説明

脱穀装置

【課題】扱室終端の排塵口より上手側の第一チャフシーブはもとより、排塵口より下手側の第二チャフシーブにおいても、左右横方向の往復揺動運動によって処理物を拡散しながら付着物を除去する拡散清掃具を設けることによって選別性能の向上を図る。
【解決手段】扱室(2)終端の排塵口(12)より上手側に位置する傾斜角度が固定の第一チャフシーブ(17)と、排塵口(12)より下手側に位置し上手側の第一チャフシーブ(17)よりも選別行程が長い第二チャフシーブ(18)を備え、これら第一・第二チャフシーブ(17),(18)には、前後方向に沿う拡散プレート(28)と各シーブ(26)面に接触して付着物を除去するシーブスクレーパ(29)とからなる数個の拡散清掃具(30)を左右横方向に往復揺動可能に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脱穀処理物を受け入れて揺動選別する揺動選別棚には、シーブに付着した藁屑を除去する清掃手段を設けた構成のものが知られている(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−100671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来例では、扱室終端の排塵口よりも上手側に設けた傾斜角度が固定の第一チャフシーブに固定シーブの長さ方向に移動自在な清掃具を備えたものであり、前記排塵口の下方から下手側に設けた第二チャフシーブは傾斜角度が調整自在な可動シーブからなっていて清掃具を具備しない構成である。
【0005】
扱室の受網から第一チャフシーブ上に漏下する処理物は穀粒の含有率が多く、扱室終端の排塵口や刺さり粒回収室から第二チャフシーブ上に落下する処理物は、穀粒の含有率が少なく藁屑が多い。藁屑量が多いほどシーブへの付着率も高くなり、これを取り除かない限り選別性能の悪化を招く。
【0006】
本発明の課題は、扱室終端の排塵口より上手側の第一チャフシーブはもとより、排塵口より下手側の第二チャフシーブにおいても、左右横方向の往復揺動運動によって処理物を拡散しながら付着物を除去する拡散清掃具を設けることによって選別性能の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決すべく次の技術的手段を講じる。
即ち、請求項1記載の発明は、扱室(2)側から漏下する処理物を選別する揺動選別装置(15)に、扱室(2)終端の排塵口(12)より上手側に位置する傾斜角度が固定の第一チャフシーブ(17)と、前記排塵口(12)より下手側に位置し上手側の第一チャフシーブ(17)よりも選別行程が長い第二チャフシーブ(18)を設け、これら第一チャフシーブ(17)と第二チャフシーブ(18)には、前後方向に沿う拡散プレート(28)と各シーブ(26)面に接触して付着物を除去するスクレーパ(29)とからなる複数の拡散清掃具(30)を、左右方向に往復揺動可能に備えたことを特徴とする脱穀装置とした。
【0008】
藁屑の多い第二チャフシーブ(18)上にあっても拡散プレート(28)とシーブスクレーパ(29)とからなる拡散清掃具(30)が処理物を拡散しながらシーブ(26)面上の付着物を除去するので、長い選別行程を経て効果的に篩い選別することができ、3番ロスが低減し、回収効率も高まり、第一チャフシーブ(17)による選別と相俟って選別性能が大幅に向上するものとなる。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記第一チャフシーブ(17)に備える拡散清掃具(30)と第二チャフシーブ(18)に備える拡散清掃具(30)とは、互いに左右反対方向に往復揺動すべく連動させたことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置とした。
【0010】
第一チャフシーブ(17)側の拡散清掃具(30)と第二チャフシーブ(18)側の拡散清掃具(30)が左右反対方向に往復作動するので、両者の往復動によって発生する振動を互いに打ち消しあうことができ、篩い選別がバランスよく良好に行える。
【0011】
請求項3記載の発明は、前記第二チャフシーブ(18)における扱室(2)の左右一側に設けた排塵処理室(10)側の部位には、該排塵処理室(10)の処理室受け網(11)から漏下する処理物を第二チャフシーブ(18)における排塵処理室(10)側とは反対側の部位に向けて拡散案内する傾斜案内板(31)を、左右に往復動する拡散清掃具(30)と一体的に設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の脱穀装置とした。
【0012】
排塵処理室(10)の受け網(11)から漏下する処理物は、第二チャフシーブ(18)の一側寄りに集中的に落下するが、拡散清掃具(30)と一体的に作動する傾斜案内板(31)によって第二チャフシーブ(18)の一側から他側に向けて拡散案内される。従って、第二チャフシーブ(18)上では、全幅にわたって層厚が均一になり、選別性能が向上する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、第一チャフシーブ(17)はもとより、藁屑の多い第二チャフシーブ(18)にあっても左右に往復動する拡散清掃具(30)が処理物を拡散しながらシーブ(26)面上の付着物を除去するので、長い選別行程を経て効果的に篩い選別することができ、3番ロスの低減、回収効率の高揚を図ることができ、第一チャフシーブ(17)による選別と相俟って全体の選別性能が大幅に向上する。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果を奏するものでありながら、第一チャフシーブ(17)に備える拡散清掃具(30)と第二チャフシーブ(18)に備える拡散清掃具(30)とが互いに左右反対方向に往復作動するので、発生する振動を互いに打ち消しあい騒音や振動を低減することができ、篩い選別をバランスよく良好に行うことができる。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は請求項2記載の発明による効果に加えて、排塵処理室(10)の受け網(11)から漏下する処理物を第二チャフシーブ(18)の一側寄りに集中落下させることがなく、傾斜案内板(31)によって揺動選別装置(15)の幅全体に満遍なく拡散案内することができ、第二チャフシーブ(18)上で全幅にわたって処理物の層厚が均一となり、選別性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】脱穀機の要部の側断面図
【図2】同上要部の正断面図
【図3】脱穀機の要部の横断平面図
【図4】同上要部の横断平面図
【図5】別実施例の揺動選別棚の平面図
【図6】同上要部の側断面図
【図7】揺動選別棚の要部の側面図
【図8】脱穀機の要部の側断面図
【図9】脱穀機の要部の平面図
【図10】脱穀機の要部の側断面図
【図11】同上要部の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1及び図2に示す脱穀機(脱穀部)は、次のような構成になっている。
すなわち、脱穀部1は、扱室2の一側に張設された脱穀フィードチエン4により株元を挟持しながら搬送される穀稈の穂先部を扱室2内で駆動回転する扱胴3により脱穀処理するよう構成している。扱室2の下半周部には受網5が張設され、扱胴3の上部を覆う扱胴カバー6は、扱室の一側を支点として開閉する構成である。扱室2のフィードチエン4側とは反対側には、扱室からの二番処理物を受け入れて脱粒処理する二番処理胴7が扱胴3と平行して二番処理室8内に軸架されている。後述の二番螺旋24から揚穀される処理物もまた、二番処理室8の後端側から供給される。また、二番処理胴7の後方にはこれと同一軸芯上において排塵処理胴9が処理室受け網11を有する排塵処理室10内に架設されている。
【0018】
なお、前記扱室2は、前側板2aと中側板2b,2cとの間に構成され、扱室終端の排塵口12は中側板2bと2cとの間に形成されている。そして、扱胴3を前記排塵口12より後方に延長して中側板2cと後側板2d との間に刺さり粒回収室13を構成している。
【0019】
扱室下方の揺動選別装置(揺動選別棚)15は、揺動機構14を介して前後方向に揺動運動し、脱穀処理後の処理物を受け入れて揺動移送しながら篩い選別する構成であり、選別方向上手側から移送棚16、第一チャフシーブ17、第二チャフシ−ブ18、ストロ−ラック19の順に配置し、且つ、前記第二チャフシ−ブ18の下方にグレンシ−ブ20、一番戻し棚21a、二番戻し棚21bを配置して設けた構成としている。
【0020】
また、揺動選別棚15の下方には選別方向の上手側から順に、唐箕22と、一番螺旋23、二番螺旋24と、その上方に排塵フアン25を設けて排塵選別室を構成している。
前記第一チャフシーブ17は、排塵口12の下方から上手側に配置され、前後方向に所定間隔を開けて上下方向に傾斜する固定状態の固定シーブ26からなる。第二チャフシーブ18は、排塵口12より下手側に配置され、第一チャフシーブ17からの処理物及び刺さり粒回収室13からの処理物を受け入れて篩い選別するように構成され、且つ第一チャフシーブ17より選別行程が長く構成され、第一チャフシーブと同様に傾斜角不変の固定シーブ26からなる。
【0021】
第一チャフシーブ17及び第二チャフシーブ18には、揺動選別棚の前後方向の揺動方向に並行で且つ左右方向所定間隔置きに配設した拡散プレート28と、各固定シーブ26の表面に下面を接触させ、上面と下面とで成す鋭利な掬い角によって付着物を除去するシーブスクレーパ(スクレーパ)29とからなる複数個の拡散清掃具30,30,30,…を備えている。
【0022】
前記第二チャフシーブ18の排塵処理室10側には、処理室受け網11から漏下する処理物を第二チャフシーブ18の排塵処理胴側とは反対側(フィードチエン4側)に向けて拡散案内する傾斜案内板31が左右に往復動する拡散清掃具30と一体的に揺動するよう設けられている。
【0023】
第一チャフシーブ17の各拡散清掃具30は、駆動モータ34の回転駆動により、互い違いに引き操作する一対の操作ケーブル37a,37b、往復回動する天秤アーム38、天秤アーム軸39、往復回動する揺動アーム40等の連動機構を介して左右方向に往復動すべく連動構成している。
【0024】
駆動モータ34を駆動すると、クランクアーム35の回転により、クランクピン36に連結された一対の操作ケーブル37a,37b が互い違いに引き操作され、第一天秤アーム38の往復回動によって天秤アーム軸39を回動中心として第一揺動アーム40が左右に往復揺動するようになっている。そして、この第一揺動アーム40に連結された拡散清掃具30が左右横方向へ強制的に往復動されるようになっている。
【0025】
また、第二チャフシーブ18の各拡散清掃具30は、第一天秤アーム38からクロスリンク41a,41bを介して連結された第二天秤アーム42の往復回動によって第二揺動アーム43が左右に往復揺動するようになっており、第一チャフシーブ17の拡散清掃具30の揺動方向とは反対方向に往復揺動するよう連動構成されている。
【0026】
図5、図6に示す実施例は、第一.第二チャフシーブ17,18の拡散清掃具30を2個ユニットに分割し、それぞれの拡散清掃具を同一方向に同一ストロークで往復動させる構成としてあり、そして、往復動させる複数個の第一天秤アーム38,38は、移送棚16の下方空間内に左右横方向に並べて配置し、一方の天秤アーム38から他方の天秤アームを機体横方向のリンクバー44で連結して駆動する構成としている。これによれば、移送棚下方の空間を利用するので、シーブの濾過面積を阻害することなくコンパクトに配置できる。なお、かかる図例では、第一天秤アーム38,38と第二天秤アーム42,42とは平行リンク45,45で連結し、第一.第二拡散清掃具が同一方向に往復揺動するよう連動構成している。また、複数の天秤アーム38,38は単一のモータで駆動することができる。
【0027】
図7に示す実施例では、拡散清掃具30を夫々備えた第一チャフシーブ17及び第二チャフシーブ18は、前部側(始端側)に設けた支軸46を回動支点として後方側が上下に揺動するよう傾斜角変更調節可能に構成している。これにより、シーブ間の濾過隙間を変更できるので、条件適応性が向上する。
【0028】
図8に示す実施例では、グレンシーブ(一番選別網)20を前後方向に所定間隔を開けて上下方向に傾斜する固定状態の固定シーブ26からなるように構成し、そして、この固定シーブ26群に前期第一チャフシーブ17、第二チャフシーブ18と同様の拡散清掃具30を左右往復動自在に設け、操作ケーブル37、天秤アーム38、揺動アーム40を介して駆動する構成としている。湿材作業時にはシーブに付着した土や藁屑が成長することで、シーブの穀粒濾過性能を阻害し、また、その清掃に時間を要し、作業能率を低下させる問題があるが、拡散清掃具のスライド移動によりシーブ上の処理物を均分化し、上記問題点を解決することができる。
【0029】
図9に示す実施例について説明すると、扱胴3後方で脱穀フィードチエン4側一側に片側吸引方式の排塵ファン25を配置した構成のものにおいて、この吸引排塵ケース47の前部内側(右側)の角部を斜めにカットして斜めの傾斜面48を設け、この傾斜面48の傾斜角θ2を排藁搬送装置49の傾斜角θ2と同一角構成としている。これにより、脱穀処理後の排藁が吸引排塵ケースの傾斜させた部分で抵抗とならず、排藁搬送装置にスムースに引き継がれることになる。また、扱胴の円筒部が吸引排塵ケースの傾斜面位置より内側にあるように設定することによっても、脱穀フィードチエンから排藁搬送装置への引継ぎ作用が支障なくスムースに行える。
【0030】
また、図10、図11に示す実施例では、ストローラック19と二番螺旋24との間にレーキ50、受刃51、回転刃52等からなる藁屑切断装置53を装備している。稈長の長い作物を収穫する場合、脱粒行程で長い藁屑が発生し、ストローラックから下方の二番螺旋24上に落下する。長藁が螺旋軸に巻き付いて過大の負荷を受ける。本例では、受刃51と回転刃52により二番螺旋上に落下する長藁を効率よく細断して、螺旋軸への巻き付を防止することができる。
【符号の説明】
【0031】
2 扱室
10 排塵処理室
11 処理室受け網
12 排塵口
17 第一チャフシーブ
18 第二チャフシーブ
26 固定シーブ
28 拡散プレート
29 シーブスクレーパ(スクレーパ)
30 拡散清掃具
31 傾斜案内板
37 操作ケーブル
38 第一天秤アーム
40 第一揺動アーム
41 クロスリンク
42 第二天秤アーム
43 第二揺動アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室(2)側から漏下する処理物を選別する揺動選別装置(15)に、扱室(2)終端の排塵口(12)より上手側に位置する傾斜角度が固定の第一チャフシーブ(17)と、前記排塵口(12)より下手側に位置し上手側の第一チャフシーブ(17)よりも選別行程が長い第二チャフシーブ(18)を設け、これら第一チャフシーブ(17)と第二チャフシーブ(18)には、前後方向に沿う拡散プレート(28)と各シーブ(26)面に接触して付着物を除去するスクレーパ(29)とからなる複数の拡散清掃具(30)を、左右方向に往復揺動可能に備えたことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記第一チャフシーブ(17)に備える拡散清掃具(30)と第二チャフシーブ(18)に備える拡散清掃具(30)とは、互いに左右反対方向に往復揺動すべく連動させたことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記第二チャフシーブ(18)における扱室(2)の左右一側に設けた排塵処理室(10)側の部位には、該排塵処理室(10)の処理室受け網(11)から漏下する処理物を第二チャフシーブ(18)における排塵処理室(10)側とは反対側の部位に向けて拡散案内する傾斜案内板(31)を、左右に往復動する拡散清掃具(30)と一体的に設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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