脱穀装置の受網構造
【課題】枝梗付着粒や穂切れ粒の単粒化を促し、選別精度を向上させる。
【解決手段】外周面に複数の扱歯4aが突設された扱胴4を扱室3内に回転自在に支持すると共に、多数の漏下孔5aが形成された円弧状の受網5を扱胴4の下側に沿って配置し、扱胴4が脱穀した穀粒を受網5の漏下孔5aから漏下させる脱穀装置1において、漏下孔5aの扱胴回転上手側の端縁に、受網5の内周面よりも外周側に位置する段差部5dを設け、漏下孔5aに入った扱き下ろし物を、段差部5dで一時的に保持し、扱歯4aの処理作用を十分に受けてから漏下させる。
【解決手段】外周面に複数の扱歯4aが突設された扱胴4を扱室3内に回転自在に支持すると共に、多数の漏下孔5aが形成された円弧状の受網5を扱胴4の下側に沿って配置し、扱胴4が脱穀した穀粒を受網5の漏下孔5aから漏下させる脱穀装置1において、漏下孔5aの扱胴回転上手側の端縁に、受網5の内周面よりも外周側に位置する段差部5dを設け、漏下孔5aに入った扱き下ろし物を、段差部5dで一時的に保持し、扱歯4aの処理作用を十分に受けてから漏下させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバイン、ハーベスタなどの脱穀装置の受網構造に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバイン、ハーベスタなどの脱穀装置では、外周面に複数の扱歯が突設された扱胴を扱室内に回転自在に支持すると共に、多数の漏下孔が形成された円弧状の受網を扱胴の下側に沿って配置し、扱胴が脱穀した穀粒を受網の漏下孔から漏下させるようになっている。受網としては、円弧状の多孔板が広く採用されており、このような受網によれば、耐久性に優れるだけでなく、漏下孔の形状や大きさを任意に設定できるという利点がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−236622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の受網に形成される漏下孔は、単純な打ち抜き孔であるため、漏下孔に入った扱き下ろし物は、扱歯の処理作用を受けることなく、そのまま漏下される。その結果、単粒化された穀粒だけでなく、枝梗付着粒や穂切れ粒もそのまま漏下し、選別精度を低下させるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、外周面に複数の扱歯が突設された扱胴を扱室内に回転自在に支持すると共に、多数の漏下孔が形成された円弧状の受網を扱胴の下側に沿って配置し、扱胴が脱穀した穀粒を受網の漏下孔から漏下させる脱穀装置において、前記漏下孔の扱胴回転上手側の端縁に、受網の内周面よりも外周側に位置する段差部を設けたことを特徴とする。
また、請求項2の発明は、前記受網は、円弧状の多孔板を二枚重ねて構成され、多孔板同士の相対的な変位にもとづいて漏下孔の目合いを調整可能であり、漏下孔の目合い縮小調整時に、漏下孔の扱胴回転上手側の端縁に前記段差部を形成することを特徴とする。
また、請求項3の発明は、前記漏下孔の扱室入口側の端縁にも、受網の内周面よりも外周側に位置する段差部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、漏下孔の端縁に段差部を設けたので、漏下孔に入った扱き下ろし物は、段差部で一時的に保持され、扱歯の処理作用を十分に受けてから漏下されることになり、その結果、枝梗付着粒や穂切れ粒の単粒化を促し、選別精度を向上させることができる。また、段差部は、漏下孔の扱胴回転上手側の端縁に設けられるので、段差部で保持された穀粒が長時間に亘って停滞することなく、扱胴の回転に応じて速やかに漏下させることができる。また、段差部は、受網の内周面よりも外周側に位置するので、受網内における茎稈や扱下し物の移送を妨げる不都合がない。
また、請求項2の発明によれば、漏下孔の目合い調整により、各種材料に対する適応性を向上させることができ、しかも、漏下孔の目合い縮小調整時に段差部を形成するので、漏下孔の目合い縮小と段差部の相乗作用により、選別精度を更に向上させることができる。
また、請求項3の発明によれば、漏下孔の扱室入口側の端縁にも段差部を設けたので、2つの段差部の相乗作用により、選別精度を更に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】脱穀装置の内部側面図である。
【図2】扱室開放状態を示す脱穀装置の正面図である。
【図3】目合い拡大状態を示す受網の全体斜視図である。
【図4】目合い縮小状態を示す受網の全体斜視図である。
【図5】受網の正面断面図である。
【図6】受網の側面断面図である。
【図7】目合い縮小状態(扱胴回転上手側の端縁に段差部を形成した状態)を示す受網の平面図である。
【図8】目合い縮小状態(扱胴回転上手側及び扱室入口側の端縁に段差部を形成した状態)を示す受網の平面図である。
【図9】目合い縮小状態(扱室入口側の端縁に段差部を形成した状態)を示す受網の平面図である。
【図10】段差部の作用説明図である。
【図11】受網の他例を示す平面図である。
【図12】(A)〜(C)は受網の他例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1において、1はコンバインに設けられる脱穀装置であって、該脱穀装置1は、茎稈の株元部を挟持して後方に搬送する脱穀フィードチェン2と、脱穀フィードチェン2によって搬送される茎稈の穂先側を導入する扱室3と、扱室3内に回転自在に内装され、外周部に設けられる複数の扱歯4aで茎稈の穂先側から穀粒を扱き下ろす扱胴4と、扱胴4の下側に沿って配置され、扱胴4が脱穀した穀粒(扱下し物)を漏下孔5aから漏下させる受網5と、受網5から漏下した穀粒を選別する選別室6とを備えて構成されている。
【0009】
図2に示すように、扱室3の上方は、開閉自在なシリンダカバー7で覆われており、該シリンダカバー7を開放操作すると、扱室3が開放され、扱室3内の清掃、点検、整備などを行うことが可能になる。また、本実施形態の脱穀装置1では、扱胴4をシリンダカバー7側で回転自在に支持し、シリンダカバー7の開放に伴って扱胴4が上昇する構造となっているため、受網5の上方を広く開放させた状態で、後述する目合い調整を行うことが可能になる。尚、図中において、符号の8はシリンダカバー7の回動支点、9はシリンダカバー7を開放方向に付勢するガスシリンダ、10は開放ロックを解除するロック解除レバーである。
【0010】
図3及び図4に示すように、受網5は、多数の漏下孔5aが打ち抜き加工された円弧状の多孔板5bを用いて形成されている。本実施形態の受網5は、扱胴回転方向及び茎稈搬送方向に並ぶ複数の多孔板5bを含んでおり、各多孔板5bの端縁部が網枠フレーム5cを介して扱室フレーム11や扱口板12に固定されるようになっている。
【0011】
受網5の扱室入口側は、多孔板5bを二枚重ねて構成されており、多孔板5b同士の相対的な変位にもとづいて漏下孔5aの目合いを調整できるようになっている。このようにすると、漏下孔5aの目合い調整により、各種材料に対する適応性を向上させることができる。例えば、濡れ材のように積極的に漏下させたい材料の場合は、図3に示すように、扱室入口側の目合いを拡大調整することにより、受網5の全域で穀粒の漏下を促進することができる。また、高い選別精度が要求される材料の場合は、図4に示すように、扱室入口側の目合いを縮小調整することにより、扱室入口側での漏下を抑えて扱歯4aの処理作用を促進しつつ、目合いの大きい扱室出口側で穀粒を積極的に漏下させることができる。
【0012】
多孔板5bを二枚重ねて受網5を構成した場合、多孔板5b同士を相対的に変位させることにより、漏下孔5aの端縁に段差部5d、5eを形成することができる。このような段差部5d、5eを形成すると、漏下孔5aに入った扱き下ろし物は、段差部5d、5eで一時的に保持され、扱歯4aの処理作用を十分に受けてから漏下されることになり、その結果、枝梗付着粒や穂切れ粒の単粒化を促し、選別精度を向上させることができる。また、この段差部5d、5eは、受網5の内周面よりも外周側に位置するので、受網5内における茎稈や扱下し物の移送を妨げる不都合がない。
【0013】
段差部5d、5eは、漏下孔5aの扱胴回転上手側の端縁や、漏下孔5aの扱室入口側の端縁に形成することが好ましい。例えば、図7及び図8に示すように、漏下孔5aの扱胴回転上手側の端縁に段差部5dを形成すると、段差部5dで保持された穀粒が長時間に亘って停滞することなく、扱胴4の回転に応じて速やかに漏下させることができ、また、図8及び図9に示すように、漏下孔5aの扱室入口側の端縁に段差部5eを形成すると、段差部5eで保持された穀粒が長時間に亘って停滞することなく、茎稈や扱下し物の移送に応じて速やかに漏下させることができる。
【0014】
次に、多孔板5bの変位構造について、図3〜図9を参照して説明する。これらの図に示すように、本実施形態では、多孔板5bを二枚重ねて受網5を構成するにあたり、上側の多孔板5bを固定とし、下側の多孔板5bを変位させる。具体的には、上側多孔板5bの四隅にL字状の長孔5fを形成する一方、下側多孔板5bの四隅にプロジェクションナット5gを溶着し、四本の調整ボルト5hを、上側多孔板5bの上方から長孔5fを介してプロジェクションナット5gに螺合させる。このような多孔板5bの変位構造によれば、調整ボルト5hを緩めることにより、長孔5fに沿って下側多孔板5bを変位させることができる。
【0015】
そして、図7及び図8に示すような長孔形状によれば、漏下孔5aの目合いを拡大し、段差部5d、5eを形成しない状態と(図示せず)、漏下孔5aの目合いを縮小し、漏下孔5aの扱胴回転上手側の端縁に段差部5dを形成する状態と(図7参照)、漏下孔5aの目合いをさらに縮小し、漏下孔5aの扱胴回転上手側及び扱室入口側の端縁に段差部5d、5eを形成する状態と(図8参照)を現出させることができる。
【0016】
また、図9に示すような長孔形状によれば、漏下孔5aの目合いを拡大し、段差部5d、5eを形成しない状態と(図示せず)、漏下孔5aの目合いを縮小し、漏下孔5aの扱室入口側の端縁に段差部5eを形成する状態と(図9参照)、漏下孔5aの目合いをさらに縮小し、漏下孔5aの扱胴回転上手側及び扱室入口側の端縁に段差部5d、5eを形成する状態と(図示せず)を現出させることができる。
【0017】
次に、段差部5d、5eの作用について、図10を参照して説明する。この図に示すように、受網5は、多孔板5bを二枚重ねて構成されており、多孔板5b同士を相対的に変位させることにより、漏下孔5aの端縁に段差部5d、5eが形成される。この段差部5d、5eは、漏下孔5aに入った扱き下ろし物を一時的に保持し、扱歯4aの処理作用を受ける機会を与える。例えば、図10に示すように、枝梗付着粒や穂切れ粒が段差部5d、5eに載ると、扱歯4aの処理作用を受けて単粒化が促進される。
【0018】
また、段差部5d、5eは、漏下孔5aの扱胴回転上手側の端縁や、漏下孔5aの扱室入口側の端縁に形成されているので、段差部5d、5eで保持された穀粒は、そこに長時間に亘って停滞することなく、扱胴4の回転や、茎稈や扱下し物の移送に応じて速やかに漏下することができる。しかも、段差部5d、5eは、受網5の内周面よりも外周側に位置するので、受網5内における茎稈や扱下し物の移送を妨げる不都合もない。
【0019】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、外周面に複数の扱歯4aが突設された扱胴4を扱室3内に回転自在に支持すると共に、多数の漏下孔5aが形成された円弧状の受網5を扱胴4の下側に沿って配置し、扱胴4が脱穀した穀粒を受網5の漏下孔5aから漏下させる脱穀装置1において、漏下孔5aの扱胴回転上手側の端縁に、受網5の内周面よりも外周側に位置する段差部5dを設けたので、漏下孔5aに入った扱き下ろし物は、段差部5dで一時的に保持され、扱歯4aの処理作用を十分に受けてから漏下されることになり、その結果、枝梗付着粒や穂切れ粒の単粒化を促し、選別精度を向上させることができる。また、段差部5dは、漏下孔5aの扱胴回転上手側の端縁に設けられるので、段差部5dで保持された穀粒が長時間に亘って停滞することなく、扱胴4の回転に応じて速やかに漏下させることができる。また、段差部5dは、受網5の内周面よりも外周側に位置するので、受網5内における茎稈や扱下し物の移送を妨げる不都合がない。
【0020】
また、受網5は、円弧状の多孔板5bを二枚重ねて構成され、多孔板5b同士の相対的な変位にもとづいて漏下孔5aの目合いを調整可能であり、漏下孔5aの目合い縮小調整時に、漏下孔5aの扱胴回転上手側の端縁に段差部5dを形成するので、漏下孔5aの目合い調整により、各種材料に対する適応性を向上させることができ、しかも、漏下孔5aの目合い縮小調整時に段差部5dを形成するので、漏下孔5aの目合い縮小と段差部5dの相乗作用により、選別精度を更に向上させることができる。
【0021】
また、漏下孔5aの扱室入口側の端縁にも、受網5の内周面よりも外周側に位置する段差部5eを設けることができるので、2つの段差部5d、5eの相乗作用により、選別精度を更に向上させることができる。
【0022】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されないことは勿論であって、特許請求の範囲内において任意の変更が可能であることは言うまでもない。例えば、前記実施形態では、漏下孔5aが横長の長方形であったが、図11に示すように、傾斜した長孔形状(扱室出口側が扱胴回転下手側に偏倚するように傾斜した長孔形状)でもよい。この場合、漏下孔5aの端縁に設けられる段差部5d、5eも長孔に沿った形状となる。また、前記実施形態では、漏下孔5aの目合いを調整可能にしているが、漏下孔5aの目合いは調整不能であってもよい。
【0023】
また、前記実施形態では、均一な漏下孔5aが形成された上側多孔板5bに対し、均一な漏下孔5aが形成された下側多孔板5bを重ねていたが、上側多孔板5b及び/又は下側多孔板5bの漏下孔5aを不均一とし、漏下孔5aの目合いや、段差部5d、5eの大きさに変化を持たせてもよい。例えば、図12の(A)に示すように、均一な漏下孔5aが形成された上側多孔板5bに対し、図12の(B)に示すように、移送方向上手側ほど幅(又は長さ)が小さくなる漏下孔5aが形成された下側多孔板5bを重ねて、図12の(C)に示すような受網5を形成することができる。このようにすると、扱室3の入口側では、漏下孔5aの目合いが小さく、かつ、段差部5d(又は段差部5e)の面積が大きくなる一方、扱室3の出口側では、漏下孔5aの目合いが大きく、かつ、段差部5d(又は段差部5e)の面積が小さくなるので、扱室入口側で扱歯4aの処理作用を促進しつつ、扱室出口側で穀粒を積極的に漏下させることができる。
【符号の説明】
【0024】
1 脱穀装置
2 脱穀フィードチェン
3 扱室
4 扱胴
4a 扱歯
5 受網
5a 漏下孔
5b 多孔板
5d 段差部
5e 段差部
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバイン、ハーベスタなどの脱穀装置の受網構造に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバイン、ハーベスタなどの脱穀装置では、外周面に複数の扱歯が突設された扱胴を扱室内に回転自在に支持すると共に、多数の漏下孔が形成された円弧状の受網を扱胴の下側に沿って配置し、扱胴が脱穀した穀粒を受網の漏下孔から漏下させるようになっている。受網としては、円弧状の多孔板が広く採用されており、このような受網によれば、耐久性に優れるだけでなく、漏下孔の形状や大きさを任意に設定できるという利点がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−236622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の受網に形成される漏下孔は、単純な打ち抜き孔であるため、漏下孔に入った扱き下ろし物は、扱歯の処理作用を受けることなく、そのまま漏下される。その結果、単粒化された穀粒だけでなく、枝梗付着粒や穂切れ粒もそのまま漏下し、選別精度を低下させるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、外周面に複数の扱歯が突設された扱胴を扱室内に回転自在に支持すると共に、多数の漏下孔が形成された円弧状の受網を扱胴の下側に沿って配置し、扱胴が脱穀した穀粒を受網の漏下孔から漏下させる脱穀装置において、前記漏下孔の扱胴回転上手側の端縁に、受網の内周面よりも外周側に位置する段差部を設けたことを特徴とする。
また、請求項2の発明は、前記受網は、円弧状の多孔板を二枚重ねて構成され、多孔板同士の相対的な変位にもとづいて漏下孔の目合いを調整可能であり、漏下孔の目合い縮小調整時に、漏下孔の扱胴回転上手側の端縁に前記段差部を形成することを特徴とする。
また、請求項3の発明は、前記漏下孔の扱室入口側の端縁にも、受網の内周面よりも外周側に位置する段差部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、漏下孔の端縁に段差部を設けたので、漏下孔に入った扱き下ろし物は、段差部で一時的に保持され、扱歯の処理作用を十分に受けてから漏下されることになり、その結果、枝梗付着粒や穂切れ粒の単粒化を促し、選別精度を向上させることができる。また、段差部は、漏下孔の扱胴回転上手側の端縁に設けられるので、段差部で保持された穀粒が長時間に亘って停滞することなく、扱胴の回転に応じて速やかに漏下させることができる。また、段差部は、受網の内周面よりも外周側に位置するので、受網内における茎稈や扱下し物の移送を妨げる不都合がない。
また、請求項2の発明によれば、漏下孔の目合い調整により、各種材料に対する適応性を向上させることができ、しかも、漏下孔の目合い縮小調整時に段差部を形成するので、漏下孔の目合い縮小と段差部の相乗作用により、選別精度を更に向上させることができる。
また、請求項3の発明によれば、漏下孔の扱室入口側の端縁にも段差部を設けたので、2つの段差部の相乗作用により、選別精度を更に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】脱穀装置の内部側面図である。
【図2】扱室開放状態を示す脱穀装置の正面図である。
【図3】目合い拡大状態を示す受網の全体斜視図である。
【図4】目合い縮小状態を示す受網の全体斜視図である。
【図5】受網の正面断面図である。
【図6】受網の側面断面図である。
【図7】目合い縮小状態(扱胴回転上手側の端縁に段差部を形成した状態)を示す受網の平面図である。
【図8】目合い縮小状態(扱胴回転上手側及び扱室入口側の端縁に段差部を形成した状態)を示す受網の平面図である。
【図9】目合い縮小状態(扱室入口側の端縁に段差部を形成した状態)を示す受網の平面図である。
【図10】段差部の作用説明図である。
【図11】受網の他例を示す平面図である。
【図12】(A)〜(C)は受網の他例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1において、1はコンバインに設けられる脱穀装置であって、該脱穀装置1は、茎稈の株元部を挟持して後方に搬送する脱穀フィードチェン2と、脱穀フィードチェン2によって搬送される茎稈の穂先側を導入する扱室3と、扱室3内に回転自在に内装され、外周部に設けられる複数の扱歯4aで茎稈の穂先側から穀粒を扱き下ろす扱胴4と、扱胴4の下側に沿って配置され、扱胴4が脱穀した穀粒(扱下し物)を漏下孔5aから漏下させる受網5と、受網5から漏下した穀粒を選別する選別室6とを備えて構成されている。
【0009】
図2に示すように、扱室3の上方は、開閉自在なシリンダカバー7で覆われており、該シリンダカバー7を開放操作すると、扱室3が開放され、扱室3内の清掃、点検、整備などを行うことが可能になる。また、本実施形態の脱穀装置1では、扱胴4をシリンダカバー7側で回転自在に支持し、シリンダカバー7の開放に伴って扱胴4が上昇する構造となっているため、受網5の上方を広く開放させた状態で、後述する目合い調整を行うことが可能になる。尚、図中において、符号の8はシリンダカバー7の回動支点、9はシリンダカバー7を開放方向に付勢するガスシリンダ、10は開放ロックを解除するロック解除レバーである。
【0010】
図3及び図4に示すように、受網5は、多数の漏下孔5aが打ち抜き加工された円弧状の多孔板5bを用いて形成されている。本実施形態の受網5は、扱胴回転方向及び茎稈搬送方向に並ぶ複数の多孔板5bを含んでおり、各多孔板5bの端縁部が網枠フレーム5cを介して扱室フレーム11や扱口板12に固定されるようになっている。
【0011】
受網5の扱室入口側は、多孔板5bを二枚重ねて構成されており、多孔板5b同士の相対的な変位にもとづいて漏下孔5aの目合いを調整できるようになっている。このようにすると、漏下孔5aの目合い調整により、各種材料に対する適応性を向上させることができる。例えば、濡れ材のように積極的に漏下させたい材料の場合は、図3に示すように、扱室入口側の目合いを拡大調整することにより、受網5の全域で穀粒の漏下を促進することができる。また、高い選別精度が要求される材料の場合は、図4に示すように、扱室入口側の目合いを縮小調整することにより、扱室入口側での漏下を抑えて扱歯4aの処理作用を促進しつつ、目合いの大きい扱室出口側で穀粒を積極的に漏下させることができる。
【0012】
多孔板5bを二枚重ねて受網5を構成した場合、多孔板5b同士を相対的に変位させることにより、漏下孔5aの端縁に段差部5d、5eを形成することができる。このような段差部5d、5eを形成すると、漏下孔5aに入った扱き下ろし物は、段差部5d、5eで一時的に保持され、扱歯4aの処理作用を十分に受けてから漏下されることになり、その結果、枝梗付着粒や穂切れ粒の単粒化を促し、選別精度を向上させることができる。また、この段差部5d、5eは、受網5の内周面よりも外周側に位置するので、受網5内における茎稈や扱下し物の移送を妨げる不都合がない。
【0013】
段差部5d、5eは、漏下孔5aの扱胴回転上手側の端縁や、漏下孔5aの扱室入口側の端縁に形成することが好ましい。例えば、図7及び図8に示すように、漏下孔5aの扱胴回転上手側の端縁に段差部5dを形成すると、段差部5dで保持された穀粒が長時間に亘って停滞することなく、扱胴4の回転に応じて速やかに漏下させることができ、また、図8及び図9に示すように、漏下孔5aの扱室入口側の端縁に段差部5eを形成すると、段差部5eで保持された穀粒が長時間に亘って停滞することなく、茎稈や扱下し物の移送に応じて速やかに漏下させることができる。
【0014】
次に、多孔板5bの変位構造について、図3〜図9を参照して説明する。これらの図に示すように、本実施形態では、多孔板5bを二枚重ねて受網5を構成するにあたり、上側の多孔板5bを固定とし、下側の多孔板5bを変位させる。具体的には、上側多孔板5bの四隅にL字状の長孔5fを形成する一方、下側多孔板5bの四隅にプロジェクションナット5gを溶着し、四本の調整ボルト5hを、上側多孔板5bの上方から長孔5fを介してプロジェクションナット5gに螺合させる。このような多孔板5bの変位構造によれば、調整ボルト5hを緩めることにより、長孔5fに沿って下側多孔板5bを変位させることができる。
【0015】
そして、図7及び図8に示すような長孔形状によれば、漏下孔5aの目合いを拡大し、段差部5d、5eを形成しない状態と(図示せず)、漏下孔5aの目合いを縮小し、漏下孔5aの扱胴回転上手側の端縁に段差部5dを形成する状態と(図7参照)、漏下孔5aの目合いをさらに縮小し、漏下孔5aの扱胴回転上手側及び扱室入口側の端縁に段差部5d、5eを形成する状態と(図8参照)を現出させることができる。
【0016】
また、図9に示すような長孔形状によれば、漏下孔5aの目合いを拡大し、段差部5d、5eを形成しない状態と(図示せず)、漏下孔5aの目合いを縮小し、漏下孔5aの扱室入口側の端縁に段差部5eを形成する状態と(図9参照)、漏下孔5aの目合いをさらに縮小し、漏下孔5aの扱胴回転上手側及び扱室入口側の端縁に段差部5d、5eを形成する状態と(図示せず)を現出させることができる。
【0017】
次に、段差部5d、5eの作用について、図10を参照して説明する。この図に示すように、受網5は、多孔板5bを二枚重ねて構成されており、多孔板5b同士を相対的に変位させることにより、漏下孔5aの端縁に段差部5d、5eが形成される。この段差部5d、5eは、漏下孔5aに入った扱き下ろし物を一時的に保持し、扱歯4aの処理作用を受ける機会を与える。例えば、図10に示すように、枝梗付着粒や穂切れ粒が段差部5d、5eに載ると、扱歯4aの処理作用を受けて単粒化が促進される。
【0018】
また、段差部5d、5eは、漏下孔5aの扱胴回転上手側の端縁や、漏下孔5aの扱室入口側の端縁に形成されているので、段差部5d、5eで保持された穀粒は、そこに長時間に亘って停滞することなく、扱胴4の回転や、茎稈や扱下し物の移送に応じて速やかに漏下することができる。しかも、段差部5d、5eは、受網5の内周面よりも外周側に位置するので、受網5内における茎稈や扱下し物の移送を妨げる不都合もない。
【0019】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、外周面に複数の扱歯4aが突設された扱胴4を扱室3内に回転自在に支持すると共に、多数の漏下孔5aが形成された円弧状の受網5を扱胴4の下側に沿って配置し、扱胴4が脱穀した穀粒を受網5の漏下孔5aから漏下させる脱穀装置1において、漏下孔5aの扱胴回転上手側の端縁に、受網5の内周面よりも外周側に位置する段差部5dを設けたので、漏下孔5aに入った扱き下ろし物は、段差部5dで一時的に保持され、扱歯4aの処理作用を十分に受けてから漏下されることになり、その結果、枝梗付着粒や穂切れ粒の単粒化を促し、選別精度を向上させることができる。また、段差部5dは、漏下孔5aの扱胴回転上手側の端縁に設けられるので、段差部5dで保持された穀粒が長時間に亘って停滞することなく、扱胴4の回転に応じて速やかに漏下させることができる。また、段差部5dは、受網5の内周面よりも外周側に位置するので、受網5内における茎稈や扱下し物の移送を妨げる不都合がない。
【0020】
また、受網5は、円弧状の多孔板5bを二枚重ねて構成され、多孔板5b同士の相対的な変位にもとづいて漏下孔5aの目合いを調整可能であり、漏下孔5aの目合い縮小調整時に、漏下孔5aの扱胴回転上手側の端縁に段差部5dを形成するので、漏下孔5aの目合い調整により、各種材料に対する適応性を向上させることができ、しかも、漏下孔5aの目合い縮小調整時に段差部5dを形成するので、漏下孔5aの目合い縮小と段差部5dの相乗作用により、選別精度を更に向上させることができる。
【0021】
また、漏下孔5aの扱室入口側の端縁にも、受網5の内周面よりも外周側に位置する段差部5eを設けることができるので、2つの段差部5d、5eの相乗作用により、選別精度を更に向上させることができる。
【0022】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されないことは勿論であって、特許請求の範囲内において任意の変更が可能であることは言うまでもない。例えば、前記実施形態では、漏下孔5aが横長の長方形であったが、図11に示すように、傾斜した長孔形状(扱室出口側が扱胴回転下手側に偏倚するように傾斜した長孔形状)でもよい。この場合、漏下孔5aの端縁に設けられる段差部5d、5eも長孔に沿った形状となる。また、前記実施形態では、漏下孔5aの目合いを調整可能にしているが、漏下孔5aの目合いは調整不能であってもよい。
【0023】
また、前記実施形態では、均一な漏下孔5aが形成された上側多孔板5bに対し、均一な漏下孔5aが形成された下側多孔板5bを重ねていたが、上側多孔板5b及び/又は下側多孔板5bの漏下孔5aを不均一とし、漏下孔5aの目合いや、段差部5d、5eの大きさに変化を持たせてもよい。例えば、図12の(A)に示すように、均一な漏下孔5aが形成された上側多孔板5bに対し、図12の(B)に示すように、移送方向上手側ほど幅(又は長さ)が小さくなる漏下孔5aが形成された下側多孔板5bを重ねて、図12の(C)に示すような受網5を形成することができる。このようにすると、扱室3の入口側では、漏下孔5aの目合いが小さく、かつ、段差部5d(又は段差部5e)の面積が大きくなる一方、扱室3の出口側では、漏下孔5aの目合いが大きく、かつ、段差部5d(又は段差部5e)の面積が小さくなるので、扱室入口側で扱歯4aの処理作用を促進しつつ、扱室出口側で穀粒を積極的に漏下させることができる。
【符号の説明】
【0024】
1 脱穀装置
2 脱穀フィードチェン
3 扱室
4 扱胴
4a 扱歯
5 受網
5a 漏下孔
5b 多孔板
5d 段差部
5e 段差部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に複数の扱歯が突設された扱胴を扱室内に回転自在に支持すると共に、多数の漏下孔が形成された円弧状の受網を扱胴の下側に沿って配置し、扱胴が脱穀した穀粒を受網の漏下孔から漏下させる脱穀装置において、
前記漏下孔の扱胴回転上手側の端縁に、受網の内周面よりも外周側に位置する段差部を設けたことを特徴とする脱穀装置の受網構造。
【請求項2】
前記受網は、円弧状の多孔板を二枚重ねて構成され、多孔板同士の相対的な変位にもとづいて漏下孔の目合いを調整可能であり、漏下孔の目合い縮小調整時に、漏下孔の扱胴回転上手側の端縁に前記段差部を形成することを特徴とする請求項1記載の脱穀装置の受網構造。
【請求項3】
前記漏下孔の扱室入口側の端縁にも、受網の内周面よりも外周側に位置する段差部を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の脱穀装置の受網構造。
【請求項1】
外周面に複数の扱歯が突設された扱胴を扱室内に回転自在に支持すると共に、多数の漏下孔が形成された円弧状の受網を扱胴の下側に沿って配置し、扱胴が脱穀した穀粒を受網の漏下孔から漏下させる脱穀装置において、
前記漏下孔の扱胴回転上手側の端縁に、受網の内周面よりも外周側に位置する段差部を設けたことを特徴とする脱穀装置の受網構造。
【請求項2】
前記受網は、円弧状の多孔板を二枚重ねて構成され、多孔板同士の相対的な変位にもとづいて漏下孔の目合いを調整可能であり、漏下孔の目合い縮小調整時に、漏下孔の扱胴回転上手側の端縁に前記段差部を形成することを特徴とする請求項1記載の脱穀装置の受網構造。
【請求項3】
前記漏下孔の扱室入口側の端縁にも、受網の内周面よりも外周側に位置する段差部を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の脱穀装置の受網構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−187607(P2010−187607A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−36485(P2009−36485)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】
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