説明

脱穀機の揺動選別装置

【課題】移送棚上に落下する脱穀処理物をチャフシーブに受け渡すまでに粗選別することによって、チャフシーブによる選別負荷を軽減し、選別性能の向上を図る。
【解決手段】扱室(3)の受網(5)から漏下する処理物を受けて後方に揺動移送しながら後続するチャフシーブ(10)の始端部に受け渡す移送棚(9)を備え、この移送棚(9)の終端部には、風選経路(A)内で左右方向に所定間隔置きに多数配列した櫛歯状の篩突起(15)を設ける。また、篩突起(15)は、基端側が幅広で先端側ほど幅狭の形状に形成する。また、各篩突起(15)は、左右方向に交互に高低差を設けて配列する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、脱穀機の揺動選別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に示すように、扱室の受網から漏下する処理物を受け入れて揺動移送する移送棚は、一般的にはこの移送棚の移送方向下手側に連なる状態で配置されたチャフシーブの始端に受け渡す位置まで無孔のラック板によって構成されたもので、単なる送り機能しか果たさないものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−117038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明による課題は、移送棚上に落下する脱穀処理物をチャフシーブに受け渡すまでに粗選別することによって、チャフシーブによる選別負荷を軽減し、選別性能の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の発明は、扱室(3)の受網(5)から漏下する処理物を受けて後方に揺動移送しながら後続するチャフシーブ(10)の始端部に受け渡す移送棚(9)を備え、この移送棚(9)の終端部には、風選経路(A)内で左右方向に所定間隔置きに多数配列した櫛歯状の篩突起(15)を設けてあることを特徴とする脱穀機の揺動選別装置とする。
【0006】
扱室(3)の受網(5)から漏下する処理物は、移送棚(9)上に受けられて後方に揺動移送され、チャフシーブ(10)の始端部に受け渡される。
移送棚(9)の終端部まで送られてきた処理物は、櫛歯状の篩突起(15)の作用を受けて篩い選別され、回収すべき一番穀物などはここを通過する選別風によって風選されながら下方のグレンシーブ上に落下し、左右の篩突起(15)間を抜けきらない藁屑などはチャフシーブ(10)上に受けられて扱室(3)終端の排塵口から落下する排塵物と一緒に篩い選別される。
【0007】
要するに、扱室(3)の受網(5)からの処理物が移送棚(9)からチャフシーブ(10)に受け渡される前に粗選別されるので、チャフシーブ(10)による選別負担が軽減され、篩い選別が効果的に行え、選別性能が向上する。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記篩突起(15)は、基端側が幅広で先端側ほど幅狭の形状に形成してあることを特徴とする請求項1記載の脱穀機の揺動選別装置とする。
移送棚(9)の終端側で篩い選別される処理物(被選別物)は、篩突起(15)の上手側では少量落下し、下手側では多く落下するように下手側に行くほど徐々に落下することになり、篩い選別並びに風選別効果をより高めることができる。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記各篩突起(15)は、左右方向に交互に高低差を設けて配列してあることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の脱穀機の揺動選別装置とする。
各篩突起(15)の高低差により、処理物をほぐす機能が働き、篩い選別作用がより効果的に行える。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、扱室(3)の受網(5)から漏下する処理物を移送棚(9)からチャフシーブ(10)上に受け渡す前に粗選別を行うので、チャフシーブ(10)による選別負担が軽減され、篩い選別を効果的に行うことができ、選別性能が向上する。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果を奏するものでありながら、篩突起(15)の上手側から下手側に行くほど処理物が徐々に篩い落とされるので、篩い選別効果並びに風選別効果をより高めることができる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、上記請求項1又は請求項2記載の発明の効果を奏するものでありながら、各篩突起(15)の高低差により、処理物をバラバラに解きほぐし、篩い選別効果をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】脱穀機の要部の側断面図
【図2】移送棚の要部の斜視図
【図3】同上要部の斜視図
【図4】(イ)及び(ロ)は移送棚要部の側面図
【図5】移送棚要部の斜視図
【図6】移送棚要部の斜視図
【図7】同上別例要部の斜視図
【図8】(a),(b)は移送棚の別例要部の斜視図
【図9】脱穀機の平面図
【図10】同上要部の一部破断せる側面図
【図11】図10のS1−S1線断面
【図12】脱穀機の要部の側断面図
【図13】同上要部の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1は、脱穀機要部の側断面図を示すものであり、次のような構成になっている。
すなわち、脱穀機1は、脱穀フィードチエン2により株元を挟持しながら搬送される穀稈の穂先部を扱室3内で駆動回転する扱胴4により脱穀処理するよう構成している。扱室3の下半周部には受網5が張設され、扱胴4の上部には開閉自在な扱胴カバー6が設けられ、扱室3の終端には藁屑や穂切れなどの排塵処理物を排出する排塵口7がもうけられている。
【0015】
扱室下方の揺動選別装置(揺動選別棚)8は、脱穀処理後の処理物を受け入れて揺動移送しながら篩い選別する構成であり、選別方向上手側から移送棚(グレンパン)9、チャフシ−ブ10、ストロ−ラック11の順に配置し、且つ、前記チャフシ−ブ10の下方にグレンシ−ブ12等を配置して設けた構成としている。グレンシーブ12は網体や移送方向に複数設けた板体により構成する。
【0016】
また、揺動選別棚8の下方には選別方向の上手側から順に、選別ファン17、主唐箕18、一番移送螺旋19、二番移送螺旋20及びその上方に排塵フアン21を設けて排塵選別室を構成している。
【0017】
前記移送棚9は、扱室3の受網5から漏下する処理物を受け入れて後方に揺動移送しながら前記チャフシーブ10の始端部に受け渡すようになっており、階段状に成型された送りラック板13によって構成されている。送りラック板13の終端部には、前記選別ファン17に連通する風選経路(A)内で板体14によって左右所定間隔置きに配列形成した櫛歯状の篩突起15,15…が突設されている。
【0018】
篩突起15は、図3に示すように、基端側を幅広く(L1)し、先端側ほど幅狭く(L2)なるよう形成され、しかも、図4(イ)に示すように、後方上向きに傾斜し、先端側がチャフシーブ10の始端上に臨むように配置されている。篩突起15を有する板体14は、送りラック板13と一体的に成型する構成であってもよいが、取り付け式とした場合には、例えば、稲、麦に対応した形状の異なるものと交換することができて便利である。
【0019】
また、前記篩突起15は、図4(ロ)に示すように、左右交互に高低差15a,15bを設けた構成とすることで、藁屑などの処理物をバラバラにときほぐすことができ、藁屑と穀粒との分離が促進される。
【0020】
図5に示すように、篩突起15の上面にラック状の送り突起15Sを設けておくと、藁屑の送り作用が確実となり、分離効果も高まる。
図6に示す実施例では、移送棚9の終端部に上縁が階段状に形成された数枚のラックプレート16を左右所定間隔おきに並列させて設けた構成としている。この構成によると、ラックプレート16の上縁のラック部で処理物を引っ掛けて後方へ揺動移送しながら篩い選別すると同時に、各プレート間に分離された穀物を篩い落し、籾と藁屑の分離を促進することができる。
【0021】
また、図7に示すように、長さの異なる長短ラックプレート16a,16bを長短交互に並列させて設けることにより、移送方向上手側ではプレート間の隙間が小さく、細かい藁屑と籾の選別を促進し、移送方向下手側では、長いプレート間の隙間が大きく、比較的大きな藁屑と多くの籾を篩い落すことができる。
【0022】
図8に示す実施例では、移送棚9の終端部に設けられた篩突起15の上面から後方に向けて別のラックプレート16を設けたり(図8(a)参照)、篩突起15,15間の凹部から後方に向けて別のラックプレート16を設けたりする(図8(b)参照)ことによって藁屑のほぐし、送り効果を高め、藁屑と籾の分離を促進することができる。
【0023】
次に、図9及び図10に示す別の実施例について説明する。
扱室3のフィードチエン2側とは反対側一側部で、前後方向で扱室3終端部の排塵口7に相当する部位には連通口24を配置し、扱室3からの処理物を受け入れて処理する排塵処理胴25を軸架した排塵処理室26が並設されている。また、排塵処理胴25の前方側には同一軸芯上において二番処理胴27が二番処理室28内に軸架されている。
【0024】
二番移送螺旋20から引き継いで揚上搬送する二番揚穀螺旋30と一番移送螺旋9から引き継いで揚上搬送する一番揚穀螺旋29との間には、二番揚穀螺旋30からの二番処理物の一部を連通路34及び連通樋35を介して引き継いで揚上搬送する中継揚穀螺旋32を立設すると共に、二番揚穀螺旋30は、二番処理物を排塵処理胴25を有する排塵処理室26内へ還元するようにし、中継揚穀螺旋32は、二番揚穀螺旋30からの中継ぎ処理物を二番処理胴27を有する二番処理室28内へ還元するように構成している。
【0025】
従来は、二番処理物を全て二番処理室28に還元する構成であるため、二番処理室28からの処理物が揺動選別棚8に全て落下することで、揺動選別棚8の処理能力を超える被処理物が還元され、選別性能の低下や選別負荷の増大の原因になっている。二番処理物を排塵処理胴側と二番処理胴側へのそれぞれに揚上搬送することで、揺動選別棚8にかかる負荷が大幅に減少し、被処理物を揺動選別棚8全体に被処理物を配分することができるので、選別効率が向上する。
【0026】
二番揚穀螺旋30の連通路34に対応する部位には掻き出し用の羽根板36を設けている。これによると、二番揚穀螺旋30からの処理物を中継揚穀螺旋32の筒33内へスムーズに送り込むことができる。
【0027】
二番揚穀筒31の連通路34に対応する部位には半円筒状の格子網37を設けることで、長藁や枝梗付着粒等は排塵処理胴側に送られることになり、一番選別が向上する。
また、二番揚穀螺旋30の連通路34に対応する外周部には、前記格子網37に密着する弾性体38を設けることによって二番処理物を格子網から確実に送り込むことができる。
【0028】
図12、図13に示す実施例では、二番揚穀螺旋30から中継揚穀螺旋32への連通路34部には、開閉作動が可能なシャッター39を設け、揺動選別棚8上に設けられた処理物の層厚を検出する層厚センサ40の層厚検出結果に基づき、シャッター39を電動シリンダ41を介して自動的に開閉するよう連動構成している。例えば、揺動選別棚8上の処理物の層厚が薄い場合には、二番処理胴側への二番処理物を多く還元し、また、揺動選別棚8上での処理物の層厚が厚い場合は排塵処理胴側へ多く還元することで、揺動選別棚8上での層厚を略一定にすることができる。
【0029】
なお、前記中継揚穀螺旋32への動力伝達構成は、二番揚穀螺旋30から駆動チエン42を介して回転駆動する構成としている。
【符号の説明】
【0030】
3 扱室
5 受網
9 移送棚(グレンパン)
10 チャフシーブ
15 篩突起
A 風選経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室(3)の受網(5)から漏下する処理物を受けて後方に揺動移送しながら後続するチャフシーブ(10)の始端部に受け渡す移送棚(9)を備え、この移送棚(9)の終端部には、風選経路(A)内で左右方向に所定間隔置きに多数配列した櫛歯状の篩突起(15)を設けてあることを特徴とする脱穀機の揺動選別装置。
【請求項2】
前記篩突起(15)は、基端側が幅広で先端側ほど幅狭の形状に形成してあることを特徴とする請求項1記載の脱穀機の揺動選別装置。
【請求項3】
前記各篩突起(15)は、左右方向に交互に高低差を設けて配列してあることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の脱穀機の揺動選別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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