説明

脱穀装置

【課題】排塵処理室から排出された処理物中の穀粒が、ストローシーブ上の藁屑によって連れ出されにくいものとし、穀粒回収率を向上させる。
【解決手段】揺動選別棚(20)後部の第2篩い選別部(25)の上側に、揺動選別棚(20)と一体で揺動する上段篩い選別部(25b)を設け、上段篩い選別部(25b)から漏下した処理物を第2篩い選別部(25)を迂回してニ番物回収部(19B)へ案内する迂回路(25h)を設ける。この迂回路(25h)は、第2篩い選別部(25)を貫通させて設け、迂回路(25h)下端の開口部(25g)をニ番物回収部(19B)の上方に臨ませる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバイン等に備える脱穀装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンバイン等に備える脱穀装置として、特許文献1には、扱胴を軸架した脱穀室の後部に、排塵処理胴を軸架した排塵処理室の前部を連通し、該脱穀室及び排塵処理室の下側に配置した選別室内には、前部の移送棚と中間部の第1篩い選別部と後部の第2篩い選別部を有した揺動選別棚を設け、第2篩い選別部の上方に排塵ファンを設けると共に、揺動選別棚の下側には、選別風を送風する唐箕と、第1篩い選別部から漏下した一番物を回収する一番物回収部と、第2篩い選別部から漏下した二番物を回収する二番物回収部とを前側からこの順に備え、排塵ファン寄りの第2篩い選別部の高さを、排塵処理室寄りの第2篩い選別部の高さよりも高くした脱穀装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−131155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術では、第2篩い選別部上の処理物中の藁屑を、排塵ファンによって吸い出す効果は期待できるものの、排塵処理室の後端部の排塵口から排出された処理物中の穀粒や枝梗付着粒が、第2篩い選別部上の藁屑と合流してしまい、この藁屑によって脱穀装置の外部へ連れ出され、損失となる問題を解消できない。
この発明は、排塵処理室の排塵口から排出される処理物中の穀粒や枝梗付着粒が、第2篩い選別部上の藁屑と合流しないものとし、脱穀装置外部への連れ出しを防止して穀粒回収率を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は次の技術的手段を講じる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、扱胴(10)を軸架した脱穀室(11)の後部に、排塵処理胴(31)を軸架した排塵処理室(30)の前部を連通し、該脱穀室(11)及び排塵処理室(30)の下側に配置した選別室(18)内には、前部の移送棚(22)と中間部の第1篩い選別部(23,24)と後部の第2篩い選別部(25)を有した揺動選別棚(20)を設け、前記第2篩い選別部(25)の上方に排塵ファン(43)を設けると共に、揺動選別棚(20)の下側には、選別風を送風する唐箕(16)と、第1篩い選別部(23,24)から漏下した一番物を回収する一番物回収部(19A)と、第2篩い選別部(25)から漏下した二番物を回収する二番物回収部(19B)とを前側からこの順に備えた脱穀装置において、前記第2篩い選別部(25)の上側に、揺動選別棚(20)と一体で揺動する上段篩い選別部(25b)を設け、該上段篩い選別部(25b)から漏下した処理物を前記第2篩い選別部(25)を迂回してニ番物回収部(19B)へ案内する迂回路(25h)を設けたことを特徴とする脱穀装置とした。
請求項2に記載の発明は、前記迂回路(25h)を、第2篩い選別部(25)を貫通させて設け、該迂回路(25h)下端の開口部(25g)をニ番物回収部(19B)の上方に臨ませたことを特徴とする請求項1に記載の脱穀装置とした。
請求項3に記載の発明は、前記迂回路(25h)を、排塵処理室(30)の後端部下方に配置したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の脱穀装置とした。
請求項4に記載の発明は、前記迂回路(25h)を、排塵ファン(43)側に偏倚させて設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の脱穀装置とした。
請求項5に記載の発明は、前記迂回路(25h)を、揺動選別棚(20)の左右両側端部に夫々設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の脱穀装置とした。
請求項6に記載の発明は、前記上段篩い選別部(25b)の下側に、該上段篩い選別部(25b)から漏下した処理物を迂回路(25h)の入口へ案内する案内板(25e)を設けたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の脱穀装置とした。
請求項7に記載の発明は、前記上段篩い選別部(25b)の上側において、排塵処理室(30)の後端部に開口した排塵口(33a)と排塵ファン(43)のケーシング(45)に開口した吸塵口(44)とを左右に対向させて配置したことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の脱穀装置とした。
請求項8に記載の発明は、前記第2篩い選別部(25)と上段篩い選別部(25b)との間に、該第2篩い選別部(25)上を後方へ移送される処理物が通過可能な空間部(25a)を形成したことをと特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の脱穀装置とした。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載の発明によると、揺動選別棚(20)後部の上段篩い選別部(25b)によって処理物を選別し、この上段篩い選別部(25b)から漏下した穀粒や枝梗付着粒を、第2篩い選別部(25)上の藁屑に合流させることなくニ番物回収部(19B)へ案内して回収することができるので、第2篩い選別部(25)上の藁屑によって穀粒が連れ出されることが少なくなり、穀粒回収率を向上させることができる。
請求項2に記載の発明によると、上記請求項1に記載の発明の効果を奏するうえで、迂回路(25h)を第2篩い選別部(25)を貫通させて設け、この迂回路(25h)下端の開口部(25g)をニ番物回収部(19B)の上方に臨ませることで、迂回路(25h)を通過する穀粒や枝梗付着粒をニ番物回収部(19B)へ円滑に案内することができ、回収効率が向上する。
請求項3に記載の発明によると、上記請求項1又は請求項2に記載の発明の効果を奏するうえに、迂回路(25h)が排塵処理室(30)の後端部下方に配置されることで、排塵処理室(30)後端部から斜め内側に放擲される処理物中の藁屑が迂回路(25h)に直接入り込むことが少なくなり、ニ番物回収部(19B)への藁屑の混入を少なくして選別精度を高めることができる。
請求項4に記載の発明によると、上記請求項1又は請求項2に記載の発明の効果を奏するうえに、迂回路(25h)が排塵ファン(43)側に偏倚することで、上段篩い選別部(25b)上から迂回路(25h)へ漏下する際に排塵ファン(43)による風選作用が与えられ、ニ番物回収部(19B)への藁屑の混入を少なくして選別精度を高めることができる。
請求項5に記載の発明によると、上記請求項1又は請求項2に記載の発明の効果を奏するうえに、迂回路(25h)を左右に分岐させることで、上段篩い選別部(25b)から漏下する処理物量が増加しても、迂回路(25h)に詰まりを来たしにくくなり、選別能率を高めることができる。
請求項6に記載の発明によると、上記請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の発明の効果を奏するうえに、上段篩い選別部(25b)の下側に設けた案内板(25e)によって、上段篩い選別部(25b)から漏下した処理物を迂回路(25h)の入口へ円滑に案内することができ、穀粒の回収効率を高めることができる。
請求項7に記載の発明によると、上記請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の発明の効果を奏するうえに、排塵処理室(30)の後端部の排塵口(33a)から上段篩い選別部(25b)上へ排出された処理物を、この上段篩い選別部(25b)上で篩い選別しながら、この処理物中の藁屑を排塵ファン(43)によって吸い出すことで、処理物中の穀粒の選別精度を高め、穀粒の回収率を向上させることができる。
請求項8に記載の発明によると、上記請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の発明の効果を奏するうえに、第2篩い選別部(25)上を移送される藁屑を、上段篩い選別部(25b)の下側を通過させて外部へ排出することができ、選別能率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】コンバインの左側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】コンバインの正面図である。
【図4】コンバインの背面図である。
【図5】脱穀装置を縦断面して示す説明用の側面図である。
【図6】図5の要部拡大図である。
【図7】脱穀装置を水平断面して示す説明用の平面図である。
【図8】脱穀装置を他の位置で水平断面して示す説明用の平面図である。
【図9】図8の一部を破断して示す説明用の平面図である。
【図10】図8のA−A断面図である。
【図11】図8のB−B断面図である。
【図12】図8のC−C断面図である。
【図13】第1実施例における脱穀装置の要部の説明用背面図である。
【図14】第1実施例における脱穀装置の要部の説明用平面図である。
【図15】第2実施例における脱穀装置の要部の説明用背面図である。
【図16】第2実施例における脱穀装置の要部の説明用平面図である。
【図17】第3実施例における脱穀装置の要部の説明用背面図である。
【図18】第3実施例における脱穀装置の要部の説明用平面図である。
【図19】上壁と風向案内部材の連動機構部の拡大図である。
【図20】上壁と風向案内部材の傾斜角を最大とした状態での脱穀装置を縦断面して示す説明用の側面図図である。
【図21】上壁と風向案内部材の傾斜角を最小とした状態での脱穀装置を縦断面して示す説明用の側面図である。
【図22】操作盤の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施例について添付図面を参照しつつ詳説する。なお、理解を容易にするため、便宜的に方向を示して説明しているが、これらにより構成が限定されるものではない。
【0009】
図1〜図4において、符号1はコンバインの機体フレーム、符号2は左右一対のクローラを有する走行装置、符号3は機体フレーム1の上方に設けた脱穀装置、符号4は脱穀装置3の前側に設けた刈取部、符号5は脱穀装置3の側部に設けたグレンタンク、符号6はグレンタンク5の前方に設けた操縦部、符号7はグレンタンクの貯留穀粒を排出するための排出管をそれぞれ示している。
【0010】
図5、図8に示すように、脱穀装置3は、上部に脱穀室11を備えるとともに、脱穀室11の一方側(機体走行方向の例えば左側)には穀稈供給搬送装置12を備えている。走行装置2により機体を走行させ、刈取部4により刈り取られた穀稈は、穀稈供給搬送装置12に引き継がれ、穀稈供給搬送装置12の挾扼杆12A及び供給搬送チェーン13B間で挟持された状態で後方へ搬送された後、脱穀済みの排藁を搬送する排藁搬送装置14に引き継がれる。
【0011】
(脱穀室と回収室)
図5に示すように、脱穀室11には、扱胴10が略水平に軸装されており、この扱胴10の主として下方側は扱網15により包囲されており、扱網15の下方には唐箕16の唐箕ケーシング17が設けられている。扱胴10の外周面上には、多数の扱歯10aが設けられている。
図5、図8、図9、図10〜図12に示すように、脱穀室11の下流側の部位(後部)には、扱胴10の後部外周に近接して配置した中間隔壁(仕切板)11Kを設け、この中間隔壁11Kの前側に、この中間隔壁11Kにより仕切られた排塵処理室導入部11Eを形成する。この排塵処理室導入部11Eの底面は格子状に形成し、下方の揺動選別棚20へ落下させる排塵口11Hを形成する。扱胴10の下流側端部(後端部)は、中間隔壁11Kを貫通して、この中間隔壁11Kの後側に形成された回収室11F内まで延設する。この中間隔壁11Kは脱穀室11の機枠に対して固定されている。この回収室11F内における扱胴10の外周面上には、脱穀後の穀稈(排藁)に刺さり込んだ穀粒を掻き落として(または払い落として)分離する板状の多数の分離歯10bが設けられている。また、扱胴10の後端の後側に配置した後側壁11Lによって、扱胴10の回転軸10Sの後端部が軸受けされている。
また、図12に示すように、この回収室11Fにおける扱胴10の下側外周に沿って、円弧状に形成した受け板(支持部材)10cを配置する。この受け板10cによって脱穀後の穀稈を支持し、この穀稈を、分離歯10bの回転軌跡(作用域)内に案内するものである。この受け板10cは、穀稈の株元側の部位を支持する範囲にのみ設け、穀稈の穂先側には設けない。即ち、この受け板10cは、穀稈供給搬送装置12側から扱胴10の回転軸10Sの軸芯10Pの略直下の位置までの範囲に設け、この軸芯10Pよりも脱穀室11の奥側となる部位には受け板10cを設けない。これにより、受け板10cの奥側端部と排塵処理室30の間の部位は、開放幅Tにわたって下方へ開放される。
また、図9に示すように、この受け板10cには、平面視において扱胴10の軸芯10P方向に対して角度θだけ傾斜した多数の長孔10dを形成する。そして、この受け板10cは、脱穀後の穀稈を支持するだけでなく、後述する唐箕16から送風される選別風を遮断することで、長孔10dからの穀粒の漏下を促進する。
【0012】
しかして、刈取部4で刈り取られた穀稈は、扱深さが調節されて、穀稈供給搬送装置12で挟持搬送されながら、その穂先側が脱穀室11に挿入される。脱穀室11に供給された穀稈は回転する扱胴10の扱歯10aの作用で脱穀され、脱穀された穀粒は扱網15から落下して選別室18に供給され、揺動選別装置21により選別される。脱穀室11で脱穀された処理物の内、扱網15から漏下しない処理物は脱穀室11後部の排塵処理室導入部11Eに至った後、連通口35から排塵処理室30に供給され、この排塵処理室30に内蔵された排塵処理胴31で処理される。
【0013】
また、脱穀室11内における回収室11Fよりも前側の部位で脱穀処理された穀稈の中には、脱穀室11内で脱粒した穀粒や枝梗付着粒が入り込んでおり、この穀粒や枝梗付着粒は、脱穀後の穀稈と共に、中間隔壁11Kの下側に形成された空間部を通過する。そして、回収室11F内に至った脱穀後の穀稈は、受け板10c上に支持された状態で、扱胴10の外周面上に設けた多数の分離歯10bの作用を受け、この穀稈の中に入り込んでいた穀粒や枝梗付着粒が脱落し、分離される。また、この際、回収室11Fの前側は仕切板11Kで仕切られているので、この仕切板11Kよりも前側の脱穀室11で脱穀された処理物が、排塵処理室導入部11E内から回収室11F内に侵入しにくく、この回収室11F内での穀粒の回収効率が高まる。
この脱落した穀粒や枝梗付着粒は、前記開放幅Tの部位、受け板10cの後端部、および長孔10dから、下方の揺動選別棚20上へ落下し、選別された後に、穀粒は一番物回収部19Aに取り込まれてグレンタンク5に貯留される。
【0014】
(選別室)
図5に示すように、脱穀室11の下方には唐箕16の送風により穀粒と異物を選別するための選別室18が形成されており、選別室18内の上部には唐箕16の送風方向(前後方向)に往復揺動する揺動選別棚20により構成した揺動選別装置21が設けられている。
【0015】
(揺動選別棚、唐箕、棚板等)
図6に示すように、揺動選別棚20の始端部(前端部)は、唐箕ケーシング17の上方に位置する移送棚22として形成されている。移送棚22の構成は任意であり、移送方向下流側を低く傾斜させたり、あるいは、移送棚22の上面に突起や凹凸を設けたりして、揺動選別装置21の移送方向下流側のグレンシーブ23に向けて扱網15からの漏下物を移送できればよい。
【0016】
グレンシーブ23は、扱網15から漏下した穀粒と藁屑などの異物を選別する篩であり、図示例では、移送方向下流側(後側)が高くなるように傾斜した薄い板状体を揺動方向に所定の間隔を空けて複数並設したものである。グレンシーブ23の移送方向下流側(後側)には、穀粒とチャフ(藁屑)を選別するチャフシーブ24が設けられている。図示例のチャフシーブ24は、傾斜角調節自在の薄い板状体を揺動方向に所定の間隔を空けて複数並設したものである。さらに、チャフシーブ24の下流側には、脱穀室を通過した排藁に刺さり込んだ穀粒(刺さり粒)等を選別するための粗選別手段として、前記グレンシーブ23およびチャフシーブ24よりも漏下間隙(シーブ間隔)の大きいストローシーブ25が設けられている。該ストローシーブ25は、グレンシーブ23およびチャフシーブ24よりも前後幅(上下幅)が大きく且つ急傾斜した矩形の板体を、揺動選別棚20の前後方向に一定の間隔をおいて多数配列して形成する。
尚、上記グレンシーブ23及びチャフシーブ24を請求項において「第1篩い選別部」と称し、上記ストローシーブ25を請求項において「第2篩い選別部」と称する。
しかして、図5〜図7、図13、図14に、この発明の第1実施例を示す。
即ち、前記ストローシーブ25の上側に、該ストローシーブ25上の藁屑等の処理物が後方へ通過可能な空間部25aを隔てて上段シーブ25bを配置する。この上段シーブ25bを、請求項において「上段篩い選別部」と称する。
該上段シーブ25bは、平面視で矩形に形成した枠体25cに対して、ストロ−シーブ25よりも前後幅(上下幅)が小さい矩形の板体を、枠体25cの左右の側板25d,25d間に渡架しながら、ストローシーブ25の板体配置間隔よりも狭い間隔で多数配列して形成する。
前記枠体25cは、揺動選別棚20の左右の側壁20a,20aに対してボルト締結(図示省略)により着脱自在な構成とする。
そして、前記上段シーブ25bの下側には、脱穀装置3の背面視において排塵処理室30側ほど低くなるように左右方向に傾斜した流下案内板25eを、枠体25cに固定して配置する。該流下案内板25eの傾斜下端部には、角筒25fの上端を取り付け、この角筒25fの下部を、ストローシーブ25を貫通させて下方へ突出させる。これにより、角筒25fの下端に開口した迂回出口25gが、ニ番物回収部19Bの上方に臨む。上記角筒25f内の空間(流下路)25hを、請求項において「迂回路」と称し、上記流下案内板25eを、請求項において「案内板」と称し、迂回出口25gを、請求項において「開口部」と称する。
そして、図13に示すように、上段シーブ25bの上側において、排塵処理室30の後端部に開口した排塵口33aと、後述する吸引排塵ファン43のケーシング45の内側面に開口した吸塵口44とを左右に対向させて配置する。また、前記角筒25fは、排塵処理室30の直下方に配置される。前記吸引排塵ファン43を、請求項において「排塵ファン」と称する。
これにより、迂回路25hは、排塵処理室30の後端部下方に配置される。
また、図15、図16に、この発明の第2実施例を示す。即ち、上記角筒25fの配置を左右逆に配置した構成であり、迂回路25hは、吸引排塵ファン43のケーシング45の内側面に開口した吸塵口44側に偏倚した部位に配置される。
また、図17、図18に、この発明の第3実施例を示す。即ち、2つの角筒25f,25fを左右の側板25d,25dの内側面に沿わせて夫々設け、揺動選別棚20の左右両端部に迂回路25h,25hを夫々形成する。この左右の角筒25f,25fの上端部には、左右中央部が最も高く、左右側部に至るに従い低くなるように左右に夫々傾斜した流下案内板25e,25eの下端部を接続する。
【0017】
選別室18の下部には、唐箕16と、溝状の一番棚板19A(一番物回収部)と、溝状の二番棚板19B(二番物回収部)が、揺動選別棚20の移送方向に(前から後ろに向かって)この順で設けられている。唐箕16は、揺動選別棚20と一番物棚板19Aの間に臨む送風口を備えている。一番棚板19Aの溝部には、グレンタンク5へ連通する一番コンベア26が連通し、二番棚板19Bの溝部には、二番処理室30へ連通する二番コンベア27が連通している。また、揺動選別棚20と一番棚板19Aの間には、グレンシーブ23とチャフシーブ24の境界近傍から一番棚板19Aの棚先19C近傍までの範囲にわたるように選別網28が設けられている。
【0018】
揺動選別棚20は図示しない駆動機構により上下前後方向に揺動するので、処理物は後方側へ移動しながら、唐箕16からの送風を受けて風力選別され、比重の重い穀粒はグレンシーブ23及びチャフシーブ24を漏下して選別網28上に供給され、選別網28上の処理物は、更に唐箕16からの選別風を下側から受けて細かな藁屑が吹き飛ばされながら後方に移送され、この移送中に選別網28から漏下したものが一番棚板19Aにより回収され、一番コンベア26に乗ってグレンタンク5へ投入される。グレンタンク5に貯留された穀粒は、排出管7を介してコンバインの外部へ搬出される。このように、選別網28から漏下して一番棚板19Aで回収される処理物は、枝梗付着の少ない穀粒(清粒)が主である。
【0019】
一方、選別網28から漏下しないものは、この選別網28上を後方へ移送されて選別網28の後端部から二番棚板19Bに至り、回収される。選別網28から漏下せずに二番棚板19Bに供給される処理物は、枝梗付着粒や小さな藁屑等が主である。
【0020】
揺動選別棚20上の処理物のうち軽量のものは、シーブ23,24を漏下せず、揺動選別棚20の揺動作用と唐箕16による送風で吹き飛ばされてシーブ23,24の上を後方へ移動し、ストローシーブ25の上で大きさの小さい二番物は漏下して二番棚板19Bにより回収される。シーブ23,24の後部やストローシーブ25から漏下して二番コンベア27により二番処理室40へ供給される。二番コンベア27に取り込まれるものは、正常な穀粒、枝梗付着粒、藁屑および藁屑の中に正常な穀粒が刺さっている刺さり粒などの混合物である。これら枝梗付着粒や藁屑を二番還元物として再処理する。また、シーブ23,24及びストローシーブ25から漏下しない処理物は、更に後方へ移送されて揺動選別棚20の後端部上に形成された三番排塵口56から外部へ排出される。この中には僅かな穀粒が含まれていることがあり、この量(比率)によって、脱穀装置の選別精度が評価される。
【0021】
(排塵処理室)
図8、図9、図11、図12に示すように、連通口35を介して脱穀室11と連通した排塵処理室30の内部には、扱胴10の軸心と略平行な排塵処理胴31が軸装されている。排塵処理胴31の揺動選別棚20と反対側(正面に向かって左側)は側板32により包囲され、排塵処理胴31の揺動選別棚20側(正面に向かって右側)は処理物排出口33が設けられている。排塵処理胴31の外周面のうち、処理物の移送方向の終端部(後端部)には羽根体34が設けられ、これよりも始端側には排塵処理歯36が設けられている。
以上の選別室、排塵処理室の構成により、排塵処理室30に供給された処理物は、回転する排塵処理胴31により解砕、処理されつつ終端側に移動する過程で、処理物排出口33から揺動選別棚20上に排出され、また、排塵処理室30の終端後面は閉塞されており、ここに至った処理物は、羽根体34により、排塵処理室30の後端部内側面側に形成された排塵口33aから、内側下方へ放擲され、上段篩い選別部25b上に至る。
そして、この処理物のうち、穀粒や枝梗付着粒は、上段篩い選別部25bの間隙部から漏下し、流下案内板25e上を傾斜下り側へ流下して迂回路25hの入口に至り、この迂回路25h内を経て下端の開口部25gからニ番物回収部19Bへ流下する。
また、揺動選別棚20のストローシーブ25上の藁屑等の処理物は、ストローシーブ25と上段篩い選別部25bとの間の空間部25a内を通過し、このストローシーブ25の後端から外部へ排出される。
これにより、揺動選別棚20後部の上段篩い選別部25bによって処理物を選別し、この上段篩い選別部25bから漏下した穀粒や枝梗付着粒を、第2篩い選別部25上の藁屑に合流させることなくニ番物回収部19Bへ案内して回収することができるので、第2篩い選別部25上の藁屑によって穀粒が連れ出されることが少なくなり、穀粒回収率を向上させることができる。
また、図15、図16に記載の第2実施例の構成によれば、迂回路25hが排塵ファン43側に偏倚することで、上段篩い選別部25b上から迂回路25hへ漏下する際に排塵ファン43による風選作用が与えられ、ニ番物回収部19Bへの藁屑の混入を少なくして選別精度を高めることができる。
また、図17、図18に記載の第3実施例の構成によれば、迂回路25hを左右に分岐させることで、上段篩い選別部25bから漏下する処理物量が増加しても、迂回路25hに詰まりを来たしにくくなり、選別能率を高めることができる。
【0022】
(二番処理室)
図8、図9、図10に示すように、排塵処理室30の前側には、二番コンベア27により回収された二番物を処理する二番処理室40が設けられている。二番処理室40内には、外周面に間欠螺旋羽根を有する二番処理胴41が排塵処理胴31と同心的かつ直列的に軸装されている。二番処理胴41の下方は、その終端部を除いて溝状の受板42により包囲されており、二番処理胴41の終端部(前端部)9の下方は、二番処理物還元口43aとして、揺動選別棚20の上流側における二番処理室40側の側部の上方に開口されている。また、二番処理胴41の始端側(後端側)上方には二番コンベア27から供給される二番物の供給口44が開口している。
【0023】
二番処理室40では、二番物が二番処理胴60によって搬送される間に穀粒の分離と枝梗付着粒からの枝梗の除去が行われた後、二番処理物還元口43aから揺動選別棚20に落下し、扱室40からの処理物と合流して再選別される。
【0024】
(吸引排塵ファン)
図6に示すように、揺動選別棚20の終端部(後端部)の上方には吸引排塵ファン43の吸塵口44が開口している。吸引排塵ファン43は、排風口46を有するケーシング45により覆われている。図示例では、揺動選別棚20の上方空間の両側壁のうち排塵処理室30と反対側の側壁に、排塵処理室30と対峙するように吸引排塵ファン43が取り付けられ、その取り付け部位に吸塵口44が開口しているが、これらの取り付け位置は図示例に限定されるものではない。
【0025】
(排藁処理装置)
図8、図9に示すように、脱穀装置3の後側では、脱穀室を通り脱穀を終えた穀稈、つまり排藁は排藁搬送装置14に引き継がれ、排藁搬送装置14の終端部から排藁処理装置としてのカッター装置48に排出される。この排藁搬送装置14に備える株元側搬送装置14Kの中間部には、扱胴10の回転軸10Sの後端部に取り付けたプーリー10Tから、伝動ベルト10Uと、入力プーリー10Vと、ベベルギヤケース10W内の伝動機構と、前記株元側搬送装置14Kと平行の穂先側搬送装置14Hを貫通して設けた出力軸10Xを介して動力が伝動される。そして、この株元側搬送装置14Kの後端部から、伝動軸10Yを介して穂先側搬送装置14Hの後端部に動力が伝動される。
カッター装置48は、上方から落下供給される排藁を一対のロータリーカッター刃49間に通して切断する構造のものである。ロータリーカッター刃49の外部側はフードにより覆われており、またロータリーカッター刃49の前側には、切断した排藁の切断藁屑を後方に落下するように案内するための切藁案内板50が設けられている。切藁案内板50は、上部が上側カッター刃49の下部とほぼ同じ高さに位置しており、下方に至るに従い後側に位置するように後下がりに傾斜し、切藁案内板50の下部は下側カッター刃49の下部より下方に位置している。カッター装置48に代えて他の排藁処理装置を用いることも可能である。
【0026】
(三番排塵口)
図6、図7に示すように、脱穀装置3の後側壁55には三番排塵口56が開口されており、揺動選別棚20の後部がこの三番排塵口56に臨むように構成されている。また、三番排塵口56を開閉する三番排塵口シャッタ57が設けられており、排塵処理室30の処理物排出口33から排出される排塵処理物に含まれる穀粒を、三番排塵口56から排出させずに、揺動選別棚20のチャフシーブ24又はストローシーブ25に供給し、篩い選別により回収することができる。よって、三番ロスの発生を防止して脱穀効率を向上できるようになる。また、排塵処理室30と吸引排塵ファン43の吸塵口44とは、揺動選別棚20を挟んで対峙するように配置されており、三番排塵口シャッタ57を閉めると、排塵処理室30から排出される排塵処理物が、吸引排塵ファン43の吸塵口44側に向かって広範に拡散するため、穀粒の回収効率が一層向上する。
【0027】
(上壁・風向案内部材)
図6に示すように、唐箕ケーシング17の送風口65は、上方に位置する上壁67と下方に位置する下壁68の間に開口しており、これら上壁67と下壁68の上下中間に風向案内部材66が設けられている。これにより、送風口65は、風向案内部材66と上壁67の間の上側風路74と、風向案内部材66と下壁68の間の下側風路75に区画されている。上壁67及び下壁68は図示例では板状をなしているが、これに限定されるものではない。
【0028】
図6、図19に示すように、風向案内部材66は、下方に頂点70を有する逆三角形状の縦断面を有する形状をなしている。これによって、図示例の風向案内部材66における上面69は唐箕ケーシング17の上壁67とほぼ同傾斜の平坦面により形成され、風向案内部材66の下面は下側前部傾斜面71と下側後部傾斜面72を有する屈曲面により形成されている。風向案内部材66がこのような形状を有していると、上側風路74から送出される風は風向案内部材66の上面に沿って下方にはあまり拡散せずに揺動選別棚20に向かって流れ、下側風路75から送出される風は風向案内部材66の下側後部傾斜面72に沿って上方にも拡散しつつ揺動選別棚20の更に下流側の範囲までに向かって流れるようになる。
【0029】
風向案内部材66は、送風方向と直交する水平の回動軸66xを回動中心とし、且つ上面69及び下面71,72が送風方向下流側に向かって斜め上向きとなる角度範囲内で回動自在に構成されており、また、風向案内部材66の回動軸66xは風向案内部材の送風方向中間に位置しており、回動軸66xの上流側及び下流側が上下するように回動するようになっている。風向案内部材66の回動軸66xは、その両端部が選別室18の両側壁18Sに軸支されている。さらに、風向案内部材66の回動により風向案内部材66の水平面に対する傾斜角(以下単に傾斜角、あるいは傾斜姿勢ともいう)を最大まで増加させたとき、風向案内部材66における唐箕16側の端部が送風口65の下壁68と近接又は接触するように構成されている。
【0030】
また、上壁67も、送風方向と直交する水平の回動軸67xを回動中心とし、且つ下面が送風方向下流側に向かって斜め上向きとなる角度範囲内で、風向案内部材66と同方向に回動するように構成されている。即ち、上壁67の後部下面と、風向案内部材66の後部上面の間を連動杆88で接続し、上壁67と風向案内部材66が略一定の相対姿勢を維持したまま、上下に角度変更できる連動機構Sを構成している。また、上壁67の回動軸67xは、図示例では上壁67の唐箕16側端部に位置しているが、送風方向中間や、送風方向下流側端部に位置させることもでき、いずれにせよ上壁67の下流側が上下するように回動すれば良い。上壁67の回動軸67xも、その両端部が選別室18の両側壁18Sに軸支されている。
【0031】
このような構造においては、唐箕16から供給される風の上側風路74及び下側風路75に対する配分比率は、上側風路74及び下側風路75の開口度の比率によって定まる。よって、下側風路75の開口度が減少する方向に、上壁67及び風向案内部材66が同じ方向に連動して回動すると、下側風路75の風量は減少し、反対に上側風路74の風量は増加するとともに、下側風路75の風向は風向案内部材66の下面の角度変化に応じて変化し、上側風路74の風向は風向案内部材66の下面の角度変化に応じて変化する。一方、下側風路75の開口度が増加する方向に、上壁67及び風向案内部材66が同じ方向に連動して回動すると、下側風路75の風量は増加し、反対に上側風路74の風量は減少する。下側風路75の風向は風向案内部材66の下面の角度変化に応じて変化し、上側風路74の風向は風向案内部材66の下面の角度変化に応じて変化する。つまり、上側風路74及び下側風路75の風向及び風量を同時に調整できるようになる。
【0032】
風向案内部材66及び上壁67を回動するための駆動手段は、両風向案内部材66,67を連動して回動させるものであれば適宜選択して設計することができ、手動でもモータ等の動力源を用いても良い。図19に示す例では、風向案内部材66の回動軸66xの一端部が選別室18の側壁18Sから突出しており、この突出部分に主揺動梃81の先端部が取り付けられ、この主揺動梃81及び風向案内部材66が一体的に回動するようになっている。また、選別室18の側壁18S外面にステー82が取り付けられ、このステー82に搭載されたモータ83の駆動軸83xにピニオンギア83gが取り付けられ、このピニオンギア83gと噛合する扇状ギア84がステー82に軸支され、この扇状ギア84の一方側の円周端部(第1の偏心位置)と主揺動梃81の基端部が連動杆85を介して連結されており、各連結部分はピン85pにより回転自由な連結となっている。さらに、ステー82には、ポテンションメータ等の回転量検出装置86が搭載され、この回転量検出装置86の検出軸86xに副揺動梃87の先端部が取り付けられ、副揺動梃87の回動量が検出されるように構成されるとともに、扇状ギア84の反対側の円周端部(第2の偏心位置)にはピン87pが突設され、このピン87pが副揺動梃87の長手方向に沿う溝87d内を滑るように構成されている。また、風向案内部材66における回動軸66xよりも送風方向下流側の部位と、上壁67における回動軸67xよりも送風方向下流側の部位が、選別室18内の両側部において連動杆88を介してそれぞれ連結されており、各連結部分はピン88pにより回転自由な連結となっている。
【0033】
したがって、モータ83の正逆駆動により、扇状ギア84、連動杆85、主揺動梃81を介して風向案内部材66が正逆回動されるとともに、その回動量が、扇状ギア84及び副揺動梃87を介して回転量検出装置86により検出される。また、風向案内部材66の回動に伴い、これと連動杆88を介して連結された上壁67も連動して回動する。よって、風向案内部材66と上壁67を同時かつ同方向に回動させ、それぞれ所定の角度に調整でき、調整操作が容易となる。
【0034】
風向案内部材66及び上壁67の水平面に対する傾斜角(単に傾斜角、あるいは傾斜姿勢ともいう)は、それぞれ上述の範囲内で適宜変化させることができるが、上側風路74の選別風の過半は揺動選別棚20のうちシーブ(図示例ではチャフシーブ24。選別網28でも良い)下流側(後側)端よりも上流側に向き、且つ下側風路75からの選別風の過半はシーブ(チャフシーブ24)下流側(後側)端よりも下流側を向くように、風向案内部材66及び上壁67の傾斜角範囲を設定するのが好ましい。この範囲内で、風向案内部材66及び上壁67の傾斜角を変化させることによって、処理物の流量が低流量の状態(低流量時)であっても高流量の状態(高流量時)であっても、より適切な選別を行うことができ、穀粒損失の低減と、選別の良化を図ることができる。
【0035】
特に、図19に示すように、上側風路74、下側風路75の選別風は、風向案内部材66の傾斜角を大きくするほど、両風路65A,65Bの選別風ともに、揺動選別棚20の上流側(前側)への風量が増加し、且つ下流側(後側)への風量は低減するように構成されていると好ましい。そして、図20に示すように風向案内部材66の傾斜角を最大としたとき、下側風路75の風量よりも上側風路74の風量が多くなるように構成すると更に好ましい。また、風向案内部材66の傾斜角を最大としたとき、側面視で風向案内部材66の上面の送風方向延長線66Lは一番棚板19Aの棚先19Cよりも上方に位置させ、一番棚板19Aの棚先19Cより揺動選別棚20の上流側(前方)へ向かう選別風を増加させるのが好ましい。また、これにより、唐箕16から送風された選別風が、回収室11Fの下方に臨む揺動選別棚20上の部位よりも後側の部位から上側へ吹き上がる。
これにより、例えば低流量時や低速作業時には揺動選別棚20の下流側の選別風を低減することで機外飛散を低減し、揺動選別棚20の上流側への選別風を増加することで、稈切れや枝梗付着粒などの漏下を制限し、選別状態を良好に保つことができる。また、回収室11Fから落下する穀粒が、揺動選別棚20上から吹き上がる選別風によって後方へ飛ばされることが少なくなり、この穀粒が揺動選別棚20の後端から外部へ飛散しにくくなり、穀粒の回収効率を高めることができる。
【0036】
特に、風向案内部材66の傾斜角をある程度以上大きくしたとき、例えば最大としたときに、側面視で風向案内部材66の上面の送風方向延長線66L上に排塵ファン43の吸塵口45が開口する(換言すれば延長線66Lが吸塵口45と交わる)と好ましい。これにより、前方で吹き上げた塵芥を効率良く排塵ファン43で吸塵することができ、選別風が機体後方に抜けにくい構造(特に図示例のような三番排塵口シャッタ57を有する場合)でも選別能力を損なうことなく、効果的に塵芥を機外に排出できるようになる。
【0037】
また、図21に示すように、上側風路74、下側風路75の選別風は、風向案内部材66の傾斜角を小さくするほど、両風路65A,65Bの選別風ともに、揺動選別棚20の下流側に風向を変更し、上側風路74の風量を低減し、且つ下側風路75の風量を増加させるように構成されていると好ましい。そして、傾斜角を最小としたときには、上側風路74の風量よりも下側風路75の風量が多くなるように構成すると更に好ましい。また、傾斜角を最小としたときには、風向案内部材66の上面の送風方向延長線66Lは一番棚板19Aの棚先19C及びその近傍に位置させ、一番棚板19Aの棚先19Cへ向かう選別風を増加させるのが好ましい。これにより、高速作業時や高流量時において選別室から機外への選別風の抜けを促進し、還元量を抑制し、高速作業への適応性を高めることができる。
【0038】
風向案内部材66及び上壁67の傾斜角の変化量は同じでも良いが、異ならしめることもできる。例えば、図20、図21に示すように、風向案内部材66の傾斜角が最大の状態から最小の状態まで回動したとき、上壁67の前端(唐箕16側)の回動量に対し、風向案内部材66の前端の回動量が大きくなるように構成すると、上壁67の前端(唐箕16側)の回動量が相対的に小さくなることにより、上側風路74の風量を損なうことなく、風向の変更ができるだけでなく、風向案内部材66の前端の回動量が相対的に大きくなることにより、上側風路74及び下側風路75に対する選別風の分配比を大きく変更でき、且つ両風路の風向も変化させることができるため、好ましい。
【0039】
風向案内部材66及び上壁67の傾斜角の上限(上限角)及び下限(下限角)は固定しても良いが、風向案内部材66の適切な傾斜角範囲は作物条件や作物種によって異なるため、連続的又は段階的に変更可能とするのが好ましい。また、上限角及び下限角を変更可能とする場合、その上限角及び下限角は任意の角度に手動調整可能とする他、作物種等によってあらかじめ定められた角度に自動変更可能とするのも好ましく、両者を切り替え可能とすると更に好ましい。手動調整の場合、コンバインの使用に際して、予め設定されている上限角及び下限角が作物条件(例えば作物の水分量の多少、作物の倒伏の程度、処理物量の増減)に合致しない場合、任意に補正することができる。一方、自動変更の場合、上限角及び下限角を稲、麦等、予め作物種に応じて切り替え可能に構成しておくことで、作物種に応じて上限角及び下限角を簡単に切り替えて、適切な選別を行うことができるようになる。例えば、麦は稲より処理物量中の穀粒比率が小さく、同一流量であっても機外排出効率を高めるよう風向案内部材66の傾斜角の上限を浅くして処理効率を高めるようにするのが好ましい。
【0040】
図22は、風向案内部材66及び上壁67の上限角及び下限角の変更を行うための操作盤の例を示しており、シーブの開口度調節の近傍に、切替ロータリースイッチ91と、開口度調整ロータリースイッチ92が並設されており、切替ロータリースイッチ91を「稲」又は「麦」に合わせることにより、それぞれの作物種に応じて、風向案内部材66及び上壁67の上限角及び下限角が自動変更され、切替ロータリースイッチ91を「手動」に合わせると、風向案内部材66及び上壁67の上限角及び下限角が、開口度調整ロータリースイッチ92の回転位置に応じて定まる任意の角度に変更される。
【0041】
風向案内部材66及び上壁67の上限角及び下限角の設定は、機械的に行っても良いが、上述のように、風向案内部材66及び上壁67の回動をモータ等の駆動源により行う場合にはその駆動制御により行うのが望ましい。
【0042】
(層厚検出センサ)
風向案内部材66及び上壁67の傾斜角は揺動選別棚20上の処理物量に関係なく固定としても良い。しかし、風力選別における適切な風向及び風量は処理物量によって異なる。例えば低流量時や低速作業時には揺動選別棚20の下流側の選別風を低減することで機外飛散を低減し、揺動選別棚20の上流側への選別風を増加することで、稈切れや枝梗付着粒などの漏下を制限するのが好ましく、高速作業時や高流量時において選別室から機外への選別風の抜けを促進し、還元量を抑制し、高速作業への適応性を高めるのが好ましい。よって、風向案内部材66及び上壁67の傾斜角は処理物量に関係なく固定とした場合、処理物量の増減により選別能力が低下するおそれがある。
【0043】
そこで、図7、図10、図20に示すように、揺動選別棚20上の処理物の層の厚さを検出する層厚検出センサ95を設け、この層厚検出センサ95の検出結果に基づき、処理物の層の厚さが増加したときに風向案内部材66及び上壁67の水平面に対する傾斜角を増加させ、処理物の層の厚さが減少したときに風向案内部材66及び上壁67の水平面に対する傾斜角を減少させる制御装置(図示略)を設けるのは好ましい。これにより、処理物の層の厚さに増減があっても、揺動選別棚20上の処理物の層厚の検出結果に応じて、風向案内部材66及び上壁67の傾斜角が適切に自動調整され、最適な穀粒損失と選別状態を得ることができる。
【0044】
層厚検出センサ95は、公知の接触又は非接触センサを用いることにより構成することができる。図示例では、二番処理室40の受板42における終端側(二番処理物還元口側又は前端側)部分と、排塵処理室導入部11Eの中間隔壁11Kの下端部がセンサステー95Sにより連結され、このセンサステー95Sにポテンションメータ等の回転量検出装置96が取り付けられるとともに、この回転量検出センサ96の検出軸96xにフロート97が吊り下げ状態で取り付けられており、このフロート97が、揺動選別棚20の移送棚22上を移動する処理物に接触して、処理物の移動方向に回転しつつ持ち上がり、その回転量が、移送棚22上を移動する処理物の層厚として回転量検出装置96により検出されるように構成されている。
【0045】
このように、センサステー95Sにより二番処理室40の受板42における終端側(二番処理物還元口側又は前端側)部分と、排塵処理室導入部11Eの中間隔壁11Kの下端部を連結する構造を採用すると、二番処理物還元口43aからの二番処理物の排出及びその移送の邪魔となる位置を避けて、フロート97を宙吊り状態で設置できるだけでなく、二番処理室40の受板42、中間隔壁11K及びセンサステー95Sが三角形状に連結できるため、機枠1の強化にも繋がる、という利点がある。
【0046】
また、図示例のようにフロート97が回動するタイプの場合、フロート97の回動中心(つまり図示例では検出軸96x)が、二番還元物の流れ又は処理物全体の流れに対して略直角となり、平面視で揺動選別棚20の揺動方向に対して傾斜するように構成するのが好ましい。これにより、処理物の流れ方向と、これに接触するフロート97の回動方向が一致するか又は近くなるため、フロート97が円滑に動作し、処理物量の変化に対して正確かつ敏感に反応するようになる。
【0047】
この場合、フロート97の作動をより円滑にするために、フロート97における回動中心方向一方側、特に図示例のように移動棚部22の移送方向下流側に、フロート97の回動中心に対して略直交する方向(センサフロート97の回動方向と略平行)に延在する寄せ板98を立設するのも好ましい形態である。これにより、移動棚部22による揺動作用により処理物の移動方向がずれていくとしても、そのフロート97近傍では寄せ板98により移動方向が規制されるため、処理物の流れ方向と、これに接触するフロート97の回動方向が略一致し、フロート97がより一層円滑に動作するようになる。
【0048】
また、フロート97の形状は適宜設計すれば良いが、図示例のように、少なくとも処理物と接触する部分(図示例では処理物が無い非接触状態で、処理物の移動方向上流側の面)が、処理物の摺動方向の中間部ほど張り出す弧状曲面であるのが好ましい。
【0049】
他方、一般に移動棚22上においては処理物量が偏在し、特に二番処理物還元口43aの下方近傍における処理物量が最も多くなる。よって、層厚検出センサ95は、二番処理物還元口43aの近傍における揺動選別棚20の処理物の層の厚さを検出するように構成するのが望ましい。このため、図示例ではフロート97を二番処理物還元口43aの近傍に配置している。
【符号の説明】
【0050】
10 扱胴
11 脱穀室
16 唐箕
18 選別室
19A 一番物回収部
19B ニ番物回収部
20 揺動選別棚
22 移送棚
23 グレンシーブ(第1篩い選別部)
24 チャフシーブ(第1篩い選別部
25 ストローシーブ(第2篩い選別部)
25a 空間部
25b 上段篩い選別部
25e 案内板
25g 開口部
25h 迂回路
30 排塵処理室
31 排塵処理胴
33a 排塵口
43 排塵ファン
44 吸塵口
45 ケーシング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱胴(10)を軸架した脱穀室(11)の後部に、排塵処理胴(31)を軸架した排塵処理室(30)の前部を連通し、該脱穀室(11)及び排塵処理室(30)の下側に配置した選別室(18)内には、前部の移送棚(22)と中間部の第1篩い選別部(23,24)と後部の第2篩い選別部(25)を有した揺動選別棚(20)を設け、前記第2篩い選別部(25)の上方に排塵ファン(43)を設けると共に、揺動選別棚(20)の下側には、選別風を送風する唐箕(16)と、第1篩い選別部(23,24)から漏下した一番物を回収する一番物回収部(19A)と、第2篩い選別部(25)から漏下した二番物を回収する二番物回収部(19B)とを前側からこの順に備えた脱穀装置において、前記第2篩い選別部(25)の上側に、揺動選別棚(20)と一体で揺動する上段篩い選別部(25b)を設け、該上段篩い選別部(25b)から漏下した処理物を前記第2篩い選別部(25)を迂回してニ番物回収部(19B)へ案内する迂回路(25h)を設けたことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記迂回路(25h)を、第2篩い選別部(25)を貫通させて設け、該迂回路(25h)下端の開口部(25g)をニ番物回収部(19B)の上方に臨ませたことを特徴とする請求項1に記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記迂回路(25h)を、排塵処理室(30)の後端部下方に配置したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の脱穀装置。
【請求項4】
前記迂回路(25h)を、排塵ファン(43)側に偏倚させて設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の脱穀装置。
【請求項5】
前記迂回路(25h)を、揺動選別棚(20)の左右両側端部に夫々設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の脱穀装置。
【請求項6】
前記上段篩い選別部(25b)の下側に、該上段篩い選別部(25b)から漏下した処理物を迂回路(25h)の入口へ案内する案内板(25e)を設けたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の脱穀装置。
【請求項7】
前記上段篩い選別部(25b)の上側において、排塵処理室(30)の後端部に開口した排塵口(33a)と排塵ファン(43)のケーシング(45)に開口した吸塵口(44)とを左右に対向させて配置したことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の脱穀装置。
【請求項8】
前記第2篩い選別部(25)と上段篩い選別部(25b)との間に、該第2篩い選別部(25)上を後方へ移送される処理物が通過可能な空間部(25a)を形成したことをと特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の脱穀装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate


【公開番号】特開2012−157281(P2012−157281A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18980(P2011−18980)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】