説明

脱穀装置

【課題】 扱室に軸支された扱胴を、同芯に配備された前部の主扱胴と後部の補助扱胴とで構成するとともに、補助扱胴を主扱胴よりも速い速度で駆動するよう構成した脱穀装置において、補助扱胴の伝動構造を構成部品少なく簡単かつ安価に製作できるものにする。
【解決手段】 主扱胴3Fに挿通連結された扱胴支軸21の後方に補助扱胴3Rを遊嵌支持し、扱胴支軸21の後端から取り出した動力を中間回動部材33に伝達した後、中間回動部材33から補助扱胴3Rへ伝達するよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扱室に軸支された扱胴を、同芯に配備された前部の主扱胴と後部の補助扱胴とで構成するとともに、前記補助扱胴を前記主扱胴より速い速度で駆動するよう構成した脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記脱穀装置としては、例えば、特許文献1に開示されているように、主扱胴に挿通連結された扱胴支軸の後方に補助扱胴を遊嵌支持し、扱胴支軸と平行に配備された駆動軸の前部と扱胴支軸の前部とを巻き掛け連動するとともに、駆動軸の後部と補助扱胴とを巻き掛け連動し、各巻き掛け伝動比を異ならせることで補助扱胴を主扱胴より速い速度で駆動するよう構成したものが提案されている。
【特許文献1】特開平11−75508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記構成の脱穀装置は、扱室の後部に到達した穀稈および脱穀処理物を高速で処理することで、穀稈や排ワラに刺さり込んだ穀粒の分離回収を効率良く行うことができる特徴を有するものであるが、その駆動構造において改良の余地があった。
【0004】
つまり、上記従来構造においては、扱胴支軸と平行に配備した共通の駆動軸の前後で主扱胴および補助扱胴に巻き掛け連動するものであるから、前後に長い駆動軸を駆動回転可能に支架するために、負荷に耐える軸受け構造を駆動軸の前後に装備する必要があるとともに、扱室の前後の側板に貫通した駆動軸にワラ屑などが巻き付くのを防止するカバー構造を前後側板の間に装備する必要もあり、部品点数が多くなってコスト高になるものであった。
【0005】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、補助扱胴の伝動構造を簡単かつ安価に製作できるものにすることを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、扱室に軸支された扱胴を、同芯に配備された前部の主扱胴と後部の補助扱胴とで構成するとともに、前記補助扱胴を前記主扱胴と異なった周速度で駆動するよう構成した脱穀装置において、
前記主扱胴に挿通連結された扱胴支軸の後方に前記補助扱胴を遊嵌支持し、扱胴支軸の後端から取り出した動力を中間回動部材に伝達した後、中間回動部材から補助扱胴へ伝達するよう構成してあることを特徴とする。
【0007】
上記構成によると、中間回動部材は扱室の後部に遊転可能に配備すればよく、前部の主扱胴と後部の補助扱胴を駆動する共通の駆動軸を前後の側板に亘って貫通支架する必要はない。また、中間回動部材を遊転自在に支持するのに、固定の支軸に中間回動部材を遊嵌する構造を採用することが可能となり、回転する軸をなくすことでワラ屑巻き付き防止用のカバー構造も不要となる。
【0008】
従って、第1の発明によると、補助扱胴の伝動構造を構成部品少なく簡単かつ安価に製作できるようになった。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、
前記中間回動部材の回動軸芯を前記扱胴支軸と平行に配置し、扱胴支軸と中間回動部材、および、中間回動部材と補助扱胴とをそれぞれ巻き掛け連動してあるものである。
【0010】
上記構成によると、扱胴支軸と中間回動部材との伝動、および、中間回動部材と補助扱胴との伝動を、無端伝動ベルトや無端伝動チェーンなどの無端帯の点検整備および交換が容易な巻き掛け伝動で行うことで、メンテナンス性の高いものにすることができる。
【0011】
第3の発明は、上記第2の発明において、
扱胴支軸と中間回動部材とを巻き掛け連動する無端帯を、排ワラ搬送装置への出力用回転輪に巻回してあるものである。
【0012】
上記構成によると、補助扱胴駆動用の無端帯を排ワラ搬送装置の駆動用に兼用することができ、伝動部材の節減によってコスト低減を図ることができる。
【0013】
第4の発明は、上記第2または3の発明において、
扱室の前側板に軸支した駆動回転輪と扱胴支軸の前端部に設けた受動回転輪とを巻き掛け連動し、前記駆動回転輪を遊転自在に支承して前記前側板に貫通固定した支軸と、前記中間回動部材を遊転自在に支承して前記後側板に貫通固定した支軸とを同芯に配置するとともに、両支軸を連結部材で一体連結してあるものである。
【0014】
上記構成によると、前後の支軸を連結部材で1本化することで、各支軸に作用する曲げ負荷を互いに分担支持させることができ、片持ち状に支持された各支軸が負荷によって傾くことを防止することができる。また、両支軸をつなぐ連結部材は回転するものでないので、必ずしも軸状である必要はなく、例えば、断面形状がコの字形、あるいは、L形の形鋼材などの安価な素材を利用することができる。
【0015】
第5の発明は、上記第2〜4のいずれか一つの発明において、
前記扱胴を軸支した扱胴ケースを、扱胴軸芯と平行な支点周りに上下揺動可能に構成するとともに、扱胴ケースの支点と前記中間回動部材の回動軸芯を同芯としてあるものである。
【0016】
上記構成によると、支点の共用化によって支点構造の簡素化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1に、自脱型コンバインに搭載される脱穀装置の縦断した側面図が示されている。この脱穀装置は、図1中の図外左方の刈取り部からで搬送されてきた横倒れ姿勢の刈取り穀稈をフィードチェーン1で受取り、その穂部を扱室2に挿入した状態で図中左方から右方に通過搬送することで、扱室2に前後水平に軸支した扱胴3によって脱穀処理し、穀稈から分離した処理物を扱室下部に沿って張設した受網4で選別する。受網4を漏下した処理物を扱室2の下方に配備された揺動選別部5の前半部に落下供給するとともに、受網4を漏下しなかった処理物を扱室終端の送塵口6から搬出して揺動選別部5の前後中間部に落下供給し、揺動選別部5に落下供給された処理物を前後に長いシーブケース7で受け止める。載置した処理物を後方(図1では右方)に向けて揺動搬送しながら波板状のグレンパン8、粗選別用のチャフシーブ9、精選別用のグレンシーブ10、ストローラック12、などを利用して篩い選別するとともに、揺動選別部5の前端部に備えた唐箕13から後方上方に向けて供給された選別風を吹き付けて風選処理し、グレンシーブ10から漏下した1番物を1番回収部14に、また、チャフシーブ9の後部やストローラック12から漏下した2番物を2番回収部15にそれぞれ選別回収する。1番回収部14に回収した1番物を横スクリュー16によって機外にまで横送りした後、穀粒タンクなどの回収部に供給し、2番回収部15に回収した2番物を横スクリュー17によって横送りした後、図示されない還元装置によってシーブケース7の前部に還元供給して再選別処理を行う。なお、送塵口6から搬出されてシーブケース7で受け止められたワラ屑の塊は、横架駆動される処理胴11でほぐされてシャフシーブ9の後部およびストローラック12による選別を受ける。
【0018】
また、扱室2の後方で揺動選別部5の後部上方箇所には、排ワラ搬送装置18の下側に位置させて横断流ファンからなる排塵ファン19が横架されており、送塵口6から吹き出てきた浮塵やワラ屑、選別風によって揺動選別部5の後部上方に吹き上げられた浮塵やワラ屑が排塵ファン18に吸引されて排塵口20から強制的に機体後方に排出されるようになっている。
【0019】
前記扱胴3は、同芯に配置された前方の主扱胴3Fと後方の補助扱胴3Rとから構成されており、それぞれが扱室2の前側板2fと後側板2rとに亘って水平に支架された扱胴支軸21に支持されている。
【0020】
主扱胴3Fは、扱胴支軸21に連結された大径の胴体3aの外周に丈の低い扱歯3bを突設して構成されており、扱胴支軸21と一体に約520(rpm)の回転速度で駆動され、この時の扱歯先端の周速度が1.8〜2.0(m/s)となる。
【0021】
また、補助扱胴3Rは扱胴支軸21の後部に遊転自在に装着された小径の胴体3cに丈の高い扱歯3dを突設して構成されており、主扱胴3Fおよび補助扱胴3Rの扱歯先端回動径が同径に設定されている。そして、この補助扱胴3Rの歯先端の周速度が主扱胴3Fにおける扱歯先端の周速度よりも速くなるように、補助扱胴3Rが約700(rpm)の回転速度で駆動されるようになっており、以下、この扱胴3の駆動構造について説明する。
【0022】
図4の正面図に示すように、脱穀装置の前面下方にはエンジン動力を受ける原動軸22が配備され、この原動軸22に取付けた原動プーリ23、脱穀装置の前面上部に遊転自在に軸支された駆動回転輪24、前記扱胴支軸21の前端に取付けた受動回転輪25、および、脱穀装置の前面に配備された中間回転輪26、ガイド輪27、等に亘って伝動ベルト28が3本掛けで巻回されて、扱胴支軸21および主扱胴3Fが上記速度で駆動されるようになっている。
【0023】
また、扱胴支軸21の後端部には出力輪30が固着されるとともに、補助扱胴3Rに連結された入力輪31が同芯に配備されている。また、脱穀装置の後面上部には支軸32が貫通固定されており、この支軸32の後方突出部位に2段プーリからなる中間回動部材33が遊嵌支持されている。この中間回動部材33の小径プーリ部33aと扱胴支軸21の前記出力輪30とが伝動ベルト(無端帯)34で巻き掛け連動されるとともに、中間回動部材33の大径プーリ部33bと補助扱胴3Rの前記入力輪31とが伝動ベルト35で巻き掛け連動され、もって、補助扱胴3Rが主扱胴3Fより大きい上記速度で駆動されるようになっている。
【0024】
ここで、前記駆動輪24は前側板2fに貫通固定された支軸36の前方突出部位に遊嵌支持され、この支軸36と中間回動部材33の前記支軸32とが同芯に配置されるとともに、両支軸32,36が前後に長い連結部材37で互いに連結されて1本の軸状に構成されている。このように、後方および前方に向けて片持ち状に支持された支軸32,36を一体化することで、ベルト張力によって各支軸32,36が傾くことが防止されている。
【0025】
また、図2,図5に示すように、扱胴支軸21の出力輪30と中間回動部材33とを巻き掛け連動する伝動ベルト34は、フィードチェーン1近くに位置固定状態(支持構造は図示せず)に配備された出力用回転輪38にも巻回されており、この出力用回転輪38から取り出された動力がベベルギヤケース39を介して排ワラ搬送装置18に伝達されるようになっている。
【0026】
前記扱胴3は、前記支軸32,36の軸芯と同芯の支点Pを中心として上下に回動可能に構成された扱胴ケース41に軸支されており、扱胴ケース41を油圧シリンダ42によって持上げ揺動することで、扱室2を開放して扱胴3および受網4を露出することができ、扱室2の清掃、扱歯3b,3dの補修や交換、受網4の清掃や交換、などを容易に行うことができるようになっている。
【0027】
なお、図6に示すように、扱胴ケース41が持上げ上昇されて前記出力輪30および入力輪31が上方に移動すると、出力輪30は無端伝動ベルト34の上方径路部分を巻回係止して持上げ上昇移動することになり、この際、無端ベルト34を蛇行状に案内する一対のテンション輪43,44がバネ付勢力に抗して後退変位してベルト巻回長さの変化を吸収する。なお、中間回動部材33と入力輪31とを連動する伝動ベルト35は、扱胴ケース41の昇降にかかわらず一定の巻回径路で巻き掛けられているので、伝動ベルト35に作用するテンション輪45が変位することはない。
【0028】
〔他の実施例〕
【0029】
(1)上記実施例では、扱胴支軸21から中間回動部材33への動力伝達、および、中間回動部材33から補助扱胴3Rへの動力伝達をそれぞれ巻き掛け伝動としているが、図7に示すように、中間回動部材33を2段ベベルギヤに構成して実施することも可能である。
【0030】
(2)上記巻き掛け伝動に用いる無端帯としては、上記のように伝動ベルト34,35を用いる他に、チェーンを利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】脱穀装置の縦断側面図
【図2】脱穀装置の要部を横断した平面図
【図3】扱胴後部の縦断側面図
【図4】脱穀装置の正面図
【図5】脱穀装置の背面図
【図6】扱胴上昇状態の背面図
【図7】扱胴駆動構造の別実施例を示す概略図
【符号の説明】
【0032】
2 扱室
2f 前側板
2r 後側板
3 扱胴
3F 主扱胴
3R 補助扱胴
18 排ワラ搬送装置
21 扱胴支軸
24 駆動回転輪
25 受動回転輪
32 支軸
33 中間回動部材
34 無端帯
36 支軸
37 連結部材
38 出力用回転輪
41 扱胴ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室に軸支された扱胴を、同芯に配備された前部の主扱胴と後部の補助扱胴とで構成するとともに、前記補助扱胴を前記主扱胴よりも速い速度で駆動するよう構成した脱穀装置において、
前記主扱胴に挿通連結された扱胴支軸の後方に前記補助扱胴を遊嵌支持し、扱胴支軸の後端から取り出した動力を中間回動部材に伝達した後、中間回動部材から補助扱胴へ伝達するよう構成してあることを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記中間回動部材の回動軸芯を前記扱胴支軸と平行に配置し、扱胴支軸と中間回動部材、および、中間回動部材と補助扱胴とをそれぞれ巻き掛け連動してある請求項1記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記扱胴支軸と前記中間回動部材とを巻き掛け連動する無端帯を、排ワラ搬送装置への出力用回転輪に巻回してある請求項2記載の脱穀装置。
【請求項4】
前記扱室の前側板に軸支した駆動回転輪と前記扱胴支軸の前端部に設けた受動回転輪とを巻き掛け連動し、前記駆動回転輪を遊転自在に支承して前記前側板に貫通固定した支軸と、前記中間回動部材を遊転自在に支承して前記後側板に貫通固定した支軸とを同芯に配置するとともに、両支軸を連結部材で一体連結してある請求項2または3記載の脱穀装置。
【請求項5】
前記扱胴を軸支した扱胴ケースを、扱胴軸心と平行な支点周りに上下揺動可能に構成するとともに、扱胴ケースの支点と前記中間回動部材の回動軸芯を同芯としてある請求項2〜4のいずれか一項に記載の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−6824(P2007−6824A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−193837(P2005−193837)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】