説明

脱穀装置

【課題】 揺動選別棚上の穀粒が脱穀装置の外部へ排出されて3番ロスとなる問題を解決し、脱穀作業の精度及び能率を向上させる。
【解決手段】 扱室(8)のフィードチェン(11)設置側とは反対の側に、扱室(8)の後部から引き継いだ被処理物を後方に移送しながら処理する排塵処理胴(17)を備えた排塵処理室(18)を設け、この排塵処理室(18)の後端部に、底部を開口して穀粒を含んだ被処理物を脱穀装置内部の揺動選別棚(40)上に排出する排塵口(21)と、排塵処理室(18)の外側壁(22)に開口して藁屑を脱穀装置の外部後方に直接排出する藁屑排出口(23)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、処理胴室の終端部に設けられる排塵口は、例えば、特許文献1(特に図10の符号29a参照)に示されているように、処理胴室の底部を開口して該室内の排塵処理物全てを機内の揺動選別棚上に排出する構成になっている。
【特許文献1】特開2003−23842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
かかる従来構成のものでは、団子状になった大きなわら屑も一緒に揺動選別棚上に排出されるので、選別棚上での負担が大きくなり、充分なふるい選別ができないまま脱穀装置の外部に排出してしまい多大の3番ロスを招く問題があった。
【0004】
本発明は、かかる問題点を解消することにあり、排出すべき大きなわら屑は直接機外に排出するようにし、細かい排塵物のみ通常の排塵口から排出することによって選別棚上での負担を軽くし、3番ロスの低減を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するために、次の如き技術手段を講じた。
すなわち、扱室(8)のフィードチェン(11)設置側とは反対の側に、扱室(8)の後部から引き継いだ被処理物を後方に移送しながら処理する排塵処理胴(17)を備えた排塵処理室(18)を設け、この排塵処理室(18)の後端部に、底部を開口して穀粒を含んだ被処理物を脱穀装置内部の揺動選別棚(40)上に排出する排塵口(21)と、排塵処理室(18)の外側壁(22)に開口して藁屑を脱穀装置の外部後方に直接排出する藁屑排出口(23)を設けたことを特徴とする脱穀装置とする。
【0006】
扱室8の後部から排塵処理室18内に引き継がれた被処理物は、回転する排塵処理胴17によって後方に移送されながら処理される。そして、排塵処理室18の後端部に達すると、穀粒を含んだ細かい被処理物は底部の排塵口21から下方の揺動選別棚40上に排出され、排塵処理室18内を持ち回りされる団子状の大きな藁屑などは外側壁22に開口した藁屑排出口23から脱穀装置の外部後方へ直接排出される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、排塵処理室18内で処理された被処理物のうち、穀粒を含んだ塵芥や短い稈切れ等の細かい排塵物を排塵処理室18後端部の底部の排塵口21から排出し、長藁や団子状に絡み付いた大きな藁屑などを排塵処理室18の外側壁22に開口した藁屑排出口23から脱穀装置の外部後方へ直接排出するので、揺動選別棚40上の藁屑が減少してふるい選別に負担がかからず、揺動選別が効果的に行なえ、3番ロスを大幅に低減し、脱穀選別作業の精度および能率を向上させることができる。また、直接機外に排出する藁屑などは、そのまま脱穀装置の外部後方へ排出案内することによって藁屑をできるだけ既刈地側に排出することができるようになり、未刈地側の穀稈にふりかかることがなく、刈取作業を能率良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
まず、図1及び図2に示すコンバインの構成について述べる。
走行クロ−ラ1を具備する車体2上には、前部に昇降可能な刈取部3を、後部に脱穀装置(脱穀機)4を搭載している。刈取部3の横側部には運転席5や操作ボックス6等の運転部が設置され、その後方にはグレンタンクGが装備されている。また、脱穀装置4の後部には脱穀後の排藁を切断処理する排藁カッターCが装備されている。
【0009】
つぎに、脱穀装置4の構成につき説明する。扱胴7を内装軸架した扱室8の下半周部に沿って受網9を張設している。10は扱室8の上方部を覆う扱胴カバ−であって、扱胴軸方向に平行な軸芯回りに揺動開閉可能に構成している。
【0010】
扱室8の扱口側には穀稈を挟持搬送するフィ−ドチェン11とこの上側に対設する挟持レ−ルを配設している。この挟持レ−ルは扱胴カバ−10側に装着して該カバ−と共に揺動開閉するように構成してある。扱室8の終端側には多量の藁屑や未処理物を含む排塵処理物を下方に落下させる排塵落下口12が設けらている。
【0011】
前記扱室8のフィ−ドチェン11側とは反対側一側には2番処理胴14を内装軸架した2番処理室15を並設している。また、前記2番処理胴14の後方にはこれと同一軸芯上において外周に螺旋処理歯16を備えた排塵処理胴17を内装軸架した排塵処理胴室18を構成して設けている。前記扱室終端の排塵落下口12に対応する部位から排塵処理室18始端への送塵路13には、排塵処理胴17の始端部に固着された螺旋形状の取込羽根19が介入するように設けて、排塵処理室18内への排塵物の取込みが容易に行なえるようにしている。排塵処理胴17の終端には排出羽根20が設けられ、処理室終端にまで送られてきた排塵物を前記排出羽根20によって処理室終端の底部を開口した排塵口21から後記する揺動選別装置の選別棚終端及び機外に排出する構成としている。また、排塵処理室18終端の外側壁(右側板)22部には、排塵処理室終端まで送られてきた長藁や団子状になった大きな藁屑などを機外に排出する藁屑排出口23が設けられ、この藁屑排出口23から排出される藁屑を藁屑排出案内板24の傾斜面24aによって右側(既刈地側)斜め後方下方に向けて排出案内するよう構成している。なお、この藁屑排出案内板24は、排藁搬送装置によって搬送される排藁の穂先側を案内する排藁ガイドカバー25より内側位置となるよう配置構成することで、この右側に設置するグレンタンクをそれだけ排藁ガイドカバー側に近づけることができ、タンクの容量を減少することなく、藁屑をスムーズに排出することができる。また、排塵処理室18の受網27を格子状に構成し、藁屑排出案内板24の傾斜面部24aを排塵受網27の格子部終端と略同一にした構成とすることで、受網格子にてこなし作用が終わった排塵処理物を藁屑排出案内板の傾斜面部によって、より右側に拡散処理することができる。更に、この藁屑排出案内板24は、処理後の藁屑を排塵処理室の終端から排塵処理胴17の軸芯方向後方側にも排出でき、且つ揺動選別棚40の終端を越えて排出できるように側面視後方下部に向けて傾斜する傾斜面部24bを構成している。
【0012】
前記排塵処理室18内には、ケーシング外側壁22の上部側において一部を上方に向けて膨出形成して所定量の処理物が入り込む程度の膨出空間Sを設け、この膨出空間S内に数個の切刃26を設けて長わらや団子状になった藁屑などを切断分離するように構成している。これにより、切刃を排塵処理物に作用させることが容易となり、確実に切断分離することが可能となる。また、切刃は図例のように排塵処理胴の円筒部に対応する位置に設けることにより排塵処理物の処理性能が向上する。
【0013】
排塵処理室18の処理室受網27の後端部には、排塵口21からの排塵物を揺動選別棚40側に向けて案内落下させる丸棒状のガイド杆28が設けられ、揺動選別棚40の終端側上方に配置した排塵ファン30の側板31には、該側板31より排塵口21側に向けて突設するガイド板29が前記ガイド杆28に沿うように設けられている。排塵処理室18終端の排塵口21から排出された排塵物は、排塵ファン側板31に当たった後、ガイド板29及びガイド杆28により左側後方に搬送されることになるため、排塵物の拡散が促進される。また、ガイド板をガイド杆に沿うように取り付けることで、排塵物をスムーズに排出することができる。
【0014】
また、前記藁屑排出口23側のわら屑排出案内板24の下端部と揺動選別棚40の側面シール32とが略同一高さとなるよう構成することで、藁屑の選別室内への浸入を防止でき、揺動棚の側面シール性能を維持しながら、藁屑排出案内板のテーパーを大きくすることができ、排出作用がスムースに行える。
【0015】
揺動選別棚40の下方には、選別方向の上手側から順に、唐箕41と、1番移送螺旋42と、2番移送螺旋43と、その上方に排塵ファン(横断流ファン)30を設けて選別室を構成している。なお、1番移送螺旋42で回収された穀物は1番揚穀装置を介してグレンタンクG内に収容する。また、2番移送螺旋43で回収された2番物は2番処理胴14の2番処理室15内へ還元するようになっている。
【0016】
そして、揺動選別棚40は、扱室からの脱穀処理後の処理物及び排塵処理室からの排塵処理物を受け入れて揺動移送しながらふるい選別する構成であり、選別方向上手側から移送棚44、チャフシーブ45、ストローラック46の順に配置し、且つ、前記チャフシーブ45の下方にグレンシーブ47を配置して設け、前記唐箕41及び排塵フアン30による選別風と揺動との共同作用によって扱室8から漏下してきた処理物を受け入れて揺動移送しながらふるい選別処理するように構成している。なお、前記排塵処理室18終端の排塵口21からの排塵物はストローラック46上に受けられる。
【0017】
以上のように構成された刈取脱穀装置についてその作用を説明する。
まず、圃場の穀稈は、前進する機体の前部位置にある刈取部3によって刈取られ、上方に搬送されて、フィ−ドチェン11に受け継がれてのち脱穀装置4に供給される。そして、穀稈は、株元をフィ−ドチェン11に挾持されて搬送されながら穂先部分が扱室8内に供給されて、回転している扱胴7により脱穀作用を受ける。このようにして処理された脱穀処理物は、回転している扱胴7によって持ち回りされて、更に、脱粒処理作用を受け、受網9から漏下して選別室の揺動選別棚40に達し揺動選別作用を受ける。
【0018】
この場合、扱室の始端側で脱穀処理された処理物は、移送棚44上に落下して後方へ揺動移送されてチャフシ−ブ45に達する。また、扱室終端に至った排塵処理物は、排塵落下口12から下方のチャフシーブ45上に落下するものと、送塵路13を経て排塵処理室18内へ送られて排塵処理胴17により処理されるものとに分かれる。そして、チャフシーブ45上での排塵処理物は、チャフシ−ブ45を構成している複数枚のシ−ブ板の相互間にある選別間隔を漏下しながら風選作用を受ける。
【0019】
チャフシ−ブ45から漏下するものはグレンシーブ47上に落下しここでふるい選別されながら風選作用を受ける。このとき、唐箕41は、起風した選別風を選別室内に吹き込みながら選別し、排塵ファン30による作用によって選別される。
【0020】
このようにして、処理物は、揺動選別作用と選別風による風選作用との共同作用を受けながら選別されて、1番物(精粒)、2番物、排塵物とに選別分離され、1番物はグレンシ−ブ47にてふるい選別された後、1番移送螺旋42の受樋内に落下して収集されて機外に取り出されグレンタンクG内に収容される。2番物は2番移送螺旋43から2番揚穀装置によって揚穀されて2番処理室15内に還元され再処理される。そして、排塵物は横断流排塵ファン30によって吸塵され機外に排出されると共に、ストロ−ラック46に達した排塵物は棚先から機外に排出される。
【0021】
一方、扱室終端より排塵処理室18内に取り込まれた排塵処理物は、後方に移送されながら処理胴17外周の螺旋処理歯16によってこなされ、処理室受網27の濾過穴より漏下しチャフシーブ45上に還元される。また、排塵処理室18内では、螺旋処理歯16と切刃26とによって処理室内を持ち回りされゆっくりと送られながら分離選別処理されるが、排塵処理室18の終端に至っては、細かい排塵物は処理胴17終端の排出羽根20により排塵口21から下方のストローラック46上に排出処理され、長藁などの大きなわら屑は、処理室外側壁部に設けられた藁屑排出口23から機外に排出されると共に藁屑排出案内板24を介して右側斜め後方に向けて排出落下される。
【0022】
次に、図8に示す実施例について説明する。
図8に示すように、扱胴7の右側に排塵処理胴17及び2番処理胴14を同軸上に架設した脱穀装置において、2番処理胴14は前側に搬送しながら2番物を処理し、排塵処理胴17は後側に搬送しながら扱室からの排塵処理物を処理する構成のものにおいて、排塵処理胴17は後端(終端)の排塵口21側が2番処理胴側より低くなるように傾斜させると共に、この終端の排塵口21が揺動選別棚40の終端部位から後方下方に向けて傾斜する拡散板50の上側に臨むように配置構成している。かかる構成により、排塵処理胴の排塵口側が低くなることで、排塵処理胴による排出能力も向上し、拡散板に排塵口を直接臨ませることで排塵物の拡散効果も向上する。一方、2番処理胴側においても後下がり傾斜になるため、この2番処理胴によって前方へ搬送される被処理物の流れに抵抗がかかり充分に処理することができる。
【0023】
また、排塵処理胴側の排塵口を排藁カッターCの下方近くに臨ませることによって排藁カッターからの切藁と排塵口からの排塵物及び揺動選別棚終端からの排塵物とが混ざり合い一緒に排出落下させることができ、排塵物の拡散効果が向上する。更に、前記排塵口21が横断流排塵ファン30の下部より低くなるように配置することによって、排塵物が排塵ファンの右側板に阻害されることがなく、下方へスムーズに排出落下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】コンバインの側面図
【図2】脱穀装置の要部の左切断側面図
【図3】同上要部の平面図
【図4】脱穀装置の要部の右切断側面図
【図5】同上要部の切断背面図
【図6】脱穀装置の要部の右切断側面図
【図7】同上要部の背面図
【図8】別実施例の脱穀装置要部の切断側面図
【符号の説明】
【0025】
8 扱室
11 フィードチェン
17 排塵処理胴
18 排塵処理室
21 排塵口
22 外側壁
23 藁屑排出口
40 揺動選別棚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室(8)のフィードチェン(11)設置側とは反対の側に、扱室(8)の後部から引き継いだ被処理物を後方に移送しながら処理する排塵処理胴(17)を備えた排塵処理室(18)を設け、この排塵処理室(18)の後端部に、底部を開口して穀粒を含んだ被処理物を脱穀装置内部の揺動選別棚(40)上に排出する排塵口(21)と、排塵処理室(18)の外側壁(22)に開口して藁屑を脱穀装置の外部後方に直接排出する藁屑排出口(23)を設けたことを特徴とする脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−148180(P2009−148180A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327244(P2007−327244)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】