説明

脱穀機

【課題】 風力排塵経路の排塵制御体の適切な自動開閉を小規模な操作機構で行わせることができ、しかもその操作機構の作動不良の発生を回避しやすくする。
【解決手段】 選別部からの塵埃を機体外に排出するファン付き排塵経路Aと、選別部からの塵埃を選別風によって機体外に排出する風力排塵経路Bと、風力排塵経路Bを開閉する排塵制御体60とを備えている。排ワラ搬送装置20の搬送ガイド杆22からファン付き排塵経路Aの上方及び脱穀フィードチェーン側とは反対側での外側を通り、排塵制御体60の脱穀フィードチェーン側とは反対側に至って排塵制御体60に連結した連動機構70を設けてある。搬送ガイド杆22が無端回動チェーン21に対して設定間隔以上離間するよう移動するに伴って排塵制御体60が開き姿勢に切り換え操作され、搬送ガイド杆22が無端回動チェーン21に対して設定間隔未満に位置するよう移動するに伴って排塵制御体60が閉じ姿勢に切換え操作されるよう搬送ガイド杆22と排塵制御体60とを連動させてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扱室からの脱穀排ワラを無端回動チェーンと搬送ガイド杆とによって機体後方向きに挟持搬送する排ワラ搬送装置と、選別部からの塵埃を排塵ファンによって機体外に排出するよう前記排ワラ搬送装置の下方に設けたファン付き排塵経路と、前記選別部からの塵埃を選別風によって機体外に排出するよう前記ファン付き排塵経路の下方に設けた風力排塵経路と、前記風力排塵経路を開閉する排塵制御体とを備えた脱穀機に関する。
【背景技術】
【0002】
脱穀機において、従来、たとえば特許文献1に示されたものがあった。
特許文献1に示された脱穀機は、選別装置を内装した風選部と、選別装置が備えるチャフシーブから排出すべきワラ屑が選別風と共に機外に排出される排塵口と、この排塵口にこの部分を開閉するよう設けた排塵制御板とを備えている。
【0003】
排塵制御板は、連動機構とモータと制御部とを介して動作検出機構(検出スイッチ)に連係されている。動作検出機構は、刈取り部が所定の非作業位置まで上昇したことを検出する。パワステレバーによる刈取り部上昇操作が行われて動作検出機構が検出状態になると、動作検出機構の検出結果に基づき、排塵制御板が自動的に排塵口を閉じる方向に揺動作動する。刈取り部が所定の刈取作業位置まで下降されると、排塵制御板は自動的に排塵口を開く方向に揺動作動する。
【0004】
【特許文献1】特開平4−84825号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した排塵制御体を備えた脱穀機では、選別部の処理物量が多いとき、選別部に発生する排出用の処理物量が多くなることから、排出用の処理物が迅速に排出されて一番処理物や二番処理物の塵埃混入が発生しにくくなるよう排塵制御体を開き姿勢に切換え操作される。選別部の処理物量が少ないとき、処理物が選別風によって飛ばされやすくなることから、穀粒が選別風と共に排出される損失を抑制や回避できるよう排塵制御体を閉じ姿勢に切換え操作される。
【0006】
上記した従来の技術を採用すると、排塵制御体の開閉切換えを自動的に行わせることができる。しかし、排塵制御体を開閉操作するアクチュエータ、及びアクチュエータを操作する制御手段と検出手段とを備えねばならず、操作機構が大掛かりになりがちであった。
【0007】
本発明の目的は、排塵制御体の適切な自動開閉を小規模な操作機構で行わせることができ、しかもその操作機構の作動不良の発生を回避しやすくしながら行わせることができる脱穀機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本第1発明は、扱室からの脱穀排ワラを無端回動チェーンと搬送ガイド杆とによって機体後方向きに挟持搬送する排ワラ搬送装置と、選別部からの塵埃を排塵ファンによって機体外に排出するよう前記排ワラ搬送装置の下方に設けたファン付き排塵経路と、前記選別部からの塵埃を選別風によって機体外に排出するよう前記ファン付き排塵経路の下方に設けた風力排塵経路と、前記風力排塵経路を開閉する排塵制御体とを備えた脱穀機において、
前記搬送ガイド杆から前記ファン付き排塵経路の上方及び脱穀フィードチェーン側とは反対側での外側を通り、前記排塵制御体の脱穀フィードチェーン側とは反対側に至って前記排塵制御体に連結した連動機構を設け、前記搬送ガイド杆が前記無端回動チェーンに対して設定間隔以上離間するよう移動するに伴って前記排塵制御体が開き姿勢に切り換え操作され、前記搬送ガイド杆が前記無端回動チェーンに対して前記設定間隔未満に位置するよう移動するに伴って前記排塵制御体が閉じ姿勢に切換え操作されるよう前記搬送ガイド杆と前記排塵制御体とを連動させてある。
【0009】
本第1発明の構成によると、選別部の処理物量が多くなると、排塵制御体が開き姿勢に自動的に切換え操作され、選別部の処理物量が少なくなると、排塵制御体が閉じ姿勢に自動的に切換え操作される。
【0010】
つまり、扱室に供給される穀稈量が多くなると、扱室から選別部に選別処理させるべく供給される処理物量が多くなる。このとき、扱室から排出される脱穀排ワラの量が多くなる。すると、排ワラ搬送装置によって搬送される脱穀排ワラの量が多くなり、搬送ガイド杆が無端回動チェーンから離れる側に移動する。
扱室に供給される穀稈量が少なくなると、扱室から選別部に選別処理させるべく供給される処理物量が少なくなる。このとき、扱室から排出される脱穀排ワラの量が少なくなる。すると、排ワラ搬送装置によって搬送される脱穀排ワラの量が少なくなり、搬送ガイド杆が無端回動チェーンに近づく側に移動する。
【0011】
これにより、排ワラ搬送装置における脱穀排ワラの量変化に伴う搬送ガイド杆と無端回動チェーンとの間隔変化を基に前記設定間隔を適切に設定すれば、選別部の処理物量が多くなった場合、搬送ガイド杆の無端回動チェーンに対する離間と、連動機構による搬送ガイド杆と排塵制御体との連動とのために、排塵制御体が開き姿勢に自動的に切り換わる。選別部の処理物量が少なくなった場合、搬送ガイド杆の無端回動チェーンに対する接近と、連動機構による搬送ガイド杆と排塵制御体との連動とのために、排塵制御体が閉じ姿勢に自動的に切り換わる。
【0012】
本第1発明の構成によると、搬送ガイド杆からファン付き排塵経路の上方及び脱穀フィードチェーン側とは反対側での外側を通り、排塵制御体の脱穀フィードチェーン側とは反対側に至って排塵制御体に連結した連動機構を採用したものだから、排塵制御体を開閉操作する操作機構としての連動機構は、ファン付き排塵経路を迂回した状態になり、ファン付き排塵経路によって排出される塵埃が連動機構に付着しにくい。
【0013】
これにより、選別部の処理物量変化にかかわらず、排塵制御体が選別部の処理物量に適した開き姿勢あるいは閉じ姿勢に自動的に切換え操作され、穀粒の塵埃混入や風力排塵経路による穀粒排出を抑制しながら脱穀作業をすることができるものでありながら、前記連動機構を備えるだけの小規模な構造で済んで安価に得ることができる。しかも、連動機構の塵埃付着による作動不良を回避しやすく、この面からも排塵制御体を適切に開閉切換えさせることができる。
【0014】
本第2発明では、前記搬送ガイド杆の前記無端回動チェーンに対する移動によって回転操作されるよう前記搬送ガイド杆に連動された状態で前記ファン付き排塵経路の外部に機体横向きに設けた回転連動軸を備え、前記回転連動軸の前記排ワラ搬送装置に対して脱穀フィードチェーン側とは反対側に位置する端部と、前記排塵制御体の回転支軸の前記風力排塵経路に対して脱穀フィードチェーン側とは反対側で、かつ前記風力排塵経路の外部に位置する端部とを連動させたリンク機構を備えて、前記連動機構を構成してある。
【0015】
本第2発明の構成によると、回転連動軸とリンク機構とがファン付き排塵経路の外周に沿って連動機構がファン付き排塵経路を確実に迂回するようにしながら、搬送ガイド体の作動を排塵制御体にスムーズに伝達させることができる。
【0016】
従って、連動機構の塵埃付着による作動不良を良好に回避することができながら、排塵制御体の開閉切換えをスムーズに行わせることができる。
【0017】
本第3発明は、本第1又は第2発明の構成において、前記連動機構に、前記搬送ガイド杆と前記排塵制御体との一方に連動されたカム体と、前記搬送ガイド杆と前記排塵制御体との他方に連動された伝動部材の当接部との当接によって前記搬送ガイド杆と前記排塵制御体とを連動させるカム式連動部を設けてある。
【0018】
本第3発明の構成によると、搬送ガイド杆の無端回動チェーンに対する離間移動によって排塵制御体が開き姿勢に切り換わった後において、脱穀排ワラ量がさらに増大し、搬送ガイド杆の無端回動チェーンに対する離間移動がさらに発生することがあると、搬送ガイド杆の移動がカム体と当接部との摺接によって吸収され、搬送ガイド杆の作動が排塵制御体に伝達されないようにできる。
【0019】
従って、脱穀排ワラ量の異常な増大があっても、開き姿勢に切り換わった後の排塵制御体に無理な操作力が掛からず、変形や破損の発生を回避できる。
【0020】
本第4発明は、本第1〜第3発明のいずれか一つの構成において、前記搬送ガイド杆が前記無端回動チェーンに対して前記設定間隔未満に位置するよう移動した際、前記排塵制御体が前記搬送ガイド杆の前記設定間隔未満の位置への移動から設定時間を経過した後に閉じ姿勢に切り換わるよう前記排塵制御体の閉じ作動を遅延させる遅延手段を前記連動機構に備えてある。
【0021】
本第4発明の構成によると、脱穀排ワラ量が減少しても、塵埃制御体は、直ちに閉じ姿勢に切り換わらず、選別部の処理物量が実際に減少した後に閉じ姿勢に切り換わるようにできる。
【0022】
つまり、排ワラ搬送装置における排ワラが減少しても、選別部にはその減少前に供給された処理物がまだ残っており、選別部における処理物減少は、排ワラ搬送装置における排ワラ減少の発生から遅れて発生する。これにより、その遅れ時間を基に前記設定時間を適切に設定すれば、搬送ガイド杆が無端回動チェーンに対して設定間隔未満に位置するよう移動しても、遅延手段の作用により、排塵制御体が直ちに閉じ姿勢に切換え操作されず、選別部の処理物が実際に減少してから排塵制御体が閉じ姿勢に切換え操作される。
【0023】
従って、排ワラ搬送装置における脱穀排ワラの減少が発生しても、選別部の処理物量が実際に減少するまでは、排塵制御体が開き姿勢に維持され、選別部の処理物量が実際に減少した後に、排塵制御体が閉じ姿勢に切換え操作され、扱室に供給される穀稈量の変化にかかわらず、穀粒の塵埃混入と風力排塵経路による穀粒排出とを精度よく抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例に係る脱穀機の縦断側面図である。この図に示すように、本実施例に係る脱穀機は、機体1の外部に設けた脱穀フィードチェーン11、及び機体内の前部に設けた扱室12を有した脱穀部10と、前記扱室12の後方に設けた排ワラ搬送装置20と、前記扱室12の下方に設けた揺動選別装置31を有した選別部30と、前記排ワラ搬送装置20の下方に設けた排塵ファン41を有した排塵部40と、前記選別部30の底部に設けた一番スクリューコンベヤ2及び二番スクリューコンベヤ3と、前記機体1の後部に連設された排ワラ処理装置50とを備えている。
【0025】
この脱穀機は、コンバインに装備され、コンバインの刈取り部(図示せず)によって刈取り処理された刈取り穀稈の脱穀処理と、脱穀粒の選別処理と、脱穀排ワラの処理とを行う。
【0026】
すなわち、前記脱穀部10は、前記脱穀フィードチェーン11と前記扱室12とを備える他、扱室12の下部に設けた受網13とを備えて構成してあり、刈取り穀稈の脱穀処理を行う。
【0027】
つまり、脱穀フィードチェーン11は、刈取り穀稈の株元側を機体後方側に挟持搬送しながら刈取り穀稈の穂先側を扱室12に供給する。扱室12は、扱室内に機体前後向きの軸芯まわりに回転駆動自在に設けられた扱胴14を備えており、供給された刈取り穀稈の穂先側を扱胴14によって扱き処理する。脱穀フィードチェーン11は、脱穀排ワラを扱室12の後端部に位置する送塵口15から扱室12の後方に搬出する。
【0028】
前記排ワラ搬送装置20は、脱穀フィードチェーン11の搬送終端部の横側近くに搬送始端側が位置し、搬送終端側が前記排ワラ処理装置50の排ワラ投入口51上方に位置する配置で機体内の後部に設けた無端回動チェーン21と、この無端回動チェーン21の搬送側の下方に無端回動チェーン21に沿わせて設けた搬送ガイド杆22とを備えて構成してある。
【0029】
図1,3に示すように、搬送ガイド杆22の搬送始端側と搬送終端側とは、搬送ガイド杆22に上端部が連結された機体上下向きの連結杆23を介して機体側の支持部材24に支持されている。搬送始端側の前記支持部材24は、前記脱穀フィードチェーン11を走行案内するチェーンガイドに固定されている。搬送終端側の前記支持部材24は、機体1のフレーム4に固定されている。搬送始端側及び搬送終端側の前記支持部材24は、前記連結杆23を上下摺動自在に支持している。前記各連結杆23は、搬送ガイド杆22と前記支持部材24との間に配置して連結杆23に装着されたスプリング25によって上昇付勢されている。これにより、搬送ガイド杆22は、前記スプリング25によって無端回動チェーン21に接近するよう付勢されている。
【0030】
排ワラ搬送装置20は、扱室12から排出された脱穀排ワラの株元側を脱穀フィードチェーン11から無端回動チェーン21と搬送ガイド杆22との間に受け継ぎ、このように受け継いだ脱穀排ワラを、これの穂先側を前記排ワラ搬送装置20よりも穂先側に位置している支持レール(図示せず)に載置した横架姿勢で、無端回動チェーン21と搬送ガイド杆22とによって機体後方向きに挟持搬送し、排ワラ処理装置50の排ワラ投入口51の上に落下させる。無端回動チェーン21は、搬送終端側ほど脱穀フィードチェーン11からの距離がより大になる配置になっており、排ワラ搬送装置20は、脱穀排ワラを機体1に対して脱穀フィードチェーン側とは反対側に移動させながら搬送する。
【0031】
排ワラ搬送装置20によって搬送される脱穀排ワラの量が変化すると、脱穀排ワラのボリュームが変化することにより、搬送ガイド杆22が前記スプリング25による操作力と、脱穀排ワラからの反力とによって無端回動チェーン21に対して離間するよう、あるいは接近するよう移動する。これにより、排ワラ量が大になるほど搬送ガイド杆22と無端回動チェーン21との間隔がより大になり、排ワラ量が小になるほど搬送ガイド杆22と無端チェーン21との間隔がより小になる。
【0032】
前記排ワラ処理装置50は、前記排ワラ投入口51を有した細断ケース52と、この細断ケース52の後端側の上方に設けた長ワラ放出口53とを備えている。細断ケース52は、前記排ワラ投入口51を開閉するよう揺動自在に取り付けられた蓋体54を備え、ケース内部に機体横向きの軸芯まわりに駆動回動自在に設けたカッター軸55と供給軸56とを備え、前記カッター軸55及び供給軸56の下方に設けた細断ワラ放出口57を備えている。
【0033】
排ワラ処理装置50は、前記蓋体54が閉じ操作されると、長ワラ放出の処理状態になる。すると、排ワラ処理装置50は、前記排ワラ搬送装置20からの脱穀ワラを蓋体54の外面側で長ワラ放出口53に下降案内し、この長ワラ放出口53から機体後方の地面に長ワラ状態で落下させる。
【0034】
排ワラ処理装置50は、前記蓋体54が開き操作されると、細断放出の処理状態になる。すると、排ワラ処理装置50は、前記排ワラ搬送装置20からの脱穀排ワラを前記排ワラ投入口51から細断ケース52の内部に落下させ、前記カッター軸55がこれの軸芯方向に並べて一体回転自在に備えている円盤型の切断刃と、前記供給軸56がこれの軸芯方向に並べて一体回転自在に備えている円盤型の供給刃とによって稈身方向に細断し、細断状態の排ワラを細断ワラ放出口57から地面に落下させる。
【0035】
前記選別部30は、前記揺動選別装置31を備える他、この揺動選別装置31の前端側の下方に設けた唐箕32と、前記送塵口15の後方に設けた処理回転体33とを備えて構成してある。
【0036】
前記処理回転体33は、機体横向きの軸芯まわりに回転駆動され、扱室12の前記送塵口15から排出されたワラ屑を揺動選別装置31が備える上部ストローラック34に受け止め支持させながら解し処理し、ワラ屑から穀粒を取り出す。
【0037】
揺動選別装置31は、前記上部ストローラック34を備える他、前記受網13の下方に位置したグレンパン35とチャフシーブ36とを備え、前記チャフシーブ36の後方に設けたストローラック37を備え、前記チャフシーブ36の下方に設けたグレンシーブ38を備えている。
【0038】
選別部30は、前記処理回転体33からの処理物と、扱室12から受網13を通して落下供給された処理物とを、揺動選別装置31による揺動選別と、前記唐箕32によって前記排塵部40に向けて供給される選別風による風選別とによって一番処理物と、二番処理物と、ワラ屑などの排出用の処理物とに選別し、一番処理物と二番処理物とを揺動選別装置31から落下させ、排出用の処理物を前記排塵部40に送る。
【0039】
前記一番スクリューコンベヤ2は、揺動選別装置31から落下した一番処理物を機体1の横外側に搬出して揚穀装置4に供給する。この揚穀装置4は、コンバインの穀粒タンク(図示せず)に脱穀粒を送り込む。前記二番スクリューコンベヤ3は、揺動選別装置31から落下した二番処理物を機体1の横外側に搬出して還元装置5に供給する。この還元装置5は、二番処理物を機体1の横側壁に設けた還元口に搬送し、この還元口から機体内に送り込んで揺動選別装置31の始端側に還元する。
【0040】
前記排塵部40は、前記排塵ファン41を有したファン付き排塵経路Aと、このファン付き排塵経路Aの下方に設けた風力排塵経路Bとを備えている。
【0041】
前記ファン付き排塵経路Aは、前記排塵ファン41を駆動自在に収容したファンケース42によって形成されており、ファン付き排塵経路Aは、前記排塵ファン41を備える他、ファンケース42の吸引口で成る塵埃吸引口43と、ファンケース42の吐出口で成る塵埃排出口44とを備えている。
【0042】
前記塵埃吸引口43は、前記揺動選別装置31の後端部の上方に揺動選別装置31に向かって開口して位置している。前記塵埃排出口44は、前記細断ケース52の内部に前記細断ワラ放出口57に向かって開口して位置している。
【0043】
これにより、ファン付き排塵経路Aは、選別部30の後部から送り出された排出用の処理物を、排塵ファン41の送り力によって塵埃吸引口43から吸引し、塵埃吐出口44から細断ケース52を介して機体外に排出する。ファン付き排塵経路Aは、前記唐箕32からの選別風の一部を処理物と共に吸引して排出する。
【0044】
前記風力排塵経路Bは、前記ファンケース42の排塵ファン41の下方に位置する部分42aと、揺動選別装置31の後端部とによって形成されており、揺動選別装置31の後端部に連通している。風力排塵経路Bは、機体1の後端部に前記ファン付き排塵経路Aの塵埃吐出口44の下方に配置して設けた塵埃排出口45を備えている。この塵埃排出口45は、前記細断ケース52の前記長ワラ放出口57に向かって開口している。
【0045】
風力排塵経路Bは、選別部30から送り出された排出用の処理物を唐箕32からの選別風による移送力によって導入し、塵埃排出口45から細断ケース52を介して機体外に排出する。
【0046】
前記風力排塵経路Bは、前記塵埃排出口45よりも機体内側に少し入り込んだ部位に設けた板形の排塵制御体60を備えている。図3に示すように、前記排塵制御体60は、これの上端部に一体回転自在に設けた回転支軸61を介して機体1の左右の横側壁1aに揺動自在に支持されている。
【0047】
図2(イ)は、排塵制御体60の閉じ姿勢での側面図である。この図に示すように、排塵制御体60は、前記回転支軸61の回転操作により、この回転支軸61の機体横向き軸芯まわりに下降側に揺動操作されると、閉じ姿勢になる。すると、排塵制御体60は、風力排塵経路Bの処理物の通過を抑制するよう風力排塵経路Bの処理物流動方向に対して交差した姿勢になる。
【0048】
図2(ロ)は、排塵制御体60の開き姿勢での側面図である。この図に示すように、排塵制御体60は、前記回転支軸61の回転操作により、この回転支軸61の機体横向き軸芯まわりに上昇側に揺動操作されると、開き姿勢になる。すると、排塵制御体60は、風力排塵経路Bの処理物の通過を容易にするよう風力排塵経路Bの処理物移動方向に沿った姿勢になる。
【0049】
図3に示すように、前記排塵制御体60は、これの前記脱穀フィードチェーン11が位置する側とは反対側に連結するよう前記回転支軸61の端部に一体回転自在に設けた揺動アーム71を備えた連動機構70により、前記搬送ガイド杆22の前記搬送終端側の連結杆23が連結している部位に連動されている。
【0050】
図2は、前記連動機構70の側面視での構造を示している。図3は、前記連動機構70の後面視での構造を示している。これらの図に示すように、連動機構70は、前記揺動アーム71を有したリンク機構Lと、前記ファン付き排塵経路Aの上方での外部に設けた機体横向きの回転連動軸72と、前記連結杆23と、この連結杆23と前記回転連動軸72の脱穀フィードチェーン側の端部とにわたって設けたカム式連動部80とを備えて構成してある。
【0051】
前記リンク機構Lは、前記揺動アーム71を備える他、前記回転連動軸72の前記カム式連動部80を設けてある側とは反対側の端部に一体回転自在に設けた揺動アーム73を備え、この揺動アーム73と前記揺動アーム71とを連結している連動リンク74を備えて構成してある。このリンク機構Lは、前記ファン付き排塵経路A及び排塵制御体60に対して脱穀フィードチェーン側とは反対側でのファン付き排塵経路A及び風力排塵経路Bの外部で、かつ前記排ワラ搬送装置20によって搬送される脱穀排ワラの通路26の下方に位置している。
【0052】
図2に示すように、前記カム式連動部80は、前記回転連動軸72の端部に一体回転自在に設けた揺動型のカム体81と、前記連結杆23の下端部に前記カム体81に向かって延出するよう構成して連結した丸棒材で成る伝動部材82とを備えて構成してある。カム式連動部80は、カバー85によって塵埃が付着しにくいように覆われている。
【0053】
前記カム体81は、これに付設したカム面形成体の周面で成るカム面83を備えている。前記伝動部材82は、これの延出端部に前記カム面83に当接するよう構成して設けた当接部84を備えている。前記カム体81は、排塵制御体60の重量によって前記リンク機構Lを介して揺動付勢されており、これによってカム面81を当接部84に当て付け付勢している。
【0054】
カム式連動部80は、搬送ガイド杆22が無端回動チェーン21に対して離間するよう移動したり、接近するよう移動したりすると、当接部84とカム体81との当接によって搬送ガイド杆22と回転連動軸72とを連動させることにより、搬送ガイド杆22と排塵制御体60とを次の如く連動させている。
【0055】
すなわち、図2(ロ)に示す如く搬送ガイド杆22が無端回動チェーン21に対して離間するよう移動し、搬送ガイド杆22と無端回動チェーン21との間隔が設定間隔Dになると、排塵制御体60が前記開き姿勢になり、図2(イ)に示す如く搬送ガイド杆22が無端回動チェーン21に対して接近するよう移動し、搬送ガイド杆22と無端回動チェーン21との間隔が設定間隔Dより小の間隔(設定間隔未満)になると、排塵制御体60が前記閉じ姿勢になるようにして連動させている。
【0056】
さらに、搬送ガイド杆22と無端回動チェーン21との間隔が前記設定間隔Dを超えた間隔(設定間隔以上)になった場合、この場合の搬送ガイド杆22の無端回動チェーン21に対する移動を当接部84のカム面83に対する摺接によって吸収し、搬送ガイド杆22から排塵制御体60への伝動を遮断して排塵制御体60を前記開き姿勢に維持するようにして連動させている。
【0057】
つまり、連動機構70は、搬送ガイド杆22の前記搬送終端側の連結杆23が連結している部位からファン付き排塵経路Aの上方での外側、及びファン付き排塵経路Aの脱穀フィードチェーン側とは反対側での外側を通り、排塵制御体60の脱穀フィードチェーン側とは反対側に至って排塵制御体60に連結した状態で搬送ガイド杆22と排塵制御体60とを連動させている。
これにより、搬送ガイド杆22が無端回動チェーン21に対して前記設定間隔D以上離間するよう移動すると、これに連動して排塵制御体60が前記開き姿勢になり、搬送ガイド杆22が無端回動チェーン21に対して前記設定間隔D未満に位置するよう移動すると、これに連動して排塵制御体60が前記閉じ姿勢になる。
【0058】
扱室12に供給される穀稈量が多くなると、扱室12から選別部30に供給される処理物量が多くなって選別部30に発生するワラ屑など排出用の処理物の量が多くなる。すると、一番処理物や二番処理物の塵埃混入が発生しやすくなる。扱室12に供給される穀稈量が少なくなると、扱室12から選別部30に供給される処理物量が少なくなる。すると、選別風による穀粒の飛散が発生しやすくなる。扱室12に供給される穀稈量が多くなると、排ワラ搬送装置20に供給される脱穀排ワラ量が多くなり、搬送ガイド杆22と無端回動チェーン21との間隔が大になることから、前記設定間隔Dとして、選別部30に発生する排出用の処理物量が多くなる場合に発生する間隔を設定してある。
【0059】
これにより、扱室12に供給された穀稈量が多くなると、排塵部40は、搬送ガイド杆22の無端回動チェーン21に対する前記設定間隔D以上の離間移動と、連動機構70とによって排塵制御体60を開き姿勢に自動的に切換え操作し、選別部30からの排出用の処理物をファン付き排塵経路Aと風力排塵経路Bとによって機体外に排出する。
【0060】
扱室12に供給された穀稈量が少なくなると、排塵部40は、搬送ガイド杆22の無端回動チェーン21に対する前記設定間隔D未満に位置する移動と、連動機構70とによって排塵制御体60を閉じ姿勢に自動的に切換え操作し、選別部30からの排出用の処理物を主としてファン付き排塵経路Aによって機体外に排出する。
【0061】
図4は、第二実施例に係る連動機構70の後面視での構造を示している。図5は、第二実施例に係る連動機構70の一部の平面図である。
【0062】
第二実施例の連動機構70と、先に説明した第一実施例の連動機構70とを比較すると、前記連結杆23と前記カム式連動部80と前記回転連動軸72と前記リンク機構Lと備えて連動機構70を構成している点では、第二実施例の連動機構70と第一実施例の連動機構70とは一致している。第二実施例の連動機構70は、遅延手段90を備えており、この点において、第二実施例の連動機構70と第一実施例の連動機構70とが相違している。次に、遅延手段90について説明する。
【0063】
図5,6に示すように、前記遅延手段90は、前記排塵制御体60の前記回転支軸61に一体回転自在に設けた支持片91と前記回転支軸61とによって支持された牽制プレート92と、機体1の横側壁1aに回転自在に支持された送りねじ軸93と、この送りねじ軸93が一体回転自在に備えるギヤ94に噛み合った状態で前記横側壁1aに回転自在に支持された駆動ギヤ95とを備えて構成してある。
【0064】
駆動ギヤ95は、常に駆動されており、送りねじ軸93を常時回転するよう駆動している。牽制プレート92は、バネ板によって構成されている。支持片91は、牽制プレート92の基部側を挿通した支持ピン96を介して牽制プレート92を支持するとともに前記支持ピン96に装着されたスプリング97を備えている。前記スプリング97は、牽制プレート92を支持片91に当て付け付勢し、牽制プレート92を支持片91から離間した取り付け姿勢になっても支持片91に接触した取り付け姿勢に復帰しやすくしている。
【0065】
図5(イ)は、排塵制御体60が開き姿勢OPになっている状態での遅延手段90の平面図である。図6(イ)は、排塵制御体60が開き姿勢OPになっている状態での遅延手段90の側面図である。これらの図に示すように、排塵制御体60が開き姿勢OPになっていると、牽制アーム92は、送りねじ軸93から少し上方に離れて位置した取り付け姿勢になっている。
【0066】
図5(ロ)、(ハ)、(ニ)は、遅延手段90の作用状態を示す平面図である。図6(ロ)は、図5(ロ)に示す状態にある遅延手段90の側面図である。図6(ハ)は、図5(ハ)に示す状態にある遅延手段90の側面図である。図6(ニ)は、図5(ニ)に示す状態にある遅延手段90の側面図である。
【0067】
これらの図に示すように、搬送ガイド杆22が無端回動チェーン21に対して前記設定間隔D未満の位置に移動するに伴って連動機構70が作動すると、連動リンク74による揺動アーム71の揺動操作による回転支軸61の回転のために牽制アーム92が送りねじ軸93に乗った取り付け姿勢になる。このとき、排塵制御体60が開き姿勢OPから閉じ側に揺動する。しかし、牽制アーム92は、送りねじ軸93に受け止め支持され、排塵制御体60を閉じ姿勢CLにまだ切り換わらないよう牽制する。このとき、前記カム式連動部80は、前記当接部84の前記カム面83に対する離間により、搬送ガイド杆22の無端回動チェーン21に対する設定間隔D未満の位置への移動を許容する。
【0068】
このように牽制アーム92が送りねじ軸93に乗ると、送りねじ軸93のねじ山と牽制アーム92との当接によって送りねじ軸93が牽制アーム92を送り操作し、牽制アーム92が回転支軸61に連結している部位を揺動支点として回転支軸61に沿った方向に揺動した状態に弾性変形していく。この弾性変化が進むに伴って牽制アーム92が送りねじ軸93から外れる。すると、牽制アーム92は、排塵制御体60の自然下降によって下降揺動し、排塵制御体60の閉じ姿勢CLへの切り換わりを許容する。
【0069】
牽制アーム92は、送りねじ軸93から外れた際も、送りねじ軸93の軸芯に沿う方向視で牽制アーム92と送りねじ軸93とが重なりあった取り付け姿勢になっている。これにより、排塵制御体60が閉じ姿勢から開き姿勢に切り換わる際、牽制アーム92は、送りねじ軸93による上昇障害を受けないで送りねじ軸93の上方まで戻る。
【0070】
これにより、遅延手段90は、搬送ガイド杆22が無端回動チェーン21に対して前記設定間隔D未満に位置するよう移動した際、牽制アーム92が送りねじ軸93によって送り操作されている間、排塵制御体60の閉じ作動を遅延させ、搬送ガイド杆22の前記設定間隔D未満の位置への移動から送りねじ軸93による牽制アーム92の送り時間によって決まる設定時間を経過した後に排塵制御体60を閉じ姿勢CLに切り換える。
【0071】
つまり、遅延手段90は、搬送ガイド杆22が無端回動チェーン21に対する前記設定間隔D以上の位置から設定間隔D未満の位置に戻っても、排塵制御体60を直ちに閉じ姿勢CLに切り換えず、搬送ガイド杆22が無端回動チェーン21に対する前記設定間隔D以上の位置にあった際に選別部30に供給されてまだ残っている排出用の処理物が排出されるのに掛かるものとして設定した設定時間が経過した後に排塵制御体60を閉じ姿勢CLに切り換える。
【0072】
〔別実施例〕
上記実施例に示したカム式連動部80に替え、カム体81を搬送ガイド杆22に連動させて設け、当接部84を有した連動部材82を排塵制御体60に連動させて設けた構成を有したカム式連動部を採用して実施してもよい。この場合も、本発明の目的を達成することができる。
【0073】
上記実施例に示した排塵制御体60に替え、レーキ形に構成された排塵制御体を採用して実施してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】脱穀機の縦断側面図
【図2】(イ)は、排塵制御体の閉じ姿勢での側面図、(ロ)は、排塵制御体の開き姿勢での側面図
【図3】脱穀機の連動機構配設部での後面図
【図4】第二実施例の連動機構の後面図
【図5】(イ)は、排塵制御体が開き姿勢にある状態での遅延手段の平面図、(ロ)、(ハ)、(ニ)は、遅延手段の作用状態を示す平面図
【図6】(イ)は、排塵制御体が開き姿勢にある状態での遅延手段の側面図、(ロ)、(ハ)、(ニ)は、遅延手段の作用状態を示す側面図
【符号の説明】
【0075】
12 扱室
20 排ワラ搬送装置
21 無端回動チェーン
22 搬送ガイド杆
30 選別部
41 排塵ファン
60 排塵制御体
61 回転支軸
70 連動機構
72 回転連動軸
80 カム式連動部
81 カム体
82 伝動部材
84 当接部
90 遅延手段
A ファン付き排塵経路
B 風力排塵経路
L リンク機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室からの脱穀排ワラを無端回動チェーンと搬送ガイド杆とによって機体後方向きに挟持搬送する排ワラ搬送装置と、選別部からの塵埃を排塵ファンによって機体外に排出するよう前記排ワラ搬送装置の下方に設けたファン付き排塵経路と、前記選別部からの塵埃を選別風によって機体外に排出するよう前記ファン付き排塵経路の下方に設けた風力排塵経路と、前記風力排塵経路を開閉する排塵制御体とを備えた脱穀機であって、
前記搬送ガイド杆から前記ファン付き排塵経路の上方及び脱穀フィードチェーン側とは反対側での外側を通り、前記排塵制御体の脱穀フィードチェーン側とは反対側に至って前記排塵制御体に連結した連動機構を設け、前記搬送ガイド杆が前記無端回動チェーンに対して設定間隔以上離間するよう移動するに伴って前記排塵制御体が開き姿勢に切り換え操作され、前記搬送ガイド杆が前記無端回動チェーンに対して前記設定間隔未満に位置するよう移動するに伴って前記排塵制御体が閉じ姿勢に切換え操作されるよう前記搬送ガイド杆と前記排塵制御体とを連動させてある脱穀機。
【請求項2】
前記搬送ガイド杆の前記無端回動チェーンに対する移動によって回転操作されるよう前記搬送ガイド杆に連動された状態で前記ファン付き排塵経路の外部に機体横向きに設けた回転連動軸を備え、前記回転連動軸の前記排ワラ搬送装置に対して脱穀フィードチェーン側とは反対側に位置する端部と、前記排塵制御体の回転支軸の前記風力排塵経路に対して脱穀フィードチェーン側とは反対側で、かつ前記風力排塵経路の外部に位置する端部とを連動させたリンク機構を備えて、前記連動機構を構成してある請求項1記載の脱穀機。
【請求項3】
前記連動機構に、前記搬送ガイド杆と前記排塵制御体との一方に連動されたカム体と、前記搬送ガイド杆と前記排塵制御体との他方に連動された伝動部材の当接部との当接によって前記搬送ガイド杆と前記排塵制御体とを連動させるカム式連動部を設けてある請求項1又は2記載の脱穀機。
【請求項4】
前記搬送ガイド杆が前記無端回動チェーンに対して前記設定間隔未満に位置するよう移動した際、前記排塵制御体が前記搬送ガイド杆の前記設定間隔未満の位置への移動から設定時間を経過した後に閉じ姿勢に切り換わるよう前記排塵制御体の閉じ作動を遅延させる遅延手段を前記連動機構に備えてある請求項1〜3のいずれか1項に記載の脱穀機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−237097(P2008−237097A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−81587(P2007−81587)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】