3と連結するガス排出口55と、を具備するものである。
【0033】
また、本実施例では、噴霧乾燥装置本体51内の排ガス18の導入領域及び乾燥に寄与した排ガス18の排出領域の各々に、排ガス18中の固形分による内壁面の磨耗を防ぐ第1の保護板61及び第2の保護板62を壁に沿って設けるようにしている。
これは、導入される排ガス18は、その流速が例えば10〜18m/s程度であり、この排ガス18が装置本体の接線方向から導入されるので、第1の保護板61を設置することで、その内壁面51dの磨耗を防止するようにしている。
【0034】
図3−1は、図2のA−A断面図であり、噴霧乾燥装置の頂部側に設けた第1の保護板61の設置状態を示す概略図である。図3−2は、そのC部拡大図である。
図4−1は、図2のB−B断面図であり、噴霧乾燥装置の底部側に設けた第2の保護板62の設置状態を示す概略図である。図4−2は、そのD部拡大図である。
図3−1及び図3−2に示すように、噴霧乾燥装置本体内の内壁面51dに、例えばレール状の挿入治具63が設けられている。そして、第1の保護板61は、挿入治具63に対して、鉛直軸方向に引き抜きが容易とされ、必要に応じて交換可能としている。
【0035】
これは、ボイラ11からの排ガス18中には、硬度が高い灰等の煤塵が多く含まれている。そして、排ガス18がガス導入口52から流入する際に発生する旋回流により衝突の際に発生する内壁面51dに対しての硬度が硬い灰等による磨耗から保護する必要があるからである。このために、挿入自在な第1の保護板61を内壁面51dの周囲に沿って設けるようにしている。
【0036】
なお、排ガス18の導入は、排ガスのガス供給ラインL2と排ガス導入ラインL11との圧力損失の相違により、排ガス18を噴霧乾燥装置50A内へ導入するようにしたり、必要に応じて誘引ファン等を用いて排ガス18を導入したりしている。
【0037】
また、図3−2に示すように、第1の保護板61の表面には、さらに凹凸面61aを形成し、この凹凸面61aにより排ガス18の流れを減速させるようにしている。
本実施例では、第1の保護板61に減速手段である凹凸面61aを形成しているが、本発明はこれに限定されず、別途独立してガス減速手段を設けるようにしてもよい。
【0038】
この第1の保護板61に衝突した排ガス18は、さらにその渦流れを弱めるために、整流板53が設けられている。
本実施例に係る整流板53は、噴霧ノズル54に供給する脱水濾液33の供給管54aを中心とし、そこから放射状に図示しない支持手段により設けられている。そしてこの整流板53により、排ガス18を渦流(旋回流)から層流Xの下降流へ変更するようにしている。
なお、整流板53は内壁面51d側にもその鉛直軸方向に設けるようにしてもよい。
【0039】
この層流Xとなった排ガス18中に、脱水濾液33を噴霧液33aとして噴霧ノズル54から噴出するようにしている。
ここで、噴霧ノズル54は、脱水濾液33を所定の液滴径となるように噴霧するものであれば、その形式は限定されるものではない。例えば2流体ノズルや、ロータリーアトマイザ等の噴霧手段を用いることができる。なお、2流体ノズルは比較的少量の脱水濾液33を噴霧するのに適しており、ロータリーアトマイザは、比較的多量の脱水濾液33を噴霧するのに適している。
また、ノズルの数も1基ではなく、その処理量に応じて複数基設けるようにしてもよい。
【0040】
本実施例では、噴霧乾燥装置50Aの内壁周面を洗浄する洗浄手段を有している。
この洗浄手段は、洗浄液72を内壁面全域に亙って噴射し、濡れ壁72aを形成する洗浄ノズル71と、濡れ壁72aの落下液を回収する回収樋73とを有している。
この濡れ壁72aは、内壁面51dの全域に亙って形成されており、排ガス18及び脱水濾液33中から析出する付着物の発生を防止するようにしている。
この洗浄手段は必要に応じて設置すればよく、付着物の発生が少ない場合には洗浄手段を省略するようにしてもよい。
【0041】
なお、噴霧ノズル54から噴霧される噴霧液33aの乾燥が良好に行われるように、噴霧乾燥装置50Aの塔内の噴霧乾燥領域は、一般の水に較べて沸点が高い脱硫濾液であるので、その濾液の蒸発速度に応じてその長さを変化させ、噴霧液33aの対流時間を長くするようにしている。
【0042】
噴霧乾燥に寄与した排ガス18は、噴霧乾燥装置50Aの底部近傍側壁51cに設けられたガス排出口55から排出される。
この際、鉛直軸方向の層流Xから渦流となる際の内壁面51dの磨耗を防ぐために、図4−1に示すように、第2の保護板62が壁に沿って複数設けられている。なお、図4−2に示すように、第2の保護板62の表面は、第1の保護板61の表面とは異なり、平滑面としている。
なお、第2の保護板62については、排ガス中に含まれる煤塵量によっては省略することも可能である。
【0043】
このようにして脱水濾液33は噴霧ノズル54から噴霧される際、導入された排ガス18と接触して噴霧乾燥されることとなるが、脱水濾液33には、様々な塩類が含まれているので、その噴霧乾燥固形物である灰56を噴霧乾燥装置本体51の底部に設けた排出ホッパ57から排出するようにしている。
なお、排出ホッパ57の内壁面においても、灰56との磨耗による腐食を防止するために、第3の保護板64を設けるようにしている。
なお、排出ホッパ57内に設置する第3の保護板64は容易には交換ができない場合もあるので、灰の磨耗や析出塩等の腐食環境において耐久性がある例えばセラミックタイル等を貼り付けるようにしてもよい。
【0044】
本実施例によれば、噴霧乾燥装置50A内において、排ガス18を整流板53により層流Xとし、その層流Xとなった排ガス18中に、脱硫排水30からの脱水濾液33を噴霧ノズル54から噴霧することで、脱水濾液33の噴霧乾燥が良好となる。この際、導入及び排出する際の内壁面51dと衝突する排ガス18による磨耗を第1及び第2の保護板61、62で保護することとしているので、噴霧乾燥装置の耐久性が向上する。
【0045】
さらに、噴霧乾燥装置50Aの内部を洗浄する洗浄手段を有し、濡れ壁72aによる洗浄とすることにより、排ガス18中の高濃度の灰と噴霧乾燥後の多量の析出塩を洗浄し、壁面内部にスケールの発生を防止することができるので、噴霧乾燥装置の耐久性が向上する。
【実施例2】
【0046】
図5は、実施例2に係る脱硫排液からの脱水濾液の噴霧乾燥装置の概略図である。なお、実施例1の噴霧乾燥装置50Aと同一部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図5に示すように、本実施例の噴霧乾燥装置50Bは、噴霧乾燥装置本体の底部に、灰56を払い出す灰払出し手段80を設けている。
灰払出し手段80は、排出ホッパ57に連結して設けられおり、内部に開口81aを有する固定盤81と、モータ83の駆動により回転する無端ベルト84の回転により回転する回転盤82とが設けられている。回転盤82には開口82aが設けられている。
【0047】
そして、灰56が所定量となった際には、回転盤82をモータ83の駆動により無端ベルト84により回転させ、開口81a、82aを一致させて、下方の排出通路86に灰56を落下させている。排出通路86の一端部には、コンプレッサー85が設置されており、このコンプレッサー85により灰56を圧送し、排出通路86の他端に設けられた灰収集設備87に送られるようにしている。
灰払い出し手段80が介装される連通通路88の内面には、第3の保護板64が設けられており、連通通路88の内面を保護するようにしている。
【0048】
また、排出ホッパ57の周囲に振動装置89を設けており、排出ホッパ57を振動させることで、灰や析出塩を詰まらせないようにしている。
さらに、排出ホッパ57、排出通路86及び連通通路88には、保温手段(例えば蒸気トレース等)を設け、灰や析出塩を詰まらせないようにしている。
【実施例3】
【0049】
図6は、実施例3に係る脱硫排液からの脱水濾液の噴霧乾燥装置の概略図である。なお、実施例1の噴霧乾燥装置50Aと同一部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図6に示すように、本実施例の噴霧乾燥装置50Cは、洗浄手段の洗浄液72の回収及び再利用を図る洗浄液貯留槽74を設けている。
噴霧乾燥装置本体の内面に形成された濡れ壁72aは、析出する付着物を洗い流しており、この洗浄液72は、回収樋73で回収され、回収ラインL31により、洗浄液貯留槽74に回収され、溜められ、循環ポンプ75により、洗浄液供給ラインL32を介して再度洗浄ノズル71に洗浄液72を供給している。
【0050】
また、長期間に亙って洗浄を続けていくと、洗浄液72の濃度が上昇するので、適宜希釈水76を供給して希釈するようにしている。また、濃度が所定以上に上昇した場合には、洗浄液72の一部を洗浄液貯留槽74から抜き出し、抜き出した分だけ希釈水76で薄めて、再度洗浄を行うようにしている。
【符号の説明】
【0051】
10 排ガス処理システム
11 ボイラ
12 脱硝装置
13 エアヒータ
14 集塵機
15 脱硫装置
16 集塵灰
18 排ガス
30 脱硫排水
32 脱水機
33 脱水濾液
50A〜50C 噴霧乾燥装置
52 ガス導入口
53 整流板
54 噴霧ノズル
55 ガス排出口
56 灰
57 排出ホッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴霧乾燥装置本体の頂部近傍側壁に設けられ、噴霧液を乾燥する排ガスを導入するガス導入口と、
前記噴霧乾燥装置本体内に設けられ、導入された排ガスを減速すると共に、排ガス流れを層流に変更する整流板と、
層流となった排ガス中に、脱硫排水からの脱水濾液を噴霧する噴霧ノズルと、
前記噴霧乾燥装置本体の底部近傍側壁に設けられ、脱水濾液の乾燥に寄与した排ガスを排出するガス排出口と、
前記噴霧乾燥装置本体の底部に設けられ、噴霧乾燥固形物を排出する固形物排出手段と、を具備することを特徴とする脱硫排水からの脱水濾液の噴霧乾燥装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記噴霧乾燥装置本体内の排ガス導入領域近傍に設けられ、排ガス中の固形分による内壁面の磨耗を防ぐ保護板を有することを特徴とする脱硫排水からの脱水濾液の噴霧乾燥装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記噴霧乾燥装置の内壁周面を洗浄する洗浄手段を有することを特徴とする脱硫排水からの脱水濾液の噴霧乾燥装置。
【請求項4】
燃料を燃焼させるボイラと、
前記ボイラからの排ガスの熱を回収するエアヒータと、
熱回収後の排ガス中の煤塵を除去する集塵機と、
除塵後の排ガス中に含まれる硫黄酸化物を吸収液で除去する脱硫装置と、
前記脱硫装置から排出される脱硫排水から石膏を除去する脱水機と、
前記脱水機からの脱水濾液を噴霧する噴霧手段を備えた請求項1乃至3のいずれか一つの噴霧乾燥装置と、
前記噴霧乾燥装置に排ガスの一部を導入する排ガス導入ラインとを具備することを特徴とする排ガス処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−250140(P2012−250140A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122501(P2011−122501)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】