説明

脱穀装置

【課題】扱胴部分を開放すべく、下部体に対し上部体が開閉自在に支持される脱穀装置で、上部体がロック状態のまま上昇操作しても昇降装置は駆動せずにロック状態を報知し、駆動諸機構の故障を未然に防止するものであり乍ら、逆に上部体が下降駆動の場合には、その移動を積極的に報知し無意識の操作等が解る脱穀装置を得る。
【解決手段】上部体を下部体に対し昇降駆動する昇降駆動手段と、上部体を閉じ位置でロックするロック手段と、ロック手段がロック位置にあるか否かを検出するロック検出手段と、警報手段と、昇降駆動手段の上昇駆動信号を入力した状態で、ロック検出手段がロック位置を検出した場合、昇降駆動手段の上昇駆動を出力せず、前記警報手段への発報信号を出力する制御手段とを備える。制御手段は、昇降動手段の下降駆動信号を入力した場合、該昇降駆動手段に下降駆動信号を出力すると共に、警報手段に信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扱胴部分を開放すべく、下部体に対し上部体を開放自在に支持した脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の脱穀装置で、扱胴部分の清掃や点検等をするために、扱胴部分を開放すべく、脱穀機の下部体に対し、上部体を上下に揺動して、開放自在に支持するように構成した脱穀装置は既に知られている。
【0003】
そして、上記上部体を下部体に対して開閉操作する昇降手段として油圧シリンダや油圧ポンプ,電動モータ等よりなる駆動機構を設けたものも提案されている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2001−190136号公報
【特許文献2】特開2001−190137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記駆動機構では、上部体の下部体に対するロック状態の解除を確認せずに、ロック状態のままで上部体の上げ操作をしたような場合には、電動モータが故障したり、ロック機構に中途半端な食い込み等によるロック解除操作の不能等の不具合が発生していた。
【0006】
また、上部体が上昇位置にある際に、無意識に下降スイッチに触れてしまったような場合には、重量のある上部体の下降移動に気づかないような場合も発生していた。
【0007】
そこで、本発明は、上部体がロック状態のままで上昇操作しても昇降装置は駆動せずにロック状態であることを確実に報知し、駆動諸機構の故障を未然に防止するものであり乍ら、逆に、上部体が下降駆動をしている場合には、その移動を積極的に報知することにより、上述課題を解消した脱穀装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る本発明は、扱胴(15)を有し、該扱胴(15)部分を開放すべく、下部体(12)に対し上部体(11)が開閉自在に支持されている脱穀装置(1)において、
前記上部体(11)を前記下部体(12)に対して昇降駆動する昇降駆動手段(22)と、
前記上部体(11)を閉じ位置にてロックするロック手段と、
前記ロック手段がロック位置にあるか否かを検出するロック検出手段(36)と、
警報手段(51)と、
前記昇降駆動手段(22)の上昇駆動信号を入力した状態で、前記ロック検出手段(36)がロック位置を検出した場合、前記昇降駆動手段(22)の上昇駆動を出力せずに、前記警報手段(51)への発報信号を出力する制御手段(50)と、
を備えることを第1の特徴とする脱穀装置にある。
【0009】
また、前記制御手段(50)は、前記昇降駆動手段(22)の下降駆動信号を入力した場合、該昇降駆動手段(22)に下降駆動信号を出力すると共に、前記警報手段(51)に信号を出力する、
ことを第2の特徴とする脱穀装置にある。
【0010】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る本発明によると、昇降駆動手段を上昇操作しても、ロック手段がロック位置にある場合は、昇降駆動されないので、ロック状態のまま昇降駆動装置を駆動して、昇降駆動装置の過負荷等による故障並びにロック手段を喰い込ませることによる解除操作の不能等の不具合の発生を未然に防止することができる。
【0012】
また、請求項2に係る本発明によると、上部体が下降する際、断続音等の警報が発せられるので、無意識の操作等があっても、上部体が下降していることが解る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に沿って本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1に示すように、本発明の脱穀装置1は通常のコンバイン2に搭載されたものであり、該コンバイン2は、前方の前処理部3で刈取った圃場上の穀稈を、搬送部4にて挟持搬送して、脱穀装置1に供給し、脱穀装置1にて脱穀処理された穀稈は、後部に設けた排藁処理装置5にて、切断処理等される。
【0014】
また、6はコンバイン2の運転操縦部を取り込んだキャビンであって、その後部には図示していないエンジンや脱穀穀粒を一時的に貯留する穀粒タンク7が搭載されている。そして、コンバイン2の機体上部には、上記穀粒タンク7内の穀粒を機外に搬出するための、前後方向に長い排出オーガ8が備えられ、機体下部には、左右一対のクローラよりなる走行装置9,9が設けられている。
【0015】
なお、脱穀装置1の上部側面には、脱穀装置1の上部体11を下部体12に対して昇降操作するための昇降スイッチ13が設けられており、これらの詳細については後述する。
【0016】
即ち、図2乃至4は脱穀装置1の要部を示す後断面図であって、上部体11を、右側上部の回動支点A14を中心に下部体12に対して上下方向に昇降した状態を示し、図2はロック状態、図3はロック解除状態、図4は上昇状態を夫々示す。
【0017】
ここで、上記上部体11には、扱胴15や穀稈の株元を挟持搬送するフィードチェン16等が備えられていて、右側上方にあるピン17が、下部体12の上部に設けられた上記回動支点A14に一端を支持された連結部材18の他端に設けた長孔19内で連結されている。そして、上記ピン17は、下部体12の後部上方に回動支点B20を有するスクリュー装置21にも同時に連結されており、該スクリュー装置21は、前記昇降スイッチ13のスイッチ操作により昇降駆動手段としての扱胴昇降モータ22を駆動させてスクリュー21Aが正逆回転してこれを拡縮させる。
【0018】
また、23は扱胴下限リミットスイッチ、24は扱胴上限リミットスイッチであって、上記スクリュー装置21の中間部に装着されたリミットスイッチ25が上記スクリュー装置21の拡縮動作によって左右に移動し、これら両リミットスイッチ23,24のどちらかに当接する迄上記扱胴昇降モータ22を駆動させるものである。
【0019】
また、上記上部体11と下部体12とは、上記回動支点A14の前方側(図面の略中央位置)を、扱胴15の前後の位置で、作動範囲の大きなガススプリング26にて連結されており、図4に記載のように上部体11が上昇状態にある時、シリンダロッド27をシリンダチューブから突出する側に付勢するように構成されている。
【0020】
次に、ロック手段としての上部体11のロック機構について説明するに、側面視逆L字状を成す前後に設けたロック解除レバー29,29が、上記フィードチェン16の上方で、図1に記載の如く脱穀装置1の側板に沿う状態で連結されて操作レバー30を成しており、脱穀装置1の外部より簡単に上下操作出来るように構成されている。そして、上記ロック解除レバー29は、回動支点C31を中心として上下に回動するが、L字状部の先端側にリンク32とこれに続くロッド33とを介して、略中央部にあるフック34に連結されている。
【0021】
ここで、上記フック34はその下方側先端部35が、上記上部体11がロック状態にある時(図2参照)には、下部体12側に設けられたロック検出手段としての扱胴ロック検出スイッチ36に接触して、該扱胴ロック検出スイッチ36を後述の如くON状態として警報装置(ホーン)51に連結されていてこの状態を警報し、更に、この時には先端部35の係止突起35Aが下部体12側の係止ピン37に係合している。
【0022】
そして、図3の上記操作レバー30を矢印の如く、上方に操作したロック解除位置では、ロック解除レバー29の先端が、これに連結したリンク32及びロッド33を牽引することにより、上記フック34が回動支点D38を中心として矢印方向に回動して、上記先端部35の係止突起35Aが上記係止ピン37から外れると共に、扱胴ロック検出スイッチ36と離れたロック解除(OFF)状態となる。
【0023】
また、上記フック34の上方側先端部は、ストッパ部39を成していて、フック34が矢印方向に回動してロックを解除した時(図2,3参照)に、上記ガススプリング26の装着上部26Aに当接して、フック34がそれ以上回動しない構成となっており、図4の上部体11上昇状態では回動支点D38の支点越えにより、その姿勢が固定されるものである。
【0024】
従って、図3の如く、上記操作レバー30を手動で上方矢印方向に操作して、ロック解除レバー29を回動させ、上記フック34をロック解除状態にすると、ピン17が連結部材18の長孔19内を移動してガタ分だけ上部体11が上昇すると同時に、フック34が矢印方向に回動して、その先端部35の係止突起35Aが係止ピン37から外れると共に、扱胴ロック検出スイッチ36から離脱する。また、フック34の他方上方部にあるストッパ部39が、ガススプリング26の装着上部26Aに当接した状態で、シリンダのロッド27も若干伸長して、上部体11の上昇位置を維持する。
【0025】
そして、ロック解除状態のままで、前記昇降スイッチ13にある上昇スイッチ13Uを押せば、扱胴昇降モータ22が駆動して、スクリュー21Aが正転し、スクリュー装置21の長さを短縮させることにより、リミットスイッチ25も移動して、扱胴上限リミットスイッチ24に当接する状態まで扱胴昇降モータ22が駆動して停止し、図4に記載の如く、上部体11が回動支点A14を中心に扱口40側が上昇して、扱胴15部分が解放される。この時、フック34のストッパ部39は、ガススプリング26の装着上部26Aに当接した状態で、ガススプリング26のロッド27が大きく伸長した状態となり、ガススプリング26がこの状態を維持する。
【0026】
また、逆に、上部体11を下降させる時には、昇降スイッチ13にある下降スイッチ13Dを押せば、扱胴昇降モータ22が駆動して、スクリュー21Aが逆回転し、スクリュー装置21の長さを伸長させることによりリミットスイッチ25も移動して、扱胴下限リミットスイッチ23に当接する状態(図2参照)まで扱胴昇降モータ22が駆動して停止する。そして、この時は、ガススプリング26の長さも縮小して、上部体11が下降すると同時に、フック34の回動支点D38の支点越えにより、ストッパ部39とガススプリング26装着上部26Aの当接も解除されて、フック34の下方側先端部35の係止突起35Aが下部体12側の係止ピン37に係合すると共に、扱胴ロック検出スイッチ36に当接して、上部体11がロック状態(ON)であることを検出する。
【0027】
更に、上記回動支点A14は、図示していないが、扱胴上部体11の回動位置を検出するための扱胴ポテンショメータ41を備えており、この情報が後述する制御手段に出力されるようになっている。
【0028】
なお、上記フック34の下部側先端部35の係合突起35Aは、上部体11の下降時にその重量の弾みで、自動的に下部体12側の係止ピン37に係合するものであるが、フック34に設けたハンドル部42を図2の矢印方向に回動させれば係合はより確実となる。
【0029】
次に、図5のブロック図について説明するに、制御手段としてのマイコン50には、入力側に、上記扱胴ポテンショメータ41、昇降スイッチ13の扱胴上昇スイッチ13U及び扱胴下降スイッチ13D、扱胴ロック検出スイッチ36、リミットスイッチ25の扱胴上限リミットスイッチ24及び扱胴下限リミットスイッチ23とが接続され、出力側には、警報装置(ホーン)51及び扱胴昇降モータ22とが夫々接続されて、これらの各スイッチの信号の組合わせにより、後述する制御手段を構成するものである。
【0030】
即ち、扱胴昇降スイッチ13を押した時、扱胴ロック検出スイッチ36がロック状態を検出した場合には、扱胴昇降モータ22は駆動せず、ロック状態であることをホーン51によって知らせ、扱胴ロック検出スイッチ36がロック状態でないことを検出した場合には、扱胴昇降スイッチ13の上昇,下降指令に基づいて扱胴昇降モータ22がリミットスイッチ25の上限,下限の範囲内で駆動してスクリュー装置21を拡縮させ、この時の上部体11の位置を回動支点A14に設けた扱胴ポテンショメータ41で検出するものである。
【0031】
次に、上記制御手段の具体的内容について、図6のフローチャートに沿って説明する。即ち、上昇スイッチ13U(S1)がONで、ロック検出スイッチ36(S2)がロック(ON)状態にある時には、ホーン51警報音(3)(S3)によって、ロック状態であることを報知する。そして、ステップS2において、ロック検出スイッチ36がロック解除(OFF)状態であって、上限リミットスイッチ24(S4)がOFF状態では昇降モータ22が上昇駆動(S5)し、上限リミットスイッチ24が上限に達した時点(ON)で停止する。
【0032】
また、下降スイッチ13D(S6)がONの時、下限リミットスイッチ23(S7)がON状態にある時は、昇降モータ22は駆動せず、OFF状態では、昇降モータ22が下降駆動する(S10)が、扱胴ポテンショメータ41(S8)により、この時の下降状態を感知する。即ち、下降状態が順調(前回≠今回)の時はホーン51警報音(1)(S9)により、下降状態であることを報知する。そして、下降状態が順調でない(前回≒今回)時には、ホーン51警報音(2)(S11)により報知すると共に、昇降モータ22の下降駆動も停止するものである。
【0033】
なお、上記各警報音(1)(2)(3)は、その報知音を夫々変えて、連続,断続状態としたり、音量や音色等を変更することにより、警報音だけでその内容が解るように区分される。
【0034】
従って、本発明によれば、上部体11の昇降駆動手段と、上部体11の下部体12へのロック手段と、このロック状態を検出するロック検出手段と、各種警報手段とをこれらの各種作動を制御する制御手段に連結して、上記昇降駆動手段の上昇駆動信号を入力した状態で、上記ロック検出手段がロック位置を検出した場合、昇降駆動手段の上昇駆動を出力せずに、上記警報手段への発報信号を出力することにより、昇降駆動手段を上昇駆動しても、ロック手段がロック位置にある時には昇降駆動しないようにして、従来装置の如く、ロック状態のまま昇降駆動装置を駆動して、昇降駆動装置の過負荷による故障やロック手段を喰い込ませて解除操作の不能等の不具合を発生させるようなことを未然に防止することが出来るものである。
【0035】
また、前記制御手段は、上記昇降駆動手段の下降駆動信号を入力したような場合、該昇降駆動手段に下降駆動信号を出力すると共に、上記警報手段に信号を出力することにより、上部体11が下降する際に、断続音等の警報が発せられて、万一、無意識の下降スイッチ13D操作等があっても、上部体11が下降状態にあることが確実に解るものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】コンバインの全体側面図である。
【図2】脱穀装置の要部を示す後断面図で、上部体ロック状態を示す。
【図3】同上上部体ロック解除状態を示す図。
【図4】同上上部体上昇状態を示す図。
【図5】ブロック図である。
【図6】フローチャートである。
【符号の説明】
【0037】
1 脱穀装置
2 コンバイン
11 上部体
12 下部体
13 昇降スイッチ
14 回動支点A
18 連結部材
21 スクリュー装置
22 扱胴昇降モータ
25 リミットスイッチ
29 ロック解除レバー
34 フック
35 先端部
36 扱胴ロック検出スイッチ
38 回動支点D
41 ポテンショメータ
50 マイコン
51 警報装置(ホーン)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱胴を有し、該扱胴部分を開放すべく、下部体に対し上部体が開閉自在に支持されている脱穀装置において、
前記上部体を前記下部体に対して昇降駆動する昇降駆動手段と、
前記上部体を閉じ位置にてロックするロック手段と、
前記ロック手段がロック位置にあるか否かを検出するロック検出手段と、
警報手段と、
前記昇降駆動手段の上昇駆動信号を入力した状態で、前記ロック検出手段がロック位置を検出した場合、前記昇降駆動手段の上昇駆動を出力せずに、前記警報手段への発報信号を出力する制御手段と、
を備えることを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記昇降駆動手段の下降駆動信号を入力した場合、該昇降駆動手段に下降駆動信号を出力すると共に、前記警報手段に信号を出力する、
請求項1記載の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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