説明

脱穀装置の扱胴

【課題】扱胴の内部空間に入り込んだ処理物を扱胴後端まで積極的に移送して排塵処理し、脱穀性能の低下を解消する。
【解決手段】扱胴軸(7)の前部及び後部に支持板(10,11)を夫々支持し、該前後の支持板(10,11)間には扱歯(13)を備えた複数の支持フレーム(12)を扱胴(3)の周方向に間隔を置いて支持させ、前記扱胴軸(7)と支持フレーム(12)との間には、該複数の支持フレーム(12)によって囲われた扱胴(3)の内部空間に入り込む処理物を扱胴後端側に向けて移送する移送螺旋(14)を設ける。また、移送螺旋(14)を備える螺旋軸(15)の後部に、後端側ほど外径が大きくなるテーパ部(16)を設ける。また、移送螺旋(14)の後端側に、処理物を遠心方向に跳ね出す跳出板(17)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、全稈投入型コンバインや自脱型コンバインに利用される脱穀装置の扱胴に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、全稈投入型脱穀装置の扱胴としては、扱胴軸の前部、中間及び後部に一体装備した支持板の外周部に周方向所定間隔置きに装着支持された丸パイプ鋼材からなる6本の支持部材(扱胴フレーム)と、支持部材から外方に向けて突出する姿勢で前後方向に所定間隔を隔てて装備した複数の扱歯などによって籠状に構成されたものであり、そして、扱胴軸の後端部における該扱胴軸と扱胴フレームとの間に遠心方向に起風する遠心羽根を備えた構成のものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−220563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
扱胴支持フレームの内部には、長藁や稈切れ等多量の藁屑が入り込み、これが湿材である場合には内部で詰まりを生じて、脱穀性能の低下を招く問題があった。
本発明の課題は、扱胴内に入り込んだ処理物を扱胴後端まで積極的に送り込んで排塵処理し、上記問題点を解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の発明は、扱胴軸(7)の前部及び後部に支持板(10,11)を夫々支持し、該前後の支持板(10,11)間には扱歯(13)を備えた複数の支持フレーム(12)を扱胴(3)の周方向に間隔を置いて支持させ、前記扱胴軸(7)と支持フレーム(12)との間には、該複数の支持フレーム(12)によって囲われた扱胴(3)の内部空間に入り込む処理物を扱胴後端側に向けて移送する移送螺旋(14)を設けたことを特徴とする脱穀装置の扱胴とする。
【0006】
扱室(2)内に供給される刈取穀稈は、扱胴(3)の回転により、扱歯(13)による扱き作用ないし打撃作用を受けながら脱粒されると共に、支持フレーム(12)によっても叩かれ、捌き作用を受けながら広く拡散される。
【0007】
複数の支持フレーム(12)によって囲われた扱胴(3)の内部空間に入り込んだ処理物は、回転する移送螺旋(14)によって扱胴(3)の後端まで移送されて排塵処理される。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記移送螺旋(14)を備える螺旋軸(15)の後部に、後端側ほど外径が大きくなるテーパ部(16)を設けたことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置の扱胴とする。
【0009】
移送螺旋(14)によって移送される処理物は、移送終端に至るほどテーパ部(16)によって扱胴(3)の外周側に送り出され、排塵処理効果が高まる。
請求項3記載の発明は、前記移送螺旋(14)の後端側に、処理物を遠心方向に跳ね出す跳出板(17)を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の脱穀装置の扱胴とする。
【0010】
移送螺旋(14)の終端側にまで送られてきた処理物は、跳出板(17)によって遠心方向に跳ね出され、扱胴(3)の外周方向に向けて積極的に跳ね出されるので、藁屑の排塵処理が容易に行えるようになる。
【0011】
請求項4記載の発明は、前記跳出板(17)の下方に、跳ね出された処理物を受け入れて篩い選別する排塵処理棚(25)を設けたことを特徴とする請求項3記載の脱穀装置の扱胴とする。
【0012】
跳出板(17)によって扱胴(3)の外に跳ね出された処理物は、下方の排塵処理棚(25)上に受けられて篩い選別される。
請求項5記載の発明は、前記支持フレーム(12)を板状に形成すると共に、該支持フレーム(12)の扱胴軸(12)の軸心方向視での断面形状を略くの字型としたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項記載の脱穀装置の扱胴とする。
【0013】
支持フレーム(12)の断面形状がくの字型であるため、穀稈に対する打撃効果は大きく、強度も堅牢で扱胴(3)全体の剛性および強度が十分に高まる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、扱歯(13)による打撃、梳き込み作用によって脱粒効果を高め、支持フレーム(12)によっても叩打、捌き拡散効果を高めることができ、脱穀性能の向上を図ることができる。
【0015】
また、複数の支持フレーム(12)によって囲われた扱胴(3)の内部空間に入り込んだ処理物を扱胴(3)の後端まで積極的に移送するので、排塵処理が容易に行え、脱穀負荷の低減を図ることができる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果に加えて、搬送終端に至る処理物をテーパ部(16)によって扱胴(3)の外周側に送り出すので、排塵処理効果を高めることができる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、上記請求項1又は請求項2記載の発明の効果に加えて、搬送終端の処理物を跳出板によって扱胴(3)の外側に跳ね出すことができるので、藁屑の排塵処理が容易に行える。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、上記請求項3記載の発明の効果を奏するものでありながら、跳出板(17)によって扱胴(3)の外側に跳ね出された処理物は、下方の排塵処理棚(25)上に受けられて篩い選別されるので、下方のチャフシーブ上での選別に支障を来たさず、選別性能の向上を図ることができる。
【0019】
請求項5記載の発明によれば、上記請求項1から請求項4のいずれか一項記載の発明の効果を奏するものでありながら、支持フレーム(12)が断面くの字型の板状に形成されているため、穀稈に対する打撃効果は大きく、強度も堅牢で扱胴全体の剛性、強度を十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】脱穀装置の要部の側断面図
【図2】同上要部の縦断背面図
【図3】扱胴要部の側断面図
【図4】A1〜A7は支持フレームと扱歯の取付形態の変形例を示す
【図5】A8〜A10は支持フレームの別実施例を示す
【発明を実施するための形態】
【0021】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1は、全稈投入型の脱穀装置を示すものであり、次のような構成になっている。
図例の脱穀装置1は、扱室2内に全稈投入される穀稈を駆動回転する扱胴3により脱穀処理するよう構成している。扱室2の下半周部に受網4が張設され、扱室終端側には排塵口5が開口され、扱胴3の上部は扱胴カバー6によって被覆されている。
【0022】
扱胴3は、扱胴軸7が扱室2の前壁板8と後壁板9とにわたって架設され、エンジンからの動力伝達を受けて回転駆動されるようになっている。そして、この扱胴軸7の前側の部位に一体的に取り付けた支持板10と、扱胴軸7の後側の部位に一体的に取り付けた支持板11との間にわたり、板体からなる6本の支持フレーム12を扱胴3の周方向に所定間隔置きに配列して一体的に連結して設け、各支持フレーム12には複数の扱歯13を前後方向に所定間隔を置いて植設することによって籠状の扱胴3が構成されている。
【0023】
支持フレーム12は、広幅の板体からなり、これを幅方向に略くの字型に折り曲げ形成したものあり、扱歯13は、この支持フレーム12のくの字型に折り曲げた頂部を跨ぐように取り付けている。
【0024】
前記扱胴軸7と支持フレーム12との間には、この複数の支持フレーム12によって囲われた扱胴3の内部空間に入り込んだ処理物を、扱胴3の終端後端側に向けて強制的に移送する移送螺旋14が内装されている。この移送螺旋14の終端側には、螺旋軸15の軸径が搬送終端側ほど径大となるようテーパ部16が設けられている。なお、送り螺旋14による処理物の移送速度は、自脱型コンバインに利用する場合には、脱穀フィードチェンの搬送速度と略同程度に設定しておくと良い。
【0025】
また、移送螺旋14の終端側には、送られてきた処理物を遠心方向に跳ね出す跳出板17が設けられ、支持板11に固着されて扱胴3と一体的に回転する構成としている。なお、この跳出板17は扱室2終端の排塵口5に対応する部位に設けられている。
【0026】
扱室2の下方には、脱穀処理後の処理物を受け入れて揺動移送しながら篩い選別する揺動選別棚20が前後方向揺動可能に架設されている。この揺動選別棚20は、選別方向上手側から移送棚21、チャフシ−ブ22、ストロ−ラック23の順に配置し、且つ、前記チャフシ−ブ22の下方にグレンシ−ブ24を配置して設けた構成としている。
【0027】
また、前記跳出板17に対応する下方位置で、チャフシーブ22の上方位置には、跳出板17によって跳ね出された処理物及び排塵口5からの処理物を受け入れて篩い選別するラック状フインからなる排塵処理棚25が設けられ、揺動選別棚20と一体的に揺動する構成としている。
【0028】
また、揺動選別棚20の下方には選別方向の上手側から順に、唐箕26と、1番移送螺旋27、2番移送螺旋28と、その上方に吸塵フアン29を配置して設けた構成としている。
【0029】
図4において、支持フレーム12の変形例について説明する。
A1は、支持フレーム12の断面形状がくの字型で、頂部側を外周向きとし、頂部を跨いで扱歯13を取り付ける構成としている(本例の図1、図2に示す構成例と同じ)。
【0030】
A2は、A1において、くの字型に折り曲げた支持フレーム12の回転方向後面b側を接線向きとし、前面aは前傾とする。
A3は、支持フレーム12の断面形状が略くの字型(への字型)で頂部側を外周向きとし、支持フレーム12の回転方向後面bに扱歯を取り付けている。
【0031】
A4は、A3において、支持フレーム12の回転方向後面b側を接線向きとし、この後面に扱歯を取り付ける。
A5は、支持フレーム12の断面形状が略くの字型(への字型)で頂部側を外周向きとし、支持フレーム12の回転方向前面aに扱歯を取り付けている。
【0032】
A6は、A5において、支持フレーム12の回転方向後面b側を接線向きとし、前面aは前傾とする。
A7は、支持フレーム12の断面形状がくの字型で頂部側を外周向きとし、支持フレーム12の回転方向前後面a,bに扱歯13を取り付けている。
【0033】
図5に示す実施例において説明する。
A8は、支持フレーム12の断面形状をZ型とし、その中間面cに扱歯13を取り付け、支持フレーム12の回転方向前面aを下向きに折り曲げ、後面bを上向きに折り曲げた構成としている。
【0034】
A9は、A8において、支持フレーム12の回転方向後面cの上向き折曲部を櫛状に形成した構成としている。
A10は、A8において、支持フレーム12の中間面(扱歯取付面)cを、支持フレーム12の回転方向前位が後位より下となる前傾姿勢としている。
【0035】
A11は、A8において、支持フレーム12の中間面(扱歯取付面)cを、支持フレーム12の回転方向前位より後位が上となる後傾姿勢としている。
【符号の説明】
【0036】
3 扱胴
7 扱胴軸
10 支持板(前)
11 支持板(後)
12 支持フレーム
13 扱歯
14 移送螺旋
15 螺旋軸
16 テーパ部
17 跳出板
25 排塵処理棚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱胴軸(7)の前部及び後部に支持板(10,11)を夫々支持し、該前後の支持板(10,11)間には扱歯(13)を備えた複数の支持フレーム(12)を扱胴(3)の周方向に間隔を置いて支持させ、前記扱胴軸(7)と支持フレーム(12)との間には、該複数の支持フレーム(12)によって囲われた扱胴(3)の内部空間に入り込む処理物を扱胴後端側に向けて移送する移送螺旋(14)を設けたことを特徴とする脱穀装置の扱胴。
【請求項2】
前記移送螺旋(14)を備える螺旋軸(15)の後部に、後端側ほど外径が大きくなるテーパ部(16)を設けたことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置の扱胴。
【請求項3】
前記移送螺旋(14)の後端側に、処理物を遠心方向に跳ね出す跳出板(17)を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の脱穀装置の扱胴。
【請求項4】
前記跳出板(17)の下方に、跳ね出された処理物を受け入れて篩い選別する排塵処理棚(25)を設けたことを特徴とする請求項3記載の脱穀装置の扱胴。
【請求項5】
前記支持フレーム(12)を板状に形成すると共に、該支持フレーム(12)の扱胴軸(12)の軸心方向視での断面形状を略くの字型としたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項記載の脱穀装置の扱胴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−231702(P2012−231702A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101103(P2011−101103)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】