説明

脱穀装置

【課題】脱穀装置を、コンパクトな構成でありながら長い処理行程によって処理物に十分な処理作用を与えられるものとし、穀粒の単粒化を促進して穀粒回収率を高める。
【解決手段】扱胴(34)を内装した扱室(35)の右側後部に、前記扱胴(34)と平行に第1排塵処理胴(48)を内装した第1排塵処理室(40)の移送始端部を第1連通口(41)を介して連通させ、第1排塵処理室(40)の移送終端部には、第1排塵処理胴(48)と平面視で直交する第2排塵処理胴(65)を内装した第2排塵処理室(49)の移送始端部を第2連通口(50)を介して連通させ、該第2排塵処理室(49)の移送終端部に、外部へ向けて開口する排塵口(69)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバイン等に搭載する脱穀装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1に示すように、扱胴を内装した扱室の右側後部に、扱胴と平行に排塵処理胴を内装した排塵処理室の移送始端部を連通口を介して連通させ、扱室の左側後方の排塵処理室と対向する部位に吸引排塵ファンを設け、扱室及び排塵処理室の下方に、前側から移送棚とシーブとストローラックとをこの順に配置した揺動選別棚を設け、該揺動選別棚の下側に、前側から唐箕と1番移送螺旋と2番移送螺旋とをこの順に配置し、排塵処理胴の前側に、該排塵処理胴と一体で回転することで選別後の2番物を再処理して揺動選別棚の移送始端部に還元する2番処理胴を設けた脱穀装置が知られている。
【0003】
また、特許文献2に示すように、扱室の後方に、該扱室に内装した扱胴と平面視で直交する拡散処理胴を設ける技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3146924号公報
【特許文献2】特開2006−262867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された発明は、扱室内で発生した処理物を排塵処理室に引き継いで処理するものであるが、この排塵処理室から漏下せずに、この排塵処理室の移送終端部まで移送された藁屑の塊を主体とした排塵物は、直接、揺動選別棚終端のストローラック上に排出されるか、又は脱穀装置の外部へ排出される構成である。
【0006】
このため、この排塵処理室の移送終端部から脱穀装置の外部へ直接排出する場合は言うまでもなく、この排塵処理室の移送終端部からストローラック上に排出された排塵物は、このストローラック上を後方へ移送され、この排塵物である藁屑の塊に混入した穀粒ごと、脱穀装置の外部へ排出されてしまい、穀粒の収穫損失となる不具合がある。
【0007】
また、上記特許文献2に記載された発明は、扱室終端部から排出された排塵物を拡散しながら揺動選別棚上へ落下させるためのものであり、排塵物を軸芯方向に移送しながら処理して枝梗を除去する機能を備えていない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、本発明は次の技術的手段を講じる。
即ち、請求項1に記載の発明は、扱胴(34)を内装した扱室(35)の右側後部に、前記扱胴(34)と平行に第1排塵処理胴(48)を内装した第1排塵処理室(40)の移送始端部を第1連通口(41)を介して連通させ、前記扱室(35)の左側後方の第1排塵処理室(40)と対向する部位に吸引排塵ファン(54)を設け、前記扱室(35)及び第1排塵処理室(40)の下方に、前側から移送棚(58)とシーブ(59)とストローラック(60)とをこの順に配置した揺動選別棚(61)を設け、該揺動選別棚(61)の下側に、前側から唐箕(62)と1番移送螺旋(63)と2番移送螺旋(64)とをこの順に配置し、前記第1排塵処理室(40)の移送終端部には、第1排塵処理胴(48)と平面視で直交する第2排塵処理胴(65)を内装した第2排塵処理室(49)の移送始端部を第2連通口(50)を介して連通させ、該第2排塵処理室(49)の移送終端部に、外部へ向けて開口する排塵口(69)を設けたことを特徴とする脱穀装置としたものである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記第1排塵処理胴(48)の移送終端部の下側に、第2排塵処理胴(65)の移送始端部を平面視で重合する状態で配置したことを特徴とする請求項1に記載の脱穀装置としたものである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記第2排塵処理室(49)の周面に、第2排塵処理胴(65)によって処理された処理物を揺動選別棚(61)上に漏下させる漏下孔(68)を形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の脱穀装置としたものである。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記排塵口(69)から排出される排塵物を、前記吸引排塵ファン(54)の排塵風吹き出し口(57)から吹き出す排塵風によって左右一側へ拡散して排出する構成としたことを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載の脱穀装置としたものである。
【0012】
請求項5に記載の発明は、前記扱室(35)における第1連通口(41)よりも後側の部位に、扱胴(34)の回転によって脱穀後の排藁にささり込んだ穀粒を回収する4番処理室(43)を形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3又は請求項4記載の脱穀装置としたものである。
【0013】
請求項6に記載の発明は、前記第1排塵処理胴(48)の前側に、該第1排塵処理胴(48)と一体で回転することで選別後の2番物を再処理して揺動選別棚(61)の移送始端部に還元する2番処理胴(71)を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3又は請求項4又は請求項5記載の脱穀装置としたものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によると、扱室(35)内で扱胴(34)の作用を受けて脱粒した処理物を、この扱室(35)の右側後部から第1連通口(41)を介して第1排塵処理室(40)に引き継ぎ、第1排塵処理胴(48)によって処理しながら穀粒を揺動選別棚(61)上へ漏下させると共に、第1排塵処理室(40)の移送終端部から第2連通口(50)を介して第2排塵処理室(49)に引き継ぎ、第2排塵処理胴(65)によって処理しながら穀粒を揺動選別棚(61)上へ漏下させ、処理後の藁屑を第2排塵処理室(49)の移送終端部の排塵口(69)から脱穀装置の外部へ排出することにより、コンパクトな構成でありながら、第1排塵処理室(40)からこれに直交する第2排塵処理室(49)に至る長い処理行程によって、処理物に十分な処理作用を与えることができ、穀粒の単粒化を促進して穀粒回収率を高め、収益性を向上させることができる。
【0015】
請求項2記載の発明によると、上記請求項1に記載の発明の効果に加え、第1排塵処理胴(48)の移送終端部から第2排塵処理胴(65)の移送始端部への処理物の引き継ぎを円滑化し、処理物の詰まりを少なくして、脱穀作業の能率を高めることができる。
【0016】
請求項3記載の発明によると、上記請求項1又は請求項2記載の発明の効果に加え、第2排塵処理室(49)の周面に設けた漏下孔(68)から穀粒を揺動選別棚(61)上に漏下させて回収することができる。
【0017】
請求項4記載の発明によると、上記請求項1又は請求項2又は請求項3に記載の発明の効果に加え、第2排塵処理室(49)の移送終端部に設けた排塵口(69)から排出される藁屑を主体とした排塵物を、吸引排塵ファン(54)の排塵風吹き出し口(57)から吹き出す排塵風によって左右一側へ拡散して排出することができ、堆積する排塵物の層厚を略一定にすることで後工程の耕うん作業による土質の改善を均一化し、収量の増加を図ることができる。
【0018】
請求項5記載の発明によると、上記請求項1又は請求項2又は請求項3又は請求項4記載の発明の効果に加え、脱穀後の穀稈の穂先側にささり込んだ穀粒を4番処理室(43)内で落下させて回収することができ、3番損失および4番損失の低減によって、穀粒回収率をより高めることができる。
【0019】
請求項6記載の発明によると、上記請求項1又は請求項2又は請求項3又は請求項4又は請求項5に記載の発明の効果に加え、選別後の2番物を2番処理胴(71)によって単粒化処理し、揺動選別棚(61)の移送始端部に還元して再選別することにより、穀粒の回収効率を一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】コンバインの側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】脱穀装置の側面図である。
【図4】脱穀装置の平面図である。
【図5】脱穀装置の背面図である。
【図6】脱穀装置の作用説明用の側面図である。
【図7】脱穀装置の作用説明用の平面図である。
【図8】脱穀装置の作用説明用の背面図である。
【図9】別実施例の脱穀装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
まず、本発明の脱穀装置を搭載するコンバインの機体構成について説明する。
図1、図2に示すコンバインは、機台フレーム1の下側に左右の走行装置2,2を備え、機台フレーム1の上側に脱穀装置3と穀粒貯留装置4を左右に併設し、該穀粒貯留装置4の前側の機台フレーム1上の部位に操縦部5を搭載し、該操縦部5及び脱穀装置3の前方に刈取装置6を昇降自在に設けて機体を構成する。
【0022】
前記走行装置2,2は、機台フレーム1の前部に取り付けた走行ミッションケース7から駆動される左右の駆動スプロケット8,8と、機台フレーム1の左右下方に支持した左右の転輪フレーム9,9に軸支した転輪10,10とにわたってクローラ11,11を巻き掛けて構成する。
【0023】
前記穀粒貯留装置4は、合成樹脂によって成形したタンクの上部から、脱穀装置3によって脱穀処理した穀粒を1番揚穀筒12を介して投入する構成であり、該穀粒貯留装置4の後側に、該穀粒貯留装置4の底部に設けた底部螺旋(図示省略)から穀粒を引き継いで揚穀する揚穀筒13を立設し、該揚穀筒13の上端部に伸縮自在の排出筒14を上下回動自在に接続する。
【0024】
前記操縦部5は、機台フレーム1上に搭載したエンジン15を覆うエンジンカバー16の上部に座席17を取り付け、該座席17の前方のフロント操作ポスト18上の右側に、左右方向に傾倒操作することで前記走行ミッションケース7内の左右のサイドクラッチを入り切り操作して機体を旋回させ、前後方向に傾倒操作することで刈取装置6を昇降させる操向レバー19を設け、該操向レバー19の後側に手首を載せる手首載せ台20を設け、前記座席17の左側に、スロットルレバー21と主変速レバー22と副変速レバー23を備えた側部操作パネル24を設けて構成する。
【0025】
前記刈取装置6は、機台フレーム1の前部に取り付けた懸架台25の上端部に、伝動軸を内装した後支持フレーム26の後端部を上下回動自在に軸支し、該後支持フレーム26の前端部に左右方向の下部ギヤケース27の中央部を取り付け、該下部ギヤケース27から前方へ延出する5本の分草パイプ28の前端部に分草板29を取り付け、該分草パイプ28の基部の下部ギヤケース27の前側の部位にバリカン式の刈刃装置30を支持させ、前記分草パイプ28の前部の分草板29の後側の部位から4基のラグ式の引起装置31を後上り傾斜姿勢に設けて構成する。更に、該刈取装置6に備える穀稈搬送装置(図示省略)から刈取穀稈を引き継いで更に後方上方へ搬送する穂先搬送装置32aとこれに一体の株元搬送装置32bを備えている。
【0026】
しかして、図3〜図5に示す脱穀装置3について詳述する。
該脱穀装置3は、多数の扱歯33を周面に備えた扱胴34を扱室35の内部に機体前後方向の軸芯で回転自在に軸架し、該扱室35の左側に開口する扱口に沿って、前記株元搬送装置32bから刈取穀稈を引き継いで後方へ搬送するフィードチェン36を備える。該フイードチェン36の上側には、挟扼杆37を対向配置する。前記扱胴34の下側外周に沿って扱網38を張設する。
【0027】
そして、前記扱胴34の後端部の外周面に近接させて処理物の通過を規制する仕切壁39を設け、該仕切壁39の前側から後述する第1排塵処理室40へ連通する第1連通口41を設ける。
【0028】
前記仕切壁39の後面と、扱室35の最後端の後壁42との間に、4番処理室43を形成し、該4番処理室43における扱胴34の後端部周面には4番処理歯44を植設し、扱歯33によって脱穀した後の排藁の穂先側を、後続する排藁搬送チェン45a及び挟持杆45bからなる排藁搬送装置45に引き継ぐ前に4番処理歯44で叩いて、この穂先部に刺さり込んでいる穀粒を脱落させる構成とする。前記扱網38に後続する仕切壁39の前側の部位には、複数の排稈ガイド46を斜設し、該各排稈ガイド46間には適宜の空間を設けている。また、前記4番処理室43の下側は基本的には開放しており、1本のガイド杆47を斜設している。尚、前記4番処理歯44は、平板状に形成して扱胴34の回転軸芯に対して斜めに植設することで起風機能を持たせる。これにより、扱胴34の回転によって4番処理歯44で起風された風により、扱室35、第1排塵処理室40から漏下する処理物を、揺動選別棚61上に落下する前に風選別することができ、揺動選別棚61上の藁屑の量を減らして選別能力を高めることができる。
【0029】
また、前記扱室35の右側後部に、第1排塵処理胴48を回転自在に内装した第1排塵処理室40を第1連通口41を介して連通させる。該第1排塵処理室40の周壁は、穀粒の漏下を許容する目合いの格子とし、第1排塵処理室40の後端部下側には、後述する第2排塵処理室49の始端部へ連通する第2連通口50を設ける。前記第1排塵処理胴48の移送始端部周面には処理物の取り込み用の螺旋板51を固着し、該第1排塵処理胴48の中間部には多数の処理歯52を固着し、該第1排塵処理胴48の移送終端部には、処理物を前記第2排塵口50へ向けて跳ね出す羽根板53を固着する。
【0030】
そして、前記扱室35の左側後方の第1排塵処理室40と対向する部位に、軸流式の吸引排塵ファン54を設ける。該吸引排塵ファン54のケーシング55の内側面には円形の吸気穴56を形成し、ケーシング55の下側には、後下方内側へ向けて排塵風を案内する排風ダクト(排塵風吹き出し口)57を設ける。
【0031】
また、前記扱室35及び第1排塵処理室40の下方に、前側から移送棚58とシーブ59とストローラック60とをこの順に配置した揺動選別棚61を前後上下に揺動駆動するべく設ける。該揺動選別棚61の下側には、前側から唐箕62と1番移送螺旋63と2番移送螺旋64とをこの順に配置する。
【0032】
そして、前記第1排塵処理室40の移送終端部には、第1排塵処理胴48と平面視で直交する第2排塵処理胴65を回転自在に軸架した第2排塵処理室49の移送始端部を前記第2連通口50を介して連通させる。該第2排塵処理胴65は、側面視で前記吸引排塵ファン54の後下方のストローラック60の上方に配置する。該第2排塵処理胴65の全長は、脱穀装置3の左右の機壁の間隔に匹敵する長さとし、該第2排塵処理胴65の周面には、その移送始端部に取り込み羽根75を螺旋状に固設し、その中間部には多数の第2処理歯67を植設し、移送終端部には放出板73を固設する。また、第2排塵処理室49の周壁には、穀粒の漏下を許容する目合いの格子状の漏下孔68を形成し、第2排塵処理室49の移送終端部には、外部へ向けて開口する排塵口69を設ける。該排塵口69には、後下方へ向かう排塵ダクト70を設け、該排塵ダクト70から排出される排塵物の排出方向と、前記吸引排塵ファン54の排風ダクト57から排出される排塵風の排出方向とを合流するように設定し、排塵ダクト70から排出される排塵物が吸引排塵ファン54の排風ダクト57から排出される排塵風によって脱穀装置の右側(コンバインの既刈地側)に吹き飛ばされて拡散する構成とする。
【0033】
また、前記第1排塵処理胴48の前側には、該第1排塵処理胴48と同軸で一体回転する2番処理胴71を設ける。該2番処理胴71の周面には多数の処理板72を螺旋状に植設し、該2番処理胴71の移送終端となる前端部には放出板73を固設する。また、該2番処理胴71の下側周囲を囲う樋体74を設け、該樋体74の前端部から前方の部位を下方へ開口して移送棚58上に連通させる。
【0034】
尚、前記扱胴34は、エンジン15の駆動力が脱穀クラッチ(図示省略)を介して入力する伝動ケース77から、該伝動ケース77の第1出力軸に設けた出力プーリ78と伝動ベルト79と扱胴34の回転軸に取り付けた入力プーリ80を介して伝動されて駆動される構成とする。また、前記2番処理胴71と第1排塵処理胴48は、前記伝動ケース77から、該伝動ケース77の第2出力軸から同軸で駆動される構成とする。そして、前記第2排塵処理胴65は、脱穀装置3の右側の機壁から外部へ突出した回転軸81の端部に取り付けた入力プーリ82と、エンジン15の駆動力を脱穀クラッチ(図示省略)を介して出力する出力軸(1番移送螺旋63の回転軸が好ましい。)に設けた出力プーリ83との間に、伝動ベルト84を巻き掛けて伝動する構成とする。前記吸引排塵ファン54の入力プーリ85は、脱穀装置3の左側の機壁の外側に設けている。
【0035】
また、揺動選別棚61の後端部から脱穀装置3の外部へ開口する3番口86には、該3番口86を閉塞するべく、ビニール製の仕切り幕87の上端部を3番口86の上縁に取り付け、該仕切り幕87の下端部側を自由端として開閉自在に設けている。これによって、揺動選別棚61の後端から外部への藁屑の排出を阻害することなく、第2排塵処理室49から漏下する穀粒が脱穀装置3の外部へ飛散することを防止できる。
【0036】
以上の構成による脱穀処理物の流れを示す図6〜図8に基づいて、本発明の作用効果を説明する。
まず、フィードチェン36と挟扼杆37とで挟持搬送されながら扱室35内で扱胴34の作用を受けて脱粒した処理物を、この扱室35の右側後部から第1連通口41を介して第1排塵処理室40に引き継ぎ(矢線A)、第1排塵処理胴48によって処理しながら(矢線B)穀粒を揺動選別棚61上へ漏下させると共に、第1排塵処理室40の移送終端部から第2連通口50を介して落下させながら、第2排塵処理胴65の移送始端部に設けた取り込み羽根75によって円滑に第2排塵処理室49に引き継ぎ(矢線C)、第2排塵処理胴65によって処理しながら(矢線D)穀粒を揺動選別棚61上へ漏下させ、処理後の藁屑を第2排塵処理室49の移送終端部の排塵口69から脱穀装置の外部へ排出する(矢線E)ことにより、コンパクトな脱穀装置3としながらも、第1排塵処理室40からこれに直交する第2排塵処理室49に至る長い処理行程によって、処理物に十分な処理作用を与えることができ、穀粒の単粒化を促進して穀粒回収率を高め、収益性を向上させることができる。尚、第1排塵処理胴48の回転周速度よりも第2排塵処理胴65の回転周速度の方を高速に設定することで、第1排塵処理室40から第2排塵処理室49への処理物の引き継ぎが円滑になる。また、第1排塵処理室40内で処理しきれなかった処理物を、第2排塵処理室49内でこなし処理できることで、穀粒回収率が向上する。また、第2排塵処理胴65の回転方向は、側面視で時計方向回転とすることで、揺動選別棚61上の前方へ穀粒を放出して選別行程を長くとり、選別精度を高めている。また、第2排塵処理胴65の直径は、第1排塵処理胴48の直径よりも小さく設定し、夫々の処理量に適したものとすることで、脱穀装置3の軽量化、コンパクト化を図っている。また、第2排塵処理胴65の全長は、第1排塵処理胴48の全長よりも短くし、脱穀装置3の軽量化、コンパクト化を図っている。
【0037】
そして、第1排塵処理胴48の移送終端部の下側に、第2排塵処理胴65の移送始端部を平面視で重合する状態で配置したことで、第1排塵処理胴48の移送終端部から第2排塵処理胴65の移送始端部への処理物の引き継ぎを円滑化し、処理物の詰まりを少なくして、脱穀作業の能率を高めることができる。
【0038】
また、第2排塵処理室49の周面に、第2排塵処理胴65によって処理された処理物を揺動選別棚61上に漏下させる漏下孔68を形成したことで、第2排塵処理室49の周面に設けた漏下孔68から穀粒を揺動選別棚61上に漏下させ、更に2番移送螺旋64に取り込ませて(矢線F)回収することができる。また、このように第2排塵処理室49の周面に設けた漏下孔68から穀粒が漏下する際に、この穀粒と共に細かな藁屑も漏下してしまうが、この藁屑を揺動選別棚61上に落下する前に吸引排塵ファン54によって吸い出して排出できるので、揺動選別棚61上の藁屑の量が減り、選別精度が向上する。
【0039】
また、排塵口69から排出される排塵物を、前記吸引排塵ファン54の排塵風吹き出し口57から吹き出す排塵風によって左右一側へ拡散して排出する構成としたことで、第2排塵処理室49の移送終端部に設けた排塵口69から排出される藁屑を主体とした排塵物(矢線E)を、吸引排塵ファン54の排塵風吹き出し口57から吹き出す排塵風(矢線H)によって左右一側へ拡散して排出することができ、堆積する排塵物の層厚を略一定にすることで後工程の耕うん作業による土質の改善を均一化し、収量の増加を図ることができる。
【0040】
また、扱室35における第1連通口41よりも後側の部位に、扱胴34の回転によって脱穀後の排藁にささり込んだ穀粒を回収する4番処理室43を形成したことで、脱穀後の穀稈の穂先側にささり込んだ穀粒を4番処理室43内で落下させて回収することができ、3番損失および4番損失の低減によって、穀粒回収率をより高めることができる。
【0041】
また、第1排塵処理胴48の前側に、該第1排塵処理胴48と一体で回転することで選別後の2番物を再処理して揺動選別棚61の移送始端部に還元する2番処理胴71を設けたことで、選別後の2番物を2番処理胴71によって単粒化処理し、揺動選別棚61の移送始端部に還元(矢線I)して再選別することにより、穀粒の回収効率を一層高めることができる。
【0042】
また、脱穀装置3の後側に設けた排藁切断装置88によって切断された切断藁(矢線J)が、第2排塵処理室49の移送終端部の排塵口69から脱穀装置の外部へ排出される排塵物(矢線E)と合流して落下する構成とすることで、これら排塵物と切断藁とを圃場面上に均一な層厚で排出できる。
【0043】
また、図9に示すように、2番移送螺旋64の前側に第2唐箕89を設け、該第2唐箕89からの選別風の送風方向を、前記第2排塵処理室49の漏下孔68に指向させる構成としてもよい。これにより、漏下孔68から漏下した藁屑が揺動選別棚61上に落下する前に第2唐箕89からの選別風の作用を受けて風選別され、藁屑を後方へ吹き飛ばして外部へ排出できるので、揺動選別棚61上の藁屑の量が減少して、選別能力が向上する。
【符号の説明】
【0044】
34 扱胴
35 扱室
40 第1排塵処理室
41 第1連通口
43 4番処理室
48 第1排塵処理胴
50 第2連通口
54 吸引排塵ファン
57 排塵風吹き出し口
58 移送棚
59 シーブ
60 ストローラック
61 揺動選別棚
62 唐箕
63 1番移送螺旋
64 2番移送螺旋
65 第2排塵処理胴
49 第2排塵処理室
68 漏下孔
69 排塵口
71 2番処理胴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱胴(34)を内装した扱室(35)の右側後部に、前記扱胴(34)と平行に第1排塵処理胴(48)を内装した第1排塵処理室(40)の移送始端部を第1連通口(41)を介して連通させ、前記扱室(35)の左側後方の第1排塵処理室(40)と対向する部位に吸引排塵ファン(54)を設け、前記扱室(35)及び第1排塵処理室(40)の下方に、前側から移送棚(58)とシーブ(59)とストローラック(60)とをこの順に配置した揺動選別棚(61)を設け、該揺動選別棚(61)の下側に、前側から唐箕(62)と1番移送螺旋(63)と2番移送螺旋(64)とをこの順に配置し、前記第1排塵処理室(40)の移送終端部には、第1排塵処理胴(48)と平面視で直交する第2排塵処理胴(65)を内装した第2排塵処理室(49)の移送始端部を第2連通口(50)を介して連通させ、該第2排塵処理室(49)の移送終端部に、外部へ向けて開口する排塵口(69)を設けたことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記第1排塵処理胴(48)の移送終端部の下側に、第2排塵処理胴(65)の移送始端部を平面視で重合する状態で配置したことを特徴とする請求項1に記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記第2排塵処理室(49)の周面に、第2排塵処理胴(65)によって処理された処理物を揺動選別棚(61)上に漏下させる漏下孔(68)を形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の脱穀装置。
【請求項4】
前記排塵口(69)から排出される排塵物を、前記吸引排塵ファン(54)の排塵風吹き出し口(57)から吹き出す排塵風によって左右一側へ拡散して排出する構成としたことを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載の脱穀装置。
【請求項5】
前記扱室(35)における第1連通口(41)よりも後側の部位に、扱胴(34)の回転によって脱穀後の排藁にささり込んだ穀粒を回収する4番処理室(43)を形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3又は請求項4記載の脱穀装置。
【請求項6】
前記第1排塵処理胴(48)の前側に、該第1排塵処理胴(48)と一体で回転することで選別後の2番物を再処理して揺動選別棚(61)の移送始端部に還元する2番処理胴(71)を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3又は請求項4又は請求項5記載の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−30476(P2011−30476A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178439(P2009−178439)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】