説明

脱穀装置

【課題】 藁屑発生の多い品種や湿った穀稈の場合、ロスや脱ぷが多くなるという課題、および、二番還元口を設けた側の揺動選別棚上の処理物の層が厚く偏り、選別効率が低いという課題。
【構成】 脱穀室6の扱網10の下方に風選室13を設け、該風選室13に揺動選別装置15を設け、揺動選別装置15の揺動選別棚14の下方には一番コンベア37および二番コンベア38を設け、二番コンベア38の終端には二番還元装置21の基部を接続し、該二番還元装置21は、内部に搬送螺旋47を設けた搬送筒46により形成し、該搬送筒46の上部には搬送された二番還元物が前記揺動選別棚14に還元するように二番還元口50を設け、該二番還元口50は少なくとも扱胴5の軸心位置よりも上方に配置構成した脱穀装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上部に扱胴を軸装した脱穀室を設け、脱穀室の扱網の下方に送風唐箕からの送風により風選する風選室を設け、該風選室に往復揺動する揺動選別棚により構成した揺動選別装置を設け、揺動選別棚の下方には一番コンベアおよび二番コンベアを設け、二番コンベアの終端には二番コンベアにより回収した二番還元物を還元する二番還元装置の基部を接続し、該二番還元装置の二番還元口は、脱穀室内に二番還元物を排出するように設けた構成は、公知である(特許文献1)
また、従来、二番還元装置の二番還元口を、二番還元物が揺動選別棚に供給するように設けた構成は、公知である(特許文献2)。
【特許文献1】特開2002−305957号公報
【特許文献2】特開平8−228573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記公知例のうち前者では、作業状態に関わらず、二番還元物を脱穀室に還元するため、藁屑発生の多い品種や湿った穀稈の場合、ロスや脱ぷが多くなるという課題がある。
前記公知例のうち後者では、二番還元口を設けた側の揺動選別棚上の処理物の層が厚く偏り、選別効率が低いという課題がある。
本願は、二番還元装置の構成を工夫し、ロスや脱ぷを減少させ、しかも、揺動選別装置の選別効率も低下させないようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上部に扱胴5を軸装した脱穀室6を設け、脱穀室6の扱網10の下方に、送風唐箕11からの送風により風選する風選室13を設け、該風選室13に往復揺動する揺動選別棚14により構成した揺動選別装置15を設け、揺動選別棚14の下方には一番コンベア37および二番コンベア38を設け、二番コンベア38の終端には二番コンベア38により回収した二番還元物を還元する二番還元装置21の基部を接続し、該二番還元装置21は、内部に搬送螺旋47を設けた搬送筒46により形成し、該搬送筒46の上部には搬送された二番還元物が前記揺動選別棚14に還元するように二番還元口50を設け、該二番還元口50は少なくとも扱胴5の軸心位置よりも上方に配置構成した脱穀装置としたものである。
そのため、穀稈供給搬送装置7により搬送された穀稈は、搬送穀稈供給口57から脱穀室6内に供給され、回転する扱胴5により脱穀され、脱穀された脱穀物(被処理物)は扱網10から下方の揺動選別棚14に落下し、揺動選別棚14の揺動と送風唐箕11の送風により選別され、穀粒は一番コンベア37から回収される。
揺動選別棚14により選別されて一番コンベア37に回収されないものは二番還元物として二番コンベア38に回収され、二番コンベア38により回収された二番還元物は二番還元装置21により脱穀室6の側部上方より排出されて揺動選別棚14に還元されて再処理される。
この場合、二番還元装置21の二番還元口50は扱胴5の軸心よりも高い位置に設けているので、二番還元口50から排出される二番物は、揺動選別棚14上に落下するまでに拡散し、揺動選別棚14上の処理物は前後左右方向において均分化され、揺動選別装置15の選別負荷をそれ程増大させず、効率のより二番還元物処理となる。
本発明は、前記二番還元装置21は、前記搬送螺旋47の回転方向が平面視において反時計回転となるように構成した脱穀装置としたものであり、搬送螺旋47(排出羽根48)の回転方向が平面視において反時計回転なので、扱網10と干渉することなく、拡散させて揺動選別棚14上に二番還元物を落下させる。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明では、二番コンベア38に回収された二番還元物を二番還元装置21により拡散させて揺動選別棚14上に落下させることができ、揺動選別棚14上の層厚が均一に近くなり、選別負荷を余り増大させずに処理でき、脱穀室6に二番還元物を還元する構成に比し、藁屑発生の多い品種や湿った穀稈の場合でも、層厚をできるだけ均一にすることができ、脱ぷ発生率を減少させ、脱穀ロスを減少できる。
請求項2の発明では、揺動選別棚14に二番還元物を拡散させることができ、選別効率および選別精度を低下させずに、二番還元物処理できる。
【実施例1】
【0006】
本発明の実施例を図面により説明すると、1は脱穀装置である。実施例は、コンバインの脱穀装置1であり、図示は省略するが脱穀装置1の下方に走行装置を設け、脱穀装置1の前方には刈取部を設けている。
前記脱穀装置1は、上部に扱胴5を軸装した脱穀室6を設け、脱穀室6の一側には前記刈取部により刈り取った穀稈を供給搬送する穀稈供給搬送装置7の供給搬送チエン8を設けている。なお、理解を容易にするため、便宜的に方向を示して以下説明するが、これにより構成が限定されるものではない。
扱胴5の主として下方側は扱網10により包囲している。扱網10の下方には送風唐箕11の唐箕ケーシング12を設ける。前記脱穀室6の下方には前記送風唐箕11の送風により穀粒と異物とを風選し得る風選室13を形成し、風選室13内には、送風唐箕11の送風方向(前後方向)に往復揺動する揺動選別棚14により構成した揺動選別装置15を設ける。
【0007】
揺動選別装置15は、その揺動選別棚14の始端部(前端部)を唐箕ケーシング12の上方に位置させて移送棚部16に形成する。移送棚部16の構成は任意であり、移送方向下手側を低く傾斜させたり、あるいは、移送棚部16の上面に突起や凹凸を設けて揺動選別装置15の移送方向下手側のグレンシーブ17に扱網10からの落下物を移送できればよい。
前記グレンシーブ17は、扱網10より落下した穀粒と異物とを選別するものであり、所定間隔をおいて揺動方向に複数並設する。グレンシーブ17は、薄い平板形状に形成し、移送方向の下手側(後側)が高くなるように傾斜させて設ける。グレンシーブ17の移送方向の下手側には中間フィン体18を設ける。
【0008】
中間フィン体18は、前後方向の薄い平板状のフィン19を縦にして形成し、フィン19は移送方向の下手側(後側)が高くなるように傾斜させる。中間フィン体18は、扱網10より落下しない処理物を脱穀室6から排出する排出口20の下方から移送方向の下手側に位置させる。
前記フィン19の上面にはギザギザ状に凹凸を形成し、排出口20からの落下物を位相方向下手側に移送する作用と、落下物の塊をほぐして揺動選別棚14上に落下させる作用を期待する。中間フィン体18は、フィン19の先端(移送方向の下手側)を自由端に形成し、フィン19の基部を左右方向(揺動選別棚14の幅方向)の取付板22に固定状態に設ける。中間フィン体18は揺動選別棚14の幅方向に所定間隔をおいて複数並設する。
【0009】
この場合、フィン19の先端が揺動選別棚14の幅方向に変形するように弾性を有して形成すると、一層、排出口20からの落下物のほぐし作用を期待でき、好適である。
また、穀稈供給搬送装置7を設けた側(左側)の反対側(右側)の中間フィン体18のフィン19は、前後長さを短く形成すると、後述する二番還元装置21からの戻し処理物の堆積を少なくして、好適である。また、中間フィン体18の内の他の中間フィン体18は全て同じ長さのフィン19を並設してもよいが、長いフィン19と短いフィン19とを交互に配置すると、被処理物の分散を良好にして、好適である。
【0010】
しかして、前記各グレンシーブ17の両端は取付枠23の側板24に固定する。また、前記中間フィン体18は、各中間フィン体18を取付けた取付板22の両端を取付用側板24に固定し、このグレンシーブ17および中間フィン体18を取付けた取付枠23を、揺動選別棚14の揺動側板25に取付ボルト26により固定して組立てる。
グレンシーブ17と中間フィン体18と取付板22と取付枠23は、一体状に組立てて所謂ユニット部品とし、揺動選別棚14に取付けられるので、組立てが容易となる。
【0011】
また、グレンシーブ17と中間フィン体18と取付板22と取付枠23は、合成樹脂による一体成形により形成すると、一層製造が容易となり、軽量化も図れ、好適である。特に、先端を自由端にしたフィン19を取付板22に並設して形成した中間フィン体18では、形状が複雑であるが、一層、製造が容易となり、また、各フィン19の弾性・寸法・取付位置等の製造・組立て誤差を少なくして、設計上の性能を確実に発揮させることができ、好適である。
【0012】
しかして、前記取付枠23の取付用側板24と揺動選別棚14の揺動側板25との間にはサイドシール30を設ける。サイドシール30は揺動選別棚14と脱穀装置1の側板(図示省略)との間に穀粒が落下するのを防止するものであり、サイドシール30は取付枠23の取付用側板24と揺動選別棚14の揺動側板25により挟持される。
この場合、取付用側板24と揺動側板25の上部は何れも外側に広がるように屈曲させて屈曲部31、32に形成し、屈曲部31と屈曲部32によりサイドシール30を保持する。そのため、取付用側板24と揺動側板25とサイドシール30の夫々の捻じれに対する強度を向上させる。
また、少なくとも、取付枠23の取付用側板24は、屈曲部31を含めて一体成形により形成できるので、コストダウンが図れる。
【0013】
しかして、中間フィン体18は後側に突き出るように設け、中間フィン体18の下方から移送方向の下手側(後側)の揺動選別棚14にはチャフシーブ35を複数並設する。チャフシーブ35は前記排出口20の下方に始端部を位置させ、チャフシーブ35の下手側にはストローラック36を設ける。
また、揺動選別棚14の下方には一番コンベア37を設け、一番コンベア37の後側には二番コンベア38を設ける。40は吸引排塵ファン、41は排藁搬送装置、42はカッター装置である。
なお、前記揺動選別棚14の揺動機構43の構成は任意であり、支持機構44で支持されている揺動選別棚14が揺動すればよい。
【0014】
二番コンベア38の終端には前記二番還元装置21の基部を接続する。二番還元装置21は、長尺の搬送筒46の基部を二番コンベア38の終端に接続し、搬送筒46内には搬送螺旋47を設けて構成する。搬送螺旋47の上部には排出羽根48を設ける。
二番還元装置21は、搬送筒46を穀稈供給搬送装置7と反対側の脱穀装置1の側板49と脱穀室6の側方との間に位置させ、搬送筒46の上部には二番還元口50を形成する。二番還元口50は少なくとも扱胴5の軸心より上方にて開口させ、二番還元口50から排出される二番還元物が拡散して揺動選別棚14上に落下するようにしている。
したがって、脱穀装置1の上部および二番還元口50は脱穀装置1の天板51に可及的に近接させて、高い位置に配置すると、一層、二番還元物の拡散が良好となって、好適である。
【0015】
しかして、二番還元口50は、搬送筒46の軸心S(図1)を基準に穀稈供給搬送装置7の反対側に主として開口させ、二番還元口50の脱穀室6側に近い開口縁52には、排出ガイド板53を設ける。二番還元口50から排出された二番物は前方下側に向けて落下し、脱穀側板49の下方の傾斜部54により揺動選別棚14の揺動選別装置15上に落下供給される。
二番還元装置21は、少なくとも扱胴5の軸心より上方の高さ位置に二番還元口50を開口させているので、二番還元口50から排出される二番物は、搬送螺旋47の上部の排出羽根48により前方に向けて跳ね出され、拡散しながら揺動選別棚14の揺動選別装置15およびグレンシーブ17上に落下する。そのため、揺動選別棚14上の処理物は前後左右方向の何れにおいても均分化され、揺動選別装置15の選別負荷をそれ程増大させず、効率のより二番還元物処理となる。
【0016】
また、二番還元物を脱穀室6に還元すると、藁屑発生の多い品種や湿った穀稈の場合、ロスや脱ぷの原因となるが、本願では脱穀室6に還元しないので、高能率化できる。
また、脱穀装置1の前板56の搬送穀稈供給口57よりも奥側(右側)に二番還元口50を設けているので、搬送穀稈供給口57からの二番還元物の飛散によりロスの不具合も発生しない(なお、図9では、作図の都合上、前板56の搬送穀稈供給口57と脱穀室6とを重ねて図示しているが、これにより構成は限定されない)。
【0017】
この場合、二番還元口50の脱穀室6側に近い開口縁開口縁52には、排出ガイド板53を設けているので、二番還元口50から排出された二番還元物のうち脱穀室6側に近い二番還元口50から排出された二番還元物は、排出ガイド板53により下方に誘導され、脱穀室6に入るのが防止され、脱穀室6内のロスや脱ぷの発生を防止する。
また、二番還元口50に排出ガイド板53を設けているので、二番還元物が、二番還元口50で排出されずに搬送筒46内に持ち返られるのを防止する。
【0018】
しかして、前記排出羽根48および搬送螺旋47の回転は、平面視において反時計回転に回転するように構成する。
即ち、搬送螺旋47は、平面視において扱胴5と軸心方向を平行にし、搬送螺旋47の軸心を基準に、搬送螺旋47は扱胴5側で回転上昇し、扱胴5の反対側で下降回転し、図7、図8においてみると搬送螺旋47は反時計回転に回転する。
そのため、二番還元口50からの二番還元物の排出方向は左側(図8の下側)になるようになって、揺動選別棚14上の処理物を均分化する。
搬送螺旋47の基部(下部)は接続メタル60に軸装し、接続メタル60には二番コンベア38の搬送螺旋61の終端を軸装し、接続メタル60の回転軸62に入力プーリ63を設けて、回転伝達するように構成している。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】脱穀装置の側面図。
【図2】揺動選別棚の側面図。
【図3】中間フィン体およびグレンシーブの側面図。
【図4】同一部縦断正面図。
【図5】図4の一部拡大図。
【図6】中間フィン体およびグレンシーブの平面図。
【図7】脱穀装置の一部平面図(揺動選別棚等省略)。
【図8】脱穀装置の一部平面図(扱胴等省略)。
【図9】同正面図。
【符号の説明】
【0020】
1…脱穀装置、5…扱胴、6…脱穀室、7…穀稈供給搬送装置、8…供給搬送チエン、11…送風唐箕、12…唐箕ケーシング、13…風選室、14…揺動選別棚、15…揺動選別装置、16…移送棚部、17…グレンシーブ、18…中間フィン体、19…フィン、20…排出口、21…二番還元装置、22…取付板、23…取付枠、24…取付用側板、26…取付ボルト、25…揺動側板、30…サイドシール、31…屈曲部、32…屈曲部、35…チャフシーブ、36…ストローラック、37…一番コンベア、38…二番コンベア、40…吸引排塵ファン、41…排藁搬送装置、42…カッター装置、46…搬送筒、47…搬送螺旋、48…排出羽根、50…二番還元口、51…天板、52…開口縁、53…排出ガイド板、49…側板、54…傾斜部、56…前板、57…搬送穀稈供給口、60…接続メタル、61…搬送螺旋、62…回転軸、63…入力プーリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に扱胴5を軸装した脱穀室6を設け、脱穀室6の扱網10の下方に、送風唐箕11からの送風により風選する風選室13を設け、該風選室13に往復揺動する揺動選別棚14により構成した揺動選別装置15を設け、揺動選別棚14の下方には一番コンベア37および二番コンベア38を設け、二番コンベア38の終端には二番コンベア38により回収した二番還元物を還元する二番還元装置21の基部を接続し、該二番還元装置21は、内部に搬送螺旋47を設けた搬送筒46により形成し、該搬送筒46の上部には搬送された二番還元物が前記揺動選別棚14に還元するように二番還元口50を設け、該二番還元口50は少なくとも扱胴5の軸心位置よりも上方に配置構成した脱穀装置。
【請求項2】
請求項1において、前記二番還元装置21は、前記搬送螺旋47の回転方向が平面視において反時計回転となるように構成した脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−166862(P2006−166862A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−367200(P2004−367200)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】